IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図1
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図2
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図3
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図4
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図5
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図6
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図7
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図8
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図9
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図10
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図11
  • 特許-画像形成装置および画像形成方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220830BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/00 303
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018144313
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020956
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕一郎
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-180312(JP,A)
【文献】特開平02-077070(JP,A)
【文献】特開平02-077077(JP,A)
【文献】特開2003-081510(JP,A)
【文献】米国特許第05155536(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
13/34
15/00
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成して転写材に転写する画像形成部と、
前記画像形成部により前記転写材に転写されたトナー像を加熱により定着させる定着部と、
前記定着部による定着後の前記転写材を冷却する冷却部と、
前記転写材の厚みが所定値以下であり前記冷却部の温度が所定値よりも低い場合、前記定着部で前記転写材に与える熱量を増加させる制御を実行する定着制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御が、前記定着部の温度を高くする定着温度制御であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御が、前記定着部が有するローラの線速を遅くする定着線速制御であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御が、前記定着部に形成される定着ニップのニップ幅を大きくする定着ニップ幅制御であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着制御部は、
前記定着部の温度を高くする定着温度制御部と、
前記定着部が有するローラの線速を遅くする定着線速制御部と、
前記定着部に形成される定着ニップのニップ幅を大きくする定着ニップ幅制御部と、
のうち少なくとも2以上を備え、
前記転写材の厚みが所定値以下であり前記冷却部の温度が所定値よりも低い場合、何れか1つを選択的に実行可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を形成して転写材に転写する画像形成部と、前記画像形成部により前記転写材に転写されたトナー像を加熱により定着させる定着部と、前記定着部による定着後の前記転写材を冷却する冷却部と、を備える画像形成装置における画像形成方法であって、
前記転写材の厚みが所定値以下であり前記冷却部の温度が所定値よりも低い場合、前記定着部で前記転写材に与える熱量を増加させる制御を実行する定着制御ステップを含む、
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、両面通紙時に表裏の印字位置ズレが発生することがある。このような表裏の印字位置ズレは、定着熱による用紙の水分蒸発による収縮と、定着後の水分蒸発を抑える冷却部ヒートパイプの用紙冷却効果の差による収縮量の差と、により生じている。そのため、ユーザが書き込みレジスト位置調整を実施したり、印刷原稿の印刷位置調整を実施したりすることが、既に知られている。
【0003】
また、特許文献1には、定着性向上と省エネの目的で、定着後の転写紙の熱を吸熱し、吸熱した熱を定着部より上流の定着前の転写紙に放熱することで、予備加熱し定着性向上とともに省エネを実現する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の調整方法では、印刷時間の経過とともに定着後の冷却部ヒートパイプの温度上昇が発生し、印刷初期と用紙の冷却および用紙の収縮量に変化が生じ、事前に調整を行っていても印刷ジョブ間の表裏位置ズレが発生するという問題があった。
【0005】
より詳細には、ヒートパイプ温度が低い場合には、水分の蒸発を抑え、用紙の収縮量を小さくできるが、ヒートパイプ温度が高い場合には、水分蒸発を抑える能力が低下し、用紙の収縮量が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印刷継続により冷却部の温度が上昇しても印刷の表裏位置ズレを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、トナー像を形成して転写材に転写する画像形成部と、前記画像形成部により前記転写材に転写されたトナー像を加熱により定着させる定着部と、前記定着部による定着後の前記転写材を冷却する冷却部と、前記転写材の厚みが所定値以下であり前記冷却部の温度が所定値よりも低い場合、前記定着部で前記転写材に与える熱量を増加させる制御を実行する定着制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷継続により冷却部の温度が上昇しても印刷の表裏位置ズレを低減することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態にかかる画像形成装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図2図2は、画像形成装置の主要なシステム構成を示すブロック図である。
図3図3は、定着部および冷却部の概略構成を示す図である。
図4図4は、通常の定着温度制御時の温度推移の一例について説明する図である。
図5図5は、定着部の温度制御モードの設定処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図6図6は、定着温度制御の流れを概略的に示すフローチャートである。
図7図7は、冷却部の温度に基づく定着温度制御時の温度推移の一例について説明する図である。
図8図8は、冷却部の温度に基づく定着温度制御時の温度推移の一例について説明する図である。
図9図9は、定着線速制御の流れを概略的に示すフローチャートである。
図10図10は、冷却部の温度に基づく定着線速制御時の温度推移の一例について説明する図である。
図11図11は、定着ニップ幅制御の流れを概略的に示すフローチャートである。
図12図12は、冷却部の温度に基づく定着ニップ幅制御時の温度推移の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、画像形成装置および画像形成方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施の形態にかかる画像形成装置101の概略的な構成を示すブロック図である。図1において、画像形成装置101は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機(MFP:Multifunction Peripheral/Printer/Product)と称されるものである。一例として、画像形成装置101は、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)の4色を使ったフルカラー印刷対応の画像形成装置となっている。なお、説明の簡略化のため、図1には、両面印刷時に使用する排紙反転パス等は図示していない。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置101は、操作パネル104、給紙トレイ105,106、中間転写ベルト107、定着部108、冷却部109、排紙トレイ117、および、二次転写ローラ120を備えている。また、画像形成装置101は、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)の4色分のレーザ走査ユニット110Y,110M,110C,110K、帯電器111Y,111M,111C,111Kを備えている。また、画像形成装置101は、感光体ドラム112Y,112M,112C,112K、現像器113Y,113M,113C,113K、および、一次転写ローラ114Y,114M,114C,114Kを備えている。
【0013】
給紙トレイ105,106には、転写材である用紙116がそれぞれ収納されている。画像形成装置101は、操作パネル104を介して入力された印刷実行指示に従って、印刷物を印刷する。具体的には、画像形成装置101は、読取装置(以後スキャナという)、または、外部から画像データの取り込みを行う。取り込まれた画像データは、イメージ処理基板で画像処理されることで、潜像として具現化される。
【0014】
潜像の作成は、作像ユニット内に設けられている感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kを用いて行われる。まず、帯電用の高圧電源150から帯電器111Y,111M,111C,111Kに高電圧を印加し、感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kを一様に帯電させる。一例として、感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kには、電流値は微小ではあるが、-700kVの高電圧が一様に印加される。これにより、潜像を描くためのベースが形成される。
【0015】
次に、レーザ走査ユニット110Y,110M,110C,110Kから、帯電している感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kに対して、画像データに対応するレーザ光を照射する。これにより、一様に帯電している感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kのうち、レーザ光が照射された部分の電圧が、例えば-400kV程度に低下する。このようなレーザ光の照射による電位差レベルで潜像が描かれる(露光)。
【0016】
次に、潜像が描かれた感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kにトナーを塗布すると、レーザ光の照射で電圧が低下した部分にトナーが残留し、レーザ光が照射されない部分は、トナーが残留しない(現像)。このようなプロセスは、Y,M,C,Kの各色で実施される。これにより、感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kには、画像データに対応するY,M,C,Kの各色のトナー像が、それぞれ形成される。
【0017】
次に、感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kに描かれ、各色のトナーが塗布されることで形成された各トナー像を、それぞれ1次転写ベルト107に転写する。ここで、感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kの各トナー像を、中間転写ベルト107上で単に重ね合わせるだけでは、各トナー像は中間転写ベルト107上に転写されない。各トナー像を中間転写ベルト107上に転写するには、感光体ドラム112Y,112M,112C,112K、および、中間転写ベルト107を、それぞれ一定速度で回転駆動する。また、一次転写ユニット内部に設けられている一次転写用の高圧電源151から一次転写ローラ114Y,114M,114C,114Kに電圧を印加する。
【0018】
これにより、一次転写ローラ114Y,114M,114C,114Kにマイナス電荷が発生し、感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kから中間転写ベルト107上に、プラス電荷を持つトナーが引きつけられる。そして、感光体ドラム112Y,112M,112C,112Kに形成された各色のトナー像が中間転写ベルト107に引き付けられ転写される。なお、このような転写プロセスは、カラー印刷の場合はY,M,C,Kの全ての色で実行されるが、モノクローム印刷の場合には、Kの色のみ実行される。
【0019】
次に、中間転写モータで中間転写ベルト107が回転駆動され、中間転写ベルト107上に転写された各色のトナー像が、中間転写ベルト107と二次転写ローラ120との接触位置まで搬送される。給紙トレイ105にスタックされている用紙116は、二次転写ローラ120の位置にトナー像が搬送されるタイミングと一致するように、二次転写ローラ120の位置に搬送される。そして、二次転写ローラ120の位置で、各色のトナー像が用紙116に転写される。具体的には、二次転写用の高圧電源152から二次転写ローラ120に高電圧を印加し、二次転写ローラ120にマイナスの電荷を発生させる。これにより、中間転写ベルト107上のトナー像は用紙116側に引きつけられ、用紙116に転写される。トナー像が転写された用紙116は、搬送ベルト115により搬送され、定着部108および冷却部109を介して排紙トレイ117に排紙される。
【0020】
上述したように、画像形成装置101では、転写しただけで未定着のトナー像を担持した用紙116を定着部108に通して用紙116上の未定着トナー像を定着させ、熱のかかった用紙116は、冷却部109において冷却されて、その後排出される。
【0021】
次に、画像形成装置101の主要なシステム構成について説明する。
【0022】
図2は、画像形成装置101の主要なシステム構成を示すブロック図である。図2に示すように、画像形成装置101は、上述した電子写真プロセスにしたがったプロセス工程により感光体ドラムにトナー画像を形成し用紙116に転写する画像形成部200、定着部108を制御する定着制御部201、画像形成装置101全体を制御するメイン制御部203、各種の画像処理を実行する画像処理部204、を備えている。
【0023】
画像形成部200は、給紙トレイ105,106、中間転写ベルト107、二次転写ローラ120などを含む。
【0024】
定着制御部201は、定着温度制御部19、定着線速制御部である加圧ローラ速度制御部20、定着ニップ幅制御部である加圧ニップ制御部21、冷却部温度制御部22を備えている。
【0025】
定着制御部201は、IC等の電子回路によって実現されるものであってもよいし、ソフトウェアによって実現されるものであってもよい。
【0026】
ソフトウェアによって実現する場合、定着制御部201は、CPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどのプログラムを記憶する記憶装置とを備えたコンピュータ構成となっている。
【0027】
本実施形態の定着制御部201で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0028】
また、本実施形態の定着制御部201で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の定着制御部201で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0029】
また、本実施形態の定着制御部201で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0030】
次に、定着部108および冷却部109について説明する。
【0031】
図3は、定着部108および冷却部109の概略構成を示す図である。図3に示すように、定着部108は、加熱ローラ3、定着ローラ4、定着ベルト5、加圧ローラ6、加熱ヒータ7、加熱ヒータ8、加熱ローラ温度センサ9、加圧ローラ温度センサ10、定着入口上ガイド板11、定着入口下ガイド板12、定着出口上ガイド板13、定着出口下ガイド板14を備えている。
【0032】
冷却部109は、冷却ローラ15、冷却ベルト16、冷却ローラ温度センサ17、冷却入口上ガイド板18を備えている。冷却ローラ15は、ヒートパイプで構成されている。
【0033】
トナー像を担持した用紙116は、定着入口上ガイド板11、定着入口下ガイド板12でガイドされ、定着ベルト5を介して定着ローラ4と加圧ローラ6で形成される定着ニップへ搬送される。定着ベルト5は内側に定着ローラ4と加熱ローラ3とを有しており、加熱ローラ内3の加熱ヒータ7にて加熱される。加熱ローラ温度は、加熱ローラ温度センサ9の検知温度をもとに定着温度制御部19を通して、加熱ヒータ7の点灯/消灯によって制御される。
【0034】
定着ニップの形成は、加圧ローラ6の脱圧/加圧を制御する加圧ニップ制御部21にて制御される。定着ベルト5、加圧ローラ6の駆動は、加圧ローラ速度制御部20によって制御され、定着ベルト5は連れ回りする構成である。加圧ローラ6の温度は加圧ローラ温度センサ10にて検知され、図示しない加圧ローラ制御部にて制御される。
【0035】
定着された用紙116は、定着出口上ガイド板13、定着出口下ガイド板14によって、案内され、冷却部109へ搬送される。冷却部109は、用紙116の熱を吸熱し、機外へ排熱する構成となっている。冷却部109は、冷却ローラ15の温度を冷却ローラ温度センサ17にて検知し、検知温度に基づいて冷却部温度制御部22で定着温度を制御する。
【0036】
次に、本実施の形態の画像形成装置101の定着制御部201によって実現される機能のうち特徴的な機能である冷却部109の温度にあわせて定着部108の温度制御を実行する機能について説明する。
【0037】
図4は、通常の定着温度制御時の温度推移の一例について説明する図である。図4は、電源ONなどの立上げ要求があった際に、定着部(加熱ローラ)の温度推移の一例を表したものである。図4に示すように、印刷要求がきた場合に、メイン制御部は、通紙開始時制御温度Tまで、加熱ローラ温度を制御し、通紙開始を行う。その後、メイン制御部は、通紙時の制御温度Tへ制御し、印刷が終了すると、待機モードへと移行する。
【0038】
しかしながら、図4に示すように、印刷時間の経過とともに定着後の冷却部のヒートパイプの温度上昇が発生し、印刷初期と用紙の冷却および用紙の収縮量に変化が生じ、事前に調整を行っていても印刷ジョブ間の表裏位置ズレが発生するという問題があった。
【0039】
そこで、画像形成装置101の定着制御部201は、冷却部109の温度にあわせて定着部108の温度制御を実行するようにしたものである。なお、本実施の形態においては、定着部108の温度制御として、定着温度制御、定着線速制御、定着ニップ幅制御の3種類の制御モードが用意されている。以下では、印刷設定における制御モードの設定手法について説明する。
【0040】
図5は、定着部108の温度制御モードの設定処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図5に示すように、まず、定着制御部201は、印刷設定にて、転写材である用紙116が厚紙かを判別する(ステップS1)。定着制御部201は、用紙116の厚みが所定値以上の場合、たとえば100gsm以上の用紙116を厚紙と設定する。ただし、これに限るものではなく、それ以上の紙厚からを厚紙と設定してもよい。
【0041】
定着制御部201は、用紙116が厚紙である場合(ステップS1のYes)、通常の定着制御フローに進む(ステップS2)。厚紙の場合は、第一面印刷時の用紙116の収縮が少ないため、通常の定着制御とすることで、位置ズレが発生しない条件下においては、耐久性、生産性を低下することなく、通紙を行うことが可能である。
【0042】
一方、用紙116が厚紙でない場合であって(ステップS1のNo)、生産性と耐久性のうち、生産性を優先する場合(ステップS3のYes)、定着制御部201は、加圧ニップ制御部21による定着ニップ幅制御フローに進む(ステップS4)。
【0043】
また、用紙116が厚紙でない場合であって(ステップS1のNo)、生産性を優先しない、すなわち耐久性を優先する場合(ステップS3のNo)、定着制御部201は、印刷のボリュームが5枚以下かを判別する(ステップS5)。
【0044】
5枚以下の少数枚の印刷要求の場合(ステップS5のYes)、定着制御部201は、加圧ローラ速度制御部20による定着線速制御フローへ進む(ステップS6)。これは、定着温度を設定温度まで上昇させるためには時間が必要なため、少数枚のジョブの場合は線速を下げてもトータルの通紙時間は短くすることができるためである。
【0045】
5枚より多い枚数の場合(ステップS5のNo)、定着制御部201は、定着温度制御部19による定着温度制御フローへ進む(ステップS7)。
【0046】
なお、本実施の形態では、定着制御部201は、定着温度制御部19、加圧ローラ速度制御部20、加圧ニップ制御部21を全て有しているが、少なくとも2つの制御部を有していればよく、少なくとも2つの制御部を選択的に切り替えられるように構成してもよい。
【0047】
まず、定着制御部201による定着温度制御フロー(ステップS7)について説明する。
【0048】
図6は、定着温度制御の流れを概略的に示すフローチャートである。図6に示すように、定着制御部201は、印刷要求がきた場合(ステップS11)、冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高いかを判別する(ステップS12)。冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高い場合(ステップS12のYes)、定着制御部201は、通常の温度制御にて通紙を開始する(ステップS13、S14)。図4で説明したように、定着制御部201は、通紙開始時は通常通紙開始時温度制御Tで制御し、その後通紙時温度制御Tで制御する。
【0049】
一方、冷却部109の温度THPが閾値TFHP以下の温度の場合(ステップS12のNo)、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策通紙開始時制御温度TF0に温度制御し(ステップS15)、印刷開始する(ステップS16)。
【0050】
印刷開始した後、定着制御部201は、再度冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高いかを判別する(ステップS17)。冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高い場合(ステップS17のYes)、定着制御部201は、通常時の通紙時温度制御Tにて制御を行う(ステップS18)。
【0051】
冷却部109の温度THPが閾値TFHP以下の温度の場合(ステップS17のNo)、定着制御部201は、定着温度制御部19によって定着温度を表裏位置ズレ対策通紙時制御温度TF1に制御して通紙を継続する(ステップS19)。
【0052】
さらに、印刷継続要求がある場合は(ステップS20のYes)、定着制御部201は、ステップS17に戻り、再度冷却部109の温度によって定着制御を判別することを繰り返す。そして、定着制御部201は、印刷継続要求がなくなった時点で(ステップS20のNo)、処理を終了とする。
【0053】
ここで、図7は冷却部109の温度に基づく定着温度制御時の温度推移の一例について説明する図である。図7は、電源ONなどの立上げ要求があった際に、定着部108(加熱ローラ3)の温度推移の一例を表したものである。図7に示すように、印刷要求がきた場合に、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下であるため、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策通紙開始時温度TF0へ制御する。
【0054】
その後、通紙開始され、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下であるため、表裏位置ズレ対策通紙時制御温度TF1で制御されるが、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以上の温度となったところで、定着制御部201は、通常通紙時制御温度にて制御する。すなわち、図7に示す例は、表裏位置ズレ対策通紙時制御温度TF1まで温度が低下する前に、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下温度となったものである。
【0055】
ここで、図8は冷却部109の温度に基づく定着温度制御時の温度推移の一例について説明する図である。図8も、電源ONなどの立上げ要求があった際に、定着部108(加熱ローラ3)の温度推移の一例を表したものである。図7に示すように、印刷要求がきた場合に、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下であるため、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策通紙開始時温度TF0へ制御する。その後、通紙開始されるが、まだ冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下の温度のため、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策通紙時制御温度TF1で制御する。さらに通紙が継続され、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHPより高い温度となったところで、定着制御部201は、通常通紙時制御温度にて制御する。ここで、各温度の一例を挙げる。下記温度は一例であり、TF0>T、TF1>Tであることを特徴とする。
F0:180℃ TF1:160℃ T:165℃ T:150℃
【0056】
次に、定着制御部201による定着線速制御フロー(ステップS6)について説明する。
【0057】
図9は、定着線速制御の流れを概略的に示すフローチャートである。図9に示すように、定着制御部201は、印刷要求がきた場合(ステップS21)、冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高いかを判別する(ステップS22)。冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高い場合(ステップS22のYes)、定着制御部201は、通常の定着線速制御(D)にて通紙を開始する(ステップS23)。
【0058】
一方、冷却部109の温度THPが閾値TFHP以下の温度の場合(ステップS22のNo)、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策線速DF1に制御し(ステップS24)、印刷開始する(ステップS25)。
【0059】
印刷開始した後、定着制御部201は、再度冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高いかを判別する(ステップS26)。冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高い場合(ステップS26のYes)、定着制御部201は、通常時の通紙時の線速制御Dにて制御を行う(ステップS27)。
【0060】
冷却部109の温度THPが閾値TFHP以下の温度の場合(ステップS26のNo)、定着制御部201は、加圧ローラ速度制御部20によって定着線速を表裏位置ズレ対策線速DF1に制御して通紙を継続する(ステップS28)。
【0061】
さらに、印刷継続要求がある場合は(ステップS29のYes)、定着制御部201は、ステップS26に戻り、再度冷却部109の温度によって定着線速制御を判別することを繰り返す。そして、定着制御部201は、印刷継続要求がなくなった時点で(ステップS29のNo)、処理を終了とする。
【0062】
ここで、図10は冷却部109の温度に基づく定着線速制御時の温度推移の一例について説明する図である。図10は、電源ONなどの立上げ要求があった際に、定着部108(加熱ローラ3)の線速推移の一例を表したものである。図10に示すように、印刷要求がきた場合に、立ち上げ印刷準備後、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下であるため、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策線速VF1へ制御する。
【0063】
その後、通紙開始されるが、まだ冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下であるため、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策線速VF1のままで制御する。さらに通紙が継続され、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHPより高い温度となったところで、定着制御部201は、通常線速制御にて線速Vで制御する。
【0064】
ここで、立上げ/印刷準備時の線速は一例であり、通紙中の通常線速と異なる線速であってもよい。ここで、各線速の一例を挙げる。下記線速は一例であり、VF1<Vであることを特徴とする。
F1:380mm/s V:420mm/s
【0065】
次に、定着制御部201による定着ニップ幅制御フロー(ステップS4)について説明する。
【0066】
図11は、定着ニップ幅制御の流れを概略的に示すフローチャートである。図11に示すように、定着制御部201は、印刷要求がきた場合(ステップS31)、冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高いかを判別する(ステップS32)。冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高い場合(ステップS32のYes)、定着制御部201は、通常の定着ニップ幅制御(H)にて通紙を開始する(ステップS33)。
【0067】
一方、冷却部109の温度THPが閾値TFHP以下の温度の場合(ステップS32のNo)、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策ニップ幅HF1に制御し(ステップS34)、印刷開始する(ステップS35)。
【0068】
印刷開始した後、定着制御部201は、再度冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高いかを判別する(ステップS36)。冷却部109の温度THPが閾値TFHPより高い場合(ステップS36のYes)、定着制御部201は、通常時のニップ幅制御Hにて制御を行う(ステップS37)。
【0069】
冷却部109の温度THPが閾値TFHP以下の温度の場合(ステップS36のNo)、定着制御部201は、加圧ニップ制御部21によって定着ニップ幅を表裏位置ズレ対策ニップ幅HF1に制御して通紙を継続する(ステップS38)。
【0070】
さらに、印刷継続要求がある場合は(ステップS39のYes)、定着制御部201は、ステップS36に戻り、再度冷却部109の温度によって定着ニップ幅制御を判別することを繰り返す。そして、定着制御部201は、印刷継続要求がなくなった時点で(ステップS39のNo)、処理を終了とする。
【0071】
ここで、図12は冷却部109の温度に基づく定着ニップ幅制御時の温度推移の一例について説明する図である。図12は、電源ONなどの立上げ要求があった際に、定着部108(加熱ローラ3)のニップ幅推移の一例を表したものである。図12に示すように、印刷要求がきた場合に、立ち上げ印刷準備後、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下であるため、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策ニップ幅HF1へ制御する。
【0072】
その後、通紙開始されるが、まだ冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHP以下であるため、定着制御部201は、表裏位置ズレ対策ニップ幅HF1のままで制御する。さらに通紙が継続され、冷却部109(ヒートパイプ)温度THPが閾値TFHPより高い温度となったところで、定着制御部201は、通常ニップ幅制御にてニップ幅Hで制御する。
【0073】
ここで、立上げ/印刷準備時のニップ幅は一例であり、通紙中の通常ニップ幅と異なるニップ幅であってもよい。ここで、各ニップ幅の一例を挙げる。下記ニップ幅は一例であり、HF1>Hであることを特徴とする。
F1:17.5mm H:16mm
【0074】
このように本実施の形態によれば、印刷継続により冷却部の温度が上昇しても印刷の表裏位置ズレを低減することができる。
【0075】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置101を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
19 定着温度制御部
20 定着線速制御部
21 定着ニップ幅制御部
101 画像形成装置
108 定着部
109 冷却部
200 画像形成部
201 定着制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【文献】特開2011-180312号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12