(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】膜分離活性汚泥装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/20 20060101AFI20220830BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20220830BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220830BHJP
C02F 3/12 20060101ALI20220830BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220830BHJP
【FI】
C02F3/20 Z
B01F23/23
C02F1/44 A
C02F3/12 S
B01F25/40
(21)【出願番号】P 2018228460
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】李 胤制
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-111494(JP,A)
【文献】特開2018-103134(JP,A)
【文献】特開2018-103135(JP,A)
【文献】特開2018-079442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
3/12- 3/26
7/00
B01F 21/00-25/90
B01D 53/22
61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、被処理水中で間欠的に曝気を行う散気装置
と、を備える膜分離活性汚泥装置であって、
前記散気装置は、
被処理水中に浸漬され、内部が空洞で、下部に被処理水流入部が形成された本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、上側が開口し、かつ、側面側及び底面側が気密に封止された第1導出部と、
前記本体部の上部から下方に延びるように設けられ、両端が開口した複数の第2導出部と、を備え、
各々の前記第2導出部は、それぞれの下端が前記第1導出部の下部から離間した状態で、前記第1導出部の上側から前記第1導出部内に部分的に入り込み、
前記本体部の上部には、平面視で前記本体部の内部における前記第1導出部の外側に空気を供給する空気供給口が形成され、
平面視で前記本体部の上部の前記空気供給口と前記第1導出部の間から下方に延び、前記本体部の内部における前記空気供給口が形成されている部分に空気溜り部を形成させる仕切壁が設けられた、
膜分離活性汚泥装置。
【請求項2】
前記仕切壁の下端の位置が前記第1導出部の上端よりも低い、請求項1に記載の
膜分離活性汚泥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業廃水や生活廃水は、廃水中に含まれる有機物等を取り除く処理が施されてから、工業用水として再利用されるか、もしくは河川等に放流される。工業廃水等の処理方法としては、例えば、曝気して好気的な微生物に有機物等を分解させる活性汚泥法が挙げられる。
【0003】
活性汚泥法による処理と、分離膜モジュールによる膜ろ過とを組み合わせた膜分離活性汚泥(MBR)法による処理が知られている。MBR法による処理では、膜ろ過を継続するに従って分離膜表面に有機物等が堆積することにより、ろ過流量の低下や、膜間差圧の上昇が生じることがある。そのため、MBR法による処理では、一般に膜モジュールの下方に散気装置を設置し、散気装置で発生させた気泡が膜表面に接触するときの衝撃、もしくは気泡の発生に伴う水流によって膜自体を振動させて、膜表面への有機物等の堆積を抑制している。
【0004】
散気装置としては、曝気時の気泡のサイズが大きく、膜表面の洗浄性に優れることから、サイフォンの原理を利用して間欠的に曝気する散気装置が提案されている。例えば、内部が空洞で下方が解放され、上部に空気供給口が形成された散気ケースと、散気ケース内に設けられ、上方が解放された箱状(例えば、上方が解放され、側面側及び底面側が気密に封止された形状)の第1導出部と、散気ケースの上部から第1導出部内に向かって下方に延びる複数の管状の第2導出部とを備える散気装置が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-103134号公報
【文献】特開2018-103135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2のような従来の散気装置では、空気供給口が汚泥で閉塞することで、上方の膜モジュールの膜表面を安定して洗浄できないことがある。また、散気装置はコンパクトであるほどコスト面で有利である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされてものであって、サイフォンの原理を利用して間欠的に曝気でき、装置を過度に大型化させることなく、空気供給口が汚泥で閉塞することを抑制できる散気装置、及び前記散気装置を用いた膜分離活性汚泥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]被処理水中で間欠的に曝気を行う散気装置であって、
被処理水中に浸漬され、内部が空洞で、下部に被処理水流入部が形成された本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、上側が開口し、かつ、側面側及び底面側が気密に封止された第1導出部と、
前記本体部の上部から下方に延びるように設けられ、両端が開口した複数の第2導出部と、を備え、
各々の前記第2導出部は、それぞれの下端が前記第1導出部の下部から離間した状態で、前記第1導出部の上側から前記第1導出部内に部分的に入り込み、
前記本体部の上部には、平面視で前記本体部の内部における前記第1導出部の外側に空気を供給する空気供給口が形成され、
平面視で前記本体部の上部の前記空気供給口と前記第1導出部の間から下方に延び、前記本体部の内部における前記空気供給口が形成されている部分に空気溜り部を形成させる仕切壁が設けられた、散気装置。
[2]前記仕切壁の下端の位置が前記第1導出部の上端よりも低い、[1]に記載の散気装置。
[3]活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、[1]又は[2]に記載の散気装置と、を備える膜分離活性汚泥装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイフォンの原理を利用して間欠的に曝気でき、装置を過度に大型化させることなく、空気供給口が汚泥で閉塞することを抑制できる散気装置、及び前記散気装置を用いた膜分離活性汚泥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】水処理装置の一例を示した概略模式図である。
【
図2】本発明の散気装置の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
〔水処理装置〕
図1に示すように、水処理装置1000は、活性汚泥処理槽11と、活性汚泥処理槽11の後段に設けられた膜分離槽21と、膜分離槽21の後段に設けられた処理水槽41とを備えている。さらに、水処理装置1000は、図示を省略するが、活性汚泥処理槽11に流入する原水の流量を調整する流量調整槽、膜分離槽21から余剰汚泥を引く抜く引抜ポンプ、膜分離槽21に薬液や希釈水を送液する送液手段、及び処理水槽41から工場や河川等に処理水を放流する放流手段等を備えている。
【0013】
活性汚泥処理槽11は、活性汚泥処理を行うために活性汚泥を充填するものである。
活性汚泥処理槽11には、第1の流路12と第2の流路13とが接続されている。第1の流路12は、工場や家庭等から排出された原水を活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。第2の流路13は、活性汚泥処理槽11から排出された汚泥含有処理水(被処理水)を膜分離槽21に流入させる流路である。
【0014】
活性汚泥処理槽11内には槽内を好気条件に維持するために曝気装置14が設置されている。
曝気装置14は、活性汚泥処理槽11内で曝気する曝気管14aと、曝気管14aに空気を供給する供給管14bと、空気を送気するブロア14cとを備えている。
曝気管14aとしては、ブロア14cから供給される空気を上方へ吐出できるものであれば特に限定されず、例えば、穴あきの単管やメンブレンタイプのものが挙げられる。
【0015】
膜分離槽21は、活性汚泥処理槽11から送られてきた、活性汚泥及び生物処理水を含む汚泥含有処理水を溜めるものである。
膜分離槽21は、本発明の一態様を適用した膜分離活性汚泥装置100(以下、「MBR装置100」と称することがある。)を備えている。MBR装置100については後述する。
【0016】
膜分離槽21と活性汚泥処理槽11には汚泥返送手段30が接続されている。汚泥返送手段30は、膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に、汚泥含有処理水の一部を返送するものである。
汚泥返送手段30は、第4の流路31を備えている。第4の流路31は、汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から排出し、活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。
第4の流路31には、ポンプ31aが設置されている。これにより、膜分離槽21内の汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送することができる。
【0017】
処理水槽41は、汚泥含有処理水を膜分離した後の処理水を貯留するものである。
【0018】
<膜分離活性汚泥装置>
MBR装置100は、複数の膜モジュール22と、それら膜モジュール22の下方に設けられた散気装置10と、を備えている。
【0019】
膜モジュール22は、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離するものである。膜モジュール22は分離膜を備え、この分離膜により汚泥含有処理水が生物処理水と活性汚泥とに固液分離(膜分離)される。
【0020】
分離膜としては、分離能を有するものであれば特に限定されず、例えば、中空糸膜、平膜、チューブラ膜、モノリス型膜等が挙げられる。これらの中でも、容積充填率が高いことから、中空糸膜が好ましい。
【0021】
分離膜として中空糸膜を用いる場合、その材質としては、例えば、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリフッ化ビニリデンフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)等が挙げられる。これらの中でも、中空糸膜の材質としては、耐薬品性やpH変化に強い点から、PVDF、PTFEが好ましい。
分離膜としてモノリス型膜を用いる場合は、セラミック製の膜を用いることが好ましい。
【0022】
分離膜に形成される微細孔の平均孔径としては、一般に限外分離膜と呼ばれる膜で0.001~0.1μm程度であり、一般に精密分離膜と呼ばれる膜で0.1~1μm程度である。本実施形態においては平均孔径が前記範囲内である分離膜を用いることが好ましい。
【0023】
膜モジュール22には、第3の流路33が接続されている。第3の流路33は、分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出し、処理水槽41に流入させる流路である。
第3の流路33には、ポンプ33aが設置されている。これにより、膜モジュール22の分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出できるようになっている。
【0024】
散気装置10は、汚泥含有処理水(被処理水)中で間欠的に曝気を行う散気装置である。散気装置10は、
図2~4に示すように、本体部50と、第1導出部52と、複数の第2導出部54と、仕切壁56と、を備えている。散気装置10は、膜分離槽21内において被処理水中に浸漬された状態で設けられる。
【0025】
本体部50は、内部が空洞の直方体状の筐体であり、下部が解放されて被処理水流入部58が形成されている。本体部50が被処理水中に浸漬された状態では、被処理水流入部58から被処理水が本体部50の内部に浸入する。
なお、本体部50の形状は、直方体状には限定されず、例えば、立方体状、円柱状等であってもよい。
【0026】
第1導出部52は、直方体状の上側が開口し、かつ、側面側及び底面側が気密に封止された部材(例えば、箱状の部材)であり、本体部50の内部に設けられている。第1導出部52は、第1導出部52の上端52aが本体部50の上部50aから離間した状態で本体部50の内部に配置されている。
なお、第1導出部52の形状は、直方体状には限定されず、本体部50の形状、第2導出部54の配置等に応じて適宜設定でき、例えば、立方体状、円筒状等であってもよい。
【0027】
複数の第2導出部54は、例えば、両端が開口した管状であり、本体部50の上部50aから下方に延びるように設けられている。各々の第2導出部54の上側開口端54aは散気穴となる。
散気装置10では、本体部50の内部における第1導出部52の上端52aから第2導出部54の下端54cまでの空間がサイフォン室70となり、サイフォン室70に貯留されている空気が後述のようにサイフォンの原理によって各第2導出部54から間欠的に曝気される。
【0028】
この例の各々の第2導出部54は、平面視で本体部50の長手方向に互いに間隔を空けて並んで設けられている。長手方向に並ぶ複数の第2導出部54は、等間隔に配置されていてもよく、隣り合う第2導出部54ごとに間隔が変わるように配置されていてもよい。各々の第2導出部54から均等に曝気されやすい点では、複数の第2導出部54は等間隔に配置されていることが好ましい。
【0029】
各々の第2導出部54は、それぞれの下端54cが第1導出部52の下部52bから離間した状態で、第1導出部52の上側から第1導出部52内に部分的に入り込んでいる。
各第2導出部54の上側開口端54aからの曝気を均等にしやすい点では、各々の第2導出部54の下側開口端54bの上下方向の位置は、この例のように一致していることが好ましい。なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、各々の第2導出部54の下側開口端54bの上下方向の位置がずれていてもよい。
【0030】
また、各第2導出部54は、上側の一部が本体部50の上部50aから上方に突き出た状態になっている。なお、散気装置10の態様は、各第2導出部54の上側が本体部50の上部50aから突き出た態様には限定されず、例えば、各第2導出部54の上側開口端54aが本体部50の上面と一致している態様であってもよい。
【0031】
第2導出部54の形状は、この例では円筒状である。なお、第2導出部54の形状は円筒状には限定されず、例えば、四角筒状等であってもよい。
第2導出部54の流路断面積は、適宜設定でき、例えば、100~2000mm2とすることができる。気泡形状、間欠曝気性、均等曝気性、中空糸膜の洗浄性及び空気供給量(省エネルギー性)等の観点から、第2導出部54の流路断面積は、500~1750mm2が好ましく、750~1600mm2がより好ましい。
【0032】
第2導出部54の数は、この例では5本であるが、4本以下であってもよく、6本以上であってもよい。第2導出部54の数は、適宜設定でき、例えば、4~10本とすることができる。
【0033】
散気装置10においては、第1導出部52及び複数の第2導出部54が、本体部50における長手方向の一方の端部側に偏って設けられており、本体部50の上部50aの他方の端部側に、空気供給口60が形成されている。このように、本体部50の上部には、平面視で本体部50の内部における第1導出部52の外側に空気が供給されるように空気供給口60が形成されている。
【0034】
空気供給口60は、本体部50の上部50aから上方に突き出た空気供給部62に通じており、空気供給部62はブロア1bと配管1cで繋がれている。ブロア1bから配管1cを通じて空気供給口60から本体部50内に供給された空気は、第1導出部52の上側から第1導出部52内に入り、各々の第2導出部54を通って上側開口端54aから本体部50の外部に放出される。
【0035】
平面視で、本体部50の上部50aの空気供給口60と第1導出部52の間には、本体部50の上部50aに対して垂直に下方に延びる板状の仕切壁56が設けられている。仕切壁56は、本体部50の短手方向の一方の側壁50bの内面から他方の側壁50cの内面まで達するように設けられている。これにより、本体部50の内部における仕切壁56によりも空気供給口60側の部分には、空気溜り部80が形成されている。
【0036】
平面視で本体部の上部の空気供給口と第1導出部の間に仕切壁が設けられて、本体部の内部における仕切壁によりも空気供給口側に空気溜り部が形成されることで、散気装置の運転中に空気供給口に被処理水が接触することが抑制される。そのため、空気供給口に汚泥が付着して乾燥し、空気供給口が汚泥で閉塞することを抑制することができる。
【0037】
散気装置10では、仕切壁56の下端56aの位置は、第1導出部52の上端52aよりも低くなっている。本発明では、この例のように、仕切壁の下端の位置が第1導出部の上端よりも低くなっていることが好ましい。これにより、空気供給口が汚泥で閉塞することを抑制しつつ、散気装置をよりコンパクトにすることができる。
【0038】
仕切壁56の下端56aと第1導出部52の上端52aの上下方向の距離d1は、10mm以上が好ましく、50mm以上がより好ましい。距離d1が前記範囲の下限値以上であれば、空気供給口が汚泥で閉塞することを抑制しやすい。
【0039】
本体部50、第1導出部52、第2導出部54及び仕切壁56の材質は、特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリフェニレンスルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリスルフォン樹脂(PSf)、ポリエーテルスルフォン樹脂(PES)等が挙げられる。本体部50、第1導出部52、第2導出部54及び仕切壁56の材質は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。また、ステンレス(SUS304系、SUS316系)等の金属製であってもよい。
【0040】
以下、散気装置10の作用機構について説明する。散気装置10においては、サイフォンの原理によって間欠的に曝気が起こる。
具体的には、運転開始前においては、本体部50の内部は仕切壁56の下端56aまで汚泥含有処理水(被処理水)で満たされている。ブロア1bから配管1cを通じて空気を送り、空気供給部62を通じて空気供給口60から本体部50内に空気を連続的に供給すると、本体部50内の汚泥含有処理水が被処理水流入部58から押し出され、本体部50内の汚泥含有処理水の液面が次第に降下する。本体部50内の汚泥含有処理水の液面の高さが第2導出部54の下端54cよりも低くなると、第2導出部54内とサイフォン室70との2つの気液界面高さの差によって空気が第2導出部54内に吸い込まれ、第2導出部54の上側開口端54a(散気穴)から一挙に放出される。このようにして曝気が起こると、それに伴って被処理水流入部58から汚泥含有処理水が本体部50に流入し、本体部50内の汚泥含有処理水の液面の高さが第1導出部52の上端52a付近まで上昇する。そして、再び本体部50内の汚泥含有処理水の液面の高さが第2導出部54の下端54cよりも低くなったときに次の曝気が起こる。
【0041】
散気装置10においては、仕切壁56によって本体部50の内部の空気供給口60側に空気溜り部80が形成されている。そのため、運転中に本体部50内の汚泥含有処理水の液面が上下動しても、空気供給口60に汚泥含有処理水が付着することが抑制される。そのため、空気供給口60に汚泥が付着して乾燥し、空気供給口60が汚泥で閉塞することが抑制されるため、膜モジュール22の膜表面を安定して洗浄することができる。
【0042】
〔水処理方法〕
以下、前記した水処理装置1000を用いた水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法は、活性汚泥を用いて原水を活性汚泥処理する活性汚泥処理工程と、活性汚泥処理工程で得られた汚泥含有処理水を膜分離する膜分離工程と、を有している。
【0043】
(活性汚泥処理工程)
水処理装置1000による水処理方法では、工場や家庭等から排出された工業廃水や生活廃水等の廃水(原水)を第1の流路12を通じて活性汚泥処理槽11に流入させ、活性汚泥処理槽11で活性汚泥処理し、生物処理水とする。処理後の汚泥含有処理水(被処理水)は、第2の流路13を通じて膜分離槽21に流入させる。
【0044】
(膜分離工程)
膜分離槽21では、MBR装置100の膜モジュール22により、活性汚泥及び生物処理水を含む汚泥含有処理水(被処理水)を膜分離処理する。膜分離処理中においては、散気装置10により曝気を行う。
【0045】
汚泥含有処理水の一部は、汚泥返送手段30によって膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送する。膜モジュール22により汚泥含有処理水を膜分離した後の処理水は、第3の流路33を通じて処理水槽41に送って貯留する。処理水槽41で貯留する処理水は、工業用水として再利用したり、河川等に放流したりすることができる。
【0046】
なお、水処理方法は、活性汚泥処理槽11の中にMBR装置100が設けられた水処理装置を用いて、活性汚泥処理工程と膜分離工程とを同時に行ってもよい。
【0047】
以上説明したように、本発明では、散気装置の本体部の内部において、仕切壁によって空気供給口側に空気溜り部が形成されているため、運転中に空気供給口に被処理水が付着にくく、空気供給口が汚泥で閉塞することが抑制される。そのため、膜モジュールの膜表面を安定して洗浄することができる。
また、本発明では、本体部の内部に仕切壁を設けるため、散気装置を大型化させることなく、空気供給口が汚泥で閉塞することを抑制することができる。
【0048】
なお、本発明の散気装置は、前記した散気装置10には限定されない。
例えば、板状の仕切壁が、本体部の上部の内面に対して傾斜して設けられた散気装置であってもよい。本体部の上部の内面に対する板状の仕切壁の角度は、0~45°が好ましく、0~30°がより好ましい。前記角度が前記範囲内であれば、運転中に空気供給口が汚泥で閉塞することを抑制しやすい。
【0049】
本発明の散気装置は、複数の第2導出部が平面視で本体部の長手方向に一列に並ぶ態様には限定されず、例えば、複数の第2導出部が平面視で本体部の長手方向に二列以上に並んでいてもよい。
【0050】
本発明の散気装置は、本体部50内が1個以上の仕切壁で複数の領域に仕切られ、それらの領域にそれぞれ空気供給口60が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…散気装置、22…膜モジュール、50…本体部、52…第1導出部、54…第2導出部、56…仕切壁、58…被処理水流入部、60…空気供給口、70…サイフォン室、80…空気溜り部、100…膜分離活性汚泥装置。