(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】シリコーンゴム複合体及びそれを使用した成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 25/20 20060101AFI20220830BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220830BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220830BHJP
B30B 15/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B32B25/20
B32B27/36
B32B7/022
B30B15/02 E
(21)【出願番号】P 2018059206
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀次
(72)【発明者】
【氏名】長江 洋志
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098566(JP,A)
【文献】国際公開第2009/038183(WO,A1)
【文献】特開2003-119439(JP,A)
【文献】特開2004-311577(JP,A)
【文献】特開2015-170690(JP,A)
【文献】特開2014-031408(JP,A)
【文献】特開2013-136184(JP,A)
【文献】特開2006-281670(JP,A)
【文献】特開2010-100692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B15/00-15/08
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム層(D1)、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材シート(A)、シリコーンゴム層(D2)の少なくとも三層をこの順に積層し、一体化してなるシリコーンゴム複合体であって、
該シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)と、該シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)とが異な
り、
前記シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1(単位:μm))と圧縮永久歪(s1(単位:%))の比(t1)/(s1)が7以上であることを特徴とするシリコーンゴム複合体。
【請求項2】
シリコーンゴム層(D1)、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材シート(A)、シリコーンゴム層(D2)の少なくとも三層をこの順に積層し、一体化してなるシリコーンゴム複合体であって、
該シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)と、該シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)とが異なり、
前記シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2(単位:μm))と圧縮永久歪(s2(単位:%)の比(t2)/(s2)が0.8以下であることを特徴とするシリコーンゴム複合体。
【請求項3】
前記シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)が40μm~1mmであることを特徴とする請求項1
又は2に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項4】
前記シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)が1~200μmであることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項5】
前記シリコーンゴム層(D1)の圧縮永久歪(s1)が40%以下であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項6】
前記シリコーンゴム層(D2)の圧縮永久歪(s2)が20%以上であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項7】
前記シリコーンゴム層(D2)が、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンエラストマー樹脂を含むことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項8】
プレス成形に用いられることを特徴とする1~7のいずれか1項に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のシリコーンゴム複合体を使用した成形体の製造方法であって、前記シリコーンゴム層(D1)を成形体側に面するように使用してプレス成形することを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子製品に組み込まれるIC、半導体、受動部品等のディスプレー・タッチパネル関連製品部材やLED照明製品部材等において、プレス成形に利用するための各種離型材、滑り止め材(以下「離型材等」という) として好適に使用できるシリコーンゴム複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からシリコーンゴムは、耐熱性や電気的性質に優れていることから、離型材等の用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、シリコーンゴム単体からなるシートをそのままプレス成形の離型材等として使用しようとすると、ゴム製品であるがために変形を生じ、組みつけ寸法精度が悪くなったり、シワが生じたりして、作業性に問題があった。また、シリコーン複合体が成形部材に均質に接触しないため、成形体を均一に加圧できず、成形体が変形凹凸化して形状ブレを起こし、外観不良を生じることがあった。
【0004】
そこで、上記問題点を解消するためにシリコーンゴム単体とプラスチックシートあるいはフィルムを複合一体化することが検討されている。
【0005】
複合化の一つの方法として、あらかじめ架橋されたシリコーンゴム単体とプラスチックシートあるいはフィルムとを接着剤を介して複合化する方法、両面テープ貼り合わせや粘着剤塗布等の方法で、粘着層を介して複合化する方法がある。この場合、通常シリコーンゴム用の接着剤あるいは粘着剤が用いられるが、接着剤あるいは粘着剤を別に塗布する必要性があり、加工コストが高くなるとか、長尺の複合体が得られにくい等の不都合がある。
【0006】
さらに、このような不都合を解決するためにプラスチックシートあるいはフィルムにシリコーン系プライマーを塗布し、シリコーン未架橋ゴムを貼り合わせ、しかる後、熱架橋させると同時にシリコーンゴムと一体化させることが検討されている。しかしながら、プラスチックシートあるいはフィルムが結晶性ポリエステル樹脂を主体とする場合には、シリコーン系プライマーと該プラスチックシートあるいはフィルムとの接着性に乏しく、得られる複合体に剥離等の問題が生じ易い。
【0007】
また、該プラスチックシートあるいはフィルムが耐熱性の低いものである場合、シリコーンゴム架橋時に熱が加わるため、適用できない。さらに、該プラスチックシートあるいはフィルムとシリコーンゴムとの熱膨脹の差が大きいため、得られる複合体にカールが生じるという問題があった。
【0008】
上述の問題点を解消できるシリコーンゴム複合体として、特許文献1では、結晶性ポリエステル樹脂を主体とするシートあるいはフィルムの少なくとも片面に、下塗り層と下塗り層に対して親和性が高く、かつシリコーン樹脂を含有する薄膜層を順に形成し、特定の硬度を有するシリコーンエラストマー樹脂からなるシリコーンゴム層を形成し、上記シートあるいはフィルムとシリコーンゴム層が一体化してなるシリコーンゴム複合体の提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のシリコーン複合体をプレス成形に使用する際に、条件によっては、成形材の形状や寸法精度が十分確保されない場合があった。すなわち、シリコーン複合体と成形材との接触圧力が大きかったり接触圧力分布が不均一であったりすると、シリコーンゴム層が圧縮流れを起こし、成形体が所定の形状や所定の寸法精度で仕上がらないといった問題が発生する場合があった。加えて、シリコーン複合体に残った成形材跡や、金型へのとられ等によるシリコーン複合体の変形が発生する等の問題により、繰り返し使用が難しくなる場合があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、プレス成形時の加圧による圧縮流れによる変形が抑制され、再使用も可能であり、プレス成形時の離型材として好適なシリコーンゴム複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上述した課題を解決すべく鋭意検討したところ、シリコーンゴム層(D1)、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材シート(A)、シリコーンゴム層(D2)の少なくとも三層をこの順に積層し、一体化してなるシリコーンゴム複合体において、該シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)と、該シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)とを異なる設計とすることにより、プレス成形時の変形が抑制され、再使用も可能な、シリコーンゴム複合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0014】
[1] シリコーンゴム層(D1)、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材シート(A)、シリコーンゴム層(D2)の少なくとも三層をこの順に積層し、一体化してなるシリコーンゴム複合体であって、該シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)と、該シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)とが異なることを特徴とするシリコーンゴム複合体。
【0015】
[2] 前記シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1(単位:μm))と圧縮永久歪(s1(単位:%))の比(t1)/(s1)が7以上であることを特徴とする[1]に記載のシリコーンゴム複合体。
【0016】
[3] 前記シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2(単位:μm))と圧縮永久歪(s2(単位:%)の比(t2)/(s2)が0.8以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のシリコーンゴム複合体
【0017】
[4] 前記シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)が40μm~1mmであることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載のシリコーンゴム複合体。
【0018】
[5] 前記シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)が1~200μmであることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載のシリコーンゴム複合体。
【0019】
[6] 前記シリコーンゴム層(D1)の圧縮永久歪(s1)が40%以下であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載のシリコーンゴム複合体。
【0020】
[7] 前記シリコーンゴム層(D2)の圧縮永久歪(s2)が20%以上であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載のシリコーンゴム複合体。
【0021】
[8] 前記シリコーンゴム層(D2)が、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンエラストマー樹脂を含むことを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載のシリコーンゴム複合体。
【0022】
[9] [1]~[8]のいずれかに記載のシリコーンゴム複合体を使用した成形体の製造方法であって、前記シリコーンゴム層(D1)を成形体側に面するように使用してプレス成形することを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明が提案するシリコーンゴム複合体は、シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)と、該シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)とが異なることを特徴としているため、シリコーンゴム複合体をプレス成形時の離型材等として用いたとき、シリコーン複合体の変形ないし流動を抑制することができる。また、このことにより、プレス成形時の加工性や組み込み等の作業性が大幅に向上し、歩留りの向上につながる。さらに、成形後のシリコーンゴム複合体は変形が少ないので、剥離して再使用も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例としてのシリコーンゴム複合体(以下、「本複合体」とも称する)について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<本複合体>
本複合体は、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材シート(A)とシリコーンゴム層(D)とが一体化してなるものである。本発明において、「一体化してなる」とは、基材シートとシリコーンゴム層とを手で剥離しようとする際に、層間で剥離しない程度に接着していることをいう。
【0026】
<ポリエステル系樹脂を主成分とする基材シート(A)>
本発明に使用されるポリエステル系樹脂を主成分とする基材シート(A)の材料としては、耐熱性や機械的強度の観点から結晶性のポリエステル系樹脂であることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも、耐熱性、フィルムの腰、平滑性、商業的入手のしやすさ等に加え、後述するシリコーンゴム層(D)との接着性の観点から、ポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。
【0027】
また、機械的強度の観点から、基材シート(A)は少なくとも1軸に延伸されていることが好ましい。
【0028】
該基材シート(A)の厚みは、10~350μmの範囲のものが好適に使用できる。該基材シート(A)の厚みを10μm以上とすることにより、表面に他の層を形成させる時、シワ入りが発生しにくくなる。一方、350μm以下であれば、シートが硬すぎず、後述する下塗り層等を塗工しやすくなる傾向がある。かかる観点から、基材シートあるいはフィルムの厚みは、15~300μmであることがより好ましく、20~250μmであることがさらに好ましい。
【0029】
本複合体では、上記基材シート(A)において、前記シリコーンゴム層(D)が一体化される側の表面に、非晶性ポリマーを主成分とする下塗り層(B)及びシリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)をこの順に有することがさらに好ましい。
【0030】
<下塗り層(B)>
下塗り層(B)は、非晶性ポリマーを主成分として含むことが好ましい。非晶性ポリマーとしては、上記基材シート(A)に均一に塗布できるものであれば特に限定されるものではなく、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等実質的に結晶性の無いポリマーから適宜選択すればよい。
【0031】
具体例としては、ポリエステル樹脂及び/又はポリエーテル樹脂をウレタン結合等で直鎖状に高分子量化したポリウレタン樹脂、アクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル樹脂、酸成分あるいはグリコール成分が2種類以上の単量体よりなる共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。これら非晶性樹脂は、薄膜に塗工されるので、通常有機溶剤で希釈した状態、あるいは水中に乳化又は可溶化させて適度な濃度に調整したものが使用される。
【0032】
上記下塗り層(B)は、耐熱性、耐溶剤性を向上させる目的で、架橋構造を持つものであってもよく、この場合、上記非晶性ポリマーは、主鎖あるいは側鎖にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等架橋性官能基を持つものであり、架橋剤としては、ポリイソシアネート、メラミン、多官能エポキシ樹脂、金属化合物等から適時選択される。また、塗工液には、上記架橋剤のほか、界面活性剤等からなるレベリング剤、シリカ等ブロッキング防止剤、増粘剤等が添加されていても良い。
【0033】
下塗り層(B)の乾燥後の厚みは、0.01~5μmの範囲であることが好ましい。下塗り層の厚みが0.01μm以上であれば、塗布厚みの調整が容易であり、また、後述するシリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)との接着性も良好となるため好ましい。また、膜厚が5μm以下であれば、下塗り層の塗工が困難になることもない。かかる観点から、下塗り層の厚みは0.05~4μmであることがより好ましく、0.1~3μmであることがさらに好ましい。また、塗布方法としては、使用する塗工液に応じて公知の方法を適用することができる。塗工液のレベリング性や密着性を上げる目的で、基材シート(A)の塗工面にあらかじめコロナ処理等の表面処理を施すこともできる。
【0034】
<シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)>
本発明の薄膜層(C)に主成分として含まれるシリコーン系樹脂としては、塗布後、加熱あるいはUV照射等で架橋被膜を形成するものや、シリコーンゴム層架橋時に同時に架橋被膜を形成するもの等が挙げられる。
【0035】
上述の薄膜層(C)に使用可能なシリコーン系樹脂の例として、付加型シリコーン樹脂、縮合型シリコーン樹脂、UV硬化型シリコーン樹脂等が挙げられる。付加型のシリコーン系樹脂としては、ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合し、白金触媒の存在下反応硬化させて得られるものが挙げられ、縮合型シリコーン樹脂としては、末端にシラノール基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合し、有機スズ触媒存在下で加熱硬化して得られるものが挙げられる。
【0036】
UV硬化型シリコーン樹脂としては、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとするもの、メルカプト基とビニル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとするもの、前述の付加型シリコーン系樹脂配合物、あるいはカチオン硬化機構で硬化するエポキシ基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとするもの等に光重合開始剤を配合し、UV光を照射することによって硬化させるものが挙げられる。
【0037】
上述のシリコーン系樹脂配合物に溶剤を適時添加することにより塗工液を調整し、基材シート(A)上に塗工することにより、薄膜層(C)を形成する。
【0038】
該塗工液には、下塗り層(B)との親和性を上げる目的で、シランカップリング剤等の添加剤が含まれることが好ましい。この目的を満たすシランカップリング剤は、一般式YRSiX3で表される化合物で、Yはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等の有機官能基、Rはメチレン、エチレン、プロピレン等アルキレン基、Xはメトキシ基、エトキシ基等加水分解性官能基あるいはアルキル基である。具体的化合物として、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γーグリシジルプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリエトキシシラン、N-β (アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル) -γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
上記塗工液の塗布厚みは、溶剤乾燥後で0.01~1μmであることが好ましい。塗布厚みが0.01μm以上であれば、均一な厚みの硬化被膜が得られ、かつ、シリコーンエラストマー樹脂層との接着力も十分に得られる。また、上記組成のシリコーン系樹脂は一般に膜強度がそれほど強くないため、複合体の剥離強度を評価する際、該シリコーン系樹脂層で凝集破壊が起こる傾向にあるが、その膜厚が1μm以下であれば、前記シリコーン系樹脂層の凝集破壊を抑制し、複合体として十分な強度を得ることができる。かかる観点から、下塗り層の溶剤乾燥後の厚みは0.03~0.7μmであることがより好ましく、0.05~0.5μmであることがさらに好ましい。
【0040】
塗工方法としては、下塗り層(B)と同様に薄膜が精度良く得られる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の塗工方法が適用できる。
【0041】
<シリコーンゴム層(D1)>
本複合体は、プレス成形で用いる際には、シリコーンゴム層(D1)が成形材側に面するように使用される。このとき、シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)は、後述するシリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)と異なることが重要である。
【0042】
シリコーンゴム層(D1)の厚みは、40μm以上であることが好ましい。シリコーンゴム層(C)の厚みが40μm以上であると、複合体としてのゴム弾性の性質を得やすくなる。かかる観点から、シリコーンゴム層(C)の厚みは、60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。一方、厚みの上限は、用途やコスト等から通常1mmであり、より好ましくは700μmであり、さらに好ましくは500μmである。なお、本発明において厚みとは、任意の10点の厚みを測定したときの平均厚みをいう。
【0043】
また、シリコーンゴム層(D1)は、シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1(単位:μm))と圧縮永久歪(s1(単位:%))の比(t1)/(s1)が7以上であることが好ましい。(t1)/(s1)が7以上であると、シリコーンゴム層(D1)が圧縮流れを起こして成形物の型崩れが起こる問題が発生しにくく、さらにはシリコーンゴム複合体を繰り返し使用することが容易となる。かかる観点から、(t1)/(s1)が8以上であることが好ましく、9以上であることがさらに好ましい。(t1)/(s1)の上限は特に限定するものではないが、通常30、好ましくは15、より好ましくは10である。
【0044】
上述のように、シリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)と圧縮永久歪(s1)の比(t1)/(s1)が7以上であれば、厚み(t1)と圧縮永久歪(s1)の組み合わせは任意であるが、シリコーンゴム層(D1)は圧縮永久歪(s1)が40%以下であることが好ましい。具体的には、硬化後の圧縮永久歪み(s1)が40%以下のシリコーンエラストマー樹脂を主成分として含有することが好ましい。圧縮永久歪(s1)が40%以下であると、シリコーンゴム層(D1)が圧縮流れを起こして成形物の型崩れが起こり、結果として成形体の厚みや形状が不均一となる問題が発生しにくい。かかる観点から、圧縮永久歪(s1)は30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。なお、圧縮永久歪みは、JIS K6249:2003に準拠し、180℃×22時間処理後、30分室温で放置した後に測定される圧縮永久歪をいう。
【0045】
圧縮永久歪みが40%以下のシリコーンエラストマー樹脂を得るためには、ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンを主成分として選択することが好ましい。ポリジメチルシロキサン全量に対するビニル基の含有量は、0.05~5モル%であることが好ましく、0.5~4モル%であることがより好ましく、1~3モル%であることがさらに好ましい。ビニル基の含有量が0.05モル%以上であれば、シリコーンエラストマー樹脂の架橋密度を調整しやすくなり、所望の圧縮永久歪みを有するシリコーンエラストマー樹脂を得ることができる。一方、5モル%以下であれば、シリコーンエラストマー樹脂が過度に硬化することがないため好ましい。
【0046】
また、所望の圧縮永久歪みを得るための別の手段として、架橋点を調整するという観点から、ビニル基を含有せず、メチル基を主体とするポリジメチルシロキサンを選択することもまた好適である。
【0047】
圧縮永久歪みが40%以下となるシリコーンエラストマー樹脂として、市販品を使用することもできる。市販品としては、信越化学工業社製ミラブル型シリコーンコンパウンドやモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製ミラブル型シリコーンゴムを使用することができる。
【0048】
シリコーンエラストマー樹脂を硬化する手段としては、硬化触媒を添加する方法、高温加熱する方法、架橋剤を添加する方法、そして放射線照射による架橋方法等が挙げられる。
【0049】
なかでも、本複合体におけるシリコーンエラストマー樹脂は、放射線により硬化させることが好ましい。放射線による硬化は、触媒や架橋剤の残渣等による耐熱、耐光信頼性を損なう懸念がない。また、硬化時に熱が加わらないため、熱劣化の懸念もなく好ましい。
【0050】
放射線としては、例えば電子線、X線、γ線等が挙げられる。これらの放射線は工業的にも広く利用されているものであり、容易に利用可能であり、エネルギー効率の良い方法である。これらの中でも、吸収損失がほとんどなく、透過性が高いという観点から、γ線を利用することが好ましい。
【0051】
γ線の照射線量としては、樹脂種や架橋基の量、そして線源の種類により、適宜選択して決定することができる。本複合体において、例えば、γ線の照射線量は、20~150kGyであることが好ましい。照射線量が20kGy以上であれば、シリコーンゴム層(D)を十分に硬化させることができ、結果として所望の圧縮永久歪を得ることができる。一方、照射線量が150kGy以下でれば、分解反応による低分子量成分の増加を抑制できる。かかる観点から、照射線量は50~120kGyであることがより好ましく、60~100kGyであることがさらに好ましい。
【0052】
さらに、上記シリコーンエラストマー樹脂は、フュームドシリカ、沈殿シリカ、ケイソウ土、石英粉等の補強性充填剤や各種加工助剤、耐熱性向上剤等の他、エラストマーとしての機能性を持たせる各種添加剤を含有するものである。この機能性添加剤としては、難燃性付与剤、放熱性フィラー、導電性フィラー等が挙げられる。
【0053】
<シリコーンゴム層(D2)>
本複合体は、プレス成形の際にシリコーンゴム層(D2)がプレス機側に面するように使用される。このとき、シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)は、上述のシリコーンゴム層(D1)の厚み(t1)と異なることが重要である。特に、シリコーンゴム層(D1)とシリコーンゴム層(D2)に使用するシリコーンエラストマー樹脂が同一である場合において、それぞれの層の厚みを変えることが重要である。
【0054】
シリコーンゴム層(D2)の厚みは、200μm以下であることが好ましい。シリコーンゴム層(D2)の厚みが200μm以下であると、べたつきの影響が少なく、成形後の金型からの剥離が容易となる。また、金型に圧がかかった際の厚みの変化の影響も小さく、成形体側の厚さ精度に影響を与える問題も発生しにくい。加えて、経済的な問題も少ない。かかる観点から、シリコーンゴム層(D2)の厚みは、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。一方、厚みの下限は、金型への密着性の観点から1μmであることが好ましく、10μmであることがより好ましく、30μmであることがさらに好ましい。厚みが1μm以上であると、金型との密着性が低下することによって位置ずれを起こし成形体の型崩れが発生したり、ずれた位置から未硬化状態の樹脂がもれて、ひげや気泡が発生する等の問題が発生したりしにくいため好ましい。シリコーンゴム層(D2)の厚みは、シリコーンゴム層(D1)の厚みと同様の方法で測定する。
【0055】
また、シリコーンゴム層(D2)は、シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2(単位:μm))と圧縮永久歪(s2(単位:%))の比(t2)/(s2)が0.8以下であることが好ましい。(t1)/(s1)が0.8以下であると、成形機との密着が良好となる位置ずれが生じにくく、結果として成形物の型崩れが生じにくくなる。かかる観点から、(t2)/(s2)が0.7以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。下限は特に制限されるものではないが、0.02であることが好ましく、0.05であることがより好ましく、0.1であることがさらに好ましい。
【0056】
上述のように、シリコーンゴム層(D2)の厚み(t2)と圧縮永久歪(s2)の比(t2)/(s2)が0.8以下であれば、厚み(t2)と圧縮永久歪(s2)の組み合わせは任意であるが、シリコーンゴム層(D2)は圧縮永久歪(s2)が20%以上であることが好ましい。具体的には、硬化後の圧縮永久歪み(s2)が20%以上のシリコーンエラストマー樹脂を主成分として含有することが好ましい。圧縮永久歪(s2)が20%以上であると、シリコーンゴム層(D2)と金型との密着性が良好となりやすい。かかる観点から、圧縮永久歪(s2)は25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。なお、圧縮永久歪みの測定方法は、上述の通りである。
【0057】
圧縮永久歪みが20%以上のシリコーンエラストマー樹脂を得るためには、上述したように、ビニル基を含有したポリジメチルシロキサンを主成分として選択しビニル基の含有量を適宜調整したり、架橋点を減らすという観点から、ビニル基を含有せず、メチル基を主体とするポリジメチルシロキサンを選択することもまた好適である。
【0058】
シリコーンゴム層(D2)に使用するシリコーンエラストマー樹脂としては、市販品を使用することができる。市販品としては、信越化学工業社製ミラブル型シリコーンコンパウンドやモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製ミラブル型シリコーンゴムを使用することができる。
【0059】
シリコーンゴム層(D2)に使用するシリコーンエラストマー樹脂は、シリコーンゴム層(D1)に使用するシリコーンエラストマー樹脂と同様の方法で硬化させることができる。
【0060】
また、上記シリコーンエラストマー樹脂は、フュームドシリカ、沈殿シリカ、ケイソウ土、石英粉等の補強性充填剤や各種加工助剤、耐熱性向上剤等の他、エラストマーとしての機能性を持たせる各種添加剤を含有するものである。この機能性添加剤としては、難燃性付与剤、放熱性フィラー、導電性フィラー等が挙げられる。
【0061】
<積層構成>
なお、本発明の複合体の層構成は、(D1)/(A)/(D2)の少なくとも三層をこの順に積層してなるものである。(D1)層と(A)層の間、及び/又は、(D2)層と(A)層の間に、上述した下塗り層(B)やシリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)を適宜備えていることがより好ましい。
【0062】
<本複合体の製造方法>
本複合体の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば基材シート(A)に対してシリコーンゴム層(D1)及び(D2)を片面ずつ別々に一体化させても良いし、シリコーンゴム層(D1)、(D2)を両面同時に一体化させても良い。本複合体においてカール癖を減らす点においては、シリコーンゴム層(D1)及び(D2)を片面ずつ別々に一体化させることが好ましい。
【0063】
より具体的には、基材シート(A)の片面に、下塗り層(B)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)、シリコーンゴム層(D1)をこの順に設け、該シリコーンゴム層(D1)をγ線照射により硬化させた後、もう一方の面も同様に下塗り層(B)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)、シリコーンゴム層(D2)をこの順に設け、該シリコーンゴム層(D2)をγ線照射により硬化させる方法を用いることができる。
【0064】
さらに具体的に述べる。まず、前述のポリエステル系樹脂を主体としてなる基材シート(A)の片面に、下塗り層(B)としての塗工液を塗布し、次いで乾燥、さらに必要に応じて熱架橋させることにより、下塗り層(B)を形成させる。塗布方法としては、塗工液に適した公知の方法が適用でき、別工程で製膜されたプラスチックシートあるいはフィルムに塗布しても良いし、該プラスチックシートあるいはフィルムの未延伸シートに直接塗工液を塗布した後に延伸して、下塗り層(B)を形成させたものであってもよい。また、塗工液のレベリング性や密着性を上げる目的で塗工面にあらかじめコロナ処理等の表面処理を施すこともできる。
【0065】
次に、下塗り層(B)上に、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)を塗工する。塗布方法としては、上述の下塗り層(B)と同様に、公知の方法を使用することができる。
【0066】
さらに、シリコーンエラストマー樹脂からなるシリコーンゴム層(D1)を、次の方法により形成する。まず、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)の上に未架橋状態でシリコーンエラストマー樹脂からなるシリコーンゴム層(D1)を積層する。積層方法としては、上記未架橋シリコーンエラストマー樹脂を押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形等によって、シート状に成形した後に薄膜層(C)の上に積層しても良く、また公知のコーティング方法によって、薄膜層(C)の上に直接製膜するという方法であってもよい。
【0067】
次いで、シリコーンゴム層(D1)を放射線により硬化させることで、本発明の複合体を得ることができる。放射線としては、γ線、電子線、X線等が好適に使用できる。
【0068】
上述のように、本複合体においては、シリコーンゴム層(D1)をγ線照射により硬化させることが好ましい。γ線の照射線量は、シリコーンゴム層(D1)において所望の圧縮永久歪みを得る観点から、20~150kGyで照射することが好ましく、50~120kGyで照射することがより好ましく、60~100kGyで照射することがさらに好ましい。
【0069】
また、この照射線量の選定には、シリコーンゴムの架橋密度の他、基材として使用するプラスチックフィルムの耐放射線性も考慮に入れる必要がある。この点、本発明で使用するポリエステル系樹脂は、一般に放射線に対する耐性に優れ、本発明の目的に極めて適合した基材である。
【0070】
次いで、ポリエステル系樹脂を主体としてなる基材シート(A)のもう一方の面に、上述のシリコーンゴム層(D1)と同様の手法にてシリコーンゴム層(D2)を設ける。ここで、シリコーンゴム層(D1)とシリコーンゴム層(D2)の厚みが異なるように設けることが重要である。
【0071】
その他の製法として、基材シート(A)の片面に、下塗り層(B)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)、シリコーンゴム層(D1)をこの順に設けた積層体1を作成した後、基材シート(A)の片面に、下塗り層(B)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)、シリコーンゴム層(D2)をこの順に設けた積層体2を作成し、積層体1と積層体2のそれぞれの基材シート(A)側面を接着する方法を挙げることができる。
【0072】
<成形体の製造>
本複合体は、シリコーンゴム層(D1)を成形材側に面するように使用してプレス成形によることにより、各種成形体を製造することができる。
【0073】
本発明のシリコーンゴム複合体は、プレス成形時の離型材として優れた特性を有しているので、例えば、電気・電子製品に組み込まれるIC、半導体、受動部品等のディスプレー・タッチパネル関連製品部材やLED照明製品部材等の成形体の製造に好適に用いることができる。
【0074】
本発明において「主成分」と表現した場合、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。
この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
また、本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【0075】
なお、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K6900:1994)。しかし、「シート」と「フィルム」の境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例中に示す結果は以下の方法で評価を行った。
【0077】
(1)圧縮永久歪
シリコーンゴム複合体に用いる原料シリコーンエラストマー樹脂について、JIS K6249:2003に準拠し、180℃×22時間処理後、30分室温で放置後測定した。
【0078】
(2)プレス成形性
下記記載の方法で得られた10cm×10cmのシリコーンゴム複合体のシリコーンゴム層(D1)側に、エポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂層(10mm×10mm×10μm厚み)をハンドロールで加圧転写し、その転写面に10mm×10mm×1mm厚みのシリコ-ン基板が接するようにして金属製の熱板間に挟み、130℃、0.01Paの条件下で1時間熱プレスし、熱硬化性樹脂層を完全硬化させた。放冷後に、シリコーン複合体を剥離した後のエポキシ/シリコーン基板の一体成形体の状態を目視により確認し、以下の基準により評価した。
○:エポキシ樹脂層の表面が均一かつ平滑であり、エポキシ樹脂層がシリコーン基板のエッジ部に均等に被覆されている。
△:エポキシ樹脂層の表面にわずかに凹凸感があり、エポキシ樹脂層がシリコーン基板のエッジ部に不均一に被覆されているが、実用範囲内である。
×:エポキシ樹脂層の表面が均一ではなく凹凸があり、エポキシ樹脂層がシリコーン基板のエッジ下部及び外部に至り、不揃いに被覆されている。
【0079】
(3)シリコーン複合体の再使用性
上記(2)において、熱プレス後にシリコーン複合体を剥離した後のシリコーン複合体の状態を目視により確認し、以下の基準により評価した。
○:シリコーンゴム層(D1)、シリコーンゴム層(D2)のいずれも全面変形がなく、再使用が可能なもの。
△:シリコーンゴム層(D1)、シリコーンゴム層(D2)のいずれか又は両方において、使用面における成形材跡、金型へのとられ等による変形が確認された面積が、シリコーンゴム複合体使用面面積の20%未満であるもの(実用範囲内)。
×:シリコーンゴム層(D1)、シリコーンゴム層(D2)のいずれか又は両方において、使用面における成形材跡、金型へのとられ等による変形が確認された面積が、シリコーンゴム複合体使用面面積の20%以上であるもの。
【0080】
(実施例1)
基材シート(A)として、コロナ処理を施した厚み50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A-1)(三菱ケミカル(株)製:商品名ダイアホイルS-100)を用い、下記に示す方法で下塗り層(B)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)、シリコーンゴム層(D1)及び(D2)を基材シート(A)の両面に順次形成させ、各種厚み構成のシリコーン複合体を得た。使用した下塗り層(B)、薄膜層(C)、シリコーンゴム層(D1)、(D2)は、以下の通りである。
【0081】
[下塗り層(B)]
非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、商品名バイロン240)14質量部、ポリイソシアネート(東ソー(株)製、商品名コロネートL)2質量部を溶剤(MEK/トルエン=1/4(質量比))84質量部に希釈し、塗工液とした。これを乾燥後の膜厚が1.0μmになるように上記PETフィルム(A-1)の両面にバーコーターで塗工し、ギアオーブン中で、100℃×10分間溶剤乾燥及び架橋を行ない、下塗り層(B-1)とした。
【0082】
[シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C)]
縮合型シリコーン樹脂組成物(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名SRX290)20質量部及び硬化剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名SRX242C)1.2質量部を溶剤(トルエン)78.8質量部に希釈して塗工液を得た。これを下塗り層(B)の上に所定の乾燥後膜厚0.2μmになるようにバーコーターで塗工し、ギアオーブン中で、100℃×10分間乾燥及び架橋を行ない、薄膜層(C-1)とした。
【0083】
[シリコーンゴム層(D1)、(D2)]
シリコーンエラストマー樹脂として、以下に記載のシリコーンエラストマー樹脂を用い、プレス成形法にて、以下に記載の厚みの未架橋シート(D-1)(D-2)を得た。
(D-1):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 商品名TSE2911-U(低モジュラスシリコーンゴム、圧縮永久歪27%)、厚み200μm
(D-2):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 商品名TSE200(ミラブル型シリコーンゴム、圧縮永久歪80%)、厚み50μm
【0084】
このシートを、上記薄膜層(C-1)に接するように積層し、25℃、プレス圧50kg/cm2でプレス成形し複合体を作成した。この複合体のシリコーンゴム層面に、加速電圧200kVの電子線照射装置にて100kGyの電子線を照射し、シリコーンゴム層(D1)及び(D2)を形成し、D-1/C-1/B-1/A-1/B-1/C-1/D-2の複合体を得た。
得られたシリコーンゴム複合体について、上記記載の評価を行った結果を、表1に示す。
【0085】
(実施例2~5)、(比較例1)
シリコーンエラストマー樹脂として、以下に記載のシリコーンエラストマー樹脂を用い、プレス成形法にて、以下に記載の厚みの未架橋シート(D-2)~(D-6)を得た。得られた未架橋シート(D-2)~(D-7)を表1の通り用いた以外は、実施例1と同様にシリコーン複合体を作成し、実施例1と同様の評価を行った。得られたシリコーンゴム複合体の評価を表1に示す。なお、比較例1は、シリコーンゴム層(D-2)側のべたつきが顕著で、ハンドリングし難かった。
(D-3):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 商品名TSE2570-7U(ミラブル型シリコーンゴム、圧縮永久歪31%)、厚み300μm
(D-4):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 商品名TSE200(ミラブル型低粘度シリコーンゴム、圧縮永久歪80%)、厚み20μm
(D-5):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 商品名TSE2571-5U(ミラブル型シリコーンゴム、圧縮永久歪65%)、厚み400μm
(D-6):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 商品名XE20-C0510(低モジュラスシリコーンゴム、圧縮永久歪43%)、厚み50μm
(D-7):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 商品名TSE200(ミラブル型低粘度シリコーンゴム、圧縮永久歪80%)、厚み200μm
【0086】