(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/22 20060101AFI20220830BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220830BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20220830BHJP
C03C 17/245 20060101ALI20220830BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20220830BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C03C17/22 Z
B32B9/00 A
B32B17/06
C03C17/245 A
H01L21/02 C
H01L23/14 C
(21)【出願番号】P 2021079818
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2019570593の分割
【原出願日】2019-08-16
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2018240262
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 安彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 晃男
(72)【発明者】
【氏名】今城 信彦
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512854(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C17/00-17/44
B32B1/00-43/00
H01L21/00-23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラ
ス板を準備する準備工程と、
前記ガラ
ス板を
支持ガラス基板として用い半導体パッケージを製造する工程を備えた半導体パッケージの製造方法であって、
前記準備工程では、前記ガラ
ス板の一方の表面にコーティング層を
有する積層体を形成する工程を備え、
前記コーティング層は、窒化珪素、酸化チタン、アルミナ、酸化ニオブ、ジルコニア、インジウム・スズ酸化物、酸化珪素、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群より選択される1以上の成分を含有し、
前記ガラス板の厚さdgに対する前記コーティング層の厚さdcの比(dc/dg)が、0.05×10
-3~1.2×10
-3であり、
前記積層体の自重たわみ補正条件における曲率半径r1が、10m~150mである、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの製造方法に関し、具体的には半導体パッケージの製造工程で加工基板の支持に用いる支持ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハレベルパッケージ(WLP)において、fan-out型のWLPが提案されている。fan-out型のWLPでは、加工基板の寸法変化を抑制するために、加工基板を支持するガラス基板が用いられることが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、WLPの製造工程には、
図1に示すように、剥離層積層工程や樹脂モールド作成工程等、高温条件の工程があり、熱により基板に反りが生じることがある。
【0004】
反りの改善として、より反りの小さい支持ガラス基板を用いることによる改善検討はされてきたが、支持ガラス基板をあらかじめWLPの製造工程で生じる反りと逆方向に反らせることで、WLPの製造工程で生じる反りを打ち消すことを目的とした検討はされてこなかった。
【0005】
また、ガラス基板に薄膜をコーティングすることで反りが生じることは知られている(特許文献2)が、ガラス板をより薄い薄膜で効率的に反りを生じさせる技術については検討されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2017―30997号公報
【文献】国際公開第2017/204167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コーティング層を厚くすることで積層体の反りを大きくすることは容易だが、fan-out型のWLPの製造工程では加工基板と支持基板の分離は可視光波長のレーザー照射を剥離層に行うことで可能にしているため、コーティング層の材質やコーティング層の厚さによりレーザーの透過が阻害されるため、問題となる。
【0008】
このような状況下、可視光透過性を維持しつつ大きな反りを持った支持ガラス基板材料が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、特定の反りと構成を有する積層体及び特定条件による半導体パッケージの製造方法により、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、ガラス板を準備する準備工程と、
前記ガラス板を支持ガラス基板として用い半導体パッケージを製造する工程を備えた半導体パッケージの製造方法であって、
前記準備工程では、前記ガラス板の一方の表面にコーティング層を有する積層体を形成する工程を備え、
前記コーティング層は、窒化珪素、酸化チタン、アルミナ、酸化ニオブ、ジルコニア、インジウム・スズ酸化物、酸化珪素、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群より選択される1以上の成分を含有し、
前記ガラス板の厚さdgに対する前記コーティング層の厚さdcの比(dc/dg)が、0.05×10-3~1.2×10-3であり、
前記積層体の自重たわみ補正条件における曲率半径r1が、10m~150mである、半導体パッケージの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、可視光透過性を維持しつつ大きな反りを持った積層体を提供することができる。さらに、当該積層体を支持ガラス基板として使用することで寸法精度の高いWLPの製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来のWLP製造工程(支持基板剥離まで)の1例である。
【
図2】本発明の積層体を支持ガラス基板として用いたWLP製造工程(支持基板剥離まで)の1例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の積層体及び積層体の製造方法について説明する。なお、本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0014】
[ガラス組成]
本発明の積層体に用いられるガラス板の組成は、特に限定されず、可視光透過率が高い公知の組成を使用できる。具体的には、波長400nm~1000nmにおける透過率の最低値(T%)が60%以上のものが使用できる。
【0015】
好ましい組成としては、
酸化物基準の質量%表示で、
SiO2:40%~70%、
B2O3:0%~15%、
MgO:0%~10%、
CaO:0%~10%、
SrO:0%~13%、
BaO:0%~40%、
Na2O:0%~30%、
K2O:0%~13%、
Al2O3:0.5%~15%、
の範囲にある組成が挙げられる。
【0016】
特に好ましい組成としては、
酸化物基準の質量%表示で、
SiO2:49%~70%、
B2O3:4%~13%、
MgO:0%~0.5%、
CaO:0%~8%、
SrO:0%~8%、
BaO:0%~13%、
Na2O:4%~15%、
K2O:0.1%~13%、
Al2O3:4%~13%、
の範囲にある組成が挙げられる。
【0017】
組成がこの範囲にあると、可視光透過率が優れる。また、高熱膨張係数のガラス組成では、熱処理による反りの影響が大きくなるため、本発明の効果が特に大きい。
【0018】
[ガラス板]
ガラス板は、本発明の積層体に用いられる。ガラス板は、例えば、前記ガラス組成を所定の形状(例えば、四角形状又は円盤状)の板に成形することで製造される。
【0019】
ガラス板の成形方法は限定されず、例えば、フロート法、フュージョン法及びロールアウト法等、公知の手法を用いることができる。また、本発明において、積層体を大きく反らせるために、コーティング前のガラス板は一定の反りを有することが好ましい。
【0020】
好ましいコーティング前のガラス板の反りは、ガラス板の自重たわみ補正条件(ガラスウェハが本来持つ反り量に補正した値である。重力下では自重による'たわみ'が発生するがこれを除いた値である)における曲率半径r0が200m~500mが好ましく、300m~400mが更に好ましい。コーティング前のガラス板の反りがこの範囲にあることで、後述するコーティングによる積層体の反りが大きくなる。
【0021】
このような条件に入るガラス板は、例えばフロート法で製造された素板から当該範囲の反りを有する部分を切り出すことで容易に得られる。
【0022】
ガラス板の板厚(dg)は、0.3mm~3.0mmが好ましい。0.5mm~2.0mmが更に好ましく、0.7mm~1.2~mmが特に好ましい。この範囲にあることで、積層体としての強度に優れ、重量も許容範囲となる。また、ガラス板は化学強化されたものを用いてもよい。
【0023】
[コーティング層]
本発明において、前記ガラス板に薄膜をコーティングすることで、コーティング層が形成される。コーティング層は、窒化珪素、酸化チタン、アルミナ、酸化ニオブ、ジルコニア、インジウム・スズ酸化物、酸化珪素、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群より選択される1以上の成分を含有する。窒化珪素及び酸化チタンが可視光透過性及び積層体を反らせる効果に優れるため、好ましい。
【0024】
コーティング方法としては、スパッタリング法、イオンアシスト蒸着法及びエアロゾルディポジッション法等の公知の手法を用いることができる。この中でも、スパッタリング法が積層体を反らせる効果に優れるため、好ましい。そして、コーティングは、前記反りを有するガラス板の凸面側に対して行うことで、ガラス板の反りを増大させる。
【0025】
コーティング層(dc)の厚さは、0.05μm~1.2μmが好ましい。0.1μm~1.0μmが更に好ましく、0.4μm~0.6μmが特に好ましい。この範囲にあることで、積層体の反りの大きさと可視光透過性の高さを両立することができる。
【0026】
[積層体]
本発明の積層体は、前記ガラス板及び前記コーティング層を有する。また、自重たわみ補正条件における曲率半径r1が10m~150mであり、30m~100mの範囲が好ましい。この範囲にあることで、寸法精度の高いWLPの製造が可能になる。
【0027】
また、ガラス板の厚さdg及びコーティング層の厚さdcの比がdc/dg=0.05×10-3~1.2×10-3であり、0.4×10-3~0.5×10-3の範囲にあることが好ましい。この範囲にあることで、積層体の反りの大きさと可視光透過性の高さを両立することができる。
【0028】
積層体の厚さは0.3mm~3.5mmが好ましい。0.5mm~2.5mmがより好ましく、0.7mm~1.3mmが特に好ましい。この範囲にあることで、積層体の強度と可視光透過性の高さを両立することができる。
【0029】
また、積層体の形状は、四角形状又は円盤状が好ましい。
【0030】
当該積層体は、支持ガラス基板として好適に用いられる。
【0031】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体は、前記ガラス板に前記コーティングを行うことで製造される。好ましい製造方法の具体例としては、
図2に示すように、自重たわみ補正条件における曲率半径200m~500mの反りを有するガラス板11の凸側に、窒化珪素、酸化チタン、アルミナ、酸化ニオブ、ジルコニア、インジウム・スズ酸化物、酸化珪素、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群より選択される1以上の成分を含有する薄膜(コーティング層)12のコーティングを行う工程を有する条件である。この条件で製造することで、積層体10の自重たわみ補正条件における曲率半径r1が10m~150m以下である積層体10を好適に得ることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の効果を奏する限り、実施形態を適宜変更することができる。
【0033】
<評価用サンプル形状>
直径150mm(6inch)、板厚1.0mmの円盤状のガラス板に表1に記載の条件でコーティングを行ったものを使用した。
【0034】
<測定条件・評価条件>
[ガラス板の厚さ(dg)及びコーティング層の厚さ(dc)の測定]
室温条件でレーザー変位計(神津精機社製Dyvoce)を用いて、コーティング前のガラス板及びコーティング後の積層体の厚さを測定し、dg及びdcを求めた。
【0035】
[ガラス板及び積層体の曲率半径(r0、r1)]
サンプルをレーザー変位計(神津精機社製のDyvoce)を用いて、両面差分モードによる自重たわみ補正により求められたサンプル本来が持つ反り量を元に形状シミュレーションにより算出した。そして、シミュレーションで得られた形状から曲率半径を求めた。
【0036】
コーティング前のガラス板の自重たわみ補正条件における曲率半径をr0、コーティング後の積層体のガラス板の自重たわみ補正条件における曲率半径をr1とした。
【0037】
[反りの評価]
コーティングによる反りは、一般にコーティング層が厚いほど大きくなる。そのため、反りの評価は、下記式に示すRについて行った。評価A~Dのうち、A、B及びCを合格とした。
式:R=r1(m)×dc(μm)
評価:
A:R≦30、
B:30<R≦50、
C:50<R<70、
D:70≦R
【0038】
[可視光透過性]
サンプルを室温条件で分光透過率測定機(日本分光社製V-700)を用いて、波長400-1000nmにおける透過率の最低値(T%)を測定した。評価A~Cのうち、A又はBを合格とした。
評価:
A:80%≦T、
B:60%≦T<80%、
C:T<60%
【0039】
[実施例1]
フロート法により組成1(質量%でSiO2:56.9%、Al2O3:8.1%、CaO:2.3%、SrO:12.3%、BaO:20.4%)のガラスの素板(縦横1000mm、厚さ1.4mm)を得た。前記素板の中心部から半径75mm(直径:150mm)の円型に切り抜き円盤状ガラス板とした。面取り加工した後に両面研磨機(浜井製作所社製16B-N/F)で研磨を行って板厚(dg)を1.0mmに調整した。このガラス板の曲率半径r0(フロート法由来)は、自重たわみ補正条件において370mであった。
【0040】
その後、スパッタリング装置(アルバック社製SIV-345XYSSS)にてシリコンターゲットを使用し、反応性スパッタリングによりガラス板の反りの凸面側に窒化珪素膜を膜の圧縮応力が1GPaとなるように形成した。コーティング層の厚さ(dc)は、0.5μmであった。評価結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2~実施例7及び比較例1~4]
表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様に操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
(質量%)
・組成1:
SiO2:56.9%、
Al2O3:8.1%、
CaO:2.3%、
SrO:12.3%、
BaO:20.4%
・組成2:
SiO2:68.9%、
Al2O3:5.9%、
MgO:4.1%、
CaO:7.3%、
Na2O:14.6%、
K2O:0.2%
【0044】
本出願は、2018年12月21日に日本国特許庁に出願した特願2018-240262号に基づく優先権を主張するものであり、特願2018-240262号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0045】
10 積層体
11 ガラス板
12 薄膜(コーティング層)