(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】伸縮性膜材料組成物、伸縮性膜、及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20220830BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220830BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20220830BHJP
C08G 18/61 20060101ALI20220830BHJP
A61B 5/276 20210101ALI20220830BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/67 010
C08G18/38 093
C08G18/61
A61B5/276
(21)【出願番号】P 2019005998
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018021374
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 元亮
(72)【発明者】
【氏名】野中 汐里
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幸士
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206626(JP,A)
【文献】特開2018-123304(JP,A)
【文献】特開2019-070109(JP,A)
【文献】特開平04-209679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290
C08G18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(
3)-1及び/又は(
3)-2で示される
、末端が(メタ)アクリレート基を有する構造を有するシリコーン主鎖型ウレタン及び下記一般式(
4)-1及び/又は(
4)-2で示される
、末端が(メタ)アクリレート基を有する構造を有するシリコーンペンダント型ウレタンを含有するものであることを特徴とする伸縮性膜材料組成物。
【化1】
【化2】
(式中、R
1、R
4は炭素数1~40の直鎖状
又は分岐状のアルキレン基であり、
該アルキレン基はエーテル基
又はチオール基を有していても良い。R
2、R
3、R
5は同一
又は非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状
若しくは環状のアルキル基、フェニル基、
又は3,3,3-トリフルオロプロピル基である。R
6、R
11、R
12、R
13は同一
又は非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状
若しくは環状のアルキル基、フェニル基
、3,3,3-トリフルオロプロピル基、
又は-(OSiR
2R
3)
s-OSiR
2R
3R
5基である。R
7、R
9は単結合、メチレン基、又はエチレン基であり、R
7及びR
9の炭素数の合計が1又は2である。R
8は水素原子又は炭素数1~4の直鎖状のアルキル基であり、R
10は水素原子又はメチル基である。Aは炭素数3~7の直鎖状
又は分岐状のアルキレン基であり、Xは炭素数3~7の直鎖状
又は分岐状のアルキレン基で、
該アルキレン基はエーテル基を含有しても良い。m、nは1~100の範囲の整数であり、pは2~10の範囲の整数であり、q、r、sは0~20の範囲の整数である。
R
14
は水素原子又はメチル基である。t、uは1分子中の単位数であり、1≦t≦100、1≦u≦3の範囲の整数である。)
【請求項2】
前記シリコーン主鎖型ウレタンの含有割合が、前記シリコーンペンダント型ウレタンの50質量%以下のものであることを特徴とする請求項
1に記載の伸縮性膜材料組成物。
【請求項3】
前記シリコーン主鎖型ウレタンの含有割合が、前記シリコーンペンダント型ウレタンの25質量%以下のものであることを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載の伸縮性膜材料組成物。
【請求項4】
前記シリコーン主鎖型ウレタンの含有割合が、前記シリコーンペンダント型ウレタンの15質量%以下のものであることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の伸縮性膜材料組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の伸縮性膜材料組成物を含有し、前記シリコーン主鎖型ウレタンが表面に配向しているものであることを特徴とする伸縮性膜。
【請求項6】
前記伸縮性膜が、JIS K 6251に規定される引っ張り試験で伸縮率が20~1000%の範囲のものであることを特徴とする請求項
5に記載の伸縮性膜。
【請求項7】
前記伸縮性膜が、伸縮性を有する導電性配線に接触する膜として用いられるものであることを特徴とする請求項
5又は請求項
6に記載の伸縮性膜。
【請求項8】
伸縮性膜を形成する方法であって、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の伸縮性膜材料組成物を成膜した後、加熱及び/又は光照射によって硬化することを特徴とする伸縮性膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性と強度と撥水性と非粘着性を兼ね備えた伸縮性膜材料組成物、伸縮性膜、及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の普及と共にウェアラブルデバイスの開発が進んでいる。インターネットに接続できる時計や眼鏡がその代表例である。また、医療分野やスポーツ分野においても、体の状態を常時モニタリングできるウェアラブルデバイスが必要とされており、今後の成長分野である。
【0003】
ウェアラブルデバイスとしては、体に貼り付けて常時体の状態をモニタリングする形態が示される。このようなウェアラブルデバイスは、通常、体からの電気信号を検知するための生体電極、電気信号をセンサーに送るための配線、センサーとなる半導体チップと電池からなる。また、通常、肌に粘着するための粘着パッドも必要である。生体電極及びこの周りの配線や粘着パッドの構造については、特許文献1に詳細に記載されている。特許文献1に記載のウェアラブルデバイスは、生体電極の周りにシリコーン系粘着膜が配置され、生体電極とセンサーデバイスの間は伸縮性のウレタン膜で被覆された蛇腹の形の伸縮可能な銀配線で結ばれている。
【0004】
ウレタン膜は伸縮性と強度が高く、伸縮配線の被覆膜として優れた機械特性を有している。しかしながら、ウレタン膜には加水分解性があるため、加水分解によって伸縮性と強度が低下するという欠点がある。一方で、シリコーン膜には加水分解性がないものの、強度が低いという欠点がある。
【0005】
そこで、ウレタン結合とシロキサン結合の両方をポリマー主鎖に有するシリコーンウレタンポリマーが検討されている。このポリマーの硬化物は、シリコーン単独よりは高強度で、ポリウレタン単独よりは低加水分解性である。しかしながら、このポリマーの硬化物では、ポリウレタン単独の強度、シリコーン単独の撥水性には及ばず、シリコーンとポリウレタンの中間の強度と撥水性しか得られない。
【0006】
高伸縮なウレタン膜は、触ったときに表面がベタつく特性がある。表面がベタつくと膜同士をくっつけたときに離れないし、この膜上にスクリーン印刷を行ったときに版と膜がくっついて印刷不良が発生する。一方、シリコーン膜は剥離性が高いために、膜同士がくっつくことはない。但し、シリコーンは強度が低いために、薄膜のシリコーン膜は伸ばすと簡単に千切れてしまう。シリコーン膜上にスクリーン印刷を行うと、版とくっつくことによる印刷不良は起こらないが、インクとの接着性が低いために、硬化後のインクが剥がれてしまう。これは、シリコーンの表面の剥離性の高さによる。一方、ウレタン膜のインクとの接着力は高く、硬化後のインクが剥がれることはない。
【0007】
また、シリコーンがペンダントされたポリウレタンを用いた膜は、伸縮性、強度、撥水性のバランスに優れているが、膜表面がベタついているために膜同士がくっついてしまったり、スクリーン印刷時に版とくっついてしまう欠点がある。シリコーンが主鎖にブロック共重合されているポリウレタンをベースとする膜は、膜表面のベタ付き感が無いが、強度が弱い。
【0008】
高伸縮、高強度で、表面がベタつかずにスクリーン印刷等が可能で、印刷後のインクが剥がれることがない伸縮性の膜の開発が望まれている。
【0009】
シリコーンウレタン膜で表面が覆われ、その内部がウレタン膜、更に内部がポリオレフィン系エラストマーの二輪車シート用皮材が提案されている(特許文献2)。最表面をシリコーンウレタン膜にすることによって、耐摩耗性を向上している。シリコーンは表面エネルギーが低いためにベタつくことが無く、これによって耐摩耗性が向上するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-033468号公報
【文献】特開2001-18329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような背景から、ポリウレタンと同程度の優れた伸縮性と強度を有し、かつシリコーンと同程度の優れた撥水性、更には膜同士がくっつかない自立性の伸縮性膜及びその形成方法の開発が望まれている。
【0012】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の撥水性に優れ、非粘着質な伸縮性膜に好適に用いられる伸縮性膜材料組成物、該伸縮性膜材料組成物を用いた伸縮性膜、及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では、
下記一般式(1)-1及び/又は(1)-2で示される構造を有するシリコーン主鎖型ウレタン及び下記一般式(2)-1及び/又は(2)-2で示される構造を有するシリコーンペンダント型ウレタンを含有するものである伸縮性膜材料組成物を提供する。
【化1】
(式中、R
1、R
4は炭素数1~40の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、エーテル基、チオール基を有していても良い。R
2、R
3、R
5は同一、非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。R
6、R
11、R
12、R
13は同一、非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、フェニル基、又は3,3,3-トリフルオロプロピル基、-(OSiR
2R
3)
s-OSiR
2R
3R
5基である。R
7、R
9は単結合、メチレン基、又はエチレン基であり、R
7及びR
9の炭素数の合計が1又は2である。R
8は水素原子又は炭素数1~4の直鎖状のアルキル基であり、R
10は水素原子又はメチル基である。Aは炭素数3~7の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、Xは炭素数3~7の直鎖状、分岐状のアルキレン基で、エーテル基を含有しても良い。m、nは1~100の範囲の整数であり、pは2~10の範囲の整数であり、q、r、sは0~20の範囲の整数である。)
【0014】
本発明のような伸縮性膜材料組成物であれば、優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の撥水性に優れ、非粘着質な伸縮性膜に好適に用いられる伸縮性膜材料組成物となる。
【0015】
また、前記シリコーン主鎖型ウレタンが、下記一般式(3)-1及び/又は(3)-2で示される、末端が(メタ)アクリレート基を有する構造を有するものであることが好ましい。
【化2】
(式中、R
1~R
5、m、n、pは前述と同様であり、R
14は水素原子、メチル基である。t、uは1分子中の単位数であり、1≦t≦100、1≦u≦3の範囲の整数である。)
【0016】
また、前記シリコーンペンダント型ウレタンが、下記一般式(4)-1及び/又は(4)-2で示される、末端が(メタ)アクリレート基を有する構造を有するものであることが好ましい。
【化3】
(式中、R
2、R
3、R
5~R
13、q、rは前述と同様であり、R
14は水素原子、メチル基である。t、uは1分子中の単位数であり、1≦t≦100、1≦u≦3の範囲の整数である。)
【0017】
このような、末端に(メタ)アクリレート基を有する構造を有するものを用いれば、より優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の撥水性にもより優れた伸縮性膜に好適に用いることができる。
【0018】
また、前記シリコーン主鎖型ウレタンの含有割合が、前記シリコーンペンダント型ウレタンの50質量%以下のものであることが好ましい。
【0019】
更に、前記シリコーン主鎖型ウレタンの含有割合が、前記シリコーンペンダント型ウレタンの25質量%以下のものであることが好ましい。
【0020】
更に、前記シリコーン主鎖型ウレタンの含有割合が、前記シリコーンペンダント型ウレタンの15質量%以下のものであることが好ましい。
【0021】
シリコーン主鎖型ウレタンの含有割合がこのようなものであれば、より優れた強度を有する伸縮性膜に好適に用いることができる。
【0022】
また、本発明は、前記伸縮性膜材料組成物を含有し、前記シリコーン主鎖型ウレタンが表面に配向しているものである伸縮性膜を提供する。
【0023】
本発明のような伸縮性膜であれば、優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の撥水性に優れ、非粘着質な伸縮性膜となる。
【0024】
また、前記伸縮性膜が、JIS K 6251に規定される引っ張り試験で伸縮率が20~1000%の範囲のものであることが好ましい。
【0025】
このような伸縮率の伸縮性膜であれば、伸縮配線の被覆膜として特に好適に用いることができる。
【0026】
また、前記伸縮性膜が、伸縮性を有する導電性配線に接触する膜として用いられるものであることが好ましい。
【0027】
本発明の伸縮性膜は、特にこのような用途に好適に用いることができる。
【0028】
また、本発明は、伸縮性膜を形成する方法であって、前記伸縮性膜材料組成物を成膜した後、加熱及び/又は光照射によって硬化する伸縮性膜の形成方法を提供する。
【0029】
このような伸縮性膜の形成方法であれば、優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の撥水性に優れ、非粘着質な伸縮性膜を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明の伸縮性膜であれば、ポリウレタンと同程度の優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面は主鎖がシロキサン結合のシリコーンと同程度かそれ以上の優れた撥水性と、表面のベタ付き感の無い非粘着質な伸縮性膜となる。膜内部がシリコーンがペンダントされたポリウレタンで、膜表面がシリコーンが主鎖にブロック共重合されているポリウレタンの膜を形成することが出来れば、高強度、高伸縮、高撥水、非粘着の特性を全て満たすことができる。本発明の伸縮性膜材料組成物は、シリコーン主鎖型ウレタンとシリコーンペンダント型ウレタンとをブレンドすることを特徴とする。この材料を塗布すると、シリコーン主鎖型ウレタンが膜表面に配向する。これを硬化することによってシリコーン主鎖型ウレタンによって表面が覆われた膜が形成される。従って、本発明の伸縮性膜であれば、ウェアラブルデバイスにおいて、生体電極とセンサーを接続する配線部だけでなく、生体電極やセンサー全てを載せることができる伸縮性膜、センサーや配線を覆うカバー膜として特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の伸縮性膜上に形成した心電計を生体電極側から見た概略図である。
【
図2】本発明の伸縮性膜を基板上に形成した状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の伸縮性膜上に心電計を形成した状態を示す断面図である。
【
図4】
図3の配線とセンターデバイスを伸縮性膜で覆った状態を示す断面図である。
【
図5】
図2で作製した膜を基板上で反転させ、その上に伸縮性膜を重ねて作製した状態を示す断面図である。
【
図6】
図5の伸縮性膜上に心電計を形成した状態を示す断面図である。
【
図7】
図6の配線とセンターデバイスを伸縮性膜で覆った状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ポリウレタンは十分な伸縮性と強度を有するが、撥水性が低く、加水分解によって強度と伸縮性が低下するという欠点があり、シリコーンは撥水性が高いが強度が低いという欠点があった。また、ウレタン結合とシロキサン結合の両方を主鎖に有するシリコーンウレタンポリマーの硬化物では、膜表面のベタ付き感が小さく撥水性に優れているが強度が低い欠点があり、側鎖にシリコーンがペンダントしているウレタンをベースとする膜は、高強度、高伸縮、高撥水だが表面がベタつく欠点があった。このような背景から、ポリウレタンと同程度の優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の強度も十分に高く、かつシリコーンと同程度かそれ以上の優れた撥水性と非粘着質な伸縮性膜に好適に用いることができる伸縮性膜材料組成物、該伸縮性膜材料組成物を用いた伸縮性膜、及びその形成方法の開発が求められていた。
【0033】
そこで、本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、高伸縮、高強度、高撥水性だが表面がベタつくシリコーンペンダント型ウレタンに、強度が低いが表面がベタつかないシリコーンとウレタンの両方を主鎖に有するシリコーン主鎖型ウレタンをブレンドした材料によって膜を形成し、シリコーン主鎖型ウレタンを膜表面に配向させ、膜内部がシリコーンペンダント型ウレタンとなることによって、高伸縮、高強度、高撥水性、非粘着で膜同士がくっつかない優れた伸縮性膜が形成されるため、ウェアラブルデバイスにおける伸縮配線を形成するための伸縮性基板膜、あるいは前記伸縮性配線やデバイスを覆うための伸縮性膜として特に好適なものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0034】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)-1及び/又は(1)-2で示される構造を有するシリコーン主鎖型ウレタン及び下記一般式(2)-1及び/又は(2)-2で示される構造を有するシリコーンペンダント型ウレタンを含有するものである伸縮性膜材料組成物である。
【化4】
(式中、R
1、R
4は炭素数1~40の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、エーテル基、チオール基を有していても良い。R
2、R
3、R
5は同一、非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。R
6、R
11、R
12、R
13は同一、非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、フェニル基、又は3,3,3-トリフルオロプロピル基、-(OSiR
2R
3)
s-OSiR
2R
3R
5基である。R
7、R
9は単結合、メチレン基、又はエチレン基であり、R
7及びR
9の炭素数の合計が1又は2である。R
8は水素原子又は炭素数1~4の直鎖状のアルキル基であり、R
10は水素原子又はメチル基である。Aは炭素数3~7の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、Xは炭素数3~7の直鎖状、分岐状のアルキレン基で、エーテル基を含有しても良い。m、nは1~100の範囲の整数であり、pは2~10の範囲の整数であり、q、r、sは0~20の範囲の整数である。)
【0035】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<伸縮性膜材料組成物>
[シリコーン主鎖型ウレタン]
本発明の伸縮性膜材料組成物に含まれるシリコーン主鎖型ウレタンは、一般式(1)-1及び/又は(1)-2で示される構造を有する。
【化5】
(式中、R
1、R
4は炭素数1~40の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、エーテル基、チオール基を有していても良い。R
2、R
3、R
5は同一、非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。m、nは1~100の範囲の整数であり、pは2~10の範囲の整数である。)
【0037】
R1、R4の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、R2、R3、R5の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、フェニル基等が挙げられる。
【0038】
また、一般式(1)-1及び/又は(1)-2で示される構造を有するシリコーン主鎖型ウレタンは、一般式(3)-1及び/又は(3)-2で示される、末端が(メタ)アクリレート基を有する構造を有していることが好ましい。
【化6】
(式中、R
1~R
5、m、n、pは前述と同様であり、R
14は水素原子、メチル基である。t、uは1分子中の単位数であり、1≦t≦100、1≦u≦3の範囲の整数である。)
【0039】
一般式(1)-1及び/又は(1)-2の構造を有するシリコーン主鎖型ウレタンを形成するためのシリコーン化合物としては、下記一般式(1)-1’、(1)-2’で示される化合物を挙げることが出来る。
【化7】
(式中、R
1~R
5、m、n、pは前述と同様である。)
【0040】
[シリコーンペンダント型ウレタン]
本発明の伸縮性膜に含まれるシリコーンペンダント型ウレタン層は、一般式(2)-1及び/又は(2)-2で示される構造を有する。
【化8】
(式中、R
2、R
3、R
5は同一、非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。R
6、R
11、R
12、R
13は同一、非同一の炭素数1~6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、フェニル基、又は3,3,3-トリフルオロプロピル基、-(OSiR
2R
3)
s-OSiR
2R
3R
5基である。R
7、R
9は単結合、メチレン基、又はエチレン基であり、R
7及びR
9の炭素数の合計が1又は2である。R
8は水素原子又は炭素数1~4の直鎖状のアルキル基であり、R
10は水素原子又はメチル基である。Aは炭素数3~7の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、Xは炭素数3~7の直鎖状、分岐状のアルキレン基で、エーテル基を含有しても良い。q、r、sは0~20の範囲の整数である。)
【0041】
また、一般式(2)-1及び/又は(2)-2で示される構造を有するシリコーンペンダント型ウレタンは、一般式(4)-1及び/又は(4)-2で示される、末端が(メタ)アクリレート基を有する構造を有していることが好ましい。
【化9】
(式中、R
2、R
3、R
5~R
14、A、X、q、r、t、uは前述と同様である。)
【0042】
一般式(2)-1で示される構造のシリコーンペンダント型ウレタンを形成するためのジオール化合物としては、下記一般式(2)-1’で示される化合物を挙げることが出来る。
【化10】
(式中、R
2、R
3、R
5~R
10、A、q、rは前述と同様である。)
【0043】
一般式(2)-1’で示される短鎖シリコーンがペンダントされたジオール化合物は、例えばグリセリンモノアリルエーテルとSiH基を有する短鎖シロキサン化合物を白金触媒中で反応させることによって得ることが出来る。一般式(2)-1’ で示されるジオール化合物は具体的には下記のものを例示することが出来る。
【0044】
【0045】
【0046】
本発明では、一般式(2)-2で示される構造のシリコーンペンダント型ウレタンを形成するためのジオール化合物としては、下記一般式(2)-2’で示される化合物を挙げることが出来る。
【化13】
(式中、R
11~R
13、Xは前述と同様である。)
【0047】
一般式(2)-2’で示される短鎖シリコーンがペンダントされたジオール化合物は、例えばジヒドロキシジアルケニル化合物とSiH基を有する短鎖シロキサン化合物を白金触媒中で反応させることによって得ることが出来る。一般式(2)-2’ で示されるジオール化合物は具体的には下記のものを例示することが出来る。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
本発明の伸縮性膜材料組成物を形成するために用いられる一般式(1)-1、(1)-2、(2)-1、(2)-2に示される構造を有する樹脂は、一般式(1)-1’、(1)-2’、(2)-1’、(2)-2’に示される珪素含有基を有する化合物を原料とし、これらとイソシアネート化合物を反応させることで形成することができる。
【0056】
上記一般式(1)-1’、(1)-2’、(2)-1’、(2)-2’で示される化合物と反応させるイソシアネート化合物としては、具体的には下記のものを例示することができる。
【0057】
【0058】
【0059】
上記のイソシアネート化合物のうち、特に、(メタ)アクリレート基を有するイソシアネート化合物を一般式(1)-1’、(1)-2’、(2)-1’、(2)-2’で示される化合物と反応させることにより、一般式(3)-1、(3)-2、(4)-1、(4)-2で示される、末端に(メタ)アクリレート基を有する化合物を得ることができる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート基を有する化合物をイソシアネート化合物と反応させることによっても、一般式(3)-1、(3)-2、(4)-1、(4)-2で示される末端に(メタ)アクリレート基を有する化合物を得ることが出来る。
【0060】
上記のイソシアネート化合物は、一般式(1)-1’、(1)-2’、(2)-1’、(2)-2’で示される化合物との反応性が高いために、これをコントロールすることが困難な場合がある。また、イソシアネート化合物は、保管中に大気中の水分と反応してイソシアネート基が失活してしまうことがあるため、保管には湿度を十分に防ぐ等十分な注意を要する。そこで、これらの事象を防ぐために、イソシアネート基が置換基で保護されたブロックイソシアネート基を有する化合物が用いられることがある。
【0061】
ブロックイソシアネート基は、加熱によってブロック基が脱保護してイソシアネート基となるものであり、具体的には、アルコール、フェノール、チオアルコール、イミン、ケチミン、アミン、ラクタム、ピラゾール、オキシム、β-ジケトン等で置換されたイソシアネート基が挙げられる。
【0062】
ブロックイソシアネート基の脱保護温度を低温化させるために、触媒を添加することもできる。この触媒としては、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫、ビスマス塩、2-エチルヘキサン酸亜鉛や酢酸亜鉛等のカルボン酸亜鉛が知られている。
【0063】
特に、特開2012-152725号公報では、カルボン酸としてα,β-不飽和カルボン酸亜鉛をブロックイソシアネート解離触媒として含むことによって、脱保護反応の低温化が可能であることが示されている。
【0064】
また、上記一般式(1)-1’、(1)-2’、(2)-1’、(2)-2’で示される化合物、イソシアネート化合物に加えて、複数のヒドロキシ基を有する化合物を加えることもできる。このような複数のヒドロキシ基を有する化合物を添加することによって鎖長延長や分子間架橋が行われる。
【0065】
鎖長延長を行うことによって、伸縮性や強度を向上させることが出来る。例えば両末端がヒドロキシ基のポリエーテル系の鎖長延長剤を導入することによって伸縮性が向上する。両末端がヒドロキシ基のポリエステル系の鎖長延長剤は伸縮性と強度の両方を向上させ、ポリカーボネート系鎖長延長剤を導入すると強度を著しく向上させることが出来る。
【0066】
複数のヒドロキシ基を有する化合物としては、具体的には下記のものを例示することができる。
【0067】
【0068】
【0069】
【化25】
(式中、括弧が付された繰り返し単位の繰り返し数は、任意の数である。)
【0070】
また、アミノ基を有する化合物を添加することもできる。イソシアネート基とアミノ基が反応すると、尿素結合が形成される。ウレタン結合と尿素結合の部分はハードセグメントと呼ばれ、これらの水素結合によって強度が高まる。従って、ウレタン結合だけでなく、これに尿素結合を加えることによって強度を高めることが可能である。
【0071】
鎖長延長のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートを含有するジオール化合物によって形成されている部分はソフトセグメントと呼ばれている。これらの中で最も伸縮性が高いのはポリエーテルであり、次いでポリエステル、ポリカーボネートの順に伸縮性は低下する。一方引っ張り強度の順は伸縮性の順と逆である。ソフトセグメントの種類や繰り返し単位の選択によって強度と伸縮性を調整することが出来る。
【0072】
本発明の伸縮性膜の形成に用いられるシリコーンウレタン樹脂としては、重量平均分子量が500以上のものであることが好ましい。このようなものであれば、本発明の伸縮性膜に好適に用いることができる。また、樹脂の重量平均分子量の上限値としては、500,000以下が好ましい。
【0073】
本発明の伸縮性膜材料組成物としては、一般式(1)-1及び/又は(1)-2で示されるシリコーン主鎖型ウレタンと一般式(2)-1及び/又は(2)-2で示されるシリコーンペンダント型ウレタンを含有する組成物である。この組成物をコートすると、シリコーン主鎖型ウレタンが表面に配向する。シリコーン主鎖型ウレタンと、シリコーンペンダント型ウレタンの混合比率としては、シリコーン主鎖型ウレタンがシリコーンペンダント型ウレタンの50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは15%以下である。シリコーン主鎖型ウレタンの比率が高い程膜全体の強度が低下するので、少ない方が好ましい。シリコーン主鎖型ウレタンは、少量の添加で膜表面を覆い、非粘着性な表面特性にすることが出来る。
【0074】
このような伸縮性膜材料組成物であれば、ポリウレタンと同程度の優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面はシリコーンと同程度の優れた撥水性とベタ付き感がない表面を有する伸縮性膜に好適に用いることができる伸縮性膜材料組成物となる。
【0075】
<伸縮性膜>
また、本発明では、前述の伸縮性膜材料組成物を含有し、前記シリコーン主鎖型ウレタンが表面に配向しているものである伸縮性膜を提供する。
【0076】
なお、本発明の伸縮性膜は、JIS K 6251に規定される引っ張り試験で伸縮率が20~1000%のものであることが好ましい。このような伸縮率であれば、伸縮配線の被覆膜として特に好適に用いることができる。
【0077】
また、本発明の伸縮性膜は、伸縮性を有する導電性配線に接触する膜として用いられるものであることが好ましい。本発明の伸縮性膜は、特にこのような用途に好適に用いることができる。導電性配線が形成される伸縮性基板として用いられることも出来るし、導線性配線を覆うカバー膜として用いることも出来る。
【0078】
以上説明したような、本発明の伸縮性膜であれば、ポリウレタンと同程度の優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面はシリコーンと同程度の優れた撥水性とベタ付き感がない表面を有する伸縮性膜となる。
【0079】
<伸縮性膜の形成方法>
また、本発明では、上述の伸縮性膜を形成する方法であって、前述の伸縮性膜材料組成物を成膜した後、加熱及び/又は光照射によって硬化する伸縮性膜の形成方法を提供する。
【0080】
この時、イソシアネート基とヒドロキシ基の反応によってウレタンポリマーを合成し、これに一般式(3)-1、(3)-2、(4)-1、(4)-2で示される、末端に(メタ)アクリレート基を形成した後に、一般式(3)-1及び/又は(3)-2で示される構造を有する化合物と、一般式(4)-1及び/又は(4)-2で示される構造を有する化合物を混合した組成物溶液を作製することができる。該組成物溶液を成膜後に一般式(3)-1及び/又は(3)-2のシリコーン主鎖型ウレタンが膜表面に配向する。配向を加速するために加熱することも出来るし、組成物中に有機溶剤を添加することも出来る。その後加熱及び/又は光照射によって硬化させることにより、シリコーン主鎖型ウレタンが表面に配向した伸縮性膜を形成することができる。
【0081】
(メタ)アクリレートをラジカルで反応させて架橋することで伸縮性膜材料組成物の硬化を行うことができる。ラジカル架橋する方法としては、ラジカル発生剤の添加が望ましい。ラジカル発生剤としては、熱分解によってラジカルを発生させる熱ラジカル発生剤、光照射によってラジカルを発生させる光ラジカル発生剤がある。
【0082】
熱ラジカル発生剤としてはアゾ系ラジカル発生剤、過酸化物系ラジカル発生剤が挙げられ、アゾ系ラジカル発生剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。過酸化物系ラジカル発生剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバロエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0083】
光ラジカル発生剤としては、アセトフェノン、4,4’-ジメトキシベンジル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン(BAPO)、カンファーキノンを挙げることができる。
【0084】
なお、熱又は光ラジカル発生剤の添加量は、樹脂100質量部に対して0.1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0085】
また、複数の(メタ)アクリレートやチオールを有する架橋剤を添加することもできる。これにより、ラジカル架橋の効率を向上させることができる。
【0086】
アルキル基やアリール基を有するモノマーや、珪素含有基やフッ素で置換されたアルキル基やアリール基を有するモノマーを添加することもできる。これにより、溶液の粘度を低下させ、より薄膜の伸縮性膜を形成することができる。これらのモノマーが重合性二重結合を有していれば、膜の硬化時に膜中に固定化される。
【0087】
アルキル基やアリール基を有するモノマーは、イソボロニルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、アダマンタンアクリレート、フェノキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2~6官能のアクリレートを挙げることが出来る。2官能のアクリレートとしては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、イソノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、3官能のアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、4官能のアクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、5-6官能のアクリレートとしては、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールポリアクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールポリアクリレートを挙げることが出来る。前記アクリレートをメタクリレートに変更したモノマーを用いることも出来る。
【0088】
本発明の伸縮性膜を形成する方法としては、上述の本発明の伸縮性膜材料組成物を平板基板上や、ロール上に塗布する方法が挙げられる。伸縮性膜材料組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート、バーコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等が挙げられる。また、塗布膜厚が1μm~2mmとなるように塗布することが好ましい。
【0089】
凹凸がある部品の封止には、軟らかいスキージを使ったバーコート、ロールコートやスプレーコーティング等の方法や、スクリーン印刷等で必要な部分だけに塗布する方法が好ましい。なお、種々のコーティングや印刷を行うために、混合溶液の粘度を調整する必要がある。低粘度にする場合は、有機溶剤を混合し、高粘度にするときは、シリカ等の充填剤を混合する。
【0090】
有機溶剤としては、大気圧での沸点が115~200℃の範囲の有機溶剤が好ましい。具体的には、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0091】
末端に(メタ)アクリレート基を有する化合物を加熱によって硬化させる場合、加熱硬化は、例えば、ホットプレートやオーブン中あるいは遠赤外線の照射によって行うことができる。加熱条件は、30~150℃、10秒~60分間が好ましく、50~120℃、30秒~20分間がより好ましい。ベーク環境は大気中でも不活性ガス中でも真空中でもかまわない。
【0092】
末端に(メタ)アクリレート基を有する化合物を光照射によって硬化させる場合、光照射による硬化は、波長200~500nmの光で行うことが好ましい。光源としては、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー、メタルハライドランプ、LED等を用いることができる。また、電子ビームの照射であってもよい。照射量は、1mJ/cm2~100J/cm2の範囲とすることが好ましい。
【0093】
本発明の伸縮性膜は、単独の自立膜として用いるだけでなく、繊維上やメンブレン膜上に形成することも出来る。また、伸縮性配線やデバイスを覆う膜として用いることも出来る。
【0094】
ここで、
図1~7に本発明の伸縮性膜の使用例を示す。
図1は、本発明の伸縮性膜6上に形成した心電計1を生体電極側から見た概略図である。また、
図2は、本発明の伸縮性膜6を基板7上に形成した状態を示す断面図であり、
図3は伸縮性膜6上に心電計1を形成した状態を示す断面図であり、
図4は
図3の心電計1の伸縮する配線3とセンターデバイス4を伸縮性膜6で覆った状態の断面図であり、
図1の心電計1は特許文献1に記載のものである。
図1に示されるように、心電計1は、3つの生体電極2が電気信号を通電する配線3によって繋がれ、センターデバイス4に接続されている。
【0095】
配線3の材料としては、一般的に金、銀、白金、チタン、ステンレス等の金属やカーボン等の導電性材料が用いられる。なお、伸縮性を出すために、特許文献1に記載のように蛇腹形状の配線とすることもできるし、伸縮性フィルム上に前述の導電性材料の粉やワイヤー化した導電性材料を貼り付けたり、前述の導電性材料を含有する導電インクを印刷したり、導電性材料と繊維が複合された導電性布を用いたりして配線3を形成しても良い。
【0096】
心電計1は肌に貼り付ける必要があるので、
図3、4では、生体電極2が肌から離れないようにするために生体電極2の周りに粘着部5を配置している。なお、生体電極2が粘着性を有するものである場合は、周辺の粘着部5は必ずしも必要ではない。
【0097】
この心電計1を、
図1に示されるように、本発明の伸縮性膜である伸縮性膜6上に作製する。伸縮性膜6は、シリコーンペンダント型ウレタン層6-1が、表面のベタ付きが少ないシリコーン主鎖型ウレタン層6-2で覆われているので、この上にスクリーン印刷等で印刷を行った場合、版離れが良好である。版離れが不良な場合、版が離れるときにインク離れが生じ、伸縮膜上にインクが転写されない場合があり、好ましくない。
【0098】
更には、
図4に示すように伸縮性の配線3を本発明の伸縮性膜6で覆うことも出来る。
【0099】
さらに、
図5に示すように、
図2で形成した伸縮性膜を反転させ、もう一方に同様の伸縮性膜を形成することも出来る。この場合の伸縮性膜を用いた心電計の断面図は
図6又は
図7に示される。
【0100】
以上説明したような、本発明の伸縮性膜の形成方法であれば、ポリウレタンと同程度又はそれ以上の優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面は高い撥水性と低タック性を有する伸縮性膜を容易に形成することができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。
【0102】
伸縮性膜形成用組成物に、末端に(メタ)アクリレート基を有する化合物として配合したシリコーンペンダントウレタン(メタ)アクリレート1~8、シリコーンウレタン(メタ)アクリレート1~5を以下に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
伸縮性膜形成用組成物に添加剤として配合した光ラジカル発生剤1~3を以下に示す。
光ラジカル発生剤1:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
光ラジカル発生剤2:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
光ラジカル発生剤3:(±)-カンファーキノン
【0108】
伸縮性膜形成用組成物に配合した有機溶剤を以下に示す。
有機溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0109】
伸縮性膜形成用組成物に配合したアルキル基やアリール基を有するモノマーを以下に示す。
アルキル基やアリール基を有するモノマー:イソボロニルアクリレート
【0110】
[実施例、比較例]
表1に記載の組成で、末端に(メタ)アクリレート基を有するシリコーンウレタン化合物(シリコーンウレタンアクリレート)、光ラジカル発生剤1~3、アルキル基やアリール基を有するモノマー、有機溶剤を混合し、伸縮性膜形成用組成物(伸縮性膜材料1~12、比較伸縮性材料1、2)を調製した。
【0111】
【0112】
(伸縮性膜の製作)
ポリエチレン基板上に、伸縮性材料1~12、比較伸縮性材料1、2をバーコート法で塗布し、100℃で5分間ベークして基板上に伸縮性膜を作製した。その後、窒素雰囲気下1,000Wのキセノンランプで500mJ/cm2の光を照射して伸縮性膜を硬化させた。
【0113】
(膜厚・接触角・伸縮率・強度の測定)
硬化後の伸縮性膜(実施例1~12、比較例1、2)における膜厚、及び表面の水の接触角を測定し、指で触ったときのタック感を求めた。また、伸縮性膜表面の水の接触角を測定した後に、伸縮性膜を基板から剥がし、JIS K 6251に準じた方法で伸縮率と強度を測定した。結果を表2に示す。
【0114】
【0115】
表2に示されるように、本発明の伸縮性膜では、撥水性、強度、伸縮性が高く、かつ表面のタック性が低い伸縮性膜が得られた。
【0116】
一方、比較例1のシリコーンペンダントウレタン単独材料による膜では、撥水性、強度、伸縮性が高いが表面のタック性があり、膜同士がくっついてしまう特性であり、比較例2のシリコーン主鎖型ウレタン単独材料による膜では、表面タック性がないものの強度が劣っていた。
【0117】
以上のことから、本発明の伸縮性膜であれば、優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の撥水性と低タック性に優れるため、ウェアラブルデバイス等に用いられる伸縮性の配線が印刷可能で、伸縮性配線やデバイスを覆う膜として優れた特性を有していることが明らかとなった。
【0118】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0119】
1…心電計、 2…生体電極、 3…配線、 4…センターデバイス、 5…粘着部、
6…伸縮性膜、 6-1…シリコーンペンダント型ウレタン層、
6-2…シリコーン主鎖型ウレタン層、 7…基板。