(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】単結晶ウエハの製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 33/02 20060101AFI20220830BHJP
C30B 29/30 20060101ALI20220830BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20220830BHJP
H01L 41/337 20130101ALI20220830BHJP
H01L 41/338 20130101ALI20220830BHJP
H01L 41/332 20130101ALI20220830BHJP
【FI】
C30B33/02
C30B29/30 B
H01L41/187
H01L41/337
H01L41/338
H01L41/332
(21)【出願番号】P 2018244441
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山方 俊幸
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-119950(JP,A)
【文献】特開2004-331443(JP,A)
【文献】特開2006-321682(JP,A)
【文献】特開2017-122024(JP,A)
【文献】特開2018-24553(JP,A)
【文献】特表2008-500731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 33/02
C30B 29/30
H01L 41/187
H01L 41/337
H01L 41/338
H01L 41/332
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶を円盤状にスライスして単結晶ウエハとするスライス工程と、
前記単結晶ウエハを還元処理する還元処理工程と、
前記単結晶ウエハの両面を粗研磨するラッピング工程と、
粗研磨された前記単結晶ウエハの一方の面を鏡面研磨するポリッシュ工程と、
前記還元処理工程よりも後に行われ、前記単結晶ウエハの光透過率を測定する光透過率検査工程と、
前記光透過率検査工程の光透過率検査結果に基づき光透過率を調整するためのエッチングを行う光透過率調整エッチング工程と、を有する単結晶ウエハの製造方法。
【請求項2】
前記光透過率検査工程は、前記ポリッシュ工程よりも後に行われる請求項1に記載の単結晶ウエハの製造方法。
【請求項3】
前記光透過率検査工程は、前記還元処理工程と前記ポリッシュ工程との間に行われ、
前記光透過率調整エッチング工程は、前記ラッピング工程と前記ポリッシュ工程との間に行われる請求項1に記載の単結晶ウエハの製造方法。
【請求項4】
前記ラッピング工程の後に、加工歪みを除去する加工歪み除去エッチング工程を更に有し、
前記光透過率検査工程は、前記加工歪み除去エッチング工程よりも前に行われ、
前記光透過率調整エッチング工程は、前記加工歪み除去エッチング工程の後に連続して行われる請求項2に記載の単結晶ウエハの製造方法。
【請求項5】
前記ラッピング工程の後に、加工歪みを除去する加工歪み除去エッチング工程を更に有し、
前記光透過率検査工程は、前記加工歪み除去エッチング工程の直後に行われ、
前記光透過率調整エッチング工程は、前記光透過率検査工程の直後に行われる請求項2に記載の単結晶ウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電性酸化単結晶、例えば、タンタル酸リチウム(以下、「LT」と略記する)単結晶、および、ニオブ酸リチウム(以下、「LN」と略記する)単結晶は、融点がそれぞれ約1650℃、約1255℃、キュリー点がそれぞれ約600℃、約1200℃の強誘電体であり、圧電性を有する。このLT単結晶またはLN単結晶を用いて製造されたLTウエハやLNウエハは、携帯電話の信号ノイズ除去用の弾性表面波(SAW)フィルタやテレビ用フィルタ、光学素子などのデバイス材料として主に用いられている。そして、デバイスが必要とする特性によって、いずれかの単結晶ウエハが選択される。
【0003】
次に、LN単結晶ウエハを例に挙げ、その製造工程について説明する。LN単結晶は、チョクラルスキー法(CZ法)などの単結晶育成方法により、育成される。まず、インゴットの状態で、径の不足する結晶の端部をカットした後、LN単結晶には、単一分極化処理(ポーリング)が施される。このポーリング処理は、LN単結晶の<001>軸方向に、キュリー点以上の温度で電圧を印加することで、結晶を分極化させるものである。
【0004】
次に、弾性表面波素子などを作製する際の基準面、すなわち、結晶方位や弾性表面波の伝播方向を示す面となるオリエンテーションフラット(OF)を加工し、外径を整える円周研削加工が、LN単結晶に施される。これらの加工を施した後、LN単結晶は、ワイヤーソーなどの切断装置により、所望の結晶方位に沿って、所定の厚さの円盤状のウエハにスライスされる。
【0005】
得られたLN単結晶ウエハは、次のような加工を施される。まず、#400~#1000程度の番手のダイヤモンド砥石を用いたべべリング加工により、ウエハの外周に面取り加工を施して、以後のプロセスでの割れを防止するとともに、ウエハの直径を所定の大きさに成形する。
【0006】
次に、#800~#2500の番手の砥粒と水から成るスラリーを用いたラッピング加工により、LN単結晶ウエハの両面にラッピング加工を施す。これにより、スライスによるウエハ両面のダメージを取り除くとともに、平面度と平行度を得ながら、ウエハは所定の厚みに揃えられる。
【0007】
ウエハの外周は、SAWフィルタ製造時での割れを防止するために、仕上げとして、コロイダルシリカなどのスラリーを用いたメカノケミカルポリッシュにより、上述のべべリング加工後の端面を鏡面研磨する。
【0008】
そして、仕上げとして、粗面化した面の反対側にあたる表面を、コロイダルシリカなどのスラリーを用いたメカノケミカルポリッシュにより、鏡面研磨する。このようにして得られたLN単結晶ウエハは、通常、直径が3インチ~6インチ(76mm~152mm)、厚さが0.1mm~0.5mm程度の円盤状である。
【0009】
このような従来の方法で得られたウエハは、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいて、LN結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷がウエハ表面にチャージアップし、これにより生ずる放電が原因となってウエハ表面に形成した櫛形電極が破壊され、更にはウエハの割れ等が発生し、素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
【0010】
そこで、LN結晶の上記焦電性による不具合を解消するため、導電率を増大させる技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1のアルミニウム粉末(Al粉)及び酸化アルミニウム粉末(Al2O3粉)とからなる混合粉中にウエハを埋め込んで還元処理し、導電性を増大させる手法が提案されている。
【0011】
なお、導電性を増大させたLNウエハは、酸素空孔が導入されたことにより光吸収を起こすようになる。そして、観察される色調は、透過光では赤褐色系に、反射光では黒色に見えるため、導電性を増大させる還元処理は黒化処理とも呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、単結晶のロットやAl2O3粉の製造ロットが異なる等の原因で体積抵抗率が変動することがあり、これに伴い光透過率が変動し所定の範囲外になることがある。光透過率が高い場合は、再度還元処理を行うことにより所定の範囲に収めることが可能であるが、光透過率が低い場合は、現状では、これを修正することは難しい。
【0014】
そこで、本発明は、圧電性酸化物単結晶ウエハ等の単結晶ウエハの製造方法において、ウエハの光透過率測定にて、光透過率が所定の範囲より低い光透過率となった場合に、光透過率を向上させることができる圧電性酸化物単結晶ウエハ等の単結晶ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る単結晶ウエハの製造方法は、単結晶を円盤状にスライスして単結晶ウエハとするスライス工程と、
前記単結晶ウエハを還元処理する還元処理工程と、
前記単結晶ウエハの両面を粗研磨するラッピング工程と、
粗研磨された前記単結晶ウエハの一方の面を鏡面研磨するポリッシュ工程と、
前記還元工程よりも後に行われ、前記単結晶ウエハの光透過率を測定する光透過率測定工程と、
前記光透過率検査工程の光透過率検査結果に基づき光透過率を調整するためのエッチングを行う光透過率調整エッチング工程と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧電性酸化物単結晶ウエハ等の単結晶ウエハの光透過率が所定の範囲より低い透過率になった場合に、ウエハの光透過率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法の一例を示した図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法の一例を示した図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る単結晶の製造方法の一例の一連の工程を示した図である。
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る単結晶の製造方法により製造する圧電性酸化単結晶は、例えば、タンタル酸リチウム(LT)単結晶、および、ニオブ酸リチウム(LN)等の酸化物単結晶(単結晶とも呼ぶ)である。なお、以下の説明では、LN単結晶ウエハを例に挙げて説明する。
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る酸化物単結晶ウエハ等の単結晶ウエハの製造方法は、上述の圧電性酸化物単結晶を用いてウエハに加工するものである。
【0022】
LN単結晶は、チョクラルスキー法(CZ法)などの単結晶育成方法により育成される。チョクラルスキー法とは、原料粉末を溶融して得られた融液に、種結晶を浸けて引き上げることにより単結晶を成長させる育成方法であり、例えば高周波の誘導加熱装置等を用いて行うことで、大型の単結晶を安定的に製造することができる。育成されたLN単結晶インゴットには、単一分極化の処理(ポーリング)が施される。このポーリング処理は、育成したLN単結晶をキュリー点以上の温度に加熱し、Z軸方向に電圧を印加することで、単結晶を分極化させるものである。
【0023】
ポーリングされた単結晶は、直径の不足する単結晶の上下端部がカットされ、外径を整える円筒研削がLN単結晶に施される。また、弾性表面波素子などを作製する際の基準面、すなわち、結晶方位や弾性表面波の伝播方向を示す面には、オリエンテーションフラット加工が施される。
【0024】
ここまでが育成工程と呼ばれている。本実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法は、これ以降の加工工程に関する。
図1におけるステップS0が、育成工程の最終段階であり、ここまでで円筒形の単結晶が用意される。
【0025】
以下、加工工程について説明する。
【0026】
育成工程に続いて、ステップS10では、スライス工程が実施される。スライス工程では、LN単結晶を所望の結晶方位に沿って所定の厚さの円盤状の単結晶ウエハにスライスする。スライス加工は、例えば、一定ピッチで並行する複数の極細ワイヤー列に単結晶を押し当て、ワイヤーを線方向に送りながら、単結晶とワイヤーとの間に砥粒を含む加工液(スラリーともいう)を供給することによって研磨切断する方式により行われる。また、スライス加工は、例えば、ダイヤモンドを電着することにより、又は接着剤によって固定したワイヤーを線方向に送りながら、単結晶を研磨切断する方式を用いたワイヤーソー等によって行ってもよい。
【0027】
ステップS20では、還元処理工程が行われる。LN単結晶ウエハは、SAWフィルタの製造プロセスにおいて、LN単結晶の特性である焦電性のために、単結晶ウエハに割れ等が発生し、製造プロセスでの歩留まり低下が起きやすい。
【0028】
そこで、この問題を解決するために、還元処理工程では、公知の還元処理を行う。還元処理は、例えば、特許文献1に示すようにLN単結晶の上記還元剤として、Al(アルミニウム)が適用され、具体的にはAlとAl2O3の混合粉末中に単結晶ウエハを埋め込んで熱処理を行ってもよい。
【0029】
熱処理は、粉末を構成しているAl(アルミニウム)そのものの過剰な酸化による劣化を防ぐため、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス、真空等の雰囲気中で行うことが望ましい。また、熱処理温度は高温が望ましいが、単一分極化済みの単結晶ウエハが多分極化しないようにLN単結晶のキュリー温度以下に制限される。LN単結晶の場合は、500~1140℃の範囲内で熱処理を行い、LN単結晶ウエハを黒化させることにより、単結晶ウエハの高い光透過率を抑制すると共に、電気伝導度を高くし、もって単結晶ウエハの裏面からの戻り光を抑制し、同時に焦電性を低減する。
【0030】
還元処理工程(S20)を行うことで、SAWフィルタの製造プロセスでの歩留まり低下を回避することができる。
【0031】
ステップS30では、ベベル工程が行われる。ベベル工程では、単結晶ウエハの表面及び裏面のエッジが除去され、丸め加工される。なを、ベベル工程は必須ではなく、必要に応じて行うようにしてよい。
【0032】
ステップS40では、ラッピング工程が行われる。ラッピング工程では、還元処理された単結晶ウエハの両面にラッピング加工を施す。ラッピング工程は、ラッピング装置等を用いて表面と裏面をラッピング加工して厚さを揃える工程であり、以下、両面ラップ工程ともいう。
【0033】
ラッピング装置の下定盤と上定盤の間に単結晶ウエハを配置し、間に研磨液を供給して下定盤と上定盤を合わせてから回転させることで単結晶ウエハをラッピング加工する。ラッピング工程では、単結晶ウエハを支持固定したキャリアプレートを、下定盤と上定盤の間にセットして、炭化ケイ素等の砥粒と水、防錆剤、分散剤などを混濁した#800~#2000程度のスラリーを、下定盤と上定盤と単結晶ウエハの間に供給し、両者に圧力を加えながら滑り動かして、単結晶ウエハの両面を研磨加工する。ラッピング加工により、スライス時に受けた単結晶ウエハの両面のダメージを取り除くとともに、所定の平面度と平行度になるように、単結晶ウエハの厚さを所定の範囲に揃えることができる。ラッピング加工量は、例えば片側10μm~60μmとするのが好ましく、片側10μm~30μmとするのがより好ましい。砥粒は、所定の表面粗さになるよう砥粒を設定する。例えば炭化ケイ素砥粒のGC#1000や次の片面ポリシュ工程の研磨時間を短縮するため、GC#1000を用いた後、GC#2500に切り替えてもよい。一般的に、単結晶ウエハの裏面の粗さは、ラッピング加工面の表面粗さになるように設定されている。本実施形態では、ラッピング加工面の表面粗さRaは0.2~0.5μmとし、Raが0.2~0.3μmとなるのが好ましい。GC#1000を用いれば0.3μm前後になる。
【0034】
ステップS50では、加工歪み除去エッチング工程が行われる。加工歪み除去エッチング工程は、必ずしも必須ではなく、ラッピング工程後に、ラッピング工程やベベル加工等加工歪みを除去する目的で必要に応じて追加される。これは、加工歪みを除去することも目的としており、所定のエッチング液で一定時間単結晶ウエハをエッチング液内に浸漬して行われる。エッチング液や、エッチング方法は、後述する光透過率を調整のためのエッチングと同様である。エッチング時間は、ラッピング加工時の加工歪みの状況に応じて適宜調整できる。例えば、30分から3時間程度である。
【0035】
ステップS60では、エッジポリッシュ工程が行われる。エッジポリッシュ工程では、複数枚の単結晶ウエハのエッジをエッジポリッシュ手段に接触させ、エッジを鏡面研磨する。なお、エッジポリッシュ工程は必ずしも必須ではなく、必要に応じて行うようにしてよい。
【0036】
ステップS70では、ポリッシュ工程が行われる。ポリッシュ工程において、単結晶ウエハは、ラッピング工程により表面と裏面が粗研磨された後、表面・裏面いずれか一方の面を鏡面研磨(ポリッシュ)される。ポリッシュ工程は、ポリッシュ装置50により単結晶ウエハの使用面側(表面)をポリッシュ加工する工程である。
【0037】
ポリッシュ装置は、単結晶ウエハの裏面を上定盤のブロックに貼り付けるか吸着固定し、研磨布を貼り付けた下定盤にブロックを押し当て、単結晶ウエハの表面と研磨布の間に研磨液供給部から研磨液を供給し、単結晶ウエハと研磨布を回転させて単結晶ウエハを鏡面加工する装置である。
【0038】
また、上述のように、還元処理工程後からポリシュ工程の間に、単結晶ウエハの外周端を面取りするベベル工程、ベベル加工された単結晶ウエハの外周部を鏡面加工するエッジポリッシュ工程を追加してもよい。これらは、単結晶ウエハの温度変化によって単結晶ウエハの外周端部が起点となって単結晶ウエハに割れが発生することがあり、これの防止である。さらには洗浄工程等を適宜追加してもよい。
【0039】
このようにして、単結晶ウエハが製造され、その後、所定の検査が実施される。
【0040】
ステップS80では、形状検査が行われる。形状検査は、単結晶ウエハの形状が、基準を満たすかを検査する。外形は勿論のこと、反りが所定範囲内か否かも検査される。
【0041】
ステップS200では、光透過率検査が行われる。光透過率は、分光光度計を用いて検査される。単結晶ウエハの光透過率は、上記した還元処理工程の還元状況により左右される。特にアルミニウム粉末(Al粉)及び酸化アルミニウム粉末(Al2O3粉)とからなる混合粉中にウエハを埋め込んで還元処理する場合、単結晶のロットやAl2O3粉の製造ロットが異なる等により光透過率が変動することがある。このため、光透過率が所定の範囲外になることがある。光透過率が高い場合は、再度還元処理を行うことにより所定の範囲に収めることが可能であるが、光透過率が低い場合は、現状難しい状況であった。
【0042】
本発明の第1の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法では、ポリッシュ後に光透過率を測定しその結果に基づき、所定の範囲より光透過率が低い単結晶ウエハの表裏面をエッチングするエッチング工程を追加するものである。
【0043】
光透過率の測定は、分光光度計を用いて測定する。その時の波長は365nmとする。
光透過率の測定は、ポリッシュ工程後の完成に近い状態で単結晶ウエハを測定することが好ましい。
【0044】
光透過率を測定し、光透過率が基準より低い場合には、ステップS210の光透過率調整エッチング工程を行う。
【0045】
光透過率を調整のためのエッチング加工を行うエッチング工程は、光透過率を測定した後に行うものである。事前に光透過率を測定し、その結果に基づきエッチング時間等エッチング条件を適宜調整することで所定の光透過率を得るものである。
【0046】
本実施形態における光透過率調整エッチング工程のエッチング液は、特に限定はないが、例えば、フッ化水素水溶液と硝酸水溶液の混酸であるフッ硝酸を用いることができる。フッ化水素水溶液及び硝酸水溶液は、いずれも50%~60%程度の濃度の水溶液として市販されており、これらの水溶液を、フッ化水素酸水溶液と硝酸水溶液の体積比で1.5:1~1:1.5、通常は1:1となるように混合し、エッチング液とすることができる。このエッチング液に、単結晶ウエハを浸漬することでエッチングを行う。エッチング時間は、光透過率の状況により適宜調整される。エッチング時間が長い程、透過率は向上する傾向にある。エッチング時間は、例えば、30分から90分で、光透過率が3%~8%向上する。
【0047】
エッチングの終了後、単結晶ウエハをエッチング液から取り出し、水洗し、乾燥する。乾燥方法としては、真空乾燥、スピン乾燥、温風乾燥など公知の手段を用いることができる。
【0048】
光透過率調整エッチング工程を行うことにより、光透過率を向上させることができる。光透過率検査の結果に応じて、エッチング後に光透過率の条件を満たすようなエッチング工程の条件を予め定めておくことにより、確実に光透過率の条件を満たすような光透過率調整エッチングを行うことができる。
【0049】
なお、ステップS200の光透過率検査で、単結晶ウエハが所定の光透過率の条件を満たしていた場合には、ステップS210の光透過率調整エッチング工程は行う必要はない。
【0050】
ステップS90では、洗浄工程を行う。なお、洗浄工程は、各工程間に適宜追加してよい。
【0051】
ステップS100では、外観検査を行う。外観検査では、単結晶ウエハの外観を検査する。なお、ここでステップS200の光透過率検査を行ってもよい。しかしながら、光透過率検査において、光透過率が所定の基準を満たさなかった場合には、光透過率調整エッチング工程を行うことになるので、ステップS90の洗浄工程を行う前にステップS200の光透過率検査工程を行うことが好ましい。
【0052】
ステップS110では、外観検査に合格した単結晶ウエハの出荷が行われる。
【0053】
このように、第1の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法によれば、光透過率検査工程を実施し、光透過率が所定の基準に達しない場合に、光透過率調整エッチング工程を行うことにより、不良率を低下させ、歩留りを向上させることができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法の一例を示した図である。
【0055】
第2の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法においては、ステップS200の光透過率検査を、ステップS20の還元処理工程から、ステップS70のポリッシュ工程の間に行う。このように、光透過率検査を、ステップS20の還元処理工程とステップS70のポリッシュ工程との間に行ってもよい。
【0056】
また、第2の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法においては、ステップS90の洗浄工程が省略されている。これは、光透過率調整エッチングが、ステップS80の形状検査よりも前に行われており、ステップS80の形状検査とステップS100の外観検査の間にステップS90の洗浄を行う必要は無いからである。
【0057】
還元処理工程で光透過率が低下し、その後は光透過率を低下させる工程は特に存在しないので、還元処理工程の後であれば、いつでも光透過率検査工程を実施することができる。
【0058】
その際、ステップS20の還元処理工程とステップS50のエッチング工程の間に行うようにすると、生産性が向上する。つまり、光透過率検査工程で、光透過率が所定の基準に達しなかった場合には、光透過率調整エッチング工程を行う必要があるが、そのエッチング工程は、ステップS50の加工歪み除去エッチング工程と同一の条件でできるからである。即ち、エッチング工程の前に光透過率が不足であると分かった場合には、加工歪み除去エッチング工程の後、光透過率調整エッチング工程を連続して行うことができる。
【0059】
第2の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法によれば、加工歪み除去エッチング工程と光透過率調整エッチング工程を合体させることができ、1回のエッチングで加工歪みの除去と光透過率の調整を行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0060】
[第3の実施形態]
図3は、第3の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法の一例を示した図である。第3の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法では、加工歪み除去エッチング工程の後に光透過率検査工程を行っている。
【0061】
このように、生産性の観点から、ラッピング工程後の加工歪みを除去する目的でエッチング加工するエッチング工程後に測定を行ってもよい。このエッチング加工後の透過率は、ポリシュ後の光透過率とほぼ相関があり、エッチング加工後の光透過率を管理することで、光透過率を所定の範囲内に管理することができる。また、加工歪みを除去する目的でエッチング加工するエッチング工程後に光透過率を測定し、その後、光透過率測定結果に基づき光透過率を調整のためのエッチングを行うことで、単結晶ウエハを効率的よく製造することができる。また、後工程での光透過率不具合を事前に防止することが可能となる。
【0062】
この場合においても、第2の実施形態と同様に、ステップS90の洗浄工程が省略されている。第2の実施形態と同様に、光透過率調整エッチングが、ステップS80の形状検査よりも前に行われており、ステップS80の形状検査とステップS100の外観検査の間にステップS90の洗浄を行う必要は無いからである。
【0063】
加工歪みエッチング工程の後に光透過率検査工程を行うようにすれば、光透過率検査の結果、所定の光検査工程に達していなかった場合、すぐにエッチング工程に戻ることができる。
【0064】
また、エッチング工程の後、光透過率検査工程の精度が高まるので、生産性を高めつつ、光透過率検査を正確に行うことができる。
【0065】
このように、第3の実施形態に係る単結晶ウエハの製造方法によれば、光透過率検査の精度を高めつつ、生産性をも高めることができる。
【0066】
[実施例]
本発明の実施例、比較例について説明する。
【0067】
(実施例1)
チョクラルスキー法によりLN単結晶を育成した後、キュリー温度から融点の間でポーリングを行って、LN単結晶に単一分極処理を施した。その後、端部カットおよび円筒研削をした。次に、ワイヤーソーを用いて、直径6インチ、厚さ0.58mmのLN単結晶ウエハにスライスした。その後、アルミニウム粉末及び酸化アルミニウム粉末とからなる混合粉中に単結晶ウエハを埋め込んで還元処理した。
【0068】
次に、面取り装置を用いて、外周およびオリフラ部にべべリング加工し、外周およびオリフラ部に面取りを施した。
【0069】
次に、スラリー供給タンクを備えた、ラッピング装置を使用して、これらのLN単結晶ウエハをGC#2500の番手の砥粒と水から成るスラリーを用いて、両面ラッピングを施した。ウエハの厚さが0.53mmになるまで研磨した。
【0070】
ラッピング工程での加工歪み除去のため、エッチング槽にて、加工歪み除去エッチング処理を2時間行った。
【0071】
次に、コロイダルシリカ噴射下でエッジポリッシュ装置を使用して、端面を鏡面研磨した。
【0072】
次に、ポリッシュ装置を使用して、コロイダルシリカを吐出させながら、粗面化した面の片面のみを鏡面研磨した。
【0073】
片面鏡面研磨後のウエハを洗浄し、その後、ウエハの光透過率を、ロット内の抜き取りで、分光光度計((株)島津製作所製)にて波長365nmの光透過率を測定した。このとき、ウエハの光透過率は所定の範囲より2.0%低かった。そこで、光透過率調整エッチングを行った。この時のエッチング液は、フッ化水素酸(濃度50%)と硝酸(鹿1級 濃度60%)を1:1で混合したエッチング液とした。このエッチング液に30分浸漬した。
【0074】
その後、洗浄を行った。分光光度計で再度測定したところ、ウエハの光透過率は3.4%高くなり、所定の範囲内に入った。
【0075】
(実施例2)
実施例1と同様にして、ワイヤーソーを用いて直径6インチ、厚さ0.53mmのLN単結晶ウエハを作製し、べべリング加工により、外周、オリフラの面取りを施した後、厚さが0.53mmになるまで両面ラッピングを施し、加工歪み除去エッチング処理を行った。次に、ウエハ端面に、エッジポリッシュを施した。次に、片面のみの鏡面研磨を施した。その後、光透過率を測定し、所定の範囲より2.0%低かった。そこで、光透過率調整エッチングを60分行った。その後、洗浄を行った。分光光度計で再度測定したところ、ウエハの光透過率は5.8%高くなり、所定の範囲内に入った。
【0076】
(実施例3)
実施例1と同様にして、ワイヤーソーを用いて直径6インチ、厚さ0.53mmのLN単結晶ウエハを作製し、べべリング加工により、外周、オリフラの面取りを施した後、厚さが0.53mmになるまで両面ラッピングを施し、加工歪み除去エッチング処理を行った。次に、端面に、エッジポリッシュを施した。次に、片面のみの鏡面研磨を施した。その後、光透過率を測定し、所定の範囲より2.0%低かった。そこで、光透過率調整エッチングを90分行った。その後、洗浄を行った。分光光度計で再度測定したところ、ウエハの光透過率は7.8%高くなり、所定の範囲内に入った。
【0077】
(実施例4)
チョクラルスキー法によりLN単結晶を育成した後、キュリー温度から融点の間でポーリングを行って、LN単結晶に単一分極処理を施した。その後、端部カットおよび円筒研削をした。次に、ワイヤーソーを用いて、直径6インチ、厚さ0.58mmのLN単結晶ウエハにスライスした。その後、アルミニウム粉末及び酸化アルミニウム粉末とからなる混合粉中に単結晶ウエハを埋め込んで還元処理した。
【0078】
次に、面取り装置を用いて、外周およびオリフラ部にべべリング加工し、外周およびオリフラ部に面取りを施した。次に、スラリー供給タンクを備えた、ラッピング装置を使用して、これらのLN単結晶ウエハをGC#2500の番手の砥粒と水から成るスラリーを用いて、両面ラッピングを施した。ウエハの厚さが0.53mmになるまで研磨した。
【0079】
ラッピング工程での加工歪み除去させるため、エッチング槽にて、加工歪み除去エッチング処理を行った。この時のエッチング液は、フッ化水素酸(濃度50%)と硝酸(鹿1級 濃度60%)を1:1で混合したエッチング液とした。このエッチング液に2時間浸漬した。
【0080】
その後、分光光度計(株)島津製作所製)にて波長365nmの光透過率を測定した。このとき、ウエハの光透過率は所定の範囲より2.0%低かった。そこで、上述のエッチング液を使用し、追加で1時間光透過率調整エッチング処理を行った。
【0081】
次に、コロイダルシリカ噴射下でエッジポリッシュ装置を使用して、端面を鏡面研磨した。
【0082】
次に、ポリッシュ装置を使用して、コロイダルシリカを吐出させながら、粗面化した面の片面のみを鏡面研磨した。
【0083】
片面鏡面研磨後のウエハを洗浄し、その後、ウエハの光透過率を、ロット内の抜き取りで、分光光度計((株)島津製作所製)にて波長365nmの光透過率を測定した。ウエハの光透過率は還元処理後に測定した光透過率より5.7%高くなり、所定の範囲内に入った。
【0084】
(比較例)
実施例1と同様にして、ワイヤーソーを用いて直径6インチ、厚さ0.53mmのLN単結晶ウエハを作製し、べべリング加工により、外周、オリフラの面取りを施した後、厚さが0.53mmになるまで両面ラッピングを施し、加工歪み除去エッチング処理を行った。次に、端面に、エッジポリッシュを施した。次に、片面のみの鏡面研磨を施した。その後、光透過率を測定し、所定の範囲より2.0%低かった。
【0085】
このように、本実施例によれば、光透過率が低くても、その後に光透過率調整エッチング工程を行うことにより基準を満たすことができ、歩留りを向上させることができることが示された。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。