(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】EUV範囲のためのフォトリソグラフィマスクの要素を検査する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20220831BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20220831BHJP
G03F 1/72 20120101ALI20220831BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/24
G03F1/72
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017237347
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】10 2016 224 690.9
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】イェルク フレデリク ブルームリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ルオフ
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-294488(JP,A)
【文献】特表2002-532738(JP,A)
【文献】特開2009-010373(JP,A)
【文献】特表2013-531375(JP,A)
【文献】特表2014-521230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00~1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスク(500、600)の少なくとも1つの要素(520、620)を検査する
ための方法であって、
a.フォトリソグラフィマスク(500、600)の少なくとも1つの欠陥(520)を含む前記少なくとも1つの要素(520、620)を前記EUV波長範囲内の光を用いて検査する段階であって、b.該少なくとも1つの欠陥(520)を検査する段階が、
前記フォトリソグラフィマスク(500)
により前記EUV光が反射された後の前記EUV波長範囲内の
光の位相の制御
された変化を含
み、
前記EUV波長範囲内の光の位相の前記制御された変化は、前記フォトリソグラフィマスク(500)による光の反射の後のビーム経路内への位相シフトフィルム(1000)の導入を含む、検査する段階と、
c.前記EUV波長範囲内の光による照射時の前記少なくとも1つの要素(520、620)の挙動を決定する段階と、
を含む
、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの要素(520、620)の
挙動を決定する段階は、前記EUV波長範囲内の光による前記照射時に該少なくとも1つの要素(520、620)によって引き起こされる位相変化及び/又は振幅変化を決定する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーム経路内への位相シフトフィルム(1000)の
導入は、異なる厚みを有する位相シフトフィルムを用いて少なくとも2回の測定を実施する
ことを含む、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記振幅変化及び前記位相変化を決定する段階は、前記少なくとも2回の測定からのデータを用いて再帰位相復元アルゴリズムを実施する段階を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの欠陥(520)を検査する段階は、
a.前記フォトリソグラフィマスク(500)上に入射する前記EUV波長範囲内の光の異なる入射条件の下で前記少なくとも1つの欠陥(520)の少なくとも2回の測定を実施する段階と、
b.前記少なくとも2回の測定のデータに再帰位相復元アルゴリズムを適用する段階と、
を含む、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階a.は、少なくとも部分的にコヒーレントな光源を用いて又は前記フォトリソグラフィマスク(500)の上流のビーム経路内に単極絞り(1120)を挿入して異なる角度で前記欠陥(520)の少なくとも2回の測定を実施する段階と、インコヒーレント光源を用いて異なる角度で該欠陥(520)の少なくとも2回の測定を実施する段階とを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの欠陥(520)を検査する段階は、
a.異なる焦点位置を用いて前記少なくとも1つの欠陥(520)の少なくとも2回の測定を実施する段階と、
b.前記少なくとも2回の測定のデータに再帰位相復元アルゴリズムを適用する段階と、
を含む、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記再帰位相復元アルゴリズムは、反復フーリエptychographicアルゴリズム、逆フーリエ変換アルゴリズム、Gerchberg-Saxtonアルゴリズム、誤差低減アルゴリズム、勾配法、及び
ハイブリッド入力-出力アルゴリズムを含む群からの少なくとも1つのアルゴリズムを含む、請求項
4、請求項
5、又は請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
a.前記決定された位相変化及び前記決定された振幅変化から位相誤差及び振幅誤差を確定する段階と、
b.前記少なくとも1つの欠陥(520)に対する修復概念を前記検査された欠陥(520)の前記確定された振幅誤差及び前記確定された位相誤差から確定する段階と、
を更に含む、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
a.前記少なくとも1つの欠陥(520)のデータを解析する段階と、
b.前記検査された欠陥(520)を補償するために前記フォトリソグラフィマスク(500)上に位相シフト構造(1410)を与える段階と、
を更に含む、請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
修復概念を解析する段階、及び/又は測定データから修復概念を確定する段階を更に含む、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記位相シフト構造(1410)を与える段階は、前記検査された欠陥(520)の位相誤差を補償するために該検査された欠陥(520)上に該位相シフト構造(1410)を付加する段階を含む、請求項
10又は請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記検査された欠陥(520)の振幅誤差を補償するために前記フォトリソグラフィマスク(500)の少なくとも1つのパターン要素(1470)を修正する段階を更に含む、請求項
10から請求項
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記検査された欠陥(520)の領域内に一定厚みの位相シフト層(1420)を付加する段階を更に含み、該一定厚みの位相シフト層(1420)の該厚みは、欠陥のない前記フォトリソグラフィマスクの部分に対する前記補償された欠陥の位相差が補償されるように選択される、請求項
10から請求項
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータシステムによって実行されたときに請求項1から請求項
14のいずれか1項に記載の方法段階を実施するように該コンピュータシステムを促す命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項16】
極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスク(500、600)の少なくとも1つの要素(520、620)を検査するための装置(1710)であって、該装置(1700)は、
a.フォトリソグラフィマスク(500、600)の少なくとも1つの欠陥(520)を含む前記少なくとも1つの要素(520、620)を前記EUV波長範囲内の光を用いて検査するための手段であって、b.該少なくとも1つの欠陥(520)の検査が、
前記フォトリソグラフィマスク(500)
により前記EUV光が反射された後の前記EUV波長範囲内の
光の位相の制御
された変化を含
み、
前記EUV波長範囲内の光の位相の前記制御された変化は、前記フォトリソグラフィマスク(500)による光の反射の後のビーム経路内への位相シフトフィルム(1000)の導入を含む、検査するための手段と、
c.前記EUV波長範囲内の光による照射時の前記少なくとも1つの要素(520、620)の挙動を決定するための手段と、
を含む、装置(1710)。
【請求項17】
a.前記少なくとも1つの欠陥(520)のデータを解析するための手段と、
b.前記検査された欠陥(520)を補償するために前記フォトリソグラフィマスク(500)上に位相シフト構造(1410)を与えるための手段と、
を更に含む、請求項
16に記載の装置(1700)。
【請求項18】
請求項1から請求項
14に記載の方法段階を実施するように具現化される、請求項
16又は請求項
17に記載の装置(1600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、2016年12月12日にドイツ特許商標庁に出願された「Verfahren und Vorrichtung zum Untersuchen eines Elements einer photolithographischen Maske fur den EUV-Bereich」という名称のドイツ特許出願DE 10 2016 224 690.9の利益を主張するものである。この出願の内容全体は、これにより引用によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの要素を検査する方法及び装置に関する。更に、本発明は、EUV波長範囲のためのマスクの欠陥を補償する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業において高まる集積密度の結果として、フォトリソグラフィマスクは、益々小さい構造をウェーハ上に結像しなければならない。この傾向を考慮するために、リソグラフィ装置の露光波長は常に短い波長に移されている。今後のリソグラフィシステムは、恐らく極紫外(EUV)範囲(必ずというわけではないが好ましくは、6nmから15nmの範囲)の波長で作動することになる。EUV波長範囲は、将来のリソグラフィシステムのビーム経路内の光学要素の精度に対して莫大な要求を課す。光学要素及びしたがってフォトリソグラフィマスクも同じくほぼ確かに反射光学要素であることになる。
【0004】
EUVミラーは、熱膨張を殆ど示さない基板を含む。例えば、シリコン(Si)及びモリブデン(Mo)又は他の適切な材料を含む二重層を約20個から約80個含む多層構造が基板に付加され、これらの層は誘電ミラーとして作用する。欧州特許文書EP 1 829 052 B1は、EUV波長範囲のためのそのような反射多層システムの潜在的例示的実施形態を開示している。
【0005】
EUVフォトリソグラフィマスク又は簡潔にEUVマスクは、これに加えて、吸収パターン要素で作られた吸収体構造を多層構造上に有する。吸収体構造のパターン要素によって覆われたEUVマスクの領域内では、入射EUV光子は、吸収され、又は少なくとも他の領域内におけるように反射されることはない。
【0006】
EUVマスク又は一般的にフォトマスクは、投影テンプレートであり、その最も重要な用途は、半導体要素、特に集積回路を生成するためのフォトリソグラフィである。マスクの誤差は、各露光中に各ウェーハ上に再生されると考えられるので、フォトマスクは殆ど誤差不在である必要がある。したがって、EUV範囲のための光学要素、特にフォトマスクの材料に対して、平面品質、清浄度、温度安定性、反射不変性、及び誤差の不在に関して最も高い要求が課せられる。
【0007】
フォトマスクの場合に、フォトマスク上の吸収体構造のパターン要素は、半導体要素の設計によって予め決められた構造要素をウェーハ上のフォトレジスト内に正確に結像することが重要である。吸収体パターンによってフォトレジスト内に生成される構造要素の意図する寸法を臨界寸法(CD)と呼ぶ。この変数又はこの変数の変化は、フォトマスクの品質に対して非常に重要な特性である。フォトマスクに関する誤差の不在は、この関連において、マスクが化学線波長による露光時に意図する寸法をウェーハ上に予め決められた誤差間隔内で結像すること、すなわち、CDが予め決められた誤差間隔内でのみ変化することができることを意味する。この条件が満たされる場合に、フォトマスクは、ウェーハ上に可視欠陥又はプリント可能欠陥を持たない。
【0008】
現時点では、プリント可能欠陥又は誤差が不在のEUV波長範囲のためのフォトマスクのための基板及び/又は多層構造を生成することは可能ではない。この出願で考察する欠陥は、多層構造を通して伝播する可能性があるマスク基板の小さい局所不均等性(予め決められた厚みから<10nmの偏差)に発生源を有する場合がある。更に、多層構造内の局所欠陥、又は基板上又は多層構造内の粒子は、ミラーとしての多層構造の機能の障害の原因である。下記ではこれらの欠陥を当業技術の慣例に従って埋め込み欠陥又は多層構造の欠陥と呼ぶ。現在、多層構造内の欠陥によって引き起こされるEUVマスクのプリント可能欠陥の影響を回避するか又は少なくとも低減するための様々な概念が存在する。
【0009】
よって、マスクブランク、すなわち、付加された多層構造を有する基板の欠陥を検査した後に、吸収体構造のパターン要素は、吸収体パターンの要素がプリント可能欠陥を実質的に覆うようにマスクブランク上に配置することができる。L.Peng、P.Hu、M.Satake、V.Tolani、D.Peng、Y.Li、及びD.Chen著の論文「吸収体パターンの修正によるEUV多層欠陥補償(MDC)-理論からウェーハ検証まで(EUV multilayer defect compensation(MDC)by absorber pattern modification-From theoryからwafer validation)」、「Photomask Technology 2011」、W.Maurer、F.E.Abboud編集、SPIE会報、第8166号、81662E-1~81662E-15は、欠陥罹災マスクブランク上の吸収体パターンの可能な限り最良の配置を非常に迅速に決定することを可能にするシミュレーションツールを記載している。しかし、ある欠陥密度よりも大きいと、吸収体パターン要素の構造に基づいてこの概念は急速に限界に達する。
【0010】
埋め込み欠陥を是正するための明白な手順は、第1の段階で欠陥の上方の多層構造を除去し、第2の段階で露出した欠陥を除去し、次に、最終段階で除去した多層構造の部分を再付加することであると考えられる。実際には、この工程は、多層構造内の多数の層、モリブデン(Mo)層では約3nm、シリコン(Si)層では約4nmというその薄い層厚、及び層又はその界面の平面特性に対する高い要求に起因して実施することができない。
【0011】
代わりに、US 6 235 434 B1は、EUVマスクの吸収体構造のパターン要素を埋め込み欠陥の近くで修正することによって埋め込み欠陥の振幅部分を補償する方法を開示している。下記では、この工程を「補償的修復」と呼ぶ。
図1は、その作用モードを概略で示している。埋め込み欠陥の局所擾乱面によって引き起こされる反射率の局所低下は、欠陥の隣接パターン要素の吸収体材料の各部分を除去することによって補償される。
【0012】
上述の特許文書は、補償するように意図されるのは埋め込み欠陥の幾何学的寸法ではなく、その同等寸法であると記載している。埋め込み欠陥の同等寸法は、隣接パターン要素に対するその空間的向きに依存し、かつ欠陥が最も近いパターン要素から遠ざかる程大きくなる。位相欠陥は、振幅欠陥よりも小さい同等面積を有する。欠陥誘起反射擾乱の位置及び同等寸法は、例えば、リソグラフィ印刷のような特徴付け技術によって決定することができる。
【0013】
一例として、補償的修復は、L.Pang、C.Clifford、D.Peng、Y.Li、D.Chen、M.Satake、V.Tolani、及びL.He著の文献「吸収体パターン修正による任意レイアウト内のEUV多層欠陥の補償(Compensation for EUV multilayer defects within arbitrary layouts by absorber pattern modification)」、「Extreme Ultraviolet Lithography」、B.M.La Fontaine、P.P.Naulleau編集、SPIE会報、第7969号、79691E-1~79691E-14にも同じく記載されている。欠陥補償に必要とされるマスクブランクの局所的な窪み又は隆起を補償するための吸収体構造のパターン要素の修正は、シミュレーションツールを用いて決定される。
【0014】
WO 00/34828は、欠陥の近くにあるパターン要素の変化に基づくEUVマスクの振幅欠陥及び位相欠陥の修復を記載している。
【0015】
US特許文書番号8 739 098は、EUVマスクの埋め込み欠陥の寸法を決定するためのシミュレーション方法及び埋め込み欠陥を修復するための「補償的修復」の適用を記載している。
【0016】
WO 2016/037 851は、第1の部類の欠陥が吸収体構造のパターン要素によって覆われ、第2の部類の欠陥が上述の補償的修復によって少なくとも低減される2つの部類へのマスクブランクの欠陥の再分割を提案している。
【0017】
M.Waiblinger、R.Jonckheere、T.Bret、D.van den Heuvel、C.Baur and G.Baralia著の論文「EUVマスク修復への扉を開く技術(The door opener for EUV mask repair)」、「Photomask and Next Generation Lithography Mask Technology XIX」、K.Kato編集、SPIE会報、第84441号、84410F1~84410F-10、2012年は、吸収パターン要素の欠陥と同じくEUVマスクの多層構造の欠陥との両方の修復を記載しており、後者の欠陥は、補償的修復技術を用いて修復される。
【0018】
更に、WO 2011/161 243は、電子ビームを用いてEUVマスクの多層構造内に局所変化を生成することによるEUVマスクの欠陥の補償を記載している。
【0019】
更に、WO 2013/010 976は、紫外放射線源と走査プローブ顕微鏡と走査粒子顕微鏡との組合せ使用によって欠陥の場所が決定されるEUVマスクの埋め込み欠陥の補正を記載している。
【0020】
更に、更なる別の方法は、EUVマスクの欠陥を補償するためにフォトマスク又はマスクブランクの基板材料の局所圧縮に向けて超短レーザパルスを使用する。WO 2015/144 700は、基板の後側、すなわち、多層構造と反対側に位置するマスク基板の側を通じたEUVマスクの基板内へのピクセルの導入を記載している。
【0021】
最後に、論文「ナノ機械加工を用いたスルーフォーカスEUV多層欠陥修復(Through-focus EUV multilayer defect repair with nanomachining)」、「Extreme Ultraviolet(EUV) Lithography IV」、P.P.Naulleau編集、SPIE会報、第8679号、86791I-1~86791I-4において、G.McIntyre、E.Gallagher、T.Robinson、A.C.Smith、M.Lawliss、J.LeClaire、R.Bozak、R.White、及びM.Archulettaは、欠陥の一部の局所除去(局所隆起の場合に)又は局所窪みの形態で存在する欠陥上への材料の局所堆積による局所的な隆起又は窪みによって誘起される多層構造の位相擾乱の補償により、これらの欠陥の位相誤差を補償することが可能であることを記載している。
【0022】
多層構造の欠陥は、現時点ではEUV波長範囲内のフォトリソグラフィの使用に対する主な障害を代表するものである。欠陥を補正する又は欠陥を低減するための多くの採用される方法にも関わらず、EUVマスクの埋め込み欠陥又はその多層構造の欠陥を要求される品質で修復することは多くの場合に依然としてできていない。
【0023】
更に、EUVマスクを解析するために、EUVマスクの挙動又は作動挙動の信頼性の高い決定を容易にする測定ツールが、費用を費やしかつ高価なウェーハの露光を実施する必要なく利用可能であることが非常に重要である。この点は、特に、EUVマスクの更なる開発という背景に対して関連している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】欧州特許第1829052号明細書
【文献】米国特許第6235434号明細書
【文献】国際公開第00/34828号
【文献】米国特許第号8739098号明細書
【文献】国際公開第2016/037851号
【文献】国際公開第2011/161243号
【文献】国際公開第2013/010976号
【文献】国際公開第2015/144700号
【非特許文献】
【0025】
【文献】L.Peng、P.Hu、M.Satake、V.Tolani、D.Peng、Y.Li、及びD.Chen著「吸収体パターンの修正によるEUV多層欠陥補償(MDC)-理論からウェーハ検証まで(EUV multilayer defect compensation(MDC)by absorber pattern modification-From theoryからwafer validation)」、「Photomask Technology 2011」、W.Maurer、F.E.Abboud編集、SPIE会報、第8166号、81662E-1~81662E-15
【文献】L.Pang、C.Clifford、D.Peng、Y.Li、D.Chen、M.Satake、V.Tolani、及びL.He著「吸収体パターン修正による任意レイアウト内のEUV多層欠陥の補償(Compensation for EUV multilayer defects within arbitrary layouts by absorber pattern modification)」、「Extreme Ultraviolet Lithography」、B.M.La Fontaine、P.P.Naulleau編集、SPIE会報、第7969号、79691E-1~79691E-14
【文献】M.Waiblinger、R.Jonckheere、T.Bret、D.van den Heuvel、C.Baur and G.Baralia著「EUVマスク修復への扉を開く技術(The door opener for EUV mask repair)」、「Photomask and Next Generation Lithography Mask Technology XIX」、K.Kato編集、SPIE会報、第84441号、84410F1~84410F-10、2012年
【文献】G.McIntyre、E.Gallagher、T.Robinson、A.C.Smith、M.Lawliss、J.LeClaire、R.Bozak、R.White、及びM.Archuletta著「ナノ機械加工を用いたスルーフォーカスEUV多層欠陥修復(Through-focus EUV multilayer defect repair with nanomachining)」、「Extreme Ultraviolet(EUV) Lithography IV」、P.P.Naulleau編集、SPIE会報、第8679号、86791I-1~86791I-4
【文献】表(http://henke.lbl.gov.optical.constants/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、したがって、EUVマスクの検査を改善し、それによって同じくEUVマスクの欠陥の補償の改善を容易にする方法及び装置を指定する課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の一態様により、この課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。実施形態では、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素を検査する方法は、(a)少なくとも1つの要素をEUV波長範囲内の光を用いて検査する段階と、(b)EUV波長範囲の光による照射時の少なくとも1つの要素の挙動を決定する段階とを含む。
【0028】
EUV波長範囲のためのフォトリソグラフィマスク(又は簡潔にEUVマスク)の要素を検査するために、本発明による方法は、EUVマスクの化学線波長の領域にある放射線を使用する。その結果、化学線波長に向けて設計されたEUVマスクの構造要素を直接に測定し、かつ予め決められた意図する寸法からの偏差を実験によって直接に決定することが可能である。
【0029】
少なくとも1つの要素は、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの臨界点、及びフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの構成要素及び/又は構成要素の少なくとも一部である群からの少なくとも1つの部材を含むことができる。
【0030】
本発明による方法は、EUVマスクの欠陥を解析するのに使用することができる。この出願において主として説明する埋め込み欠陥の解析に加えて、EUVマスクの全ての更に別の欠陥を検査することも可能である。これは、特に、吸収体構造の欠陥又は位相シフト構造の欠陥の実験的決定に適用される。
【0031】
EUVマスクの欠陥を検査することに加えて、本発明による方法は、EUV波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの臨界点を検査するのに使用することができる。欠陥は、欠陥閾値よりも大きいパラメータ値を有し、それに対して臨界点は、欠陥閾値をごく僅かに下回るパラメータ値を有する。したがって、フォトリソグラフィマスクの臨界点は、仕様を満たすパラメータを有する点であるが、臨界点の少なくとも1つのパラメータは、対応する欠陥閾値に近い。下記で詳細に説明するように、本発明による方法は、欠陥の定量的決定を可能にする。
【0032】
更に、本発明による方法は、臨界点を高い信頼性で解析するための新しい可能性を切り開くものである。測定データは、その後のシミュレーションのための初期値として格納することができる。その結果、本発明による方法は、全体論的リソグラフィの方向への前進を容易にする。この目標は、当業技術において「ホリスティック・リソ」というキーワードで公知である。
【0033】
更に、EUV波長範囲の光によるEUVマスクの露光は、欠陥不在EUVマスクの実験的検査を容易にする。一例として、吸収体構造の要素の正確な配置を検査することができる。したがって、本発明による方法は、様々なタイプのEUVマスクの更なる開発のための測定ツールとして適している。
【0034】
最後に、本発明による方法は、EUVマスクの検査に限定されない。EUVマスクの代わりに、本方法をEUV波長範囲のためのミラーを解析するのに使用することができる。
【0035】
少なくとも1つの要素の挙動を決定する段階は、EUV波長範囲の光による照射時に少なくとも1つの要素によって引き起こされる位相変化及び/又は振幅変化を決定する段階を含むことができる。
【0036】
例えば、(将来の)EUVマスクの位相シフト要素の機能を解析するためには、位相シフト要素によって引き起こされる位相変化を解析するだけで十分である場合がある。しかし、臨界点又は欠陥、特に、多層構造の欠陥を解析するためには、通常はこれらの要素の位相変化と振幅変化の両方を考慮しなければならない。これは、埋め込み欠陥の例を用いて以下に説明する。
【0037】
通常、埋め込み欠陥は、基板面で又は多層構造の局所擾乱によって生成される。これらの欠陥は、一般的に多層構造を通して伝播する。これは、かなりの部分が多層構造の面の傾きの変化によって引き起こされる低減された強度又は振幅と、主として更に下方に位置する多層構造の層のトポグラフィの変化によって引き起こされる修正された位相前線との両方を生じる埋め込み欠陥をもたらす。その結果、多層構造のこれらの自然発生欠陥は、一般的に欠陥位置に入射する光の振幅及び位相に影響を及ぼし、したがって、同時にこの点によって反射される光の振幅及び位相にも影響を及ぼす。しかし、位相と振幅に対する埋め込み欠陥の影響の重みは欠陥毎に有意に異なる。したがって、検査された欠陥の位相誤差と振幅誤差とを個々に決定することは、埋め込み欠陥の理想的な修復に対する前提条件である。
【0038】
本発明による方法は、化学線波長でのフォトリソグラフィマスクの埋め込み欠陥の影響を測定から間接的に収集することはしない。間接収集の代わりに、本発明による方法は、欠陥を化学線波長で測定する。その結果、対応する露光装置内で発生する欠陥が直接方式で検査される。これらの測定データに基づいて、第2の段階の範囲で各検査される埋め込み欠陥に関して振幅成分と位相成分が個々に決定される。
【0039】
少なくとも1つの欠陥を検査する段階は、フォトリソグラフィマスクによる反射の下流でのEUV波長範囲の光の位相の制御式修正(controlled modification)を含むことができる。
【0040】
欠陥にわたってEUV放射線の位相を定められた方式で修正し、定められた方式で修正された位相角を用いて欠陥の複数回の測定を実施することによってデータ又は測定データが得られ、これらのデータ又は測定データの解析は、検査された欠陥の位相成分と振幅成分の両方の確定を可能にする。
【0041】
EUV波長範囲の光の位相の制御式修正は、フォトリソグラフィマスクによるEUV波長範囲の光の反射の下流のビーム経路内への位相シフトフィルムの導入を含むことができる。
【0042】
ビーム経路に位相シフトフィルムを導入する段階は、異なる厚みを有する位相シフトフィルムを用いて少なくとも2回の測定を実施する段階を含むことができる。
【0043】
振幅誤差及び位相誤差を決定する段階は、少なくとも2回の測定からのデータを用いて再帰位相復元アルゴリズム(recursive phase reconstruction algorithm)を実施する段階を含むことができる。
【0044】
変化する厚みを有する位相シフトフィルムと保持又は変位装置とに加えて、この実施形態は、EUV波長範囲内の光を用いてEUVマスク上の欠陥を検査するための装置のための追加構成要素を必要としない。
【0045】
定められた方式で変更された位相角を用いた欠陥の2又は3以上の測定の測定データは、再帰位相復元アルゴリズムを実施するための入力変数として機能する。空間領域と周波数領域の間の反復伝播により、欠陥の2又は3以上の測定のデータから欠陥の位相成分と振幅成分の両方を定量的に決定することができる。化学線波長での測定に基づく欠陥の定量的な振幅及び位相の復元により、検査された欠陥の可能な限り最適な修復概念に対する基礎が設定される。
【0046】
位相シフトフィルムの材料は、EUV波長範囲で<0.90、好ましくは<0.85、より好ましくは<0.80、最も好ましくは<0.75である屈折率の実数部を有することができる。フィルムは、ジルコニウムを含むことができ、及び/又はフォトリソグラフィマスクの下流の第1の瞳平面に配置することができる。フィルムの厚みは、1nmから1000nmまで、好ましくは、2nmから500nmまで、より好ましくは、4nmから250nmまで、最も好ましくは、5nmから100nmの範囲で変えることができる。
【0047】
少なくとも1つの要素を検査する段階は、(a)フォトリソグラフィマスク上に入射するEUV波長範囲の光の異なる入射条件下で欠陥の少なくとも2回の測定を実施する段階と、(b)少なくとも2回の測定のデータに再帰位相復元アルゴリズムを適用する段階とを含むことができる。
【0048】
異なる角度でのEUV放射線を用いた欠陥の重ね合わせ測定の結果として、再帰位相復元アルゴリズムを用いて位相問題を解くのに必要とされる追加情報が生成される。このようにして復元される埋め込み欠陥の位相に加えて、検査された欠陥の画像を改善されたコントラストを用いて復元することが可能である。この画像を欠陥の測定画像に対して比較することにより、画像ノイズ及び/又は測定画像内では消失する高周波画像情報を視認可能にすることができる。
【0049】
異なる入射条件を用いて欠陥の少なくとも2回の測定を実施する段階は、異なる角度での欠陥の少なくとも2回の測定を少なくとも部分的にコヒーレントな光源を用いて実施する段階、又はフォトリソグラフィマスクの上流のビーム経路に単極絞りを挿入し、異なる角度での欠陥の少なくとも2回の測定をインコヒーレント光源を用いて実施する段階を含むことができる。
【0050】
その結果、EUVマスクの埋め込み欠陥を解析するために、EUV波長範囲のためのコヒーレント光源とインコヒーレント光源の両方を使用することができる。
【0051】
単極絞りは、0.01から0.6まで、好ましくは0.02から0.5まで、より好ましくは0.04から0.4まで、最も好ましくは0.05から0.2の範囲のシグマを含むことができる。ここで、シグマ(σ)は、装置の最大開口に対する開口の分率を表している。
【0052】
現時点で好ましい測定システムは、インコヒーレント光源を採用している。通例では、これらの測定装置内に必要な単極絞りが存在する。その結果、単極絞りをピボット回転させ、任意的に、絞り上に入射するEUVビームをピボット回転させるためのユニットが、装置ベースの費用に関して残る。
【0053】
少なくとも2つの画像の異なる角度は、0°から25°まで,好ましくは0°から20°まで、より好ましくは0°から15°まで、最も好ましくは0°から10°までの角度範囲を含むことができる。極角、すなわち、フォトリソグラフィマスクの面に対する垂線に対する角度が、EUVマスクの欠陥の様々な撮像を実施する角度範囲を決定する。
【0054】
少なくとも1つの欠陥を検査する段階は、(a)少なくとも1つの欠陥の少なくとも2回の測定を異なる焦点位置で実施する段階と、(b)少なくとも2回の測定のデータに再帰位相復元アルゴリズムを適用する段階とを含むことができる。
【0055】
再帰位相復元アルゴリズムに対する入力データは、異なるが既知である少なくとも2つのEUV放射線の焦点位置の光学強度を測定することによって生成され、これらの入力データは、測定される欠陥の位相成分と振幅成分の両方を定量的に確定するのに十分である。この実施形態は、EUV波長範囲でフォトリソグラフィマスクの欠陥を検査するのに使用される測定装置の装置ベースの変更を必要としないので有利である。その結果、この実施形態は、その後の計算段階しか必要としない。
【0056】
異なる焦点位置は、フォトリソグラフィマスクの面上の焦点位置に関して±200nm、好ましくは、±400nm、より好ましくは、±800nm、最も好ましくは、±2000nmの焦点範囲を含むことができる。
【0057】
少なくとも2回の測定は、2回から500回まで、好ましくは、3回から200回まで、より好ましくは、4回から100回まで、最も好ましくは、5回から20回までの測定を含むことができる。
【0058】
再帰位相復元アルゴリズムは、反復フーリエptychographicアルゴリズム、逆フーリエ変換アルゴリズム、Gerchberg-Saxtonアルゴリズム、誤差低減アルゴリズム、勾配法、及びハイブリッド入力-出力アルゴリズム(hybrid input-output algorithm)を含む群からの少なくとも1つのアルゴリズムを含むことができる。
【0059】
対応するアルゴリズムの選択に関する判断基準は、それぞれの入力データに対するこのアルゴリズムの収束挙動にある。
【0060】
欠陥に関して上述した定義した方法の態様は、EUV波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの臨界点を検査するのに使用することができる。
【0061】
上述のように、本発明による方法は、欠陥の位相成分及び振幅成分の定量的決定を可能にする。したがって、本発明による方法は、臨界点を解析することができる。フォトリソグラフィマスクの臨界点は、仕様を満たすパラメータを有する点であるが、臨界点の少なくとも1つのパラメータは、対応する欠陥閾値に近い。本発明による方法は、その結果、マスク上の各臨界点を測定し、その位相及び振幅の情報を決定し、これらの情報をその後のシミュレーションに対する初期値として格納することを可能にする。その結果、本発明による方法は、全体論的リソグラフィの方向への前進を容易にする。既に上述のように、この目標は、当業技術において「ホリスティック・リソ」というキーワードで公知である。
【0062】
少なくとも1つの臨界点のパラメータ値は、欠陥閾値の≧70%、好ましくは≧80%、より好ましくは≧90%、最も好ましくは≧95%に達する可能性がある。
【0063】
本方法は、(a)決定された位相変化及び決定された振幅変化から位相誤差及び振幅誤差を確定する段階と、(b)検査された欠陥の決定された振幅誤差及び決定された位相誤差から少なくとも1つの欠陥に対する修復概念を確定する段階とを更に含むことができる。
【0064】
解析された欠陥の定量的な位相成分及び振幅成分に基づいて、検査された欠陥に対して可能な限り最適な修復概念を確定することができる。
【0065】
本発明の更に別の態様により、上述の問題は、請求項13に記載の方法によって解決される。実施形態では、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、(a)少なくとも1つの欠陥のデータを解析する段階と、(b)検査された欠陥を補償するためにフォトリソグラフィマスク上に位相シフト構造を与える段階とを含む。
【0066】
化学線波長での欠陥の定量的全体論的解析の結果として、欠陥の補正、特にEUV波長範囲のフォトマスクの埋め込み欠陥の補償に向けて新しい観点が出現する。これは、特に、補償的修復を有意に凌駕する修復手法を辿ることを可能にする。
【0067】
データを解析する段階は、修復概念を解析する段階及び/又は測定データから修復概念を確定する段階を含むことができる。
【0068】
EUVマスクの欠陥を補償するための本発明による方法は、補償される欠陥に対する既存の修復形態のデータを使用することができる。しかし、本発明による方法は、補正される欠陥に対する修復形態が第1の段階で測定データから生成されるように設計することができる。更に、これら2極間の中間ステージが可能である。
【0069】
位相シフト構造の提供は、検査された欠陥の位相誤差を補償するために、検査された欠陥上に位相シフト構造を付加する段階を含むことができる。
【0070】
位相シフト構造は、検査された欠陥上に付加された位相シフト材料の変化する厚みの層を含むことができる。
【0071】
位相シフト構造の提供は、検査された欠陥を覆う変化する厚みの層の局所除去を含むことができる。
【0072】
特定の欠陥タイプの場合に、検査された欠陥上に変化する厚みの位相シフト構造を付加するよりも、欠陥を覆う材料の局所除去によって欠陥を補償する方が好都合である場合がある。この目的に対して、欠陥を覆う切除される材料層の変化する厚みが計算される。考慮する欠陥に対してどのタイプの欠陥補償がより有利であるかは、シミュレーションを用いて確定され、この場合に、変化する厚みの位相シフト構造の吸収が考慮される。
【0073】
上述の正確な欠陥解析は、検査された欠陥上への位相シフト構造の堆積を容易にする。EUVマスクの多層構造の欠陥の面輪郭は大きく変化する可能性がある。したがって、例えば、局所隆起の形態にある欠陥は、横方向に広範囲にわたるか又は境界が局所的に限られる場合がある。多層構造の欠陥の高さは、ゼロ又はゼロ付近から2桁ナノメートルの範囲までにわたる場合がある。欠陥上に変化する厚みを有する位相シフト材料を堆積させることにより、検査された欠陥の位相誤差を補償することが少なくともかなりの部分まで可能である。
【0074】
少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、検査された欠陥の振幅誤差を補償するためにフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素を修正する段階を更に含むことができる。
【0075】
検査された欠陥に付加される位相シフト構造と、少なくとも1つのパターン要素を修正する段階との組合せ効果は、欠陥の領域が、化学線波長で入射する放射線を欠陥のない多層構造の領域と同じ方法で反射することを確実にする。位相シフト構造の設計は、EUV波長範囲の光がEUVマスクの多層構造上に垂線に対してある角度(好ましくは、6°から8°)で入射することを考慮するものである。埋め込み欠陥の一部が吸収体構造のパターン要素によって覆われる場合に、これも位相シフト構造を設計する時の計算内に含められる。これに代えて又はこれに加えて、多層構造の欠陥を改善された方式で修復することができるように、1又は2以上のパターン要素の一部を修正することができる。特に、1又は2以上のパターン要素の一部は、除去することができる。
【0076】
検査された欠陥の修復が欠陥によって引き起こされる位相擾乱及び強度擾乱を除去することにより、この出願で説明する方法は、埋め込み欠陥の包括的な補償を容易にする。欠陥補正の後に、露光システムによって使用することができる焦点領域は、着目に値する制約を持たない。
【0077】
少なくとも1つのパターン要素を修正する段階は、検査された欠陥からの最短距離を有する少なくとも1つのパターン要素の一部を除去する段階を含むことができる。
【0078】
振幅誤差を補償するために少なくとも1つのパターン要素を修正する段階は、位相シフト構造及び/又は一定厚みの位相シフト層によるEUV波長範囲の光の吸収を考慮することができる。
【0079】
検査された欠陥の位相部分を補償するために、理想的には光学EUV放射線を実質的に吸収することなく化学線光の位相のシフトだけを起こす材料が使用される。そのような材料は、現時点で未知である。現時点で公知の全ての材料は、EUV波長範囲のEUV放射線をかなりの量吸収する。したがって、吸収体構造の1又は2以上のパターン要素の変化を計算する時に、欠陥によって引き起こされる強度擾乱に加えて、位相シフト構造及び/又は一定厚みの位相シフト層によって引き起こされる吸収を考慮することが有利である。
【0080】
極紫外波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素を修正する段階は、検査された欠陥の振幅誤差を補償するためにパターン要素の少なくとも一部を堆積させる段階を更に含むことができる。
【0081】
極紫外波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、少なくとも1つの欠陥に近い少なくとも1つのパターン要素の少なくとも一部を第2の粒子ビームとエッチングガスとを用いて除去する段階を更に含むことができる。第2の粒子ビームは、電子ビームを含むことができ、エッチングガスは、二フッ化キセノン(XeF2)を含むことができる。
【0082】
極紫外波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、第2の粒子ビームと第2の堆積ガスとを用いて少なくとも1つのパターン要素の少なくとも一部を堆積させる段階を更に含むことができる。第2の堆積ガスは、クロムヘキサカルボニル又は二コバルトオクタカルボニルのような金属カルボニルを含むことができる。
【0083】
上述のように、検査された欠陥に対する修復工程は、吸収体構造のパターン要素の一部の除去を含むことができる。検査された欠陥の振幅誤差を補正するために、吸収体構造の部分的に除去された1又は複数のパターン要素の一部のその後の付加を好都合とすることができる。代替実施形態では、少なくとも1つの欠陥を補償する段階は、位相シフト構造と、潜在的に必要な吸収体構造の1又は2以上のパターン要素の変更との同時決定を含む。
【0084】
本方法は、検査された欠陥の領域内に一定厚みの位相シフト層を付加する段階を更に含むことができ、この場合に、一定厚みの位相シフト層の厚みは、欠陥のないフォトリソグラフィマスクの部分に対する補償された欠陥の位相差が補償されるように選択される。
【0085】
上述のように、欠陥に付加された位相シフト構造と少なくとも1つのパターン要素の修正との組合せ効果は、化学線波長での光を欠陥の領域内でEUVマスクの非擾乱領域からのものと同じ位相前線を有して反射させる。しかし、反射された位相前線は、EUVマスクの非擾乱領域から反射された位相前線に対して一定の位相差を有する場合がある。一定厚みの位相シフト層の厚みは、この層が非擾乱領域からの光の位相角と修復された欠陥の領域から反射された光の位相角とを一定の位相シフトによって対応させるように選択される。
【0086】
少なくとも1つのパターン要素を修正する段階は、位相シフト構造及び/又は一定厚みの位相シフト層によるEUV波長範囲の光の吸収を考慮することができる。
【0087】
位相シフト構造と一定厚みの位相シフト層とは、同じ材料組成を有することができる。
【0088】
位相シフト構造及び/又は一定厚みの位相シフト層の提供は、粒子ビームと少なくとも1つの前駆体ガスとを用いて堆積を実施する段階を含むことができる。
【0089】
位相シフト構造の材料及び/又は一定厚みの位相シフト層の材料は、EUV波長範囲で<0.90、好ましくは<0.85、より好ましくは<0.80、最も好ましくは<0.75である屈折率の実数部を有することができる。
【0090】
δが、複素屈折率の実数部の1からの偏差を表し、βが、位相シフト構造の材料及び/又は一定厚みの層の材料の複素屈折率の虚数部を表す時に、位相シフト構造及び/又は一定厚みの層に対して、化学線波長でβ/δ<1,好ましくは<0.7、より好ましくは<0.5、最も好ましくは<0.3が成り立つ材料を選択することができる。
【0091】
表から(例えば、http://henke.lbl.gov.optical.constants/のような)、EUVマスクの多層構造の欠陥上に位相シフト構造を与えるために、及び/又はEUVマスクの多層構造上に一定厚みの層を提供するために問題になる周期系の様々な元素の光学特性を収集することが可能である。
【0092】
位相シフト構造と一定厚みの位相シフト層とは、同じか又は異なる材料組成を有することができる。これは、位相シフト構造と一定厚みの位相シフト層とを1回の処理段階で堆積させることができることを意味する。
【0093】
位相シフト構造及び/又は一定厚みの位相シフト層の提供は、走査粒子ビームと少なくとも1つの前駆体ガスとを用いて堆積工程を実施する段階を含むことができる。粒子ビームは、電子ビーム、イオンビーム、原子ビーム、分子ビーム、及び/又は光子ビームを含むことができる。前駆体ガスは、二コバルトオクタカルボニル(Co2(CO)8)、二レニウムデカカルボニル(Re2(CO)10)、ニッケルテトラカルボニル(Ni(CO)4)、又はタングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)を含むことができる。
【0094】
少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、フォトリソグラフィマスク上の位相シフト構造の提供をシミュレートする段階、及び/又は検査された欠陥の領域内に一定厚みの位相シフト構造を付加する段階を更に含むことができる。更に、少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、少なくとも1つの検査された欠陥に近い少なくとも1つのパターン要素の修正をシミュレートする段階を含むことができる。
【0095】
検査された欠陥の振幅及び位相の決定された影響に基づいて、欠陥修復を実施する前に位相誤差及び/又は振幅誤差の補償をシミュレートすることができる。その結果、検査された欠陥を修復するための費用を最小にすることができる。更に、このシミュレーションを用いて、修復に利用可能な処理窓を確定することができる。
【0096】
極紫外波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、第1の粒子ビームと第1の堆積ガスとを用いて少なくとも1つの欠陥の少なくとも一部の上に結像構造を堆積させる段階を更に含むことができる。
【0097】
欠陥が吸収パターン要素によって部分的に覆われない場合に、位相シフト構造は、欠陥上の実質的な中心に付加することが好ましい。しかし、多層構造の欠陥の一部がパターン要素によって覆われる場合に、位相シフト構造は、それが、埋め込み欠陥の覆われていないかつしたがって有効な部分を補正するように設計される。
【0098】
これに代えて、検査された欠陥を補償する前に、多層構造の1又は複数の欠陥を覆う1又は2以上のパターン要素の部分を除去することができる。これは、欠陥の可能な限り最適な修復に向けて実施される修復工程を決定することができるように、修復工程を実施する前に最初にシミュレーションにおいて達成することができる。確定された修復形態を欠陥に取り付ける前に、シミュレーションにおいて除去された吸収体パターンの部分が実際に除去される。
【0099】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行された時に上述の態様のうちの1つの方法段階をコンピュータシステムに実施させる命令を含むことができる。
【0100】
更に別の実施形態では、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素を検査するための装置は、(a)少なくとも1つの要素をEUV波長範囲内の光を用いて検査するための手段と、(b)EUV波長範囲の光による照射時の少なくとも1つの要素の挙動を決定するための手段とを含む。
【0101】
少なくとも1つの要素を検査するための装置は、上述の態様の第1の部分の方法段階を実施するように具現化することができる。
【0102】
少なくとも1つの要素を検査するための手段は、EUV-AIMS(登録商標)(空中像測定システム)を含むことができる。
【0103】
更に別の実施形態では、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を補償するための装置は、(a)少なくとも1つの欠陥のデータを解析するための手段と、(b)検査された欠陥を補償するためにフォトリソグラフィマスク上に位相シフト構造を与えるための手段とを含む。
【0104】
最後に、少なくとも1つの要素を補償するための装置は、上述の態様の第2の部分の方法段階を実施するように具現化することができる。
【0105】
以下の詳細説明は、図面を参照して本発明の現時点で好ましい例示的実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】左の部分画像内に多層構造内に欠陥を有するEUVマスクのセクションの平面図を示し、右の部分画像内に従来技術の補償的修復後の左の部分画像のセクションを再現する図である。
【
図2】左の部分画像内に従来技術の補償的修復を用いて補償された埋め込み欠陥を有するEUVマスクのセクションの平面図を示し、中心の部分画像内にEUVマスク上に入射する放射線のフォーカスが-100nmの調節不良を有する修復されたマスク領域の画像のシミュレーションを示し、右の部分画像内にフォトリソグラフィ装置の露光システムが-100nmのフォーカス調節不良を有する左の部分画像のマスクセクションのウェーハ上の像を提示する図である。
【
図3】上側部分画像シーケンス内に様々な測定ツールを用いた埋め込み欠陥の解析を示し、下側部分画像シーケンス内に識別された埋め込み欠陥の従来技術の補償的補正及びEUVマスクの修復された領域のウェーハ上の像を再現する図である。
【
図4】EUV波長範囲のための理想的なフォトマスクを通る概略断面図である。
【
図5】多層構造が付加された基板の面上に所在する埋め込み欠陥を有するEUV波長範囲のためのフォトマスク(EUVマスク)の領域を通る断面を再現する概略図である。
【
図6】位相シフトEUVマスクを通る概略断面図である。
【
図7】AIMS(登録商標)の原理をスキャナと比較して図解する概略図である。
【
図8】EUV波長範囲のためのAIMS(登録商標)(EUV-AIMS(登録商標))の検出システムを略提示する図である。
【
図9】上側部分画像内にデフォーカスを定め、下側部分画像内にフォーカスを通る何回かの測定中の
図5に記載のEUV-AIMS(登録商標)のウェーハ又はCCDカメラ上の強度プロファイルを略提示する図である。
【
図10】第1のミラーの上流に位相シフトフィルムが更に挿入された
図6に記載の検出システムを再度示す図である。
【
図11】EUV-AIMS(登録商標)の露光システムの出力の場所にEUVビームと同期して2・αの角度範囲にわたって移動される単極絞りが付加される場合のEUVマスクの欠陥にわたる2・αの角度範囲の走査を示す概略図である。
【
図12】欠陥解析及び欠陥修復の様々な段階の概要を略提示する図である。
【
図13】修復形態を生成するための4つの段階の概要を示す図である。
【
図14】一定厚みの位相シフト層がEUVマスクの非擾乱領域からの反射に対する一定位相差を更に補正する場合の埋め込み欠陥の位相誤差及び振幅誤差を修復した後の
図5を示す図である。
【
図15】
図14の断面を表し、反射EUV放射線の位相前線に対する修復された位相誤差の効果を図解する図である。
【
図16】EUVマスクの埋め込み欠陥の修復を実施するのに使用することができる装置を示す概略図である。
【
図17】EUV-AIMS(登録商標)と
図16の修復装置とを組み合わせるシステムを略提示する図である。
【
図18】EUVマスクの要素を検査する方法の流れ図である。
【
図19】最後にEUVマスクの欠陥を修復する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
下記では、極紫外(EUV)波長範囲のための反射フォトリソグラフィマスク(EUVマスク)の多層欠陥の修復に基づいて、本発明による方法及び本発明による装置の現時点で好ましい実施形態をより詳細に説明する。しかし、フォトマスクの欠陥を検査かつ補償するための本発明による方法は、下記で解説する例に限定されない。限定されるのではなく、これらの方法は、様々なタイプのEUVマスクの欠陥を修復するために、特に、例えば、位相シフトEUVマスクを補正するために同じように使用することができる。更に、本発明による方法は、一般的に透過フォトリソグラフィマスクの局所欠陥を検査かつ補償するのに使用することができる。
【0108】
図1は、左の部分画像内に13.5nmの領域内の露光波長に向けて設計された吸収EUVマスクのセクションの平面図を示している。多層構造は、2つのパターン要素の間に埋め込み欠陥を有する。右の部分画像は、従来技術に従って両方のパターン要素の一部の除去による補償的修復を実施した後の左の部分画像のセクションを示している。
【0109】
図2は、左の部分画像内に従来技術の補償的修復を用いて修復された埋め込み欠陥を有するEUVマスクのセクションの平面図を示している。中心の部分画像は、左の部分画像の修復されたストライプ構造のウェーハ上の像をシミュレートしたものである。このシミュレーションでは、EUVマスクの修復された領域は、この領域の結像挙動によって引き起こされる不益な効果を持たない。しかし、露光システムは、-100nmのフォーカス調節不良を有していた。右の部分画像は、実際にウェーハ露光を実施した後の修復された領域のストライプ構造の像を提示している。フォトリソグラフィ装置の露光システムは、中心の部分画像内に示すシミュレーションの場合と同じデフォーカスを有していた。
【0110】
図2に示す補償的修復の例は、欠陥がウェーハ上に出現しないためには、修復された欠陥が-100nmのフォーカス調節不良を必要とすることを図解している。その結果、補正されたEUVマスクを使用することができる場合であっても、リソグラフィ装置の使用可能作動範囲が有意に低減する。更に、指定されたCD(臨界寸法)を達成するための照射量分布は臨界パラメータを表すので、EUV波長範囲の焦点面を外れた露光は、最適フォーカスの位置におけるものよりも有意に重要である。
【0111】
図3は、部分画像の上側の行にEUVマスクの埋め込み欠陥の解析を示している。左上側部分画像は、パターン要素をウェーハ上に結像する時にストライプの形態を有する2つのパターン要素の不正な接続によって顕在化する欠陥を提示している。この埋め込み欠陥は、EUVマスクの対応する部分を電子ビームで走査する時には見ることができない。電子ビームの走査の結果を中心上側部分画像に例示している。
図3に記載の左上側部分画像は、欠陥にわたる原子間力顕微鏡(AFM)の走査を示している。AFMの走査では、埋め込み欠陥は、約5.8nmの高さを有する局所隆起の形態で出現する。埋め込み欠陥の走査方向の横寸法は約80nmである。
【0112】
図3に記載の部分画像の下側の行は、識別された欠陥の従来技術の補償的修復又はEUVマスクの修復された領域を用いたウェーハの露光を提示している。左下側部分画像は、走査電子顕微鏡(SEM)の画像内に示す修復された領域を示している。中心下側部分画像は、AFMを用いて修復された領域にわたって実施された走査を示している。AFMの個々の走査線を提示する中心下側画像の挿入画像は、この「補償的修復」が埋め込み欠陥を未着手のままに残すことを非常に明確に示している。この欠陥を補償するために、吸収材料の一部は、識別された欠陥の左右にあるパターン要素から除去された。最後に、右下側部分画像は、EUVマスクの修復された領域のウェーハ露光の結果を再現している。依然としてウェーハ上で補償された欠陥を見ることができるが、この欠陥は、それに隣接する2つのパターン要素の架橋接続をもたらすことはない。
【0113】
図4は、13.5nmの領域内の露光波長のための吸収EUVマスク400のセクションを通る概略断面を示している。EUVマスク400は、例えば、石英のような低い熱膨張率を有する材料で生成された基板410を有する。EUVマスクのための基板として、例えば、ZERODUR(登録商標)、ULE(登録商標)、又はCLEARCERAM(登録商標)のような他の誘電材料、ガラス材料、又は半導体材料も使用することができる。EUVマスク400の基板410の後側417は、EUVマスク400の生産中及びその作動中に基板410を保持するように機能する。基板410の後側417には、基板410を保持するための薄い導電層を付加することができる(
図4には示していない)。
【0114】
基板410の前側415には、以下でMoSi層とも表す交替するモリブデン(Mo)層420とシリコン(Si)層425との対を20個から80個含む多層フィルム又は多層構造440が堆積される。Mo層420の厚みは4.15nmであり、Si層425は2.80nmの厚みを有する。多層構造440を保護するために、最上部シリコン層425上には、二酸化珪素で生成され、例えば、一般的に好ましくは7nmの厚みを有するキャップ層430が付加される。キャップ層430を形成するために、例えば、ルテニウム(Ru)のような他の材料も使用することができる。モリブデンの代わりに、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zn)、又はイリジウム(Ir)のような高い質量数を有する他の元素からなる層をMoSi層に使用することができる。多層構造440の堆積は、例えば、イオンビーム蒸着(IBD)によって達成することができる。
【0115】
以下では、基板410、多層構造440、及びキャップ層430をマスクブランク450と呼ぶ。しかし、EUVマスクの全ての層を有するが全域吸収体層460の構造化のない構造をマスクブランク450と呼ぶことができる。
【0116】
マスクブランク450からEUVマスク400を生成するために、キャップ層430上にバッファ層435が堆積される。可能なバッファ層材料は、石英(SiO2)、シリコン酸素窒化物(SiON)、Ru、クロム(Cr)、及び/又は窒化クロム(CrN)である。バッファ層435上には吸収層460が堆積される。吸収層460に適する材料は、取りわけ、Cr、窒化チタン(TiN)、及び/又は窒化タンタル(TaN)である。吸収層160上には、例えば、酸窒化タンタル(TaON)で生成された反射防止層465を付加することができる。
【0117】
吸収層460は、例えば、電子ビーム又はレーザビームを用いて吸収層460の全域から吸収パターン要素470の構造が生成されるように構造化される。バッファ層435は、吸収層460を構造化する時に、すなわち、パターン要素470を生成する時に多層構造440を保護するように機能する。
【0118】
EUV光子480は、EUVマスク400上に位相前線490と共に入射する。入射EUV光子480は、パターン要素470の領域内で吸収され、少なくとも複数のEUV光子480が、吸収パターン要素470が不在の領域内で多層構造440によって反射される。位相前線495は、多層構造440によって反射されて出て行く電磁波485を象徴している。
【0119】
多層構造440は、例えば、モリブデン層及びシリコン層の層厚が、多層構造440上に予め決められた入射角で入射するEUV光子480に関する化学線波長のλ/2の光学的厚みに対応するように設計しなければならない。この条件からの逸脱は、ブラッグの反射条件の局所的違反、したがって、EUV波長範囲の局所反射光の変化をもたらす。非常に短い波長に起因して、EUV範囲は、多層構造440の個々の層の均一性とEUVマスク400の区域にわたる面粗度とに対して厳しい要件を課する。したがって、既に上述のように、多層構造440の生成工程中に予め決められた層厚からの個々の層の実際の層厚の偏差が存在する場合がある。更に、EUVマスク400の基板410の小さい局所不均等性は、多層構造440を通して伝播する場合がある。
【0120】
図4は、理想的なEUVマスク400を示している。
図5に記載のEUVマスク500は、基板410の面上に所在し、その上にEUVマスク500の多層構造540が配置された埋め込み欠陥520を有するマスク500の領域を通る断面を示している。埋め込み欠陥520は、その領域内で擾乱を受けた多層構造540をもたらす。欠陥520は、第1にその領域内でEUV放射線を反射ビーム485の方向から散乱させる。その結果、埋め込み欠陥520を有するEUVマスク500の領域からは、反射ビームの方向に弱いEUV放射線しか反射されない。第2に、欠陥520の領域内で擾乱を受けた多層構造540のMoSi層の層厚は、欠陥520の領域から反射されるEUV波長範囲の光の位相の撹乱をもたらす。
図5の例では、これを擾乱位相前線595によって図解している。
【0121】
図5に例示的に示す埋め込み欠陥520は、局所隆起の形態を有する。基板410の面415の研磨中に細かいスクラッチが生じる可能性がある(
図5には例示していない)。冒頭部分で既に解説したように、多層構造540の堆積中に基板410の面415上の粒子が過成長する可能性があり、又は粒子が多層構造540内に組み込まれる可能性がある(同じく
図5には示していない)。
【0122】
EUVマスク500の埋め込み欠陥520は、基板410内の欠陥起点を基板410の前側又は面415上及び/又はマスクブランク550の面560上に有する場合がある。基板410の前側415に存在する欠陥520は、その横寸法と高さとを多層構造540における伝播中に変化させる場合がある。これらの変化は両方の方向に発生する場合があり、すなわち、欠陥520は、多層構造540内で成長又は収縮する場合があり、及び/又は形態を変化させる場合がある。上述のように、この出願では、キャップ層430の面460上だけを発生源とするわけではないEUVマスク500の埋め込み欠陥520を埋め込み欠陥と呼ぶ。
【0123】
同じく既に上述のように、マスクブランク内又はEUVマスク500上には様々な欠陥タイプが存在する場合がある。下記で説明する全ての方法を用いて、これらの様々なタイプの埋め込み欠陥520を検査かつ補償することができる。
【0124】
図5に記載の欠陥520は、「発明の概要」において定めた方法を用いて検査することができるEUVマスクの要素の第1の例を表す。
図6は、入射EUV放射線を用いて解析することができるEUVマスク600の要素の第2の例を提示している。
図6に記載のEUVマスク600は、
図4に記載の基板及び多層構造440又は
図4に記載のマスクブランク450を示している。
図4に記載の吸収パターン要素470で生成されるパターンの代わりに、
図6に記載のEUVマスク600は、位相シフトパターン要素620のパターンを有する。位相シフトパターン要素620の高さは、マスクブランク上に入射するEUV放射線650及びそれによって反射されるEUV放射線660と、位相シフトパターン要素620上に入射するEUV放射線630、670及びそれによって反射されるEUV放射線640、680との比較によって決定される。位相シフトパターン要素620の高さは、反射EUV放射線640、660又は640、680の位相差から計算することができる。この場合に、位相シフトパターン要素620の材料組成が既知であると仮定する。この組成が既知ではない場合に、この高さは、マスクブランク450及びパターン要素620によって反射された放射線の振幅変化の解析から同じく確定することができる。更に、位相シフトパターン要素620の高さに加えて、多層構造540上におけるこれらのパターン要素の位置を決定することができる。
【0125】
図7は、AIMS(登録商標)(空中像測定システム)の原理を図解している。左の部分画像内には、スキャナの一部の構成要素を示している。露光システムが、化学線波長の電磁放射線をフォトリソグラフィマスク上にフォーカスする。投影光学ユニットが、フォトマスクを通過する放射線を縮小して(一般的に1:4又は1:5)、大きい開口数(NA)でウェーハ又はその上に分布するフォトレジスト上に結像する。右の部分画像は、左の部分画像のスキャナと同じ化学線波長のためのAIMS(登録商標)の少数の構成要素を示している。スキャナの露光システムとAIMS(登録商標)の露光システムとは実質的に同一である。これは、両方のシステムに関して像生成が実質的に同じであることを意味する。その結果、AIMS(登録商標)は、実際にマスクがウェーハを見る方式でマスクを結像する。しかし、スキャナの場合とは異なり、AIMS(登録商標)の場合に、レンズがフォトマスクの小さいセクションをCCD(電荷結合デバイス)カメラ上に大きい倍率で結像する。その結果、この化学線波長でフォトマスクがその空中像内に有する欠陥を示し、かつこれらの欠陥をCCDセンサ又はCCDカメラを用いて検出することが可能になる。
図7は、透過フォトマスクを解析するのに使用されるAIMS(登録商標)を示している。
【0126】
図8は、EUV波長範囲のためのAIMS(登録商標)の光学検出システム800の例を示している。既に上述のように、EUV波長範囲のためのフォトリソグラフィシステムでは、現時点では反射構成要素しか使用されていない。明瞭化の理由から、EUV-AIMS(登録商標)と略記するEUV波長範囲のためのAIMS(登録商標)の露光システムは示していない。埋め込み欠陥520を有する要素を有するEUVマスク500上には、例えば、13.5nmの波長を有するEUV波長範囲の光が、EUVマスク500の構造化面上にフォーカスされる。一般的に、EUVマスク上に入射する放射線810、したがって、多層構造540によって反射されるEUV放射線も、マスクに対する垂線に対して6°から9°の角度を含む。
図8に記載の概略図では、この表示も同じく控えられている。EUVマスクによって反射された放射線820は、検出システム800の第1のミラー830によって集光され、第2のミラー840に伝達される。EUVマスク500によって反射された放射線820は、第3のミラー850及び第4のミラー860を通して、EUV放射線を検出するCCDカメラに向けられる。
図8に示す例では、第1のミラー830は非球面ミラーであり、ミラー840、850、及び860は球面形態を有する。EUVマスク500とCCDカメラ870の間の距離は1メートル程度である。
【0127】
図8の例示的光学検出システム800は、接続890によってCCDセンサ870に接続された解析ユニット880を更に有する。解析ユニット880は、CCDセンサ870から測定値を受信し、CCDセンサを制御するように設計される。更に、解析ユニット880は、受信した測定データを解析して、EUVマスク500の欠陥520に対する修復概念を確定することができる。
【0128】
EUVマスク500の欠陥520によって引き起こされる反射位相前線内の誤差(位相誤差)及び埋め込み欠陥520の領域から反射された強度の偏差(振幅誤差)を定量的に決定することができるためには、欠陥520の1よりも多い画像のデータ又は測定データが必要である。識別された埋め込み欠陥520の位相誤差と振幅誤差の両方の確定を可能にするデータ又は測定データを生成するために少なくとも3つの異なる方法を使用することができる。
【0129】
第1のオプションでは、一連のウェーハ露光及び/又はいくつかの空中像を記録することが可能である。この場合に、露光システムの焦点面がEUVマスクの上方からEUVマスク500の下方に系統的に修正される。
図9に記載の上側部分画像はこの関係を図解している。露光システムの焦点面がマスクの上方に位置する場合を正(「+」)のデフォーカス又はオーバーフォーカスと呼ぶ。
図9に記載の上側部分画像内にはこの場合を点線で象徴している。それとは対照的に、
図9に記載の上側部分画像内に破線で例示的に示すように露光システムの焦点面がマスク自体に位置する場合を負(「-」)のデフォーカス又はアンダーフォーカスと呼ぶ。
【0130】
図9に記載の下側部分画像は、フォーカスを通る測定中の一連の空中像又はウェーハ露光の光学強度分布を図解している。埋め込み欠陥520によって引き起こされる位相誤差及び振幅誤差を可能な限り正確に決定する目的のためには、フォーカス又は焦点面をアンダーフォーカスからオーバーフォーカスに調整する時に埋め込み欠陥の領域の多数の記録又は画像を記録することが好都合である。適切な枚数は、解析される欠陥タイプに依存する。特定の欠陥は例外であるが、10枚から100枚の画像が一般的である。焦点面の調整は、EUV-AIMS(登録商標)の露光デバイスのフォーカスを変更することにより、又は固定フォーカスの場合はEUVマスク500をEUVビームの方向に変位させることによって達成することができる。
【0131】
埋め込み欠陥520の位相誤差及び振幅誤差を決定するために、生成されたデータを入力データとして用いて位相復元アルゴリズムが実施される。本明細書で解説する測定データ生成の第1のオプションでは、位相復元アルゴリズムとして、例えば、Gerchberg-Saxtonアルゴリズム又はIFTA(逆フーリエ変換アルゴリズム)を使用することができる。
【0132】
位相復元アルゴリズムに対する入力としてのデータ又は測定データを確定するための第1のオプションは、位相復元アルゴリズムに対する入力データを生成するためにEUV-AIMS(登録商標)を修正する必要がないという優れた利点を有する。
【0133】
図10は、埋め込み欠陥520の一連の空中像を記録するための第2のオプションを示している。
図10は、
図8に記載のEUV-AIMS(登録商標)の光学検出システム800を再度示している。検出システム800の第1のミラー830の上流において、EUVマスク500によって反射されたEUV波長範囲のための光のビーム経路に位相シフトフィルム1000が導入されている。位相シフトフィルム1000の厚み、したがって、光学的厚みも、フィルム平面内で、したがって、ミラー830上に入射するEUV光と垂直に、定められた方式で変化する。位相シフトフィルム1000は、移動装置1020にホルダ1000を通して付加される。移動装置1020は、EUVマスクによって反射された放射線820のビーム経路の内外に位相シフトフィルム1000を定められた方式で駆動することができる。その結果、定められた波面修正を有する埋め込み欠陥520の複数の画像を達成することができる。このようにして生成されたデータは、次いで、位相復元アルゴリズムを実施するための入力データとして使用することができる。
【0134】
埋め込み欠陥の位相誤差及び振幅誤差を決定するために、誤差低減アルゴリズム又は勾配法を用いて、定められた角度変更によって画像を解析することができる。
【0135】
図9の関連で記述した第1のオプションと同様に、定められた角度変更による解析のための入力データ生成の第2のオプションでは、修正された波面の大きい間隔幅を有する埋め込み欠陥520の多数の画像を生成することも有利である。その結果、可能な限り正確な埋め込み欠陥520の位相誤差及び振幅誤差の定量的決定が容易になる。消失しなかった欠陥520に関しては、通常の状況で反射放射線820のビーム経路における位相シフトフィルム1000の様々な位置における5枚から50枚の画像が必要である。位相シフトフィルム1000に関しては、マスク500によって反射されたEUV放射線の位相を定められた方式で修正し、同時にEUV放射線を極力僅かだけしか吸収しない材料を選択することが好都合である。この選択は、可能な限り小さいk値を有する材料によって達成される。変数k=β/δにおいて、βは、複素屈折率の虚数部を表し、δは、複素屈折率の実数部の1からの偏差を表す(n=n-iβ=1-δ-iβ)。複素屈折率の実数部の1からの比較的大きい偏差を有する材料の例は、
図4の関連で上述のモリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zr)、又はイリジウム(Ir)という金属である。
【0136】
位相シフトフィルム1000の変化する厚みは、好ましくは、1nm(薄い端部での)から100nm(厚い端部での)までを含む。位相シフトフィルムの厚みは、
図10に示すようにフィルム平面内で連続的に変えることができる。位相シフトフィルム1000は、階段状の厚みを有することができる。更に、一定の厚みを有する2又は3以上のフィルムを使用することができる。この場合に、位相シフト効果は、EUV放射線820のビーム経路内のこれらのフィルムの配置によって調節される。位相シフトフィルム1000の厚みを設計する時に、EUV放射線がフィルムを2回通過することを考慮しなければならない。現時点では、位相シフトフィルム1000として、好ましくはZrフィルムが使用される。
【0137】
図11の模式
図1100は、位相復元アルゴリズムを実施するための入力データとして使用することができる測定データを生成するための第3のオプションを示している。EUV-AIMS(登録商標)の露光システムを射出するEUVビーム1110内にピンホール1120又は単極絞り1120が挿入される。一例として、単極絞り1120は、0.1というシグマを有することができ、すなわち、単極絞り1120は、EUV-AIMS(登録商標)の露光システムの出力でのビームの直径の10%に対応する開口又は開口部を有する。ピンホール1120は、EUV放射線1110のための点光源として作用する。埋め込み欠陥520を有する多層構造540の領域は、様々な角度αで走査される。この場合に、αは、フォトリソグラフィマスク500の極角、すなわち、マスク平面に対する垂線に対する角度を表している。測定を行う角度範囲は2・αを含む。その結果、様々な観察角において欠陥520の画像が生成される。これらの測定データは、埋め込み欠陥520の位相誤差及び振幅誤差を確定するための位相復元アルゴリズムを実施するための入力データとして寄与する。
【0138】
本明細書で解説する測定データ生成の第3のオプションでは、位相復元アルゴリズムとして、例えば、フーリエptychographicアルゴリズムを使用することができる。
【0139】
一般的に角度αの変化は、EUVマスク500の面に対する垂線の周りの±15°の範囲にある。この角度範囲を用いて実施される測定回数は、好ましくは、5回から50回の範囲にある。
【0140】
様々な角度で埋め込み欠陥520を露光することができるためには、EUV-AIMS(登録商標)の露光システムは、マスク500を露光するEUVビーム1010をマスク500に対して垂直な軸の周りに定められた角度範囲にわたって修正することをピンホール1120との協働で可能にするビーム傾斜装置(
図11には示していない)を有するべきである。ビーム傾斜装置は、露光システムの1又は2以上のミラーを傾斜又は回転させる段階と、それと並行しての単極絞り1120の追跡段階とを組み合わせることによって実現することができる。
【0141】
代替実施形態では、EUVビームは埋め込み欠陥520の周りで移動されず、EUVマスク500がEUVビームに対して移動される(
図11には例示していない)。この目的に対して、EUVマスク500の保持装置に適切な移動装置を装備することができる。
【0142】
図11の例示的EUV-AIMS(登録商標)は、インコヒーレント放射線を生成するEUV放射線源を有する。EUV-AIMS(登録商標)がコヒーレントEUV放射線源を有する場合に、予め決められた角度範囲にわたる埋め込み欠陥520の走査目的でのEUV-AIMS(登録商標)内へのピンホール1120の設置を省くことができる。
【0143】
現在のEUVマスク400、500の多層構造440、540は、一般的に法線方向から6°の場所での最大反射に向けて最適化される。現在のEUV-AIMS(登録商標)では、6°だけ傾いたNA円錐から現れる照明角度が可能であり、このNA円錐は、法線に対して約10°から2°の角度範囲に対応する。面に対する垂線の周りの±15°の角度範囲における入射EUV放射線とEUVマスクの法線の間の相対傾斜は、ブラッグの反射条件に有意には違反しない。
【0144】
図12に記載の流れ
図1200は、化学線波長でEUVマスク500の欠陥520を検査し、検査した欠陥520を補正する方法の工程にわたる概要を与えるものである。第1の段階1210において、識別された欠陥520がEUV-AIMS(登録商標)を用いて検査される。この段階に関しては、3つの異なる測定方法を上述している。第2の段階1220では、検査された欠陥520の振幅及び位相の復元が行われる。この目的に対して、第1の段階で生成された測定データを入力データとして用いて位相復元アルゴリズムが実施される。生成された測定データからの位相誤差及び振幅誤差の決定を可能にするそれぞれのアルゴリズムに関しては、様々な測定方法の解説の範囲で指定している。
【0145】
第3の段階1230において、検査された欠陥520に対する修復概念がシミュレーションを用いて確定される。この段階は、第2の段階で決定された定量的な位相誤差及び振幅誤差に基づいて実施される。続く
図13の模式
図1300は、修復形態を確定する段階の例を概説している。この段階はこの出願の主眼点から外れており、したがって、簡単にしか解説しない。
【0146】
最後に、第4の段階1240において、検査された欠陥520は、第3の段階で確定された可能な限り最適な修復概念に基づいて修復される。この段階に対しては下記でより詳細に説明する。
【0147】
図13の模式
図1300は、修復概念を決定するための4つの段階を図解している。第1の段階1310において、検査された欠陥520の空中像がシミュレートされる。シミュレーションは、欠陥520によって引き起こされる振幅及び位相の変化に基づいて実施される。更に、これらの変化は、EUV-AIMS(登録商標)によって供給される測定データに基づいている。その結果、欠陥520の伝達方法は、場所及び周波数又は波数kの関数(t
defect(r,k))として決定される。EUV-AIMS(登録商標)測定では、対応するウェーハ露光装置の照明設定を使用することができ、この使用を技術用語で「スキャナマッチング」と呼ぶ。代替実施形態では、修復概念の最高測定精度に向けて最適化された露光設定で作動を実施することができる。一例として、コヒーレント照明下では、埋め込み欠陥520の位相効果は特に優勢であり、したがって、これらの条件下では特に正確な方式で測定可能である。
【0148】
その上で、第2の段階1320において、欠陥のないEUVマスク500の同等点がシミュレートされる。その結果、欠陥の位置に関するEUVマスク500の基準伝達挙動(treference(r,k))が確定される。基準位置のシミュレーションは、同じくEUV-AIMS(登録商標)を用いて決定された欠陥不在の同等位置の測定データに基づいて、及び/又はEUVマスク500の設計データを用いて(「ダイ対データベース」)達成することができる。同等位置は、EUVマスク500上で欠陥罹災点と同じパターン要素の配置によって取り囲まれた点である。
【0149】
第3の段階1330では、欠陥520が基準位置と同じ伝達挙動(すなわち、反射挙動)を実質的に有するような伝達挙動の補正程度(tcompensation(r,k))が決定される。
【0150】
最後に、第4の段階1340において、欠陥520の意図する伝達挙動を達成するのに必要とされる材料変更が計算される。材料変更は、欠陥520上への材料の付加及び欠陥520からの材料の除去を含むことができる。更に、材料の変更は、吸収パターン要素及び/又は位相シフトパターン要素の一部の除去及び堆積を含むことができる。修復工程にかかわる材料(又は修復工程にかかわる全ての材料)に対する材料変化は、材料定数及び修復工程の特性に基づいて最適化され、それによって修復概念が生成される。修復工程にかかわる1つの材料(又は複数の材料)の材料特性を較正するためにEUV-AIMS(登録商標)を使用することができる。この点に関する詳細に関しては、後の図の解説の関連で説明する。その結果、修復概念は、埋め込み欠陥によって引き起こされる振幅及び位相の変化を補償するために欠陥520の領域内で実施される材料変更を説明する。
【0151】
図14の模式
図1400は、埋め込み欠陥520が修復された後の
図5のEUVマスク500を示している。位相シフト材料の形態にある位相シフト構造1410が欠陥520に付加されている。位相シフト構造1410を生成するための位相シフト材料の付加に関しては、下記で
図16に関する解説の関連で説明する。
図14の例では、位相シフト構造1410は、埋め込み欠陥520にわたって変化する厚みを有する層を含む。位相シフト構造1410の材料は、化学線波長で1から可能な限り離れている実数部、すなわち、可能な限り小さい実数部を有する屈折率を有する。同時に、位相シフト構造1410の材料が少量の入射EUV放射線しか吸収しないように、屈折率の虚数部も同じく可能な限り小さくなければならない。EUV放射線は位相シフト構造1410を2回通過するので、低い吸収係数の位相シフト構造1410の材料が特に好都合である。現時点でこの目標に最も近い材料に関しては、
図4及び
図10に関する解説の関連で記述している。
【0152】
位相シフト構造1410の局所厚みは、位相シフト構造1410によって引き起こされる局所位相シフトが、埋め込み欠陥520によって引き起こされる局所位相撹乱を正確に補償するように決定される。位相シフト構造1410の最大厚は、100nmの領域内にある。位相シフト構造1410の材料は、約1nmの最小厚まで堆積させることができる。
【0153】
埋め込み欠陥520の振幅誤差又は反射放射線の方向に欠陥520によって引き起こされる強度変化は補償的修復によって修復される。この目的に対して、埋め込み欠陥520の両側にある2つのパターン要素1470の部分1430、1440が除去される。この目的に対して実施される粒子ビーム誘起エッチング処理に関して、
図16に関する解説の範囲で説明する。除去されるパターン要素1470の部分1430、1440を計算する時に、欠陥520の振幅誤差に加えて位相シフト構造1410の吸収も考慮される。
【0154】
位相シフト構造1410を決定する段階、及び除去されるパターン要素1470の部分1430、1440を決定する段階は、
図3に関する解説の関連で簡単に記載されているようにシミュレーションに基づいて可能な限り最適な修復概念を確定する段階の範囲内で実施される。可能な限り最適な全体修復概念は、上述のように、欠陥520によって引き起こされる位相擾乱及び強度擾乱の定量的決定に基づいている。
【0155】
上述の修復段階の後に、埋め込み欠陥520の位相誤差及び振幅誤差が補正される。これは、修復が実施された後に、EUVマスク500が、その非擾乱部分からと実質的に同じ強度を埋め込み欠陥520の領域から反射することを意味する。更に、欠陥の領域から反射されたEUV放射線は、EUVマスク500の非擾乱領域によって反射されたEUV放射線と同じ形態の位相前線を有する。しかし、EUVマスクの修復された領域から反射されたEUV放射線は、位相シフト構造1410の影響としてEUVマスク500の非擾乱領域から反射された位相前線に対して固定された位相差を有する場合がある。
【0156】
この一定の位相差を除去するために、一定厚みを有する位相シフト材料の層1420が、修復された欠陥520の領域の上に堆積される。一定厚みの位相シフト層1420の層厚は、補正される固位置相差に則してそれ自体を方向付ける。上述のように、1nm程度の層厚を生成することができる。一定厚みの位相シフト層1420の最大層厚は、層1420の材料の吸収係数によって制限を受ける。現時点で利用可能な位相シフト材料の最大層厚は100nm程度のものである。この場合に、反射EUV放射線が一定厚みの位相シフト層1420を2回通過することを考慮しなければならない。
【0157】
一定厚みの位相シフト層1420のための材料として上述の材料が問題になる。したがって、欠陥520の上に位相シフト構造1410と一定厚みの位相シフト層1420とを同じ材料組成を用いて1回の堆積工程で付加することが可能である。更に、一定厚みの位相シフト層1420の吸収も、除去されるパターン要素1470の部分1430、1440を決定する時に同じく考慮される。
【0158】
修復段階の順番は必要に応じて選択することができる。しかし、一定厚みの位相シフト層1420が、位相シフト構造1410に加えて埋め込み欠陥520の上に付加される場合に、一定厚みの位相シフト層1420を正確に修正されたパターン要素1470の縁部に至るまで案内することができるように、第1の段階で欠陥520の振幅誤差を補正することが好都合である。
【0159】
図15は、修復されたEUVマスク500の効果を図解している。平面位相前線490を有するEUV放射線480が、定められた角度でマスク500上に入射する。EUVマスク500は、マスク面に対する垂線に対して等しい角度で放射線485を反射する。参照符号595は、
図5に指定している未修復欠陥520によって引き起こされる位相歪曲を表している。埋め込み欠陥520を補正した後に、埋め込み欠陥520の領域内でEUVマスク500によって反射されたEUV放射線は、再び平面の位相前線1510を有する。EUVマスク500の非擾乱領域から反射されたEUV放射線1520からの一定位相差は、一定厚みを有する位相シフト層1420によって補正される。
【0160】
図16は、位相シフト構造1410を形成し、一定厚みの位相シフト層1420を付加するのに使用することができる装置1600のいくつかの構成要素を通る断面を示している。更に、装置1600は、EUVマスク500の1又は2以上のパターン要素1470を修正1430、1440するのに使用することができる。
図16に示す例は、走査電子顕微鏡(SEM)1600の形態にある走査粒子顕微鏡1600を提示している。埋め込み欠陥520を修復するための電子ビーム1605の形態にある粒子ビーム1605は、電子ビーム1605がEUVマスク500を実質的に損傷することができず、又はEUVマスク500を軽度にしか損傷することができない点で有利である。しかし、他の荷電ビーム、例えば、FIB(集束イオンビーム)システム(
図16には例示していない)のイオンビームも可能である。
【0161】
修正されたSEM1600は、粒子銃1602と、電子光学系又はビーム光学系1612が内部に配置されたカラム1610とを必須構成要素として含む。電子銃1602は電子ビーム1605を生成し、電子光学系又はビーム光学系1612は、電子ビーム1605をフォーカスし、それをカラム1610の出力で
図5、
図6、及び
図8から
図11に記載のEUVマスク500と同一であるEUVマスク1620上に向ける。
【0162】
EUVマスク1620は試料台1625上に配置される。
図16に矢印で象徴しているように、試料台1625は、SEM1600の電子ビーム1605に対して3つの空間方向に移動することができる。
【0163】
装置1600は、測定点1632において入射電子ビーム1605によって生成された2次電子又は後方散乱電子を検出するための検出器1630を含む。検出器1630は、制御デバイス1680によって制御される。更に、装置1600の制御デバイス1680は、検出器1630の測定データを受信する。制御デバイス1680は、測定データからモニタ1690上に表される画像を生成することができる。
【0164】
更に、測定装置1600は、EUVマスク1620又はその面が負の面電荷を有するのを防止する低エネルギイオンを測定点1632の領域内に供給するイオン源を含むことができる(
図16には例示していない)。イオン源を使用すると、EUVマスク1620の負電荷は、局所的に制御される方式で低減することができ、したがって、電子ビーム1605の横空間分解能の低下を防止することができる。
【0165】
装置1600の電子ビーム1605は、欠陥520を解析するために、特に検査された欠陥520を見つけるのに使用することができる。
【0166】
制御デバイス1680は、コンピュータシステム1685を含む。コンピュータシステム1685は、インタフェース1687を含む。このインタフェースを通して、コンピュータシステム1685は、続く
図17に記載のEUV-AIMS(登録商標)1710(
図16には例示していない)の検出システム800の解析ユニット880に接続することができる。コンピュータシステム1685は、インタフェース1687を通して測定データを受信することができる。特に、コンピュータシステム1685は、上述の3つの測定方法のうちの1又は2以上を用いて記録された埋め込み欠陥520の測定データをインタフェース1687を通して取得することができる。これらの測定データから、コンピュータシステム1685は、欠陥520の領域内で欠陥520から発するEUVマスク1620の位相擾乱及び強度擾乱、並びに反射位相前線595、1510、1520を再現することができる。これは、コンピュータシステム1685が位相復元アルゴリズムを実施することができることを意味する。代替実施形態では、位相復元アルゴリズムは、装置1600又は修復装置1600によって外部的に実施される(続く
図17を参照されたい)。
【0167】
コンピュータシステム1685又は制御ユニット1680は、電子ビーム1605をEUVマスク1620にわたって走査する走査ユニットを更に含む。走査ユニットは、
図16には例示しておらず、SEM1600のカラム1610内の偏向要素を制御する。更に、コンピュータシステム1685又は制御デバイス1680は、SEM1600の様々なパラメータを設定かつ制御するための設定ユニットを含む。設定ユニットによって設定することができるパラメータは、例えば、倍率、電子ビーム1605のフォーカス、スティグメータの1又は2以上の設定、ビーム変位、電子源の位置、及び/又は1又は2以上の絞り(
図16には例示していない)とすることができる。
【0168】
欠陥520を補正するためのかつ検査された欠陥520に対する可能な限り最適な修復概念を確定するための装置1600は、好ましくは、様々なガス又は前駆体ガスのためのいくつかの異なるストレージ容器を含む。
図16の例示的装置1600では、3つのストレージ容器1640、1650、及び1660を示している。しかし、装置1600は、EUVマスク500、1620を処理するために3よりも多いストレージ容器を有することができる。
【0169】
第1のストレージ容器164は、EUVマスク1620の欠陥520上に材料を位相シフト構造1410の形態で堆積させるためにSEM1600の電子ビーム1605との協働で使用することができる前駆体ガス又は第1の堆積ガスを格納する。一例として、第1のストレージ容器1640は、金属カルボニルの形態にある前駆体ガス、例えば、モリブデン六カルボニル(Mo(CO)6)を有することができる。
【0170】
第2のストレージ容器1650は、EUVマスク1620の多層構造540の面から1又は2以上のパターン要素1670の部分1630又は複数の部分1630、1640をエッチングすることを可能にするエッチングガスを含む。一例として、第2のストレージ容器1650は、二フッ化キセノン(XeF2)を含むことができる。ストレージ容器1650内に格納することができる別のエッチングガスは、例えば、ハロゲン、例えば、フッ素(F2)又は塩素(Cl2)、又はハロゲンを含有する化合物である。
【0171】
第3のストレージ容器1660は、例えば、電子ビーム1605を用いた粒子ビーム誘起堆積反応の範囲で埋め込み欠陥520の領域内に一定厚みの位相シフト層1620の材料を堆積させることを可能にする第2の堆積ガスを格納する。一例として、第3のストレージ容器は、金属カルボニル、例えば、二コバルトオクタカルボニル(Co2(CO)8)、二レニウムデカカルボニル(Re2(CO)10)、ニッケルテトラカルボニル(Ni(CO)4)、又はタングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)を含有することができる。
【0172】
第2の堆積ガスは、第1の堆積ガスと同一である場合がある。したがって、代替実施形態では、第3のストレージ容器1660は、EUVマスク500、1620の多層構造540上に1又は2以上のパターン要素1470の1又は複数の部分を堆積させることを可能にする堆積ガスを含むことができる。第3のストレージ容器1660は、金属カルボニル、例えば、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)を含有することができる。
【0173】
各ストレージ容器1640、1650、1660には、EUVマスク1620の面上の電子ビーム1605の入射場所1632に単位時間当たりに供給されるガス粒子の量又はガス流量を制御するために各ストレージ容器独自の弁1642、1652、1662が装備される。更に、これらのストレージ容器1640、1650、1660は、EUVマスク1620上の電子ビーム1605の入射点1632の近くでノズル1646、1656、及び1666を用いて終端する専用ガス給送部1644、1654、及び1664を有する。
図16に示す装置1600では、弁1642、1652、1662は、ストレージ容器1640、1650、1660の近くに設けられる。代替実施形態では、弁1642、1652、1662は、ノズル1646、1656、1666の近くに配置することができる(
図16には示していない)。各ストレージ容器1640、1650、1660は、個々の温度の設定及び制御のための専用要素を有することができる。温度設定は、各ガスに対する冷却と加熱の両方を容易にする。更に、ガス給送部1644、1654、1664もまた、ガスを反応場所1632に供給する際の温度を設定かつモニタするための専用要素をそれぞれ有する(同じく
図16には示していない)。
【0174】
図16に記載の装置1600は、所要の真空を生成して維持するためのポンプシステム1670を有することができる。更に、装置1600は、吸引抽出デバイスを含むことができる(
図16には示していない)。吸引抽出デバイスは、ポンプシステム1670との組合せで、前駆体ガス、すなわち、堆積ガス又はエッチングガスの分解中に生成されて局所化学反応に必要とされない分解物又は成分を装置1600の真空チャンバ1675から発生点で実質的に抽出することができる。必要とされないガス成分は、分散して真空チャンバ内に沈着することができる前にEUVマスク1620上の電子ビーム1605の入射点1632において装置1600の真空チャンバ1675から局所的にポンプ排気されるので、真空チャンバ1675の汚染が防止される。
【0175】
図16の例によって与える装置1600では、局所エッチング反応又は局所堆積工程を開始するのに好ましくは集束電子ビーム1605のみが使用される。しかし、これに加えて又はこれに代えて、局所反応を光子ビームを用いて開始することもできる。
【0176】
図17の模式
図1700は、EUV-AIMS(登録商標)1710と
図16に記載の装置1600との例示的な組合せを示している。EUV-AIMS(登録商標)1710は、
図8に記載の検出システム800を含む。
図17の例では、EUV-AIMS(登録商標)1710は、接続1730によってサーバ1720に接続される。一例として、サーバは、マスク修復センターとすることができる。サーバ1720は、EUV-AIMS(登録商標)1710及び修復装置1600の較正データを格納することができる。更に、サーバ1720は、EUVマスク500の設計データ及び欠陥データベースを含有することができる。更に、サーバ1720は、空中像をシミュレートするためのソフトウエアを含むことができる。更に、サーバ1720は、埋め込み欠陥520に対する修復概念を確定するように設計された1又は2以上のソフトウエアプログラムを格納することができる。
【0177】
図17に示す例では、EUV-AIMS(登録商標)1710は、接続1730を通して較正データを受信し、接続1730を通して測定データをサーバ1720に送信する。
【0178】
修復装置1600は、そのコネクタ1687を介して、接続1740を通してサーバ1720に接続される。サーバ1720は、接続1740を通して検査された欠陥520に対する修復概念を修復装置1600に送信する。更に、サーバ1720は、接続1740を通して修復装置から測定データ、例えば、修復装置1600の電子ビーム1605を用いて決定された検査された欠陥の位置を受信することができる。
【0179】
接続1720及び1740は、電気及び/又は光学信号線とすることができる。
【0180】
代替実施形態では、サーバ1720の機能は、EUV-AIMS(登録商標)1710又は修復装置1600が受け持つことができる。更に、サーバ1720の機能は、EUV-AIMS(登録商標)1710と修復装置1600との間で分割することができる。
【0181】
図18は、EUVマスク500、1620の欠陥520を検査するためのこの出願で定める方法の例示的実施形態の流れ
図1800を提示している。本方法は、段階1810において始まる。第1の段階1820において、EUV波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクの要素が、EUV波長範囲からの光を用いて検査される。要素を検査するのに、
図17に記載のEUV-AIMS(登録商標)1710を使用することができる。検査される要素は、EUVマスク500、600、1620の欠陥、臨界点、及び/又は構成要素を含む場合がある。第2の段階1830において、EUV波長範囲内の光を用いた照射時の要素の挙動が決定される。検査される要素が欠陥である場合に、検査された欠陥の振幅誤差及び位相誤差を決定するために位相復元アルゴリズムを使用することができる。本方法は、段階1840で終了する。
【0182】
最後に、
図19は、EUVマスク500、1620の欠陥520を補償するためのこの出願で定める方法の例示的実施形態の流れ
図1900を示している。本方法は、段階1910において始まる。第1の段階1920において、欠陥520のデータが解析される。データを解析する段階は、利用可能な修復概念を解析する段階又は修復概念を生成するために測定データを解析する段階を含むことができる。第2の段階1930において、検査された欠陥520を補償するためにフォトリソグラフィマスク500、1620上に位相シフト構造1410が与えられる。位相シフト構造1410は、検査された欠陥上に修復装置1600を用いて堆積させることができる。本方法は、段階1940で終了する。