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特許7131753ゼオライトの製造方法、チャバザイト型ゼオライトおよびこれを備えるイオン交換体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ゼオライトの製造方法、チャバザイト型ゼオライトおよびこれを備えるイオン交換体
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C01B39/48
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017217982
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2019089666
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊與木 健太
(72)【発明者】
【氏名】チャイキッティスィン ワッチャロップ
(72)【発明者】
【氏名】小池 夏萌
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-521744(JP,A)
【文献】特開2017-100068(JP,A)
【文献】特開2014-156386(JP,A)
【文献】特開昭59-199524(JP,A)
【文献】特表平06-500986(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104386706(CN,A)
【文献】特開2008-036826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 20/00 - 20/28
B01J 20/30 - 38/74
B01D 53/73 - 53/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャバザイト型ゼオライトの製造方法であって、
Si源を含む第1水溶液およびZn源を含むpHが13以上の第2水溶液をそれぞれ用意する工程と、
前記第1水溶液と前記第2水溶液を混合して、反応混合物を得る工程と、
前記反応混合物を100℃以上200℃以下の温度で密閉して加熱する工程と、を備え
前記チャバザイト型ゼオライトが、骨格中にSi、Zn、およびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含む、チャバザイト型ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記第1水溶液が、アルカリ源をさらに含む、請求項に記載のチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記第2水溶液が、有機構造規定剤を含む、請求項1または2に記載のチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
骨格中にSi、Zn、およびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含む、チャバザイト型ゼオライト。
【請求項5】
前記骨格中にAlを含まない、請求項に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項6】
Si/Znの原子比が、5以上40以下である、請求項またはに記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項7】
CuKα線を使用して得られるX線回折パターンにおいて、少なくとも下表に示される回折角2θの位置に下表に示される相対強度のX線回折ピークを有する、請求項ないしのいずれか一項に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【表1】
表中、相対強度100%はX線回折パターンにおける最大ピークの強度である。
【請求項8】
請求項ないしのいずれか一項のチャバザイト型ゼオライトと、前記チャバザイト型ゼオライトに担持された多価金属カチオンとを含む、イオン交換体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトの製造方法、チャバザイト型ゼオライトおよびこれを備えるイオン交換体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、骨格中の半金属元素および/または金属元素として珪素およびアルミニウムを含むCHA型ゼオライトが知られている。チャバザイト型ゼオライト(以下「CHA型ゼオライト」と称することもある。)は、例えば、自動車の排ガスを浄化するための触媒、またはメタノールからエチレンやプロピレンを製造するための固体酸触媒として用いられている。
【0003】
CHA型ゼオライトにイオン交換により銅イオン等の2価以上の多価金属カチオンを担持させたイオン交換体が触媒として優れた特性を示すことが報告されている。珪素およびアルミニウムを含むCHA型ゼオライトにおいて、酸素原子と四配位結合しているアルミニウムは1原子あたりマイナス1の負電荷を生成する。そのため、多価金属カチオンのイオン交換サイトは、ゼオライト骨格中の珪素のアルミニウムへの置換量が高くかつ近傍に存在した2以上のアルミニウムが存在しているときにのみ創出されるので、多価金属カチオンとイオン交換されてないアルミニウムが存在すると、多価金属カチオンの担持量が少なくなるとともに、アルミニウム由来のブレンステッド酸点が副反応の進行を進めるおそれがある。
【0004】
一方、現在、珪素およびアルミニウムを含むCHA型ゼオライトの他、珪素および亜鉛を含むベータ型ゼオライトや珪素およびアルミニウムの他に亜鉛を含むCHA型ゼオライトも知られている(例えば、非特許文献1および特許文献1参照)。シリケート骨格中に、酸素原子と四配位結合している亜鉛を有するゼオライトにおいては、亜鉛1原子あたりマイナス2の負電荷が生成される。このようなマイナス2の負電荷は、2価の金属カチオンを1対1で担持することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mark A. Deimund,外2名、「Nickel-Exchanged Zincosilicate Catalysts for the Oligomerization of Propylene」、ACS触媒、米国化学会、2014年10月14日、p.4189-4195
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2016/0243531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多価金属カチオンを担持するCHA型ゼオライトの触媒活性等の機能は、CHA型ゼオライトのイオン交換サイトに対する多価金属カチオン担持率(多価金属カチオン交換率)に依存する。このため、従来の珪素とアルミニウムのみを含有するCHA型ゼオライトよりは、特許文献2に開示されている珪素とアルミニウムと亜鉛を含むCHA型ゼオライトの方が、多価金属カチオン担持能が高くなるが、現在、更なる多価金属カチオン担持能の向上が求められている。
【0008】
しかしながら、多価金属カチオン担持能を向上させるために、単にCHA型ゼオライト中の亜鉛の比率を高めようとすると、CHA型ゼオライト自体が形成されず、または形成されたとしても層状シリケートのような不純物が発生してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、不純物が少なく、製造が容易であり、かつ多価金属カチオン担持能を向上させることが可能なゼオライトの製造方法、多価金属カチオン担持能を向上させることが可能なチャバザイト型ゼオライトおよびこれを備えるイオン交換体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の態様によれば、Si源を含む第1水溶液およびZn源を含む第2水溶液をそれぞれ用意する工程と、前記第1水溶液と前記第2水溶液を混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を100℃以上200℃以下の温度で密閉して加熱する工程と、を備える、ゼオライトの製造方法が提供される。
【0011】
上記ゼオライトの製造方法において、前記第2水溶液のpHが13以上であってもよい。
【0012】
上記ゼオライトの製造方法において、前記第1水溶液が、アルカリ源をさらに含んでいてもよい。
【0013】
上記ゼオライトの製造方法において、前記第2水溶液が、有機構造規定剤を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の他の態様によれば、骨格中にSi、Zn、およびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含む、チャバザイト型ゼオライトが提供される。
【0015】
上記チャバザイト型ゼオライトにおいて、前記骨格中にAlを含まなくてもよい。
【0016】
上記チャバザイト型ゼオライトにおいて、Si/Znの原子比が、5以上40以下であってもよい。
【0017】
上記チャバザイト型ゼオライトにおいては、CuKα線を使用して得られるX線回折パターンにおいて、少なくとも表1に示される回折角2θの位置に表1に示される相対強度のX線回折ピークを有していてもよい。
【表1】
表1中、相対強度100%はX線回折パターンにおける最大ピークの強度である。
【0018】
本発明の他の態様によれば、上記チャバザイト型ゼオライトと、前記チャバザイト型ゼオライトに担持された多価金属カチオンとを含む、イオン交換体が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一の態様によれば、不純物が少なく、製造が容易であり、かつ多価金属カチオン担持能を向上させることが可能なゼオライトの製造方法を提供できる。また、本発明の他の態様によれば、多価金属カチオン担持能を向上させることが可能なチャバザイト型ゼオライトおよびこのようなチャバザイト型ゼオライトを備えるイオン交換体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1~3および参考例1に係るゼオライトのX線回折パターンである。
図2】走査型電子顕微鏡で撮影した実施例1に係るゼオライトの写真である。
図3】実施例2に係るゼオライトのX線回折パターンである。
図4】比較例1に係るゼオライトのX線回折パターンである。
図5】走査型電子顕微鏡で撮影した比較例1に係るゼオライトの写真である。
図6】比較例2、3に係るゼオライトのX線回折パターンである。
図7】実施例1、2および比較例1、2に係るゼオライトにおいてNi2+のイオン交換を行ったときの時間に対するNi2+のイオン交換率を示すグラフである。
図8】実施例2に係るNi2+のイオン交換前かつ加熱前のゼオライト、実施例2に係るNi2+のイオン交換前かつ加熱後のゼオライト、実施例2に係るNi2+のイオン交換後かつ加熱前のゼオライト、および実施例2に係るNi2+のイオン交換後かつ加熱後のゼオライトのX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るゼオライトの製造方法、ゼオライトおよびイオン交換体について、説明する。
【0022】
<<<ゼオライトの製造方法>>>
まず、Si源を含む第1水溶液およびZn源を含む第2水溶液をそれぞれ用意する。
【0023】
<<第1水溶液>>
第1水溶液は、Si源および水の他、Al源、アルカリ源および/または有機構造規定剤を含んでいてもよい。第1水溶液は、Si源、水、アルカリ源から構成されていることが好ましい。後述するようにAlは任意成分であるので、Alを含まないゼオライトを製造する場合には、第1水溶液はAl源を含まない。
【0024】
第1水溶液のpHは、10以上であることが好ましく、13以上であることがより好ましい。Si源はアルカリ水溶液中で溶解するので、第1水溶液のpHを10以上であれば、Si源を溶解させることができる。第1水溶液のpHは、pH測定器(製品名「F-72S(電極9615-10D付)」、株式会社堀場製作所製)によって測定することができる。第1水溶液のpHは、3回測定して得られた値の算術平均値とする。pHが10以上や13以上の第1水溶液は、第1水溶液にアルカリ源を含ませることによって得ることができる。
【0025】
第1水溶液を調整する際には、均一な混合を促進する観点から、水にアルカリ源を溶解させた後に、Si源を加えることが好ましい。
【0026】
第1水溶液を調整する際には、Si源を均一に溶解させる観点から、第1水溶液を200rpm以上1000rpm以下の回転数で5分以上攪拌することが好ましい。
【0027】
<Si源>
Si源とは、ゼオライトの珪素成分の原料となる化合物を意味する。Si源としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、非晶質シリカ等のシリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート等が挙げられる。これらの中でも、混合性の良さや反応性の高さの観点から、ヒュームドシリカが好ましい。Si源としては、2種以上のSi源を用いてもよい。
【0028】
<Al源>
Al源とは、ゼオライトのアルミニウム成分の原料となる化合物を意味する。Al源としては、特に限定されないが、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル等が挙げられる。これらの中でも、溶解性の良さの観点から、アルミン酸ナトリウムが好ましい。Al源としては、2種以上のAl源を用いてもよい。
【0029】
Al源の添加量は、例えば、後述する反応混合物中にけるAl/Znのモル比が0以上1未満となるような量であることが好ましい。Al源の添加量をこのような量に制限することにより、ゼオライト中の亜鉛成分を多くすることができるので、多価金属カチオン担持能をより向上させることができる。Al源の添加量は、多価金属カチオン交換率および触媒特性をさらに向上させる観点から、0であることがより好ましい。
【0030】
<アルカリ源>
アルカリ源は、第1水溶液をアルカリ性にするための化合物である。アルカリ源としては、水に溶解して電離し、水酸化物イオンを生ずる化合物であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、ジンコシリケートゼオライトを成長させる観点から、水酸化リチウムが好ましい。
【0031】
アルカリ源の添加量は、特に限定されないが、Si源のモル数に対するアルカリ源のモル比(アルカリ源/Si源)が0.3以上0.7以下であることが好ましい。この比が0.3以上であれば、CHA型ゼオライトを得ることができ、また0.7以下であれば、不純物となる副生成物の生成を抑制できる。この比の下限は、0.45以上であることがより好ましく、上限は0.55以下であることがより好ましい。
【0032】
<有機構造規定剤>
第1水溶液に有機構造規定剤を含ませる場合には、有機構造規定剤は後述する第2水溶液の欄で説明する有機構造規定剤と同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0033】
<水>
第1水溶液中の水の量は、特に限定されないが、Si源のモル数に対する水のモル比(HO/Si源)が20以上50以下であることが好ましい。この比が20以上であれば、不純物となる副生成物の生成を抑制でき、また50以下であれば、CHA型ゼオライトを得ることができる。この比の下限は、25以上であることがより好ましく、上限は35以下であることがより好ましい。
【0034】
<<第2水溶液>>
第2水溶液は、Zn源および水の他、Al源、アルカリ源および/または有機構造規定剤を含んでいてもよい。第2水溶液は、Zn源、水、有機構造規定剤から構成されていることが好ましい。特に、第1水溶液が、Si源、水、およびアルカリ源から構成され、かつ第2水溶液が、Zn源、水、および有機構造規定剤から構成されていることが好ましい。Alを含まないゼオライトを製造する場合には、第1水溶液のみならず第2水溶液もAl源を含まない。
【0035】
第2水溶液のpHは、13以上であることが好ましく、13.5以上であることがより好ましい。Zn源は強アルカリ水溶液中で溶解するので、第2水溶液のpHが13以上であれば、Zn源の沈殿をより抑制することができる。第2水溶液のpHは、pH測定器(製品名「F-72S(電極9615-10D付)」、株式会社堀場製作所製)によって測定することができる。第2水溶液のpHは、3回測定して得られた値の算術平均値とする。pHが13以上や13.5以上の第2水溶液は、第2水溶液に有機構造規定剤としてのTMAdaOHを含ませることによって得ることができる。
【0036】
第2水溶液を調整する際には、まず、水に有機構造規定剤等を加えることによってpHを13以上とし、その後にZn源を加えることが好ましい。このように第2水溶液のpHを調整した後にZn源を加えることにより、Zn源の沈殿をより抑制できる。
【0037】
第2水溶液を調整する際には、第2水溶液を300rpm以上1000rpm以下の回転数で1分以上攪拌することが好ましい。第2水溶液を攪拌することによって、Zn源の沈殿を抑制することができる。
【0038】
<Zn源>
Zn源とは、ゼオライトの亜鉛成分の原料となる化合物を意味する。Zn源としては、特に限定されないが、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。Zn源としては、2種以上の上記化合物を用いてもよい。これらの中でも、第2水溶液のpH低下を抑制する観点から、酢酸亜鉛が好ましい。
【0039】
<有機構造規定剤>
有機構造規定剤とは、ゼオライトの細孔径や結晶構造を規定する有機分子を意味する。構造規定剤の種類等によって、得られるゼオライトの構造等を制御することができる。
【0040】
有機構造規定剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(1)に示されるN,N,N-トリアルキルアダマンタンアンモニウムカチオンおよび下記式(2)に示される所望により置換されたN,N,N-アルキルベンジルアンモニウムカチオンの少なくともいずれかに臭化物、塩化物、フッ化物、ヨウ化物、窒化物、または水酸化物アニオンが結合したものが挙げられる。
【化1】
【化2】
上記式(1)および(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立的に、C1~6アルキル基、またはC1~3アルキル基である。上記式(2)に記載のN,N,N-アルキルベンジルアンモニウムカチオンのフェニル基は、所望により1~3つのフッ素やフッ素化されたまたはパーフルオロ化されたC1~3アルキル基で置換されていてもよい。
【0041】
これらの中でも、強アルカリ性を示すことから、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(TMAdaOH)を用いることが好ましい。
【0042】
有機構造規定剤の添加量は、特に限定されないが、Si源のモル数に対する有機構造規定剤のモル比(有機構造規定剤/Si源)が0.3以上0.5以下であることが好ましい。この比が以上であれば、CHA型ゼオライトを得ることができ、また0.5以下であれば、不純物となる副生成物の生成を抑制できる。この比の下限は、0.4以上であることがより好ましく、上限は0.45以下であることがより好ましい。
【0043】
<Al源、アルカリ源>
第2水溶液にAl源、アルカリ源を含ませる場合には、Al源、アルカリ源は第1水溶液の欄で説明したAl源、アルカリ源と同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0044】
<水>
第2水溶液中の水の量は、Zn源を溶解させるのに十分な量であれば、特に限定されない。
【0045】
第1水溶液および第2水溶液を用意した後、第1水溶液と第2水溶液を混合し、反応混合物を得る。本明細書における「反応混合物」とは、後述する水熱合成に供される原料混合物を意味する。反応混合物は、300rpm以上1000rpm以下の回転数で5分以上攪拌されることが好ましい。反応混合物を攪拌することによって、Zn源の沈殿を抑制することができる。
【0046】
反応混合物を得る際に、CHA型ゼオライトからなる種結晶をさらに添加してもよい。種結晶を用いることにより、純度の高いCHA型ゼオライトを製造できる。種結晶は、CHA型ゼオライトであれば、製造法の違いに関わらず種結晶として用いることができる。得られるCHA型ゼオライトの純度を高める観点から、シリカのみからなるCHA型ゼオライトであることが好ましい。
【0047】
反応混合物を得た後、反応混合物を100℃以上200℃以下の温度で密閉して加熱する。すなわち、水熱合成を行う。水熱合成を100℃以上で行うことにより、効率良く骨格中にSi、ZnおよびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含むCHA型ゼオライトを得ることができる。また、水熱合成を200℃以下で行うことにより、高耐圧のオートクレーブを用いずに合成ができ、また不純物の発生を抑制できる。水熱合成を行う際の温度の下限は120℃以上であることが好ましく、また上限は180℃以下であることが好ましい。水熱合成は、CHA型ゼオライトの結晶成長を適切に行う観点から、静止した状態または10rpm以上80rpm以下の回転数で攪拌しながら4日~7日行うことが好ましい。
【0048】
亜鉛は、アルミニウムに比べて非常に沈殿しやすいので、最初からSi源およびZn源等を混合してしまうと、Zn源が水酸化亜鉛(Zn(OH))または酸化亜鉛(ZnO)となってしまい、Zn源が沈殿してしまう。これにより、Zn源は、Si源と分離して存在してしまい、Si源と作用することができず、層状シリケートのような不純物が形成されてしまうものと考えられる。これに対し、本実施形態によれば、Si源を含む第1水溶液と、Zn源を含む第2水溶液とに分けているので、第2水溶液においてはZn源を溶解させて、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン([Zn(OH)2-)として存在させることができる。これにより、Zn源が沈殿するのを抑制できる。また、一旦、Zn源をテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンにした場合には、その後に第1水溶液と第2水溶液を混合したとしても、Zn源の沈殿は生じにくい。これにより、骨格中にSi、ZnおよびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含むゼオライト(例えば、CHA型ゼオライト)を得ることができるとともに層状シリケートのような不純物の生成を抑制できる。また、Si源を含む第1水溶液とZn源を含む第2水溶液を分けるという単純な工程を経ることによって上記ゼオライトを得ることができるので、容易にゼオライトを製造できる。さらに、多価金属カチオン担持能を向上させることが可能な、骨格中にSi、ZnおよびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含むゼオライトを得ることができる。
【0049】
<<<CHA型ゼオライト>>>
上記方法によって得られるゼオライトがCHA型ゼオライトである場合、酸素8員環構造から構成され、かつ3次元細孔構造を有する。CHA型ゼオライトとは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コードでCHA構造となる結晶構造を有するゼオライトである。得られたゼオライトがCHA型ゼオライトであるか否かは、得られたゼオライトの粉末X線回折測定結果をCHA型ゼオライトの粉末X線回折パターンと比較することで、確認することができる。
【0050】
上記CHA型ゼオライトは、Si、Zn、およびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含む。これは、上記CHA型ゼオライトにおいては、Alは、任意成分であり、ゼオライトはAlを含まなくてもよいが、Alを含む場合には、Al/Znの原子比が0以上1未満の割合でAlを含むことを意味する。Al/Znの原子比は、CHA型ゼオライトの組成分析の結果から求めることが可能である。
【0051】
上記CHA型ゼオライトは、Alを含まないことが好ましい。Alを含まないことにより、多価金属カチオン担持能をより向上させることができる。上記CHA型ゼオライトがAlを含む場合、Al/Znの原子比が0.5以下、0.1以下の割合の順でAlを含むことが好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
【0052】
上記CHA型ゼオライトは、Si/Znの原子比が、5以上40以下であることが好ましい。Si/Znの原子比が5以上であれば、CHA型ゼオライトの骨格安定性を高めることができる。また、Si/Znの原子比が40以下であれば、CHA型ゼオライト全体の負電荷が大きくなるので、CHA型ゼオライトを任意のカチオンMとイオン交換を行った場合にM/Znの原子比が大きくなり、イオン交換サイトにイオン結合するカチオンの数を増加させることができる。Si/Znの原子比は、CHA型ゼオライトの組成分析の結果から求めることが可能である。Si/Znの下限は、8以上、10以上、11以上、12以上の順にさらに好ましい(数値が大きいほど好ましい)。Si/Znの原子比の上限は、30以下、20以下、19以下、18以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
【0053】
上記CHA型ゼオライトのBET比表面積は、250m/g以上であることが好ましい。BET比表面積が250m/g以上であれば、触媒として使用した際に、高い触媒活性および高い選択性を得ることができる。BET比表面積は、JIS Z8830:2013(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準拠した方法によってBET表面積測定装置を用いて測定することができる。上記CHA型ゼオライトのBET比表面積は、280m/g以上、300m/g以上の順にさらに好ましい(数値が大きいほど好ましい)。
【0054】
上記CHA型ゼオライトのミクロ孔容積は、ミクロ孔は触媒反応における反応場や吸着反応における吸着場となるため、0.10cc/g以上であることが好ましい。ミクロ孔容積は、BET表面積測定装置を用いて測定することができる。上記CHA型ゼオライトのミクロ孔容積は、0.12cc/g以上、0.15cc/g以上の順にさらに好ましい(数値が大きいほど好ましい)。
【0055】
上記CHA型ゼオライトは、純粋なジンコシリケートCHA型ゼオライトを得る観点から、CuKα線(λ=1.5418Å)を使用して得られるX線回折パターンにおいて、少なくとも表2に示される回折角2θの位置に表2に示される相対強度のX線回折ピークを有していることが好ましく、少なくとも表3に示される回折角2θの位置に表3に示される相対強度のX線回折ピークを有していることがより好ましい。
【表2】
【表3】
表2および表3中、相対強度100%はX線回折パターンにおける最大ピークの強度である。
【0056】
本実施形態によれば、CHA型ゼオライトの骨格中にSi、ZnおよびAl/Znの原子比が0以上1未満の割合のAlを含むので、SiおよびAlを含み、かつZnを含まないCHA型ゼオライトや特許文献2に開示されているSi、ZnおよびAl/Znの原子比が1以上の割合のAlを含むCHA型ゼオライトよりもZnを多く含んでいる。これにより、多価金属カチオン担持能を向上させることができる。
【0057】
<<<イオン交換体>>>
イオン交換体は、上記CHA型ゼオライトと、イオン交換により上記CHA型ゼオライトに担持された多価金属カチオンとを備えている。多価金属カチオンとしては、(1)マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、ニッケル(II)イオン、銅(II)イオン、水銀(II)イオン、鉄(II)イオン、コバルト(II)イオン、スズ(II) イオン、鉛(II)イオン、マンガン(II)イオン等の2価の金属カチオン、(2)アルミニウムイオン、鉄(III)イオン、クロム(III)イオン等の3価の金属カチオン、(3)スズ(IV)イオン、マンガン(IV)イオン等の4価の金属カチオン等が挙げられる。これらの中でも、2価の金属イオンが好ましい。
【0058】
CHA型ゼオライトにおいてAlの割合を低下させると、CHA型ゼオライトの熱耐久性が低下するおそれがあるが、CHA型ゼオライトに多価金属カチオンを担持させた場合には、多価金属カチオンによりCHA型ゼオライト骨格内のZnが安定化するので、熱耐久性を向上させることができる。
【実施例
【0059】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。図1は実施例1~3および参考例1に係るゼオライトのX線回折パターンであり、図2は走査型電子顕微鏡で撮影した実施例1に係るゼオライトの写真であり、図3は実施例2に係るゼオライトのX線回折パターンである。図4は比較例1に係るゼオライトのX線回折パターンであり、図5は走査型電子顕微鏡で撮影した比較例1に係るゼオライトの写真であり、図6は比較例2、3に係るゼオライトのX線回折パターンである。図7は、実施例1、2および比較例1、2に係るゼオライトにおいてNi2+のイオン交換を行ったときの時間に対するNi2+のイオン交換率を示すグラフであり、図8は実施例2に係るNi2+のイオン交換前かつ加熱前のゼオライト、実施例2に係るNi2+のイオン交換前かつ加熱後のゼオライト、実施例2に係るNi2+のイオン交換後かつ加熱前のゼオライト、および実施例2に係るNi2+のイオン交換後かつ加熱後のゼオライトのX線回折パターンである。
【0060】
<分析に用いた装置>
粉末X線回折装置:製品名「UltimaIV」、株式会社リガク製、Cukα線使用、電圧40kV、電流40mA、スキャンステップ0.02°、スキャン速度2°/min
組成分析装置:ICP発光分光分析装置(製品名「iCAP 6300」、Thermo Fisher Scientific製)
走査型電子顕微鏡:製品名「電界放出型走査電子顕微鏡 S-900」、日立ハイテクノロジーズ株式会社製
BET表面積測定装置:製品名「Autosorb(登録商標)-iQ2」、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製
【0061】
<参考例1>
フッ素およびSi源を用いてシリカのみからなるCHA型ゼオライトを合成した。具体的には、Si源としてのテトラエトキシシラン(TEOS)15.79gと有機構造規定剤としてのN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物27%水溶液(これ以降、「TMAdaOH27%水溶液」と称する。)28.18gを混合し、ホットプレート上で過熱してモル比がSiO:TMAdaOH:HO=1:0.5:8となるまで水を揮発させた。これにフッ化水素酸1.54gを添加してよく混合し、15分間室温で攪拌した。この反応混合物を、テフロン製密閉容器に入れて、150℃、60rpm、自生圧力下で8日間加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末を得た。この生成物における上記粉末X線回折装置によるX線回折測定の結果から、この生成物は図1に示すように不純物を含まないCHA型ゼオライトであることが確認された。なお、後述する実施例2~4では、ここで得られたシリカのみからなるCHA型ゼオライトを種結晶として用いた。
【0062】
<実施例1>
純水3.430gにアルカリ源としての水酸化リチウム・一水和物0.039gを添加して均一に溶解させた水溶液に、Si源としてのヒュームドシリカ(製品名「Cab-O-Sil(登録商標)M-5」、キャボットコーポレーション製)0.700gを加えて均一に混合した。この反応混合物を、50mLのプラスチック容器に入れて、3時間室温で攪拌し、水溶液1を得た。また、別の50mLのプラスチック容器に有機構造規定剤としてのN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物27%水溶液(これ以降、「TMAdaOH27%水溶液」と称する。)3.680gを入れ、これにZn源としての酢酸亜鉛0.064gを混合して5分間室温で攪拌し、水溶液2を得た。水溶液1を水溶液2の入った容器に加え、5分間室温で攪拌した。表4に示される組成を有するこの反応混合物を、テフロン(登録商標)製密閉容器に入れて、撹拌することなしに150℃、自生圧力下で7日間加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末(生成物)を得た。この生成物は、上記粉末X線回折装置によるX線回折測定の結果から、図1に示すように不純物を含まないCHA型ゼオライト(ジンコシリケートCHA型ゼオライト)であることが確認された。また、上記走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した生成物の写真を図2に示す。さらに、上記組成分析装置による組成分析の結果から求めたZn/Si原子比等を表5に示す。また、生成物から焼成によりTMAdaOHを除去した状態で上記BET表面積測定装置を用いて窒素吸着法により測定した生成物のBET比表面積とミクロ孔容積も表5に示す。
【0063】
<実施例2~4>
実施例2~4においては、反応混合物を実施例1と同様の方法および表4に記載した条件で合成した。ただし、ここでは、上記参考例1で合成したシリカのみから構成されたCHA型ゼオライトを種結晶として5wt%加えて均一に混合した。また、実施例4においては、Al源として水酸化アルミニウムを添加しているが、水酸化アルミニウムは水溶液2に添加した。表4に示される組成を有するこの反応混合物を、テフロン(登録商標)製密閉容器に入れて、表4に示す条件下で150℃、自生圧力下で4日間加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末(生成物)を得た。この生成物は、上記粉末X線回折装置によるX線回折測定の結果から、不純物を含まないCHA型ゼオライト(実施例2、3:ジンコシリケートCHA型ゼオライト、実施例4:ジンコアルミノシリケートCHA型ゼオライト)であることが確認された。実施例2および3の生成物のX線回折パターンも図1に示し、また実施例2の生物物のX線回折パターンにおけるX線回折ピークの具体的なピーク位置を図3に示す。上記組成分析装置による組成分析の結果から求めたZn/Si原子比等を表5に示す。また、生成物から焼成によりTMAdaOHを除去した状態で上記BET表面積測定装置を用いて窒素吸着法により測定した生成物のBET比表面積とミクロ孔容積を表5に示した。さらに、実施例2の生物物のX線回折パターンにおけるX線回折ピークのピーク位置、格子面間隔および相対強度を表6に示した。
【0064】
<比較例1>
50mLのプラスチック容器に純水3.430gを入れ、アルカリ源としての水酸化リチウム・一水和物0.039gを添加して均一に溶解させた水溶液に、Si源としてのヒュームドシリカ(製品名「Cab-O-Sil(登録商標)M-5」、キャボットコーポレーション製)0.700g、有機構造規定剤としてのTMAdaOH27%水溶液3.680g、Zn源としての酢酸亜鉛0.064gを順次加えて均一に混合した。表4に示される組成を有するこの反応混合物を3時間室温で攪拌した後、テフロン(登録商標)製密閉容器に入れて、撹拌することなしに150℃、自生圧力下で7日間加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末(生成物)を得た。この生成物は、上記粉末X線回折装置によるX線回折測定の結果から、図4に示すように層状シリケート等の不純物を含むCHA型ゼオライトであることが確認された。走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した生成物の写真を図5に示す。
【0065】
<比較例2>
有機構造規定剤としてのTMAdaOH27%水溶液34.5gとAl源としての水酸化アルミニウム0.43gをよく混合し、ここにSi源としてのヒュームドシリカ(製品名「Cab-O-Sil(登録商標)M-5」、キャボットコーポレーション製)6.63gと水4.54gを添加し、15分間室温で攪拌した。この反応混合物を、テフロン(登録商標)製の密閉容器に入れて、撹拌することなしに150℃、自生圧力下で7日間加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末(生成物)を得た。この生成物は、上記粉末X線回折装置によるX線回折測定の結果から、図6に示すように不純物を含まないCHA型ゼオライト(アルミノシリケートCHA型ゼオライト、SSZ-13)であることが確認された。また、生成物の組成等を表5に示す。
【0066】
<比較例3>
特許文献2に基づいて、シリカとアルミニウムおよび亜鉛を共に骨格に含むCHA型ゼオライトを合成した。具体的には、水2.5gにSi源としての珪酸ナトリウム水溶液2.6g(NaO:9.37%、 SiO2:28.96%、 HO:61.67%)および有機構造規定剤としてのTMAdaOH27%水溶液2.22g、Zn源としての酢酸亜鉛0.061g、FAU型ゼオライト(製品名「HSZ320NAA」、東ソー株式会社、Si/Al=2.75)0.24gを添加し、よく混合した。この反応混合物を、テフロン(登録商標)製の密閉容器に入れて、140℃、自生圧力下で7日間加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末(生成物)を得た。この生成物は、上記粉末X線回折装置によるX線回折測定の結果から、図6に示すように不純物を含まないCHA型ゼオライト(ジンコアルミノシリケートCHA型ゼオライト、[Zn,Al]-CHA)であることが確認された。また、生成物の組成等を表5に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
表6中、相対強度100%はX線回折パターンにおける最大ピークの強度とした。
【0070】
<ゼオライトのイオン交換>
実施例1、2に係るCHA型ゼオライトを用いてNi2+のイオン交換を行い、Ni2+カチオン交換量を測定した。また、比較例2に係るCHA型ゼオライト(SSZ-13)と比較例3に係るCHA型ゼオライト([Zn,Al]-CHA)についてもイオン交換および分析を行った。
【0071】
具体的には、CHA型ゼオライトの各サンプル0.05gを、500gの硝酸ニッケル水溶液(0.005mol/L)に加え、室温で一定時間保持した後に蒸留水により洗浄した。洗浄、乾燥の後、組成分析を行った。多価金属カチオン交換率(%)は、カチオン交換後のゼオライトを、ICPを用いて得られたNi、Si、Zn、Alの各量から、次の式により計算される。
多価金属カチオン交換率(%)=(単位胞当たりのイオン交換後の多価金属元素数×イオン価数)/(単位胞当たりのイオン交換前のCHA型ゼオライトのイオン交換容量)
上記式中、単位胞当たりのイオン交換前のCHA型ゼオライトのイオン交換容量は、CHA型ゼオライトのSi/(Zn+Al)比およびZn/(Zn+Al)比により計算される。
【0072】
図7に示すように、実施例1、2に係る亜鉛を含有するCHA型ゼオライトは、亜鉛を含有しない比較例2に係るCHA型ゼオライト、および亜鉛よりも多くのアルミニウムを含有する比較例3に係るCHA型ゼオライトに比べて、Ni2+のイオン交換率がより高いことが確認された。
【0073】
<熱耐久性評価>
実施例2に係るNi2+のイオン交換前のCHA型ゼオライトと、実施例2に係るNi2+のイオン交換後のCHA型ゼオライトを用いて、600℃、6時間加熱し、加熱前後のCHA型ゼオライトの結晶性についての分析を行った。
【0074】
具体的には、まず、実施例2に係るNi2+のイオン交換前のCHA型ゼオライトと、実施例2に係るNi2+のイオン交換後のCHA型ゼオライトを用意した。実施例2に係るNi2+のイオン交換後のCHA型ゼオライトは、実施例2に係る上記<ゼオライトのイオン交換>の欄でイオン交換されたCHA型ゼオライトを用いた。次いで、これらのCHA型ゼオライトにおいて、上記粉末X線回折装置を用いてX線回折測定を行った。
【0075】
その後、これらのCHA型ゼオライトを、600℃、6時間空気中で加熱した。そして、加熱後のCHA型ゼオライトにおいても、上記と同様にX線回折測定を行ったところ、図8に示されるように、Ni2+のイオン交換前のCHA型ゼオライトにおいては、加熱前に比べて加熱後のピークの高さが、全体的に低下していたので、Ni2+のイオン交換前のCHA型ゼオライトの結晶性は、加熱前に比べて加熱後の方が低下していていた。これに対し、Ni2+のイオン交換後のCHA型ゼオライトにおいては、加熱前および加熱後のピークの高さがほぼ変わらなかったので、Ni2+のイオン交換後のCHA型ゼオライトの結晶性は、加熱前後でほぼ変わらなかった。これは、イオン交換サイトのNi2+により骨格内のZnが安定化され、耐久性が向上したものと考えられる。この結果から、ジンコシリケートCHA型ゼオライトにおいて多価金属カチオンのイオン交換を行うと、熱耐久性が向上することが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8