(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20220830BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2019520248
(86)(22)【出願日】2018-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2018019549
(87)【国際公開番号】W WO2018216664
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2017101174
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 佳道
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/093709(WO,A1)
【文献】特開昭49-073495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[U]で示される部分構造を有し、且つ、下記式[S1]、[S2]及びステロイド骨格からなる群から選ばれる側鎖構造を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCO-である。K
1及びK
2は、それぞれ独立して、-CH
2-基、-CHR
1a-基(R
1aは-OH基又は1価の有機基を表す。)であり、ここで、K
1及びK
2のいずれか一方が-C(O)基に置き換わってもよい。R
3及びR
4は、それぞれ独立して、炭素数1~7のアルキレン基である。*は、他の基に結合する部位を表す。)
【化2】
(X
1及びX
2は独立して、単結合、-(CH
2)
a-(aは1~15である。)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-((CH
2)
a1-A
1)
m1-(a1は1~15であり、A
1は酸素原子又はCOO-であり、m
1は1~2である。)である。G
1及びG
2は、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基又は炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基であり、該環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。m及びnは独立して0~3であって、これらの合計は1~4である。R
1は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基であり、これらの基における任意の水素原子はフッ素原子で置き換わっていてもよい。)
【化3】
(X
3は、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-COO-又はOCO-である。R
2は炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基である。これらの基における任意の水素原子はフッ素原子で置き換わっていてもよい。)
【請求項2】
前記式[U]で示される部分構造が、下記式[U-Ar]である請求項1に記載の液晶配向剤。
【化4】
(Y
1、Y
2、K
1、K
2、R
3及びR
4は、前記式(U)における定義と同じである。)
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体が、下記式[U-1]で示されるジアミンを原料の一部に用いて得られる請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化5】
(Y
Aは、前記式[U]で示される構造を有する有機基である。A
1及びA
2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキレン基である。)
【請求項4】
前記ジアミンが、下記式[Ua]で示されるジアミンである請求項3に記載の液晶配向剤。
【化6】
(Y
1、Y
2、K
1、K
2、R
3及びR
4は、前記式(U)における定義と同じであり、A
1及びA
2は、前記式[U-1]における定義と同じである。)
【請求項5】
前記ジアミンが、下記式[U-1a]~式[U-6a]で示されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンである請求項3又は4に記載の液晶配向剤。
【化7】
(A
1及びA
2は、前記式(
U-1)における定義と同じであり、Bocは、tert-ブトキシカルボニル基である。)
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体が、下記の式[S1-a]で示されるジアミンを原料の一部に用いた請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化8】
(Bは、前記式[S1]、[S2]又は下記式[
S3]であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキレン基である。mは1~4である。)
【化9】
(X
4は、-CONH-、-NHCO-、-O-、-COO-又はOCO-であり、R
3はステロイド骨格を有する構造である。)
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体が、下記式[4]で示されるテトラカルボン酸無水物を含むテトラカルボン酸成分を用いて得られるポリイミド前駆体である請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化10】
(Zは、下記の式[4a]~式[4k]からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。)
【化11】
(式[4a]中、Z
1~Z
4は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はベンゼン環である。式[4g]中、Z
5及びZ
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。)
【請求項8】
前記テトラカルボン酸無水物が、前記式[4]中のZが前記式[4a]及び式[4e]~式[4g]からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有するテトラカルボン酸無水物である請求項7に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
前記ポリイミド前駆体が、これを得るための全ジアミン成分100モル%中、前記式[Ua]で示されるジアミンを1~99モル%含有し、前記式[S1-a]で示されるジアミンを1~99モル%含有し、かつそれらの合計量として、5~100モル%含有するジアミンを用いて得られるポリイミド前駆体である請求項
6~8のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
前記ポリイミド前駆体が、前記式[Ua]で示されるジアミンを、全ジアミン成分100モル%中、5モル%以上含有するジアミンを用いて得られるポリイミド前駆体と、前記式[S1-a]で示されるジアミンを、全ジアミン成分100モル%中
、1モル以上%含有するジアミンを用いて得られるポリイミド前駆体との混合物である請求項
6~9のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、及び3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含有する請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項12】
1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を更に含有する請求項1~11のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項13】
エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基又はシクロカーボネート基を有する架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基又は低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、及び重合性不飽和結合を有する架橋性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性化合物を含有する請求項1~12のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項15】
電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ前記重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられる請求項14に記載の液晶配向膜。
【請求項16】
前記液晶配向膜が、活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を有する化合物を含有する液晶配向膜である請求項15に記載の液晶配向膜。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか一項に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、この液晶配向剤から得られる液晶配向膜、及びこの液晶配向膜を使用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、薄型・軽量を実現する表示デバイスとして、現在、広く使用されている。通常、この液晶表示素子には、液晶の配向状態を制御するために液晶配向膜が使用されている。
近年、液晶表示素子が、大画面の液晶テレビや高精細なモバイル用途(デジタルカメラや携帯電話の表示部分)に広く実用化されていることに伴い、従来に比べて使用される基板の大型化、基板段差の凹凸が大きくなってきている。そのような状況においても、表示特性の点から大型基板や段差に対して、均一に液晶配向膜が形成されることが求められている。
【0003】
また、液晶配向膜には、液晶の配向状態を制御すること(液晶配向性ともいう)とともに、液晶表示素子における信頼性や焼き付き特性などの電気特性についても高い機能が求められている。液晶配向膜としては、従来、ポリアミド酸又は可溶性ポリイミドのポリイミド系重合体が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の液晶配向膜に使用されているポリイミド系重合体は、溶媒に対しての溶解性が必ずしも十分でなく、液晶配向剤を基板上に塗布した際に、基板上で重合体成分が析出する(白化ともいう)する場合がある。この白化と呼ばれる現象は、液晶配向膜を生産するラインが大型化するに伴い深刻な問題となっている。これは、液晶配向剤が大気中の水分を含み、重合体の溶解性が低下することで発生するものと考えられる。
【0006】
また、白化が起こった場合は、液晶配向膜の塗膜均一性が低下して、均一な塗膜性が得られず、液晶表示素子における表示欠陥となる。
本発明の目的は、白化耐性及び塗膜均一性に優れる液晶配向剤、並びに液晶配向性に優れる液晶配向膜を提供することを目的とする。加えて、かかる液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特定構造を有する重合体を含有する液晶配向剤が、上記の目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
(1)下記式[U]で示される部分構造を有し、且つ、下記式[S1]、[S2]で示される構造及びステロイド骨格を有する構造から選ばれる少なくとも1種の側鎖構造を有するポリイミド前駆体及びポリイミドから選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。
【化1】
Y
1は、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCO-であり、K
1及びK
2は、それぞれ独立して-CH
2-基、-CHR
1a-基を表し(R
1aは-OH基又は1価の有機基を表す。)、K
1及びK
2のいずれか一方が-C(O)基に置き換わってもよく、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、炭素数1~7のアルキレン基であり、*は、他の基に結合する部位を表す。
【化2】
X
1及びX
2は独立して、単結合、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-、又は((CH
2)
a1-A
1)
m1-(複数のa1はそれぞれ独立して1~15の整数を示し、複数のA
1はそれぞれ独立して、酸素原子又はCOO-を示し、m
1は1~2である。)を示し、G
1及びG
2は独立して炭素数6~12の2価の芳香族基又は炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基であり、前記環状基上の任意の水素原子が、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよく、m及びnは独立して0~3の整数であって、これらの合計は1~4であり、R
1は炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルコキシ、又は炭素数2~20のアルコキシアルキルであり、これらの基における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【化3】
X
3は、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-COO-又はOCO-を示し、R
2は炭素数1~20のアルキル又は炭素数2~20のアルコキシアルキルであり、これらの基における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液晶配向剤は、白化耐性及び塗膜均一性に優れ、液晶配向性に優れる液晶配向膜を得ることができ、本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を有する液晶表示素子は、表示品位に優れたものとなり、種々の表示デバイスに好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<特定部分構造>
本発明の液晶配向剤には、式[U]で示される部分構造(特定部分構造ともいう。)を有し、且つ、式[S1]、[S2]及びステロイド骨格から選ばれる少なくとも1種の側鎖構造(特定側鎖構造ともいう。)を有する重合体(特定重合体ともいう。)が含有される。
【化4】
式[U]における、Y
1、Y
2、K
1、K
2、R
3、R
4、及び*の意味は、上記したとおりである。
【0010】
なお、K1及びK2が、-CHR1a-基である場合のR1aを構成する1価の有機基としては、炭化水素基;ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基又はカルボキシル基を有する炭化水素基;エーテル結合、エステル結合、アミド結合等の結合基によって連結された炭化水素基;ケイ素原子を含有する炭化水素基;ハロゲン化炭化水素基;アミノ基;アミノ基がtert-ブトキシカルボニル基等のカルバメート系の保護基によって保護された不活性基等が挙げられる。
ここにおける炭化水素基は、直鎖、分岐鎖若しくは環状鎖のいずれでもよく、また、飽和炭化水素でも不飽和炭化水素でもよい。また、炭化水素基の水素原子の一部は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、ケイ素原子、ハロゲン原子等に置き換えられてもよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等の結合基によって連結されていてもよい。
【0011】
また、R3及びR4を構成する炭素数1~7のアルキレン基としては、直鎖、分岐鎖若しくは環状鎖のいずれでもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン基、1-エチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基等が挙げられる。
【0012】
なかでも、式[U]におけるY1及びY2は、重合体の供給性の観点から、-O-、-COO-、又は-OCO-が好ましい。
また、K1及びK2は、なかでも、-CH2-基、-CH(OH)-基、-CO-基、-CH(CH3)-基、-CH(O-Boc)-基が好ましい。「Boc」は、tert-ブトキシカルボニル基を示す。また、R3及びR4は、なかでも、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、が好ましい。
【0013】
上記の式[U]で示される部分構造としては、好ましくは下記式[U-Ar]を挙げることができる。
【化5】
上記[U-Ar]中、Y
1、Y
2、K
1、K
2、R
3及びR
4は、前記式(U)中におけるY
1、Y
2、K
1、K
2、R
3及びR
4と同義であり、*は、他の基に結合する部位を表す。
【0014】
<特定側鎖構造>
特定重合体は、更に、下記式[S1]、[S2]及びステロイド骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の特定側鎖構造を有する。
【化6】
式[S1]におけるX
1、X
2、G
1、G
2、R
1、m及びnの意味は上記したとおりである。
【0015】
X1及びX2は、なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点からの観点から、単結合、-(CH2)a-(aは1~15である)、-O-、-CH2O-又はCOO-が好ましい。より好ましいくは、単結合、-(CH2)a-(aは1~10である)、-O-、-CH2O-、又はCOO-である。
【0016】
G1及びG2における炭素数6~12の2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン等を挙げることができる。また、炭素数3~8の2価の脂環式基としては、例えば、シクロプロピレン、シクロヘキシレン等を挙げられる。
G1及びG2は、なかでも、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン、シクロプロピレン又はシクロヘキシレンが好ましい。
R1は、なかでも、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシ基がより好ましい。
【0017】
式[S1]の好ましい具体例として、下記式[S1-x1]~[S1-x7]が挙げられる。
【化7】
【0018】
式[S1-x1]~[S1-x7]中、R1は炭素数1~20のアルキル基であり、Xpは、-(CH2)a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH3)-、-NH-、-O-、-CH2O-、-COO-、又は-OCO-である。A1は、-O-又は-COO-*(但し、「*」を付した結合手が(CH2)a2と結合する)であり、A2は、-O-又は*-COO-(ただし、「*」を付した結合手が(CH2)a2と結合する)であり、a1、a3は、それぞれ独立して、0又は1であり、a2は2~10であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基である。
【0019】
【化8】
式[S2]におけるX
3、R
2の定義は、上記したとおりである。
なかでも、X
3は、液晶配向性の観点から、-CONH-、-NHCO-、-O-、-CH
2O-、-COO-又はOCO-が好ましい。また、R
2は、液晶配向性の観点から、炭素数3~20のアルキル又は炭素数2~20のアルコキシアルキルが好ましい。
【0020】
ステロイド骨格を有する構造は、下記式[S3]で表すことができる。
【化9】
式[S3]中、X
4は、-CONH-、-NHCO-、-O-、-COO-又はOCO-であり、R
3は前記ステロイド骨格を有する構造を示す。
式[S3]の好ましい具体例として、下記式[S3-x]が挙られる。式中、*は結合位置を示す。
【0021】
【0022】
式[S3-x]としては、下記する組み合わせが好ましい。
式[X1]-式[Col1]-[G1]、式[X1]-式[Col1]-[G2]、式[X1]-式[Col2]-[G1]、式[X1]-式[Col2]-[G2]、式[X1]-式[Col3]-[G2]、式[X1]-式[Col4]-[G2]、式[X1]-式[Col3]-[G1]、式[X1]-式[Col4]-[G1]、式[X2]-式[Col1]-[G2]、式[X2]-式[Col2]-[G2]、式[X2]-式[Col1]-[G2]、式[X2]-式[Col2]-[G2]、式[X2]-式[Col1]-[G1]、式[X2]-式[Col2]-[G1]、式[X2]-式[Col3]-[G2]、式[X2]-式[Col4]-[G2]、式[X2]-式[Col1]-[G1]、式[X2]-式[Col4]-[G1]。
【0023】
ステロイド骨格を有する構造の具体例として、日本特開平4-281427号の段落[0024]に記載のステロイド化合物からヒドロキシ基を除いた構造、段落[0030]に記載のステロイド化合物から酸クロライド基を除いた構造、段落[0038]に記載のステロイド化合物からアミノ基を除いた構造、段落[0042]にステロイド化合物からハロゲン基を除いた構造や、日本特開平8-146421に記載の段落[0018]~[0022]に記載の構造を挙げることができる。
【0024】
<特定重合体>
本発明における特定重合体は、ポリイミド前駆体及びポリイミドから選ばれる少なくとも一種の重合体(総称してポリイミド系重合体ともいう。)である。なかでも、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体又はそのイミド化物であるポリイミドが好ましい。
ポリイミド前駆体は、下記式[A]で表される。
【化11】
【0025】
式[A]中、R1は4価の有機基であり、R2は2価の有機基であり、A1及びA2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキレン基であり、A3及びA4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキレン基又はアセチル基であり、nは正の整数である。
前記ジアミン成分としては、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミンが挙げられる。また、前記テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
【0026】
式[A]中のA1及びA2が水素原子であるポリアミド酸を得るためには、前記分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミンと、テトラカルボン酸又はテトラカルボン酸無水物とを反応させることで得ることができる。
式[A]中のA1及びA2が炭素数1~5のアルキレン基であるポリアミド酸アルキルエステルを得るためには、前記ジアミンと、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドとを反応させることで得ることができる。また、前記方法で得られたポリアミド酸に、式[A]で示されるA1及びA2の炭素数1~5のアルキレン基を導入することもできる。
【0027】
特定重合体の具体的な態様としては、前記式[U]の部分構造を有する構造単位と、前記式[S1]、[S2]の構造及びステロイド骨格を有する構造から選ばれる少なくとも1種の側鎖構造を有する構造単位とを含む重合体(以下、共重合体ともいう。)、前記式[U]の部分構造を有する構造単位を含む重合体と、前記式[S1]、[S2]及びステロイド骨格から選ばれる少なくとも1種の側鎖構造を有する構造単位を含む重合体と、の混合物(以下、重合体ブレンドともいう。)を挙げることができる。
【0028】
前記式[U]の部分構造を重合体中に導入する方法に特に制限は無いが、式[U]の構造を有するジアミン、具体的には、下記式[U-1]で示されるジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。
【化12】
【0029】
式[U-1]中、Y
Aは、前記式[U]の構造を有する有機基を示し、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキレン基を示す。
より具体的には、下記式[Ua]で示されるジアミンが好ましい。
【化13】
【0030】
式[Ua]中、Y1及びY2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCO-である。K1及びK2は、それぞれ独立して-CH2-基、又は-CHR1a-基を表し(R1aは-OH基又は1価の有機基を表す。)、ここで、K1及びK2のいずれか一方が-C(O)基に置き換わってもよい。R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1~7のアルキレン基である。ベンゼン環の任意の水素原子は、一価の有機基に置換されていてもよい。A1及びA2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキレン基を示す。
【0031】
上記アミン[Ua]の具体的構造としては、下記式[U-1a]~式[U-6a]が挙げられる。
【化14】
【0032】
上記式[U-1a]~式[U-6a]中、A1~A2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキレン基を示し、Boc基は、tert-ブトキシカルボニル基を示す。
【0033】
ジアミン[Ua]のより好まし具体例としては、下記式[UM-1]~式[UM-13]が挙げられる。
【化15】
【0034】
前記式[S1]、[S2]の構造及びステロイド骨格を有する構造から選ばれる少なくとも1種の側鎖構造を重合体中に導入する方法は特に制限は無いが、前記式[S1]、[S2]の構造及びステロイド骨格を有する構造から選ばれる側鎖構造を有するジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。
【0035】
具体的には、下記式[S1-a]で示されるジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。
【化16】
【0036】
式[S1-a]中、Bは、前記式[S1]、[S2]又は[S3]であり、A1及びA2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキレン基であり、特に、水素原子又は炭素数1又は2のアルキレン基が好ましい。mは1~4であり、特に、合成が容易である点で1が好ましい。
なお、式[S1]~[S3]の好ましい例は、前記の通りである。
【0037】
特定重合体が前記共重合体の場合、該共重合体を得る場合における前記式[Ua]で示されるジアミン及び前記式[S1-a]で示されるジアミンの使用量は、それぞれ、全ジアミン成分100モル%中、1~99モル%が好ましく、2~98モル%がより好ましい。
また、この場合における前記式[Ua]で示されるジアミン及び前記式[S1-a]で示されるジアミンの合計の使用量は、全ジアミン成分100モル%中、5~100モル%が好ましく、10~100モル%が好ましく、20~100モル%が特に好ましい。
【0038】
特定重合体が前記ブレンドの場合、前記式[Ua]で示されるジアミンの使用量は、前記式[Ua]の残基を構成単位に含む重合体に用いられるジアミン成分100モル%中、白化耐性を高める点で5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上が更に好ましい。
また、前記式[S1-a]のジアミンの使用量は、前記式[S1-a]の残基を構成単位に含む重合体に用いられるジアミン成分100モル%中、液晶配向性を高める点で1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましい。とりわけ好ましい具体例として、20モル%以上を挙げることができる。
【0039】
前記式[Ua]のジアミン及び前記式[S1-a]のジアミンは、特定重合体の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
特定重合体を得る場合のジアミン成分としては、前記式[Ua]のジアミン及び前記式[S1-a]のジアミン以外のその他のジアミン(その他ジアミンともいう)を用いることもできる。
【0040】
具体的には、国際公開公報WO2015/046374の段落[0169]に記載のジアミン、段落[0171]~[0172]に記載のカルボキシル基や水酸基を有するジアミン、段落[0173]~[0188]に記載の窒素含有複素環を有するジアミンや特開2016-218149号公報の段落[0050]に記載の窒素含有構造を有するジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等のオルガノシロキサン含有ジアミン、液晶表示素子とした際の液晶の応答速度を上げる目的で国際公開公報WO2015/033921に記載のラジカルが発生する部位を側鎖として有するジアミン、光照射によって共有結合を形成しうる官能基(光反応性基ともいう。)を有するジアミン等を挙げることができる。
【0041】
より好ましい具体例として、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、N-メチル(4,4’-ジアミノジフェニル)アミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1,4-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4-フェニレンビス[(4-アミノフェニル)メタノン]、1,4-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-アミノフェニル)イソフタレート、N,N’-(1,4-フェニレン)ビス(4-アミノベンズアミド)、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)へキサン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタン、1,9-ビス(4-アミノフェノキシ)ノナン、1,10-(4-アミノフェノキシ)デカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノへキサン、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸又は3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエタン-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-2,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、下記式(D-2-1)~式(D-2-8)のそれぞれで表される化合物、更には、これらのアミノ基が2級のアミノ基であるジアミンを挙げることができる。
【0042】
【0043】
本発明のその他ジアミンは、本発明の重合体の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
また、前記重合体ブレンドがその他のジアミンを含む場合、前記式[Ua]のジアミンの量は、前記式[Ua]の残基を構成単位に含む重合体に用いられるジアミン成分100モル%中、20~100モル%を挙げることができる。
【0044】
本発明の重合体、すなわち、ポリイミド系重合体を作製するためのテトラカルボン酸成分としては、下記の式[4]で示されるテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。その際、式[4]で示されるテトラカルボン酸二無水物だけでなく、そのテトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドを用いることもできる。
【化18】
【0045】
Zは下記[4a]~[4k]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。
【化19】
【0046】
式[4a]中、Z
1~Z
4は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はベンゼン環を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。Z
1~Z
4の好ましい具体例として、下記[4a-1]、[4a-2]の構造を挙げることができる。
【化20】
【0047】
式[4g]中、Z5及びZ6は水素原子又はメチル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。
式[4]中のZのなかで、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[4a]、式[4c]~式[4g]又は式[4k]で示される構造のテトラカルボン酸二無水物及びそのテトラカルボン酸誘導体が好ましい。より好ましいのは、式[4a]又は式[4e]~式[4g]で示される構造のものである。特に好ましいのは、[4a]、式[4e]又は式[4f]で示される構造のテトラカルボン酸二無水物及びそのテトラカルボン酸誘導体である。更に好ましい具体例として、[4a-1]、式[4a-2]、式[4e]、式[4f]で示される構造のテトラカルボン酸二無水物及びそのテトラカルボン酸誘導体を挙げることができる。
【0048】
本発明の重合体における式[4]で示されるテトラカルボン酸成分は、すべてのテトラカルボン酸成分100モル%中、1~100モル%であることが好ましい。なかでも、5~95モル%が好ましい。より好ましいのは、20~80モル%である。
本発明のテトラカルボン酸成分は、本発明の重合体の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0049】
本発明の重合体のポリイミド系重合体には、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を用いることもできる。
その他のテトラカルボン酸成分としては、以下に示すテトラカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
【0050】
すなわち、その他のテトラカルボン酸成分としては、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6-アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5-ピリジンテトラカルボン酸、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸又は1,3-ジフェニル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0051】
本発明のその他のテトラカルボン酸成分は、本発明の重合体の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0052】
<特定重合体の作製方法>
本発明において、重合体、すなわち、ポリイミド系重合体を作製するための方法は特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。一般的には、テトラカルボン酸二無水物及びそのテトラカルボン酸の誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸成分と、1種又は複数種のジアミンからなるジアミン成分とを反応させて、ポリアミド酸を得る方法が挙げられる。具体的には、テトラカルボン酸二無水物と1級又は2級のジアミンとを重縮合させてポリアミド酸を得る方法、テトラカルボン酸と1級又は2級のジアミンとを脱水重縮合反応させてポリアミド酸を得る方法又はテトラカルボン酸ジハライドと1級又は2級のジアミンとを重縮合させてポリアミド酸を得る方法が用いられる。
【0053】
上記重合体は、上記のようなテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることによって得ることができる。分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミンなどのモノアミン、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
【0054】
ポリアミド酸アルキルエステルを得るためには、カルボン酸基をジアルキルエステル化したテトラカルボン酸と1級又は2級のジアミンとを重縮合させる方法、カルボン酸基をジアルキルエステル化したテトラカルボン酸ジハライドと1級又は2級のジアミンとを重縮合させる方法又はポリアミド酸のカルボキシル基をエステルに変換する方法が用いられる。
【0055】
ポリイミドを得るには、前記のポリアミド酸又はポリアミド酸アルキルエステルを閉環させてポリイミドとする方法が用いられる。
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。下記に、反応に用いる溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0056】
例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
【0057】
【化21】
式[D-1]中、D
1は炭素数1~3のアルキレン基を示し、式[D-2]中、D
2は炭素数1~3のアルキレン基を示し、式[D-3]中、D
3は炭素数1~4のアルキレン基を示す。
【0058】
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶媒中で反応させる際には、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することができる。
【0059】
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8~1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
本発明のポリイミドは前記のポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0060】
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100~400℃、好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20℃~250℃、好ましくは0℃~180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン又はトリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸又は無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0061】
ポリイミド前駆体又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類又は炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0062】
ポリイミド前駆体及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性を確保することができる。
【0063】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜(樹脂被膜ともいう)を形成するための塗布溶液であり、特定重合体及び溶媒を含有する液晶配向膜を形成するための塗布溶液である。特定重合体は、ポリアミド酸、ポリアミド酸アルキルエステル及びポリイミドのいずれのポリイミド系重合体を用いても良い。
本発明の液晶配向剤におけるすべての重合体は、全てが特定重合体であってもよく、それ以外の他の重合体が混合されていても良い。それ以外の重合体としては、前記式[U]で示される部分構造、及び、前記式[S1]~[S2]で示される構造及びステロイド骨格を有する構造から選ばれる側鎖構造を持たないポリイミド系重合体が挙げられる。更には、セルロース系重合体、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリアミド又はポリシロキサンなども挙げられる。その際、それ以外の他の重合体の含有量として、特定重合体と上記他の重合体とを合わせた重合体100質量部に対して、5~90質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましい。
【0064】
また、本発明の液晶配向剤中の溶媒の含有量は、70~99.9質量%が好ましい。この含有量は、液晶配向剤の塗布方法や目的とする液晶配向膜の膜厚によって、適宜変更することができる。
本発明の液晶配向剤に用いる溶媒は、重合体を溶解させる溶媒(良溶媒ともいう)であれば特に限定されない。下記に、良溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどを挙げることができる。
【0065】
なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、又は3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドが好ましい。
更に、重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることが好ましい。
本発明の液晶配向剤における良溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5~99質量%であることが好ましい。なかでも、10~90質量%が好ましい。
【0066】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)を用いることができる。下記に、貧溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒又は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル又は4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどを挙げることができる。
【0067】
なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレンカーボネートが好ましい。
これら貧溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~95質量%であることが好ましい。なかでも、10~90質量%が好ましい。
【0068】
本発明の液晶配向剤は、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基又はシクロカーボネート基を有する架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、又は重合性不飽和結合を有する架橋性化合物を含有してもよい。これら置換基や重合性不飽和結合は、架橋性化合物中に2個以上有することが好ましい。
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物としては、例えば、国際公開公報WO2015/008846の段落[0087]に記載の化合物などが挙げられる。
オキセタン基を有する架橋性化合物は、具体的には、国際公開公報WO2011/132751の58頁~59頁に掲載される式[4a]~式[4k]で示される架橋性化合物が挙げられる。より好ましい具体例として、式[4b]、式[4d]、式[4k]でn=5の化合物を挙げることができる。
【0069】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物としては、具体的には、国際公開公報WO2012/014898の76頁~82頁に掲載される式[5-1]~式[5-42]で示される架橋性化合物が挙げられる。ヒドロキシル基及びアルコキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物としては、国際公開公報WO2015/008846の段落[0090]~[0092]に記載の化合物が挙げられる。
【0070】
重合性不飽和結合を有する架橋性化合物としては、例えば国際公開公報WO2011/132751の段落[0186]に記載の化合物が挙げられる。加えて、国際公開公報WO2011/132751の段落[0188]に記載の式[5]で示される化合物を用いることもできる。
上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。また、本発明の液晶配向剤に用いる架橋性化合物は、1種類であってもよく、2種類以上組み合わせてもよい。
本発明の液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して、0.1~150質量部であることが好ましい。なかでも、架橋反応が進行し目的の効果を発現させるためには、全ての重合体成分100質量部に対して0.1~100質量部が好ましい。より好ましいのは、1~50質量部である。
【0071】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R-30(以上、大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(以上、旭硝子社製)などが挙げられる。
【0072】
これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部である。
更に、本発明の液晶配向剤には、液晶配向膜中の電荷移動を促進して素子の電荷抜けを促進させる化合物として、国際公開公報WO2011/132751の69頁~73頁に掲載される、式[M1]~式[M156]で示される窒素含有複素環アミンを添加することもできる。このアミンは、液晶配向剤に直接添加しても構わないが、適当な溶媒で濃度0.1~10%、好ましくは1~7%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒としては、上述したポリイミド系重合体を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。
【0073】
本発明の液晶配向剤には、上記の貧溶媒、架橋性化合物、樹脂被膜又は液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物及び電荷抜けを促進させる化合物の他に、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0074】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、液晶配向膜として用いることができる。また、垂直配向用途などの場合では配向処理なしでも液晶配向膜として用いることができる。この際に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板なども用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウェハなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としてはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
【0075】
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0076】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、液晶配向剤に用いる溶媒に応じて、30~300℃、好ましくは30~250℃の温度で溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5~300nm、より好ましくは10~100nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜をラビング又は偏光紫外線照射などで処理する。
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により、本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製して液晶表示素子としたものである。
【0077】
液晶セルの作製方法としては、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。
更に、本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300~400nm、好ましくは310~360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40~120℃、好ましくは60~80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0078】
上記の液晶表示素子は、PSA(Polymer Sustained Alignment)方式により、液晶分子のプレチルトを制御するものである。PSA方式では、液晶材料中に少量の光重合性化合物、例えば光重合性モノマーを混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層に所定の電圧を印加した状態で光重合性化合物に紫外線などを照射し、生成した重合体によって液晶分子のプレチルトを制御する。重合体が生成するときの液晶分子の配向状態が電圧を取り去った後においても記憶されるので、液晶層に形成される電界などを制御することにより、液晶分子のプレチルトを調整することができる。また、PSA方式では、ラビング処理を必要としないので、ラビング処理によってプレチルトを制御することが難しい垂直配向型の液晶層の形成に適している。
【0079】
すなわち、本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、液晶セルを作製し、紫外線の照射及び加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合することで液晶分子の配向を制御するものとすることができる。
PSA方式の液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが挙げられる。
【0080】
液晶には、熱や紫外線照射により重合する重合性化合物が混合される。重合性化合物としては、アクリレート基やメタクリレート基等の重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物が挙げられる。その際、重合性化合物は、液晶成分の100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。重合性化合物が0.01質量部未満であると、重合性化合物が重合せずに液晶の配向制御できなくなり、10質量部よりも多くなると、未反応の重合性化合物が多くなって液晶表示素子の焼き付き特性が低下する。
液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射して重合性化合物を重合する。これにより、液晶分子の配向を制御することができる。
【0081】
加えて、本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加する工程を経て製造される液晶表示素子、すなわち、SC-PVAモードにも用いることが好ましい。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300~400nm、好ましくは310~360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40~120℃、好ましくは60~80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0082】
活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方より重合する重合性基を含む液晶配向膜を得るためには、この重合性基を含む化合物を液晶配向剤中に添加する方法や、重合性基を含む重合体成分を用いる方法が挙げられる。重合性基を含む重合体の具体例としては、前記光反応性基を有する重合体であれば特に限定されず、前記光反応性基を有するジアミンを用いて得られる重合体を挙げることができる。
SC-PVAモードの液晶セル作製の一例を挙げるならば、本発明の液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが挙げられる。
液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射することで、液晶分子の配向を制御することができる。
【0083】
以上のようにして、本発明の液晶配向剤は、長時間高温及び光の照射に曝された後でも、安定なプレチルト角が発現できる液晶配向膜を得ることができる。加えて、長時間光の照射に曝された後でも、電圧保持率の低下を抑制し、かつ直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早い液晶配向膜となる。よって、本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を有する液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビや中小型のカーナビゲーションシステムやスマートフォンなどに好適に利用することができる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、これらに限定して解釈されるものではない。下記で使用される化合物の略語及び評価方法等は、以下の通りである。
(ジアミン成分)
【化22】
【0085】
C1:1,3-ジアミノ-4-〔4-(トランス-4-n-ヘプチルシクロへキシル)フェノキシ〕ベンゼン
C2:1,3-ジアミノ-4-〔4-(トランス-4-n-ヘプチルシクロへキシル)フェノキシメチル〕ベンゼン
C3:1,3-ジアミノ-4-{4-〔トランス-4-(トランス-4-n-ペンチルシクロへキシル)シクロへキシル〕フェノキシ}ベンゼン
C4:下記の式[C4]で示されるジアミン
C5:1,3-ジアミノ-4-オクタデシルオキシベンゼン
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
(架橋性化合物)
【化28】
(溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 NEP:N-エチル-2-ピロリドン
γ-BL:γ-ブチロラクトン γ-VL:γ-バレロラクトン
CHN:シクロヘキサノン BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
EC:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
DME:ジプロピレングリコールジメチルエーテル: PC:プロピレンカーボネート
DAA:4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン
PGDA:プロピレングリコールジアセテート:
【0090】
(分子量の測定)
ポリイミド前駆体及びポリイミドの分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0091】
(ポリイミドのイミド化率の測定)
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0092】
(ポリイミド系重合体の合成)
<合成例1>
E2(7.10g,28.5mmol)、A1(5.00g,9.00mmol)及びC1(8.00g,21.0mmol)の混合物に、樹脂固形分濃度が25%となるようにNMPを加えて、50℃で6時間反応させた。次いで、樹脂固形分濃度が10%になるまでNMPで希釈し、ポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸のMnは、10,200、Mwは、24,500であった。
【0093】
<合成例2>
E1(5.60g,28.5mmol)、A1(5.00g,9.00mmol)及びC3(9.10g,21.0mmol)の混合物に、樹脂固形分濃度が25%となるようにNMPを加えて、50℃で6時間反応させた。次いで、樹脂固形分濃度が10%になるまでNMPで希釈し、ポリアミド酸溶液(2)を得た。このポリアミド酸のMnは、14,000、Mwは、30,500であった。
【0094】
<合成例3>
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(1)(30.0g)に、NEPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.42g)及びピリジン(2.65g)を加え、60℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(1946ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(3)を得た。このポリイミドのイミド化率は50%であり、Mnは11,500、Mwは31,300であった。
【0095】
<合成例4>
表1に示す組成にした以外は、合成例3と同様に実施してポリイミド粉末(4)を得た。
<合成例5>
E1(5.60g,28.5mmol)、A2(4.84g,14.3mmol)、D1(0.62g,5.70mmol)及びD2(1.30g,8.55mmol)を加え、更に樹脂固形分濃度が10%となるようにNMPを加えた。25℃で4時間反応させた後、ポリアミド酸溶液(5)を得た。このポリアミド酸のMnは、11,000、Mwは、25,100であった。
【0096】
<比較合成例1>
E2(9.50g,38.0mmol)、D3(2.60g,12.0mmol)及びC1(10.7g,28.0mmol)の混合物に、樹脂固形分濃度が25%となるようにNMPを加えて、50℃で6時間反応させた。次いで、樹脂固形分濃度が10%になるまでNMPで希釈し、ポリアミド酸溶液(R-1)を得た。このポリアミド酸のMnは、12,000、Mwは、28,500であった。
【0097】
上記合成例で得られたポリイミド系重合体を表1に示す。表1、4中、*1はポリアミド酸を表す。
【表1】
【0098】
<参考例1>
合成例1の合成手法で得られた樹脂固形分濃度10%のポリアミド酸溶液(1)(0.73g)に、純水(0.90g)を加え、25℃で攪拌した。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0099】
<比較参考例1>
比較合成例1の合成手法で得られた樹脂固形分濃度10%のポリアミド酸溶液(R-1)(0.73g)に、純水(0.90g)を加え、25℃で攪拌した。この液晶配向剤に、析出が見られ、均一な溶液は確認されなかった。
【0100】
(液晶配向剤の製造)
下記する実施例1~4及び比較例1では、液晶配向剤の製造例を記載する。この液晶配向剤は、評価のためにも使用される。
【0101】
<実施例1>
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(1)(3.50g)に、NEP(0.55g)、GBL(0.55g)及びPB(1.40g)を加え、25℃で6時間攪拌して、液晶配向剤(1)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
<実施例2>
合成例2で得られたポリアミド酸溶液(2)(3.50g)に、NMP(0.05g)、BCS(1.05g)及びDME(1.05g)を加え、25℃で6時間攪拌して、液晶配向剤(2)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0102】
<実施例3>
合成例3で得られたポリイミド粉末(3)(1.75g)に、CHN(22.5g)、γ-VL(11.6g)、PGME(22.5g)を加え、50℃で6時間攪拌した。更に及びK1(0.17g)を加え、25℃で4時間攪拌して、液晶配向剤(3)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0103】
<実施例4>
合成例4で得られたポリイミド粉末(4)(0.30g)に、NMP(2.70g)を加え、50℃で6時間攪拌した。更に合成例5で得られたポリアミド酸溶液(5)を7.00g加え、PC(6.58g)、NEP(6.50g)及びNMP(10.25g)を加え、25℃で4時間攪拌して、液晶配向剤(4)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0104】
<比較例1>
表2に示すように、比較合成例1で得られたポリアミド酸溶液(R-1)を使用した以外は、実施例1と同様にして、液晶配向剤(R1)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0105】
【表2】
なお、表2、5中、*1、*2、*3は、以下の意味を表わす。
*1:全ての重合体100質量部に対する架橋性化合物の質量部を示す。
*2:全ての溶媒100質量部に対する各溶媒の質量部を示す。
*3:液晶配向剤中のすべての重合体の占める割合を示す。
【0106】
(液晶配向剤の評価)
実施例及び比較例で得られたについて、下記する「白化耐性の評価」、「インクジェット塗布性の評価」、「液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(通常セル)」、及び「液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(PSAセル)」を行った。
【0107】
「白化耐性の評価」
縦横10cm角のCr製基板に液晶配向剤を1滴垂らして、温度40℃、湿度65%の条件下にて、液晶配向剤が白化するまでの時間を計測した。該時間が、30分未満をC、30分以上2時間未満をA、2時間以上をSとした。時間が長いほど良好とした。結果を表3に示す。
【表3】
【0108】
(インクジェット塗布性の評価)
液晶配向剤(1)~(4)を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、インクジェット塗布性の評価を行った。インクジェット塗布機には、HIS-200(日立プラントテクノロジー社製)を用いた。塗布は、純水及びイソプロピルアルコール(IPA)にて洗浄を行ったITO(酸化インジウムスズ)蒸着基板上に、ノズルピッチが0.423mm、スキャンピッチが0.5mm、塗布速度が40mm/秒、塗布から仮乾燥までの時間が60秒、仮乾燥はホットプレート上にて70℃で5分間の条件で行った。
得られた液晶配向膜付き基板の塗膜性を確認した。具体的には、塗膜をナトリウムランプの下で目視観察することで行い、ピンホールの有無を確認した。その結果、いずれの実施例で得られた液晶配向膜とも、塗膜上にピンホールは見られず、塗膜性に優れた液晶配向膜が得られた。
【0109】
(液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(通常セル))
実施例で得られた液晶配向剤(1)又は(3)を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶セルの作製(通常セル)を行った。次に、上記液晶配向剤を純水及びIPAにて洗浄を行った40×30mmITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)のITO面にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間、熱循環型クリーンオーブンにて230℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。なお、実施例で得られた液晶配向剤(2)又は(4)は、上記「液晶配向剤のインクジェット塗布性の評価」と同様の条件で、液晶配向膜付き基板を作製し、その後、熱循環型クリーンオーブンにて230℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmのポリイミド液晶配向膜付きのITO基板を得た。
次いで、このITO基板の塗膜面をロール径が120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数が1000rpm、ロール進行速度が50mm/sec、押し込み量が0.1mmの条件でラビング処理した。
【0110】
得られた液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、液晶配向膜面を内側にして孔径が6μmのスペーサーで挟んで組み合わせ、シール剤で周囲を接着して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶(MLC-6608、メルク・ジャパン社製)を注入し、注入口を封止して液晶セル(通常セル)を得た。いずれの液晶セルとも、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)での観察により、液晶は均一に配向していることを確認した。
【0111】
(液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(PSAセル))
下記の式で示される重合性化合物(1)を、ネマティック液晶(MLC-6608)100質量部に対して重合性化合物(1)を0.3質量部混合した液晶を使用した以外は、上記の「液晶セルの作製及びプレチルト角の評価(通常セル)」と同様の手順で液晶セルを作製した。
【化29】
【0112】
得られた液晶セルに、交流5Vの電圧を印加しながら、照度60mWのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、365nm換算で20J/cm2の紫外線照射を行い、液晶の配向方向が制御された液晶セル(PSAセル)を得た。液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は、50℃であった。いずれの液晶セルも、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)での観察により、液晶は均一に配向していることを確認した。
【0113】
上記の参考例から、本発明の重合体は、比較合成例から得られる重合体に比べて、水分が混入した場合に高い溶解性を示した。表3からの液晶配向剤は、比較例の液晶配向剤に比べて、高い白化耐性を示した。また、上記の「液晶配向剤のインクジェット塗布性の評価」、「液晶配向性の評価(通常セル)」、及び「液晶配向性の評価(PSAセル)」から、各種特性に優れることが明らかとなった。
【0114】
<合成例6~7>
表4に示す組成にした以外は、合成例1~5と同様にしてポリアミド酸溶液(6)及びポリイミド粉末(7)を得た。
【表4】
【0115】
<実施例5>
表5に示すように、合成例6で得られたポリアミド酸溶液(6)又は合成例7で得られたポリイミド粉末(7)を使用した以外は、実施例4と同様にして、液晶配向剤(5)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。液晶配向剤(5)を用いて前記PSAセルを作製したところ、液晶は均一に配向していた。
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の液晶配向剤は、例えば、大画面で高精細の液晶テレビや、中小型のカーナビゲーションシステムやスマートフォンなどに好適に使用でき、TN素子、STN素子、TFT液晶素子、特に垂直配向型の液晶表示素子に有用である。更に、本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜は、液晶表示素子を作製する際に、紫外線を照射する必要がある液晶表示素子に対しても有用である。
【0117】
なお、2017年5月22日に出願された日本特許出願2017-101174号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。