(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】トナー、トナー収容ユニット、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20220830BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 346
G03G9/097 351
G03G9/097 375
G03G9/097 371
(21)【出願番号】P 2018134712
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】平井 優
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】朱 氷
(72)【発明者】
【氏名】柿本 眞行
(72)【発明者】
【氏名】関口 良隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔太
(72)【発明者】
【氏名】花谷 愼也
(72)【発明者】
【氏名】荻野 弘太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 康敬
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-095430(JP,A)
【文献】特開平06-295095(JP,A)
【文献】特開平08-006296(JP,A)
【文献】特開平07-114218(JP,A)
【文献】特開平11-184145(JP,A)
【文献】特開2012-145918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂、含金属アゾ染料、及び4級アンモニウム塩を含むトナーの製造方法であって、
前記トナーの平均円形度が、0.85~0.95であり、
前記ポリエステル樹脂は、触媒を用いて、アルコールとカルボン酸との重縮合反応により合成したポリエステル樹脂であり、
前記触媒が2-エチルヘキサン酸スズ(II)又はチタンイソプロピレートトリエタノールアミネートを含み、
前記トナーが、Sn-C結合を有するスズ化合物を含まないことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記トナーが、更にシリカを含み、
前記シリカが、シリコーンオイルを含有し、
前記シリカのメジアン径が、10nm以上80nm以下である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記カルボン酸が無水トリメリット酸を含む請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナー収容ユニット、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを利用した複合機(MFP)及びプリンターなどの画像形成装置は、オフィスなど様々な場所で広く利用されている。前記トナーには、使用される機会が広がるにつれ、例えば、低環境負荷であること、前記画像形成装置の小型化に伴うトナーの高機能化、感光体(OPC)への汚染軽減など様々な要求がなされている。
【0003】
トナーに含有される結着樹脂の製造に用いられる触媒として、触媒活性のみならず、帯電性等のトナー性能に与える影響を考慮し、各種スズ化合物やチタン化合物が検討されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。触媒種の違いによるトナー品質への影響は大きく、例えば、トナー製造時に使用する帯電制御剤により、積極的にトナーの帯電性をコントロールすることが提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。更に、正負の帯電制御剤を同時に使用することで、より適した帯電特性を付与する技術も提案されている(例えば、特許文献6)。
【0004】
さらに、昨今、出力画像のカラー化が進み、画像の高画質化、及び画像品質の安定化に対する要求は、これまでにも増して強くなっている。このため、前記トナーには、環境への配慮に加え、画像品質などを向上させることも求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低環境負荷であり、帯電立ち上がりが良好であり、感光体に付着することなく、画像品質に優れたトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明のトナーの製造方法は、ポリエステル樹脂、含金属アゾ染料、及び4級アンモニウム塩を含むトナーの製造方法であって、
前記トナーの平均円形度が、0.85~0.95であり、前記ポリエステル樹脂は、触媒を用いて、アルコールとカルボン酸との重縮合反応により合成したポリエステル樹脂であり、前記触媒が2-エチルヘキサン酸スズ(II)又はチタンイソプロピレートトリエタノールアミネートを含み、前記トナーが、Sn-C結合を有するスズ化合物を含まないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、低環境負荷であり、帯電立ち上がりが良好であり、感光体に付着することなく、画像品質に優れたトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(トナー)
本発明のトナーは、結着樹脂、含金属アゾ染料、及び4級アンモニウム塩を含有し、シリカ、及びシリコーンオイルを含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
また、本発明のトナーは、Sn-C結合を有するスズ化合物を含有しない。
【0010】
低環境負荷であるトナーには種々の定義があるが、本発明において、低環境負荷とは、Sn-C結合を有するスズ化合物に代表される有機Sn触媒を使用しないことを指す。即ち、Sn-C結合を有するスズ化合物(有機Sn触媒)を使用せずに合成した結着樹脂を用いることを指す。
【0011】
<結着樹脂>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低温定着性及び環境安全性(残モノマーによるVOC)の点から、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0012】
<<ポリエステル樹脂>>
前記ポリエステル樹脂は、一般公知のアルコールとカルボン酸との重縮合反応によって得られ、一般的に、前記重縮合反応においては、触媒を用いる。
前記触媒としては、Sn-C結合を含むスズ化合物(有機スズ化合物)が古くから公知であり、よく用いられてきた。前記有機スズ化合物とは、4価のスズ原子に少なくとも1つの炭素原子を有する官能基の炭素原子が結合している構造の化合物である。しかし、前記有機スズ化合物は、環境面の問題から近年使用が困難になっている。
そこで、本発明においては、Sn-C結合を含まないスズ化合物を触媒として用いた結着樹脂を使用する。Sn-C結合を含まないスズ化合物(以下、「Sn-C結合を含まないスズ触媒」とも称する)、チタン触媒を用いた結着樹脂を用いることで、トナー中にはSn-C結合を有するスズ化合物が含まれない。
【0013】
前記Sn-C結合を含まないスズ触媒としては、例えば、Sn-O結合を有するスズ(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有するスズ(II)化合物、Sn-C結合を含まないチタン触媒などが挙げられる。これらの中でも、Sn-O結合を有するスズ(II)化合物が好ましい。
前記Sn-O結合を有するスズ(II)化合物としては、例えば、炭素数2~28のカルボキシ基を有するカルボン酸スズ(II)、炭素数2~28のアルコキシ基を有するアルコキシスズ(II)、酸化スズ(II)、硫酸スズ(II)などが挙げられる。
前記炭素数2~28のカルボキシ基を有するカルボン酸スズ(II)としては、例えば、シュウ酸スズ(II)、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、2-エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、オレイン酸スズ(II)などが挙げられる。
前記炭素数2~28のアルコキシ基を有するアルコキシスズ(II)としては、例えば、オクチロキシスズ(II)、ラウロキシスズ(II)、ステアロキシスズ(II)、オレイロキシスズ(II)などが挙げられる。
前記Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有するスズ(II)化合物(ハロゲン化スズ(II))としては、例えば、塩化スズ(II)、臭化スズ(II)などが挙げられる。
これらの中でも、帯電立ち上がり及び触媒能の点から、(R3COO)2Sn(ここでR3は、炭素数5~19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるカルボン酸スズ(II)、(R4O)2Sn(ここでR4は炭素数6~20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシスズ(II)、及び酸化スズ(II)が好ましく、(R3COO)2Snで表される脂肪酸スズ(II)及び酸化スズ(II)がより好ましく、オクタン酸スズ(II)、2-エチルヘキサン酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、及び酸化スズ(II)がさらに好ましく、2-エチルヘキサン酸スズ(II)が特に好ましい。
【0014】
前記Sn-C結合を含まないチタン触媒としては、例えば、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C3H7O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4H10O2N)2(C3H7O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C5H11O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C2H5O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(OHC8H16O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C18H37O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6H14ON)(C3H7O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6H14O3N)3(C3H7O)〕などが挙げられる。
これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手できる。
他の好ましいチタン触媒の具体例としては、テトラ-n-ブチルチタネート〔Ti(C4H9O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C3H7O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C18H37O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C14H29O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)2(OHC8H16O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C14H29O)2(C8H17O)2〕などが挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましい。
これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることができ、又は、ニッソー社等の市販品としても入手できる。
【0015】
前記ポリエステル樹脂としては、一般公知のアルコールとカルボン酸との重縮合反応によって得られるもの全てを用いることができる。
前記アルコールとしては、例えば、ジオール類、エーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価のアルコール単量体、三価以上の高アルコール単量体などが挙げられる。
前記ジオール類としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどが挙げられる。
前記エーテル化ビスフェノール類としては、例えば、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどが挙げられる。
前記三価以上の高アルコール単量体としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-サルビタン、ペンタエスリトールジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記カルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、二価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体、三価以上の多価カルボン酸単量体などが挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
前記二価の有機酸単量体としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換したものなどが挙げられる。
前記三価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸、これらの酸の無水物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
<含金属アゾ染料>
前記含金属アゾ染料は、トナーにおいて、負帯電制御剤として作用する。
前記含金属アゾ染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄アゾ錯体、クロムアゾ錯体、コバルトアゾ錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、帯電安定性の点から、鉄アゾ錯体が好ましい。
【0018】
前記含金属アゾ染料の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部~5質量部が好ましく、1.0質量部~3質量部がより好ましい。前記含有量が、0.5質量部~5質量部であると、良好な帯電立ち上がり性を付与できる点で有利である。
【0019】
<4級アンモニウム塩>
前記4級アンモニウム塩は、トナーにおいて、正帯電制御剤として作用する。
前記4級アンモニウム塩は、トナーに通常用いられる成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0020】
前記4級アンモニウム塩の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部~3質量部が好ましく、0.5質量部~2質量部がより好ましい。前記含有量が、0.1質量部~3質量部であると、経時でトナー帯電が上昇しすぎるという不具合を防止できる点で有利である。
【0021】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、通常のトナーに用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、外添剤などが挙げられる。
【0022】
<<着色剤>>
着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色のトナーを得ることが可能な公知の顔料や染料が使用できる。以下に、それらの例を示す。
黄色顔料としては、例えば、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどが挙げられる。
橙色顔料としては、例えば、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKなどが挙げられる。
赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが挙げられる。
紫色顔料としては、例えば、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色顔料としては、例えば、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCなどが挙げられる。
緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキなどが挙げられる。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの着色剤の含有量は、トナーの結着樹脂成分に対して、1質量%~30質量%が好ましく、3質量%~20質量%がより好ましい。
【0023】
<<離型剤>>
離型剤としては、公知の離型剤の中から、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックス;フィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス;蜜ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類;ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、その金属塩及びアミド;合成エステルワックス;並びにこれらの各種変性ワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部~8質量部が好ましい。離型剤の含有量が1質量部~8質量部であることで、以下の不具合を防止できる。
・トナー中に含有される離型剤量が少ないために、定着工程において十分な離型効果を得ることができない不具合
・トナー中に含有される離型剤量が多くなるために、トナーの耐熱保存性の低下や感光体上でのフィルミング発生を招く不具合
【0025】
<<外添剤>>
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、潤滑剤、無機粒子などが挙げられる。
前記無機粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、フッ素化合物、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお2種以上を併用する場合は、空転等の現像ストレスに対して耐性を持たせるように選択することが好ましい。
これらの中でも、シリカが好ましい。
【0026】
前記シリカのメジアン径としては、10nm以上80nm以下が好ましい。メジアン径が、10nm~80nmの範囲であると、以下の不具合を防止できる。
・クリーニングブレードからすり抜けてしまい、感光体へのシリカ付着の原因となる不具合
・感光体に傷をつけるため不具合
【0027】
前記無機粒子は、表面を疎水化処理することが、トナーの帯電量の調整などの点から、好ましい。
前記無機粒子の疎水化方法としては、無機粒子と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理する方法などが挙げられる。
前記シリコーンオイルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、又はメチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが挙げられる。
シリコーンオイル処理の方法は、例えば、シリカ粒子とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて直接混合してもよいし、原体シリカ粒子へシリコーンオイルを噴霧しながら撹拌する方法によってもよい。あるいは適当な溶剤(好ましくは有機酸などでpH4に調整)にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、原体シリカ粒子と混合した後、溶剤を除去して作製してもよい。また、原体シリカ粒子を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながらアルコール水を添加し、シリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する方法をとってもよい。
なお、無機粒子をシリコーンオイルで処理することにより、シリコーンオイルを含む無機粒子が得られる。例えば、シリカをシリコーンオイルで処理すると、シリコーンオイルを含有するシリカが得られる。
【0028】
<<潤滑剤>>
潤滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸金属塩類が挙げられる。前記脂肪酸金属塩類としては、例えば、オレイン酸鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸銅、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、リノレイン酸亜鉛などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
潤滑剤は、結着樹脂、着色剤などを含む組成物を溶融混練、粉砕により粒子状に形成した後に、外添することができる。
【0029】
<トナーの特性>
本発明のトナーの平均円形度としては、0.85~0.95である。トナーの平均円形度が、0.95より高いと、感光体に付着した際のクリーニング性が低下することがある。また、トナーの平均円形度が0.85より低いと、転写不良が発生し、画像品質低下の原因となることがある。
【0030】
<<トナーの平均円形度の測定方法>>
前記平均円形度の測定には、例えば、株式会社SYSMEX製フロー式粒子像分析装置FPIA-3000を用いる。
平均円形度の測定は、具体的には、容器中の不純固形物を予め除去した水100mL~150mL中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩)を0.1mL~0.5mL加える。更に、測定試料を0.1g~0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液を超音波分散器で約1分間~3分間分散処理をして、分散液濃度を3,000個/μL~10,000個/μLとして前述の装置によって平均円形度を測定する。円形度は、「円形度=(投影面積と等しい円の周囲長)/(投影像の周囲長)」という数式で求める。
【0031】
<トナーの製造方法>
本発明のトナーは、結着樹脂、含金属アゾ染料、4級アンモニウム塩などを含むトナー母体粒子を製造し、必要に応じて外添剤を外添することにより得ることができる。
前記トナー母体粒子は、例えば、粉砕法、重合法(懸濁重合、乳化重合、分散重合、乳化凝集、乳化会合等)等の各種製造方法により得ることができる。
【0032】
次いで、トナー母体粒子へ無機粒子の外添が行われる。トナー母体粒子と無機粒子とをミキサー類を用い混合・攪拌することにより、外添剤である前記無機粒子は解砕されながらトナー母体粒子表面に被覆される。
使用できる混合装置としては、粉体を混合できる限り特に制限はなく、公知の装置を用いることができ、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、Qミキサーなどが挙げられる。これらの混合装置は、ジャケット等を装備して内部の温度を調節できるものが好ましい。
無機粒子のトナー母体表面への付着強度は混合装置の回転羽の周速を変更したり、混合・攪拌時間を変更することにより、制御できる。また、混合装置内へ熱を付与しながら無機粒子を外添すると、表面が軟化し、無機粒子をトナー母体表面へ埋め込ませることができるため、トナー母体表面への付着強度を制御できる。
【0033】
<現像剤>
本発明の現像剤は、少なくとも前記トナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。
このため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。なお、現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0034】
前記キャリアとしては、目的に応じて適宜選択でき、例えば、磁性キャリア、樹脂キャリアが挙げられる。
前記磁性キャリアは、磁性体微粒子が好ましい。前記磁性体微粒子としては、例えば、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト;鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト;バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト;表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子などが挙げられる。これらの中でも、特に高磁化を要する場合は鉄等の強磁性微粒子が好ましい。
前記キャリアの形状としては、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。また、化学的な安定性を考慮するとマグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトを用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を選択する事により所望の磁化を有する樹脂キャリアを使用することもできる。このときのキャリアの磁気特性は1,000エルステッドにおける磁化の強さは30emu/g~150emu/gが好ましい。
このような樹脂キャリアは、磁性体微粒子と絶縁性バインダー樹脂との溶融混練物をスプレードライヤーで噴霧して製造することができる。具体的には、磁性体微粒子の存在下に水性媒体中でモノマーないしプレポリマーを反応、硬化させることで、縮合型バインダー中に磁性体微粒子が分散された樹脂キャリアを製造できる。
磁性キャリアの表面には正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を固着させたり、樹脂をコーティングして帯電性を制御できる。
表面のコート材としてはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂が用いられ、さらに正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を含んでコーティングすることができるが、シリコーン樹脂及びアクリル樹脂が好ましい。
本発明の電子写真用トナーと磁性キャリアとの混合比はトナー濃度として2質量%~10質量%が好ましい。
【0035】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えば、トナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジが挙げられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも静電潜像担持体(像担持体、感光体ともいう)と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
本発明のトナー収容ユニットを、画像形成装置に装着して画像形成することで、低環境負荷であり、帯電立ち上がりが良好であり、感光体に付着することなく、画像品質に優れた前記トナーの特徴を活かし、長期的な画像安定性を有し、かつ高品質・高精細な画像を形成することができる。
【0036】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、を少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明に関する画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像手段により好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
本発明の画像形成装置は、より好ましくは、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段とを含む。
また、本発明の画像形成方法は、より好ましくは、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程とを含む。
前記現像手段、及び前記現像工程において、前記トナーが使用される。好ましくは、前記トナーを含有し、更に必要に応じて、キャリアなどのその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、前記トナー像を形成するとよい。
【0037】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体(以下、「感光体」とも称する)の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体;ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。
【0038】
<静電潜像形成手段>
前記静電潜像形成手段としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
【0039】
<現像手段>
前記現像手段としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像してトナー像(可視像)を形成する、トナーを備える現像手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
<その他の手段>
前記その他の手段としては、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
【0041】
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、その画像形成装置の一例の概略構成図である。像担持体としての感光体ドラム(以下、感光体という)110の回りには、帯電装置としての帯電ローラ120、露光装置130、クリーニングブレードを有するクリーニング装置160、除電装置としての除電ランプ170、現像装置140、中間転写体としての中間転写体150とが配設されている。中間転写体150は、複数の懸架ローラ151によって懸架され、図示しないモータ等の駆動手段により矢印方向に無端状に走行するように構成されている。この懸架ローラ151の一部は、中間転写体へ転写バイアスを供給する転写バイアスローラとしての役目を兼ねており、図示しない電源から所定の転写バイアス電圧が印加される。また、中間転写体150のクリーニングブレードを有するクリーニング装置190も配設されている。また、中間転写体150に対向し、最終転写材としての転写紙1100に現像像を転写するための転写手段として転写ローラ180が配設され、転写ローラ180は、図示しない電源装置により転写バイアスを供給される。そして、中間転写体150の周りには、電荷付与手段としてのコロナ帯電器152が設けられている。
【0042】
現像装置140は、現像剤担持体としての現像ベルト141と、現像ベルト141の回りに併設した黒(以下、Bkという)現像ユニット145K、イエロー(以下、Yという)現像ユニット145Y、マゼンタ(以下、マゼンタという)現像ユニット145M、シアン(以下、Cという)現像ユニット145Cとから構成されている。 また、現像ベルト141は、複数のベルトローラに張り渡され、図示しないモータ等の駆動手段により矢印方向に無端状に走行するように構成され、上記感光体110との接触部では感光体110とほぼ同速で移動する。
各現像ユニットの構成は共通であるので、以下の説明はBk現像ユニット45Kについてのみ行ない、他の現像ユニット145Y、145M、145Cについては、図中でBk現像ユニット145Kにおけるものと対応する部分に、該ユニットにおけるものに付した番号の後にY、M、Cを付すに止め説明は省略する。Bk現像ユニット145Kは、トナー粒子とキャリア液成分とを含む、高粘度、高濃度の液体現像剤を収容する現像タンク142Kと、下部を現像タンク142K内の液体現像剤に浸漬するように配設された汲み上げローラ143Kと、汲み上げローラ143Kから汲み上げられた現像剤を薄層化して現像ベルト141に塗布する塗布ローラ144Kとから構成されている。塗布ローラ144Kは、導電性を有しており、図示しない電源から所定のバイアスが印加される。
【0043】
続いて、本実施形態に係る画像形成装置の動作について説明する。
図1において、感光体110を矢印方向に回転駆動しながら帯電ローラ120により一様帯電した後、露光装置130により図示しない光学系で原稿からの反射光を結像投影して感光体110上に静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像装置140により現像され、顕像としてのトナー像が形成される。現像ベルト141上の現像剤層は、現像領域において感光体との接触により薄層の状態で現像ベルト141から剥離し、感光体110上の潜像の形成されている部分に移行する。この現像装置140により現像されたトナー像は、感光体110と等速移動している中間転写体150との当接部(一次転写領域)にて中間転写体150の表面に転写される(一次転写)。3色又は4色を重ね合わせる転写を行う場合は、この工程を各色ごとに繰り返し、中間転写体150にカラー画像を形成する。
中間転写体上の重ね合せトナー像に電荷を付与するためのコロナ帯電器152を、中間転写体150の回転方向において、感光体110と中間転写体150との接触対向部の下流側で、かつ中間転写体150と転写紙1100との接触対向部の上流側の位置に設置する。そして、コロナ帯電器152が、該トナー像に対して、該トナー像を形成するトナー粒子の帯電極性と同極性の真電荷を付与し、転写紙1100へ良好な転写がなされるに十分な電荷をトナー像に与える。上記トナー像は、コロナ帯電器152により帯電された後、転写ローラ180からの転写バイアスにより、図示しない給紙部から矢印方向に搬送された転写紙1100上に一括転写される(二次転写)。この後、トナー像が転写された転写紙1100は、図示しない分離装置により感光体110から分離され、図示しない定着装置で定着処理がなされた後に装置から排紙される。一方、転写後の感光体110は、クリーニング装置160によって未転写トナーが回収除去され、次の帯電に備えて除電ランプ170により残留電荷が除電される。カラー画像は通常4色の着色トナーで形成される。1枚のカラー画像には、1層から4層までのトナー層が形成されている。トナー層は1次転写(感光体から中間転写ベルトへの転写)や、2次転写(中間転写ベルトからシートへの転写)を通過する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。ただし、「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表す。
【0045】
<ポリエステル樹脂1の合成>
ポリエステル樹脂1を表1に示す原料に基づき合成した。
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに原料を入れた後、窒素雰囲気下、235℃で酸価が4.5mgKOH/gに達するまで縮重合反応させた後、さらに8kPaにて軟化点が131℃に達するまで反応させて、ポリエステル樹脂1を得た。
酸価が4.5mgKOH/gに達するまで要した反応時間は21hrであった。
【0046】
<ポリエステル樹脂2の合成>
ポリエステル樹脂2を表1に示す原料に基づき合成した。
アルコール成分を四つ口フラスコに投入し、100℃に加熱後、攪拌しながら、3分毎に、カルボン酸成分、及び触媒をそれぞれ一括で順に添加した以外は、ポリエステル樹脂1と同様にして、ポリエステル樹脂2を得た。
酸価が4.8mgKOH/gに達するまで要した反応時間は13hrであった。
【0047】
<ポリエステル樹脂3の合成>
ポリエステル樹脂3を表1に示す原料に基づき合成した。
アルコール成分を四つ口フラスコに投入し、100℃に加熱後、攪拌しながら、3分毎に、触媒、及びカルボン酸成分を順にそれぞれ一括で添加した以外は、ポリエステル樹脂1と同様にして、ポリエステル樹脂3を得た。
酸価が5.3mgKOH/gに達するまで要した反応時間は12hrであった。
【0048】
<ポリエステル樹脂4の合成>
ポリエステル樹脂4を表1に示す原料に基づき合成した。
アルコール成分を四つ口フラスコに投入し100℃に加熱後、攪拌しながら、3分毎に、カルボン酸成分、及び触媒を順にそれぞれ一括で添加した以外はポリエステル樹脂1の合成と同様にして、ポリエステル樹脂4を得た。
酸価が4.9mgKOH/gに達するまで要した反応時間は12hrであった。
【0049】
<ポリエステル樹脂5の合成>
ポリエステル樹脂5を表1に示す原料に基づき合成した。
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに原料を入れた後、窒素雰囲気下、235℃で酸価が4.8mgKOH/gに達するまで縮重合反応させた後、さらに8kPaにて軟化点が131℃に達するまで反応させて、ポリエステル樹脂5を得た。
酸価が4.8mgKOH/gに達するまで要した反応時間は18hrであった。
なお、ポリエステル樹脂5では、触媒としてSn-C結合を有するジブチルスズオキシドを用いているため、ポリエステル樹脂5中には、Sn-C結合を有する化合物も含有されている。
【0050】
【0051】
なお、表1中のBPA-POは、ポリオキシプロピレン(2.05)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンの略語であり、BPA-EOは、ポリオキシエチレン(2.05)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)の略語である。
【0052】
得られたポリエステル樹脂1~5について、それぞれ下記の測定を行った。結果を表2に示した。
【0053】
<軟化点>
フローテスター(CFT-500D、株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料(ポリエステル樹脂)を昇温速度6℃/分間で加熱しながら、ブランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0054】
<ガラス転移点>
示差走査熱量計(Q-100、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用い、試料(ポリエステル樹脂)0.01g~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分間で0℃まで冷却した。次に、試料を昇温速度10℃/分間で昇温し、測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0055】
<酸価>
JIS K0070の方法により測定した。ただし、測定溶媒のみ、JIS K0070の規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0056】
<重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mLの流速で流し、試料濃度として0.05質量%~0.6質量%に調製したポリエステル樹脂のTHF試料溶液を50μL~200μL注入して測定した。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、PressureChemical Co.分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のもの(あるいは東ソー株式会社製のものでも可)を用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当であるので、その試料を用いた。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0057】
【0058】
(実施例1)
・ポリエステル樹脂1: 90部
・カーボンブラック MOGUL L(キャボット社製): 6部
・離型剤 カルナウバワックス (東亜化成株式会社製): 3部
・金属アゾ染料 T-77(保土ヶ谷化学工業株式会社製):1.2部
・4級アンモニウム塩化合物 BONTRON P-51(オリエント化学工業株式会社製):0.5部
【0059】
上記材料を、ミキサーで混合した後、2本ロールにより50℃で40分感溶融混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した後、エアージェット粉砕機で微粉砕し、得られた微粉末を分級して重量平均粒径7.5μm、5μm以下微粉含有率が20個数%のトナー母体粒子を得た。
次に添加剤としてシリカ(RY50、日本エアロジル社製、メジアン径30nm)2.0部とトナー母体粒子100.7部とを共に混合し、実施例1のトナーを得た。
【0060】
(実施例2~8、比較例1~8)
トナーの組成を表3に記載した組成にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8、比較例1~8のトナーを得た。
【0061】
【表3】
1)比較例6、8の「含金属アゾ染料」の欄に記載の「X-11」は、「BONTRON X-11(オリエント化学工業株式会社製)」のことであり、サリチル酸系化合物である(含金属アゾ染料ではない)。
2)比較例6、7の「4級アンモニウム塩化合物」の欄に記載の「N-71」は、「BONTRON N-71(オリエント化学工業株式会社製)」のことであり、アジン系化合物である(4級アンモニウム塩化合物ではない)。
【0062】
実施例において、用いたシリカの種類、製造会社名、メジアン径、及び表面処理剤の種類を以下の表4に示す。
【0063】
【表4】
上記表における表面処理剤は、以下のとおりである。
PDMS:ポリジメチルシロキサン。シリコーンの一種。
HMDS:ヘキサメチルジシラザン。
【0064】
トナー及びシリカの物性値の測定方法は以下の通りである。
【0065】
<平均粒径(メジアン径)>
シリカのメジアン径は、外添後トナーを観察して、トナー表面に外添剤が付着した状態で測定を行った。
走査型電子顕微鏡 SU8200シリーズ(株式会社日立ハイテクノロジーズ社)を用いて測定を行った。得られた画像を画像処理ソフトA像君(旭化成エンジニアリング株式会社製)で二値化した。得られた画像の外添剤粒子それぞれに対し、その面積に相当する真円の直径を算出し、メジアン径を算出した。
【0066】
<トナー体積平均粒径>
電解質溶液100mL~150mLに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1mL~5mL添加し、これに測定試料を2mg~20mg添加した。この測定試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1分間~3分間分散処理し、コールターカウンターIIe型により100μmのアパーチャーを用いて体積を基準として2μm~40μmの粒度分布等を測定した。
【0067】
<トナー中の5μm以下微粒子含有率>
円相当径が0.6μm~5.0μmの範囲にある粒子の個数基準での含有量について、株式会社SYSMEX製フロー式粒子像分析装置FPIA-3000を用いて測定した。
1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液に調製した後、0.45μmのフィルターに通した。フィルター透過後の50mL~100mLの1質量%NaCl水溶液に対し、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1mL~5mL加え、更に試料を1mg~10mgを加えた。これを、超音波分散機で1分間分散処理して、粒子濃度を5,000個/μL~15,000個/μLに調製した分散液を用いて測定を行った。粒子個数の測定については、CCDカメラで撮像した2次元の画像面積と、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出した。CCDの画素の精度から、円相当径で0.6μm以上を有効とし粒子個数を得た。
【0068】
得られたトナーについて、以下の評価を行った。評価結果を、表5に示した。
【0069】
<平均円形度>
平均円形度の測定は、株式会社SYSMEX製フロー式粒子像分析装置FPIA-3000を用いて行った。
容器中の不純固形物を予め除去した水100mL~150mL中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩)を0.1mL~0.5mL加えた。更に、測定試料を0.1g~0.5g程度加えた。試料を分散した懸濁液を超音波分散器で約1分間~3分間分散処理をして、分散液濃度を3,000個/μL~10,000個/μLとして前述の装置によって平均円形度を測定した。円形度は、「円形度=(投影面積と等しい円の周囲長)/(投影像の周囲長)」という数式で求めた。
【0070】
<帯電立ち上がり評価>
キャリア6gに対して、トナーを7質量%になるように計量し、混合して得た現像剤を、室温22℃、湿度55%RHの状態で2時間放置した後、上記現像剤を密閉できる金属円柱に仕込み280rpmでそれぞれ15秒攪拌、60秒攪拌混合し、攪拌混合後1gの現像剤を、目開き635メッシュケージに計量し、Vブローオフ装置(リコー創造開発株式会社製)シングルモード法によりトナーの帯電量を測定した。ここでのシングルモード法とは、前記Vブローオフ装置(リコー創造開発株式会社製)で、装置マニュアルに従い、シングルモードを選び、測定条件は高さ5mm、吸い込み100、2回ブローとした。
なお、キャリアとしては、アルミナ粒子を含むアクリル樹脂及びシリコーン樹脂の被覆膜形成溶液を焼成フェライト粉(重量平均粒子径:35μm)表面に塗布乃至乾燥して得られる樹脂被覆フェライトキャリアを使用した。
【0071】
こうして得られた、15秒攪拌時の帯電量をQ15、60秒攪拌時の帯電量をQ60とし、Q15/Q60の値(比)により、以下の判定基準に基づき、帯電立ち上がり性を評価した。
-判定基準-
〇:0.7≦Q15/Q60
△:0.3≦Q15/Q60<0.7
×:0<Q15/Q60<0.3
【0072】
<OPC(感光体)シリカ付着評価、OPC表面傷評価>
市販のプリンターSP-3610(株式会社リコー製)で、出力画像は画像濃度6%となるよう調整したテキスト画像10,000枚の通紙を行い、その後、下記判定基準に基づき、OPCシリカ付着、OPC表面傷を評価した。
-判定基準-
○:OPC表面に、シリカ由来による付着物やOPC表面傷は存在しない
△:OPC表面に、シリカ由来による付着物痕跡や僅かなOPC表面傷が存在する
×:OPC表面に、シリカ由来による顕著な付着物やOPC表面傷が存在する
【0073】
<画像品質>
画像品質は、通紙後の画像品質の劣化(具体的には、転写不良、OPCクリーニング不良の発生)を総合的に判断した。転写不良は市販のSP-3610(株式会社リコー製)で出力画像はA4横で2cm幅の縦帯画像1,000枚の通紙を行い、その後、全面黒ベタ画像を通紙させて、その画像の転写不良レベルを目視でランク付けして、下記判定基準に基づき、画像品質を評価した。また、OPCクリーニング不良については、市販のSP-3610(株式会社リコー製)を用いて4A横で2cm幅の縦帯画像1000枚の通紙を行い、その後、黒ベタ帯画像を現像中に停止、クリーニング部によるクリーニング後の感光体上のトナーをスコッチテープでテープ転写し、白紙上に貼り付けそれを分光測色計(X-Rite938)で測定、一方スコッチテープをテープのみを同じ白紙に貼り付け分光測色計で測定し、トナーとテープと白紙をあわせた反射濃度(ID:Image Density)からスコッチテープでテープと白紙をあわせた反射濃度(ID)の分を引き、差分値を求めた。このことで、クリーニングの良し悪しを判断できる。すなわち前記差分値が小さいほどクリーニング性が良いという指標である。
-判定基準-
○:転写不良による画像濃度低下やクリーニング不良での画像汚れによる異常画像は認められない
△:実用範囲内ではあるが、軽微な転写不良による画像濃度低下や軽微なクリーニング不良による画像汚れが認められる
×:実用範囲外で、転写不良による画像濃度低下や欠損、クリーニング不良による画像汚れが認められる。
××:実用範囲外で顕著な、転写不良による画像濃度低下や欠損、クリーニング不良による画像汚れが認められる。
【0074】
【表5】
なお、表中の「低環境負荷」の評価については、Sn-C結合を有するポリエステル樹脂を使用したトナーを「×」、Sn-C結合を有するポリエステル樹脂を使用していないトナーを「○」とした。
【0075】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 結着樹脂、含金属アゾ染料、及び4級アンモニウム塩を含むトナーであって、
前記トナーの平均円形度が、0.85~0.95であり、
前記トナーが、Sn-C結合を有するスズ化合物を含まないことを特徴とするトナーである。
<2> 前記トナーが、更にシリカを含み、
前記シリカが、シリコーンオイルを含有し、
前記シリカのメジアン径が、10nm以上80nm以下である前記<1>に記載のトナーである。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーを収容した、トナー収容ユニットである。
<4> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段とを含み、
前記トナーが、前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
【0076】
前記<1>から<2>に記載のトナー、前記<3>に記載のトナー収容ユニット、及び前記<4>に記載の画像形成装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0077】
110 感光体
120 帯電ローラ
160 クリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【文献】特開2003-186250号公報
【文献】特開2003-201342号公報
【文献】特許第4753685号公報
【文献】特許第5380964号公報
【文献】特許第5205885号公報
【文献】特開平10-221879号公報