IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図1
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図2
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図3
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図4
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図5
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図6
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図7
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図8
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図9
  • 特許-複数の電動機組立体を備えた駆動装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】複数の電動機組立体を備えた駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20220831BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220831BHJP
   H02K 11/20 20160101ALI20220831BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20220831BHJP
   H02P 23/04 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H02P5/46 J
H02M7/48 E
H02M7/48 M
H02K11/20
H02K11/33
H02P23/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018237429
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020099166
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝英
(72)【発明者】
【氏名】西村 和馬
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】池上 諒子
(72)【発明者】
【氏名】片山 直輝
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-248198(JP,A)
【文献】特開平06-113592(JP,A)
【文献】特開2017-139318(JP,A)
【文献】特開平04-067758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
H02M 7/48
H02K 11/20
H02K 11/33
H02P 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電動機組立体および第2電動機組立体と、
前記第1電動機組立体および前記第2電動機組立体に電気的に接続された周波数ジャンプ制御部を備え、
前記第1電動機組立体は、第1電動機と、前記第1電動機に交流電力を供給する第1インバータと、前記第1インバータに固定された振動センサを備え、前記第1インバータは、前記第1電動機に固定されており、
前記第1電動機は、駆動軸と、前記駆動軸に固定された回転子と、前記回転子の周囲に配置された固定子と、前記回転子および前記固定子を収容するモータケーシングを備えており、
前記第1インバータは、電気回路を有するインバータ基板と、スイッチング素子と、前記インバータ基板および前記スイッチング素子を収容するインバータケーシングを備えており、
前記振動センサは、前記インバータ基板に固定されており、
前記インバータ基板は、前記駆動軸に対して垂直であり、
前記駆動軸は、前記インバータ基板を貫通して延びており、
前記モータケーシングおよび前記インバータケーシングは、前記駆動軸に沿って直列に配置されており、
前記第2電動機組立体は、第2電動機と、前記第2電動機に交流電力を供給する第2インバータを備え、前記第2インバータは、前記第2電動機に固定されており、
前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1電動機および前記第2電動機が運転中に前記振動センサの出力値を取得し、前記取得した出力値に基づいて周波数ジャンプ帯域を決定するように構成されている、駆動装置。
【請求項2】
前記周波数ジャンプ制御部は、
前記第1電動機が運転中であって、かつ前記第2電動機が停止中の間は、前記第1インバータへの第1指令周波数に相当する周波数の交流電力を前記第1インバータに出力させ、
前記第1電動機および前記第2電動機が運転中の間は、前記第1インバータへの第1指令周波数が前記周波数ジャンプ帯域内にある場合は、前記周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を前記第1インバータに出力させるように構成されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記周波数ジャンプ帯域は、しきい値よりも大きい前記振動センサの出力値に対応する前記第1インバータへの第1指令周波数の範囲である、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1電動機および前記第2電動機が運転中に前記振動センサの出力値を取得し、前記振動センサの出力値をしきい値と比較し、前記しきい値よりも大きい前記振動センサの出力値に対応する前記第1インバータへの第1指令周波数の範囲を決定し、決定された範囲を前記周波数ジャンプ帯域に設定するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記インバータケーシングの内部空間の少なくとも一部は、樹脂で充填されており、
前記インバータ基板および前記振動センサは、前記樹脂に埋設されている、請求項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1電動機および前記第2電動機の通常運転中に前記振動センサの出力値を取得し、前記振動センサの出力値がしきい値を超えたときの第1指令周波数である下限周波数と、前記第1電動機および前記第2電動機の運転中の最大周波数とを決定し、前記最大周波数と前記下限周波数と差を算出し、この差の2倍の幅をジャンプ幅に持ち、かつ前記最大周波数を中心とした新たな周波数ジャンプ帯域を決定するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1電動機および前記第2電動機の通常運転中に前記振動センサの出力値を取得し、しきい値よりも大きい前記振動センサの出力値に対応する第1指令周波数の範囲を決定し、前記決定された範囲を新たな周波数ジャンプ帯域に設定するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1インバータへの第1指令周波数の上昇中に前記振動センサの出力値がしきい値を超えたとき、予め設定したジャンプ幅を現在の第1指令周波数に加算し、前記第1インバータへの第1指令周波数の低下中に前記振動センサの出力値がしきい値を超えたとき、前記ジャンプ幅を現在の第1指令周波数から減算するように構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータと電動機が一体に構成された電動機組立体を備えた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータと電動機が一体に構成された電動機組立体は、ポンプなどの回転機械の駆動源として使用される。電動機組立体が組み込まれた機械システムでは、回転速度が機械システムの固有振動数と一致すると、共振が起こり、大きな振動や騒音が発生する。そこで、共振を回避する周波数ジャンプの機能がインバータに備えられている。
【0003】
周波数ジャンプは、共振が起こりうる周波数ジャンプ帯域を回避して電動機を駆動する機能である。周波数ジャンプ帯域の設定は、次のように行われる。電動機組立体に振動センサを設置し、モータの回転速度(すなわち、インバータの出力周波数)を徐々に変えながら、振動のピーク(極大値)に基づいて固有振動数を決定し、その固有振動数をインバータに入力する。インバータは、入力された固有振動数を中心とする周波数ジャンプ帯域を設定し、記憶装置に格納する。
【0004】
図9および図10は、周波数ジャンプを説明するグラフである。縦軸はインバータの出力周波数を表し、横軸はインバータに入力される指令周波数を表している。図9に示すように、指令周波数が上昇して、周波数ジャンプ帯域に達すると、インバータの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の下限値Lに固定される。上昇中の指令周波数が周波数ジャンプ帯域内にある間は、インバータの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の下限値Lに維持される。指令周波数が周波数ジャンプ帯域を超えると、インバータの出力周波数は指令周波数と同じ周波数に復帰する。
【0005】
図10に示すように、指令周波数が低下して、周波数ジャンプ帯域に達すると、インバータの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の上限値Hに固定される。低下中の指令周波数が周波数ジャンプ帯域内にある間は、インバータの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の上限値Hに維持される。指令周波数が周波数ジャンプ帯域を下回ると、インバータの出力周波数は指令周波数と同じ周波数に復帰する。
【0006】
このような周波数ジャンプ機能によれば、インバータは、共振が起こりうる周波数帯域を避けて電動機を回転させることができる。したがって、インバータおよび電動機が組み込まれた機械システムの共振を未然に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-336946号公報
【文献】特表2008-536467号公報
【文献】特開2016-111793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インバータおよび電動機が組み込まれた機械システムの固有振動数は、機械システム自身のみならず、機械システムに固定された配管などの付加物に依存して変わりうる。このため、上述した周波数ジャンプ帯域の設定は、機械システムの据え付けや、その周辺の工事が完了した後に、ユーザーによって手動にて行われている。しかしながら、周波数ジャンプ帯域の設定は、労力を必要とする作業であり、機械システムの種類や設置場所によってはユーザーへの危険を伴うこともある。
【0009】
複数の電動機を備えた駆動装置では、共振が発生する条件はより複雑である。例えば、一台の電動機のみが運転しているときは共振は起こらないが、複数台の電動機が同じ速度で運転しているときに共振が起こる場合がある。別の例では、1つの電動機が定格速度で運転しつつ、他の電動機がある速度で運転しているときに共振が起こる場合がある。このような駆動装置において、適切な周波数ジャンプ帯域を設定することは難しい。
【0010】
そこで、本発明は、周波数ジャンプ帯域の設定を適切かつ自動で行うことができる複数の電動機組立体を備えた駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、第1電動機組立体および第2電動機組立体と、前記第1電動機組立体および前記第2電動機組立体に電気的に接続された周波数ジャンプ制御部を備え、前記第1電動機組立体は、第1電動機と、前記第1電動機に交流電力を供給する第1インバータと、前記第1インバータに固定された振動センサを備え、前記第1インバータは、前記第1電動機に固定されており、前記第1電動機は、駆動軸と、前記駆動軸に固定された回転子と、前記回転子の周囲に配置された固定子と、前記回転子および前記固定子を収容するモータケーシングを備えており、前記第1インバータは、電気回路を有するインバータ基板と、スイッチング素子と、前記インバータ基板および前記スイッチング素子を収容するインバータケーシングを備えており、前記振動センサは、前記インバータ基板に固定されており、前記インバータ基板は、前記駆動軸に対して垂直であり、前記駆動軸は、前記インバータ基板を貫通して延びており、前記モータケーシングおよび前記インバータケーシングは、前記駆動軸に沿って直列に配置されており、前記第2電動機組立体は、第2電動機と、前記第2電動機に交流電力を供給する第2インバータを備え、前記第2インバータは、前記第2電動機に固定されており、前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1電動機および前記第2電動機が運転中に前記振動センサの出力値を取得し、前記取得した出力値に基づいて周波数ジャンプ帯域を決定するように構成されている、駆動装置が提供される。
【0012】
一態様では、前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1電動機が運転中であって、かつ前記第2電動機が停止中の間は、前記第1インバータへの第1指令周波数に相当する周波数の交流電力を前記第1インバータに出力させ、前記第1電動機および前記第2電動機が運転中の間は、前記第1インバータへの第1指令周波数が前記周波数ジャンプ帯域内にある場合は、前記周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を前記第1インバータに出力させるように構成されている。
一態様では、前記周波数ジャンプ帯域は、しきい値よりも大きい前記振動センサの出力値に対応する前記第1インバータへの第1指令周波数の範囲である。
一態様では、前記周波数ジャンプ制御部は、前記第1電動機および前記第2電動機が運転中に前記振動センサの出力値を取得し、前記振動センサの出力値をしきい値と比較し、前記しきい値よりも大きい前記振動センサの出力値に対応する前記第1インバータへの第1指令周波数の範囲を決定し、決定された範囲を前記周波数ジャンプ帯域に設定するように構成されている。
【0013】
態様では、前記インバータケーシングの内部空間の少なくとも一部は、樹脂で充填されており、前記インバータ基板および前記振動センサは、前記樹脂に埋設されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インバータは電動機に固定され、振動センサはインバータに固定されている。したがって、振動センサは、電動機の回転に起因して発生する振動の大きさを正確に検出することができる。また、本発明によれば、電動機組立体が組み込まれた機械システム(例えば給水装置などのポンプ装置)が設置された後に、振動センサと周波数ジャンプ制御部との組み合わせによって、周波数ジャンプ帯域を自動で設定することができる。さらに、本発明によれば、第1電動機および第2電動機が運転中に取得された振動センサの出力値に基づいて、周波数ジャンプ帯域が決定される。したがって、複雑な運転条件下でも共振の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】複数の電動機組立体を備えた駆動装置の上面図である。
図2図1の矢印Aで示す方向から見た駆動装置の図である。
図3】第1電動機組立体の一実施形態を示す断面図である。
図4】第1電動機組立体の他の実施形態を示す断面図である。
図5】周波数ジャンプ帯域を決定および設定する方法の一実施形態を説明するグラフである。
図6】周波数ジャンプ帯域を決定および設定する方法の一実施形態を説明するグラフである。
図7】周波数ジャンプ帯域を決定および設定する方法の一実施形態を説明するグラフである。
図8】上述した実施形態に係る駆動装置が組み込まれたポンプ装置の一実施形態を示す模式図である。
図9】指令周波数が上昇しているときの周波数ジャンプを説明するグラフである。
図10】指令周波数が低下しているときの周波数ジャンプを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、複数の電動機組立体を備えた駆動装置の上面図であり、図2は、図1の矢印Aで示す方向から見た駆動装置の図である。本実施形態の駆動装置は、共通の架台15に固定された第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bと、第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bに電気的に接続された周波数ジャンプ制御部63を備えている。周波数ジャンプ制御部63の配置は特に限定されない。例えば、周波数ジャンプ制御部63は架台15上に配置されてもよいし、第1電動機組立体1Aまたは第2電動機組立体1B上に配置されてもよい。一実施形態では、駆動装置は、第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bに加えて、1つまたは複数の電動機組立体をさらに備えてもよい。
【0017】
第1電動機組立体1Aは、第1電動機2Aと、第1電動機2Aに交流電力を供給する第1インバータ3Aを備えている。第1インバータ3Aは第1電動機2Aに固定されており、第1電動機2Aと第1インバータ3Aは一体的な構造体を構成している。第2電動機組立体1Bは、第2電動機2Bと、第2電動機2Bに交流電力を供給する第2インバータ3Bを備えている。第2インバータ3Bは第2電動機2Bに固定されており、第2電動機2Bと第2インバータ3Bは一体的な構造体を構成している。
【0018】
第1電動機組立体1Aは、第1インバータ3A内に配置された振動センサ60を有している。第1電動機組立体1Aと第2電動機組立体1Bは、基本的に同じ構成を有するが、第2電動機組立体1Bは振動センサを備えていない点で、第1電動機組立体1Aと異なっている。特に説明しない第2電動機組立体1Bの構成および動作は、第1電動機組立体1Aと同じであるので、第2電動機組立体1Bの重複する説明を省略する。
【0019】
図3は、第1電動機組立体1Aの一実施形態を示す断面図である。図3に示すように、第1電動機組立体1Aは、第1電動機2Aと、第1電動機2Aに交流電力を供給する第1インバータ3Aを備えている。第1インバータ3Aは第1電動機2Aに固定されており、第1電動機2Aと第1インバータ3Aは一体的な構造体を構成している。第1電動機2Aの駆動軸5は第1インバータ3Aを貫通して延びている。
【0020】
第1電動機2Aは、駆動軸5と、駆動軸5に固定された回転子6と、回転子6の周囲に配置された固定子7と、回転子6および固定子7を収容するモータケーシング10を備えている。駆動軸5は、モータケーシング10に固定された2つの軸受27,28によって回転可能に支持されている。第1インバータ3Aは、電力線(図示せず)によって固定子7に接続されている。第1インバータ3Aが固定子7に交流電力を供給すると、固定子7は回転子6の周りに回転磁界を形成する。回転子6は、回転磁界によって回転し、駆動軸5は回転子6とともに回転する。
【0021】
第1インバータ3Aは、電気回路41を有するインバータ基板42と、コンデンサ43と、スイッチング素子44と、インバータ基板42およびスイッチング素子44を収容するインバータケーシング21を備えている。インバータケーシング21は、モータケーシング10に固定されている。
【0022】
駆動軸5は、モータケーシング10およびインバータケーシング21を貫通して延びている。モータケーシング10およびインバータケーシング21は、駆動軸5と同心状に配置されている。本実施形態では、モータケーシング10およびインバータケーシング21は、駆動軸5に沿って直列に配置されているため、第1電動機組立体1Aをコンパクトにすることができる。
【0023】
駆動軸5の一端は、図示しない回転機械(例えばポンプ)に連結される。駆動軸5の他端には、冷却ファン25が固定されている。この冷却ファン25は第1インバータ3Aの外側に配置されており、第1インバータ3Aの端面に隣接している。第1電動機2Aが回転すると、冷却ファン25が回転し、インバータケーシング21およびモータケーシング10の外面に空気の流れを形成する。第1電動機組立体1Aは、冷却ファン25を覆うファンカバー51を備えている。ファンカバー51は、インバータケーシング21に固定されている。
【0024】
図3において、第1電動機2Aは模式的に描かれている。第1電動機2Aは、例えば、回転子6に永久磁石を用いた永久磁石型モータである。しかしながら、第1電動機2Aは、永久磁石型モータに限定されず、誘導モータやSRモータなど、様々な種類のモータであってもよい。
【0025】
インバータケーシング21は、その外周面に冷却フィン56を有している。冷却フィン56は、駆動軸5の長手方向に延びている。インバータケーシング21は、その端面に冷却フィン36をさらに有している。冷却フィン36は、冷却ファン25に隣接しており、駆動軸5から放射状に延びている。モータケーシング10は、その外周面に冷却フィン57を有している。冷却フィン57は、駆動軸5の長手方向に延びている。
【0026】
冷却ファン25によって形成される空気の流れは、冷却フィン36、冷却フィン56、および冷却フィン57に接触しながら、第1インバータ3Aおよび第1電動機2Aの外面上を流れる。第1インバータ3Aおよび第1電動機2Aは、この空気の流れによって冷却される。スイッチング素子44は、インバータケーシング21の内面に接触しており、かつ冷却フィン36の裏側に位置している。このような配置により、スイッチング素子44は、冷却ファン25によって形成される空気の流れによって効率よく冷却される。
【0027】
インバータ基板42は、冷却フィン36の裏側の位置において、インバータケーシング21の内面に固定されている。第1電動機2Aの駆動軸5は、インバータ基板42を貫通して延びている。インバータ基板42は、駆動軸5に対して垂直である。第1電動機組立体1Aは、駆動軸5の外周面を覆う筒状壁50をさらに備えている。この筒状壁50は、第1インバータ3A内に配置されている。インバータ基板42は、駆動軸5および筒状壁50が貫通する環状形状を有しており、駆動軸5と同心状に配置されている。筒状壁50は、第1インバータ3Aと固定子7とを接続する上記電力線(図示せず)が駆動軸5に接触することを防止することができる。
【0028】
第1電動機組立体1Aは、第1インバータ3Aに固定された振動センサ60をさらに備えている。本実施形態では、振動センサ60は、インバータ基板42に固定されている。一実施形態では、振動センサ60は、インバータケーシング21に固定されてもよい。この振動センサ60は、第1電動機2Aの回転に起因して発生する振動の大きさを測定するための振動検出器である。第1インバータ3Aは第1電動機2Aに固定され、振動センサ60は第1インバータ3Aに固定されているので、振動センサ60は、振動の大きさを正確に検出することができる。
【0029】
本実施形態では、振動センサ60は、特に、第1電動機2Aの回転速度が、図1に示す駆動装置が組み込まれた機械システム(例えば給水装置などのポンプ装置)の固有振動数に一致したときの共振を検出するために用いられる。共振が発生したときの振動の方向は、駆動軸5に対して垂直である。インバータ基板42は、駆動軸5に対して垂直であるので、共振が発生したときにインバータ基板42は撓みにくい(変形しにくい)。したがって、インバータ基板42に固定された振動センサ60は、共振を精度良く検出することができる。
【0030】
図4に示すように、インバータ基板42の撓みを防ぎ、かつ振動が振動センサ60に効率よく伝わるようにするために、インバータケーシング21の内部空間の少なくとも一部を樹脂68で充填し、インバータ基板42および振動センサ60を樹脂68に埋設してもよい。
【0031】
図3に戻り、周波数ジャンプ制御部63は、第1インバータ3Aに隣接して配置されている。一実施形態では、周波数ジャンプ制御部63は、第1インバータ3A内に配置されてもよい。より具体的には、周波数ジャンプ制御部63は、インバータ基板42またはインバータケーシング21に固定されてもよい。
【0032】
周波数ジャンプ制御部63は、プログラムを格納する記憶装置63aと、プログラムに従って演算を実行する演算装置63bを有している。本実施形態では、演算装置63bは、第1インバータ3Aとは独立に設けられているが、第1インバータ3Aの演算装置が、周波数ジャンプ制御部63の演算装置として機能してもよい。振動センサ60は、周波数ジャンプ制御部63に電気的に接続されており、振動センサ60の出力値は周波数ジャンプ制御部63に送られるようになっている。
【0033】
周波数ジャンプ制御部63は、振動センサ60の出力値に基づいて周波数ジャンプ帯域を決定するように構成されている。より具体的には、周波数ジャンプ制御部63は、振動センサ60の出力値をしきい値と比較し、しきい値よりも大きい出力値に対応する第1インバータ3Aへの指令周波数の範囲を決定し、決定した指令周波数の範囲を周波数ジャンプ帯域に設定するように構成されている。周波数ジャンプ制御部63は、決定された周波数ジャンプ帯域を記憶装置63aに記憶する。
【0034】
図1に示す駆動装置の運転中は、周波数ジャンプ制御部63は、駆動装置の外部に配置された制御装置(図示せず)に接続されている。制御装置は、例えば、第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bに連結された複数のポンプの運転を制御するための制御装置である。この制御装置から第1指令周波数が周波数ジャンプ制御部63に入力される。第1指令周波数は、第1インバータ3Aが第1電動機2Aに供給すべき交流電力の周波数の指令値である。周波数ジャンプ制御部63は、第1インバータ3Aへの第1指令周波数が周波数ジャンプ帯域外にある場合は、第1指令周波数と同じ周波数の交流電力を第1インバータ3Aに出力させる。第1インバータ3Aへの第1指令周波数が周波数ジャンプ帯域内にある場合は、周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を第1インバータ3Aに出力させるように構成されている。このような機能は、周波数ジャンプ機能と呼ばれる。本明細書では、第1インバータ3Aおよび第2インバータ3Bから出力される交流電力の周波数を、出力周波数という。
【0035】
周波数ジャンプ機能は、図9および図10を参照して説明した動作と同じである。すなわち、図9に示すように、指令周波数(本実施形態では第1指令周波数)が上昇して、周波数ジャンプ帯域に達すると、第1インバータ3Aの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の下限値Lに固定される。上昇中の指令周波数が周波数ジャンプ帯域内にある間は、第1インバータ3Aの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の下限値Lに維持される。指令周波数が周波数ジャンプ帯域を超えると、第1インバータ3Aの出力周波数は指令周波数と同じ周波数に復帰する。
【0036】
図10に示すように、指令周波数が低下して、周波数ジャンプ帯域に達すると、第1インバータ3Aの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の上限値Hに固定される。低下中の指令周波数が周波数ジャンプ帯域内にある間は、第1インバータ3Aの出力周波数は周波数ジャンプ帯域の上限値Hに維持される。指令周波数が周波数ジャンプ帯域を下回ると、第1インバータ3Aの出力周波数は指令周波数と同じ周波数に復帰する。
【0037】
第2電動機2Bを運転するときは、上述した外部の制御装置から第2指令周波数が周波数ジャンプ制御部63に入力される。第2指令周波数は、第2インバータ3Bが第2電動機2Bに供給すべき交流電力の周波数の指令値である。第2インバータ3Bは、第2指令周波数に相当する周波数を持つ交流電力を第2電動機2Bに供給する。
【0038】
第2電動機組立体1Bは、第1電動機組立体1Aと実質的に同じ構成を有している。したがって、第1電動機組立体1A用に設定された上記周波数ジャンプ帯域は、第2電動機組立体1Bの運転にも適用できる。すなわち、周波数ジャンプ制御部63は、第2インバータ3Bへの第2指令周波数が周波数ジャンプ帯域外にある場合は、第2指令周波数と同じ周波数の交流電力を第2インバータ3Bに出力させ、第2インバータ3Bへの第2指令周波数が周波数ジャンプ帯域内にある場合は、周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を第2インバータ3Bに出力させるように構成されている。
【0039】
一実施形態では、第1電動機組立体1Aと同様に、第2電動機組立体1Bも、第2インバータ3Bに固定された振動センサを備えてもよい。一例では、振動センサの設置箇所は、第1電動機組立体1Aの振動センサ60と同じである。周波数ジャンプ制御部63は、第2電動機組立体1Bの振動センサの出力値に基づいて、周波数ジャンプ帯域を決定してもよい。
【0040】
第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bが組み込まれた機械システム(例えば給水装置などのポンプ装置)の固有振動数は、機械システム自身のみならず、機械システムに固定された配管などの付加物に依存して変わりうる。本実施形態によれば、振動センサ60と周波数ジャンプ制御部63との組み合わせにより、機械システムが設置された後に、周波数ジャンプ帯域の決定および設定を自動で実行することができる。したがって、第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bを含む機械システムの共振が防止される。
【0041】
周波数ジャンプ帯域の決定および設定は、第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bの通常運転の前の試運転時に実行される。図5に示すように、試運転では、周波数ジャンプ制御部63は、第1インバータ3Aへの第1指令周波数を0から最大周波数(定格周波数)Fmaxまで変化させ、第1電動機2Aの回転速度を変化させながら、振動センサ60の出力値を取得する。本実施形態では、周波数ジャンプ制御部63は、第1インバータ3Aへの第1指令周波数を0から最大周波数Fmaxまで直線的に変化させ、第1電動機2Aの回転速度を一定の加速度で直線的に変化させるように構成されている。周波数ジャンプ制御部63は、取得した振動センサ60の出力値をしきい値と比較し、しきい値よりも大きい振動センサ60の出力値に対応する第1指令周波数の範囲R1,R2を決定し、決定された範囲R1,R2を周波数ジャンプ帯域に設定する。周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ帯域R1,R2を記憶装置63a内に記憶する。図5に示す例では、2つの周波数ジャンプ帯域R1,R2が設定される。周波数ジャンプ制御部63に設定可能な周波数ジャンプ帯域の数は、予め定められている。
【0042】
第1電動機2Aの運転中に、外部の制御装置から周波数ジャンプ制御部63に入力された第1指令周波数が、上記複数の周波数ジャンプ帯域R1,R2のうちのいずれかにある場合は、周波数ジャンプ制御部63は、その周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を第1インバータ3Aに出力させる。
【0043】
周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ帯域R1,R2を第2電動機組立体1Bの運転にも適用する。すなわち、第2電動機2Bの運転中に周波数ジャンプ制御部63に入力された第2指令周波数が、上記複数の周波数ジャンプ帯域R1,R2のうちのいずれかにある場合は、周波数ジャンプ制御部63は、その周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を第2インバータ3Bに出力させる。
【0044】
第1電動機2Aおよび第2電動機2Bを備えた駆動装置では、共振が発生する条件は複雑である。例えば、第1電動機2Aのみが運転しているときは共振は起こらないが、第1第1電動機2Aおよび第2電動機2Bが同じ速度で運転しているときに共振が起こる場合がある。別の例では、第1電動機2Aが定格速度で運転しつつ、第2電動機2Bがある速度で運転しているときに共振が起こる場合がある。このような場合は、第1電動機2Aのみが運転している限りは振動センサ60の出力値はしきい値を上回らないので、図5に示す試運転では、適切な周波数ジャンプ帯域を決定することは難しい。
【0045】
そこで、周波数ジャンプ制御部63は、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bの両方が運転しているときに振動センサ60の出力値を取得し、この取得した出力値に基づいて周波数ジャンプ帯域を決定するように構成されている。本実施形態では、周波数ジャンプ制御部63は、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bの運転中に振動センサ60の出力値を記憶装置63a内に記録し、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bの運転後に周波数ジャンプ帯域を設定するように構成されている。より具体的には、図6に示すように、周波数ジャンプ制御部63は、振動センサ60の出力値を記憶装置63aから読み出し、しきい値よりも大きい振動センサ60の出力値に対応する第1指令周波数の範囲R3を決定し、決定された範囲R3を周波数ジャンプ帯域に設定する。周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ帯域R3を記憶装置63a内に記憶する。
【0046】
図7に示すように、ポンプなどの回転機械が設置される環境によっては、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bの運転中に、外部の制御装置から周波数ジャンプ制御部63に入力される第1指令周波数は、最大周波数(定格周波数)Fmaxまで到達しないことがある。例えば、第1電動機2Aに連結されているポンプの運転周波数が、最大周波数Fmaxよりも低い場合があり得る。このような場合、振動センサ60の出力値がしきい値を超えているが、ピーク(極大値)には到達しないので、周波数ジャンプ制御部63が振動のピークを検出できない場合もある。そこで、このような場合は、周波数ジャンプ制御部63は、振動センサ60の出力値がしきい値を超えたときの第1指令周波数である下限周波数F1と、運転中の最大周波数F2とを決定し、前記最大周波数F2と前記下限周波数F1と差を算出し、この差の2倍の幅をジャンプ幅とし、かつ前記最大周波数F2を中心とした周波数ジャンプ帯域R3を決定する。周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ帯域R3を記憶装置63a内に記憶する。
【0047】
一実施形態では、周波数ジャンプ制御部63は、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bの運転中に周波数ジャンプ帯域R3を設定してもよい。より具体的には、周波数ジャンプ制御部63は、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bの運転中に振動センサ60の出力値を取得し、振動センサ60の出力値をしきい値と比較し、しきい値よりも大きい振動センサ60の出力値に対応する第1指令周波数の範囲R3を決定し、決定された範囲R3を周波数ジャンプ帯域に設定する。周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ帯域R3を記憶装置63a内に記憶する。
【0048】
さらに、一実施形態では、図7を参照して説明したように、周波数ジャンプ制御部63は、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bの運転中に振動センサ60の出力値を取得し、振動センサ60の出力値をしきい値と比較し、振動センサ60の出力値がしきい値を超えたときの第1指令周波数である下限周波数F1と、運転中の最大周波数F2とを決定し、前記最大周波数F2と前記下限周波数F1と差を算出し、この差の2倍の幅をジャンプ幅とし、かつ前記最大周波数F2を中心とした周波数ジャンプ帯域R3を決定してもよい。
【0049】
周波数ジャンプ制御部63は、上述した周波数ジャンプ機能を有効または無効にすることが可能に構成されている。図5を参照して説明した試運転で振動センサ60の出力値がしきい値を超えた場合(すなわち、試運転で周波数ジャンプ帯域R1,R2が設定された場合)は、周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ機能を有効にした状態で、第1電動機2Aの運転を開始する。すなわち、第1インバータ3Aへの第1指令周波数が周波数ジャンプ帯域R1,R2のいずれかにある場合は、その周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を第1インバータ3Aに出力させる。
【0050】
一方、上記試運転で振動センサ60の出力値がしきい値を超えなかった場合(すなわち、上記試運転で周波数ジャンプ帯域R1,R2が設定されなかった場合)は、周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ機能を無効にした状態で、第1電動機2Aの運転を開始する。第1電動機2Aが運転中であって、かつ第2電動機2Bが停止中の間は、周波数ジャンプ制御部63は、第1インバータ3Aへの第1指令周波数に相当する周波数の交流電力を第1インバータ3Aに出力させる。第1電動機2Aの運転中に第2電動機2Bが始動されるときは、周波数ジャンプ制御部63は、周波数ジャンプ機能を有効にする。すなわち、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bが運転中の間は、第1インバータ3Aへの第1指令周波数が周波数ジャンプ帯域R3内にある場合は、周波数ジャンプ帯域R3の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を第1インバータ3Aに出力させる。
【0051】
上記試運転で振動センサ60の出力値がしきい値を超えなかった場合は、第1電動機2Aが単独で運転されている限り共振は起こらない。したがって、周波数ジャンプ機能を無効にすることができる。周波数ジャンプが行われないとき、第1インバータ3Aは指令周波数と同じ周波数の交流電力を第1電動機2Aに出力することができる。結果として、第1電動機2Aは、上述した外部の制御装置からの指令に従って動作することができる。
【0052】
本実施形態によれば、第1電動機2Aのみが運転されているときは、周波数ジャンプ機能は無効とされ、第1電動機2Aおよび第2電動機2Bが運転されているときは、周波数ジャンプ機能は有効とされる。
【0053】
周波数ジャンプ機能は無効から有効に切り替えられたとき、現在の第1指令周波数が周波数ジャンプ帯域R3内にあると、共振が起きるおそれがある。そこで、機械システムの安全な運転を確保するために、周波数ジャンプ制御部63は、振動センサ60の出力値がしきい値を超えたとき、予め設定したジャンプ幅を現在の第1指令周波数に加算または減算し、第1インバータ3Aの出力周波数を瞬間的に変化させるように構成されている。より具体的には、第1指令周波数の上昇中に振動センサ60の出力値がしきい値を超えたとき、周波数ジャンプ制御部63は、現在の第1指令周波数に上記ジャンプ幅を加算する。第1指令周波数の低下中に振動センサ60の出力値がしきい値を超えたとき、周波数ジャンプ制御部63は、現在の第1指令周波数に上記ジャンプ幅を減算する。このような動作により、第1インバータ3Aの出力周波数は瞬間的に機械システムの固有振動数(共振周波数)を飛び越えることができる。結果として、共振を防ぐことができる。
【0054】
機械システムの固有振動数が何らかの原因で変化した結果、周波数ジャンプが正常に機能しているにもかかわらず、共振が起きるおそれがある。そこで、周波数ジャンプ制御部63は、同じようにして、振動センサ60の出力値がしきい値を超えたとき、予め設定したジャンプ幅を現在の指令周波数に加算または減算し、第1インバータ3Aの出力周波数を瞬間的に変化させるように構成されている。より具体的には、第1指令周波数の上昇中に振動センサ60の出力値がしきい値を超えたとき、周波数ジャンプ制御部63は、現在の第1指令周波数に上記ジャンプ幅を加算する。第1指令周波数の低下中に振動センサ60の出力値がしきい値を超えたとき、周波数ジャンプ制御部63は、現在の第1指令周波数に上記ジャンプ幅を減算する。このような動作により、第1インバータ3Aの出力周波数は瞬間的に機械システムの固有振動数(共振周波数)を飛び越えることができる。結果として、共振を防ぐことができる。
【0055】
上述したように、周波数ジャンプ機能は、共振が起こると予想される周波数帯域を回避することで、図1に示す駆動装置が組み込まれた機械システムの安全な運転を確保することができる。しかしながら、上述した周波数ジャンプ帯域が既に設定されているにもかかわらず、共振が発生した場合には、機械システムに何らかの不具合が発生していると推定される。
【0056】
そこで、本実施形態では、周波数ジャンプ制御部63は、第1指令周波数が周波数ジャンプ帯域内にあり、かつ周波数ジャンプ帯域の下限値または上限値に相当する周波数の交流電力を第1インバータ3Aが出力しているときに、あるいは、指令周波数が周波数ジャンプ帯域外で第1インバータ3Aが指令周波数の交流電力を出力しているときに、振動センサ60の出力値が上記しきい値を超えた場合は、第1電動機2Aの運転を停止させるように構成されている。第2電動機2Bが運転している場合は、周波数ジャンプ制御部63は、第2電動機2Bも停止させる。このような動作により、図1に示す駆動装置が組み込まれた機械システムの破損を回避することができる。
【0057】
周波数ジャンプ帯域の数は、駆動装置を含む機械システムの固有振動数の個数に依存する。このため、設定された周波数ジャンプ帯域の数が多すぎる場合は、やはり機械システムに何らかの不具合が発生していると推定される。
【0058】
そこで、本実施形態では、周波数ジャンプ制御部63は、設定された複数の周波数ジャンプ帯域の数が予め定められた数よりも大きい場合は、第1電動機2Aの運転を停止させるように構成されている。第2電動機2Bが運転している場合は、周波数ジャンプ制御部63は、第2電動機2Bも停止させる。このような動作により、機械システムの破損を回避することができる。
【0059】
周波数ジャンプ帯域の数は、電動機組立体1A,1Bを含む機械システムの固有振動数の個数に依存するので、すべての周波数ジャンプ帯域が、第1電動機2Aの運転周波数範囲の全体に占める割合は、所定の割合以下になる。そこで、一実施形態では、すべての周波数ジャンプ帯域の総和の、第1電動機2Aの運転周波数範囲に対する割合が所定の割合を超えた場合は、周波数ジャンプ制御部63は、第1電動機2Aの運転を停止させるように構成されている。第1電動機2Aの運転周波数範囲は、0から第1電動機2Aの最大周波数(定格周波数)Fmaxまでの範囲である。このような動作により、電動機組立体1A,1Bが組み込まれた機械システムの破損を回避することができる。
【0060】
次に、上述した実施形態に係る駆動装置をポンプ装置に適用した例について説明する。図8は、上述した実施形態に係る駆動装置が組み込まれたポンプ装置の一実施形態を示す模式図である。以下に説明する実施形態は、ポンプ装置を給水装置に適用した例であるが、上記駆動装置を備えたポンプ装置は、消火ポンプ装置や汚水ポンプなどの他のタイプのポンプ装置にも適用することができる。以下、上述した実施形態に係る駆動装置が組み込まれたポンプ装置を給水装置として説明する。
【0061】
給水装置は、集合住宅などの建物に水を供給するためのポンプ装置である。図8に示すように、給水装置の吸込み口71は、吸込管73を介して受水槽75に接続されている。受水槽75は、図示しない水道本管から延びる導水管77を通じて水が供給される。給水装置の吐出し口72は給水管78に接続されており、この給水管78は、図示しない建物の給水栓(蛇口など)に連通している。
【0062】
本実施形態の給水装置は、受水槽75からの水を加圧して建物の各給水栓に水を供給するように構成される。このタイプの給水装置は、受水槽方式と呼ばれる。本発明は本実施形態に限定されず、給水装置は、水道本管に直接接続された直結給水方式であってもよい。この直結給水方式の給水装置は、受水槽を設けずに水道本管を直接、給水装置に接続して、水道本管の圧力を利用し、必要に応じて増圧することで建物の各給水栓に水を供給するように構成される。
【0063】
給水装置は、水を加圧する2台のポンプ80と、2台のポンプ80をそれぞれ駆動する第1電動機組立体1Aおよび第2電動機組立体1Bと、ポンプ80の吐出し側に配置された2つの逆止弁82と、逆止弁82の吐出し側に配置された2つのフロースイッチ83と、フロースイッチ83の吐出し側に配置された圧力センサ85および圧力タンク87を備えている。図8では、駆動装置の架台15(図1参照)の図示は省略されている。
【0064】
2台のポンプ80には、2本の吐出し管84Aがそれぞれ接続されており、2つの逆止弁82および2つのフロースイッチ83は、これら吐出し管84Aにそれぞれ取り付けられている。吐出し集合管84は、2本の吐出し管84Aの合流管である。圧力センサ85および圧力タンク87は、吐出し集合管84の流出管84Bに接続されている。圧力センサ85は、2本の吐出し管84Aのうちの一方に接続されてもよい。
【0065】
2台のポンプ80には、これらポンプ80の温度を測定するサーミスタ(温度センサ)90がそれぞれ取り付けられている。吸込管73の一端は各ポンプ80の吸込側に接続されており、吸込管73の他端は、上述した受水槽75に接続されている。本実施形態では、ポンプ80、逆止弁82、およびフロースイッチ83は2組設けられ、これらは並列に配置されている。一実施形態では、3組以上のポンプ80、逆止弁82、およびフロースイッチ83を設けてもよい。その場合は、駆動装置は、3つ以上の電動機組立体を有する。
【0066】
逆止弁82は、ポンプ80が停止しているときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチ83はポンプ80を流れる水の流量を検出する流量検出器である。本実施形態におけるフロースイッチ83は、ポンプ80から吐き出された水の流量が所定の値以下にまで低下したことを検出する。一実施形態として、フロースイッチ83は、ポンプ80に流入する水の流量を検出してもよい。さらに一実施形態として、フロースイッチ83は、ポンプ80毎の2つのフロースイッチ83に代えて、吐出し集合管84の流出管84Bにひとつのフロースイッチ83を設けてもよいし、またはフロースイッチ83がなくてもよい。圧力センサ85は、ポンプ80の吐出し圧力を測定するための水圧測定器である。一実施形態として、水圧測定器は、ポンプ80の吐出し圧力が所定の設定値に達したときに作動する圧力スイッチであってもよい。圧力タンク87は、ポンプ80が停止している間の吐出し圧力を保持するための圧力保持器である。
【0067】
給水装置は、ポンプ80、第1電動機組立体1A、および第2電動機組立体1Bの動作を制御する制御装置91をさらに備えている。周波数ジャンプ制御部63は、制御装置91に通信線89によって接続されている。制御装置91は、第1電動機組立体1Aの第1インバータ3Aに第1指令周波数を送信し、第2電動機組立体1Bの第2インバータ3Bに第2指令周波数を送信するように構成されている。フロースイッチ83、圧力センサ85、およびサーミスタ90は、制御装置91に信号線によって接続されている。
【0068】
第1電動機2Aが運転中であって、第2電動機2Bが停止しているときに、建物での水の使用が停止されると、第1電動機2Aに連結されたポンプ80を流れる水の流量が低下する。フロースイッチ83は、ポンプ80を流れる水の流量が所定の値以下まで低下したこと(過少流量)を検出すると、過少流量検出信号を制御装置91に送る。制御装置91はこの過少流量検出信号を受け、第1インバータ3Aに指令を出して吐出し圧力が所定の停止圧力に達するまでポンプ80の回転速度を一時的に増加させ、圧力タンク87に蓄圧した後にポンプ80を停止させる。このようなポンプ80の停止動作は、小水量停止動作と呼ばれる。また、小水量停止動作にて全てのポンプ80が停止した状態を小水量停止状態と称す。なお、フロースイッチ83に代えて/もしくは加えて、制御装置91は、第1電動機2Aの電流値が所定の値以下であることを検出することで過少流量の検出を行ってもよい。
【0069】
全てのポンプ80が小水量停止状態にあるときに建物内の水が使用されると、圧力タンク87内に保持されている水が建物に供給される。圧力タンク87は、ポンプ80の頻繁な起動停止を防止し、且つ給水圧力の変化を円滑に保つ作用をする。建物内でさらに水が使用されると、圧力タンク87内の水が少なくなり、結果として吐出し圧力が所定の始動圧力以下に低下する。この吐出し圧力は圧力センサ85によって測定される。吐出し圧力が上記始動圧力以下まで低下すると、制御装置91は2台のポンプ80のうちの少なくとも一方の運転を開始するよう、第1インバータ3Aおよび/または第2インバータ3Bに指令を出す。
【0070】
ポンプ80の運転中に、制御装置91は、圧力センサ85から送られる吐出し圧力の測定値に基づいて推定末端圧力一定制御または吐出圧力一定制御を実行する。吐出圧力一定制御では、吐出し圧力が所定の目標圧力を維持するように一定に制御される。推定末端圧力一定制御で制御装置91は、ポンプ80の吐出し圧力の目標圧力を適切に変化させることにより、建物内の末端の給水栓での水圧(末端圧)が所定の値を維持するように制御する。また、制御装置91は、給水先での水の需要が増えたら待機中のポンプ80を追加してもよい。このように、制御装置91は、吐出し圧力の測定値に基づいてポンプ80を制御する。なお、圧力センサ85に代えて圧力スイッチを用いた場合、圧力スイッチは吐出し圧力の測定値が所定の始動圧以下にてON状態となり、制御装置91は該ON状態の測定に基づいてポンプ80の運転を開始する。
【0071】
制御装置91は、圧力センサ85から延びる信号線が接続された圧力信号入力端子92、フロースイッチ83から延びる信号線が接続された流量信号入力端子93、サーミスタ90から延びる信号線が接続された温度信号入力端子94を備えている。吐出し圧力の測定値、過少流量検出信号、およびポンプ温度の測定値は、圧力信号入力端子92、流量信号入力端子93、および温度信号入力端子94を通じて制御装置91に入力されるようになっている。制御装置91は、サーミスタ90から送られてくるポンプ80の温度の測定値が上限値を超えたときは、そのポンプ80に連結された第1電動機2Aまたは第2電動機2Bの運転を停止させる。
【0072】
制御装置91は、漏電遮断器(Earth Leakage Circuit Breaker:ELB)96から延びる信号線が接続されたトリップ信号入力端子98をさらに備えている。漏電遮断器96は、商用電源100に接続された電力線101に設けられている。電力線101は2つのインバータ3A,3Bに接続されており、交流電力は、電力線101を通じてインバータ3A,3Bに供給される。漏電遮断器96が漏電を検出すると、漏電遮断器96はトリップ信号を発する。このトリップ信号は、トリップ信号入力端子98を通じて制御装置91に入力される。制御装置91は、トリップ信号を漏電遮断器96から受信したときは、第1インバータ3Aおよび/または第2インバータ3Bに指令を発して第1電動機2Aおよび/または第2電動機2Bの運転を停止させる。
【0073】
制御装置91は、ポンプ80が運転中であるかどうか(ポンプの発停)を示すON/OFF信号である運転信号や、ポンプ80やインバータ3A,3Bなどの故障を知らせる故障信号を装置外部に出力するための出力端子104をさらに備えている。
【0074】
制御装置91には、操作パネル110が配置されている。操作パネル110は、ポンプ80の試験・停止・自動運転を選択する運転切替スイッチ(操作部)112と、運転・故障を示すランプ113と、給水に関する設定(例えば始動圧や設定圧など)やインバータ3A,3Bの設定等を行うのに使用される操作ボタン(操作部)114とを備えている。操作パネル110は、給水やインバータ3A,3Bに関する情報を表示するための液晶ディスプレイや7セグメント表示器などからなる表示部115を備えている。
【0075】
運転切替スイッチ112を操作することにより、ポンプ80の運転状態を切り替えることができる。また、操作ボタン114を操作することによりインバータ3A,3Bの設定(例えば加速時間や減速時間等の設定)や表示部115に表示する内容を変更する(切り替える)ことができるようになっている。
【0076】
操作パネル110の運転切替スイッチ112を「試験」にすると、周波数ジャンプ制御部63は、図5を参照して説明したように、第1電動機組立体1Aに試運転を実行させ、周波数ジャンプ帯域を決定する。操作パネル110の運転切替スイッチ112を「自動」にすると、インバータ3A,3Bは制御装置91からの指令に従って電動機2A,2Bおよびポンプ80を可変速制御する。運転切替スイッチ112を「停止」にすると、制御装置91は、吐出し圧力の状態にかかわらず、インバータ3A,3B、電動機2A,2Bおよびポンプ80を停止する。
【0077】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0078】
1A 第1電動機組立体
1B 第2電動機組立体
2A 第1電動機
2B 第2電動機
3A 第1インバータ
3B 第2インバータ
5 駆動軸
6 回転子
7 固定子
10 モータケーシング
15 架台
21 インバータケーシング
25 冷却ファン
27,28 軸受
36 冷却フィン
41 電気回路
42 インバータ基板
43 コンデンサ
44 スイッチング素子
50 筒状壁
51 ファンカバー
56 冷却フィン
57 冷却フィン
60 振動センサ
63 周波数ジャンプ制御部
63a 記憶装置
63b 演算装置
68 樹脂
71 吸込み口
72 吐出し口
73 吸込管
75 受水槽
77 導水管
78 給水管
80 ポンプ
82 逆止弁
83 フロースイッチ
84 吐出し集合管
85 圧力センサ
87 圧力タンク
89 通信線
90 サーミスタ(温度センサ)
91 制御装置
92 圧力信号入力端子
93 流量信号入力端子
94 温度信号入力端子
96 漏電遮断器
98 トリップ信号入力端子
100 商用電源
101 電力線
104 出力端子
110 操作パネル
112 運転切替スイッチ(操作部)
113 ランプ
114 操作ボタン(操作部)
115 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10