(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220830BHJP
H01L 21/67 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01L21/78 Y
H01L21/78 X
H01L21/78 P
H01L21/68 E
(21)【出願番号】P 2018141405
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】田澤 強
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義信
(72)【発明者】
【氏名】平 理子
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハが貼り付けられたウエハ加工用テープをエキスパンドすることにより前記半導体ウエハを複数の半導体チップに分離するエキスパンド工程と、
前記エキスパンド工程の後に、前記ウエハ加工用テープを前記複数の半導体チップ側から吸引する吸引工程と、
前記吸引工程の後に、前記ウエハ加工用テープから前記半導体チップをピックアップするピックアップ工程と、
前記エキスパンド工程と前記吸引工程との間に、前記ウエハ加工用テープを加熱収縮させるヒートシュリンク工程と、
前記ヒートシュリンク工程と前記吸引工程との間に、前記複数の半導体チップが貼り付けられた前記ウエハ加工用テープを反転する反転工程と、を備え
、
前記ヒートシュリンク工程では、前記ウエハ加工用テープの前記複数の半導体チップとは反対側の面を吸着テーブルに吸着固定した状態で、前記ウエハ加工用テープを加熱収縮させ、
前記吸引工程では、前記ウエハ加工用テープの前記複数の半導体チップ側の面を前記吸着テーブルで吸引する、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記吸引工程と前記ピックアップ工程との間に、前記ウエハ加工用テープに貼り付けられた前記複数の半導体チップを洗浄する洗浄工程を更に備える、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ウエハ加工用テープに前記半導体ウエハを貼り付ける粘着層が、紫外線硬化型の粘着剤から構成される場合、前記吸引工程と前記ピックアップ工程との間に、前記ウエハ加工用テープに紫外線を照射する紫外線照射工程を更に備える、
請求項1
又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の製造方法では、伸縮性及び粘着性を有するウエハ加工用テープを半導体ウエハに貼り付け、半導体ウエハに分離予定ラインを形成し、ウエハ加工用テープをエキスパンド(拡張)して半導体ウエハを複数の半導体チップに分離し、ウエハ加工用テープにおける複数の半導体チップの周囲を加熱収縮させ、ウエハ加工用テープから半導体チップをピックアップしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器におけるメモリの大容量化が進んでおり、一方で、電子機器の薄化も求められている。このため、電子機器には薄い半導体チップが搭載されるようになってきた。しかしながら、薄い半導体チップを製造すると、歩留まりが低下するという問題が発生した。
【0005】
そこで、本発明者は、上記問題について鋭意検討した結果、ウエハ加工用テープから半導体チップをピックアップする前に半導体チップのエッジ部分がウエハ加工用テープから剥離し、この剥離が半導体装置の製造に不具合を生じさせることを突き止めた。なお、半導体チップのエッジ部分がウエハ加工用テープから剥離すると、例えば、次のような不具合が発生する。
【0006】
(1)ウエハ加工用テープの粘着層が紫外線硬化型の粘着剤から構成される場合、ウエハ加工用テープから半導体チップをピックアップする前に、粘着層の粘着力を弱めるために、紫外線を照射して粘着層を硬化させている。しかしながら、半導体チップのエッジ部分がウエハ加工用テープから剥離すると、剥離した部分が酸素に触れることにより、紫外線を照射しても粘着層が硬化しない場合がある。このような場合、粘着層の粘着力が十分に弱まらないため、ウエハ加工用テープから半導体チップをピックアップできない。
【0007】
(2)半導体チップにはアライメントマークが形成されており、ウエハ加工用テープから半導体チップをピックアップする装置は、このアライメントマークを認識することで、ピックアップする半導体チップの位置を特定している。しかしながら、半導体チップのエッジ部分がウエハ加工用テープから剥離すると、この剥離部分が変色して、アライメントマークを認識できない場合がある。このような場合、ピックアップする半導体チップの位置を特定できないため、ウエハ加工用テープから半導体チップをピックアップできない。
【0008】
(3)通常、半導体チップをピックアップする前に、ウエハ加工用テープ上で複数の半導体チップを洗浄している。しかしながら、半導体チップのエッジ部分がウエハ加工用テープから剥離すると、複数の半導体チップを洗浄する際に、この剥離部分に洗浄液が入り込むことで、ウエハ加工用テープから半導体チップが脱落する場合がある。このような場合、ピックアップ工程の前に半導体チップが脱落しているため、ピックアップ工程において半導体チップをピックアップできない。
【0009】
本発明の一側面は、歩留まりを向上させることができる半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面に係る半導体装置の製造方法は、半導体ウエハが貼り付けられたウエハ加工用テープをエキスパンドすることにより半導体ウエハを複数の半導体チップに分離するエキスパンド工程と、エキスパンド工程の後に、ウエハ加工用テープを複数の半導体チップ側から吸引する吸引工程と、吸引工程の後に、ウエハ加工用テープから半導体チップをピックアップするピックアップ工程と、を備える。
【0011】
この半導体装置の製造方法では、エキスパンド工程とピックアップ工程との間に吸引工程を行う。このため、半導体チップがウエハ加工用テープから剥離していても、吸引工程においてウエハ加工用テープを複数の半導体チップ側から吸引することで、半導体チップがウエハ加工用テープに密着する。これにより、半導体チップがウエハ加工用テープから剥離することに伴うピックアップ工程の不具合が改善されるため、歩留まりを向上させることができる。
【0012】
吸引工程とピックアップ工程との間に、ウエハ加工用テープに貼り付けられた複数の半導体チップを洗浄する洗浄工程を更に備えてもよい。この半導体装置の製造方法では、吸引工程とピックアップ工程との間に洗浄工程を行う。これにより、半導体チップがウエハ加工用テープから剥離することに伴う洗浄工程の不具合が改善されるため、歩留まりを向上させることができる。
【0013】
エキスパンド工程と吸引工程との間に、ウエハ加工用テープを加熱収縮させるヒートシュリンク工程を更に備えてもよい。この半導体装置の製造方法では、エキスパンド工程と吸引工程との間にヒートシュリンク工程を行う。これにより、ヒートシュリンク工程において半導体チップがウエハ加工用テープから剥離した場合にも、その後の吸引工程で半導体チップがウエハ加工用テープに密着するため、歩留まりを向上させることができる。
【0014】
ヒートシュリンク工程と吸引工程との間に、複数の半導体チップが貼り付けられたウエハ加工用テープを反転する反転工程を更に備え、ヒートシュリンク工程では、ウエハ加工用テープの複数の半導体チップとは反対側の面を吸着テーブルに吸着固定した状態で、ウエハ加工用テープを加熱収縮させ、吸引工程では、ウエハ加工用テープの複数の半導体チップ側の面を吸着テーブルで吸引してもよい。この半導体装置の製造方法では、吸引工程において吸引するウエハ加工用テープの面は、ヒートシュリンク工程において吸着固定するウエハ加工用テープの面は異なる。しかしながら、ヒートシュリンク工程と吸引工程との間に反転工程を行うため、吸引工程において吸引するウエハ加工用テープの面を、ヒートシュリンク工程において吸着固定するウエハ加工用テープの面と同じ向きにすることができる。このため、ヒートシュリンク工程においてウエハ加工用テープを吸着固定した吸着テーブルを用いて、吸引工程においてウエハ加工用テープを吸引することができる。これにより、ヒートシュリンク工程と吸引工程とで吸着テーブルを共用することができる。
【0015】
ウエハ加工用テープに半導体ウエハを貼り付ける粘着層が、紫外線硬化型の粘着剤から構成される場合、吸引工程とピックアップ工程との間に、ウエハ加工用テープに紫外線を照射する紫外線照射工程を更に備えてもよい。この半導体装置の製造方法では、吸引工程とピックアップ工程との間に紫外線照射工程を行う。これにより、半導体チップがウエハ加工用テープから剥離することに伴う紫外線照射工程の不具合が改善されるため、歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ウエハ加工用テープの一例を示す模式断面図である。
【
図2】
図2(a)は、貼付工程を説明するための模式断面図であり、
図2(b)は、エキスパンド工程を説明するための模式断面図であり、
図2(c)は、ヒートシュリンク工程を説明するための模式断面図である。
【
図3】
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)は、反転工程を説明するための模式断面図である。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)、及び
図4(c)は、吸引工程を説明するための模式断面図である。
【
図5】
図5(a)は、洗浄工程を説明するための模式断面図であり、
図5(b)は、紫外線照射工程を説明するための模式断面図であり、
図5(c)は、ピックアップ工程を説明するための模式断面図である。
【
図7】実施例1の紫外線を照射する前の撮像画像である。
【
図8】実施例1の紫外線を照射してから1週間経過した後の撮像画像である。
【
図9】比較例1の紫外線を照射する前の撮像画像である。
【
図10】比較例1の紫外線を照射してから1週間経過した後の撮像画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0019】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、まず、半導体ウエハ20(
図2参照)に分離予定ラインを形成するダイシング工程を行う。ダイシング工程では、半導体ウエハ20の表面に支持テープ22(
図2参照)を貼り付けて、ステルスダイシング、ブレードハーフカットダイシング等の方法により、半導体ウエハ20に分離予定ラインを形成する。分離予定ラインは、後工程のエキスパンド工程において半導体ウエハ20を複数の半導体チップ21(
図2参照)に分離するラインである。ステルスダイシングは、半導体ウエハ20に対して、その内部に焦点光を合わせてレーザー光を照射することによって、半導体ウエハ20内部に多光子吸収による改質領域を形成し、この改質領域を分離予定ラインとする方法である。ブレードハーフカットダイシングは、ダイシングブレードにより半導体ウエハ20をハーフカットすることにより、分離予定ラインを形成する方法である。
【0020】
次に、分離予定ラインが形成された半導体ウエハ20の裏面を研削するバックグラインド工程を行う。
【0021】
次に、半導体ウエハ20にウエハ加工用テープ1を貼り付ける貼付工程を行う。
図1に示すように、ウエハ加工用テープ1は、基材層11と基材層11上に設けられた粘着層12とを有する粘着フィルム2と、粘着フィルム2の粘着層12上に設けられて半導体ウエハが貼り付けられる接着剤層3と、を備えている。なお、ウエハ加工用テープ1の接着剤層3側の一面には、離型テープ(不図示)が貼り付けられており、ウエハ加工用テープ1が半導体ウエハ20に貼り付けられる際に、ウエハ加工用テープ1から離型テープが剥離される。粘着フィルム2は、半導体ウエハ20の周囲に配置されるウエハリング30に接合されて半導体ウエハ20のダイシングに用いられるダイシングテープである。粘着フィルム2は、接着剤層3よりも大径の円形に形成されている。接着剤層3は、半導体チップのダイボンディングに用いられるダイボンドフィルムである。接着剤層3は、半導体ウエハ20よりも大径の円形に形成されている。
【0022】
図2(a)に示すように、貼付工程では、半導体ウエハ20の周囲にウエハリング30を配置する。そして、ウエハ加工用テープ1から離型テープを剥離した後、ウエハ加工用テープ1の粘着フィルム2の外縁部にウエハリング30を貼り付けるとともに、ウエハ加工用テープ1の接着剤層3の中央部に半導体ウエハ20を貼り付ける。その後、半導体ウエハ20から支持テープ22を剥離する。これにより、ウエハ加工用テープ1に半導体ウエハ20及びウエハリング30が貼り付けられたワーク5が構成される。
【0023】
次に、ウエハ加工用テープ1をエキスパンドすることにより、半導体ウエハ20を複数の半導体チップ21に分離するエキスパンド工程を行う。
図2(b)に示すように、エキスパンド工程では、ウエハリング30及び粘着フィルム2をステージ31と固定部材34とで挟み込んで固定する。そして、-15~5℃の低温条件下で、ウエハ加工用テープ1の下方から円筒状の突き上げ部材32を上昇させて、突き上げ部材32によりウエハ加工用テープ1を突き上げる。これにより、粘着フィルム2がエキスパンド(拡張)されて、半導体ウエハ20が分離予定ラインに沿って複数の半導体チップ21に分離されるとともに、接着剤層3も半導体チップ21に対応して分離される。
【0024】
次に、ウエハ加工用テープ1を加熱収縮させるヒートシュリンク工程を行う。
図2(c)に示すように、ヒートシュリンク工程では、突き上げ部材32によりウエハ加工用テープ1を少しエキスパンドして半導体チップ21の間隔を保持する。そして、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21とは反対側の面を吸着テーブル36に吸着固定して、突き上げ部材32を下降させる。
【0025】
そして、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21とは反対側の面を吸着テーブル36に吸着固定した状態で、粘着フィルム2の、半導体チップ21が存在する領域とウエハリング30との間の部分に、ヒータ33を用いて90~120℃の温風を当てる。これにより、ウエハ加工用テープ1は、複数の半導体チップ21の周囲において加熱収縮して、緊張させる。
【0026】
次に、複数の半導体チップ21が貼り付けられたウエハ加工用テープ1を反転する反転工程を行う。
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)に示すように、反転工程では、アーム35でウエハリング30を吸着保持して、ワーク5を持ち上げる。そして、アーム35によりワーク5を反転させることにより、複数の半導体チップ21が貼り付けられたウエハ加工用テープ1を反転させる。その後、ワーク5を下降させて、ワーク5を吸着テーブル36に載置する。
【0027】
次に、ウエハ加工用テープ1を複数の半導体チップ21側から吸引する吸引工程を行う。ここで、薄い半導体チップ21は、反りやすい。このため、エキスパンド工程において半導体ウエハ20を複数の半導体チップ21に分離すると、又は、ヒートシュリンク工程においてウエハ加工用テープ1を加熱収縮すると、
図4(a)に示すように、半導体チップ21が反って、半導体チップ21のエッジ部分がウエハ加工用テープ1の粘着フィルム2から剥離する場合がる。そこで、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、吸引工程では、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21側の面を吸着テーブル36で吸引する。このとき、複数の半導体チップ21を保護する観点から、吸着テーブル36上にポーラスシート37を配置し、このポーラスシート37を介して複数の半導体チップ21を吸着テーブル36で吸引することが好ましい。つまり、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21側の面をポーラスシート37に当接させて、吸着テーブル36により真空吸引することで、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21側の面をポーラスシート37に吸引する。すると、半導体チップ21がウエハ加工用テープ1に密着して、半導体チップ21とウエハ加工用テープ1との間の隙間が無くなる。なお、
図4(a)、
図4(b)、及び
図4(c)では、図を見やすくするために、ウエハ加工用テープ1の接着剤層3の図示を省略している。なお、ヒートシュリンク工程でも、吸着テーブル36上にポーラスシート37を配置していてもよい。
【0028】
次に、複数の半導体チップ21が貼り付けられたウエハ加工用テープ1を反転する反転工程を行う。この反転工程は、吸引工程の前に行う反転工程と同様である。
【0029】
次に、ウエハ加工用テープ1に貼り付けられた複数の半導体チップ21を洗浄する洗浄工程を更に備える、
図5(a)に示すように、洗浄工程では、ウエハリング30及び粘着フィルム2を吸着テーブル36により吸着固定し、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21側の面に洗浄液を掛ける。そして、複数の半導体チップ21の洗浄が終了すると、複数の半導体チップ21を乾燥させる。
【0030】
次に、ウエハ加工用テープ1に紫外線を照射する紫外線照射工程を行う。
図5(b)に示すように、紫外線照射工程では、ウエハ加工用テープ1に紫外線を照射して、粘着フィルム2の粘着層12を硬化させるとともに、その粘着力を弱める。紫外線は、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21とは反対側から照射する。なお、紫外線照射工程は、粘着フィルム2の粘着層12が紫外線硬化型の粘着剤から構成される場合にのみ行えばよく、粘着フィルム2の粘着層12が紫外線硬化型の粘着剤から構成されない場合は、紫外線照射工程を行う必要はない。
【0031】
次に、ウエハ加工用テープ1から半導体チップ21をピックアップするピックアップ工程を行う。
図5(c)に示すように、ピックアップ工程では、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21とは反対側から、ピックアップ対象の半導体チップ21を突き上げ冶具39で突き上げる。すると、ピックアップ対象の半導体チップ21が、ウエハ加工用テープ1から剥離される。そして、ウエハ加工用テープ1の複数の半導体チップ21側から、ピックアップ対象の半導体チップ21を、吸引コレット40で吸引してピックアップする。これにより、接着剤層3が付着した半導体チップ21が得られる。
【0032】
上述した半導体装置の製造方法を行う際は、例えば、次のような製造装置が用いられる。本実施形態に係る半導体装置の製造装置は、ウエハリング30及び粘着フィルム2を挟み込んで固定するステージ31及び固定部材34と、エキスパンド工程においてウエハ加工用テープ1を下方から突き上げる突き上げ部材32と、ヒートシュリンク工程においてウエハ加工用テープ1を加熱収縮させるヒータ33と、反転工程においてワーク5を吸着保持して反転させるアーム35と、洗浄工程において複数の半導体チップ21を洗浄する洗浄機構と、ヒートシュリンク工程においてウエハ加工用テープを吸着固定するとともに吸引工程においてウエハ加工用テープを吸引する吸着テーブル36と、紫外線照射工程においてウエハ加工用テープ1に紫外線を照射する紫外線照射機構と、ピックアップ工程においてピックアップ対象の半導体チップ21をピックアップする突き上げ冶具39及び吸引コレット40と、を備える。なお、上記製造装置は、一部の構成を備えなくてもよく、反対に、他の構成を更に備えてもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、エキスパンド工程とピックアップ工程との間に吸引工程を行う。このため、半導体チップ21がウエハ加工用テープ1から剥離していても、吸引工程においてウエハ加工用テープ1を複数の半導体チップ21側から吸引することで、半導体チップ21がウエハ加工用テープ1に密着する。これにより、半導体チップ21がウエハ加工用テープ1から剥離することに伴うピックアップ工程の不具合が改善されるため、歩留まりを向上させることができる。例えば、半導体チップ21にはアライメントマークが形成されており、ウエハ加工用テープ1から半導体チップ21をピックアップする装置は、このアライメントマークを認識することで、ピックアップする半導体チップ21の位置を特定している。ここで、半導体チップ21のエッジ部分がウエハ加工用テープ1から剥離していると、この剥離部分が変色して、アライメントマークを認識できない場合がある。しかしながら、吸引工程において半導体チップ21をウエハ加工用テープ1に密着させるため、アライメントマークが認識できない不具合の発生を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、吸引工程とピックアップ工程との間に洗浄工程を行う。これにより、半導体チップ21がウエハ加工用テープ1から剥離することに伴う洗浄工程の不具合が改善されるため、歩留まりを向上させることができる。例えば、半導体チップ21のエッジ部分がウエハ加工用テープ1から剥離していると、洗浄工程において、この剥離部分に洗浄液が入り込むことで、ウエハ加工用テープ1から半導体チップ21が脱落する場合がある。しかしながら、洗浄工程の前に行う吸引工程において半導体チップ21をウエハ加工用テープ1に密着させるため、洗浄工程において半導体チップ21が脱落する不具合の発生を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、エキスパンド工程と吸引工程との間にヒートシュリンク工程を行う。これにより、ヒートシュリンク工程において半導体チップ21がウエハ加工用テープ1から剥離した場合にも、その後の吸引工程で半導体チップ21がウエハ加工用テープ1に密着するため、歩留まりを向上させることができる。
【0036】
ところで、吸引工程において吸引するウエハ加工用テープ1の面は、ヒートシュリンク工程において吸着固定するウエハ加工用テープ1の面と異なる。しかしながら、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、ヒートシュリンク工程と吸引工程との間に反転工程を行うため、吸引工程において吸引するウエハ加工用テープ1の面を、ヒートシュリンク工程において吸着固定するウエハ加工用テープ1の面と同じ向きにすることができる。このため、ヒートシュリンク工程においてウエハ加工用テープ1を吸着固定した吸着テーブル36を用いて、吸引工程においてウエハ加工用テープ1を吸引することができる。これにより、ヒートシュリンク工程と吸引工程とで吸着テーブル36を共用することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、吸引工程とピックアップ工程との間に紫外線照射工程を行う。これにより、半導体チップ21がウエハ加工用テープ1から剥離することに伴う紫外線照射工程の不具合が改善されるため、歩留まりを向上させることができる。例えば、ウエハ加工用テープ1の粘着層12が紫外線硬化型の粘着剤から構成される場合、半導体チップ21のエッジ部分がウエハ加工用テープ1から剥離していると、剥離した部分が酸素に触れることにより、紫外線を照射しても粘着層12が硬化しない場合がある。しかしながら、紫外線照射工程の前に行う吸引工程において半導体チップ21をウエハ加工用テープ1に密着させるため、紫外線照射工程において粘着層12が硬化しない不具合の発生を抑制することができる。
【0038】
本発明の半導体装置の製造方法は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0039】
例えば、上記の半導体装置の製造方法では、エキスパンド工程においてウエハ加工用テープをエキスパンドすることにより半導体ウエハを複数の半導体チップに分離することができれば、如何なる方法及び如何なるタイミングで、半導体ウエハに分離予定ラインを形成してもよい。例えば、貼付工程の後にダイシング工程を行ってもよい。
【0040】
また、上記の半導体装置の製造方法では、反転工程を行い、ヒートシュリンク工程と吸引工程とで吸着テーブルを共用するものとして説明したが、洗浄工程でも吸着テーブルを使用するため、洗浄工程と吸引工程とで吸着テーブルを共用してもよい。また、ヒートシュリンク工程及び洗浄工程と吸引工程とで別の吸着テーブルを用いる場合、可動式の吸着テーブルを用いる場合等は、反転工程を行わなくてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
(比較例1)
12インチの半導体ウエハに対して、ダイシング工程、バックグラインド工程、貼付工程、エキスパンド工程、ヒートシュリンク工程、及び洗浄工程をこの順で行った。ダイシング工程では、12mm×6mmの矩形状にステルスダイシングを行うことで、半導体ウエハに分離予定ラインを形成した。バックグラインド工程では、半導体ウエハの厚さが35μmとなるように半導体ウエハの裏面を研磨した。貼付工程では、70℃で、日立化成株式会社製のウエハ加工用テープ(型番 FH-9011-20)を、半導体ウエハに貼り付けた。エキスパンド工程及びヒートシュリンク工程では、株式会社ディスコ製のダイセパレータ(型番 DDS-2300)を用いて、以下の条件にてウエハ加工用テープのエキスパンド及びヒートシュリンクを行った。洗浄工程では、株式会社ディスコ製のダイセパレータ(型番 DDS-2300)内の洗浄機構により、以下の条件にて洗浄及び乾燥を行った。
【0043】
[エキスパンド条件]冷却温度:-15℃、冷却時間:90秒、エキスパンド量:10mm、エキスパンド速度:200mm/s、エキスパンド後の保持時間:3秒
[ヒートシュリンク条件]ヒータ温度:220℃、ヒータ回転速度:5°/s、エキスパンド量:8mm
[洗浄条件]洗浄時間:120秒、回転数:600rpm
[乾燥条件]乾燥時間:60秒、回転数:1500rpm
【0044】
そして、ウエハ加工用テープに貼り付けられた複数の半導体チップの状態を撮像した後、紫外線照射工程を、照度70mW/cm
2、照射量200mJ/cm
2で行い、紫外線を照射してから1週間経過した後に、ウエハ加工用テープに貼り付けられた複数の半導体チップの状態を撮像した。紫外線を照射する前の撮像画像を
図9に示し、紫外線を照射してから1週間経過した後の撮像画像を
図10に示す。
【0045】
その後、ピックアップ工程において、株式会社日立ハイテクノロジーズ製のDB800-HSDを用いて、所定位置の20個の半導体チップをピックアップ対象の半導体チップとし、このピックアップ対象の半導体チップのピックアップを試みた。ピックアップ工程では、突き上げ方式を三段突き上げとし、突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ高さを350μmとし、突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ速度を10mm/sとした。ピックアップできた半導体チップの数を
図6に示す。
【0046】
(実施例1)
12インチの半導体ウエハに対して、ダイシング工程、バックグラインド工程、貼付工程、エキスパンド工程、ヒートシュリンク工程、吸引工程、及び洗浄工程をこの順で行った。吸引工程では、ポーラスシートを介して吸着テーブルにより30秒間真空吸引を行った。ダイシング工程、バックグラインド工程、貼付工程、エキスパンド工程、ヒートシュリンク工程、及び洗浄工程は、比較例1と同条件とした。
【0047】
そして、比較例1と同様に、ウエハ加工用テープに貼り付けられた複数の半導体チップの状態を撮像した後、紫外線照射工程を行い、紫外線を照射してから1週間経過した後に、ウエハ加工用テープに貼り付けられた複数の半導体チップの状態を撮像した。紫外線を照射する前の状態の撮像画像を
図7に示し、紫外線を照射してから1週間経過した状態の撮像画像を
図8に示す。
【0048】
その後、比較例1と同じ条件で、ピックアップ対象の20個の半導体チップのピックアップを試みた。ピックアップできた半導体チップの数を
図6に示す。
【0049】
(実施例2)
突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ速度を1mm/sとした他は、実施例1と同じ条件とした。ピックアップできた半導体チップの数を
図6に示す。
【0050】
(実施例3)
突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ高さを325μmとし、突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ速度を10mm/sとした他は、実施例1と同じ条件とした。ピックアップできた半導体チップの数を
図6に示す。
【0051】
(実施例4)
突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ高さを325μmとし、突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ速度を1mm/sとした他は、実施例1と同じ条件とした。ピックアップできた半導体チップの数を
図6に示す。
【0052】
(実施例5)
突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ高さを300μmとし、突き上げ冶具による半導体チップの突き上げ速度を10mm/sとした他は、実施例1と同じ条件とした。ピックアップできた半導体チップの数を
図6に示す。
【0053】
(評価)
図9及び
図10に示すように、比較例1では、紫外線の照射前後に関わらず、半導体チップのエッジ部分がウエハ加工用テープから剥離していることが観察されたが、実施例1では、紫外線の照射前だけでなく、紫外線を照射してから1週間が経過しても、半導体チップのエッジ部分がウエハ加工用テープから剥離していないことが観察された。
【0054】
また、
図6に示すように、比較例1では、一つも半導体チップをピックアップすることができなかったのに対し、実施例1では、全ての半導体チップをピックアップすることができた。更に、実施例1~5の何れも、全ての半導体チップをピックアップすることができた。この結果から、吸引工程を行うことで、半導体チップがウエハ加工用テープから剥離することに伴うピックアップ工程の不具合が改善されることが分かった。
【符号の説明】
【0055】
1…ウエハ加工用テープ、2…粘着フィルム、3…接着剤層、5…ワーク、11…基材層、12…粘着層、20…半導体ウエハ、21…半導体チップ、22…支持テープ、30…ウエハリング、31…ステージ、32…突き上げ部材、33…ヒータ、34…固定部材、35…アーム、36…吸着テーブル、37…ポーラスシート、39…突き上げ冶具、40…吸引コレット。