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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220830BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20220830BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J11/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021127664
(22)【出願日】2021-08-03
(62)【分割の表示】P 2020081943の分割
【原出願日】2016-06-16
(65)【公開番号】P2021178979
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174966(JP,A)
【文献】特開2015-209460(JP,A)
【文献】特開2009-209257(JP,A)
【文献】特開2012-126877(JP,A)
【文献】特開2013-129785(JP,A)
【文献】特開2012-255120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、
(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、
(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部との割合であり、
さらに、共重合可能なモノマー群として、
(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、
を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、
前記(D)帯電防止剤が、ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンと、カチオンとからなり、融点が25℃以上の温度25℃で固体であるイオン性化合物であり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.1~10重量部の割合で必須成分として含み、前記粘着剤組成物が、さらに(E)架橋促進剤と、(F)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなる前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層をフィルムの片面または両面に積層させ、
前記粘着剤層の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることを特徴とする粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及び帯電防止表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、本発明は、帯電防止剤として、ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオン化合物を含有する粘着剤組成物であり、優れた粘着性能及び帯電防止性能を有し、さらには低汚染性にも優れた粘着剤層が得られる粘着剤組成物及びそれを用いた帯電防止表面保護フィルムに関するものである。また、本発明は、被着体が、光学フィルムの表面に積層された、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層に対して、優れた粘着性能及び帯電防止性能を有し、さらには低汚染性にも優れた粘着剤層が得られる粘着剤組成物、及びそれを用いた帯電防止表面保護フィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品を製造、搬送する際には、該光学フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。光学製品である光学フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学フィルムに貼合したまま行うこともある。
【0003】
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0004】
近年、ディスプレイパネルの生産工程において、光学フィルムの上に貼合された表面保護フィルムを、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧により、ディスプレイパネルの表示画面を制御するための、ドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が、発生件数は少ないながらも起きている。
また、ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。このため、表面保護フィルムを、被着体である光学フィルムから剥離する時に、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
【0005】
また、近年、ディスプレイパネルやタッチパネルにおいて、汚れや指紋等の付着を防止するため、表面にフッ素化合物を含む層が設けられるようになっている。
例えば、特許文献1、2では、反射防止フィルムの最表面に設けられる低屈折率層には、低屈折率性を付与するための中空無機粒子と、防汚性を付与するための硬化性フッ素樹脂とが配合された、反射防止フィルム及び偏光板が記載されている。
また、特許文献3には、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、アクリル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物、中空シリカ粒子、からなる低屈折率層を備えた反射防止フィルムが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とし、該被着体に貼付される表面保護フィルムにおいて、フッ素或いはケイ素を含有する化合物として、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、含フッ素アルキル基含有のフッ素系界面活性剤、フッ素或いはケイ素を含有するアクリル系ポリマーが外添されたアクリル系粘着剤層を備える表面保護フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-277059号公報
【文献】特開2008-262187号公報
【文献】特開2015-55659号公報
【文献】特開2011-63712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表面保護フィルムが帯電防止性能を備えた帯電防止表面保護フィルムにおいては、粘着剤層に帯電防止剤を添加することが必須となる。このため、粘着剤層の帯電防止性能を高めるために、粘着剤層に含有させる帯電防止剤の含有量を増加させると、被着体に粘着剤層を介して帯電防止表面保護フィルムを貼合したとき、被着体に付着する帯電防止剤の量が増加し、被着体が汚染する原因となる。従って、帯電防止性能と、被着体への低汚染性との関係はトレードオフの関係にある。すなわち、帯電防止機能を維持したまま、低汚染性を向上させることは困難であった。しかし、近年、ディスプレイパネルの高画質化、高品位化が進み、低汚染性の評価基準が一層厳しくなる状況にあり、厳しい評価方法による判定の結果でも、被着体の表面に対する低汚染性に優れた帯電防止表面保護フィルムが求められている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、優れた粘着性能及び帯電防止性能を有し、さらには低汚染性にも優れた粘着剤層が得られる粘着剤組成物、及びそれを用いた帯電防止表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、粘着剤組成物のアクリル系ポリマーの主成分を構成するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数を特定の範囲に限定し、特定の組み合わせの2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを共重合させた共重合体に、ペンタフルオロフェニル基を有するボレートアニオンを含む帯電防止剤を併用することを、本発明の技術思想としている。この技術思想に基づいた粘着剤組成物が、従来の表面保護フィルム用粘着剤組成物と比べて、優れた粘着性能及び帯電防止性能を有し、さらには低汚染性にも優れた粘着剤層が得られる粘着剤組成物であることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本願発明に係わる粘着剤組成物を用いて形成された帯電防止表面保護フィルムは、被着体が、光学フィルムの表面に積層された、フッ素化合物を含有する防汚層、又は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層に対して、優れた粘着性能及び帯電防止性能を有し、さらには低汚染性にも優れていることから、帯電防止性能と、低汚染性との両立が達成できている。
【0011】
すなわち、本発明は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部との割合であり、かつ前記(a2)のうち、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択した少なくとも1種を50重量部以上の割合で含有してなり、さらに、共重合可能なモノマー群として、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、前記(D)帯電防止剤が、ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンと、カチオンとからなり、融点が25℃以上の温度25℃で固体であるイオン性化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.1~10重量部の割合で必須成分として含み、前記粘着剤組成物が、さらに(E)架橋促進剤と、(F)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなることを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0012】
前記イオン性化合物のカチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、アンモニウムからなるカチオン群から選択した1種であることが好ましい。
【0013】
前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、前記(B)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0014】
前記(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、モノマー中のジエステル分が0.2%以下である、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの中から選択された、少なくとも1種以上を、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、1~50重量部の割合で含有することが好ましい。
【0015】
前記(E)架橋促進剤が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(E)架橋促進剤を0.001~0.5重量部と、前記(F)ケトエノール互変異性体化合物を0.1~300重量部との割合で含有してなり、前記(F)/前記(E)の重量部比率が、70~1000であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を積層させたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0017】
前記粘着剤層の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、且つ、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層に対する剥離帯電圧が±0.3kV以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、偏光板用の帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【0020】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルムを提供する。
【0021】
上記の粘着フィルムにおいて、前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、優れた粘着性能及び帯電防止性能を有し、さらには低汚染性にも優れた粘着剤層が得られる粘着剤組成物、及びそれを用いた帯電防止表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0024】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部との割合であり、かつ前記(a2)のうち、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択した少なくとも1種を50重量部以上の割合で含有してなり、さらに、共重合可能なモノマー群として、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、前記(D)帯電防止剤が、ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンと、カチオンとからなり、融点が25℃以上の温度25℃で固体であるイオン性化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.1~10重量部の割合で必須成分として含み、前記粘着剤組成物が、さらに(E)架橋促進剤と、(F)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなることを特徴とする。
【0025】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーのうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種としては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0026】
前記アクリル系ポリマーにおいて、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部との割合であることが好ましく、前記(a1)の少なくとも1種を3~45重量部と、前記(a2)の少なくとも1種を55~97重量部と、の割合で含有していることがより好ましく、前記(a1)の少なくとも1種を5~45重量部と、前記(a2)の少なくとも1種を55~95重量部と、の割合で含有していることが特に好ましく、前記(a1)の少なくとも1種を8~40重量部と、前記(a2)の少なくとも1種を60~92重量部と、の割合で含有していることが最も好ましい。
【0027】
前記アクリル系ポリマーにおいて、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(a2)のうち、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択した少なくとも1種を50重量部以上の割合で含有していることが好ましく、50~99重量部がより好ましく、55~97重量部が更に好ましく、55~95重量部が特に好ましく、60~92重量部が最も好ましい。
【0028】
(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種としては、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種でもよく、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種でもよい。あるいは、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種との併用でもよい。また、水酸基およびカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種でもよい。
【0029】
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。これらの具体例としては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。これらの(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーは、後述する(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとは異なり、ポリアルキレングリコール鎖を有しない。
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1~20重量部の割合で含有することが好ましく、0.5~15重量部の割合がより好ましく、2.0~14.0重量部の割合が特に好ましく、2.5~12.0重量部の割合が最も好ましい。
【0030】
(B)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(B)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.0~1.0重量部の割合で含有することが好ましく、0.0~0.8重量部の割合がより好ましく、0.0~0.5重量部の割合が特に好ましく、0.0~0.3重量部の割合が最も好ましい。
前記アクリル系ポリマーは、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとして、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを含有しない(割合が0.0重量部)でもよいが、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを含有する場合の割合は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.01~1.0重量部が好ましく、0.05~0.8重量部がより好ましく、0.05~0.5重量部が特に好ましく、0.05~0.3重量部が最も好ましい。
【0031】
(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、前記アクリル系ポリマーに共重合することができる。他の水酸基は、OHのままでもよく、メチルエーテルやエチルエーテル等のアルキルエーテルや、酢酸エステル等の飽和カルボン酸エステル等となっていてもよい。
ポリアルキレングリコールの有するアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の2種以上のポリアルキレングリコールの共重合体であってもよい。ポリアルキレングリコールの共重合体としては、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール等が挙げられ、該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体であってもよい。
(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であることが好ましい。「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子構造に含まれる「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。
(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーにおいて、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であることが好ましい。「モノマー中のジエステル分」とは、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中に含まれるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステルの含有率(重量%)である。
【0032】
(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
より具体的には、ポリエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート;エトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を、1~50重量部の割合で含有することが好ましく、1~40重量部の割合で含有することがより好ましく、1~30重量部の割合で含有することが特に好ましく、2~25重量部の割合で含有することが最も好ましい。
【0033】
(D)帯電防止剤としては、ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンと、カチオンとからなり、融点が25℃以上の温度25℃で固体であるイオン性化合物を必須成分として含む。ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンとしては、(C、(C(C)B、(C(C、(C)(C、等が挙げられる。
【0034】
前記イオン性化合物のカチオンとしては、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、アンモニウム等の含窒素オニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等のオニウムカチオン、メチリウム等のカルボカチオン、リチウム等のアルカリ金属カチオンが挙げられる。中でも、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、アンモニウム等からなるカチオン群から選択した1種が好ましい。これらのカチオンが有機カチオンである場合、有機カチオンは1又は2以上の置換基を有することができる。有機カチオンの置換基としては、アルキル基等の脂肪族基、フェニル基等の芳香族基が挙げられる。
(D)帯電防止剤として、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.1~10重量部の割合で含有することが好ましい。
【0035】
(D)帯電防止剤として使用できる前記イオン性化合物の具体例としては、トリフェニルメチリウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、1-ノニルピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、1-オクチルピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、1-ドデシルピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、リチウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、2-メチル-1-ドデシルピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、等が挙げられる。
【0036】
(E)架橋促進剤は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、前記アクリル系ポリマーと架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、金属キレート化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。本発明では、架橋促進剤として、金属キレート化合物や有機錫化合物が好ましい。
【0037】
金属キレート化合物としては、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。例えば、金属原子Mが1つである金属キレート化合物の一般式を、M(L)(X)で表すとき、m≧1、n≧0である。mが2以上の場合、m個のLは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。nが2以上の場合、n個のXは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。
【0038】
金属原子Mとしては、Fe,Ni,Mn,Cr,V,Ti,Ru,Zn,Al,Zr,Sn等が挙げられる。
多座配位子Lとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン(別名2,4-ペンタンジオン)、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらは、ケトエノール互変異性体化合物であり、多座配位子Lにおいてはエノールが脱プロトンしたエノラート(例えばアセチルアセトネート)であってもよい。
単座配位子Xとしては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2-エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基等のアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。
【0039】
金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4-ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0040】
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシドや、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。従来、ジブチル錫化合物が多く使用されてきたが、近年、有機錫化合物の毒性の問題が指摘され、特にジブチル錫化合物に含まれるトリブチル錫(TBT)は、内分泌攪乱物質としても懸念されている。安全性の観点から、ジオクチル錫化合物等の長鎖アルキル錫化合物が好ましい。具体的な有機錫化合物としては、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられる。暫定的にはSn化合物も使用可能であるが、将来的には、より安全性の高い物質の使用が要求される趨勢に鑑み、Snに比べて安全性の高い、Al,Ti,Fe等の金属キレート化合物を用いることが好ましい。
本発明に係わる粘着剤組成物における(E)架橋促進剤としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
(E)架橋促進剤は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.001~0.5重量部の割合で含まれることが好ましい。
【0041】
(F)ケトエノール互変異性体化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらは、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
(F)ケトエノール互変異性体化合物は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1~300重量部の割合で含まれることが好ましい。
【0042】
(F)ケトエノール互変異性体化合物は、(E)架橋促進剤とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、(E)架橋促進剤に対する(F)ケトエノール互変異性体化合物の割合を適切に設定することが好ましい。粘着剤組成物のポットライフを長くし、貯蔵安定性を向上させるには、(F)/(E)の重量部比率が、70~1000であることが好ましく、70~700であることがより好ましく、80~600であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に粘着剤ポリマーが架橋される。架橋反応をさせるための方法としては、紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良いが、粘着剤組成物が架橋剤を含むことが好ましい。
架橋剤としては、2官能または3官能以上のイソシアネート化合物、2官能または3官能以上のエポキシ化合物、2官能または3官能以上のアクリレート化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。なかでも、ポリイソシアネート化合物(2官能または3官能以上のイソシアネート化合物)が好ましい。
架橋剤は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1~5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0044】
2官能以上のイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物から選択される、少なくとも1種または2種以上であればよい。ポリイソシアネート化合物には、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、非環式系イソシアネート、脂環式系イソシアネートなどの分類があるが、いずれでもよい。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物や、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジメチルジフェニレンジイソシアネート(TOID)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系イソシアネート化合物が挙げられる。
【0045】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
2官能以上のイソシアネート化合物として、3官能イソシアネート化合物のみ、または2官能イソシアネート化合物のみを用いることも可能である。また、3官能イソシアネート化合物と、2官能イソシアネート化合物を併用することも可能である。
【0046】
2官能イソシアネート化合物としては、非環式脂肪族イソシアネート化合物で、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させて生成された化合物も使用可能である。例えば、一般式「O=C=N-X-N=C=O」(ただし、Xは2価基)でジイソシアネート化合物を、一般式「HO-Y-OH」(ただし、Yは2価基)でジオール化合物を表すとき、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させて生成された化合物としては、例えば、次の一般式Zで表される化合物が挙げられる。
【0047】
〔一般式Z〕
O=C=N-X-(NH-CO-O-Y-O-CO-NH-X)-N=C=O
【0048】
ここで、nは0以上の整数である。nが0の場合、一般式Zは、「O=C=N-X-N=C=O」を表す。2官能非環式脂肪族イソシアネート化合物として、一般式Zにおいてnが0の化合物(ジオール化合物に対して未反応のジイソシアネート化合物)を含んでもよいが、nが1以上の整数である化合物を必須成分として含むことが好ましい。2官能非環式脂肪族イソシアネート化合物は、一般式Zにおけるnが異なる、複数の化合物からなる混合物であってもよい。
【0049】
一般式「O=C=N-X-N=C=O」で表されるジイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネートである。Xは、非環式で脂肪族の2価基であることが好ましい。前記脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートからなる化合物群の中から選択された1種又は2種以上からなることが好ましい。
【0050】
一般式「HO-Y-OH」で表されるジオール化合物は、脂肪族ジオールである。Yは、非環式で脂肪族の2価基であることが好ましい。前記ジオール化合物としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールモノヒドロキシピバレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールからなる化合物群の中から選択された1種又は2種以上からなることが好ましい。
【0051】
さらに、その他成分として、本発明に係わる粘着剤組成物には、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤、ポリエーテル変性シロキサン化合物などの公知の添加剤を適宜に配合することが出来る。これらは、単独でもしくは2種以上併せて使用可能である。
【0052】
本発明の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、共重合可能なモノマー群として、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上と、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させることで合成することができる。アクリル系ポリマーの重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、乳化重合等、適宜の重合方法が使用可能である。
【0053】
アクリル系ポリマーの製造時には、粘着剤組成物への水分の混入を低減するため、無水の有機溶剤を用いた溶液重合など、無水条件で重合反応を行うことが好ましい。特に、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、親水性が高いため、水分含有率の低いものを用いることが好ましい。
アクリル系ポリマーの製造に使用される各モノマーは、粘着剤組成物の粘度上昇を避けるためには、架橋剤として機能し得る、多官能性(二官能性以上)のモノマーの量を極力低減することが好ましい。特に、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、対応するジエステル分が二官能性モノマーのジ(メタ)アクリル酸エステルであるため、ジエステル分の少ないものを用いることが好ましい。
【0054】
本発明の粘着剤組成物は、前記アクリル系ポリマーに、架橋剤と、(D)帯電防止剤と、(E)架橋促進剤と、(F)ケトエノール互変異性体化合物と、さらに適宜任意の添加剤を配合することで調製することができる。
【0055】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.05~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることが好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、帯電防止表面保護フィルムを剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0056】
本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率は、95~100%であることが好ましい。このようにゲル分率が高いことにより、低速の剥離速度において、粘着力が過大にならず、前記アクリル系ポリマーからの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、低汚染性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0057】
本発明の粘着剤組成物は、上記の(A)~(F)の各成分がバランスよく配合されているため、優れた帯電防止性能を備え、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、低汚染性にも優れたものとなる。このため、偏光板等の光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム等の用途として好適に使用することができることから、産業上の利用価値が高い。
【0058】
本発明の粘着フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも片面に、本発明の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を積層させてなる。本発明の帯電防止表面保護フィルムは、本発明の粘着フィルムを用いてなり、例えば偏光板等の光学フィルム用、光学部材用の帯電防止表面保護フィルムとして好適に使用することができる。本発明の粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも一方の面に、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている。
【0059】
粘着剤層の被着体である偏光板としては、反射率2%以下に低反射表面処理が施された偏光板(LR偏光板)、反射率2%以下に低反射表面処理が施され、且つ、防眩処理が施された偏光板(AG-LR偏光板)が挙げられる。また、偏光板等の光学フィルム、光学部材は、粘着剤層が貼合される最表面に、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層、フッ素化合物を含有する防汚層などの表面層を有することができる。
フッ素化合物を含有する低屈折率層(表面層)形成用組成物としては、例えばフッ素樹脂組成物が挙げられる。低屈折率層の屈折率を低下させるため、低屈折率層形成用組成物は、中空シリカ粒子等の中空粒子を含有してもよい。低屈折率層の屈折率としては、例えば1.2~1.4が挙げられる。低反射表面処理は、表面の低屈折率層より屈折率が高い高屈折率層を、低屈折率層の下に有してもよい。高屈折率層の屈折率としては、例えば1.5~1.9が挙げられる。低屈折率層と高屈折率層との間に、屈折率が両者の中間程度である、中屈折率層が積層されてもよい。
【0060】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。また、前記粘着剤層を介して、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層(防汚層)に貼合した後に、前記粘着剤層を剥離した時の剥離帯電圧が「±0.3kV以下」であることが好ましい。なお、本発明において、「±0.3kV以下」とは、0~-0.3kV及び0~+0.3kV、すなわち、-0.3~+0.3kVを意味する。表面抵抗率が大きいと、粘着剤層を被着体から剥離する時に、帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
【0061】
粘着剤層の基材フィルムや、粘着面を保護する剥離フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
基材フィルムとなる樹脂フィルムには、粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理が施されてもよい。樹脂フィルムの帯電防止処理としては、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理が挙げられる。樹脂フィルムの防汚処理としては、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理が挙げられる。
【実施例
【0062】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
【0063】
<粘着剤組成物の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、メチルアクリレート15重量部、2-エチルヘキシルアクリレート85重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート15.0重量部、アクリル酸0.1重量部、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(n=12)20重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液に対して、アセチルアセトン9.0重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)を2.0重量部、チタニウムトリスアセチルアセトネート0.1重量部、トリフェニルメチリウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩0.9重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0064】
[実施例2~6及び比較例1~3]
実施例1の粘着剤組成物の組成を各々、表1及び表2の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の粘着剤組成物を得た。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1及び表2は、いずれも(a1)群と(a2)群との合計を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。また、表1及び表2に用いた各成分の略記号の化合物名を、表3及び表4に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは東ソー株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140N、D-127N、D-110Nは三井化学株式会社の商品名である。
【0068】
表3の(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーに関し、「n」の数値は、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数である。実施例1~6に使用されたC-1~C-5では、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、モノマー中のジエステル分が0.2%以下である。C-6のモノマー中のジエステル分は0.8%である。
【0069】
表4の(D)帯電防止剤に関し、実施例1~6に使用されたD-1~D-5は、融点が25℃以上の、温度25℃で固体であるイオン性化合物である。D-6は、融点が15℃の、温度25℃では液体であるイオン性化合物である。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
<2官能イソシアネート化合物の合成>
合成例1,2の、2官能イソシアネート化合物は、下記の方法で合成した。表5及び表6に示すように、ジイソシアネートとジオール化合物を、モル比:NCO/OH=16の比率で混合し、120℃で3時間反応させ、その後、薄膜蒸発装置を使用して減圧下で未反応のジイソシアネートを除去し、目的の2官能イソシアネート化合物を得た。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
<帯電防止表面保護フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1の粘着剤組成物を、シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着シートを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
上記の実施例1の帯電防止表面保護フィルムと同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0076】
<試験方法及び評価>
実施例1~6及び比較例1~3における帯電防止表面保護フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた帯電防止表面保護フィルムを、粘着剤層を介して偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力、剥離帯電圧、及び低汚染性の測定試料とした。被着体の偏光板は、LR偏光板又はAG-LR偏光板であり、且つ、低反射表面処理が施され、表面にフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層を有する。
【0077】
<粘着力>
上記で得られた測定試料(25mm幅の帯電防止表面保護フィルムを、前記被着体の偏光板の表面に貼り合わせたもの)を、180°方向に引張試験機を用いて低速の剥離速度(0.3m/min)及び高速の剥離速度(30m/min)において剥がして、測定した剥離強度を粘着力(N/25mm)とした。
【0078】
<表面抵抗率>
エージングした後、前記被着体の偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0079】
<剥離帯電圧>
上記で得られた測定試料を、30m/minの引張速度で180°剥離した際に、前記被着体の偏光板が帯電して発生する電圧(帯電圧)を、高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧(kV)とした。
【0080】
<低汚染性>
ガラス板の片面上に、前記被着体の偏光板を、貼合機を用いて、両面粘着テープ等の粘着剤層を介して貼合した。その後、前記被着体の偏光板の表面に、帯電防止表面保護フィルムの粘着剤層を、貼合機を用いて貼合した。23℃、50%RHの環境下で、3日間および30日間の期間に渡って保管した後に、帯電防止表面保護フィルムを剥がし、前記被着体の偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察した。
低汚染性は、前記被着体の偏光板の表面に対して3日間保管および30日間保管のいずれにおいても汚染なしの場合を「○」、3日間保管および30日間保管のいずれかにおいて、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0081】
表7に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。「偏光板の表面処理」は、前記被着体の偏光板の種類(LR処理又はAG-LR処理)を示す。
【0082】
【表7】
【0083】
実施例1~6の帯電防止表面保護フィルムは、LR処理又はAG-LR処理が施され、フッ素化合物を含有する低屈折率層を表面に有する、前記被着体の偏光板の被着体に対して、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.05~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であり、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0.3kV以下であり、3日間保管および30日間保管における低汚染性にも優れていた。
すなわち、本発明の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に対する優れた粘着性能及び帯電防止性能を有し、さらには低汚染性にも優れていることから、帯電防止性能と、低汚染性との両立が達成できている。
【0084】
また、アクリル系ポリマーが、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有せず、(D)帯電防止剤が、融点が15℃の、温度25℃で液体であるイオン性化合物である比較例1の帯電防止表面保護フィルムは、剥離帯電圧が高く、低汚染性がやや劣っていた。
また、アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを80重量部の割合で含有し、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの20重量部より多く含有し、(D)帯電防止剤が、融点が15℃の、温度25℃で液体であるイオン性化合物である比較例2の帯電防止表面保護フィルムは、粘着力が過大であり、表面抵抗率が高く、剥離帯電圧が高く、且つ低汚染性が劣っていた。
また、アクリル系ポリマーが(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有せず、粘着剤組成物が(D)帯電防止剤を含有していない比較例3の帯電防止表面保護フィルムは、表面抵抗率が高く、剥離帯電圧が高く、且つ低汚染性が劣っていた。
このように、比較例1~3の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に対する優れた低汚染性と、優れた帯電防止性能とを両立することができなかった。