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特許7131018ポリエステル系粘着剤、光学部材用粘着シート及びポリエステル系粘着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ポリエステル系粘着剤、光学部材用粘着シート及びポリエステル系粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20220830BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220830BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220830BHJP
   C08G 63/19 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C09J167/00
C09J11/06
C09J11/04
C08G63/19
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018059991
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2018172662
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2017066737
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀昭
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-143994(JP,A)
【文献】特開2015-134906(JP,A)
【文献】特開2000-177084(JP,A)
【文献】特開昭52-038550(JP,A)
【文献】特開2015-147838(JP,A)
【文献】特開2013-089976(JP,A)
【文献】特開2016-094582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 63/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物[I]からなるポリエステル系粘着剤において、
ポリエステル系樹脂(A)が多価カルボン酸類(A1)及び多価アルコール(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られるポリエステル系樹脂(A)であり、
多価カルボン酸類(A1)が脂肪族多価カルボン酸類を含有し、多価アルコール(A2)が芳香族多価アルコールを含有し、芳香族多価アルコールが下記一般式(1)で示されるフルオレン系ジオールを含有し、
下記の粘着力(α)が10~200N/25mmで、かつ、屈折率が1.530~1.650であることを特徴とするポリエステル系粘着剤。
粘着力(α):ポリエステル系粘着剤が基材上に形成され粘着シートとした際に、ポリカーボネート板の被着体に貼り付けて50℃、0.5MPaで20分間オートクレーブ処理した後、24時間後における被着体に対する剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)。
【化1】
式(1)中、R 1 は炭素数1~5のアルキレン基である。R 2 、R 3 、R 4 及びR 5 は水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【請求項2】
粘着剤組成物[I]が、ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)及び架橋剤(C)を含有してなり、ポリエステル系樹脂(A)が、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位及び芳香族多価アルコール由来の構造部位を含有してなることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系粘着剤。
【請求項3】
粘着剤組成物[I]が、更に可塑剤(D)を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル系粘着剤。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が40℃以下であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載のポリエステル系粘着剤。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量が8,000~200,000であることを特徴とする請求項1~4いずれか記載のポリエステル系粘着剤。
【請求項6】
加水分解抑制剤(B)の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して0.01~10重量部であることを特徴とする請求項2~5いずれか記載のポリエステル系粘着剤。
【請求項7】
可塑剤(D)の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して2~30重量部であることを特徴とする請求項3~6いずれか記載のポリエステル系粘着剤。
【請求項8】
更に、無機酸化物(E)を含有することを特徴とする請求項1~7いずれか記載のポリエステル系粘着剤。
【請求項9】
請求項1~8いずれか記載のポリエステル系粘着剤が基材上に形成されてなることを特徴とする光学部材用粘着シート。
【請求項10】
ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)及び架橋剤(C)を含有してなり、
ポリエステル系樹脂(A)が多価カルボン酸類(A1)及び多価アルコール(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られるポリエステル系樹脂(A)であり、
ポリエステル系樹脂(A)が、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位及び芳香族多価アルコール由来の構造部位を含有してなることを特徴とするポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項11】
更に、可塑剤(D)を含有してなることを特徴とする請求項10記載のポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項12】
更に、無機酸化物(E)を含有して成ることを特徴とする請求項10または12記載のポリエステル系粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系粘着剤に関し、更に詳しくは、高い屈折率を有し、かつ、各種被着体、とりわけポリカーボネート材に対する粘着力に優れるポリエステル系粘着剤、更には、光学部材用粘着シート、並びにこれらを得るためのポリエステル系粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐久性、機械的強度に優れているため、フィルム、ペットボトル、繊維、トナー、電機部品、及び、接着剤や粘着剤など、幅広い用途で用いられている。
【0003】
また、近年では、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などの表示装置や、タッチパネル等の前記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになっており、これらの製造においては、光学フィルムや基材等の光学部材の貼り合わせに、透明な粘着シートが使用されている。
【0004】
更に、液晶表示装置の視認性を上げるために光拡散シートが用いられる。光拡散シートは透明な樹脂材料とフィラーとからなっており、樹脂材料とフィラーの屈折率差を利用して拡散性を発現させる。そして、液晶表示装置の光学用部材は粘着剤を使用して液晶表示装置に組み込まれるが、粘着剤層の屈折率は光拡散性のためにより高いことが望まれる。また、一般的に、光学フィルムの屈折率は粘着剤よりも高いため、その界面では反射が起こり、表示装置の光取出し性が低くなるという問題があり、かかる界面の屈折率差を少なくすることで、界面反射が低下することとなるため、光取出し効率の点でも、粘着剤の屈折率はより高いことが望まれている。
【0005】
上記のような光学用部材の貼り合わせには、アクリル系樹脂粘着剤が一般的に用いられるが、これでは、粘着剤層の屈折率が1.47前後であり、1.50を超えるような高屈折率を有していないものである。
そこで、特許文献1では、アクリル系樹脂粘着剤に代わり、ポリエステル系粘着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-25575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1開示の技術では、粘着剤組成物としてある程度の高屈折率を有するポリエステル系樹脂を含有するものであるが、光拡散フィルムの拡散効率や、光取出し効率の点から更なる高屈折率のポリエステル系樹脂が求められている。
【0008】
そこで、本発明ではこのような背景下において、被着体、とりわけポリカーボネート材への粘着力に優れるうえに、屈折率の高いポリエステル系粘着剤、更には光学部材用粘着シート、並びにこれらを得るためのポリエステル系粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル系樹脂を含有してなる粘着剤組成物からなる粘着剤において、これまで両立させることが困難であった高い粘着性と高い屈折率を併せ持つポリエステル系粘着剤を見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、ポリエステル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物[I]からなるポリエステル系粘着剤において、ポリエステル系樹脂(A)が多価カルボン酸類(A1)及び多価アルコール(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られるポリエステル系樹脂(A)であり、下記の粘着力(α)が10~200N/25mmで、かつ、屈折率が1.530~1.650であることを特徴とするポリエステル系粘着剤を第1の要旨とするものである。
粘着力(α):ポリエステル系粘着剤が基材上に形成され粘着シートとした際に、ポリカーボネート板の被着体に貼り付けて50℃、0.5MPaで20分間オートクレーブ処理した後、24時間後における被着体に対する剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)。


【0011】
更に、本発明は、前記ポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層を有する光学部材用粘着シートを第2の要旨とするものである。
【0012】
また、本発明は、ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)及び架橋剤(C)を含有してなり、ポリエステル系樹脂(A)が、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位及び芳香族多価アルコール由来の構造部位を含有してなるポリエステル系粘着剤組成物を第3の要旨とするものである。
【0014】
本発明において、ガラス転移温度の高いポリエステル系樹脂を粘着剤に応用するに際しては、出来るだけ芳香族等の剛直な構造を排除し、アルキル基由来成分の導入によって、ガラス転移温度を低下させ、軟質化させることが必要である。また、ガラス転移温度の微調整は、脂肪族系のジカルボン酸と芳香族系のジカルボン酸の調整で行うことが一般的であり、芳香族系のジオールの導入は躊躇されるものである。一方、屈折率を上げるためには、電子密度が高い構造、すなわち、芳香族環等を導入することが有効であるが、上述の通り芳香族環の導入は粘着剤への応用には適さないと考えられるところ、本発明では、ポリエステル系樹脂を構成する酸成分とアルコール成分を選択することにより、従来は、相反する性質であった高屈折率化と粘着性能を両立させたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリエステル系粘着剤は、被着体、とりわけポリカーボネート材への粘着力に優れるうえに、高い屈折率を有するものであり、更には光学部材用粘着シートとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
【0017】
本発明のポリエステル系粘着剤が、ポリエステル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物[I]からなるもの、即ち、かかる粘着剤組成物[I]が硬化されてなるものである。
そして、かかるポリエステル系粘着剤として、ポリエステル系樹脂(A)が多価カルボン酸類(A1)及び多価アルコール(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られるポリエステル系樹脂(A)であり、下記の測定における粘着力(α)が10~200N/25mmで、かつ、屈折率が1.530~1.650である。
粘着力(α):ポリエステル系粘着剤が基材上に形成され粘着シートとした際に、ポリカーボネート板の被着体に貼り付けて50℃、0.5MPaで20分間オートクレーブ処理した後、24時間後における被着体に対する剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)。

【0018】
上記粘着力(α)の測定においては、具体的には例えば、以下のようにして行うことができる。
【0019】
即ち、粘着剤組成物[I]を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥し、粘着剤組成物層(厚さ25μm)を形成し、次いで、得られた粘着剤組成物層表面を離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)で覆い、40℃で10日間エージング処理を行い、離型フィルム付き粘着シートを得、これを、離型フィルムを剥がして、ポリカーボネート板の被着体に、2kgローラーで2往復させ貼り付けて、50℃、0.5MPaで20分間オートクレーブ処理した後、24時間後において、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、粘着力(α)が求められる。
【0020】
本発明において、上記ポリエステル系粘着剤の粘着力(α)は、10N/25mm以上、好ましくは15N/25mm以上、特に好ましくは20N/25mm以上である。かかる粘着力(α)が上記範囲より小さすぎると密着性に劣ることで、接着信頼性が低下することとなる。なお、粘着力(α)の上限は200N/25mmであり、好ましくは100N/25mm、特に好ましくは80N/25mmである。

【0021】
また、本発明において、上記ポリエステル系粘着剤の屈折率は、1.530~1.650であり、好ましくは1.530~1.650、更に好ましくは1.540~1.640、特に好ましくは1.550~1.630で、殊に好ましくは1.560~1.620ある。かかる屈折率が上記範囲より小さすぎると本発明の効果が発揮されず、光学フィルムと積層した際に、界面反射が起こり、輝度が低下するなどの不具合が発生するおそれがある。なお、大きすぎると、光学フィルムの屈折率より高くなり、光学フィルムと積層した際に、界面反射が起こり、輝度が低下するなどの不具合が発生する傾向がある。

【0022】
本発明における屈折率とは、23℃におけるD線(589nm)に対する屈折率であり、アタゴ社製のアッベ屈折計DR-M4を用いて測定される。
【0023】
本発明のポリエステル系粘着剤において、上記粘着力及び屈折率を満足させるには、ポリエステル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物[I]を用いて粘着剤を形成することが好ましく、更に、粘着剤組成物[I]は、粘着力、耐久性の点から、下記のポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)及び架橋剤(C)を含有してなることが好ましく、初期密着性を上げる点から更に可塑剤(D)を含有してなることが好ましく、屈折率を向上させる点から更に無機酸化物(E)を含有してなることが好ましい。
以下、各成分について順次説明する。
【0024】
<ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、構成原料として、多価カルボン酸類(A1)及び多価アルコール(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られるものである。中でも、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位及び芳香族多価アルコール由来の構造部位を含有してなるものであることが粘着力と屈折率のバランスの点で好ましい。
【0025】
〔多価カルボン酸類(A1)〕
本発明で用いられる多価カルボン酸類(A1)としては、例えば、
マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸、またはこれらのカルボン酸類等の脂肪族ジカルボン酸類;
テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4,4′-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、またはこれらのカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸類;
等の二価カルボン酸類があげられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0026】
これらの中でも、タック感を付与する点から、脂肪族ジカルボン酸類を含むことが好ましく、特には炭素数が4~12の脂肪族ジカルボン酸類を含むことが好ましく、更にはセバシン酸類を含むことが好ましい。
【0027】
かかる脂肪族ジカルボン酸類の含有割合としては、多価カルボン酸類(A1)全体に対して、20モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは50~95モル%、更に好ましくは70~90モル%である。かかる含有割合が低すぎるとガラス転移温度が高くなり充分な粘着力が得られなくなる傾向がある。
【0028】
また、上記の中でも、凝集力を付与する点から、芳香族ジカルボン酸類を含ませることもでき、例えば、イソフタル酸類が挙げられる。
【0029】
かかる芳香族ジカルボン酸類の含有割合としては、多価カルボン酸類(A1)全体に対して、50モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは5~40モル%、更に好ましくは10~30モル%である。かかる含有割合が高すぎるとガラス転移温度が高くなり、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0030】
本発明においては、粘着物性のバランスの点から、多価カルボン酸類(A1)として、芳香族ジカルボン酸類及び脂肪族ジカルボン酸類を併用することもでき、含有比率(モル比)としては、芳香族ジカルボン酸類/脂肪族ジカルボン酸類=0/100~90/10であることが好ましく、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸類/脂肪族ジカルボン酸類=1/99~49/51、更に好ましくは芳香族ジカルボン酸類/脂肪族ジカルボン酸類=10/90~30/70である。
【0031】
[スルホン酸塩基含有ジカルボン酸類(A1-1)]
本発明においては、後述の無機酸化物(E)を入れる際に相溶性を向上させる点から、上記多価カルボン酸類(A1)として、スルホン酸塩基含有ジカルボン酸類(A1-1)を用いることが好ましい。このようなスルホン酸塩基含有ジカルボン酸類(A1-1)としては、二つのカルボキシル基とスルホン酸塩基を分子内に共に有するモノマー成分であれば特に限定されるものではなく、例えば、スルホン酸ナトリウムやスルホン酸カリウム等のスルホン酸アルカリ金属を含有するフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらのモノまたはジエステルが好ましく用いられる。これらのスルホン酸塩基含有ジカルボン酸類(A1-1)は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0032】
上記スルホン酸塩基含有ジカルボン酸類(A1-1)として、具体的には、例えば、4-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、4-スルホイソフタル酸ジメチルカリウム、5-スルホイソフタル酸ジメチルカリウム、2-スルホテレフタル酸ナトリウム、2-スルホテレフタル酸カリウム、2-スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム、2-スルホテレフタル酸ジメチルカリウム等、2-スルホテレフタル酸ジエチレングルコールナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムが好ましく用いられる。
【0033】
また、上記スルホン酸塩基含有ジカルボン酸類(A1-1)が、多価カルボン酸類(A1)中に占める割合は、多価カルボン酸類(A1)全体に対し、0.001~20モル%であることが好ましく、特に好ましくは0.01~10モル%、さらに好ましくは0.03~5モル%、殊に好ましくは0.05~2モル%である。上記スルホン酸塩基含有ジカルボン酸類(A1-1)が少なすぎると後述の無機酸化物(E)を入れた際の、無機酸化物(E)との相溶性が低下する傾向があり、ヘイズが大きくなる(透明性が低下する)傾向があり、多すぎると耐久性が低下する傾向がある。
【0034】
なお、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸類を用いることもでき、かかる三価以上のカルボン酸類としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸、またはこれらのカルボン酸類等があげられる。中でも比較的、ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸類を用いることが好ましい。
【0035】
かかる三価以上の多価カルボン酸類の含有割合としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸類(A1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0036】
〔多価アルコール(A2)〕
本発明で用いられる多価アルコール(A2)としては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;
4,4′-チオジフェノール、4,4′-メチレンジフェノール、ビスフェノールS,ビスフェノールA、ビスフェノールフルオレン、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール;
及びこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体;
等の芳香族ジオール;等の二価アルコールが挙げられる。
【0037】
更に、本発明においては、芳香族ジオールとして、下記一般式(1)で示されるフルオレン系ジオールを含有することが好ましい。
【0038】
【化1】
【0039】
式(1)中、R1は炭素数1~5のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。R2、R3、R4及びR5は水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6~10のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、o-キシリル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)で示されるフルオレン系ジオールにおいて、R1としては、好ましくはメチレン基、エチレン基が挙げられる。また、R2、R3、R4及びR5としては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基が挙げられ、特に水素原子が好ましい。そして、このフルオレン系化合物としては、入手し易さ等の観点から、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましく用いられる。フルオレン系化合物は1種または2種以上を用いることができる。
上記のこれら二価アルコールは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0042】
本発明においては、上記多価アルコール(A2)の中でも、高屈折率を発揮させることができる点から、芳香族ジオールを含むことが好ましく、さらには、1分子内に複数個の芳香族環を含むことが好ましく、特には粘着性を保ちながら、屈折率を上げる点から上記フルオレン系ジオールを含むことが好ましい。
【0043】
多価アルコール(A2)における芳香族ジオールの含有割合は、多価アルコール(A2)全体に対して10~100モル%であることが好ましく、特には15~80モル%、更には20~70モル%、殊には25~60モル%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、充分な屈折率が得られ難くなる傾向があり、高すぎると、粘着性能が低下する傾向がある。
【0044】
芳香族ジオールの含有割合は、ポリエステル系樹脂全体に対して、10重量%以上であることが好ましく、更には、15~85重量%、特には、20~65重量%、殊には25~60重量%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、充分な屈折率が得られ難くなる傾向があり、高すぎると、粘着性能が低下する傾向がある。
【0045】
更に、フルオレン系ジオールの含有割合は、多価アルコール(A2)全体に対して、10~90モル%であることが好ましく、特には15~80モル%、更には20~70モル%、殊には25~60モル%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、充分な屈折率が得られ難くなる傾向があり、高すぎると、粘着性能が低下する傾向がある。
【0046】
また、芳香族ジオール全体に対してフルオレン系ジオールの含有割合は、充分な屈折率が得られる点から50モル%以上、特には60モル%以上、更には70モル%以上、殊には90モル%以上であることが好ましい。中でも全てがフルオレン系ジオールであることが特に好ましい。
【0047】
更に本発明においては、上記多価アルコール(A2)の中でも、反応性に優れる点で、脂肪族ジオール、脂環族ジオールを含むことが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールであり、脂環族ジオールとしては、例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。柔軟性のバランスをとり、粘着性能を発現させる点から、脂肪族ジオールを含むことが特に好ましい。
【0048】
脂肪族ジオールの含有割合は、多価アルコール(A2)全体に対して、1~90モル%であることが好ましく、特には10~85モル%、更には20~80モル%、殊には30~75モル%であることが好ましい。かかる含有割合が低すぎると、粘着性能が低下する傾向があり、高すぎると、屈折率が下がる傾向がある。
【0049】
また、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で三価以上の多価アルコールを用いることもでき、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等があげられる。
【0050】
かかる三価以上の多価アルコールの含有割合としては、多価アルコール(A2)全体に対して、10モル%以下であることが好ましく、特には0.1~5モル%であることが好ましく、かかる含有割合が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
【0051】
多価カルボン酸類(A1)と多価アルコール(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸類(A1)1当量あたり、多価アルコール(A2)が1~2.5当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~2.0当量である。多価アルコール(A2)の含有割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0052】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸類(A1)と多価アルコール(A2)を任意に選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0053】
重縮合反応に際しては、まずエステル化反応が行われた後、縮合反応が行われる。
【0054】
かかるエステル化反応においては、触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒などの触媒や酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイドなどの触媒をあげることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと色相のバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましい。
【0055】
該触媒の配合量は、全共重合成分に対して1~10,000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5,000ppm、更に好ましくは20~3,000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
【0056】
エステル化反応時の反応温度については、160~280℃が好ましく、特に好ましくは180~250℃、更に好ましくは200~240℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧下である。
【0057】
上記エステル化反応が行われた後、縮合反応が行われる。
重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、特に好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。
かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
【0058】
かくして本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)が得られる。
かかるポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度は、粘着物性と屈折率のバランスの点から40℃以下であることが好ましく、特には30℃以下、更には20℃以下であることが好ましい。かかるガラス転移温度が高すぎると柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な粘着力が発揮しにくくなり、作業性が低下する傾向がある。なお、ガラス転移温度の下限は通常-40℃であり、好ましくは-30℃、更に好ましくは-20℃である。
【0059】
ここで、上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定される値である。
なお、測定温度範囲は-90℃から100℃で、温度上昇速度は、10℃/分である。
【0060】
また、上記ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量は、粘着剤の凝集力の点から8,000~200,000であることが好ましく、特には10,000~180,000、更には20,000~150,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向があり、大きすぎると柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な接着力を発揮しにくい傾向がある。
【0061】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)の2本直列を用いることにより測定されるものである。
【0062】
かかるポリスエテル系樹脂(A)の酸価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、特には3mgKOH/g以下、更には1mgKOH/g以下、殊には0.5mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が高すぎると、本ポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層の一方の面に、金属等の層が来た場合に腐食してしまう懸念がある。例えば、金属酸化物薄膜層となる構成とした際に、腐食が起こり、金属酸化物膜の導電性が低下する傾向がある。
【0063】
なお、上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、JIS K 0070に基づき中和滴定により求められるものである。
【0064】
また、本発明において、上記ポリエステル系樹脂(A)の単独での屈折率は、1.530以上であることが好ましい。
【0065】
<加水分解抑制剤(B)>
本発明におけるポリエステル系粘着剤組成物[I]は、前記ポリエステル系樹脂(A)と共に、加水分解抑制剤(B)を含有することが好ましい。かかる加水分解抑制剤(B)は、長期耐久性を担保させるために含有するものである。
【0066】
前記加水分解抑制剤(B)としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、前記ポリエステル系樹脂(A)のカルボン酸末端基と反応して結合する化合物があげられ、具体的には、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、等の官能基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でもカルボジイミド基含有化合物が、カルボキシル基末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
【0067】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のポリカルボジイミドを用いればよいが、より高温高湿下での耐久性を上げる点でカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物であることが好ましく、特には3個以上、更には5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。なお、30個以上含有すると分子構造が大きくなりすぎるために、好ましくない傾向がある。また、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成する高分子量ポリカルボジイミドを用いることも好ましい。
【0068】
このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
【0069】
かかるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上を併用することができる。このような高分子量ポリカルボジイミドは、合成してもよいし市販品を使用してもよい。
【0070】
カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられ、それらの中でも、カルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09は有機溶剤との相溶性に優れる点で好ましい。
【0071】
前記エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが好ましい。
【0072】
グリシジルエステル化合物の具体例としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどを挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0073】
グリシジルエーテル化合物の具体例としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテルなどが挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0074】
前記オキサゾリン化合物としては、ビスオキサゾリン化合物などが好ましい。具体的には、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4’-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-9,9’-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等を例示することができ、これらの中では、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)が、ポリエステルとの反応性の観点から最も好ましい。また、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0075】
これら加水分解抑制剤(B)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために数平均分子量は高いものを用いる方が好ましく、通常、300~10,000、好ましくは1,000~5,000のものを用いる。
【0076】
加水分解抑制剤(B)の中でも、カルボジイミド基含有化合物を使用することが好ましい。その際の、カルボジイミド当量は、好ましくは、50~10000、特には100~1000、さらには150~500であることが好ましい。なお、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド基1個あたりの化学式量を示す。
【0077】
前記加水分解抑制剤(B)の含有量は、前記ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、更に好ましくは0.2~3重量部である。かかる含有量が、多すぎるとポリエステル樹脂(A)との相溶性不良により濁りが発生する傾向があり、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向がある。
【0078】
また、前記加水分解抑制剤(B)の含有量は、前記ポリエステル系樹脂(A)の酸価に応じて、含有量を最適化させることが好ましく、粘着剤組成物[I]中のポリエステル系樹脂(A)の酸価の合計(a)に対する、粘着剤組成物中の加水分解抑制剤(B)の官能基量の合計(b)のモル比((b)/(a))が、0.5≦(b)/(a)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(b)/(a)≦1,000、更に好ましくは1.5≦(b)/(a)≦100である。
(a)に対する(b)の含有割合が高すぎると、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下する傾向があり、(a)に対する(b)の含有割合が低すぎると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。
【0079】
<架橋剤(C)>
本発明におけるポリエステル系粘着剤組成物[I]は、上記ポリエステル系樹脂(A)を含有するものであり、好ましくは更に加水分解抑制剤(B)を含むものであるが、通常は架橋剤(C)を含有することが好ましく、架橋剤(C)を含有させることにより、ポリエステル系樹脂(A)を架橋剤(C)で架橋させ凝集力に優れたものとなり、粘着剤としての性能を向上させる。
【0080】
かかる架橋剤(C)としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物など、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基および/またはカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物があげられる。これらの中でも初期粘着性と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特にポリイソシアネート系化合物を用いることが好ましい。
【0081】
かかるポリイソシアネート系化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、などのポリイソシアネートがあげられ、また、上記ポリイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体や、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体、イソシアヌレート体、等があげられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタムなどでイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤(C)は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0082】
かかる架橋剤(C)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基および/またはカルボキシル基の1当量に対して、架橋剤(C)に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤(C)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、更に好ましくは0.5~3当量である。
かかる架橋剤(C)に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると凝集力が低下し、充分な耐熱性が得られない傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下し、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な接着力を発揮できなくなる傾向がある。
【0083】
なお、架橋剤(C)を配合するときは、同時に触媒を含有することが好ましい。
かかる触媒としては、金属触媒、例えば、スズ系や鉛、ビスマス化合物または、鉄、銅、チタン、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン等の遷移金属化合物や、アセチルアセトナート錯体、非金属触媒として三級アミン化合物等が挙げられる。触媒活性の点から、有機スズ系、有機チタン、有機ジルコニウムが好ましい。
【0084】
<可塑剤(D)>
かくして、ポリエステル系樹脂(A)、好ましくは更に、加水分解抑制剤(B)、架橋剤(C)を含有する粘着剤組成物[I]が得られるが、本発明においては、更に可塑剤(D)を含有することが好ましい。かかる可塑剤(D)は、高屈折率化のために、樹脂のガラス転移温度が上がり過ぎた場合でも、粘着性を担保するために含有するものである。
【0085】
かかる可塑剤(D)としては、例えば、芳香族系多価カルボン酸のアルキルエステルや、脂肪族系多価カルボン酸のアルキルエステル等が挙げられる。中でも大きな屈折率の低下なしに、可塑効果を発現できる点で、芳香族系多価カルボン酸のアルキルエステルが好ましく、更に、三価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルが好ましい。
【0086】
かかる可塑剤(D)の含有量は、前記ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、2~30重量部であることが好ましく、特に好ましくは3~20重量部、更に好ましくは4~10重量部である。かかる含有量が、多すぎると可塑剤のブリードアウトによる粘着力の低下を招く傾向があり、少なすぎるとなじみ性の低下により粘着力が低下する傾向がある。
【0087】
<無機酸化物(E)>
本発明においては、更に無機酸化物(E)を含有することが好ましく、無機酸化物(E)は、比較的屈折率が高いため、粘着剤層の高屈折率化を図る目的で含有することが好ましい。更に、無機酸化物(E)の配合により、ポリエステル系粘着剤としての粘着力の向上も図ることができる。
【0088】
即ち、ポリエステル系樹脂(A)及び無機酸化物(E)を含有する粘着剤組成物からなるポリエステル系粘着剤において、下記の粘着力(β)が5N/25mm以上で、かつ、屈折率が1.530以上であるポリエステル系粘着剤とすることができる。
粘着力(β):ポリエステル系粘着剤が基材上に形成され粘着シートとした際に、ガラス板の被着体に貼り付けて23℃、50%RHで、30分間放置した後における被着体に対する剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)。
【0089】
なお、無機酸化物(E)を含有する場合には、さらに高屈折率化が可能であり、その屈折率は、1.530以上であるが、好ましくは、1.560以上、さらに好ましくは1.600以上、特に好ましくは1.620以上である。上限は、通常1.700であり、好ましくは1.680。さらに好ましくは1.660である。
【0090】
無機酸化物(E)としては、特に制限はないが、金属酸化物が好ましい。その中でも、金属酸化物と、その表面を修飾する、反応性官能基を有する有機物とを含む粒子、より具体的には、金属酸化物の粒子と当該粒子の表面を修飾する、反応性官能基を有する有機物とを含む被覆粒子(以下、反応性修飾金属酸化物粒子ともいう)が好ましい。反応性官能基は、金属酸化物と、水素結合等の相互作用を有した状態にあってもよいし、そのような状態になく別物質と相互作用できる状態にあってもよい。前記無機酸化物(E)は、微粒子状態である無機酸化物微粒子であることが好ましく、さらに無機酸化物微粒子の態様としては、たとえば、微粒子粉体、ペーストまたはゾルを挙げることができるが、好ましくはゾルである。
【0091】
金属酸化物としては、一般的に樹脂にフィラーとして使用される金属酸化物が好ましく用いられ、このような金属酸化物としては、たとえば、酸化ジルコニウム(ZrO2:ジルコニア)、酸化チタン(TiO2:チタニア)、酸化アルミニウム(Al23:アルミナ)、酸化鉄(Fe23、Fe34)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y23:イットリア)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化モリブデン(MoO3、MoO2)、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta25、TaO2)、酸化タングステン(WO3、WO2)、酸化鉛(PbO)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化セリウム(CeO2:セリア)、酸化アンチモン(Sb23、Sb25)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等が挙げられる。また、前記非金属酸化物としては一般的に樹脂にフィラーとして使用される酸化ケイ素(SiO2:シリカ)、あるいは酸化ホウ素(B23)等が挙げられる。これらの金属酸化物及び非金属酸化物は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。これらの中でも、高屈折率の粘着剤が得られやすい観点等から、酸化ジルコニウム(ZrO2:ジルコニア)や酸化チタン(TiO2:チタニア)が好ましい。
【0092】
反応性官能基を有する有機物における反応性官能基の例としては、水酸基、リン酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、イソシアネート基、酸ハライド、酸無水物、グリシジル基、クロロシラン基、及びアルコキシシラン基が挙げられる。反応性官能基を有する有機物としては特に、イソシアネート基を有する有機物が、金属酸化物と周囲の物質との安定性を向上させうるために好ましい。イソシアネート基を有する有機物の例としては、アクリロキシメチルイソシアネート、メタクリロキシメチルイソシアネート、アクリロキシエチルイソシアネート、メタクリロキシエチルイソシアネート、アクリロキシプロピルイソシアネート、メタクリロキシプロピルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられる。
【0093】
反応性修飾金属酸化物粒子において、反応性官能基を有する有機物の含有割合は、金属酸化物100重量部に対して1~40重量部であることが好ましい。
【0094】
反応性修飾金属酸化物粒子は、金属酸化物の粒子、反応性官能基を有する有機物、有機溶媒及び必要に応じて添加しうる任意の添加剤を、混合し、さらに得られた混合物に必要に応じて超音波処理等の処理を施すことにより、有機溶媒中に粒子が分散した懸濁液として得ることができる。
【0095】
有機溶媒の例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、iso-ブタノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類、ジメチルフォルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。有機溶剤としては、これらのうち1種類を単独でまたは2種類以上を混合して使用しうる。当該混合物に添加しうる任意の添加剤の例としては、金属キレート剤を挙げることができる。
【0096】
反応性修飾金属酸化物粒子を、有機溶媒中に粒子が分散した懸濁液として得る場合、溶媒の量などの条件を調整し、当該懸濁液中に、反応性修飾金属酸化物粒子が1~50重量%含まれるよう調整し、これをそのまま粘着剤組成物の製造に供することが、製造の簡便性等の観点から好ましい。
【0097】
前記混合物の調製に際し、ビーズミル等により、各成分を混合することが好ましい。かかる混合により、二次粒子又はそれ以上の高次粒子を一次粒子レベルに粉砕し、一次粒子の状態で表面を処理することができ、その結果均一な表面処理を行いうる。
【0098】
混合物に、必要に応じてさらに超音波処理を施すことができる。超音波処理は、超音波洗浄機、超音波ホモジナイザー、超音波分散機等の装置を用いて行いうる。かかる処理により、良好な懸濁液を得ることができる。
【0099】
反応性修飾金属酸化物粒子としては、市販の粒子をそのまま用いてもよい。当該市販の粒子は、溶媒及び添加剤等の成分を含むスラリーとして提供される場合もあるが、かかる成分をそのまま含んだスラリーの状態で、本発明の粘着剤組成物の材料として用いうる。金属酸化物としてZrO2を含む反応性修飾金属酸化物粒子のスラリーの例としては、商品名「NANON5 ZR-010」(株式会社ソーラー製、溶媒:メチルエチルケトン、粒子含有割合30%、表面を修飾する反応性官能基を有する有機物:重合性官能基を有するイソシアネート、体積平均粒子径15nm)を挙げることができる。金属酸化物としてTiO2を含む反応性修飾金属酸化物粒子のスラリーの例としては、商品名「NOD-742GTF」(ナガセケムテックス株式会社製、溶媒:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、粒子含有割合30%、体積平均粒子径48nm)を挙げることができる。
【0100】
前記無機酸化物(E)の体積平均粒子径は、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、一方、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは40nm以下であり、特に好ましくは30nm以下である。粒子径を前記数値範囲とすることにより、着色が少なく光透過率の高い粘着層を得ることができ、且つ、粒子の分散が容易となる。反応性修飾金属酸化物が凝集して二次粒子又はそれ以上の高次粒子を構成する場合、前記粒子径の範囲は、一次粒子径の範囲としうる。当該粒子径は、動的光散乱式粒度分布分析装置(日機装株式会社製 Nanotrac Wave-EX150)を用い、体積を粒子径基準にすることにより測定することができる。
【0101】
粘着剤組成物における、無機酸化物(E)の含有割合の下限は、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは10重量部以上であり、特に好ましくは40重量部以上であり、より好ましくは90重量部以上である。一方、無機酸化物(B)の含有割合の上限は、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、500重量部以下であり、好ましくは400重量部以下であり、より好ましくは300重量部以下である。無機酸化物(B)の含有量が少なすぎると所望の屈折率が得られない傾向があり、多すぎると粘着力が低下する傾向がある。
【0102】
本発明においては、上記のポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)、架橋剤(C)、可塑剤(D)、無機酸化物(E)の他にも、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の酸化防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤、等の添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状などの添加剤を配合することができる。
なお、上記粘着付与剤については、耐久性と透明性の点から実質的に含有しないことが好ましい。
【0103】
本発明のポリエステル系粘着剤は、上記粘着剤組成物[I]からなるもの、即ち、粘着剤組成物[I]が硬化されてなるものである。
本発明のポリエステル系粘着剤において、上記粘着力(α)が10N/25mm以上で、かつ、屈折率が1.530以上に調整するに際しては、例えば、(1)ポリエステル系樹脂(A)の原料組成において、多価カルボン酸類及び/又は多価アルコールの中でも、芳香族環を有する原料を多く配合する方法、(2)ポリエステル系樹脂(A)の原料組成において、多価カルボン酸類及び/又は多価アルコールの中でも、芳香族環を有する原料を多く配合し、ガラス転移温度が-20℃~40℃となったポリエステル系樹脂(A)に可塑剤を添加する方法、(3)ポリエステル系樹脂(A)に、高屈折率の無機酸化物(E)を添加する方法、(4)更にはそれら(1)~(3)の組み合わせ等が挙げられ、コストと屈折率と粘着性能のバランスがとりやすい点で(1)や(2)の方法が好ましく、特には(2)の方法が好ましい。
また、より屈折率を上げる方法としては、(2)と(3)を組み合わせる方法が好ましい。
【0104】
かかるポリエステル系粘着剤は、実質的に酸性基を含有していないことが好ましく、具体的には、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは5mgKOH/g以下、更に好ましくは1mgKOH/g以下、殊に好ましくは0.5mgKOH/g以下である。
なお、上記ポリエステル系粘着剤の酸価は、上記ポリスエテル系樹脂(A)の酸価と同様の方法で求めることができる。
【0105】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物[I]は、種々の部材の貼り合わせに用いることができるが、中でも、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘着剤として用いることが好ましく、かかるポリエステル系粘着剤組成物[I]からなるポリエステル系粘着剤の粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、上記粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0106】
かかる光学部材としては、ITO電極膜やポリチオフェン等の無機系や有機系導電膜等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム等が挙げられる。これらの中でも、光学部材が透明電極膜であるときに有効で、高い粘着力が得られる点で好ましく、特に好ましくはITO電極膜である。なお、ITO電極膜はガラスやPETなどの基材上に薄膜で形成されていることが多いが、本発明では、ITO電極膜がPET基材上に薄膜形成されているフィルムを使用することが特に好ましい。また、有機EL素子の面発光体の発光面に設けられる光取出フィルム用や、液晶ディスプレイの光拡散シートにも好適である。
【0107】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型シートを剥離して、粘着剤層と被着体を貼合する。かかる離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0108】
また、本発明のポリエステル系粘着剤は、支持基材の片面または両面に本発明の粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートとして用いることができ、特には、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘着シートとして好適である。また、透明性に優れ、構成する厚みに対しての粘着力が高い点で、支持基材を有しない基材レス両面粘着シートとすることも好ましい。なお、本発明において「シート」とは、「フィルム」や「テープ」をも含めた意味として記載するものである。
【0109】
<粘着シート>
粘着シートは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
かかる粘着シートの製造方法としては、公知一般の粘着シートの製造方法に従って製造することができ、例えば、基材シート上に、上記粘着剤組成物[I]を塗工、乾燥し、反対側の粘着剤層面に離型シートを貼合し、必要により養生することで基材上に本発明のポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層を有する本発明の粘着シートが得られる。
【0110】
また、離型シート上に、上記粘着剤組成物[I]を塗工、乾燥し、反対側の粘着剤層面に基材シートを貼合し、必要により養生することでも、本発明の粘着シートが得られる。
【0111】
また、離型シートに粘着剤層を形成し、反対側の粘着剤層面に離型シートを貼り合わせることにより、基材レス両面粘着シートを製造することができる。
得られた粘着シートや基材レス両面粘着シートは、使用時には、上記離型シートを粘着剤層から剥離して粘着剤層と被着体を貼合する。
【0112】
上記基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド;シクロオレフィンポリマー等の合成樹脂シート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙,硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材シートは、単層体として又は2種以上が積層された複層体として用いることができる。
【0113】
これらのなかでも特にポリエチレンテレフタレート、ポリイミドからなる基材シートが好ましく、特には粘着剤との密着性に優れる点でポリエチレンテレフタレートが好ましく、更には金属薄膜層を有したポリエチレンテレフタレートであることが、基材と粘着剤との粘着力に優れ、なおかつ金属薄膜層を腐食せずに基材を安定的に保つことができ、本発明のポリエステル系粘着剤の効果を顕著に発揮できる点で好ましい。
【0114】
なお、本発明においては、ITO電極膜がPET基材上に薄膜形成されているフィルムのPET側に粘着剤層を有し、粘着剤層を介してPET基材とポリカーボネート系フィルムが積層され、更にアクリル系フィルムが積層されてなる光学積層体とすることも好ましい(層構成:ITO電極膜/PET基材/粘着剤層/PC系フィルム/アクリル系フィルム)。
また、粘着剤層に隣り合う基材フィルムの屈折率が1.52~1.63であることが、本発明の粘着剤と貼合した際に、光取出し性が良い点で好ましい。
【0115】
上記離型シートとしては、例えば、上記基材で例示した各種合成樹脂シート、紙、布、不織布等に離型処理したものを使用することができる。離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0116】
上記基材の厚みとしては、例えば、1~1000μmであることが好ましく、特に好ましくは2~500μm、更に好ましくは3~300μmである。
【0117】
上記粘着剤組成物[I]の塗工方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等用いればよい。
【0118】
上記養生処理の条件としては、温度は通常室温~70℃、時間は通常1日~30日であり、具体的には、例えば23℃で1日~20日間、好ましくは、23℃で3~14日間、40℃で1日~10日間等の条件で行なえばよい。
【0119】
また、乾燥条件としては、乾燥温度は60~140℃が好ましく、特に好ましくは80~120℃であり、乾燥時間は0.5~30分間が好ましく、特に好ましくは2~5分間である。
【0120】
上記粘着シート、基材レス両面粘着シートの粘着剤層の厚みは、2~500μmであることが好ましく、特に好ましくは5~200μm、更に好ましくは10~100μmである。かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると、粘着力が低下する傾向があり、厚すぎると均一に塗工することが困難となるうえ、塗膜に気泡が入る等の不具合が発生しやすい傾向がある。なお、衝撃吸収性を考慮する際には、50μm以上とすることが好ましい。
【0121】
なお、上記粘着剤層の厚みは、ミツトヨ製「ID-C112B」を用いて、粘着シート全体の厚みの測定値から、粘着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求められる値である。
【0122】
上記粘着シートの粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から20%以上であることが好ましく、特に好ましくは30~90%、更に好ましくは40~70%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより耐久性が低下する傾向がある。なお、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する懸念がある。
【0123】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。
すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0124】
さらに、かかる粘着シートは、必要に応じて、粘着剤層の外側に離型シートを設け保護されていてもよい。また、粘着剤層が基材の片面に形成されている粘着シートでは、基材の粘着剤層とは反対側の面に剥離処理を施すことにより、該剥離処理面を利用して粘着剤層を保護することも可能である。
【実施例
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるポリエステル系樹脂の重量平均分子量、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。ポリエステル系樹脂の酸価については、ポリエステル系樹脂1gを7/3(重量比)(トルエン/メタノール)の混合溶媒30gに溶解し、JIS K0070に基づき中和滴定により測定した。
【0126】
<ポリエステル系樹脂(A)の製造>
以下の製造例で記載するモルとは、多価カルボン酸成分の合計量を1.0モルとした場合のモル比を示す。
【0127】
〔製造例1:ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)として、セバシン酸42.9部(1.0モル)、ポリオール成分(A2)として、ネオペンチルグリコール15.5部(0.7モル)、1,4-ブタンジオール13.4部(0.7モル)、およびトリメチロールプロパン0.4部(0.013モル)、ビスフェノキシエタノールフルオレン27.9部(0.3モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-1)の重量平均分子量は65,000、ガラス転移温度は-18℃、酸価は0.7mgKOH/g、屈折率は1.537であった。
また、出来上がり成分比は、多価カルボン酸成分としては、セバシン酸=100モル%、多価アルコール成分としては、ネオペンチルグリコール/1.4-ブタンジオール/トリメチロールプロパン/ビスフェノキシエタノールフルオレン=33.4モル%/36.5モル%/0.8モル%/29.3モル%であった。
【0128】
〔製造例2:ポリエステル系樹脂(A-2)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)として、セバシン酸40.1部(1.0モル)、ポリオール成分(A2)として、ネオペンチルグリコール12.4部(0.6モル)、1,4-ブタンジオール12.4部(0.7モル)、よびトリメチロールプロパン0.3部(0.013モル)、ビスフェノキシエタノールフルオレン34.7部(0.4モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-2)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-2)の重量平均分子量は36,000、ガラス転移温度は-4℃、酸価は1.0mgKOH/g、屈折率は1.553であった。
また、出来上がり成分比は、多価カルボン酸成分としては、セバシン酸=100モル%、多価アルコール成分としては、ネオペンチルグリコール/1.4-ブタンジオール/トリメチロールプロパン/ビスフェノキシエタノールフルオレン=26.3モル%/33.9モル%/0.8モル%/39.0モル%であった。
であった。
【0129】
〔製造例3:ポリエステル系樹脂(A-3)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)として、セバシン酸37.6部(1.0モル)、ポリオール成分(A2)として、ネオペンチルグリコール9.7部(0.5モル)、1,4-ブタンジオール11.7部(0.7モル)、およびトリメチロールプロパン0.3部(0.013モル)、ビスフェノキシエタノールフルオレン40.7部(0.5モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-3)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-3)の重量平均分子量は41,000、ガラス転移温度は14℃、酸価は1.2mgKOH/g、屈折率は1.566であった。
また、出来上がり成分比は、多価カルボン酸成分としては、セバシン酸=100モル%、多価アルコール成分としては、ネオペンチルグリコール/1.4-ブタンジオール/トリメチロールプロパン/ビスフェノキシエタノールフルオレン=19.6モル%/31.0モル%/0.7モル%/48.7モル%であった。
であった。
【0130】
〔製造例4:ポリエステル系樹脂(A-4)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)として、セバシン酸40.3部(0.95モル)、スルホニルイソフタル酸ジメチルナトリウム3.1部(0.05モル)、ポリオール成分(A2)として、ネオペンチルグリコール15.3部(0.7モル)、1,4-ブタンジオール13.2部(0.7モル)およびトリメチロールプロパン0.4部(0.013モル)、ビスフェノキシエタノールフルオレン27.6部(0.3モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-4)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-4)の重量平均分子量は46,000、ガラス転移温度は-27℃、酸価は1.0mgKOH/g、屈折率は1.537であった。
また、出来上がり成分比は、多価カルボン酸成分としては、セバシン酸/スルホニルイソフタル酸ナトリウム=95モル%/5モル%、多価アルコール成分としては、ネオペンチルグリコール/1.4-ブタンジオール/トリメチロールプロパン/ビスフェノキシエタノールフルオレン=33.4モル%/36.5モル%/0.8モル%/29.3モル%であった。
【0131】
〔製造例5:ポリエステル系樹脂(A-5)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)として、セバシン酸45.9部(0.8モル)、イソフタル酸7.1部(0.15モル)、スルホニルイソフタル酸ジメチルナトリウム4.2部(0.05モル)、ポリオール成分(A2)として、ネオペンチルグリコール26.6部(0.9モル)、1,4-ブタンジオール12.8部(0.5モル)、1.6-ヘキサンジオール2.9部(0.087モル)およびトリメチロールプロパン0.5部(0.013モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-5)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-5)の重量平均分子量は51,000、ガラス転移温度は-49℃、酸価は0.8mgKOH/g、屈折率は1.489であった。
また、出来上がり成分比は、多価カルボン酸成分としては、セバシン酸/イソフタル酸/スルホニルイソフタル酸ナトリウム=80モル%/15モル%/5モル%、多価アルコール成分としては、ネオペンチルグリコール/1.4-ブタンジオール/1.6-ヘキサンジオール/トリメチロールプロパン=58.7モル%/34.1モル%/6.2モル%/1.0モル%であった。
【0132】
〔製造例6:ポリエステル系樹脂(A’-1)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)として、イソフタル酸9.6部(0.2モル)およびセバシン酸46.8部(0.8モル)、ポリオール成分(A2)として、ネオペンチルグリコール27.1部(0.9モル)、1,4-ブタンジオール13.0部(0.5モル)、1,6-ヘキサンジオール3.0部(0.09モル)およびトリメチロールプロパン0.5部(0.013モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A’-1)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A’-1)の重量平均分子量は70,000、ガラス転移温度は-50℃、酸価は0.4mgKOH/g、屈折率は1.486であった。
また、出来上がり組成は多価カルボン酸成分としては、セバシン酸/イソフタル酸=80モル%/20モル%、多価アルコール成分としては、ネオペンチルグリコール/1.4-ブタンジオール/1.6-ヘキサンジオール/トリメチロールプロパン=54.8モル%/38.4モル%/0.9モル%/5.9モル%であった。
であった。
【0133】
〔製造例7:ポリエステル系樹脂(A’-2)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)として、ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル(NDCM)22.9部(0.64モル)、ポリオール成分(A2)として、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)65.8部(1.0モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。続いて、200℃に冷却した後、カルボン酸無水物として、無水ピロメリット酸(PMAn)11.3部(0.36モル)を仕込み、溶解しながら170℃で2時間反応を行なうことにより、ポリエステル系樹脂(A’-2)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A’-2)の重量平均分子量は2000、ガラス転移温度は173℃、酸価は32mgKOH/g、屈折率は1.652であった。
【0134】
<加水分解抑制剤(B)>
加水分解抑制剤(B)として以下のものを用意した。
(B-1)カルボジイミド基含有加水分解抑制剤(日清紡ケミカル社製;商品名「カルボジライトV-07」)
【0135】
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)として以下のものを用意した。
(C-1)トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業(株)製;製品名「コロネートL55E」)
【0136】
<可塑剤(D)>
可塑剤(D)として以下のものを用意した。
(D-1)トリメリット酸トリオクチル(TOTM)
(D-2)フタル酸ジオクチル(DOP)
【0137】
<無機酸化物(E)>
無機酸化物(E)として以下のものを用意した。
(E-1)AX-ZP‐158-A(株式会社日本触媒製酸化ジルコニウム分散液)
(E-2)NANON5 ZR-010(株式会社ソーラー製酸化ジルコニウム分散液)
(E-3)ZIRCOSTAR ZP-153(株式会社日本触媒製酸化ジルコニウム分散液)
【0138】
<触媒>
触媒として以下のものを用意した。
・ジブチルチンジラウリレート(DBTL)
【0139】
<酸化防止剤>
酸化防止剤として以下のものを用意した。
・ヒンダートフェノール系酸化防止剤/イルガノックス1010(BASF製)
【0140】
(実施例1~14、比較例1~3)
上記で得られたポリエステル系樹脂を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂溶液200部(固形分100部)に対し、表1に示す通りに各成分を配合し、撹拌、混合することにより、ポリエステル系粘着剤組成物を得た。
得られたポリエステル系粘着剤組成物を用いて、以下の通り評価を行った。
【0141】
<離型フィルム付き粘着シートの製造>
実施例1~14、比較例1~3で得られたポリエステル系粘着剤組成物をそれぞれ厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥し、粘着剤組成物層(厚さ25μm)を形成し、次いで、得られた粘着剤組成物層表面を離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)で覆い、40℃で10日間エージング処理を行い、離型フィルム付き粘着シートを得た。
【0142】
かかる離型フィルム付き粘着シートを用いて、下記の通り、ゲル分率、粘着力、光学性能(屈折率、透明性)を評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0143】
[ゲル分率(%)]
上記で得られた離型フィルム付き粘着シートの離型フィルムを剥がして、200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率として求めた。ただし、基材の重量は差し引いておいた。
【0144】
[粘着力(N/25mm)]
上記で得られた離型フィルム付き粘着シートの離型フィルムを剥がして、ポリカーボネート板の被着体に、2kgローラーで2往復させ貼り付けて、50℃、0.5MPaで20分オートクレーブ処理した後、24時間後において、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、粘着力を求めた。粘着力の測定には、オートグラフ(島津製作所製「オートグラフAGS-H 500N」)を用いた。粘着力の評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○:20N/25mm以上
×:20N/25mm未満
【0145】
[屈折率]
上記で得られた離型フィルム付き粘着シートを23℃で3時間放置し、その離型フィルムを剥がして、粘着層側を、アタゴ社製のアッベ屈折系DR-M4を用いてD線(589nm)の屈折率を測定した。
【0146】
[透明性]
上記で得られた離型フィルム付き粘着シートの透明性を目視で観察した。
○・・・透明
△・・・やや濁りあり
×・・・濁りあり
【0147】
【表1】
【0148】
上記の結果より、実施例1~14においては、粘着力に優れるうえに屈折率の非常に高い粘着剤が得られているのに対して、比較例1及び2は屈折率の低いものであり、比較例3はガラス転移点が高すぎるために、屈折率は高いものの、粘着特性が得られず、屈折率と粘着力の両方を満足するものではなかった。
【0149】
上記実施例10~14においては、下記の通り、初期粘着力も評価した。結果を表2に示す。
【0150】
[初期粘着力(N/25mm)]
上記で得られた離型フィルム付き粘着シートの離型フィルムを剥がして、ガラス板の被着体に、23℃50%R.H.の環境下で、2kgローラーで2往復させ貼り付け30分後において、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、粘着力を求めた。粘着力の測定には、オートグラフ(島津製作所製「オートグラフAGS-H 500N」)を用いた。粘着力の評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○:5N/25mm以上
△:0.5N/25mm以上、5N/25mm未満
×:0.1N/25mm未満
【0151】
【表2】
【0152】
上記の結果より、実施例10~14においては、無機酸化物の配合により、屈折率の向上に加え、初期接着力についても良好な結果となるものであった。
【0153】
(参考例1~6)
上記で得られたポリエステル系樹脂を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂溶液200部(固形分100部)に対し、表3に示す通りに無機酸化物を配合し、撹拌、混合することにより、ポリエステル系樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル系樹脂組成物を用いて、下記の通り、屈折率及び透明性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0154】
[屈折率]
上記で得られたポリエステル系樹脂組成物を、アタゴ社製のアッベ屈折系DR-M4を用いてD線(589nm)の屈折率を測定した。
【0155】
[透明性]
上記で得られたポリエステル系樹脂組成物の透明性を目視で観察した。
○・・・透明
△・・・やや濁りあり
×・・・濁りあり
【0156】
【表3】
【0157】
上記の結果より、参考例1~5においては、無機酸化物を配合するに当たり、ポリエステル系樹脂の共重合成分として、スルホン酸塩基含有ジカルボン酸類を含有させることにより、屈折率に加え相溶性も良好であり、透明性に優れるものであった。参考例6は、無機酸化物の配合により屈折率は良好であったが、共重合成分としてスルホン酸塩基含有ジカルボン酸類を含有していないため、透明性が少し劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明のポリエステル系粘着剤は、電子部品用の粘着剤、光学部材貼り合せ用の粘着剤、軟質塩化ビニル用の粘着剤などとして用いることができる。特に、本発明のポリエステル系粘着剤は、被着体、とりわけポリカーボネート材への粘着力に優れるうえに、屈折率の高いものであるため、光学部材の貼り合せ用途に好適に用いることができる。