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特許7131561質量流量制御システム並びに当該システムを含む半導体製造装置及び気化器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】質量流量制御システム並びに当該システムを含む半導体製造装置及び気化器
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019545122
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035403
(87)【国際公開番号】W WO2019065611
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2017190657
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 守
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506744(JP,A)
【文献】特開平8-203832(JP,A)
【文献】特開平2-268826(JP,A)
【文献】特開平5-104050(JP,A)
【文献】特開平5-233069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流れる流路と、
前記流路に介装され且つ制御信号の性状に基づいて開度が制御されるように構成された流量制御弁及び第1筐体を備える質量流量制御装置である第1装置と、
前記第1装置の外部に配設され且つ第2筐体を備える装置である第2装置と、
前記第1装置の前記第1筐体及び前記第2装置の前記第2筐体の何れか一方又は両方の内部に設けられた少なくとも1つの制御部と、
を有し、
前記第1装置は、流量センサである内部センサを備え、
前記制御部は、前記内部センサから出力される検出信号である内部信号に基づいて前記制御信号の性状を特定する第1作動モードを実行することができるように構成されており、
前記流路を流れる流体の流量を制御するように構成された質量流量制御システムであって、
前記第2装置は、少なくとも1つの検出手段である外部センサを含んでなり、
前記制御部は、少なくとも前記外部センサから出力される検出信号である外部信号に基づいて前記制御信号の性状を特定する第2作動モードと前記第1作動モードとを切り替えて前記第2作動モードを実行することができるように構成されている、
質量流量制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載された質量流量制御システムであって、
前記外部センサから前記制御部へ前記外部信号を伝達するように構成された通信手段を有する、
質量流量制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された質量流量制御システムであって、
前記外部センサは流量センサである、
質量流量制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載された質量流量制御システムであって、
前記制御部は、前記第2作動モードにおいて、前記内部センサから出力される検出信号である内部信号と前記外部信号との差の大きさに基づいて前記制御信号の性状を特定することができるように構成されている、
質量流量制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載された質量流量制御システムであって、
前記制御部は、前記内部センサ及び前記外部センサのうちの何れか一方のセンサである第1センサを基準として前記内部センサ及び前記外部センサのうちの前記第1センサではないセンサである第2センサの流量較正を実行する第3作動モードを実行することができるように構成されている、
質量流量制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載された質量流量制御システムであって、
前記制御部は、前記第3作動モードにおいて、所定の質量流量、所定の温度及び所定の圧力にて前記流体が前記流路に流れている状態において、前記第1センサから出力される検出信号に基づいて検出される前記流体の質量流量である第1流量と前記第2センサから出力される検出信号に基づいて検出される前記流体の質量流量である第2流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも小さくなるように、少なくとも前記第2センサから出力される検出信号から前記流体の質量流量を特定するための制御回路のアンプのゲインを調整するように構成されている、
質量流量制御システム。
【請求項7】
請求項3に記載された質量流量制御システムであって、
前記制御部は、所定の質量流量、所定の温度及び所定の圧力にて前記流体が前記流路に流れている状態において、前記内部センサから出力される検出信号である内部信号に基づいて検出される前記流体の質量流量である内部流量と前記外部信号に基づいて検出される前記流体の質量流量である外部流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも大きいと判定される場合に、前記内部センサ及び前記外部センサの少なくとも何れか一方において異常が有ると判定する第4作動モードを実行することができるように構成されている、
質量流量制御システム。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載された質量流量制御システムであって、
前記流体が流入する流入口及び前記流体が流出する流出口を有し且つ前記流路に介装された密閉容器であるタンクを更に有する、
質量流量制御システム。
【請求項9】
請求項8に記載された質量流量制御システムであって、
前記外部センサは、前記タンクの内部に存在する前記流体の圧力を検出するように構成された圧力センサである、
質量流量制御システム。
【請求項10】
請求項8に記載された質量流量制御システムであって、
前記外部センサは、前記タンクの内部に存在する前記流体の温度を検出するように構成された温度センサである、
質量流量制御システム。
【請求項11】
請求項8に記載された質量流量制御システムであって、
前記外部センサは、前記タンクの内部に存在する前記流体における特定の成分の濃度を検出するように構成された濃度センサである、
質量流量制御システム。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載された質量流量制御システムを含む、半導体製造装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載された質量流量制御システムを含む、気化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量流量制御システム並びに当該システムを含む半導体製造装置及び気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスにおいては、真空(又は低圧若しくは減圧)状態に保たれたチャンバー内において、例えば薄膜形成及び微細加工等の工程が実行される。このチャンバーには、例えば製造しようとする半導体デバイスの構成等に応じて、種々の半導体材料ガス(以降、単に「材料ガス」と称呼される場合がある。)が導入される。必要な場合には、例えばアルゴン、ヘリウム及び窒素等の不活性ガスと材料ガスとの混合ガス等が用いられる場合もある。
【0003】
図1は、従来技術に係る一般的な半導体製造装置の構造を例示する模式図である。図1に示されている半導体製造装置においては、材料ガス1、材料ガス2、及び材料ガス3を、必要に応じて切り替えて、チャンバー内へ供給することができる。また、それぞれの場合において、各材料ガスの流量は、各材料ガス用質量流量制御装置(MFC-1乃至MFC-3)により測定及び制御することができる。
【0004】
また、常温において液相状態又は固体状態にある材料を材料ガスとして使用する場合、「気化器」と称される装置を用いて当該材料を加熱して気化ガスを発生させて、発生した気化ガスを半導体製造装置(の反応炉としてのチャンバー)へと供給することができる。気化器において気化ガスを発生させる手法としては、様々な方式のものが知られている。例えば、プラズマCVD法において使用される液体材料から気化ガスを発生させる方式としては、所謂「バブリング方式」が従来から広く使用されている。このバブリング方式とは、気化器が備えるタンク(気化タンク)内に貯蔵された液体材料の温度及び気化ガスの圧力を一定に保ちつつ、流量が制御されたキャリアガスを気化タンク内の液面下へと導入し、キャリアガスと気化ガスとの混合ガスを気化タンクの排気口から取り出す方式である(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【0005】
図2は、従来技術に係る一般的な気化器の構造を例示する模式図である。気化器は、キャリアガス用質量流量制御装置と、気化タンクと、混合ガス用質量流量計と、によって構成される。キャリアガスの流量Q1はキャリアガス用質量流量制御装置(MFC)により測定及び制御され、キャリアガスと気化ガス(材料ガス)との混合ガスの流量Q2は混合ガス用質量流量計(MFM)によって測定される。気化ガスの流量Qsは、混合ガスの流量Q2からキャリアガスの流量Q1を差し引くことによって求めることができる。
【0006】
以上のように、チャンバーに供給される材料ガス、気化ガス及び不活性ガス等のガス(以降、「プロセスガス」と称呼される場合がある。)の流量は、質量流量制御装置によって制御することができる。質量流量制御装置は、少なくとも、対象となるプロセスガスの流量を測定する流量センサと、プロセスガスの流量を制御する流量制御弁と、流量センサの出力信号に基づいて決定される性状(例えば、電圧又は電流の大きさ等)を有する制御信号を発生する制御回路と、を備える。流量制御弁の開度は制御信号の性状に基づいて制御される。従って、質量流量制御装置は、流量制御弁を用いて、予め設定された目標値にプロセスガスの流量が近付くように、キャリアガスの流量を制御することができる。一方、プロセスガスの流量を測定する質量流量計は、対象となるプロセスガスの流量を測定する流量センサを備える。
【0007】
上記のように、従来技術に係る質量流量制御装置においては、当該装置の内部に流量センサを備え、流量センサの出力信号に基づいて流量制御弁に与える制御信号の性状が決定される。即ち、このような質量流量制御装置においては、流量センサ、流量制御弁及び制御回路の全てが内部に組み込まれており、装置全体として自己完結型の独立した質量流量制御システムが構築されている。従って、例えば装置の故障及び点検等を目的として質量流量制御装置を交換する必要が生じた場合等においては、質量流量制御装置を丸ごと交換することができるので便利である。
【0008】
しかしながら、使用の態様によっては、従来技術に係る自己完結型の独立した質量流量制御システムには以下に列挙するような様々な課題がある。例えば、図1に示した半導体製造装置において、材料ガス1から材料ガス2へとプロセスガスを切り替える場合、先ず材料ガス1の供給を停止し、材料ガス1の流路及びチャンバー内をパージガスによってパージした後に、材料ガス2の供給を開始する。上記パージを迅速に完了するためには、材料ガス1の流路を経由するパージガスの流量をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0009】
しかしながら、一般に、半導体製造プロセスにおいて個々の材料ガスに求められる流量は非常に小さい。このため、材料ガス1の流路に介装される質量流量制御装置(MFC-1)の流量レンジ(BINサイズ)もまた非常に小さい値となるように設計されている。換言すれば、質量流量制御装置(MFC-1)が備える流量センサの検出可能な流量の最大値(以降、「最大検出値」と称呼される場合がある。)は、パージガス用質量流量制御装置(MFC-0)が備える流量センサの最大検出値に比べて非常に小さい。従って、従来技術に係る質量流量制御システムと同様に自己完結型の独立した流量制御を実行するように質量流量制御装置(MFC-1)が構成されている場合、パージガスの最大流量は質量流量制御装置(MFC-1)の最大検出値を超えることができないため、パージを迅速に完了することは困難である。
【0010】
また、例えば、図2に示した気化器においては、上述したように、混合ガス用質量流量計(MFM)によって測定される混合ガスの流量Q2からキャリアガス用質量流量制御装置(MFC)によって測定されるキャリアガスの流量Q1を差し引くことによって気化ガスの流量Qsを求めることができる。しかしながら、キャリアガスの流量Q1はあくまでもキャリアガス用質量流量制御装置(MFC)によって測定され、自己完結型の独立した流量制御が行われる。即ち、本来の制御対象である気化ガスの流量Qs及び/又は混合ガスの流量Q2に基づくキャリアガスの流量Q1の制御は行われない。従って、従来技術に係る質量流量制御装置のみによっては、気化器によって供給される気化ガスの流量Qs及び/又は混合ガスの流量Q2に基づく制御を実行することはできない。
【0011】
更に、質量流量制御装置の流量較正においては、較正しようとする質量流量制御装置と較正済みの質量流量計とを流体(ガス)の流路に直列に介装し、両者が備える流量センサによって測定される流量が一致するように質量流量制御装置が調整される。具体的には、質量流量制御装置が備える通信手段を介して、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の別個の制御装置を用いて、例えば質量流量制御装置が備える制御回路のアンプのゲイン等が調整される。このように、質量流量制御装置の流量較正においては別個の流量センサ及び制御装置の追加が必要であるため、流量較正に要する設備の複雑化、作業の繁雑化、及びコストの増大等の問題を招く虞がある。
【0012】
加えて、半導体製造装置のチャンバー及び気化器の気化タンク(以降、これらは単に「タンク」と総称される場合がある。)の内部の圧力を一定に保つことは、半導体製造装置又は気化器における流体の流量をより正確に制御するために重要であることが知られている。このため、タンク内の圧力を測定する圧力センサ及び当該圧力センサによって測定される圧力に基づいて流体の流量(供給量)を制御するための制御装置としてのPC等が設けられたり、或いは圧力制御弁等の圧力制御のための機構が設けられたりする場合がある。この場合もまた、半導体製造装置及び気化器の構成の複雑化及びコストの増大等の問題を招く虞がある。
【0013】
また、半導体製造プロセスには、所定の降温速度にてタンク内の温度を下げる工程が含まれる場合がある。当該工程は、例えば、所定の流量にてパージガスをタンク内に導入することにより実行することができる。しかしながら、降温速度をより厳密に制御する必要がある場合、タンクに配設された温度センサによって測定されるタンク内の温度が所定の降温速度にて下がるようにパージガスの流量をより正確に制御する必要がある。従来技術に係る質量流量制御装置を使用する半導体製造装置において当該制御を実行する場合もまた、PC等の別個の制御装置を追加する必要があり、半導体製造装置の構成の複雑化及びコストの増大等の問題を招く虞がある。
【0014】
更に、例えば混合ガスにおける材料ガスの濃度及び気化タンク内に貯蔵された液体材料における特定成分の濃度等に応じた流量制御が求められる場合もある。この場合もまた、濃度センサによって測定される濃度に応じた制御を実行するための別個の制御装置を追加する必要があり、半導体製造装置及び気化器の構成の複雑化及びコストの増大等の問題を招く虞がある。
【0015】
以上のように、従来技術に係る質量流量制御装置は自己完結型の独立した流量制御を実行するように構成されている。従って、例えば半導体製造装置及び気化器等において質量流量制御装置の外部に配設された検出手段からの検出信号に基づく流量制御を実行するには、例えばPC等の別個の制御装置を含む別系統の制御ループを追加する必要があり、構成の複雑化及びコストの増大等の問題を招く虞がある。また、質量流量制御装置の外部において検出信号に基づく演算処理等を実行する必要があるため、例えば応答速度の低下及び誤作動の増大等の問題を招く虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開平08-64541号公報
【文献】特開2017-76800号公報
【文献】特許第6264152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、従来技術に係る質量流量制御装置は自己完結型の独立した流量制御を実行するように構成されている。このため、従来技術に係る質量流量制御装置においては、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、タンク内の圧力及び/又は温度に基づく流量制御、並びに流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を別個の制御装置等を追加すること無く達成することが困難であった。即ち、当該技術分野においては、別個の制御装置等を追加すること無く、上記諸課題を解決することができる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題に鑑み、本発明者は、鋭意研究の結果、外部の検出手段からの検出信号に基づいて流量制御弁の開度を制御することができるように質量流量制御装置を構成することにより、別個の制御装置等を追加すること無く上記諸課題を解決することができることを見出した。
【0019】
即ち、本発明に係る質量流量制御システム(以降、「本発明システム」と称呼される場合がある。)は、内部に流体が流れる流路と、第1装置と、第2装置と、少なくとも1つの制御部とを有し、前記流路を流れる流体の流量を制御するように構成された質量流量制御システムである。第1装置は、前記流路に介装され且つ制御信号の性状に基づいて開度が制御されるように構成された流量制御弁を備える質量流量制御装置である。第2装置は、前記第1装置の外部に配設された装置であり、少なくとも1つの検出手段である外部センサを含んでなる。制御部は、前記第1装置及び前記第2装置の何れか一方又は両方の筐体内に設けられている。
【0020】
更に、本発明システムにおいて、前記制御部は、少なくとも前記外部センサから出力される検出信号である外部信号に基づいて前記制御信号の性状を特定することができるように構成されている。
【0021】
また、本発明に係る半導体製造装置は、上述したような本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)を含む、半導体製造装置である。更に、本発明に係る気化器は、上述したような本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)を含む、気化器である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)によれば、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等のハードウェアを始めとする別個の制御装置等を追加すること無く、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、タンク内の圧力若しくは温度に基づく流量制御、又は流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を達成することができる。
【0023】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術に係る半導体製造装置の構成を示す模式図である。
図2】従来技術に係る気化器の構成を示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る質量流量制御システム(第1システム)の構成の一例を示す模式図である。
図4】第1システムの1つの変形例の構成の一例を示す模式図である。
図5】第1システムのもう1つの変形例の構成の一例を示す模式図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る質量流量制御システム(第3システム)の構成の一例を示す模式図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る質量流量制御システム(第4システム)の構成の一例を示す模式図である。
図8】第4システムを構成する制御部によって実行される流量較正ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の第5実施形態に係る質量流量制御システム(第5システム)を構成する制御部によって実行される自己診断ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第6実施形態に係る質量流量制御システム(第6システム)の構成の一例を示す模式図である。
図11】本発明の第7実施形態に係る質量流量制御システム(第7システム)の構成の一例を示す模式図である。
図12】本発明の第8実施形態に係る質量流量制御システム(第8システム)の構成の一例を示す模式図である。
図13】本発明の第9実施形態に係る質量流量制御システム(第9システム)の構成の一例を示す模式図である。
図14】本発明の実施例1に係る半導体製造装置(実施例装置1)の構成の一例を示す模式図である。
図15】本発明の実施例2に係る気化器(実施例装置2)の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図を参照しながら、以下に詳細に説明する。尚、以下に記載される本発明の実施形態はあくまで例示に過ぎず、本発明の実施形態は以下に記載されたものに限定されない。
【0026】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第1システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0027】
〈構成〉
例えば、図3に示すように、第1システム10は、内部に流体が流れる流路11と、第1装置1と、第2装置2と、少なくとも1つの制御部12とを有し、流路11を流れる流体の流量を制御するように構成された質量流量制御システムである。
【0028】
第1装置1は、流路11に介装され且つ制御信号Scの性状に基づいて開度が制御されるように構成された流量制御弁(図示せず)を備える質量流量制御装置である。第2装置2は、第1装置1の外部に配設された装置であり、少なくとも1つの検出手段である外部センサ2sを含んでなる。尚、図3においては図示されていないが、第1システム10は、例えばチャンバー及び気化タンク、他の流路との合流部及び分岐部、並びに開閉弁及び流量調整弁等の他の構成要素を、第1装置1と第2装置2との間及び/又は他の領域に更に有していてもよい。
【0029】
第1システム10が有する第1装置1においては、流量制御弁がベース1bの内部に配設されており、流量センサ(内部センサ)1s、制御回路1c、及び流量制御弁の開度を変更するアクチュエータ1aが筐体(ハウジング)1hの内部に配設されている。一般に、制御回路1cは、第1装置1の通常の作動モードにおいては、流量センサ1sから出力される検出信号(内部信号Si)に基づいてアクチュエータ1aを制御して、予め設定された目標値に流体の流量を近付けるように構成されている。
【0030】
外部センサ2sは、第2装置2を構成する複数の構成要素のうちの1つであってもよく、或いは第2装置2を構成する唯一の構成要素であってもよい(即ち、外部センサ2s自体が第2装置2であってもよい)。また、詳しくは後述するように、外部センサ2sは、流量センサ、圧力センサ、温度センサ、又は濃度センサの何れであってもよい。具体的には、外部センサ2sは、例えば、第1システム10が有する第1装置1ではない他の質量流量制御装置又は質量流量計が備える流量センサであってもよい。或いは、外部センサ2sは、例えば、第1システム10が有するチャンバー又は気化タンク(図示せず)に配設された圧力センサ、温度センサ、又は濃度センサであってもよい。第2装置2は、第1装置1が備える流量制御弁と同様な流量制御弁(図示せず)を備えていてもよい。
【0031】
制御部12は、前記第1装置及び前記第2装置の何れか一方又は両方の筐体内に設けられる。具体的には、第1システム10が有する制御部12は、図3に示すように第1装置1が備える制御回路1cのみによって構成されていてもよく、図4に示すように第2装置2が備える制御回路2cのみによって構成されていてもよく、或いは図5に示すように制御回路1c及び制御回路2cによって構成されていてもよい。尚、図5に示した例においては、外部センサ2sから出力される検出信号である外部信号Seが先ず制御回路2cに送信された後に制御回路1cに送信されているが、制御回路1c及び制御回路2cによる外部信号Seの処理順序等については、必ずしもこの限りではない。典型的には、第1システム10は、外部センサ2sから(制御回路1c及び/又は制御回路2cを含む)制御部12へ外部信号2sを伝達するように構成された通信手段(図示せず)を有する。
【0032】
尚、制御回路1c及び制御回路2cは、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路(ECU:Electronic Control Unit)である。以下の説明においては、特に断らない限り、第1システム10が有する制御部12が制御回路1cのみによって構成されている場合について説明する。
【0033】
更に、第1システム10において、制御部12(制御回路1c)は、少なくとも外部センサ2sから出力される検出信号である外部信号Seに基づいて上記制御信号Scの性状を特定することができるように構成されている。一方、上述したように、流量制御弁は、その開度が制御信号Scの性状に基づいて制御されるように構成されている。第1システム10においては、制御部12としての制御回路1cからアクチュエータ1aへと送信される制御信号Scの性状に基づいて流量制御弁の開度が制御される。ここで、制御信号Scの性状としては、例えば、制御信号Scの電圧又は電流の大きさ等を挙げることができる。
【0034】
また、上記のように、第1システム10においては、制御部12(制御回路1c)は少なくとも外部センサ2sから出力される検出信号である外部信号Seに基づいて制御信号Scの性状を特定する。従って、外部センサ2sから出力される検出信号は、第1装置1において内部センサ1sから制御回路1c(制御部12)へと出力される検出信号と同一のプロトコルに従うことが望ましい。しかしながら、これらの信号が従うプロトコルが異なる場合は、外部センサ2sから出力される検出信号を、内部センサ1sから出力される検出信号が従うプロトコルに従うように変換するように制御回路1c(制御部12)を構成してもよい。
【0035】
更に、第1装置1が備える内部センサ1sの検出対象となる流体と第2装置2が備える外部センサ2sの検出対象となる流体とが異なるコンバージョンファクター(CF)を有する場合は、これらのCFの違いを制御信号Scの性状に反映させる必要がある。このような処理もまた、第1システム10が有する制御部12(制御回路1c)によって実行することができる。
【0036】
〈効果〉
以上のように、第1システム10においては、外部センサ2sから出力される検出信号(外部信号Se)に基づいて流量制御弁の開度を制御することができる。従って、第1システム10によれば、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、タンク内の圧力若しくは温度に基づく流量制御、又は流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を、別個の制御装置等を追加すること無く達成することができる。
【0037】
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第2システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0038】
〈構成〉
第2システムは、上述した第1システム10と同様の構成を有する質量流量制御システムであって、外部センサ2sが流量センサである、質量流量制御システムである。外部センサ2sとしての流量センサの構成は、第2システムが有する流路の内部を流れる流体の流量を測定することが可能である限り、特に限定されない。このような流量センサの具体例としては、例えば熱式流量センサ、圧力式流量センサ及び差圧式流量センサ等を挙げることができる。
【0039】
また、外部センサ2sとしての流量センサによって流量を測定される流体は、第2システムが有する第1装置1よりも上流側を流れる流体であっても、或いは下流側を流れる流体であってもよい。即ち、第2システムにおいて第1装置1が備える流量制御弁によって流量を制御しようとする流体の流量を検出可能な箇所に外部センサ2sを配設することができる。
【0040】
〈効果〉
以上のように、第2システムにおいては、外部センサ2sとしての流量センサから出力される検出信号(外部信号Se)に基づいて流量制御弁の開度を制御することができる。従って、内部センサ1sと外部センサ2sとが異なる最大検出値を有する場合、第1装置1が備える流量制御弁を用いて、内部センサ1sから出力される検出信号に基づく通常の作動モードとは異なる範囲の流量レンジ(BINサイズ)にて、流体の流量を制御することができる。このような機能によれば、例えば、前述したようなパージガスによるパージを迅速に行うことができる。
【0041】
また、流体の流路において、第1装置1よりも流体の供給先に近い位置に外部センサ2s(を備える第2装置2)が配設されている場合、流体の供給先に供給される流体の流量に基づいた、より正確な流量制御を実行することができる。更に、質量流量制御装置の流量較正においては、外部センサ2sを較正用の質量流量計(が備える流量センサ)として使用することができる。
【0042】
以上のように、第2システムによれば、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、又は簡便な流量較正等の効果を、別個の制御装置等を追加すること無く、容易に達成することができる。
【0043】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第3システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0044】
〈構成〉
例えば、図6に示すように、第3システム30は、上述した第2システムと同様の構成を有する質量流量制御システムであって、第1装置1は外部センサ2sとは別個の流量センサである内部センサ1sを備える。内部センサ1sとしての流量センサの構成は、第1装置1が介装された流路11の内部を流れる流体の流量を測定することが可能である限り、特に限定されない。このような流量センサの具体例としては、例えば熱式流量センサ、圧力式流量センサ及び差圧式流量センサ等を挙げることができる。
【0045】
更に、制御部12は、内部センサ1sから出力される検出信号である内部信号Siと外部信号Seとの差ΔS(=Se-Si)の大きさに基づいて制御信号Scの性状(例えば、電圧又は電流の大きさ等)を特定することができるように構成されている。尚、内部信号Siと外部信号Seとの差ΔS(=Se-Si)の演算については、例えば制御部12を構成する制御回路1c等によって実行することができる。制御部12は、上記演算以外にも様々な演算を実行するように構成することができる。このような演算の具体例としては、例えば、内部信号Siと外部信号Seとの間におけるフルスケールの違い、コンバージョンファクタの違い、及び出力形式の違い等を換算するための演算等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0046】
〈効果〉
以上のように、第3システム30においては、内部信号Siと外部信号Seとの差ΔS(=Se-Si)の大きさに基づいて制御信号Scの性状を特定することができるように制御部12が構成されている。即ち、第3システム30においては、上記差ΔSに基づいて流量制御弁の開度を制御することができる。従って、第3システム30によれば、例えば、第1装置1と外部センサ2s(を備える第2装置2)との間に気化器又は他の材料を供給する流路との合流部等が配設されている場合等において、当該気化器又は合流部において追加された材料の流量を予め設定された目標値に近付けるように、プロセスガスの流量をより正確に制御することができる。
【0047】
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第4システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0048】
上述したように、第1システム及び第2システムを始めとする本発明システムによれば、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、タンク内の圧力若しくは温度に基づく流量制御、又は流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を、別個の制御装置等を追加すること無く達成することができる。
【0049】
〈構成〉
そこで、第4システムは、別個の制御装置等を追加すること無く、流量較正を簡便に行うことができる質量流量制御システムとして構成されている。具体的には、第4システムは、上述した第2システムであって、上述した第3システムと同様に外部センサとは別個の流量センサである内部センサを第1装置が備える。内部センサとしての流量センサの構成は、上述した第3システムに関して説明したように、第1装置1が介装された流路の内部を流れる流体の流量を測定することが可能である限り、特に限定されない。このような流量センサの具体例としては、例えば熱式流量センサ、圧力式流量センサ及び差圧式流量センサ等を挙げることができる。
【0050】
更に、第4システムにおいては、内部センサ及び外部センサのうちの何れか一方のセンサである第1センサを基準として内部センサ及び外部センサのうちの第1センサではないセンサである第2センサの流量較正を実行することができるように制御部が構成されている。流量較正の基準となる第1センサとしては、内部センサ及び外部センサのうち、流路の内部を流れる流体の流量に正しく対応する検出信号を出力する方のセンサが採用される。換言すれば、第1センサは、内部センサ及び外部センサのうち、流路の内部を流れる流体の流量を正確に検出することができるように調整(較正)された所定の制御回路と流量センサとの組み合わせを構成している流量センサである。
【0051】
流量較正においては、このような第1センサから出力される検出信号に基づいて検出される流量と第2センサから出力される検出信号に基づいて検出される流量との偏差が所定の閾値よりも小さくなる(即ち、実質的に一致する)ように、第2センサから出力される検出信号を処理する所定の制御回路が調整(較正)される。但し、流量較正においては、必ずしも第1センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の流量そのものと第2センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の流量そのものとを実質的に一致させる必要は無い。具体的には、例えば、所定の制御回路に含まれるアンプから出力される「第1センサから出力された検出信号」に基づく信号の強度と所定の制御回路に含まれるアンプから出力される「第2センサから出力された検出信号」に基づく信号の強度とを実質的に一致させてもよい。
【0052】
図7は、第4システムの構成の1つの例を示す模式図である。図7に例示した第4システム40においては、第2装置2が備える外部センサ2sとは別個の流量センサである内部センサ1sを第1装置1が備える。更に、外部センサ2sを基準として内部センサ1sの流量較正を実行することができるように制御部12が構成されている。即ち、第4システム40においては、内部センサ1s及び外部センサ2sのうち、外部センサ2sが(流量較正の基準となる)第1センサであり、内部センサ1sが(較正される)第2センサである。
【0053】
具体的には、第4システム40においては、外部センサ2sから出力される検出信号(外部信号Se)に基づいて制御部12(制御回路1c)によって流路11の内部を流れる流体の質量流量が正確に検出されるように制御回路1cが予め調整(較正)されている。そして、外部信号Seに基づいて制御回路1cによって検出される流量と内部センサ1sから出力される検出信号(内部信号Si)に基づいて制御回路1cによって検出される流量とが実質的に一致するように制御回路1cが調整(較正)される。
【0054】
尚、例えば図5に示した例のように第1装置1が備える制御回路1c及び第2装置2が備える制御回路2cの両方によって外部信号Seが処理される場合等、制御回路1c及び制御回路2cによって制御部12が構成されている場合は、外部信号Seに基づいて制御回路1c及び制御回路2cによって検出される流量と内部信号Siに基づいて制御回路1cによって検出される流量とが実質的に一致するように制御回路1c及び制御回路2cが調整(較正)されるようにしてもよい。
【0055】
また、例えば図4に示した例のように第2装置2が備える制御回路2cのみによって制御部12が構成されている場合は、外部信号Seに基づいて制御回路2cによって検出される流量と内部信号Siに基づいて制御回路1cによって検出される流量とが実質的に一致するように制御回路2c及び制御回路1cがそれぞれ調整(較正)されるようにしてもよい。
【0056】
流量較正においては、上述したように、第1センサから出力される検出信号に基づいて検出される流量と第2センサから出力される検出信号に基づいて検出される流量との偏差が所定の閾値よりも小さくなるように、第2センサから出力される検出信号を処理する所定の制御回路が調整(較正)される。この際、当然のことながら、流量較正の対象である第2センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の流量が流量較正の基準となる第1センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の流量に近付くように制御回路が調整(較正)される。
【0057】
上記のような「制御回路の調整(較正)」は、具体的には、例えば、第2センサから出力される検出信号から流路の内部を流れる流体の質量流量を特定するための制御回路のアンプのゲインを調整することによって行うことができる。また、当該制御回路において「第2センサから出力された検出信号」を「流路の内部を流れる流体の質量流量に正確に対応する信号」に変換する演算処理において使用される係数の調整(増減)等を併用してもよい。
【0058】
即ち、第4システムにおいては、所定の質量流量、所定の温度及び所定の圧力にて前記流体が前記流路に流れている状態において、前記第1センサから出力される検出信号に基づいて検出される前記流体の質量流量である第1流量と前記第2センサから出力される検出信号に基づいて検出される前記流体の質量流量である第2流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも小さくなるように、少なくとも前記第2センサから出力される検出信号から前記流体の質量流量を特定するための制御回路のアンプのゲインを調整するように制御部が構成されていてもよい。尚、上記「所定の質量流量、所定の温度及び所定の圧力」は、それぞれ上述した第1センサ及び第2センサの両方の規格に適した質量流量、温度及び圧力とするべきであることは言うまでもない。
【0059】
図8は、上記のような第4システムを構成する制御部によって実行される流量較正ルーチンの一例を示すフローチャートである。図8に示す例においては、図7に示した例と同様に、外部センサ2sが(流量較正の基準となる)第1センサであり、内部センサ1sが(較正される)第2センサであるものとする。
【0060】
流量較正ルーチンが開始されると、ステップS110において、所定の温度及び所定の圧力にて前記流体が前記流路に流れている状態において第1センサ(外部センサ2s)から出力される検出信号(外部信号Se)及び第2センサ(内部センサ1s)から出力される検出信号(内部信号Si)を制御部が取得する。次に、ステップS120において、第1センサから出力される検出信号(外部信号Se)に基づいて検出される流体の質量流量(第1流量)と第2センサから出力される検出信号(内部信号Si)に基づいて検出される流体の質量流量(第2流量)との偏差である流量偏差ΔFcが所定の閾値Tc以上であるか否かを制御部が判定する。
【0061】
流量偏差ΔFcが閾値Tc未満である場合(ΔFc<Tc)、上記ステップS120において制御部は「No」と判定し、当該ルーチンを一旦終了する。一方、流量偏差ΔFcが閾値Tc以上である場合(ΔFc≧Tc)、上記ステップS120において制御部は「Yes」と判定する。そして、次のステップS130において、流量偏差ΔFcが閾値Tc未満となるように制御部を構成する制御回路が調整(較正)される。具体的には、流量較正の対象である第2センサ(内部センサ1s)から出力される検出信号(内部信号Si)に基づいて検出される流体の流量(第2流量)が流量較正の基準となる第1センサ(外部センサ2s)から出力される検出信号(外部信号Se)に基づいて検出される流体の流量(第1流量)に近付くように制御回路が調整(較正)される。
【0062】
尚、図8に示した例においては制御部を構成する制御回路のアンプのゲインを調整することにより流量較正を行っている。アンプのゲインの調整幅は一定の固定値であってもよく、或いは、流量偏差ΔFcの大きさに応じて変化する変動値であってもよい。
【0063】
上記ステップS130の後、再びステップS120において流量偏差ΔFcが閾値Tc以上であるか否かを制御部が判定する。やがて、流量偏差ΔFcが閾値Tc未満となり(ΔFc<Tc)、上記ステップS120において制御部が「No」と判定し、当該ルーチンを終了する(流量較正が完了する)。
【0064】
上述したような流量較正ルーチンは、例えば、制御部を構成する制御回路が有する記録装置(例えば、ROM等)にCPUによって実行可能なプログラムとして格納される。そして、制御部を構成する制御回路が有するCPUが当該プログラムに従って各種演算処理等を実行することによって流量較正が達成される。尚、前述したように複数の制御回路によって制御部が構成されている場合等においては、これら複数の制御回路に分散されて流量較正ルーチンが実行されてもよい。
【0065】
〈効果〉
上述したように、第4システムによれば、従来技術に係る質量流量制御装置の流量較正において必須であった別個の流量センサ及び制御装置等の追加を必要とすること無く、当該システムにおける既存の外部センサを利用して、内部センサの流量較正を簡便に行うことができる。その結果、流量較正に要する設備の複雑化、作業の繁雑化、及びコストの増大等の問題を低減することができる。
【0066】
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第5システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0067】
一般に、質量流量制御システムにおいては、例えば、その製造直後に、他の較正済み質量流量計等を基準として、基準流体(例えば、窒素ガス(N)等の基準ガス)の流量を測定することによって較正される。また、上述したような第4システムによれば、製造後においても流量較正を簡便に行うことができる。
【0068】
しかしながら、質量流量制御システムの使用中に、例えば熱式流量センサを構成するセンサチューブの内壁に異物が付着する等の不測の異常事態の発生により質量流量の測定値が異常値を示す等、質量流量を正確に測定することが困難な状況が生ずる場合がある。このような異常事態が発生している場合、実際に流路を流れている流体の質量流量が異常であるのか或いは質量流量の測定値が異常値である(即ち、流量センサに異常が発生している)のかを判断することは困難である。
【0069】
そこで、当該技術分野においては、例えば、全く同一の仕様を有する2つの流量センサが直列に配設された質量流量計が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。このような質量流量計においては、それぞれの流量センサを他の較正済み質量流量計を基準として基準流体(例えば、窒素ガス(N)等の基準ガス)の流量を測定することによって較正しておく。その後、当該質量流量計の使用中に、これら2つの流量センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の質量流量の偏差(流量偏差)の絶対値が所定の閾値を超えた場合は、これら2つの流量センサの何れかに異常が発生していると判定される。このように質量流量計における異常の発生の有無を検知する機能は「自己診断機能」と呼称される。
【0070】
しかしながら、上記のように2つの流量センサを1つの質量流量計に組み込むことは、例えば質量流量計の構成の複雑化、大型化及び製造コストの増大等の問題に繋がる虞がある。また、所定の規格に合致した大きさ及び構造を有する筐体内に2つの流量センサを組み込むためには、予め定められた容積の中により多くの構成部材を組み込む必要があるため、質量流量計の集成がより困難となり、やはり製造コストの増大等の問題に繋がる虞がある。
【0071】
ところが、上述した第2システムを始めとする外部センサ及び内部センサを備える本発明システムによれば、上記のように特別な構成を必要とすること無く、これらの既存のセンサを利用して、流量センサにおける異常の有無を判定することができる。
【0072】
〈構成〉
そこで、第5システムは、上述した第2システムであって、上述した第3システムと同様に外部センサとは別個の流量センサである内部センサを第1装置が備える。内部センサとしての流量センサの構成は、上述した第3システムに関して説明したように、第1装置1が介装された流路の内部を流れる流体の流量を測定することが可能である限り、特に限定されない。このような流量センサの具体例としては、例えば熱式流量センサ、圧力式流量センサ及び差圧式流量センサ等を挙げることができる。
【0073】
更に、第5システムにおいては、所定の質量流量、所定の温度及び所定の圧力にて流体が流路に流れている状態において、内部センサから出力される検出信号である内部信号に基づいて検出される当該流体の質量流量である内部流量と外部信号に基づいて検出される当該流体の質量流量である外部流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも大きいと判定される場合に、内部センサ及び外部センサの少なくとも何れか一方において異常が有ると判定するように制御部が構成されている。尚、上記「所定の質量流量、所定の温度及び所定の圧力」は、それぞれ上述した内部センサ及び外部センサの両方の規格に適した質量流量、温度及び圧力とするべきであることは言うまでもない。
【0074】
上記判定においては、内部信号に基づいて検出される流量と外部信号に基づいて検出される流量との偏差が所定の閾値よりも大きいと判定される場合に、内部センサ及び外部センサの少なくとも何れか一方において異常が有ると判定される。但し、上記判定においては、必ずしも内部センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の流量そのものと外部センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の流量そのものとの偏差を特定する必要は無い。具体的には、例えば、内部信号に基づいて所定の制御回路に含まれるアンプから出力される信号の強度と外部信号に基づいて所定の制御回路に含まれるアンプから出力される信号の強度との偏差が所定の閾値よりも大きいと判定される場合に、内部信号に基づいて検出される流量と外部信号に基づいて検出される流量との偏差が所定の閾値よりも大きいと判定されるようにしてもよい。
【0075】
第5システムのハードウェア構成は、例えば、図7に例示した第4システム40と同様の構成とすることができる。但し、第5システムにおいては、所定の質量流量、所定の温度及び所定の圧力にて流体が流路に流れている状態において、内部信号Siに基づいて検出される当該流体の質量流量である内部流量と外部信号Seに基づいて検出される当該流体の質量流量である外部流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも大きいと判定される場合に、内部センサ1s及び外部センサ2sの少なくとも何れか一方において異常が有ると判定するように制御部12(制御回路1c)が構成されている。尚、前述したように、制御部12は、上記のように制御回路1cのみによって構成されていてもよく、制御回路2cのみによって構成されていてもよく、或いは制御回路1c及び制御回路2cの両方によって構成されていてもよい。
【0076】
図9は、第5システムを構成する制御部によって実行される自己診断ルーチンの一例を示すフローチャートである。自己診断ルーチンが開始されると、ステップS210において、所定の温度及び所定の圧力にて流体が流路に流れている状態において内部センサ1sから出力される検出信号(内部信号Si)及び外部センサ2sから出力される検出信号(外部信号Se)を制御部が取得する。次に、ステップS220において、内部信号Siに基づいて検出される流体の質量流量と外部信号Seに基づいて検出される流体の質量流量との偏差である流量偏差ΔFaが所定の閾値Ta以上であるか否かを制御部が判定する。
【0077】
内部センサ1s及び外部センサ2sの両方が正常である場合、内部信号Siに基づいて検出される流体の質量流量と外部信号Seに基づいて検出される流体の質量流量とは同じであるか又は極めて近い値となり、流量偏差ΔFaは0(ゼロ)又は極めて小さい値となる。一方、内部センサ1s又は外部センサ2sの少なくとも何れかが異常である場合、内部信号Siに基づいて検出される流体の質量流量と外部信号Seに基づいて検出される流体の質量流量とはある程度離れた値となり、流量偏差ΔFaはある程度大きい値となる。尚、内部センサ1s及び外部センサ2sの両方が同時に異常となり且つ両者から出力される検出信号の強度が同じ程度に変化する可能性は極めて低いと考えられる。
【0078】
そこで、流量偏差ΔFaが閾値Ta未満である場合(ΔFa<Ta)、上記ステップS220において制御部は「Yes」と判定する。そして、次のステップS230において、内部センサ1s及び外部センサ2sの両方が正常であると判定する。何等かの出力装置(例えば、表示灯、ディスプレイ及びブザー等)により当該判定結果を報知するように制御部が構成されていてもよい。そして、制御部は当該ルーチンを一旦終了する(自己診断が完了する)。
【0079】
一方、流量偏差ΔFaが閾値Ta以上である場合(ΔFa≧Ta)、上記ステップS220において制御部は「No」と判定する。そして、次のステップS240において、内部センサ1s又は外部センサ2sの少なくとも何れかが異常であると判定する。何等かの出力装置(例えば、表示灯、ディスプレイ及びブザー等)により当該判定結果を報知するように制御部が構成されていてもよい。そして、制御部は当該ルーチンを一旦終了する(自己診断が完了する)。
【0080】
上述したような自己診断ルーチンは、例えば、制御部を構成する制御回路が有する記録装置(例えば、ROM等)にCPUによって実行可能なプログラムとして格納される。そして、制御部を構成する制御回路が有するCPUが当該プログラムに従って各種演算処理等を実行することによって上記のような判定を実行することができる。
【0081】
〈効果〉
第5システムによれば、上述した従来技術に係る質量流量計のように2つの流量センサが直列に配設された構成を必要とすること無く、当該システムにおける既存の外部センサ及び内部センサを利用して、内部センサ及び外部センサにおける異常の発生の有無を検知する機能(自己診断機能)を達成することができる。従って、自己診断機能の達成に伴う質量流量計の構成の複雑化、大型化及び製造コストの増大等の問題を低減することができる。
【0082】
《第6実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第6実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第6システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0083】
〈構成〉
例えば、図10に示すように、第6システム60は、上述した第1システムと同様の構成を有する質量流量制御システムであって、流体が流入する流入口及び流体が流出する流出口を有し且つ流路11に介装された密閉容器であるタンク13を更に有する。タンク13は特に限定されず、その具体例としては、例えば半導体の製造プロセスにおける反応炉としてのチャンバー及び気化器における気化タンク等を挙げることができる。
【0084】
〈効果〉
以上のように、第6システム60は、上述した第1システムと同様の構成に加えて、流体が流入する流入口及び流体が流出する流出口を有し且つ流路11に介装された密閉容器であるタンク13を更に有する。これにより、第6システム60は、反応炉としてのチャンバー及び気化タンク等を備える半導体製造装置を構成することができる。
【0085】
《第7実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第7実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第7システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0086】
〈構成〉
例えば、図11に示すように、第7システム70は、上述した第6システム60と同様の構成を有する質量流量制御システムであって、外部センサ2sは、タンク13の内部に存在する流体の圧力Pを検出するように構成された圧力センサである。当該圧力センサの構成は、タンク13の内部に存在する流体の圧力Pを検出することが可能である限り、特に限定されない。圧力センサの具体例としては、例えばピエゾ抵抗型圧力センサ及び静電容量式圧力センサ等を挙げることができる。また、当該圧力センサは、例えば半導体製造装置における反応炉としてのチャンバーの内部の圧力又は気化器における気化タンクの内部に存在するキャリアガスと気化ガスとの混合ガスからなる気体部分の圧力等を検出するように構成され得る。
【0087】
〈効果〉
以上のように、第7システム70は、上述した第6システム60と同様の構成に加えて、タンク13の内部に存在する流体の圧力を検出するように構成された圧力センサを外部センサ2sとして備える。これにより、第7システム70においては、タンク13の内部に存在する流体の圧力Pに基づいて制御信号Scの性状を特定することができる。即ち、第7システム70においては、上記圧力Pに基づいて流量制御弁の開度を制御することができる。
【0088】
従って、第7システム70によれば、外部センサ2sとしての圧力センサから出力される外部信号Seに基づき、例えば、チャンバー又は気化タンクの内部に存在するプロセスガスの圧力が一定に保たれるように、プロセスガスの流量をより正確に制御することができる。或いは、第7システム70によれば、外部信号Seに基づいて流量制御弁の開閉を制御してチャンバー又は気化タンクの内部の圧力を任意の圧力に調圧することもできる。このように、第7システム70によれば、例えばPC等の別個の制御装置を含む別系統の制御ループを追加すること無く、タンク13の内部の圧力に基づくプロセスガスの正確な流量制御を容易に達成することができる。
【0089】
《第8実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第8実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第8システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0090】
〈構成〉
例えば、図12に示すように、第8システム80は、上述した第6システム60と同様の構成を有する質量流量制御システムであって、外部センサ2sは、タンク13の内部に存在する流体の温度を検出するように構成された温度センサである。当該温度センサの構成は、タンク13の内部に存在する流体の温度Tを検出することが可能である限り、特に限定されない。温度センサの具体例としては、例えば熱電対、測温抵抗体及びサーミスタ等の温度センサを挙げることができる。また、当該温度センサは、例えば半導体製造装置における反応炉としてのチャンバーの内部の温度等を検出するように構成され得る。
【0091】
〈効果〉
以上のように、第8システム80は、上述した第6システム60と同様の構成に加えて、タンク13の内部に存在する流体の温度を検出するように構成された温度センサを外部センサ2sとして備える。これにより、第8システム80においては、タンク13の内部に存在する流体の温度Tに基づいて制御信号Scの性状を特定することができる。即ち、第8システム80においては、上記温度Tに基づいて流量制御弁の開度を制御することができる。
【0092】
従って、第8システム80によれば、外部センサ2sとしての温度センサから出力される外部信号Seに基づき、例えば、半導体製造プロセスにおける所定の流量にてパージガスをタンク内に導入することにより所定の降温速度にてタンク内の温度を下げる工程において、パージガスの流量をより正確に制御することができる。即ち、第8システム80によれば、例えばPC等の別個の制御装置を含む別系統の制御ループを追加すること無く、タンク13の内部の温度に基づくパージガスの正確な流量制御を容易に達成することができる。
【0093】
《第9実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第9実施形態に係る質量流量制御システム(以降、「第9システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0094】
〈構成〉
例えば、図13に示すように、第9システム90は、上述した第6システム60と同様の構成を有する質量流量制御システムであって、外部センサ2sは、タンク13の内部に存在する流体における特定の成分の濃度Cを検出するように構成された濃度センサである。当該濃度センサの構成は、タンク13の内部に存在する流体における特定の成分の濃度Cを検出することが可能である限り、特に限定されない。具体的には、濃度センサは、濃度を検出しようとする成分の化学的性質及び/又は物理的性質等に応じて、当該技術分野において周知の種々の濃度センサの中から適宜選択することができる。
【0095】
〈効果〉
以上のように、第9システム90は、上述した第6システム60と同様の構成に加えて、タンク13の内部に存在する流体における特定の成分の濃度を検出するように構成された濃度センサを外部センサ2sとして備える。これにより、第9システム90においては、タンク13の内部に存在する流体における特定の成分の濃度Cに基づいて制御信号Scの性状を特定することができる。即ち、第9システム90においては、上記濃度Cに基づいて流量制御弁の開度を制御することができる。
【0096】
従って、第9システム90によれば、外部センサ2sとしての濃度センサから出力される外部信号Seに基づき、例えば、半導体製造プロセスにおいてチャンバー内に供給されるプロセスガスにおける特定の成分の濃度Cを所望の濃度に維持するように、例えばキャリアガス及び/又は材料ガスの流量をより正確に制御することができる。即ち、第9システム90によれば、例えばPC等の別個の制御装置を含む別系統の制御ループを追加すること無く、タンク13の内部に存在する流体における特定の成分の濃度に基づくプロセスガスの正確な流量制御を容易に達成することができる。
【0097】
《第10実施形態》
以下、本発明の第10実施形態に係る半導体製造装置(以降、「第10装置」と称呼される場合がある。)について説明する。本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、質量流量制御システムのみならず、当該システムを含む半導体製造装置にも関する。
【0098】
〈構成〉
第10装置は、上述した第1システム10乃至第9システム90を始めとする本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)を含む、半導体製造装置である。第10装置は、質量流量制御装置とは離れた位置に配設された外部センサから出力される検出信号である外部信号に基づいて流体の流量の制御を行うことができる半導体製造装置である。第10装置の具体的な構成は、上記要件を満たす限りにおいて、特に限定されない。また、第10装置に含まれる本発明システムの詳細については、第1システム10乃至第9システム90に関する上記説明において既に述べたので、ここでは説明を繰り返さない。
【0099】
〈効果〉
本発明システムを含む第10装置によれば、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等のハードウェアを始めとする別個の制御装置等を追加すること無く、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、質量流量計における異常の発生の有無を検知する自己診断、タンク内の圧力若しくは温度に基づく流量制御、又は流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を達成することができる。
【0100】
《第11実施形態》
以下、本発明の第11実施形態に係る気化器(以降、「第11装置」と称呼される場合がある。)について説明する。本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、質量流量制御システムのみならず、当該システムを含む気化器にも関する。
【0101】
〈構成〉
第11装置は、上述した第1システム10乃至第9システム90を始めとする本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)を含む、気化器である。第11装置は、質量流量制御装置とは離れた位置に配設された外部センサから出力される検出信号である外部信号に基づいて流体の流量の制御を行うことができる気化器である。第11装置の具体的な構成は、上記要件を満たす限りにおいて、特に限定されない。また、第11装置に含まれる本発明システムの詳細については、第1システム10乃至第9システム90に関する上記説明において既に述べたので、ここでは説明を繰り返さない。
【0102】
〈効果〉
本発明システムを含む第11装置によれば、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等のハードウェアを始めとする別個の制御装置等を追加すること無く、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、質量流量計における異常の発生の有無を検知する自己診断、タンク内の圧力若しくは温度に基づく流量制御、又は流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を達成することができる。
【0103】
本発明の幾つかの実施形態に対応する実施例につき、以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0104】
以下、本発明の実施例1に係る半導体製造装置(以下、「実施例装置1」と称される場合がある。)について説明する。
【0105】
〈構成〉
実施例装置1は、上述した第1システム10乃至第9システム90を始めとする本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)を含む、半導体製造装置である。従って、実施例装置1は、質量流量制御装置とは離れた位置に配設された(例えば、他の質量流量制御装置を構成する)外部センサから出力される検出信号である外部信号に基づいて流体の流量の制御を行うことができる半導体製造装置である。
【0106】
図14に示すように、実施例装置1においては、制御信号の性状に基づいて開度が制御されるように構成された流量制御弁及び流量センサを備える質量流量制御装置MFC-X及びMFC-A乃至MFC-Cが、パージガス(N)及び材料ガスA乃至Cの流路にそれぞれ介装されている。これらの質量流量制御装置MFC-X及びMFC-A乃至MFC-Cは何れも本発明に係る質量流量制御装置である。
【0107】
パージガスの流路は、MFC-XとMFC-A乃至MFC-Cのそれぞれとの間において、材料ガスA乃至Cの流路にそれぞれ合流している。また、MFC-A乃至MFC-Cの下流側において各プロセスガスの流路が合流し、更に下流側に配設されたチャンバーとしてのタンクの流入口へと連通している。更に、チャンバーの流出口にはチャンバーから排出されるプロセスガスの流路が連通している。
【0108】
加えて、チャンバーには、チャンバー内部に存在するプロセスガスの圧力P、温度T及び特定成分の濃度Cを検出する圧力センサ、温度センサ及び濃度センサがそれぞれ配設されている。尚、パージガス及び材料ガスA乃至Cの流路には、それぞれのガスの流路を開閉することができるように構成された開閉弁がそれぞれ介装されている(何れも図示せず)。
【0109】
〈効果〉
実施例装置1において、材料ガスAから材料ガスBへとプロセスガスを切り替える場合、先ず混合ガスAの供給を停止し、材料ガスAの流路及びチャンバー内をパージガスによってパージした後に、材料ガスBの供給を開始する。上記パージを迅速に完了するためには、材料ガスAの流路を経由するパージガスの流量をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0110】
しかしながら、材料ガスAの流路に介装されているMFC-Aの流量レンジ(BINサイズ)は100sccmと小さい。このため、従来技術に係る半導体製造装置においては、前述したように、最大で100sccmという小さい流量でしかパージを実行することができない。即ち、材料ガスAの流路を経由して供給可能なパージガスの最大流量が小さく、パージを迅速に完了することは困難である。
【0111】
一方、実施例装置1においては、上述したように、質量流量制御装置MFC-X及びMFC-A乃至MFC-Cは何れも本発明に係る質量流量制御装置である。従って、MFC-Aは、より大きい流量レンジ(BINサイズ)(2000sccm)を有するMFC-Xが備える流量センサから出力される外部信号に基づき、MFC-Aが備える制御回路によって流体の流量の制御を行うことができる。即ち、実施例装置1においては、PC等の別個の制御装置を追加すること無く、最大で2000sccmもの大きい流量レンジにて流量を制御し、パージを迅速に完了することができる。
【0112】
また、MFC-Cの流量較正を行う場合、従来技術に係る半導体製造装置においては、前述したように、MFC-Cと別途用意された較正済みの質量流量計とを流体(ガス)の流路に直列に介装し、両者が備える流量センサによって測定される流量が一致するようにMFC-Cの流量センサのゲイン等が調整される。具体的には、MFC-Cが備える通信手段を介して、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の別個の制御装置を用いて、例えばMFC-Cが備える制御回路のアンプのゲイン等が調整される。このように、従来技術に係る質量流量制御装置の流量較正においては別個の流量センサ及び制御装置の追加が必要であるため、流量較正に要する設備の複雑化、作業の繁雑化、及びコストの増大等の問題を招く虞がある。
【0113】
一方、実施例装置1においては、上述したように、質量流量制御装置MFC-X及びMFC-A乃至MFC-Cは何れも本発明に係る質量流量制御装置である。従って、MFC-Cは、他の質量流量制御装置(例えば、MFC-X)が備える流量センサから出力される外部信号に基づき、MFC-Cが備える制御回路自身が、アンプのゲイン等を調整することができる。即ち、実施例装置1においては、較正用の質量流量計及びPC等の別個の制御装置を追加すること無く、質量流量制御装置の流量較正を実行することができる。
【0114】
より具体的には、上述した第4システム40における第1装置1及び第2装置2がMFC-X及びMFC-Cに該当し、MFC-Xが備える流量センサが流量較正の基準となる第1センサに該当し、且つMFC-Cが備える流量センサが流量較正の対象となる第2センサに該当する場合、所定の質量流量(例えば、2000sccm以下の任意の質量流量)、所定の温度及び所定の圧力にて流体が流路に流れている状態において、MFC-Xが備える流量センサ(第1センサ)から出力される検出信号に基づいて検出される流体の質量流量である第1流量とMFC-Cが備える流量センサ(第2センサ)から出力される検出信号に基づいて検出される流体の質量流量である第2流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも小さくなるように、少なくとも(第2センサから出力される検出信号から流体の質量流量を特定するための)MFC-Cが備える制御部を構成する制御回路のアンプのゲインを調整するように、MFC-Cの制御部が構成されている。
【0115】
従って、実施例装置1によれば、従来技術に係る質量流量制御装置の流量較正において必須であった別個の流量センサ及び制御装置等の追加を必要とすること無く、実施例装置1における既存の(MFC-Xの)外部センサを利用して(MFC-Cの)内部センサの流量較正を簡便に行うことができる。その結果、流量較正に要する設備の複雑化、作業の繁雑化、及びコストの増大等の問題を低減することができる。
【0116】
更に、例えばMFC-Bが備える流量センサにおける異常の発生の有無を検知する自己診断を行う場合、従来技術に係る半導体製造装置においては、前述したように、MFC-Bにおいて全く同一の仕様を有する2つの流量センサを直列に配設しておく必要がある。そして、これら2つの流量センサから出力される検出信号に基づいて検出される流体の質量流量の偏差(流量偏差)の絶対値が所定の閾値を超えた場合、これら2つの流量センサの何れかに異常が発生していると判定される。このように、従来技術に係る質量流量制御装置が備える流量センサの自己診断においては2つの流量センサを1つの質量流量制御装置に組み込む必要があるため、質量流量制御装置の構成の複雑化、大型化及び製造コストの増大等の問題に繋がる虞がある。
【0117】
一方、実施例装置1においては、上述したように、質量流量制御装置MFC-X及びMFC-A乃至MFC-Cは何れも本発明に係る質量流量制御装置である。従って、上記のように直列に配設された2つの流量センサをMFC-Bが備えていなくても、他の質量流量制御装置(例えば、MFC-X)が備える流量センサから出力される外部信号を利用して、これら2つの流量センサにおける異常の発生の有無をMFC-Bが備える制御部によって判定することができる。即ち、実施例装置1においては、上述した従来技術に係る質量流量制御装置のように2つの流量センサが直列に配設された構成を必要とすること無く、当該装置における既存の外部センサ及び内部センサを利用して、これらのセンサにおける異常の発生の有無を検知する機能(自己診断機能)を達成することができる。
【0118】
より具体的には、上述した第5システム50における第1装置1及び第2装置2がMFC-B及びMFC-Xにそれぞれ該当し且つMFC-Xが備える流量センサが外部センサ2sに該当する場合、所定の質量流量(例えば、1000sccm以下の任意の質量流量)、所定の温度及び所定の圧力にて流体が流路に流れている状態において、MFC-Bが備える流量センサ(内部センサ)から出力される検出信号である内部信号に基づいて検出される当該流体の質量流量である内部流量と、MFC-Xが備える流量センサ(外部センサ)から出力される検出信号である外部信号に基づいて検出される当該流体の質量流量である外部流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも大きいと判定される場合に、内部センサ及び外部センサの少なくとも何れか一方において異常が有ると判定するように制御部が構成されている。
【0119】
従って、実施例装置1によれば、上述した従来技術に係る質量流量制御装置のように2つの流量センサが直列に配設された構成を必要とすること無く、当該装置における既存の質量流量制御装置(MFC-B及びMFC-X)がそれぞれ備える流量センサにおける異常の発生の有無を判定することができる。その結果、自己診断機能の達成に伴う質量流量計の構成の複雑化、大型化及び製造コストの増大等の問題を低減することができる。
【0120】
ところで、上述した自己診断機能においては、内部信号に基づいて検出される内部流量と外部信号に基づいて検出される外部流量との偏差である流量偏差が所定の閾値よりも大きいと判定される場合に内部センサ及び外部センサの少なくとも何れか一方において異常が有ると判定される。つまり、流量偏差が所定の閾値以下である場合は内部センサ及び外部センサの両方が正常であると判定され、流量偏差が所定の閾値よりも大きい場合は内部センサ及び外部センサの少なくとも何れか一方において異常が有ると判定される。後者の場合、内部センサ(MFC-Bが備える流量センサ)及び外部センサ(MFC-Xが備える流量センサ)のどちらに異常があるのかは特定することができない。
【0121】
しかしながら、実施例装置1においては、MFC-Bの他にもMFC-A及びMFC-CがMFC-Xに対して直列に配置されている。従って、例えばMFC-AとMFC-Xとの組み合わせ及び/又はMFC-CとMFC-Xとの組み合わせについて上記と同様の自己診断を行うことができる。例えば、MFC-AとMFC-Xとの組み合わせ及びMFC-CとMFC-Xとの組み合わせの何れか一方若しくは両方について異常の発生が無い(正常である)と判定された場合、MFC-Xが備える流量センサ(外部センサ)については異常の発生は無い(正常である)と推定される。従って、この場合においてMFC-BとMFC-Xとの組み合わせについて異常の発生が有ると判定されている場合は、MFC-Bが備える流量センサにおいて異常の発生が有ると特定することができる。
【0122】
一方、MFC-AとMFC-Xとの組み合わせ及びMFC-CとMFC-Xとの組み合わせの両方について異常の発生が有ると判定された場合、これらの組み合わせに共通するMFC-Xにおいて異常の発生が有るのか或いはMFC-A及びMFC-Cの両方において異常の発生が有るのかは特定することができない。この場合においてMFC-BとMFC-Xとの組み合わせについて異常の発生が無い(正常である)と判定されている場合は、MFC-Xが備える流量センサにおいて異常の発生が無い(正常である)と判定されるので、MFC-Aが備える流量センサ及びMFC-Cが備える流量センサの両方において異常の発生が有ると推定することができる。このように、本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)が組み込まれる装置等の構成によっては、複数の質量流量制御装置の異なる組み合わせを利用することにより、異常が発生している流量センサを特定することが可能である場合がある。
【0123】
尚、上記説明においては、特定の質量流量制御装置が備える制御回路を使用して、他の質量流量制御装置が備える流量センサ(外部センサ)からの出力信号(外部信号)に基づいて、当該質量流量制御装置が備える流量制御弁を制御したり、当該質量流量制御装置が備える流量センサ(内部センサ)の流量較正をしたり、これらの質量流量制御装置が備える流量センサにおける異常の発生の有無を検知する自己診断を実行したりする態様について説明した。この場合、本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)が有する制御部は特定の質量流量制御装置が備える制御回路によって構成されている。
【0124】
しかしながら、本発明システムが有する制御部を他の質量流量制御装置が備える制御回路によって構成することもできる。この場合、他の質量流量制御装置が備える制御回路を使用して、他の質量流量制御装置が備える流量センサ(外部センサ)からの出力信号(外部信号)に基づいて、特定の質量流量制御装置が備える流量制御弁の制御等を実行することができる。このように、本発明システムが有する制御部は、流量制御弁を備える装置が備える制御回路及び外部センサを備える装置が備える制御回路の何れによって構成されていてもよく、或いは、これら両方の制御回路によって構成されていてもよい。
【0125】
更に、半導体製造装置のチャンバー内の圧力を一定に保つ場合、従来技術に係る半導体製造装置においては、前述したように、チャンバー内の圧力を測定する圧力センサによって測定される圧力に基づいて流体の流量(供給量)を制御するための制御装置としてのPC等を別途設けるか、或いは圧力制御弁等の圧力制御のための機構を別途設ける必要がある。一方、実施例装置1においては、上述したように、質量流量制御装置MFC-X及びMFC-A乃至MFC-Cは何れも本発明に係る質量流量制御装置である。従って、MFC-Bは、チャンバーに配設された圧力センサから出力される外部信号に基づき、MFC-Bが備える制御回路自身によって流体の流量の制御を行うことができる。即ち、実施例装置1によれば、別個の制御装置を追加すること無く、チャンバー内の圧力を一定に保つことができる。
【0126】
加えて、前述したように、半導体製造プロセスにおいてパージガスをチャンバー内に所定の流量にて導入することにより所定の降温速度にてチャンバー内の温度を下げる降温処理を実行する場合がある。この場合、チャンバーに配設された温度センサによって測定されるチャンバー内の温度が所定の降温速度にて下がるように、パージガスの流量を正確に制御する必要がある。従来技術に係る質量流量制御装置を使用する半導体製造装置において当該制御を実行する場合もまた、PC等の別個の制御装置を追加する必要があり、半導体製造装置の構成の複雑化及びコストの増大等の問題を招く虞がある。
【0127】
一方、実施例装置1においては、上述したように、質量流量制御装置MFC-X及びMFC-A乃至MFC-Cは何れも本発明に係る質量流量制御装置である。従って、例えばMFC-Aが介装された流路を介してパージガスを流すことにより上記降温処理を行う場合、チャンバーに配設された温度センサから出力される外部信号に基づき、MFC-X又はMFC-Aが備える制御回路によって流量制御弁の開度を調整することにより、パージガスの流量の制御を行うことができる。即ち、実施例装置1によれば、別個の制御装置を追加すること無く、所定の降温速度にてチャンバー内の温度を下げる降温処理を実行することができる。
【0128】
また、前述したように、例えばチャンバー内に供給された混合ガスにおける特定の材料ガスの濃度を所定の濃度に維持する場合もある。この場合もまた、実施例装置1によれば、上記と同様にして、チャンバーに配設された濃度センサから出力される外部信号に基づき、該当する材料ガスの流路に介装された質量流量制御装置が備える制御回路によって流量制御弁の開度を調整することにより、混合ガスにおける特定の材料ガスの濃度を制御することができる。即ち、実施例装置1によれば、別個の制御装置を追加すること無く、混合ガスにおける特定の材料ガスの濃度を所定の濃度に維持することができる。
【0129】
〈結論〉
以上のように、実施例装置1によれば、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、質量流量計における異常の発生の有無を検知する自己診断、タンク内の圧力若しくは温度に基づく流量制御、又は流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を、別個の制御装置等を追加すること無く達成することができる。
【実施例2】
【0130】
以下、本発明の実施例2に係る気化器(以下、「実施例装置2」と称される場合がある。)について説明する。
【0131】
〈構成〉
実施例装置2は、上述した第1システム10乃至第9システム90を始めとする本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)を含む、気化器である。従って、実施例装置2は、質量流量制御装置とは離れた位置に配設された(例えば、他の質量流量制御装置を構成する)外部センサから出力される検出信号である外部信号に基づいて流体の流量の制御を行うことができる気化器である。
【0132】
図15に示すように、実施例装置2は、気化タンク内に貯蔵された液体材料の温度及び気化ガスの圧力を一定に保ちつつ、流量が制御されたキャリアガスを気化タンク内の液面下へと導入し、キャリアガスと気化ガスとの混合ガスを気化タンクの排気口から取り出すバブリング方式の気化器である。
【0133】
気化タンクの上流側のキャリアガスの流路には、制御信号の性状に基づいて開度が制御されるように構成された流量制御弁及び流量センサを備える質量流量制御装置(キャリアガス用MFC)が介装されている。一方、気化タンクの下流側の混合ガスの流路には、混合ガスの流量を測定する質量流量計(混合ガス用MFM)が介装されている。キャリアガス用MFCは、本発明に係る質量流量制御装置であり、混合ガス用MFMが備える流量センサ(外部センサ)から出力される外部信号に基づき、混合ガス用MFCが備える制御回路によって流量制御弁の開度を調整することができるように構成されている。
【0134】
〈効果〉
上記のような構成を有する気化器においては、前述したように、混合ガス用MFMによって測定される混合ガスの流量Q2からキャリアガス用MFCによって測定されるキャリアガスの流量Q1を差し引くことにより、気化ガスの流量Qsを求めることができる。
【0135】
しかしながら、従来技術に係る気化器においては、前述したように、キャリアガスの流量Q1はあくまでもキャリアガス用MFCによって測定され、自己完結型の独立した流量制御が行われる。即ち、本来の制御対象である気化ガスの流量Qs及び/又は混合ガスの流量Q2に基づくキャリアガスの流量Q1の制御は行われない。従って、従来技術に係る気化器においては、気化器によって供給される気化ガスの流量Qs及び/又は混合ガスの流量Q2に基づく流量制御を実行することはできない。
【0136】
一方、実施例装置2においては、上述したように、混合ガス用MFMが備える流量センサ(外部センサ)から出力される外部信号に基づいて流量制御弁の開度を調整することができるようにキャリアガス用MFCが構成されている。従って、実施例装置2によれば、本来の制御対象である気化ガスの流量Qs及び/又は混合ガスの流量Q2に基づいてキャリアガスの流量Q1を制御することにより、気化ガスの流量Qsをより正確に制御することができる。
【0137】
尚、上記説明においては、キャリアガス用MFCが備える制御回路を使用して、混合ガス用MFMが備える流量センサ(外部センサ)からの出力信号(外部信号)に基づいて、キャリアガス用MFCが備える流量制御弁を制御する態様について説明した。この場合、本発明に係る質量流量制御システム(本発明システム)が有する制御部はキャリアガス用MFCが備える制御回路によって構成されている。
【0138】
しかしながら、キャリアガス用MFCが備える流量制御弁の開度を制御することができる性状を有する制御信号を出力することができる制御回路を混合ガス用MFMが備える場合は、本発明システムが有する制御部を混合ガス用MFMが備える制御回路によって構成することもできる。この場合、混合ガス用MFMが備える制御回路を使用して、混合ガス用MFMが備える流量センサ(外部センサ)からの出力信号(外部信号)に基づいて、キャリアガス用MFCが備える流量制御弁を制御する。このように、本発明システムが有する制御部は、流量制御弁を備える装置が備える制御回路及び外部センサを備える装置が備える制御回路の何れによって構成されていてもよく、或いはこれら両方の制御回路によって構成されていてもよい。
【0139】
更に、気化器の気化タンク内の圧力を一定に保つ場合、従来技術に係る気化器においては、前述したように、気化タンク内の圧力を測定する圧力センサによって測定される圧力に基づいて流体の流量(供給量)を制御するための制御装置としてのPC等を別途設ける必要がある。一方、実施例装置2においては、上述したように、キャリアガス用MFCは本発明に係る質量流量制御装置である。従って、キャリアガス用MFCは、気化タンクに配設された圧力センサから出力される外部信号に基づき、キャリアガス用MFCが備える制御回路自身によってキャリアガスの流量の制御を行うことができる。即ち、実施例装置2によれば、別個の制御装置を追加すること無く、気化タンク内の圧力を一定に保つことができる。
【0140】
加えて、前述したように、例えば気化タンク内に存在する混合ガスにおける材料ガスの濃度及び/又は気化タンク内に貯蔵された液体材料における特定成分の濃度に応じた流量制御が求められる場合もある。この場合もまた、実施例装置2によれば、上記と同様にして、気化タンクに配設された濃度センサから出力される外部信号に基づき、キャリアガス用MFCが備える制御回路自身によってキャリアガスの流量の制御を行うことができる。即ち、実施例装置2によれば、別個の制御装置を追加すること無く、例えば気化タンク内に存在する混合ガスにおける材料ガスの濃度及び/又は気化タンク内に貯蔵された液体材料における特定成分の濃度に応じた流量制御を実行することができる。
【0141】
〈結論〉
以上のように、実施例装置2によれば、迅速なパージ処理、より正確な流量制御、簡便な流量較正、タンク内の圧力に基づく流量制御、又は流体における材料の濃度等に基づく流量制御等の効果を、別個の制御装置等を追加すること無く達成することができる。
【0142】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。また、本発明に係る質量流量制御システムは、流体の流量の制御に関し、質量流量制御装置とは離れた位置に配設された外部センサから出力される検出信号である出力信号に基づいて流体の流量の制御を行うことが必要とされる用途であれば、上記以外の用途にも応用可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 第1装置(質量流量制御装置)
1a アクチュエータ
1b ベース
1c 制御回路
1h 筐体(ハウジング)
1s 流量センサ(内部センサ)
2 第2装置
2c 制御回路
2s 外部センサ
10 第1システム(質量流量制御システム)
11 流路
12 制御部
13 タンク
P 圧力
T 温度
C 濃度
30 第3システム(質量流量制御システム)
40 第4システム(質量流量制御システム)
50 第5システム(質量流量制御システム)
60 第6システム(質量流量制御システム)
70 第7システム(質量流量制御システム)
Si 内部信号
Se 外部信号
Sc 制御信号
Q1 キャリアガスの流量
Q2 混合ガスの流量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15