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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】光吸収装置、及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/137 20060101AFI20220831BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01S3/137
H01S3/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018110218
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019212863
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕樹
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-007421(JP,A)
【文献】特開平09-179078(JP,A)
【文献】米国特許第04440497(US,A)
【文献】特開平11-103117(JP,A)
【文献】特開平04-110749(JP,A)
【文献】特開2007-096702(JP,A)
【文献】特開2016-052738(JP,A)
【文献】特表2018-506855(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101147254(CN,A)
【文献】特開2010-109091(JP,A)
【文献】特開2014-123100(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101562309(CN,A)
【文献】特表平10-501067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-4/00
H03L 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の光を吸収するガスが封入された筒状のセル本体部、及び前記セル本体部から突出し、内部が前記セル本体部に連通するコールドフィンガー部を備えた吸収セルと、
前記コールドフィンガー部が挿通される開口を有する容器状に形成され、熱伝導率が所定の閾値以上である壺部と、
前記壺部の温度を調整する温度調整部と、
前記壺部に連結されて、前記セル本体部を保持する保持部と、を備え、
前記壺部には、前記壺部から前記コールドフィンガー部に熱を伝達する熱伝導グリースが充填されている
ことを特徴とする光吸収装置。
【請求項2】
請求項に記載の光吸収装置において、
前記保持部は、前記セル本体部を載置する載置台と、前記載置台に連結され前記セル本体部を覆うカバー部と、を備える
ことを特徴とする光吸収装置。
【請求項3】
請求項に記載の光吸収装置において、
前記載置台は、前記壺部に連結される位置に、前記セル本体部が載置される面から反対側の面まで貫通し、前記壺部の内部と連通する貫通孔を有し、
前記熱伝導グリースは、前記壺部から前記貫通孔内に充填されている
ことを特徴とする光吸収装置。
【請求項4】
レーザ光を出力する共振器と、
前記共振器から出力された前記レーザ光が入射される請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光吸収装置と、
前記光吸収装置を透過した前記レーザ光を検出する光検出部と、
前記光検出部から出力される信号に基づいて前記共振器を制御するコントローラーと、
を備えたことを特徴とするレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定波長の光を吸収する吸収セルを備えた光吸収装置、及び当該光吸収装置を備えたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定波長の光を吸収するガスが封入された吸収セルを用いてレーザ光の周波数を安定化させるレーザ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のレーザ光校正装置は、レーザ光発振器から出力されたレーザ光をセルに入射させ、セルを透過した光を吸収信号検出部で受光させる。このようなレーザ光校正装置では、吸収信号検出部から出力される信号に基づいてレーザ光の波長を校正することができる。
この特許文献1では、セルは円筒形状の光学ガラスにより構成され、セルの円筒の両端がレーザ光入出射窓となり、円筒内部により光反応部が構成される。この光反応部の円筒面の外周には、光反応部を加熱保温するためのヒータが設けられている。
また、光反応部には、細筒状のトラップ(コールドフィンガー部)が下方に向かって突設されており、校正用元素(ヨウ素等)が貯留される。そして、コールドフィンガー部には、導入ポートが設けられて熱電対等の温度センサが装着されており、コールドフィンガー部の外周には、コールドフィンガー部を加熱又は冷却するための温度調整装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-110749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収セルは、一般的に、セル内部にヨウ素等の元素を封入した後、コールドフィンガー部の箇所を封じ切ることで形成される。しかしながら、この場合、例えば図5(A)~(C)に示すように、個々の吸収セル61によってコールドフィンガー部612の形状が異なる場合がある。また、メーカーによっても、吸収セル61の製造方法も異なり、例えば、図5(D)のように、コールドフィンガー部612とは別に突出部を設け、その突出部を封じ切ることで吸収セルを形成する場合もある。
ここで、図5(A)(D)に示すように、比較的長いコールドフィンガー部612が形成される場合もあり、この場合、特許文献1に記載のような温度調整装置を装着することが可能となる。しかしながら、図5(B)(C)に示すように、コールドフィンガー部612の突出寸法が短くなる場合もある。この場合、特許文献1に記載のような、コールドフィンガー部612の温度を調整する温度調整装置を設けることができない。
【0005】
本発明は、コールドフィンガー部の形状によらず、コールドフィンガー部の温度を調節可能な光吸収装置、及び当該光吸収装置を備えたレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光吸収装置は、所定波長の光を吸収するガスが封入された筒状のセル本体部、及び前記セル本体部から突出し、内部が前記セル本体部に連通するコールドフィンガー部を備えた吸収セルと、前記コールドフィンガー部が挿通される開口を有する容器状に形成され、熱伝導率が所定の閾値以上である壺部と、前記壺部の温度を調整する温度調整部と、を備え、前記壺部には、前記壺部から前記コールドフィンガー部に熱を伝達する熱伝導グリースが充填されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、吸収セルのコールドフィンガー部が、温度調整部により温度制御が可能となる壺部に挿通されており、壺部には、壺部の熱をコールドフィンガー部に伝達する熱伝導グリースが充填されている。壺部は熱伝導率が所定の閾値以上であり、温度調整部によって壺部全体の温度を容易に所定温度に調整することが可能となる。
このような本発明では、コールドフィンガー部は、壺部に充填された熱伝導グリースによって壺部との間で熱交換が可能となり、コールドフィンガー部の形状や長さによらず、温度調整部によって壺部の温度を調整することでコールドフィンガー部の温度を調整することができる。
【0008】
本発明の光吸収装置において、前記壺部に連結されて、前記セル本体部を保持する保持部を備え、前記保持部は、熱伝導率が前記閾値以上であることが好ましい。
本発明では、セル本体部を保持する閾値以上の熱伝導率の保持部を有し、当該保持部が壺部に連結されている。これにより、温度調整部の温度を調整することで、壺部から保持部に熱が伝達され、保持部に保持されるセル本体部の温度を調整できる。つまり、温度調整部を制御することで、コールドフィンガー部のみならず、セル本体部の温度も調整することができる。
【0009】
本発明の光吸収装置において、前記保持部は、前記セル本体部を載置する載置台と、前記載置台に連結され前記セル本体部を覆うカバー部と、を備えることが好ましい。
このような構成では、載置部にセル本体部を載置した後、カバー部でセル本体部を覆うことで吸収セルを保持部に容易に設置することができる。また、セル本体部が載置台及びカバー部により囲われることで、セル本体部の温度を、セル本体部の外周全体から調整することができ、セル本体部内部の温度分布を一様にできる。
【0010】
本発明の光吸収装置において、前記載置台は、前記壺部に連結される位置に、前記セル本体部が載置される面から反対側の面まで貫通し、前記壺部の内部と連通する貫通孔を有し、前記熱伝導グリースは、前記壺部から前記貫通孔内に充填されていることが好ましい。
本発明では、載置台に壺部の開口と連通する貫通孔が設けられ、当該貫通孔にも熱伝導グリースが充填されている。このため、コールドフィンガー部の長さが短く、壺部まで到達しない場合でも、コールドフィンガー部が熱伝導グリースに接し、壺部とコールドフィンガー部との間で熱交換を行うことができる。
【0011】
本発明のレーザ装置は、レーザ光を出力する共振器と、前記共振器から出力された前記レーザ光が入射される上述したような光吸収装置と、前記光吸収装置を透過した前記レーザ光を受光する光検出部と、前記光検出部から出力される信号に基づいて前記共振器を制御するコントローラーと、を備えたことを特徴とする。
このようなレーザ装置では、コントローラーによって、例えば共振器長を制御したり、共振器や共振器内の各構成の温度を制御したりすることで、共振器から出力されるレーザ光の周波数を、光吸収装置により吸収される周波数に合わせることができる。また、光吸収装置では、上述したように、コールドフィンガー部の形状や長さによらず、コールドフィンガー部の温度を精度良く調整することができ、これにより、吸収セル内のガス濃度を精度良く調整できる。したがって、光吸収装置で吸収させるレーザ光の周波数帯を高精度に制御でき、レーザ装置から所望の周波数のレーザ光を精度良く出力させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ装置の概略構成を示す模式図。
図2】本実施形態のレーザ装置の検波部の概略構成を示す断面図。
図3】本実施形態の光吸収部の概略構成を示す平面図。
図4】本実施形態において、コールドフィンガー部が短い吸収セルを用いた場合の光吸収部の一部の断面図である。
図5】吸収セルの概略形状を示す図であり、(A)(D)は突出寸法が長いコールドフィンガー部が設けられた吸収セル、(B)(C)は突出寸法が短いコールドフィンガー部が設けられた吸収セルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る一実施形態について説明する。
[レーザ装置1の全体構成]
図1は、本実施形態のレーザ装置1の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、励起用光源10と、共振器20と、導波光学部30と、検波部40と、コントローラー50と、を備えて構成されている。
励起用光源10は、コントローラー50の制御により駆動され、駆動電流が流れることにより、例えば808nm付近の励起光La1を出射する。
【0014】
共振器20は、レーザ媒体21と、非線形光学結晶22と、エタロン23と、共振器ミラー24と、アクチュエータ25と、これらを内部に格納する筐体26とを備えている。
レーザ媒体21は、例えばNd:YVO結晶等により構成され、励起光La1によって励起されて、例えば1064nm付近の波長の光(基本波光)を出射する。また、励起光La1が入射される側のレーザ媒体21の面には、励起光La1を透過し、基本波光を反射するコーティングが施されている。
【0015】
非線形光学結晶22は、例えばKTP結晶等により構成され、レーザ媒体21から出射される基本波光を、例えば532nm付近の波長の光(第2高調波光)に変換する。また、非線形光学結晶22には、結晶温度制御機構221が設けられている。この結晶温度制御機構221は、熱電対等により構成された温度センサと、ペルチェ素子等により構成される温度制御部とを含んで構成されており、コントローラー50の制御の下で、非線形光学結晶22の温度を調整する。また、非線形光学結晶22には、レーザ光の光軸に対する非線形光学結晶22の角度を変化させる角度調整部222が設けられている。
【0016】
エタロン23は、所定波長の光を透過させることにより、基本波光及び第2高調波光をシングルモードにする。また、エタロン23には、角度調整部231及びエタロン温度制御機構232が設けられている。角度調整部231は、レーザ光の光軸に対するエタロン23の角度を変化させる機構である。エタロン温度制御機構232は、熱電対等により構成された温度センサと、ペルチェ素子等により構成される温度制御部とを含んで構成されており、コントローラー50の制御の下で、エタロン23の温度を調整する。エタロン23の角度や温度が調整されることで、エタロン23を透過するレーザ光の波長が調整される。
【0017】
共振器ミラー24は、アクチュエータ25を介して筐体26に取り付けられている。共振器ミラー24のエタロン23側の面には、基本波光を反射し、第2高調波光を透過させるコーティングが施されている。
アクチュエータ25は、例えばピエゾ素子等により構成され、コントローラー50の制御により駆動されて、共振器ミラー24の位置を変化させる。つまり、アクチュエータ25は、共振器長を変化させる。
また、共振器20には、結晶温度制御機構221、エタロン温度制御機構232の他に、共振器全体の温度を調整する共振器温度制御機構261が設けられている。共振器温度制御機構261は、結晶温度制御機構221及びエタロン温度制御機構232と同様に、温度センサと温度制御部とを含んで構成されており、コントローラー50の制御の下で、筐体26の温度を調整する。
【0018】
このような共振器20では、レーザ媒体21から出射した基本波光が、レーザ媒体21と共振器ミラー24との間を往復し、非線形光学結晶22によって第2高調波光に変換される。非線形光学結晶22に変換された第2高調波光は、共振器ミラー24を透過し、レーザ光La2として共振器20から出射される。
【0019】
導波光学部30は、例えば、λ/2板31、第一偏光ビームスプリッタ32を含む複数の光学部材により構成される。この導波光学部30では、レーザ光La2が、λ/2板31に偏光方向を調整されて第一偏光ビームスプリッタ32に入射する。第一偏光ビームスプリッタ32に入射した光は、P偏光の透過光と、S偏光の反射光に分離され、このうち、S偏光の反射光(レーザ光La3)は、レーザ装置1の外部に出射され、測長等に使用される。第一偏光ビームスプリッタ32を透過したP偏光のレーザ光La4は、検波部40に入射される。
なお、導波光学部30としては、その他、レーザ光La3の光強度を検出する出射光検出部や、レーザ光La3の光強度を調整する光量調整機構等を備えていてもよい。
【0020】
検波部40は、図1に示すように、導波光学部30のレーザ光が入射する光入射部42、光入射部42からのレーザ光が透過される光吸収部60、光吸収部60を透過したレーザ光を反射し、光吸収部60に再入射させる光反射部43を備える。
光吸収部60には、封入ガス(例えばヨウ素)が封入されており、入射されたレーザ光のうち、封入ガスの吸光特性に応じた所定波長の光を吸光する。また、光入射部42は、光吸収部60側から入射したレーザ光の光強度を検出する光検出部424を備える。光検出部424は、レーザ光を受光すると、受光量に応じた信号(検出信号)をコントローラー50に出力する。
なお、検波部40の詳細な構成については後述する。
【0021】
コントローラー50は、検波部40の光検出部424から入力された検出信号に基づいて、レーザ装置1から出力されるレーザ光La3の周波数を安定化させる周波数安定化処理を実施する。
具体的には、コントローラー50は、光吸収部60の温度を調整して、光吸収部60で吸収されるレーザ光の周波数を設定する。また、コントローラー50は、アクチュエータ25を制御して、共振器長をスイープさせて、封止ガスの飽和吸収線を探索する。そして、コントローラー50は、探索された飽和吸収線から目標とする周波数の飽和吸収線を特定し、レーザ光の周波数が当該飽和吸収線に一致するように、アクチュエータ25、角度調整部231、共振器温度制御機構261、結晶温度制御機構221、エタロン温度制御機構232、及び励起用光源10(駆動電圧)を制御する。これにより、レーザ装置1から出力されるレーザ光La3の周波数が安定化する。
【0022】
[検波部40の構成]
次に、本実施形態における検波部40の詳細な構成について説明する。
図2は、検波部40の光軸に沿った概略断面図である。
検波部40は、図2に示すように、台座部41と、光入射部42と、光吸収部60(本発明の光吸収装置)と、光反射部43とを備える。
台座部41は、光入射部42、光吸収部60、及び光反射部43を固定する台座である。
【0023】
光入射部42は、導波光学部30の第一偏光ビームスプリッタ32を透過したP偏光のレーザ光La4が入射される部分である。この光入射部42には、図2に示すように、第二偏光ビームスプリッタ421と、λ/4板422と、レンズ423と、光検出部424とが設けられている。
第二偏光ビームスプリッタ421は、光入射部42に入射したP偏光のレーザ光La4を透過させ、吸収セル61から入射したS偏光のレーザ光を光検出部424に反射させる。
λ/4板422は、第二偏光ビームスプリッタ421側から入射されるP偏光のレーザ光La4を円偏光に変換して吸収セル61側に出射させる。また、吸収セル61側から入射した円偏光のレーザ光をS偏光に変換して第二偏光ビームスプリッタ421側に出射させる。
レンズ423は、λ/4板422からのレーザ光La4を吸収セル61に導き、吸収セル61からのレーザ光La4をλ/4板422に導く。
光検出部424は、第二偏光ビームスプリッタ421で反射された光を検出し、光強度に応じた検出信号をコントローラー50に出力する。
【0024】
光反射部43は、光吸収部60を介して光入射部42とは反対側に設けられる。この光反射部43は、レンズ431及び反射ミラー432を備える。
レンズ431は、吸収セル61からのレーザ光を反射ミラー432に導き、反射ミラー432で反射されたレーザ光を吸収セル61に導く。
本実施形態では、光入射部42に入射したP偏光のレーザ光La4は、第二偏光ビームスプリッタ421及びλ/4板422に透過し、光吸収部60の吸収セル61に向かって出射される。吸収セル61を透過したレーザ光は、光反射部43の反射ミラー432で反射され、再度吸収セル61に入射される。そして、吸収セル61の内部の封入ガスに吸収されなかった透過レーザ光が、再度λ/4板422を透過して第二偏光ビームスプリッタ421に入射される。したがって、第二偏光ビームスプリッタ421に再入射したレーザ光は、λ/4板422を2度通過することでS偏光の光となり、第二偏光ビームスプリッタ421で反射されて、光検出部424に入射される。
なお、本実施形態では、レーザ光La4を反射ミラー432で反射させることで、吸収セル61を往復したレーザ光La4を光検出部424で検出する例であるが、反射ミラー432に替えて光検出部424を配置して、吸収セル61を1回通過したレーザ光La4を検出する構成等としてもよい。
【0025】
次に、光吸収部60の詳細な構成について説明する。
光吸収部60は、図2に示すように、吸収セル61と、保持部62と、壺部63と、温度センサ64と、温度調整部65と、を備えて構成されている。
【0026】
吸収セル61は、内部に所定波長の光を吸光する封入ガス(例えばヨウ素分子等)が封入される部材であり、図2に示すように、セル本体部611と、コールドフィンガー部612とを備える。
セル本体部611は、例えば円筒等の筒状に形成され、筒の軸方向がレーザ光La4の主光軸と略一致するように配置される。セル本体部611の軸方向の両端に配置された筒端面611Aは、図2に示すように、レーザ光La4の主光軸に対して傾斜する光学面となり、レーザ光La4が入射及び出射する面となる。また、セル本体部611の軸方向に沿った筒状外周面611Bには、台座部41側に向かって突出するコールドフィンガー部612が設けられている。
【0027】
コールドフィンガー部612は、セル本体部611の内部空間と連通し、突出先端が閉じた形状となる。このコールドフィンガー部612は、個々の吸収セル61によって、それぞれ異なる形状となり、コールドフィンガー部612の突出寸法も様々となる。つまり、吸収セル61は、コールドフィンガー部612からヨウ素分子等の封入ガスを内部に封入した後、コールドフィンガー部612を封じ切って、コールドフィンガー部612の突出先端を閉じることで形成される。このため、コールドフィンガー部612の形状は、コールドフィンガー部612を封じ切る際の状態によって変化し、例えば図5に示すように、個々の吸収セル61によって異なる形状となる。
【0028】
図3は、光吸収部60の概略構成を示す平面図である。
保持部62は、吸収セル61のセル本体部611を保持する部材であり、図2及び図3に示すように、載置台621と、カバー部622とを備えて構成される。載置台621及びカバー部622は、熱伝導率が所定の閾値(例えば50W/mK)以上となる素材(例えば鉄等の金属素材)により構成されている。
【0029】
載置台621は、板状に形成され、セル本体部611に対向する面に、セル本体部611を載置する凹部(図示略)を有する。また、載置台621には、コールドフィンガー部612に対向する位置に、セル本体部611側の面から反対側の面(壺部63に対向する面)までを貫通する貫通孔621Aが設けられている。この貫通孔621Aは、図3に示すように、コールドフィンガー部612の断面積よりも大きい開口面積を有する。よって、載置台621に吸収セル61を載置した際に、コールドフィンガー部612が貫通孔621A内に挿入される。
カバー部622は、図3に示すように、セル本体部611の筒状外周面611Bを覆い、載置台621に対して例えばボルト締め等によって接合される。このため、セル本体部611は、図2に示すように、載置台621とカバー部622により挟み込まれることで保持され、セル本体部611の筒状外周面611Bが載置台621及びカバー部622により囲われる。
【0030】
壺部63は、容器状の部材であり、保持部62と同様に、熱伝導率が所定閾値(例えば50W/mK)以上となる素材(例えば金属等)により構成されている。壺部63は、図2に示すように、開口端631が載置台621の吸収セル61が載置される面とは反対側の面に接合されており、壺部63の内部空間が、貫通孔621Aと連通する。
すなわち、載置台621に吸収セル61を載置した際に、コールドフィンガー部612の突出寸法が載置台621の厚み以上であれば、当該コールドフィンガー部612が壺部63内に挿通される。
そして、壺部63及び貫通孔621Aには、熱伝導グリース66が充填されている。
【0031】
また、壺部63には、例えば熱電対等により構成された温度センサ64が設けられており、当該温度センサ64は、コントローラー50に接続されている。
さらに、壺部63には、ペルチェ素子等によって構成された温度調整部65が設けられている。なお、本実施形態では、図2に示すように、温度調整部65を介して壺部63が台座部41に固定される例を示すが、壺部63が直接台座部41に固定される構成等としてもよい。
【0032】
上記のような本実施形態の光吸収部60では、コールドフィンガー部612は、その形状や突出寸法によらず、高効率で壺部63との熱交換が可能となる。
例えば、図5(A)のように、コールドフィンガー部612の突出寸法が比較的大きい場合、コールドフィンガー部612は、図2のように、貫通孔621Aから壺部63の内部まで挿通される。したがって、壺部63内の熱伝導グリース66を介して、壺部63と熱交換が可能となる。
一方、図4は、コールドフィンガー部612の突出寸法が短い場合の光吸収部60の一部を示す概略断面図である。図5(B)(C)のように、コールドフィンガー部612の突出寸法が短い場合、図4に示すように、コールドフィンガー部612は、貫通孔621A内に挿通されるが、壺部63まで到達しない場合がある。この場合でも、本実施形態では、熱伝導グリース66が壺部63から貫通孔621Aに充填されているので、図4のように、コールドフィンガー部612は、熱伝導グリース66に接し、熱伝導グリース66を介して壺部63と熱交換が可能となる。
【0033】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態のレーザ装置1は、レーザ光を出力する共振器20と、共振器20から出力されたレーザ光が入射される光吸収部60と、光吸収部60を透過したレーザ光を検出する光検出部424と、光検出部424からの検出信号に基づいて共振器20の温度や共振器長等を制御するコントローラー50と、を備える。
また、光吸収部60は、吸収セル61と、壺部63と、温度調整部65と、を備え、吸収セル61は、封入ガス(例えばヨウ素)が封入された筒状のセル本体部611と、セル本体部611から突出して、内部がセル本体部611に連通するコールドフィンガー部612を備える。そして、壺部63は、コールドフィンガー部612が挿通される開口を有する容器状に形成されており、熱伝導率が所定閾値以上となる素材により構成され、その内部に熱伝導グリース66が充填されている。
【0034】
このため、本実施形態では、温度調整部65を制御すれば、壺部63全体の温度を迅速に所望の温度に調整することができ、壺部63の温度が熱伝導グリース66を介してコールドフィンガー部612に伝達されることで、コールドフィンガー部612の温度も所望の温度に精度良く制御することができる。よって、コールドフィンガー部612に貯留された封止ガスを発生させる粒子(例えばヨウ素粒子等)の温度を高精度に調整することで、封止ガスの濃度を所望値に設定することができる。
また、このような構成では、コールドフィンガー部612に熱伝導グリース66が接していればよいので、吸収セル61の製造方法等や製造元によってコールドフィンガー部612の形状や突出寸法が一定とならない場合でも、コールドフィンガー部612の温度を調節することができる。
さらに、このような光吸収部60を備えたレーザ装置1では、コールドフィンガー部612の形状によらず、光吸収部60におけるレーザ光の吸光波長を所定値に精度良く調整できるので、所望の周波数のレーザ光を精度良く出力させることができる。
【0035】
本実施形態では、光吸収部60は、さらに、壺部63に連結される保持部62を備え、保持部62によりセル本体部611が保持されている。
このため、壺部63の温度は、保持部62に迅速に伝達され、保持部62によって吸収セル61のセル本体部611の温度も所望値に調整することができる。つまり、本実施形態では、コールドフィンガー部612と、セル本体部611との温度調整をそれぞれ別構成で行う必要がなく、壺部63の温度を調整すれば、コールドフィンガー部612及びセル本体部611の双方の温度を調整することができる。
【0036】
さらに、保持部62は、セル本体部611が載置される載置台621と、載置台621
に接してセル本体部611を覆うカバー部622と、を備える。
このため、セル本体部611が載置台621及びカバー部622により囲われる構成となり、セル本体部611の温度を、セル本体部611の外周全体から調整することができ、セル本体部611の内部の温度分布を一様にできる。
【0037】
そして、載置台621は、壺部63に連結される位置に、壺部63内と連通する貫通孔621Aを有し、熱伝導グリース66は、壺部63から貫通孔621A内に亘って充填されている。
このため、コールドフィンガー部612の長さが短く、壺部63まで到達しない場合でも、コールドフィンガー部612が貫通孔621A内で熱伝導グリース66に接する。このため、壺部63の熱をコールドフィンガー部612に伝達することができる。
【0038】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0039】
上記実施形態では、壺部63の開口端631が、載置台621の下面に接合されることで、壺部63と載置台621が接合される例を示したが、これに限定されない。例えば、載置台621の貫通孔621Aに、壺部63の開口端631が挿通されて接合される構成や、貫通孔621Aに壺部63が嵌合される構成としてもよい。
【0040】
保持部62として、吸収セル61を載置する載置台621と、載置台621に接合されて吸収セル61を覆うカバー部622とを備える例を示したが、これに限定されない。例えば、筒状の保持部内に吸収セル61を挿通させる構成としてもよい。この場合、保持部に、コールドフィンガー部612を通過させるスリットを設け、保持部に吸収セル61を挿通させた後、熱伝導率が所定閾値以上となる部材によりスリットを覆う構成としてもよい。
【0041】
壺部63から貫通孔621Aに亘って熱伝導グリース66が充填される例を示したが、さらに、熱伝導グリース66が載置台621の吸収セル61に対向する面に塗布される構成としてもよい。この場合、載置台621と吸収セル61との僅かな隙間を熱伝導グリース66で埋めることができる。
【0042】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、周波数安定化制御するレーザ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1…レーザ装置、20…共振器、40…検波部、41…台座部、42…光入射部、43…光反射部、50…コントローラー、60…光吸収部(光吸収装置)、61…吸収セル、62…保持部、63…壺部、64…温度センサ、65…温度調整部、66…熱伝導グリース、424…光検出部、432…反射ミラー、611…セル本体部、611A…筒端面、611B…筒状外周面、612…コールドフィンガー部、621…載置台、621A…貫通孔、622…カバー部、631…開口端。
図1
図2
図3
図4
図5