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特許7132332抗ウイルス用組成物、抗ノロウイルス用組成物、スプレー、ワイパー、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】抗ウイルス用組成物、抗ノロウイルス用組成物、スプレー、ワイパー、化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 65/21 20060101AFI20220830BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 37/18 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20220830BHJP
   C07C 65/28 20060101ALI20220830BHJP
   C07C 235/46 20060101ALI20220830BHJP
   C07C 69/84 20060101ALI20220830BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C07C65/21 E CSP
A01P1/00
A01N37/18 Z
A01N25/02
A01N25/04
C07C65/28
C07C235/46
C07C69/84
A01N37/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020532472
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2019029248
(87)【国際公開番号】W WO2020022441
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018141773
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 寛記
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚俊
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-205139(JP,A)
【文献】国際公開第94/021591(WO,A1)
【文献】特開2009-179577(JP,A)
【文献】特表2010-505964(JP,A)
【文献】特開昭57-192342(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0012928(KR,A)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2004年,[検索日 2022.03.17] CAS登録番号790652-64-1, 748763-29-3
【文献】Toxicology in Vitro,2008年,22(6),P.1534-1538
【文献】Journal of Organic Chemistry,2007年,72(22),P.8167-8174,Supporting Information S1-S46
【文献】Journal of the American Chemical Society,2005年,127(6),P.1737-1743,Supporting Information S1-S43
【文献】Macromolecular Chemistry and Physics,2000年,201(14),P.1753-1757
【文献】Macromolecules,1998年,31(24),P.8595-8599
【文献】Journal of Pharmaceutical Sciences,1977年,66(4),P.546-549
【文献】Medical Science Monitor,18(8),2012年,P.BR293-298
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,35(26),1992年,P.4846-4853
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,1991年,34(1),P.212-217
【文献】Heterocycles,2005年,65(10),P.2431-2439
【文献】International Journal of Pharmaceutical Sciences Review and Research,2015年,31(2),P.210-217
【文献】REGISTRY(STN)[online],2010.10.11[検索日 2019.10.02] CAS登録番号1245946-03-5
【文献】Synthesis,2005年,(6),P.1019-1027
【文献】Journal of Faculty of Pharmacy of Gazi University,2000年,17(1),P.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 65/00
A01N 37/00
A01P 1/00
A01N 25/00
C07C 235/00
C07C 69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-7)又は下記式(1-9)で表される化合物。
【化1】
式(1-7)中、L5Bは、-O-を表す。R 5 は、炭素数9以上30以下の脂肪族炭化水素基を表す
式(1-9)中、L7Bは、-O-、-COO-、及び-CONRX4-からなる群より選ばれる2価の連結基を表す。RX4は、水素原子を表す。L7Bが-O-を表す場合、R7は、炭素数11以上30以下の脂肪族炭化水素基を表す。L7Bが-COO-を表す場合、R7は、炭素数6以上30以下の脂肪族炭化水素基を表す。L7Bが-CONRX4-を表す場合、R7は、炭素数6以上30以下の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と、
アルコールを含む溶媒と、を含み、
pHが9.0~14.0である、抗ウイルス用組成物。
【請求項3】
前記 5 はR7の炭素数が、12以上である、請求項2に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物が有するフェノール性水酸基のpKaが11.0以上である、請求項2又は3に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項5】
前記アルコールの含有量が、前記溶媒の全体積に対して、25~100体積%である、請求項2~4のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項6】
前記アルコールが、炭素数2以下のアルコールと、炭素数3以上のアルコールと、を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項7】
前記炭素数2以下のアルコールがエタノールを含み、前記炭素数3以上のアルコールがイソプロパノールを含む、請求項6に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項8】
さらに界面活性剤を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項9】
さらに4級アンモニウム塩を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物の含有量が、組成物の全質量に対して、0.10質量%以上である、請求項2~9のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項11】
pHが10.0~12.0である、請求項2~10のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項12】
液剤である、請求項2~11のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項13】
ジェル剤である、請求項2~11のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項14】
請求項2~13のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物からなる、抗ノロウイルス用組成物。
【請求項15】
スプレー容器と、前記スプレー容器に収容された、請求項2~13のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物又は請求項14に記載の抗ノロウイルス用組成物と、を含む、スプレー。
【請求項16】
基布と、前記基布に含浸させた、請求項2~13のいずれか1項に記載の抗ウイルス用組成物又は請求項14に記載の抗ノロウイルス用組成物と、を含むワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス用組成物、抗ノロウイルス用組成物、スプレー、ワイパー、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、細胞構造を有する細菌及び真菌等の微生物と異なり、細胞構造を持たず、ゲノムをカプシドという外殻タンパク質の中に持つ構造体である。ウイルスは、ゲノムがDNA(deoxyribonucleic acid)又はRNA(ribonucleic acid)かによって2種類に大別され、カプシドが脂質二重膜からなるエンベロープで覆われている有膜ウイルスとエンベロープで覆われていない無膜ウイルスかによって更に分類される。具体的には、DNAタイプの有膜ウイルスには、ヒトヘルペスウイルス、及びB型肝炎ウイルス等、DNAタイプの無膜ウイルスには、アデノウイルス、及びB19ウイルス等、RNAタイプの有膜ウイルスには、インフルエンザウイルス、及びSARS(severe acute respiratory syndrome)コロナウイルス等、RNAタイプの無膜ウイルスには、ノロウイルス、ポリオウイルス、及びエンテロウイルス等が含まれる。
【0003】
近年、より簡便な手段でウイルス(特に、ノロウイルス)を不活化できる薬剤が希求されている。例えば、特許文献1では、ウイルスを不活化できる抗ウイルス剤組成物として、抗ウイルス成分を含む抗ウイルス剤組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-12715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1を参照して抗ウイルス成分を含む抗ウイルス剤組成物を調製し、ネコカリシウイルス(ノロウイルスの近縁種であり、ノロウイルスに類似のゲノム組成、カプシド構造及び生化学的特性を有しているので現在最も広く使用されている代用ウイルスである)に対する抗ウイルス活性について検討したところ、抗ウイルス活性を更に改善する余地があることを明らかとした。
また、本発明者らは、抗ウイルス成分を含む組成物中における抗ウイルス成分の溶解性をさらに向上させる工夫が必要であることも明らかとした。抗ウイルス成分の溶解性が劣る場合、組成物自体が白濁し、外観特性が損なわれる。さらに、抗ウイルス成分の溶解性が劣る組成物を用いて基材上を処理した場合に、基材上での抗ウイルス活性にバラツキが生じやすくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、抗ウイルス成分の溶解性が優れており、且つ、抗ウイルス活性にも優れる抗ウイルス用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記抗ウイルス用組成物からなる抗ノロウイルス用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記抗ウイルス用組成物を用いたスプレー及びワイパーを提供することを課題とする。
また、本発明は、新規化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定組成の抗ウイルス用組成物によれば上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕 フェノール性水酸基と、カルボキシ基、スルホ基、スルフィン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、ホスホン酸基、及び下記一般式(a)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基と、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基と、を含む化合物と、
アルコールを含む溶媒と、を含み、
pHが9.0~14.0である、抗ウイルス用組成物。
一般式(a): *-SO2NHSO2x1
上記一般式(a)中、Rx1は、1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。*は、結合位置を表す。
〔2〕 上記化合物が、後述する式(1)で表される化合物である、〔1〕に記載の抗ウイルス用組成物。
〔3〕 上記式(1)で表される化合物が、後述する式(1-1)~後述する式(1-3)のいずれかで表される化合物である、〔2〕に記載の抗ウイルス用組成物。
〔4〕 上記式(1-1)で表される化合物が後述する式(1-4)で表される化合物であり、上記式(1-2)で表される化合物が後述する式(1-5)で表される化合物であり、上記式(1-3)で表される化合物が後述する式(1-6)で表される化合物である、〔3〕に記載の抗ウイルス用組成物。
〔5〕 上記炭素数6以上の脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔6〕 上記フェノール性水酸基のpKaが11.0以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔7〕 上記アルコールの含有量が、上記溶媒の全体積に対して、25~100体積%である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔8〕 上記アルコールが、炭素数2以下のアルコールと、炭素数3以上のアルコールと、を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔9〕 上記炭素数2以下のアルコールがエタノールを含み、上記炭素数3以上のアルコールがイソプロパノールを含む、〔8〕に記載の抗ウイルス用組成物。
〔10〕 さらに界面活性剤を含む、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔11〕 さらに4級アンモニウム塩を含む、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔12〕 上記化合物の含有量が、組成物の全質量に対して、0.10質量%以上である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔13〕 pHが10.0~12.0である、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔14〕 液剤である、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔15〕 ジェル剤である、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物。
〔16〕 〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物からなる、抗ノロウイルス用組成物。
〔17〕 スプレー容器と、上記スプレー容器に収容された〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物と、を含む、スプレー。
〔18〕 基布と、上記基布に含浸させた〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の抗ウイルス用組成物と、を含むワイパー。
〔19〕 後述する式(1-7)~後述する式(1-9)のいずれかで表される化合物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗ウイルス成分の溶解性が優れており、且つ、抗ウイルス活性にも優れる抗ウイルス用組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記抗ウイルス用組成物からなる抗ノロウイルス用組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記抗ウイルス用組成物を用いたスプレー及びワイパーを提供できる。
また、本発明によれば、新規化合物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基及び連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は、複数の置換基等を同時に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
更に、本明細書中、基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0011】
[抗ウイルス用組成物]
本発明の抗ウイルス用組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、
フェノール性水酸基と、カルボキシ基、スルホ基、スルフィン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、ホスホン酸基、及び後述する一般式(a)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基(以下「特定酸性基」という。)と、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基と、を含む化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)と、
アルコールを含む溶媒と、を含み、
pHが9.0~14.0である。
本発明の組成物は、上記構成により、抗ウイルス活性(特に、ネコカリシウイルス(ノロウイルスの近縁種)に対する抗ウイルス活性)が顕著に優れる。また、上記特定化合物は、溶媒(特にアルコール)に対して優れた溶解性を有する。言い換えると、本発明の組成物は、抗ウイルス成分の溶解性が優れている。
なお、本発明の組成物は、細菌及び真菌等の微生物(例えば、大腸菌、及びブドウ球菌等)に対する抗菌活性にも優れていることも確認している。
【0012】
本発明の抗ウイルス用組成物は、ウイルスに作用させてウイルスの活性を減少させるために使用される用途に使用され得る。特に、抗ノロウイルス用組成物として用いられることが好ましい。なお、本発明の抗ウイルス用組成物は、細菌及び真菌等の微生物に作用させて微生物の活性を減少させるために使用される用途にも使用され得る。
【0013】
本発明の作用機序については、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
本発明の組成物において、特定化合物は、有効成分(抗ウイルス成分)として機能する。
上記組成物のpHが9.0~14.0の範囲である場合、特定化合物中のフェノール性水酸基は、水素イオンが解離することによりフェノキサイドアニオンとなる。このフェノキサイドアニオンが、ウイルス表面に存在する酸基を脱プロトン化することにより、ウイルスが不活性化されると推測される。
今般、本発明者らは、特定化合物が疎水的な基を有する場合(言い換えると、特定化合物が炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を有する場合)、組成物の抗ウイルス活性が著しく優れることを知見した。ウイルスは、一般的に、親水部位と疎水部位を有している。このため、特定化合物が親水性のフェノキサイドアニオン部位と特定化合物が炭素数6以上の脂肪族炭化水素基とを有する場合、特定化合物のウイルスに対する吸着速度が高まり、この結果として、上記脱プロトン化反応が進行しやすくなると推測される。一方で、化合物が疎水的になるほど、一般的に水性溶媒(特にアルコール)に対する溶解性が低下するが、特定化合物は、特定酸性基を有するため、疎水的な炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を有しているにもかかわらず、水性溶媒(特にアルコール)に対する溶解性に優れている。つまり、特定化合物は、優れた抗ウイルス活性と、優れた溶解性とを両立している。
また、本発明者らは、溶媒が含むアルコールも組成物の抗ウイルス活性が著しく優れる要因の一つであると考えている。
【0014】
また、後述するように、特定化合物は、フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaが11.0以上である場合、ウイルス表面に存在する酸基の脱プロトン化反応がより生じやすくなり、より優れた抗ウイルス活性を示す。なお、特定化合物中のフェノール性水酸基から水素イオンがより解離しやすい(言い換えるとフェノキサイドアニオンが生成され易い)観点から、フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaの上限値は14.0以下が好ましい。
【0015】
また、後述するように、本発明の組成物のpHが12.0以下である場合、金属の腐食が生じにくく、本発明の組成物により消毒できる対象物の適用範囲が広い。例えば、アルミ、銅、及び真鍮等の金属に対しても腐食が生じにくい。
本発明の組成物は、特に、ネコカリシウイルス(ノロウイルスの近縁種)に対する抗ウイルス活性に優れることから、抗ノロウイルス用組成物として用いられることが好ましい。
【0016】
以下、本発明の組成物が含む各成分について詳述する。
〔特定化合物〕
本発明の組成物は、フェノール性水酸基と、カルボキシ基、スルホ基、スルフィン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、ホスホン酸基、及び後述する一般式(a)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基(特定酸性基)と、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基と、を含む化合物(特定化合物)を含む。
なお、本明細書中において「フェノール性水酸基」とは、芳香族環を構成する炭素原子が有する水酸基を意図する。上記芳香族環としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素環が好ましい。
芳香族炭化水素環の炭素数としては特に制限されないが、例えば、6~18が好ましく、6~10が更に好ましい。芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。
芳香族複素環としては、単環構造及び多環構造のいずれであってもよい。なお、芳香族複素環が多環構造の場合、多環構造に含まれる環の少なくとも1つが5員環以上であることが好ましい。
上記芳香族複素環基が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。芳香族複素環の炭素数は特に限定されないが、5~18が好ましい。上記芳香族複素環の具体例としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、チオフェン環、チアゾール環、及びイミダゾール環が挙げられる。
【0017】
また、上記特定化合物は、多段階の解離を伴う多価酸であり、フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaと特定酸性基の酸解離に由来するpKaを有する。なお、上記特定化合物において、特定酸性基の酸解離に由来するpKaは、フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaよりも小さい。
ウイルスの脱プロトン化反応の効率性が向上して抗ウイルス活性がより優れる点で、上記フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaは、11.0以上が好ましく、12.0以上が好ましい。一方、フェノキサイドアニオンが生成され易い観点から、フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaの上限値は14.0以下が好ましい。
【0018】
上記特定酸性基は、カルボキシ基(*-COOH)、スルホ基(*-SO3H)、スルフィン酸基(*-SOH)、リン酸基(*-OP(=O)(OH)2)、ホスフィン酸基(*-PH(=O)OH)、ホスホン酸基(*-P(=O)(OH)2)、又は及び下記一般式(a)で表される基を表す。なお、*は、結合位置を表す。
【0019】
一般式(a):*-SO2NHSO2x1
上記一般式(a)中、Rx1は、1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。*は、結合位置を表す。
【0020】
上記RX1で表される1価の脂肪族炭化水素基としては特に制限されず、例えば、炭素数1~30のアルキル基が挙げられる。
上記RX1で表されるアリール基としては特に制限されず、例えば、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。
上記RX1で表されるヘテロアリール基としては特に制限されず、単環構造及び多環構造のいずれであってもよい。上記ヘテロアリール基が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、5~18が好ましい。
【0021】
上記特定酸性基としては、抗ウイルス活性がより優れる点で、なかでも、カルボキシ基、スルホ基、又はリン酸基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
【0022】
特定化合物中に含まれる上記炭素数6以上の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
また、上記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。なお、上記脂肪族炭化水素基が不飽和脂肪族炭化水素基を表す場合、二重結合及び三重結合の両方を有していてもよい。上記脂肪族炭化水素基がアルケニル基を表す場合、上記アルケニル基中の二重結合の数は1つであっても、2つ以上であってもよい。上記脂肪族炭化水素基がアルキニル基を表す場合、上記アルキニル基中の三重結合の数は1つであっても、2つ以上であってもよい。
上記脂肪族炭化水素基は、なかでも、抗ウイルス活性がより優れる点で、炭素数が12以上であることが好ましい。
炭素数6以上の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、炭素数6~30のアルキル基、炭素数6~30のアルケニル基、及び炭素数6~30のアルキニル基が挙げられる。
【0023】
直鎖状及び分岐鎖状の上記炭素数6~30のアルキル基としては、炭素数6~18が好ましく、炭素数12~18がより好ましい。直鎖状及び分岐鎖状の上記炭素数6~30のアルキル基としては、具体的には、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル、ヘンイコシル基、ヘンエイコシニル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、及びトリアコンチル基等が挙げられる。
【0024】
直鎖状及び分岐鎖状の上記炭素数6~30のアルケニル基としては、炭素数6~18が好ましく、炭素数12~18がより好ましい。直鎖状及び分岐鎖状の上記炭素数6~30のアルケニル基としては、具体的には、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、エイコセニル基、ヘンイコセニル基、ヘンエイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、デトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基、オクタデカジエニル基、オクタデカトリエニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、及びオクタジエニル基等が挙げられる。
なお、直鎖状及び分岐鎖状の上記炭素数6~30のアルケニル基において、不飽和結合の位置は制限されず、シス及びトランス異性体のどちらであってもよい。例えば、オクタデセニル基は、オレイル基(cis-9-オクタデセニル基)及びエライジル基(trans-9-オクタデセニル基)を、オクタデカジエニル基は、リノレイル基(cis,cis-9,12-オクタデカジエニル基)及びエライドリノレイル基(trans,trans-9,12-オクタデカジエニル基)を、オクタデカトリエニル基は、リノレニル基(cis,cis,cis-9,12,15-オクタデカトリエニル基)及びエライドレノレニル基(trans,trans,trans-9,12,15-オクタデカトリエニル基)を、ヘキサデセン基は、パルミトレイル基(cis-9-ヘキサデセン基)を含む。
【0025】
直鎖状及び分岐鎖状の上記炭素数6~30のアルキニル基としては、炭素数6~18が好ましく、炭素数12~18がより好ましい。直鎖状及び分岐鎖状の上記炭素数6~30のアルキニル基の具体例としては、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基、トリデシニル基、テトラデシニル基、ペンタデシニル基、ヘキサデシニル基、ヘプタデシニル基、オクタデシニル基、ノナデシニル基、イコシニル基、エキコシニル基、ヘンイコシニル基、ヘンエイコシニル基、ドコシニル基、トリコシニル基、テトラコシニル基、ペンタコシニル基、ヘキサコシニル基、ヘプタコシニル基、オクタコシニル基、オクタコシニル基、ノナコシニル基、及びトリアコンチニル基等が挙げられる。
【0026】
上記炭素数6~30の脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、及び架橋環式のいずれであってもよい。上記炭素数6~30の脂環式炭化水素基を構成する環の具体例としては、シクロヘキサン、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノナン、シクロノネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、及びアダマンタン等が挙げられる。
【0027】
炭素数6以上の脂肪族炭化水素基としては、抗ウイルス活性がより優れる点で、なかでも、炭素数6以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(例えば、炭素数6~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基)、又は炭素数6以上の直鎖状のアルケニル基(例えば、炭素数6~30の直鎖状のアルケニル基)が好ましく、炭素数6以上の直鎖状のアルキル基(例えば、炭素数6~30の直鎖状のアルキル基)、又は炭素数6以上の直鎖状のアルケニル基(例えば、炭素数6~30の直鎖状のアルケニル基)がより好ましく、炭素数6~18の直鎖状のアルキル基又は炭素数6~18の直鎖状のアルケニル基が更に好ましく、炭素数12~18の直鎖状のアルキル基又は炭素数12~18の直鎖状のアルケニル基が特に好ましい。
【0028】
上記特定化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
式(1)中、X11~X15は、各々独立に、-CR11=で表される基、=C(-L1A-A1)-で表される基、=C(-L1B-R1)-で表される基、又は窒素原子を表す。
但し、X11~X15のうち少なくとも1つは=C(-L1A-A1)-で表される基を表し、X11~X15のうち少なくとも1つは=C(-L1B-R1)-で表される基を表す。
【0031】
11~X15としては、なかでも、-CR11=で表される基、=C(-L1A-A1)-で表される基、又は=C(-L1B-R1)-で表される基を表すことが好ましい。
【0032】
式(1)中、R11は、水素原子又は1価の置換基を表す。
11で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、下記置換基群Wに例示されるものが挙げられる。
(置換基群W)
例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、及びトリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、及びビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。ヘテロアリール基を含む)、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アシルチオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH))、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基及びその他の公知の置換基が挙げられる。
また、これらの置換基群Wで挙げた各基は、上記の置換基群Wに例示される基が更に置換していてもよい。例えば、アルキル基にハロゲン原子が置換していてもよい。
【0033】
11としては、なかでも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、カルバモイル基、アリール若しくはヘテロ環アゾ基、又はシリル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、又はアリール若しくはヘテロ環アゾ基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0034】
なお、X11~X15のうち隣接しあう2つがいずれも-CR11=で表される基を表す場合、R11同士は、互いに結合して環を形成してもよい。上記環としては、芳香族性又は非芳香族性のいずれであってもよい。
11同士が互いに結合して環を形成する態様としては特に制限されないが、例えば、上記置換基群Wとして例示した置換基中の炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択される原子が互いに結合することにより環を形成する態様が挙げられる。例えば、隣接しあう2つのR11がいずれもアルケニル基(例えば、ビニル基)である場合、各アルケニル基中の末端炭素原子が互いに結合すると、ベンゼン環を形成することができる。また、隣接しあう2つのR11がいずれもアルキル基である場合、各アルキル基中の末端炭素原子が互いに結合すると、脂肪族炭化水素環を形成することができる。
【0035】
式(1)中、L1Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
1Aで表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、炭素数1~20であることが好ましく、例えば、アルキレン基が挙げられる。それ以外にも、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。)、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、-SO2-、-NRX2-、-CO-、及び、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、RX2は、水素原子又は1価の置換基を表す。
なお、上記2価の脂肪族炭化水素基、上記アリーレン基、及び上記ヘテロアリーレン基中の水素原子は、ハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
X2で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。RX2で表される1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、RX1で表される1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基と同義であり、好適態様も同じである。
【0036】
1Aで表される2価の連結基としては、なかでも、2価の脂肪族炭化水素基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、又は、これらを2種以上組み合わせた基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
上記2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0037】
1Aとしては、抗ウイルス性がより優れる点で、単結合又は2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、単結合、ビニレン基、又はエチニレン基がより好ましく、単結合が更に好ましい。
【0038】
式(1)中、A1は、特定酸性基を表す。特定酸性基としては、上述した通りである。
【0039】
式(1)中、L1Bは、単結合又は2価の連結基を表す。
1Bで表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NRX3-、-CO-、-CS-、-N=N-、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、及び、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、RX3は、水素原子又は1価の置換基を表す。
なお、上記アリーレン基及び上記ヘテロアリーレン基中の水素原子は、ハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
X3で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。RX3で表される1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、RX1で表される1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基と同義であり、好適態様も同じである。
【0040】
1Bで表される2価の連結基としては、なかでも、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NRX3-、-CO-、-CS-、-COO-、-COS-、-CSO-、-CONRX3-、-SO2NRX3-、-NRX3CONRX3-、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、、又は、これらを2種以上組み合わせた基が好ましい。
なお、本明細書において表記される二価の基(例えば、-COO-)の結合方向は特に制限されず、例えば、式(1)中の上記L1Bが-COO-である場合、ベンゼン環側に結合している位置を*1、R1側に結合している位置を*2とすると、L1Bは*1-O-CO-*2であってもよく、*1-CO-O-*2であってもよい。
【0041】
1Bとしては、抗ウイルス性がより優れる点で、単結合、-O-、-S-、-NRX3-、-CO-、-COO-、-CONRX3-、-SO2NRX3-、又は-NRX3CONRX3-が好ましく、単結合、-O-、-S-、-NRX3-、-CO-、-COO-、又は-CONRX3-がより好ましく、単結合、-O-、-COO-、又は-CONRX3-が更に好ましい。
【0042】
式(1)中、R1は、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を表す。炭素数6以上の脂肪族炭化水素基の具体例としては、上述した通りである。
【0043】
上記式(1)で表される化合物としては、抗ウイルス活性がより優れる点で、なかでも、下記式(1-1)~下記式(1-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0044】
【化2】
【0045】
式(1-1)中、X21は、-CR21=で表される基、又は窒素原子を表す。X21としては、なかでも-CR21=で表される基が好ましい。
21は、式(1)中のR11と同義であり、好適態様も同じである。
式(1-1)中、L2A、A2、L2B、及びR2は、式(1)中のL1A、A1、L1B、及びR1と各々同義であり、好適態様も同じである。
【0046】
式(1-2)中、X31は、-CR31=で表される基、又は窒素原子を表す。X31としては、なかでも-CR31=で表される基が好ましい。
31は、式(1)中のR11と同義であり、好適態様も同じである。
式(1-2)中、L3A、A3、L3B、及びR3は、式(1)中のL1A、A1、L1B、及びR1と各々同義であり、好適態様も同じである。
【0047】
式(1-3)中、X41は、-CR41=で表される基、又は窒素原子を表す。X41としては、なかでも-CR41=で表される基が好ましい。
41は、式(1)中のR11と同義であり、好適態様も同じである。
式(1-3)中、L4A、A4、L4B、及びR4は、式(1)中のL1A、A1、L1B、及びR1と各々同義であり、好適態様も同じである。
【0048】
抗ウイルス活性がより優れる点で、上記式(1-1)で表される化合物としては、下記式(1-4)で表される化合物であることが好ましく、上記式(1-2)で表される化合物としては、下記式(1-5)で表される化合物であることが好ましく、上記式(1-3)で表される化合物としては、下記式(1-6)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
【0049】
式(1-4)中、L2B及びR2は、式(1)中のL1B及びR1と各々同義であり、好適態様も同じである。
式(1-5)中、L3B及びR3は、式(1)中のL1B及びR1と各々同義であり、好適態様も同じである。
式(1-6)中、L4B及びR4は、式(1)中のL1B及びR1と各々同義であり、好適態様も同じである。
【0050】
上記式(1-4)で表される化合物としては、下記式(1-7)で表される化合物であることが好ましく、上記式(1-5)で表される化合物としては、下記式(1-8)で表される化合物であることが好ましく、上記式(1-6)で表される化合物としては、下記式(1-9)で表される化合物であることが好ましい。
【0051】
【化4】
【0052】
式(1-7)中、L5Bは、単結合、又は、-O-、-COO-、及び-CONRX4-からなる群より選ばれる2価の連結基を表す。
X4は、水素原子又は1価の置換基を表す。RX4で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。RX4で表される1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、RX1で表される1価の脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基と同義であり、好適態様も同じである。
【0053】
5Bが単結合を表す場合、R5は、炭素数16以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数16~30の脂肪族炭化水素基が好ましい。
5Bが-O-を表す場合、R5は、炭素数9以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数9~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
5Bが-COO-を表す場合、R5は、炭素数6以上の不飽和脂肪族炭化水素基を表し、炭素数6~30の不飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の不飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の不飽和脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
5Bが-CONRX4-を表す場合、R5は、炭素数6以上の脂肪族炭化水素を表し、炭素数6~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
【0054】
式(1-8)中、L6Bは、単結合、又は、-O-、-COO-、及び-CONRX4-からなる群より選ばれる2価の連結基を表す。
X4は、式(1-7)中のRX4と同義であり、好適態様も同じである。
6Bが、単結合、-O-、又は-COO-を表す場合、R6は、炭素数6以上の不飽和脂肪族炭化水素基を表し、炭素数6~30の不飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の不飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の不飽和脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
6Bが-CONRX4-を表す場合、R6は、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数6~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
【0055】
式(1-9)中、L7Bは、単結合、又は、-O-、-COO-、及び-CONRX4-からなる群より選ばれる2価の連結基を表す。
X4は、式(1-7)中のRX4と同義であり、好適態様も同じである。
7Bが単結合を表す場合、Rは、炭素数9以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数9~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
7Bが-O-を表す場合、Rは、炭素数11以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数11~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数12~30の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
7Bが-COO-を表す場合、Rは、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数6~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
7Bが-CONRX4-を表す場合、Rは、炭素数6以上の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基をし、炭素数6~30の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10~30の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数12~30の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
【0056】
以下に、特定化合物を例示するが、本発明はこれに制限されない。なお、下記例示において「R」とは、以下に示す1価の置換基のいずれかを表す。
(1価の置換基)
ヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、トリデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルオクチル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、2-ヘキシルデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、trans-2-ヘキセニル基、cis-2-ヘキセニル基、cis-3-ヘキセニル基、trans-2-ヘプテニル基、2,4-ヘキサジエニル基、2,7-オクタジエニル基、cis-2-ノネニル基、cis-3-ノネニル基、trans-2-ノネニル基、trans,cis-2,6-ノナジエニル基、3,6-ノナジエニル基、trans-2-オクテニル基、cis-3-オクテニル基、2,4-デカジエニル基、ゲラニル基、2,4-ウンデカジエニル基、trans-2-ドデセニル基、trans-2-ドリデセニル基、3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン、オレイル基、プロパルギル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、2-ヘプチニル基、3-ヘプチニル基、2-オクチニル基、3-オクチニル基、2-デシニル基、3-デシニル基、2-ノニニル基、及び3-ノニニル基。
【0057】
上述した1価の置換基中、なかでも、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、トリデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルオクチル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、2-ヘキシルデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、2,7-オクタジエニル基、cis-2-ノネニル基、cis-3-ノネニル基、trans-2-ノネニル基、trans,cis-2,6-ノナジエニル基、3,6-ノナジエニル基、trans-2-オクテニル基、cis-3-オクテニル基、2,4-デカジエニル基、ゲラニル基、2,4-ウンデカジエニル基、trans-2-ドデセニル基、trans-2-ドリデセニル基、3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン、オレイル基、2-オクチニル基、3-オクチニル基、2-デシニル基、3-デシニル基、2-ノニニル基、又は3-ノニニル基が好ましく、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、トリデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルオクチル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、2-ヘキシルデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、trans-2-ドデセニル基、trans-2-ドリデセニル基、3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン、又はオレイル基がより好ましく、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、トリデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルオクチル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、2-ヘキシルデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、又はオレイル基が更に好ましい。
【0058】
【化5】
【0059】
【化6】
【0060】
【化7】
【0061】
【化8】
【0062】
上記式(1)で表される化合物は、公知の方法により合成できる。
【0063】
特定化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、特定化合物の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、0.30質量%以上が特に好ましい。また、その上限は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0064】
〔溶媒〕
<アルコール>
本発明の組成物は、溶媒としてアルコールを含む。
アルコールとしては特に制限されないが、例えば、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、及び環状のアルコール(エーテルアルコールを含む)が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコール酢酸モノエステル、グリセリン、n-ブタノール、2-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、ブタン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、t-アミルアルコール、イソアミルアルコール、2-メチルブタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブテノール、3-メチル-3-ブタノール、1-ペンテン-3-オール、n-ヘキサノール、カプリルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、デカノール、リナロール、ゲラニオール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、3-メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、シトロネロール、テルピネオール、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0065】
上記アルコールとしては安全性の観点から食品添加物であることが好ましく、なかでも、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコール酢酸モノエステル、n-ブタノール、2-ブタノール、ブタン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコール、2-メチル-1-ブタノール、1-デカノール、1-ペンテン-3-オール、2-エチル1-ヘキサノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブテノール、3-メチル-3-ブタノール、イソアミルアルコール、i-ブタノール、ベンジルアルコール、シトロネロール、テルピネオール、ヒドロキシシトロネラール、又はヒドロキシシトロネラールジメチルアセタールが好ましい。
【0066】
本発明の組成物は、抗ウイルス活性値のばらつきがより小さくなる点で、アルコールとして、炭素数2以下のアルコールと炭素数3以上のアルコールとを含むことが好ましい。炭素数3以上のアルコールは、炭素数2以下のアルコールと比較すると脂溶性が高く、ウイルス及びウイルスが潜伏する汚れを物理的に除去しやすいと考えられる。このため、組成物が炭素数2以下のアルコールと炭素数3以上のアルコールとを含む組成物をワイパーに含浸させ清拭に使用した場合、抗ウイルス活性値のばらつきがより小さくなると考えられる。また、炭素数3以上のアルコールは、炭素数2以下のアルコールと比較すると、界面活性機能も高いと想定されるため、フェノキサイドアニオンとの相乗効果がより強化され、抗ウイルス活性が向上することも考えられる。
炭素数2以下のアルコールと炭素数3以上のアルコールとを併用する場合、炭素数2以下のアルコールに対する炭素数3以上のアルコールの体積比(炭素数3以上のアルコールの体積/炭素数2以下のアルコールの体積)は、抗ウイルス活性がより優れる点、及び/又は抗ウイルス活性のばらつきがより小さい点で、0.01以上が好ましい。また、その上限としては特に制限されないが、例えば5.00以下であり、2.00以下が好ましい。
炭素数2以下のアルコールは、エタノールを含み、炭素数3以上のアルコールは、イソプロパノールを含むことが好ましい。
【0067】
<アルコール以外の溶媒>
本発明の組成物は、アルコール以外の溶媒を含んでいてもよい。
アルコール以外の溶媒としては、水、又は有機溶媒(アルコールは除く。)が挙げられる。
上記有機溶媒としては特に制限されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸イソプロピル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェニルエチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メンチル、酢酸リナリル、酪酸、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸シクロヘキシル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールジメチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-メチルプロパナール、2-メチルブチルアルデヒド、3-メチル-2-ブテナール、3-メチルブタナール、L-ペリルアルデヒド、アセトアルデヒド、アセト酢酸エチル、イソアミルアセテート、酪酸イソアミル、イソバレルアルデヒド、イソブタナール、酢酸イソプロピル、イソプロピルミリステレート、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタナール、オクタン酸エチル、オクタナール、オクタン酸、オクタン酸エチル、オクチルアルデヒド、ギ酸、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、シトラール、シトロネラール、ジイソプロピルエーテル、ジイソプロピルジサルファイド、ジイソプロピルジスルフィド、ジエチルエーテル、ジエチルタートレート、ジエチルピロカーボネート、デカナール、デカン酸エチル、トリアセチン、クエン酸三エチル、トルエン、ノナラクトン、バレルアルデヒド、パラメチルアセトフェノン、パラメトキシベンズアルデヒド、ひまし油、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、ブタナール、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン、ヘプタン、ベンズアルデヒド、ユーカリプトール、イオノン、酢酸テルピニル、α-アミルシンナムアルデヒド、臭素化植物油、酢酸、二炭酸ジメチル、乳酸エチル、熱酸化大豆油、熱酸化大豆油とグリセリンのエステル、及び流動パラフィン等が挙げられる。
【0068】
上記有機溶媒としては安全性上の観点から食品添加物であることが好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸イソプロピル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェニルエチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メンチル、酢酸リナリル、酪酸、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸シクロヘキシル、2-メチルプロパナール、2-メチルブチルアルデヒド、3-メチル-2-ブテナール3-メチルブタナール、l-ペリルアルデヒド、アセトアルデヒド、アセト酢酸エチル、イソアミルアセテート、酪酸イソアミル、イソバレルアルデヒド、イソブタナール、酢酸イソプロピル、イソプロピルミリステレート、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタナール、オクタン酸、オクタン酸エチル、オクチルアルデヒド、ギ酸、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、シトラール、シトロネラール、ジイソプロピルエーテル、ジイソプロピルジサルファイド、ジイソプロピルジスルフィド、ジエチルエーテル、ジエチルタートレート、ジエチルピロカーボネート、デカナール、デカン酸エチル、トリアセチン、クエン酸三エチル、トルエン、ノナラクトン、バレルアルデヒド、パラメチルアセトフェノン、パラメトキシベンズアルデヒド、ひまし油、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、ブタナール、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン、ヘプタン、ベンズアルデヒド、ユーカリプトール、イオノン、酢酸テルピニル、α-アミルシンナムアルデヒド、臭素化植物油、酢酸、二炭酸ジメチル、乳酸エチル、熱酸化大豆油、熱酸化大豆油とグリセリンのエステル、又は流動パラフィンが好ましい。
【0069】
本発明の組成物中、溶媒の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.5~99.9質量%が好ましく、10~99.8質量%がより好ましく、50~99.8質量%が更に好ましく、80~99.8質量%が特に好ましい。
【0070】
本発明の組成物中、アルコールの含有量(複数種存在する場合はその合計)は、抗ウイルス活性がより優れる点で、溶媒の全体積に対して、10~100体積%が好ましく、25~100体積%がより好ましく、30~100体積%以上が更に好ましい。
【0071】
〔組成物のpH〕
本発明の組成物は、pHが9.0~14.0である。pHが9.0未満である場合、抗ウイルス活性が劣る場合がある。抗ウイルス活性がより優れる点で、pHは10.0以上が好ましい。一方、pHは14.0以下であり、金属に対する腐食性がより抑制できる点で、12.0以下が好ましい。
pHは、pH電極「6337-10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F-72S」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。具体的な測定方法については、後述の通りである。
なお、本明細書において、pHは、25℃における値を意図する。
【0072】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、本発明の効果を奏する限りにおいて、上記以外の成分が含まれてもよい。任意成分としては特に制限されないが、例えば、界面活性剤、殺菌剤、消毒剤、除菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤・ゲル化剤、防腐剤、香料、及び色素等が挙げられる。本発明の組成物は、抗ウイルス活性がより優れる点で、なかでも、界面活性剤、殺菌剤、消毒剤、除菌剤、又は酸化防止剤を含むことが好ましく、界面活性剤、4級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム等)、又は酸化防止剤を含むことがより好ましく、界面活性剤、又は4級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム等)を含むことが更に好ましい。
【0073】
<界面活性剤及び乳化剤>
本発明の組成物は、界面活性剤及び/又は乳化剤を含むことが好ましい。界面活性剤及び/又は乳化剤を含む本発明の組成物を基布に含浸させてワイパーとして使用する場合、拭き残しが少なく、洗浄性がより優れる。
界面活性剤、及び乳化剤としては特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤等のイオン性界面活性剤(但し、ここでいうイオン性界面活性剤に、4級アンモニウム塩は含まれない)、並びにノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0074】
イオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩(ドデシル硫酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、アルキルリン酸塩、及び、コール酸塩(デオキシコール酸ナトリウム、リトコール酸ナトリウム、及びコール酸ナトリウム等)等のアニオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩等のカチオン性界面活性剤;が挙げられる。
【0075】
ノニオン系界面活性剤としては、炭素数が20超の化合物が好ましく、例えば、モノ-,ジ-,若しくはポリグリセリンの脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンアルキルエーテル、及び、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のエーテル型(花王株式会社製、エマルゲンシリーズ等);脂肪酸ポリエチレングリコール、及び、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等のエステルエーテル型;脂肪酸アルカノールアミド等のアルカノールアミド型等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエステル、及びポリエチレングリコールモノステアリルエステル等が挙げられる。
【0076】
乳化剤としては特に制限されないが、非イオン性の乳化剤の場合、炭素数20超が好ましい。乳化剤としては、具体的に、オレイン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、カプリン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、カプリル酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、ラウリン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、ガムロジングリセリンエステル、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、クエン酸ステアリル、クエン酸モノグリセリド、グリセリンの乳酸及び脂肪酸エステル類、モノ-,ジ-,若しくはポリグリセリンの脂肪酸エステル類、ステアリン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、ミリスチン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、パルミチン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、レシチン、水酸化レシチン、部分水解レシチン、ヒマワリレシチン、酵素処理レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、キラヤ抽出物、植物性ステロール、スフィンゴ脂質、ダイズサポニン、胆汁末、動物性ステロール、分別レシチン、ユッカフォーム抽出物、卵黄レシチン、トール油、及びロジングリセリンエステルが挙げられる。
【0077】
上記界面活性剤及び乳化剤としては、なかでも、安全性の観点から食品添加物であることが好ましく、コール酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、デオキシコール酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、オレイン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、カプリン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、カプリル酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、ラウリン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。)、ガムロジングリセリンエステル、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、クエン酸三エチル、クエン酸ステアリル、クエン酸モノグリセリド、グリセリンの乳酸及び脂肪酸エステル類、モノ-,ジ-,若しくはポリグリセリンの脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、ミリスチン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、パルミチン酸塩(塩の形態としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、レシチン、水酸化レシチン、部分水解レシチン、ヒマワリレシチン、酵素処理レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、キラヤ抽出物、植物性ステロール、スフィンゴ脂質、ダイズサポニン、胆汁末、動物性ステロール、分別レシチン、ユッカフォーム抽出物、卵黄レシチン、トール油、又はロジングリセリンエステルが好ましい。
【0078】
界面活性剤及び乳化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤及び/又は乳化剤を含む場合、界面活性剤及び乳化剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.01~2質量%が好ましく、0.05~2質量%がより好ましく、0.05~1質量%が更に好ましい。
【0079】
<殺菌剤、消毒剤、及び除菌剤>
殺菌剤、消毒剤、及び除菌剤としては特に制限されず、例えば、4級アンモニウム塩、金属を含む抗菌剤、光触媒、アルデヒド系化合物、ヨード系化合物、ピグアニド化合物、及びアクリノール水和物(例えば、乳酸6,9-ジアミノ-2-エトキシアクリジン一水和物)等が挙げられる。本発明の組成物と組み合わせた際に、抗ウイルス活性がより優れる点で、なかでも、4級アンモニウム塩が好ましい。
【0080】
(4級アンモニウム塩)
4級アンモニウム塩としては特に制限されず、例えば、下記式(2)~(5)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【化9】
【0082】
式(2)中、R21~R24は、各々独立に、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロアリール基を示す。
21~R24で表される脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
また、R21~R24で表される脂肪族炭化水素基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子の種類は特に制限されないが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子等が挙げられる。なかでも、抗ウイルス活性がより優れる点で、-Y1-、-N(Ra)-、-C(=Y2)-、-CON(Rb)-、-C(=Y3)Y4-、-SOt-、-SO2N(Rc)-、又はこれらを組み合わせた基の態様で含まれることが好ましい。
1~Y4は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、及びテルル原子からなる群から選択される。なかでも、取り扱いがより簡便である点から、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。tは、1~3の整数を表す。上記Ra、Rb、及びRcは、各々独立に、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
なお、上記脂肪族炭化水素基がヘテロ原子を含む場合、-CH2-がヘテロ原子で置換される。
【0083】
21~R24で表される脂肪族炭化水素基としては、具体的には、アルキル基(炭素数1~30が好ましく、炭素数1~20がより好ましい)、アルケニル基(炭素数2~30が好ましく、炭素数2~20がより好ましい)、又はアルキニル基(炭素数2~30が好ましく、炭素数2~20がより好ましい)等が挙げられる。なかでも、アルキル基が好ましい。
【0084】
21~R24で表されるアリール基としては、特に制限されず、例えば、炭素数6~18のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0085】
21~R24で表されるアラルキル基としては特に制限されないが、例えば、炭素数7~15のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、1-(1-ナフチル)エチル基、トリフェニルメチル基、及びピレニルメチル基等が挙げられる。
【0086】
21~R24で表されるヘテロアリール基としては、例えば、炭素数3~12のヘテロアリール基が好ましく、例えば、フリル基、チオフリル基、ピリジル基、ピラゾール基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、プリン基、ピリミジル基、ピラジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジル基、カルバゾリル基、キノキサリル基、及びチアジン基等が挙げられる。
【0087】
21~R24で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、及びヘテロアリール基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基群Wに例示されるものが挙げられる。
【0088】
は、水酸化物イオン以外の1価のアニオンを表す。
としては、具体的には、ハロゲン化物イオン(例えば、F、Cl、Br、I、Br3 、Br2Cl、I3 、IBr2 、Cl2Br、HF2 、H23 、AuBr2 、AuCl2 、AuI2 、及びFeCl4 が挙げられる。)、カルボキシレートアニオン、シアン化物アニオン、スルホンイミドアニオン(N(SO2R)2:Rは、フッ素原子、炭化水素基(例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。)、又はパーフルオロ炭化水素基(例えば、炭素数1~20のパーフルオロアルキル基が挙げられる。)である。)、ボロヒドリドアニオン、ジクロロヨウ素酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスファートアニオン、過塩素酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、硝酸アニオン、ジシアナミドアニオン[N(CN)2]、アジ化物アニオン(N3 )、アルカン又はアリールスルホン酸アニオン、パーフルオロアルカン又はアリールスルホン酸アニオン、アルキル又はアリール硫酸エステルアニオン(ROSO3 :Rは、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基を表す。)、アルキル又はアリールリン酸エステルアニオン((RO)2PO2 :Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基を表す。)、チオシアン化物アニオン(SCN)、トリアセトキシボロヒドリドアニオン、ペルルテナートアニオン(RuO4 )、Cu(CF34 、C(CN)3 、及びCF3BF3 が挙げられる。
【0089】
以下に、式(2)で表される化合物を例示するが、本発明はこれに制限されない。
【0090】
【化10】
【0091】
【化11】
【0092】
式(3)中、Xは、式(2)中のXと同義であり、好適態様も同じである。
また、R31及びR32は、式(2)中のR21~R24と同義であり、好適態様も同じである。
31及びY32は、各々独立に、-C(R332-、-NR34-、-O-、-CO-、-CO2-、-S-、-SO-、又は-SO2-を表す。なお、式(2)中、Y32が複数ある場合、複数のY32は同一であっても、異なっていてもよい。
33は、水素原子、又は、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、へテロアリール基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1価の有機基を表す。
34は、水素原子、又は、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、及びへテロアリール基からなる群より選ばれる1価の有機基を表す。
33及びR34で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、及びヘテロアリール基は、式(2)中のR21~R24で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロアリール基と同義であり、好適態様も同じである。
33及びR34で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0093】
33及びR34で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロアリール基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基群Wに例示されるものが挙げられる。
【0094】
なお、Y31、又はY32が、-C(R332-又は-NR34-を表す場合、R31で表される1価の有機基は、R33又はR34と互いに連結して芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。
また、R31及びR32は、互いに連結して芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。
nは、1~18の整数を表す。
【0095】
以下に、式(3)で表される化合物を例示するが、本発明はこれに制限されない。
【0096】
【化12】
【0097】
式(4)中、Xは、式(2)中のXと同義であり、好適態様も同じである。
また、R41は、式(2)中のR21~R24と同義であり、好適態様も同じである。
41~Y45は、各々独立に、窒素原子、又は=CR42-を表す。R42は、水素原子、又は、1価の置換基を示す。
42で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、上述した置換基群Wに例示されるものが挙げられる。
なお、Y41~Y45のうちの2以上が=CR42-を表す場合、隣接する炭素原子に置換するR42同士は、互いに連結して芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。
また、Y41~Y45が=CR42-を表す場合、R42で表される1価の置換基は、R41と互いに連結して芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。
【0098】
以下に、式(4)で表される化合物を例示するが、本発明はこれに制限されない。
【0099】
【化13】
【0100】
【化14】
【0101】
式(5)中、Xは、式(2)中のXと同義であり、好適態様も同じである。
51~Y53は、式(4)のY41~Y45と同義であり、好適態様も同じである。
54は、>NR51、硫黄原子、又は酸素原子を表す。
51及びR52は、式(2)中のR21~R24と同義であり、好適態様も同じである。
【0102】
以下に、式(5)で表される化合物を例示するが、本発明はこれに制限されない。
【0103】
【化15】
【0104】
【化16】
【0105】
(金属を含む抗菌剤)
金属を含む抗菌剤としては特に制限されず、公知のものを使用できる。
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、水銀、亜鉛、鉄、鉛、ビスマス、チタン、錫、及びニッケル等が挙げられる。また、金属を含む抗菌剤に含まれる金属の態様は特に限定されず、金属粒子、金属イオン、及び金属塩(金属錯体を含む)等の形態が挙げられる。なかでも、抗菌性がより優れる点で、金属は、金、銀、又は銅が好ましい。
【0106】
また、金属を含む抗菌剤としては、担体と、担体上に担持された上記金属を含む金属担持担体であってもよい。
担体の種類は特に限定されず、公知の担体を使用できる。担体としては、例えば、無機酸化物(例えば、ゼオライト(結晶性アルミノケイサン塩)、シリカゲル、粘土鉱物等のケイ酸塩、ガラス(水溶性ガラスを含む)、リン酸ジルコニウム、及びリン酸カルシウム等)、活性炭、金属担体、及び有機金属等が挙げられる。
【0107】
金属を含む抗菌剤としては、抗菌性により優れる点で、銀を含む抗菌剤が好ましい。
銀を含む抗菌剤としては、具体的には、硝酸銀、塩化銀、硫酸銀、乳酸銀、及び酢酸銀等の銀塩;銀アンモニア錯体、銀クロロ錯体、及び銀チオスルファト錯体等の銀錯体;銀粒子;銀イオン;これらを上記担体に担持させた銀担持担体;等が挙げられる。
【0108】
(光触媒)
光触媒としては、光触媒作用を示すことが知られている物質であれば特に制限されず、例えば、TiO2、SrTiO2、ZnO、CdS、SnO2、及びWO3等が挙げられる。
【0109】
(アルデヒド系化合物)
アルデヒド系化合物としては特に制限されないが、例えば、グルタラール、フタラール、及びホルマリン等が挙げられる。
【0110】
(ヨード系化合物)
ヨード系化合物としては特に制限されないが、例えば、ポピドンヨード、及びヨードチンキ等が挙げられる。
【0111】
(ピグアニド化合物)
ピグアニド化合物としては特に制限されないが、例えば、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、及びクロルヘキシジン酢酸塩等が挙げられる。
【0112】
殺菌剤、消毒剤、及び除菌剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が殺菌剤、消毒剤、及び/又は除菌剤を含む場合、殺菌剤、消毒剤、及び除菌剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましく、0.01~1質量%が更に好ましい。
【0113】
<酸化防止剤>
本発明の組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。本発明の組成物が酸化防止剤を含む場合、抗ウイルス活性がより優れる。
酸化防止剤としては特に制限されず、例えば、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)、及び「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤を使用できる。
【0114】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩;エリソルビン酸、エリソルビン酸誘導体、及びそれらの塩;フェノール性水酸基を有する化合物(但し、上述した特定化合物を除く。);フェニレンジアミン等のアミン系化合物;が挙げられる。
【0115】
上記アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩としては、例えば、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸カリウム、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L-アスコルビン酸硫酸エステル、L-アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸2-グルコシド、L-アスコルビル酸パルミチン酸エステル、及びテトライソパルミチン酸L-アスコルビル等が挙げられる。
【0116】
上記エリソルビン酸、エリソルビン酸誘導体、及びそれらの塩としては、例えば、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、エリソルビン酸カルシウム、エリソルビン酸リン酸エステル、及びエリソルビン酸硫酸エステル等が挙げられる。
【0117】
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、ポリフェノール類(例えば、茶抽出物に含まれるカテキン)、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類(例えば、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、及び没食子酸オクチル等)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、カルシノン酸類(ローズマリー抽出物等)、フェルラ酸、ビタミンE類、及びビスフェノール類等が挙げられる。
なお、上記ビタミンE類としては、例えば、トコフェロール(ビタミンE)及びその誘導体、並びに、トコトリエノール及びその誘導体等が挙げられる。
上記トコフェロール及びその誘導体としては、例えば、dl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、dl-δ-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸-dl-α-トコフェロール、リノール酸-dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール、及びこれらの酢酸エステル等が挙げられる。
上記トコトリエノール及びその誘導体としては、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、及びこれらの酢酸エステル等が挙げられる。
【0118】
上記アミン系化合物としては、フェニレンジアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、及び4-アミノ-p-ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0119】
上記酸化防止剤としては、なかでも、安全性の観点から食品添加物であることが好ましく、4-ヘキシルレゾルシン、BHT、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸カルシウムニナトリウム、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、d-α-トコフェロール濃縮物、dl-α-トコフェロール、アノクソマー、イソアスコルビン酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、クエン酸イソプロピル、グアヤク脂、グアヤク樹脂、ジラウリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸、チオジプロピオン酸ジステアリルエステル、チオ硫酸ナトリウム、ノルジヒドログアヤレチック酸、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、プロトカテキュ酸エチル、フェルラ酸、没食子酸プロピル、没食子酸イソアミル、没食子酸ドデシル、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、又は塩化第一錫が好ましい。
【0120】
酸化防止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~2質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましく、0.01~0.5質量%が更に好ましい。
【0121】
<pH調整剤>
pH調整剤としては特に制限されないが、金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、及びナトリウムエトキシド等)、金属酸化物(例えば、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウム等)、炭酸水素塩(炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸水素カルシウム等)、金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アルミニウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ユウロピリウム(II)、及び水酸化タリウム(I)等)、炭酸塩(炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸セシウム等)、水酸化4級アンモニウム、有機塩基(グアニジン誘導体、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネン等)、フォスファゼン塩基、及びプロアザフォスファトラン塩基等が挙げられる。
pH調整剤としては、安全性の観点から食品添加物として使用されるものが好ましく、ナトリウムメトキシド、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸マグネシウムが好ましい。
【0122】
pH調整剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物がpH調整剤を含む場合、pH調整剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、特定化合物の含有量等によって適宜変更されるため、限定することはできないが、組成物のpHが9.5超となるように、組成物の全質量に対して、0.001~30質量%が好ましく、0.005~20質量%がより好ましく、0.01~10質量%が更に好ましい。
【0123】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては特に制限されないが、例えば、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、及びサリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系化合物;パラアミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルパラアミノ安息香酸、グリセリルパラアミノ安息香酸、オクチルジメチルパラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、及びパラジメチルアミノ安息香酸2-エチルへキシル等のパラアミノ安息香酸系化合物;4-(2-β-グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、及びヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2、2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、及び2-ヒドロキシ-4-N-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(別名;パラメトキシケイ皮酸オクチル)、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5-ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、及びp-メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系化合物;2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-硫酸、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、及び4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系化合物;2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸-2-エチルヘキシルエステル(別名;オクトクリレン)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルへキシル、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、シノキサート、メチル-O-アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、4-(3,4-ジメトキシフェニルメチレン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、これらの高分子誘導体、並びにシラン誘導体等が挙げられる。
【0124】
紫外線吸収剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~3質量%が好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.001~1質量%が更に好ましい。
【0125】
<キレート剤>
キレート剤としては特に制限されないが、例えば、アミノポリカルボン酸系キレート剤、芳香族又は脂肪族カルボン酸系キレート剤、アミノ酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、リン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤、高分子電解質(オリゴマー電解質を含む)系キレート剤、ジメチルグリオキシム、チオグリコール酸、フィチン酸、グリオキシル酸、及びグリオキサール酸等が挙げられる。これらのキレート剤は、それぞれフリーの酸型であっても、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩の形であってもよい。
【0126】
アミノポリカルボン酸系キレート剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、イミノジ酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノジ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミントリ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、グルタミン酸ジ酢酸、アスパラギン酸ジ酢酸、及びこれらの塩類等が挙げられる。
【0127】
芳香族又は脂肪族カルボン酸系キレート剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、イタコン酸、アコニット酸、ピルビン酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸(アントラニル酸を含む)、フタル酸、フマル酸、トリメリット酸、没食子酸、ヘキサヒドロフタル酸、及びこれらの塩類等が挙げられる。
【0128】
アミノ酸系キレート剤としては、例えば、グリシン、セリン、アラニン、リジン、シスチン、システイン、エチオニン、チロシン、メチオニン、及びこれらの塩類等が挙げられる。
【0129】
ホスホン酸系キレート剤としては、例えば、イミノジメチルホスホン酸、アルキルジホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、及びこれらの塩類等が挙げられる。
【0130】
リン酸系キレート剤としては、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、トリリン酸、及びポリリン酸等が挙げられる。
【0131】
ヒドロキシカルボン酸系キレート剤としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、ヘプトン酸、酒石酸、乳酸、及びこれらの塩類等が挙げられる。
【0132】
高分子電解質(オリゴマー電解質を含む)系キレート剤としては、例えば、アクリル酸重合体、無水マレイン酸重合体、α-ヒドロキシアクリル酸重合体、イタコン酸重合体、及びこれらの重合体の構成モノマー2種以上からなる共重合体、並びにエポキシコハク酸重合体等が挙げられる。
【0133】
キレート剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物がキレート剤を含む場合、キレート剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~3質量%が好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.001~1質量%が更に好ましい。
【0134】
<保湿剤>
保湿剤としては特に制限されず、例えば、デオキシリボ核酸、ムコ多糖類、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アロエエキス、ゼラチン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、及びホエイ等が挙げられる。
【0135】
保湿剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が保湿剤を含む場合、保湿剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~3質量%が好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.001~1質量%が更に好ましい。
【0136】
<増粘剤及びゲル化剤>
増粘剤及びゲル化剤としては、例えば、無水マレイン酸・メチルビニルエーテル共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、セルロース又はその誘導体、ケラチン及びコラーゲン又はそれらの誘導体、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グアーガム、アラビアゴム、えん麦ガム、アカシアガム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、カロブビーンガム、ガティガム、アルギン酸及びその塩(塩の形態としては、アンモニウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルブミン、カゼイン、カードラン、βグルカン及びβグルカン誘導体、ローカストビーンガム、ジェランガム、カッシアガム、マンナン、タラガム、トラガントガム、タマリンドガム、デキストラン、ポリデキストロース、α-グルコース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩(塩の形態としては、カルシウム塩、及びナトリウム塩が挙げられる。)、酵素分解カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル化エピ架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アミロペクチン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、酸化ヒドロキシプロピル化エピ架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アルカリ処理デンプン、酸化ヒドロキシプロピル化エピ架橋デンプン、グリセロール架橋デンプン、酸処理デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、酢酸デンプン、漂白デンプン、酵素処理デンプン、酸化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンコハク酸ナトリウム、グルコマンナン、シクロデキストリン、デキストリン、プルラン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ユーケマ、β-1,3-グルカン寒天、並びにα-グルコースの誘導体等が挙げられる。
【0137】
増粘剤及びゲル化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が増粘剤及び/又はゲル化剤を含む場合、増粘剤及びゲル化剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~3質量%が好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.001~1質量%が更に好ましい。
【0138】
<防腐剤>
防腐剤としては特に制限されないが、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、過酸化水素、ギ酸、ギ酸エチル、ジ亜塩素酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ペクチン分解物、ポリリジン、フェノキシエタノール、チラム、チアベンダゾール、イマザリル、ジフェニル、ナタマイシン、フルジオキソニル、アゾキシストロビン、及びティートリー油が挙げられる。
【0139】
防腐剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が防腐剤を含む場合、防腐剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~3質量%が好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.001~1質量%が更に好ましい。
【0140】
<香料>
香料としては特に制限されないが、例えば、ジャコウ、アカシア油、アニス油、イランイラン油、ジャスミン油、スウィートオレンジ油、スペアミント油、ゼラニウム油、ネロリ油、ハッカ油、ヒノキ油、フェンネル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ライム油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズウッド油、アニスアルデヒド、シベトン、ムスコン、及びリモネン等が挙げられる。
【0141】
香料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が香料を含む場合、香料の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~3質量%が好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.001~1質量%が更に好ましい。
【0142】
<色素>
色素としては特に制限されないが、例えば、オキアミ色素、オレンジ色素、カオリン、グンジョウ、酸化クロム、酸化鉄、二酸化チタン、及びクロロフィル等が挙げられる。
【0143】
色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が色素を含む場合、香料の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全質量に対して、0.001~3質量%が好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.001~1質量%が更に好ましい。
【0144】
〔組成物の製造方法〕
本発明の組成物は、上述した必須成分及び任意成分を、適宜混合することによって調製できる。なお、上記成分の混合の順番は特に制限されない。
【0145】
〔剤型〕
本発明の組成物の剤型は特に制限されないが、例えば、液剤、ジェル剤、エアゾールスプレー剤、及び非エアゾールスプレー剤等が挙げられる。
【0146】
〔用途〕
本発明の組成物は、抗ウイルス用組成物として使用されることが好ましく、例えば、カリシウイルス科、オルトミクソウイルス科、コロナウイルス科、及びヘルペスウイルス科等に属するウイルスを不活化する作用を有するため、上記のウイルスに作用させて上記のウイルスの活性を減少させる用途が好ましい。なお、カリシウイルス科に属するウイルスとしては、ノロウイルス属、サポウイルス属、ラゴウイルス属、ネボウイルス属、及びベシウイルス属に属するウイルス等が挙げられる。本発明の組成物は、なかでも、ノロウイルス属に属するウイルス及びベシウイルス属に属するウイルスに対して良好な不活化効果を発揮する。
また、本発明の組成物は、細菌及び真菌等の微生物(例えば、大腸菌、及びブドウ球菌等)に対して良好な不活化効果を発揮する。
【0147】
組成物は、なかでも、抗ノロウイルス用組成物として用いられるのが好ましい。
上記組成物の使用方法としては特に制限されないが、ノロウイルスが付着、又は、付着するおそれがある箇所に、塗布する、又は、予め塗布しておくことができる。組成物を塗布する方法としては特に制限されないが、例えば組成物を上記箇所に噴霧する方法、組成物を含む基布等によって上記箇所を拭く方法、及び、液体洗浄料である組成物で手指を洗浄する方法等が挙げられる。
【0148】
[スプレー]
本発明のスプレーは、スプレー容器と、上記スプレー容器に収容された抗ウイルス用組成物と、を含む。なお、抗ウイルス用組成物としては、既に説明したとおりである。
上記スプレー容器は、エアゾールスプレー容器であっても、非エアゾールスプレー容器であってもよい。上記スプレー容器としては、なかでも、非エアゾールスプレー容器が好ましい。
上記スプレー容器がエアゾールスプレー容器である場合とは、例えば、スプレー容器が抗ウイルス用組成物以外に液体ガス及び圧縮ガス等のガスを含む形態を意図する。エアゾールスプレー容器としては、具体的には、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、炭酸ガス、窒素ガス、及びイソペンタン等のガスを含むスプレー容器が挙げられる。
上記スプレー容器が非エアゾールスプレー容器である場合とは、スプレー容器が、液体ガス及び圧縮ガス等のガスを実質的に含まずに、容器中に収容される液体を霧状及び泡状等の形態で容器外へ噴出させる機構を備えている形態を意図する。非エアゾールスプレー容器としては、例えば、ポンプ式、及びトリガー式等の蓄圧式のスプレー容器が挙げられる。
【0149】
[ワイパー]
本発明のワイパーは、基布と、上記基布に含浸させた抗ウイルス用組成物と、を含む。
なお、抗ウイルス用組成物としては、既に説明したとおりである。
上記基布としては特に制限されず、天然繊維で形成されたものであっても、化学繊維で形成されたものであってもよい。
天然繊維としては、例えば、パルプ、綿、麻、亜麻、羊毛、キヤメル、カシミヤ、モヘヤ、及び絹等が挙げられる。
化学繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート、及びポリクラール等が挙げられる。
これらの基布のうち、組成物を含浸させやすい点で、親水性の基布が好ましい。親水性の基布とは、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、アミド基、及びスルホニル基等の親水性基を有する繊維を含む基布である。親水性の基布としては、具体的には、植物性繊維、綿、パルプ、動物性繊維、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、及びポリビニルアルコール等が挙げられる。
また、基布としては、不織布、布、タオル、ガーゼ、及び脱脂綿等も使用でき、不織布が好ましい。
【0150】
また、基布の目付(単位面積当たりの質量)は、100g/m2以下が好ましい。上記組成物を基布に含浸させる際の含浸量は、基布の質量に対して1倍以上の量が好ましい。
【実施例
【0151】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0152】
[実施例1の抗ウイルス用組成物]
〔調製方法〕
3-ヒドロキシ-5-ヘキシルオキシ安息香酸90mgを仕込んだガラス製容器に、エタノール12mLを加え、3-ヒドロキシ-5-ヘキシルオキシ安息香酸をエタノールに溶解させた。次に、上記ガラス製容器内に、水と1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを、水の総量が18mL(溶媒の全体積に対するエタノール濃度40体積%)、且つ、調液後の抗ウイルス用組成物のpHが10.5となるように加えて、抗ウイルス用組成物を得た。
なお、pHの測定は、下記方法により実施した。
【0153】
〔pHの測定〕
pH計(製品名「pH・水質分析計 LAQUA F-72S」、(株)堀場製作所製)、及びpH電極(製品名「6377-10D」、(株)堀場製作所製)を用い、pH標準液にてpHを校正後に測定を行った。サンプル液を液温25℃に調製後、電極をサンプル液に浸漬し、1~2分程度放置し、数値が安定化したときのpHの値を読み取った。
【0154】
〔抗ウイルス成分のpKaの評価〕
以下の測定装置及び手順により、抗ウイルス成分のpKaを求めた。
<測定装置>
装置:電位差自動滴定装置AT-610(京都電子工業株式会社製)
<測定方法>
3-ヒドロキシ-5-ヘキシルオキシ安息香酸1mmolをエタノール40mLに溶解し、精製水10mLを加えた。1mol/Lの塩酸を2mL添加後、1mol/Lの水酸化ナトリウムにて滴定することにより、pKaを算出した。なお、3-ヒドロキシ-5-ヘキシルオキシ安息香酸において、フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaは12.1であり、酸性基であるカルボキシル基の酸解離に由来するpKaは6.4であった。
次いで、得られたpKaを下記基準により評価した。
なお、各実施例及び各比較例で使用する抗ウイルス成分についても、上述した方法によりpKaを測定し、下記基準により評価した。
【0155】
<評価基準>
「A」:酸性基の酸解離に由来するpKa<フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaの場合
「B」:酸性基の酸解離に由来するpKa≧フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaの場合
【0156】
〔抗ウイルス成分の溶解性の評価〕
各実施例及び各比較例として調製した組成物(液)について、下記基準で抗ウイルス成分の溶解性を評価した。
<評価基準>
「A」:無色透明の液になり、完全溶解した。
「B」:完溶せず白濁した状態となった。
「C」:ほとんど溶解しない。
【0157】
<実施例2~21、比較例1~4の抗ウイルス用組成物の調製>
実施例1の抗ウイルス用組成物の調製方法に準じて、表1に示す成分配合及びpHにて、実施例2~21、及び比較例1~4の抗ウイルス用組成物を調製した。
【0158】
〔評価〕
調製した実施例1~21、及び比較例1~4の抗ウイルス用組成物について、以下に示す方法により、抗ウイルス活性の評価を実施した。
【0159】
<抗ネコカリシウイルス活性の評価>
MEM(Minimum Essential Media)培地中でネコカリシウイルス(Feline calicivirus:ATCC VR-782)を培養して得たウイルス液を、上記で作製した組成物に接種した後に、10秒間撹拌した後、約25℃にて1分間静置した。次に、ウイルス液接種後の組成物の液0.1mLを回収し、9.9mLのSCDLP培地(Soybean. Casein Digest Agar with Lecithin and Polysorbate 80、血清を終濃度10%となるように添加したもの)に入れてよく混合し、試験液を得た。次に、寒天培地上で培養したCRFK細胞(猫腎由来株化細胞、ATCC CCL-94)に、上記試験液を0.1mL接種し、37℃で1時間吸着させた。次に、CRFK細胞上の試験液を洗い流し、寒天培地を重層して、2~3日間培養した。培養後、形成されたプラーク数を計数し、感染価を算出し、これを「抗ウイルス用組成物の感染価」とした。また、抗ウイルス用組成物に代えて滅菌済精製水を用いた以外は上記と同様にして作製した検体についても感染価を算出し、これを「対照の感染価」とした。
組成物の抗ウイルス性(抗ウイルス活性値)は下記式1を用いて算出し、計算結果を下記基準を用いて評価した。結果を表1に示す。
【0160】
式1: 抗ウイルス活性値=A-B
上記Aは、対照の感染価の常用対数値を表す。
上記Bは、抗ウイルス用組成物の感染価の常用対数値を表す。
【0161】
(評価基準)
「A」:抗ウイルス活性値が4.0以上
「B」:抗ウイルス活性値が3.5以上4.0未満
「C」:抗ウイルス活性値が3.0以上3.5未満
「D」:抗ウイルス活性値が2.0以上3.0未満
「E」:抗ウイルス活性値が2.0未満
【0162】
以降の表において、「oleyl」とは、C1835で表される不飽和アルキル基を意図する。また、「2-hexyloctyl」とは、C1429で表される飽和アルキル基を意図する。
また、以降の表において「フェノール性水酸基及び酸性基のpKaの関係」とは、フェノール性水酸基の酸解離に由来するpKaと酸性基の酸解離に由来するpKaとの大小関係を意図する。評価基準については上述の通りである。
また、以降の表の「フェノール性水酸基の解離に由来するpKa」欄において、実施例15、実施例18、及び実施例21で使用される化合物のpKaはいずれも≦14.0であった。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】
【0165】
【表3】
【0166】
表1の結果から、実施例の抗ウイルス用組成物は、ネコカリシウイルスに対して優れた抗ウイルス活性を示すことが確認された。
また、実施例1~3の対比から、抗ウイルス用組成物中の抗ウイルス成分中に含まれる炭素数6以上の脂肪族炭化水素基の炭素数が10以上(好ましくは12以上)の場合、抗ウイルス用組成物はネコカリシウイルスに対してより優れた抗ウイルス活性を示すことが確認された。
また、実施例4、実施例11、及び実施例12の対比から、抗ウイルス用組成物は、アルコールの含有量が、溶媒の全体積に対して25~100体積%(好ましくは30~100体積%)である場合、ネコカリシウイルスに対してより優れた抗ウイルス活性を示すことが確認された。
また、実施例4、実施例16、及び実施例17の対比から、特定化合物の含有量が組成物全質量に対して0.05質量%以上(好ましくは0.10質量%以上)の場合、ネコカリシウイルスに対してより優れた抗ウイルス活性を示すことが確認された。
また、実施例4、実施例13、及び実施例14の対比から、組成物のpHが9.5以上(好ましくは10.0以上)の場合、ネコカリシウイルスに対してより優れた抗ウイルス活性を示すことが確認された。
また、実施例4と実施例18の対比から、特定化合物が、フェノール性水酸基の近傍(フェノール性水酸基のオルト位)に置換基を有さない構造である場合、ネコカリシウイルスに対してより優れた抗ウイルス活性を示すことが確認された。
一方、比較例の抗ウイルス用組成物は、ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性が劣ることが明らかである。
【0167】
[実施例22~27、及び比較例5の抗ウイルス用組成物]
〔実施例22~27、及び比較例5の抗ウイルス用組成物の調製〕
実施例1の抗ウイルス用組成物の調製方法に準じて、表2に示す成分配合及びpHにて、実施例22~27の抗ウイルス用組成物を調製した。
また、比較例5の抗ウイルス用組成物(表中には不表示。)として、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0168】
〔実施例22~27、及び比較例5の抗ウイルス用組成物の評価〕
<金属腐食性の評価>
表2に記載の各抗ウイルス用組成物約100mLをステンレス製のバットにとり、密閉条件下、室温でアルミニウム、銅、及び、真鍮の各プレートを浸漬した。一週間後、各プレートを取り出し、目視でプレート表面を観察し、下記基準で評価した。
【0169】
(評価基準)
「A」:変化なし。
「B」:光沢の低下や若干の色の変化が確認された。
「C」:錆が発生した。
【0170】
また、実施例22~27の各抗ウイルス用組成物について、実施例1と同様の方法により抗ネコカリシウイルス活性の評価を行った。
【0171】
【表4】
【0172】
表2の結果から、抗ウイルス用組成物がpH12.0以下である場合、アルミ板、銅、及び真鍮に対する腐食がほぼ観測されないことが分かった。
一方、ノロウイルス消毒剤として汎用される次亜塩素酸ナトリウム(比較例5)を抗ウイルス剤として用いた場合、アルミニウムに対する若干の腐食(B評価)と、銅及び真鍮に対する激しい腐食(C評価)が確認された。
【0173】
[実施例28~33、及び比較例6の抗ウイルス用組成物]
〔実施例28~33、及び比較例6の抗ウイルス用組成物の調製〕
実施例1の抗ウイルス用組成物の調製方法に準じて、表3に示す成分配合及びpHにて、実施例28~33、及び比較例6の抗ウイルス用組成物を調製した。
【0174】
〔実施例28~33、及び比較例6の抗ウイルス用組成物の評価〕
<ウェットワイパー形態での抗ウイルス活性の評価>
日本衛生材料工業会が定める「ウェットワイパー類の除菌性能試験方法(平成27年11月16日改定版)」を参考にして、実施例28~33、及び比較例6の組成物について、拭き取り試験を実施した。
具体的な要領としては、日本衛生材料工業会が定める「ウェットワイパー類の除菌性能試験方法(平成27年11月16日改定版)」に準じて、試験担体に、MEM(Minimum Essential Media)培地中でネコカリシウイルス(Feline calicivirus:ATCC VR-782)を培養して得たウイルス液接種し、これを乾燥後、各組成物を含浸させた試験布を巻きつけたおもりで拭き取った。次に、上記試験担体(ステンレス板)をSCDLP培地20mLに入れ、試験担体から残存したウイルスを洗い出し、検体作成用のウイルス液とした。また、抗ウイルス用組成物を含浸させた試験布に代えて、滅菌精製水を含浸させた試験布を用いた以外は上記と同様にして、対照検体作成用のウイルス液を得た。次に、上記検体作成用のウイルス液の0.1mLを寒天培地上で培養したCRFK細胞に接種し、37℃で1時間吸着させた。次に、CRFK細胞上の試験液を洗い流し、寒天培地を重層して2~3日間培養した。培養後、寒天培地上に形成されたプラーク数を計数し、感染価を算出し、これを「抗ウイルス用組成物の感染価」とした。また、検体作成用のウイルス液に代えて対照検体作成用のウイルス液を用いた以外は上記と同様にして作製した検体についても感染価を算出し、これを「対照の感染価」とした。
【0175】
式2: 抗ウイルス活性値=A-B
上記Aは、対照の感染価の常用対数値を表す。
上記Bは、組成物の感染価の常用対数値を表す。
【0176】
(評価基準)
「A」:抗ウイルス活性値が2.5以上
「B」:抗ウイルス活性値が2.0以上2.5未満
「C」:抗ウイルス活性値が2.0未満
【0177】
<拭き取りばらつきの評価>
表3に示す抗ウイルス用組成物を同一の製造ロットの抗ウイルス成分を用いてそれぞれ5ロットずつ作製し、それぞれに対して、ウェットワイパー形態での抗ウイルス活性値を評価した。なお、評価方法は、上記<ウェットワイパー形態での抗ウイルス活性の評価>に示した方法に準ずる。次いで、得られたウイルス活性値に基づき、下記評価基準により評価した。
【0178】
(評価基準)
「A」:抗ウイルス活性値の最大値と最小値の差が0.3未満
「B」:抗ウイルス活性値の最大値と最小値の差が0.3以上、0.5未満
「C」:抗ウイルス活性値の最大値と最小値の差が0.5以上
下記表3中、「A」と「B」との体積比([B]/[A])は、C3以下のアルコールの体積/C2以下のアルコールの体積を意図する。
【0179】
【表5】
【0180】
表3の結果から、アルコールとして、炭素数2以下のアルコール(例えば、エタノール、又はメタノール)と、炭素数3以上のアルコール(例えば、イソプロパノール、1-ブタノール、又は2-ペンタノール)とを併用すると、抗ネコカリシウイルス活性値が向上し、且つ、そのばらつきが小さくなることが分かった。
炭素数3以上のアルコール(イソプロパノール(CLogP値:0.0740)、1-ブタノール(CLogP値:0.823)、2-ペンタノール(CLogP値:1.13)等)は、炭素数2以下のアルコール(メタノール(CLogP値:-0.764)、エタノール(CLogP値:-0.235))よりも脂溶性が高く、界面活性機能が高いと想定される。これにより、炭素数2以下のアルコール及び炭素数3以上のアルコールを併用した実施例29~33は、炭素数2以下のアルコールを単独で用いた実施例28と比較すると、アルコール類と特定化合物から水素が解離して形成されるフェノキサイドアニオンとの相乗効果がより強化され、抗ウイルス活性が向上するとともに、物理的にウイルス及び汚れを除去できると考えられる。
【0181】
[実施例34、実施例35、及び比較例7の抗ウイルス用組成物]
〔実施例34、実施例35、及び比較例7の抗ウイルス用組成物の調製〕
実施例1の抗ウイルス用組成物の調製方法に準じて、表4に示す成分配合及びpHにて、実施例34、実施例35、及び比較例7の抗ウイルス用組成物を調製した。なお、添加剤の含有量は、組成物の全質量に対する含有量(質量%)である。
【0182】
〔実施例34、実施例35、及び比較例7の抗ウイルス用組成物の評価〕
下記表4に示す抗ウイルス用組成物について、実施例28~33、及び比較例6と同様の方法によりウェットワイパー形態での抗ウイルス活性の評価、及び、拭き取りばらつきの評価を行った。
【0183】
【表6】
【0184】
表4の結果から、抗ウイルス用組成物が界面活性剤を含む場合、抗ネコカリシスウイルス活性が向上し、且つ、そのばらつきも小さいことが分かった。
【0185】
[実施例36~39の抗ウイルス用組成物]
〔実施例36~39の抗ウイルス用組成物の調製〕
実施例1の抗ウイルス用組成物の調製方法に準じて、表5に示す成分配合及びpHにて、実施例36~39の抗ウイルス用組成物を調製した。なお、添加剤の含有量は、組成物の全質量に対する含有量(質量%)である。
【0186】
〔実施例36~39の抗ウイルス用組成物の評価〕
下記表5に示す抗ウイルス用組成物について、実施例28~33、及び比較例6と同様の方法によりウェットワイパー形態での抗ウイルス活性の評価、及び、拭き取りばらつきの評価を行った。
【0187】
【表7】
【0188】
表5の結果から、抗ウイルス用組成物が4級アンモニウム塩を含む場合、抗ネコカリシスウイルス活性が向上し、且つ、そのばらつきも小さいことが分かった。
【0189】
[実施例40~42の抗ウイルス用組成物]
〔実施例40~42の抗ウイルス用組成物の調製〕
実施例1の抗ウイルス用組成物の調製方法に準じて、表6に示す成分配合及びpHにて、実施例40~42の抗ウイルス用組成物を調製した。
【0190】
〔実施例40~42の抗ウイルス用組成物の評価〕
表6に示す抗ウイルス用組成物について、インフルエンザウイルス、及び一般細菌に対する活性評価を行った。
<抗インフルエンザウイルス活性の評価>
MEM(Minimum Essential Media)培地中でインフルエンザウィルス(Influenza A virus(H3N2):ATCC VR-1679)を培養して得たウイルス液を、上記で作製した組成物に接種した後に、10秒間撹拌し、約25℃で1分間静置した。次に、ウイルス液接種後の組成物の0.1mLを回収し、9.9mLのSCDLP培地(Soybean-Casein Digest Broth with Lecithin & Polysorbate 80)に入れてよく混合し、試験液を得た。次に、寒天培地上で培養したMDCK細胞(犬腎尿細管上皮由来細胞、ATCC CCL-34)に、上記試験液を0.1mL接種し、34℃で1時間吸着させた。次に、MDCK細胞上の試験液を洗い流し、寒天培地を重層して2~3日間培養した。培養後、寒天培地上に形成されたプラーク数を計数し、感染価を算出し、これを「組成物の感染価」とした。また、組成物に代えて滅菌済精製水を用いた以外は上記と同様にして作製した検体についても感染価を算出し、これを「対照の感染価」とした。
抗ウイルス活性値の算出及び評価については、実施例1の抗ネコカリシウイルス活性の評価と同様に行った。
結果を表6に示す。
【0191】
<除菌(大腸菌・黄色ぶどう球菌)>
洗剤・石けん公正取引協議会が定める「住宅用合成洗剤及び石けんの除菌活性試験方法」を用いて試験を実施した。試験に用いた細菌の菌株は、大腸菌:Escherichia coli NBRC 3972、黄色ぶどう球菌:Staphylococcus aureus NBRC 12732とした。抗菌活性値の算出及び評価については、実施例1の抗ネコカリシウイルス活性の評価と同様に行った。
【0192】
【表8】
【0193】
表6の結果から、本発明の抗ウイルス用組成物はインフルエンザウイルス及び細菌に対しても優れた抗菌活性を示すことが分かった。