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特許7133027感光性樹脂組成物、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220831BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220831BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20220831BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20220831BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 514
G03F7/037
G03F7/027 502
G03F7/037 501
G03F7/40 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020548104
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031078
(87)【国際公開番号】W WO2020066315
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2018181760
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太
(72)【発明者】
【氏名】福原 敏明
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/199220(WO,A1)
【文献】特開2006-282880(JP,A)
【文献】特開2007-056196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/027
G03F 7/037
G03F 7/40
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱塩基発生剤と、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体と、光重合開始剤と、重合性化合物とを含む感光性樹脂組成物であって、前記熱塩基発生剤が、200℃以下で塩基を発生し、かつ、発生する塩基となる部位に重合性基を有し、
前記熱塩基発生剤が、下記式(N1)~(N3)のいずれかで表される構造を有する、感光性樹脂組成物。
【化1】
式(N1)中、Xは単結合または2価の連結基であり、R 1 はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表し、n1およびn2は1または2であり、n1+n2は3であり、n3は0または1であり、n3が1のときにXが単結合であることはなく、n1が2のとき2つの[ ]内の基は互いに同じでも異なっていてもよく、n2が2のとき2つのR 1 は互いに同じでも異なっていてもよく、2つのR 1 は互いに連結して環状構造を形成していてもよく、R 1 の少なくとも1つは重合性基を有する;
【化2】
式(N2)中、R 2 は水素原子または有機基を表し、R 3 は有機基を表し、n4およびn5は1または2であり、n4+n5は3であり、n4が2のとき( )内の基は互いに同じでも異なっていてもよく、n5が2のとき2つのR 2 は互いに同じでも異なっていてもよく、2つのR 2 は互いに連結して環状構造を形成していてもよく、R 2 の少なくとも1つは重合性基を有する;
【化3】
式(N3)中、R はn8価の有機基を表し、R およびR はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R ~R はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Aはm価の酸アニオンを表し、mは1~4の整数であり、n7は1~12の整数を表し、n8およびn9は1~12の整数を表し、n8=n9であり、R およびR が連結して環状構造を形成してもよく、R ~R はそれぞれその2つ以上が連結して環状構造を形成してもよく、R ~R の少なくとも1つは重合性基を有する。
【請求項2】
熱塩基発生剤と、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体と、光重合開始剤と、重合性化合物とを含む感光性樹脂組成物であって、前記熱塩基発生剤が、200℃以下で塩基を発生し、かつ、発生する塩基となる部位に重合性基を有し、前記重合性基が、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、又は、式(Z)で表される基である感光性樹脂組成物。
【化4】
式(Z)中、Rcは酸素原子、窒素原子または(n+2)価の芳香族基を表し、RaおよびRbはそれぞれ独立に水素原子または有機基を表し、nは0~6の整数を表し、Rcが酸素原子の場合nは0であり、Rcが窒素原子の場合nは1であり、*は結合手を表す。
【請求項3】
熱塩基発生剤と、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体と、光重合開始剤と、重合性化合物とを含む感光性樹脂組成物であって、前記熱塩基発生剤が、180℃以下で塩基を発生し、かつ、発生する塩基となる部位に重合性基を有する感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱塩基発生剤が下記式(N1)~(N3)のいずれかで表される構造を有する、請求項2又は3に記載の感光性樹脂組成物;
【化5】
式(N1)中、Xは単結合または2価の連結基であり、R1はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表し、n1およびn2は1または2であり、n1+n2は3であり、n3は0または1であり、n3が1のときにXが単結合であることはなく、n1が2のとき2つの[ ]内の基は互いに同じでも異なっていてもよく、n2が2のとき2つのR1は互いに同じでも異なっていてもよく、2つのR1は互いに連結して環状構造を形成していてもよく、R1の少なくとも1つは重合性基を有する;
【化6】
式(N2)中、R2は水素原子または有機基を表し、R3は有機基を表し、n4およびn5は1または2であり、n4+n5は3であり、n4が2のとき( )内の基は互いに同じでも異なっていてもよく、n5が2のとき2つのR2は互いに同じでも異なっていてもよく、2つのR2は互いに連結して環状構造を形成していてもよく、R2の少なくとも1つは重合性基を有する;
【化7】
式(N3)中、Rはn8価の有機基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R~Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Aはm価の酸アニオンを表し、mは1~4の整数であり、n7は1~12の整数を表し、n8およびn9は1~12の整数を表し、n8=n9であり、RおよびRが連結して環状構造を形成してもよく、R~Rはそれぞれその2つ以上が連結して環状構造を形成してもよく、R~Rの少なくとも1つは重合性基を有する。
【請求項5】
前記発生する塩基となる部位が有する重合性基が、エポキシ基、オキセタン基、エチレン性不飽和基、または下記式(Z)で表される基である、請求項1または3に記載の感光性樹脂組成物;
【化8】
式(Z)中、Rcは酸素原子、窒素原子または(n+2)価の芳香族基を表し、RaおよびRbはそれぞれ独立に水素原子または有機基を表し、nは0~6の整数を表し、Rcが酸素原子の場合nは0であり、Rcが窒素原子の場合nは1であり、*は結合手を表す。
【請求項6】
前記ポリマー前駆体がポリイミド前駆体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体が下記式(1)で表される構成単位を有する、請求項に記載の感光性樹脂組成物;
【化9】
式(1)中、AおよびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【請求項8】
前記式(1)におけるR113およびR114の少なくとも一方がラジカル重合性基を含む、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化膜を2層以上7層以下で有し、前記硬化膜の間に金属層を有する、積層体。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化膜の製造方法。
【請求項13】
前記膜を80~450℃で加熱する加熱工程を含む、請求項12に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項14】
前記膜を露光する露光工程および前記膜を現像する現像工程を有する、請求項12または13に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の硬化膜または請求項11に記載の積層体を有する、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】

ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂などの環化して硬化した樹脂は、耐熱性および絶縁性に優れるため、様々な用途に適用されている(例えば、非特許文献1、2参照)。その用途は特に限定されないが、実装用の半導体デバイスを例に挙げると、絶縁膜や封止材の材料、あるいは絶縁膜の保護膜としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いられている。

ポリイミド樹脂等は、一般に、溶剤への溶解性が低い。そのため、環化反応前の前駆体の状態で溶剤に溶解する方法がよく用いられる。これにより、優れた取り扱い性を実現することができ、上述のような各製品を製造する際に基板などに多様な形態で塗布して加工することができる。その後、ポリイミド等の前駆体を環化した構造とし、硬化した製品を形成することができる。ポリイミド樹脂がもつ高い性能に加え、このような製造上の適応性に優れる観点から、その産業上の応用展開がますます期待されている。
【0003】

上述したようにポリイミドを層間絶縁膜の保護膜として適用することが試みられている。

特許文献1には、ポリイミド前駆体と、2,4,6-トリメチルピリジニウム p-トルエンスルホナートとを含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、ポリイミド前駆体と、活性光線照射によってラジカルを発生する化合物と、エチレンオキシド基を有する特定の化合物と、溶剤とを含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、特定の構造を有するN-芳香族グリシン誘導体と高分子前駆体とを含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】

【文献】特開2015-108053号公報
【文献】特開2014-201695号公報
【文献】特開2006-282880号公報
【非特許文献】
【0005】

【文献】サイエンス&テクノロジー株式会社「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月
【文献】柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】

上記特許文献等に述べた通り、ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体(以下、これらを総称して「ポリマー前駆体」ということがある)は上述のように環化(閉環)することで、樹脂組成物を硬化させることが可能である。ポリマー前駆体は加熱により環化するが、このとき塩基が存在すると、これが触媒となって環化が促進され速やかに硬化する。そこで加熱時に塩基を発生する熱塩基発生剤を含有させて、ポリマー前駆体の環化反応を促進させることが考えられる。このような熱塩基発生剤は、加熱前には塩基は放出されず、不用意な環化の進行による硬化を避け、保存時の安定性を実現することも求められる。

また、従来の熱塩基発生剤では、そこから生じた塩基である分子が小さく揮発性を有していた。そのため、所定温度に加熱された環境下では、塩基が系内から揮発してしまうことがあった。組成物中から塩基が揮発してしまえば、塩基を用いたことによるポリマー前駆体の環化の効果は期待できず、得られる膜の破断伸びが劣る結果となってしまう。
【0007】

かかる感光性樹脂組成物における技術上の課題に鑑み、本発明は、ポリマー前駆体を含有する感光性樹脂組成物について、十分な加熱による硬化性を実現することができる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、ならびに半導体デバイスの提供を目的とする。特に、保存安定性にも優れ、かつ、硬化膜としたときの破断伸びにも優れる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、ならびに半導体デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】

本発明者らは、検討を行った結果、発生する塩基に重合性基を付与することを検討した。すなわち、熱塩基発生剤に重合性基を導入しておき、分解された塩基が重合性基を有する構成とした。発生した塩基が重合性基を介して他の分子と重合することにより、塩基がその活性を維持した状態で、かつ、従来よりも高分子の状態で、系中に存在することとなる。これによって塩基の揮発を抑えることができ、加熱硬化時におけるポリマー前駆体の環化を効果的に促進可能であることを見出した。具体的には、下記の手段により、上記課題は解決された。
【0009】

<1>熱塩基発生剤と、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体と、光重合開始剤と、重合性化合物とを含む感光性樹脂組成物であって、熱塩基発生剤が、200℃以下で塩基を発生し、かつ、発生する塩基となる部位に重合性基を有する感光性樹脂組成物。

<2>上記熱塩基発生剤が下記式(N1)~(N3)のいずれかで表される構造を有する<1>に記載の感光性樹脂組成物;

【化1】

式(N1)中、Xは単結合または2価の連結基であり、R1はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表し、n1およびn2は1または2であり、n1+n2は3であり、n3は0または1であり、n3が1のときにXが単結合であることはなく、n1が2のとき2つの[ ]内の基は互いに同じでも異なっていてもよく、n2が2のとき2つのR1は互いに同じでも異なっていてもよく、2つのR1は互いに連結して環状構造を形成していてもよく、R1の少なくとも1つは重合性基を有する;

【化2】

式(N2)中、R2は水素原子または有機基を表し、R3は有機基を表し、n4およびn5は1または2であり、n4+n5は3であり、n4が2のとき( )内の基は互いに同じでも異なっていてもよく、n5が2のとき2つのR2は互いに同じでも異なっていてもよく、2つのR2は互いに連結して環状構造を形成していてもよく、R2の少なくとも1つは重合性基を有する;

【化3】

式(N3)中、R4はn8価の有機基を表し、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R7~R9はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Aはm価の酸アニオンを表し、mは1~4の整数であり、n7は1~12の整数を表し、n8およびn9は1~12の整数を表し、n8=n9であり、R5およびR6が連結して環状構造を形成してもよく、R7~R9はそれぞれその2つ以上が連結して環状構造を形成してもよく、R7~R9の少なくとも1つは重合性基を有する。

<3>上記発生する塩基となる部位が有する重合性基が、エポキシ基、オキセタン基、エチレン性不飽和基、または下記式(Z)で表される基である、<1>または<2>に記載の感光性樹脂組成物;

【化4】

式(Z)中、Rcは酸素原子、窒素原子または(n+2)価の芳香族基を表し、RaおよびRbはそれぞれ独立に水素原子または有機基を表し、nは0~6の整数を表し、Rcが酸素原子の場合nは0であり、Rcが窒素原子の場合nは1であり、*は結合手を表す。

<4>上記ポリマー前駆体がポリイミド前駆体を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。

<5>上記ポリイミド前駆体が下記式(1)で表される構成単位を有する、<4>に記載の感光性樹脂組成物;

【化5】

式(1)中、A1およびA2は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。

<6>上記式(1)におけるR113およびR114の少なくとも一方がラジカル重合性基を含む、<5>に記載の感光性樹脂組成物。

<7>再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、<1>~<6>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。

<8><1>~<7>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。

<9><8>に記載の硬化膜を2層以上7層以下で有し、この硬化膜の間に金属層を有する、積層体。

<10><1>~<7>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化膜の製造方法。

<11>上記膜を80~450℃で加熱する加熱工程を含む、<10>に記載の硬化膜の製造方法。

<12>上記膜を露光する露光工程および上記膜を現像する現像工程を有する、<10>または<11>に記載の硬化膜の製造方法。

<13><8>に記載の硬化膜または<9>に記載の積層体を有する、半導体デバイス。
【発明の効果】
【0010】

本発明により、ポリマー前駆体を含有する感光性樹脂組成物について、十分な加熱による硬化性を実現することができる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、ならびに半導体デバイスを提供可能になった。特に、保存安定性にも優れ、かつ、硬化膜としたときの機械特性(破断伸び)にも優れる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、ならびに半導体デバイスの提供が可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0011】

以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】

以下に記載する本発明における構成要素の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。

本明細書における基(原子団)の表記に於いて、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。また、アルキル基という場合には、鎖状でも環状でもよく、鎖状の場合、直鎖でも分岐でもよい意味である。これらのことは、アルケニル基やアルキレン基、アルケニレン基についても同義である。

本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。

本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の双方、または、いずれかを表す。

本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。

本発明における物性値は特に述べない限り、温度23℃、気圧101325Paの下での値とする。

本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。溶離液は特に述べない限り、THF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0013】

本発明の感光性樹脂組成物(以下、単に、「本発明の組成物」または「本発明の樹脂組成物」ということがある)は、重合性基を有する熱塩基発生剤(以下、「特定の熱塩基発生剤」ということがある)とポリマー前駆体と光重合開始剤と重合性化合物とを含むことを特徴とする。以下、好ましい実施形態に沿って本発明について詳細に説明する。
【0014】

<特定の熱塩基発生剤>

特定の熱塩基発生剤は200℃以下で塩基を発生し、かつ、発生する塩基となる部位に重合性基を有する。

200℃以下で塩基を発生するとは、200℃以下の温度で化合物が異性化するもしくは分解することにより、元の化合物よりも共役酸のpKaの大きな化合物へと変化することを意味する。

上記特定の熱塩基発生剤が塩基を発生する温度(熱塩基発生温度)は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であってもよい。熱塩基発生温度の下限値としては、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが一層好ましい。熱塩基発生剤の塩基を発生する温度を上記上限値以下とすることにより、より高温で発生するものと比し、低いエネルギーの消費で塩基を発生させ、樹脂を硬化させることができるため好ましい。一方、塩基を発生する温度を上記の下限値以上とすることで、室温での保管等、保存時に化合物が分解等して塩基が発生し、これにより樹脂が硬化することを抑制ないし防止することができるため好ましい。

また、特定の熱塩基発生剤は、後述する加熱工程におけて上記温度範囲内で塩基を発生することが好ましい。

なお、特定の熱塩基発生剤は、硬化膜の耐熱温度以下で塩基を発生する化合物であることが好ましい。
【0015】

本発明の実施形態として、塩基が発生する温度が異なる2種以上の特定の熱塩基発生剤を配合することもできる。このような構成とすることにより、例えば、塩基が段階的に発生し、加熱時のポリマー前駆体の環化反応をより効率よく進行させることができる。
【0016】

<<重合性基>>

特定の熱塩基発生剤は重合性基を有する。重合性基は発生する塩基となる部位にある。特定の熱塩基発生剤が有する重合性基の数は特に限定されるものではなく、1つであっても、複数有するものであってもよい。特定の熱塩基発生剤の分子量を抑える観点からは、1分子中の重合性基の数が、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。下限値は特に制限されず、1以上であればよい。

重合性基は、ラジカル重合を行うもの、重付加を行うもの、重縮合を行うものなどが例示され、ラジカル重合を行うもの、重付加を行うものが好ましく、ラジカル重合を行うものがより好ましい。

重合性基としては、例えば、エポキシ基(グリシジル基を含む)、オキセタン基、エチレン性不飽和基、または下記式(Z)で表される基が挙げられる。

エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、メチルアリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基等が挙げられ、中でも、ビニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基が好ましい。(メタ)アクリロイルアミノ基のアミノ基は-NH-に限らず、-NRN-(RNはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、または複素環基であり、具体的には、後述する置換基Tに記載のアルキル基等から選択される)の構造であってもよい。RNは、重合性基が連結する連結基や熱塩基発生剤の母構造と連結して環を形成していてもよい。形成される環としては、後述する環Cnの例が挙げられる。本明細書ではここで例示されるエチレン性不飽和基をEtと称し、これを含む重合性基をPsと称する。
【0017】

【化6】

式(Z)中、Rcは酸素原子、窒素原子または(n+2)価の芳香族基を表す。RaおよびRbはそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。nは0~6の整数を表す。Rcが酸素原子の場合nは0である。Rcが窒素原子の場合nは1である。Rcが例えばベンゼン環の場合nは0~4の整数である。*は結合手を表す。

(n+2)価の芳香族基としては芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)または芳香族複素環基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が挙げられ、より具体的には、後述する芳香族炭化水素環Aryおよび芳香族複素環Aroを含む基が挙げられる。

RaおよびRbが有機基のとき、その有機基としては、それぞれ独立に、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)が挙げられる。なかでもアルキル基が好ましく、具体的には、後述するAlkの例が挙げられる。
【0018】

上記式(Z)で表される基は下記(Z1)、(Z2)または(Z3)で表される基であることが好ましい。
【0019】

【化7】

式中のRa1は有機基である。有機基の例としては、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)が挙げられる。なかでもアルキル基が好ましく、具体的には、後述するAlkの例が挙げられる。

Rb1は水素原子またはメチル基である。

nbは1~5の整数である。naは5-nbとなる整数である。*は結合手である。

Ar1は芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)または芳香族複素環基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が挙げられ、より具体的には、後述する芳香族炭化水素環Aryおよび芳香族複素環Aroを含む基が挙げられる。なかでも、Ar1はフェニル基であることが好ましい。
【0020】

重合性基は中でも、エポキシ基(グリシジル基を含んでも含まなくてもよい)、オキセタン基、またはエチレン性不飽和基であることが好ましく、エポキシ基またはエチレン性不飽和基がより好ましい。
【0021】

<<連結基>>

特定の熱塩基発生剤において、重合性基は、連結基を介して化合物中に導入されていてもよい。重合性基が連結基を伴ってあるいは伴わずに導入されている構造は、例えば、下記の式(Zp)で表すことができる。なお、本明細書において、「重合性基を有する」、「重合性基を含む」などと言うときには、このように重合性基が連結基で母構造に導入されている態様を含むものである。

*-Zp-Ps 式(Zp)

*は熱塩基発生剤の母構造との結合位置を表す。Psは上記の重合性基Psと同義である。

Zpは単結合または連結基である(以下では、単結合を含む意味で連結基Zpないし単にZpと称することがある)。この連結基Zpは、重合性基を塩基発生剤の母構造に連結できるものであればよく、その構造が特に制限されるものではない。したがって、長すぎたり、大きすぎたりしなければ、どのような構造の連結基であってもよい。例えば、重合性基を熱塩基発生剤の母構造に導入する際の、連結基となる部位の反応性や、母構造ないし重合性基との反応性等を考慮して適宜定めることができる。

Zpの連結鎖長も特に制限されないが、実際的な連結基の構造を考慮すると、0~24が好ましく、0~12がより好ましく、0~6がさらに好ましい(0は単結合の意味)。

Zpが連結基であるとき、これを構成する原子としては、炭素原子と水素原子、必要によりヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1種等)を含むものであることが好ましい。連結基中の炭素原子の数は1~24個が好ましく、1~12個がより好ましく、1~6個がさらに好ましい。水素原子は炭素原子等の数に応じて定められればよい。ヘテロ原子の数は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等、それぞれ独立に、0~12個が好ましく、0~6個がより好ましく、0~3個がさらに好ましい。

具体的な連結基の種類としては、広く、後述する連結基Lの例が挙げられる。

中でも、Zpは、アルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、酸素原子(オキシ基)、カルボニル基、―NH-、-NRN-、それらを組み合わせた基であることが好ましい。RNは他の部位と連結して環状構造を形成していてもよい。具体的には、形成される環状構造として下記環Cnの例が挙げられる。
【0022】

連結基Zpは、以下の式z1~z8で表される連結基またはその組合せであることがより好ましい。nzは0~12の整数であり、0~6が好ましく、0~3がより好ましい。*は熱塩基発生剤の母構造との結合位置である。**はPsとの結合位置である。RMは水素原子または上記RNで定義される基である。RMは、下記式z5~z8において、nzのかっこ内のメチレン基と連結して環状構造を形成する態様が挙げられる。具体的には、下記環Cnの例が挙げられ、さらに具体的にはピぺリジン環が挙げられる。

【化8】
【0023】

特定の熱塩基発生剤は、第四級アンモニウム塩であっても、カルボン酸アミドおよびカルバミン酸エステルであってもよいが、カルボン酸アミドであることが好ましい。熱塩基発生剤がカルボン酸アミドの構造であることにより、加熱により化合物構造が変化する前の共役酸pKaが低く、組成物の保存安定性が向上する傾向にある。
【0024】

<<式(N1)>>

特定の熱塩基発生剤は下記式(N1)で表される構造を有することが好ましい。

【化9】
【0025】

式(N1)中、Xは単結合または2価の連結基である。2価の連結基としては、後述する連結基Lの例が挙げられる。なかでも、炭化水素基が好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基またはその組合せに係る基であることが好ましい。Xが2価の連結基であるときの炭素数は、2~18であることが好ましく、2~12であることがより好ましく、2~8であることがさらに好ましい。Xが2価の連結基であるときの連結鎖長は、1~12であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ビニレン基、フェニレン基、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレンメチレン基が挙げられる。Xは本発明の効果を奏する範囲で、適宜置換基Tを有していてもよい。例えば、所定の連結基にヒドロキシ基やカルボキシ基を有する態様などが挙げられる。
【0026】

1はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。有機基としては、後述する置換基Tの中で規定される有機基が挙げられる。有機基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。R1は中でも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。R1は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。
【0027】

n2が2でR1が2つのとき2つとも水素原子であることはない。

n1およびn2は1または2であり、n1+n2は3である。

n3は0または1である。

ただしn3が1のときにXが単結合であることはない。

n1が2のとき2つの[ ]内の基は互いに同じでも異なっていてもよい。

n2が2のとき2つのR1は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0028】

n2が2のとき、2つのR1は互いに連結して環状構造を形成していてもよい。形成される環状構造としては、脂肪族炭化水素環(以下に例示するものを環Cfと称する)(例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等)、芳香族炭化水素環(以下に例示するものを環Crと称する)(ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等)、含窒素複素環(以下に例示するものを環Cnと称する)(例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)、含酸素複素環(以下に例示するものを環Coと称する)(フラン環、ピラン環、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環等)、含硫黄複素環(以下に例示するものを環Csと称する)(チオフェン環、チイラン環、チエタン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環等)などが挙げられる。これらの環を総称して、環Cyと称する。
【0029】

1の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基については上記Psの例が挙げられ、その連結の態様としては上記の連結基Zpの例が挙げられる。
【0030】

上記式(N1)は、下記式(N1-1)、式(N1-2)および式(N1-3)のいずれかであることが好ましい。

【化10】

式(N1-1)中、X1は2価の連結基であり、その好ましい範囲としては上記Xの例が挙げられる。X1は本発明の効果を奏する範囲で、適宜置換基Tを有していてもよい。

11およびR12はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。R11およびR12の有機基としては、それぞれ独立に、後述する置換基Tの中で規定される有機基が挙げられる。有機基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。特に、R11およびR12はそれぞれ独立にアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。ただしR11およびR12の両方が水素原子であることはない。R11およびR12は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

11およびR12は互いに連結して環状構造を形成していてもよい。形成される環としては環Cyの例が挙げられる。

11およびR12の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基については上記Psの例が挙げられ、その連結の態様としては上記の連結基Zpの例が挙げられる。
【0031】

式(N1-2)中、X2は2価の連結基であり、その好ましい範囲としては上記Xの例が挙げられる。X2は本発明の効果を奏する範囲で、適宜置換基Tを有していてもよい。

13およびR14はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。R13およびR14の有機基としては、それぞれ独立に、後述する置換基Tの中で規定される有機基が挙げられる。有機基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。特に、R13およびR14はそれぞれ独立にアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。ただしR13およびR14の両方が水素原子であることはない。R13およびR14は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

13およびR14は互いに連結して環状構造を形成していてもよい。形成される環としては環Cyの例が挙げられる。

13およびR14の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基については上記Psの例が挙げられ、その連結の態様としては上記の連結基Zpの例が挙げられる。
【0032】

式(N1-3)中、X3は2+m4価の連結基であり、なかでも、芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)が好ましく、環構造で言えば後述する芳香族炭化水素環Aryの例が挙げられる。X3は本発明の効果を奏する範囲で、適宜置換基Tを有していてもよい。

1は-(CO)m3-OHで表される基であり、m3は0または1である。

15~R18はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。R15~R18の有機基としては、それぞれ独立に、後述する置換基Tの中で規定される有機基が挙げられる。有機基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。特に、R15~R18はそれぞれ独立にアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。

m4は0~12の整数であり、0~8の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。

15およびR16の両方が水素原子であることはない。R15およびR16は互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyの例が挙げられる。R15およびR16の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基については上記Psの例が挙げられ、その連結の態様としては上記の連結基Zpの例が挙げられる。R15およびR16は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

17およびR18の両方が水素原子であることはない。R17およびR18は互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyの例が挙げられる。R17およびR18の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基については上記Psの例が挙げられ、その連結の態様としては上記の連結基Zpの例が挙げられる。R17およびR18は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

3が芳香族環からなる連結基であるとき、ベンゼン環であることが好ましく、この場合、例えば、Y1として2つのカルボキシ基が置換した態様が挙げられる。具体的に示すと、下記式(N1-3a)が挙げられる。
【0033】

【化11】

式中、R15~R18はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。R15~R18の好ましい態様は先に式(N1-3)で定義したものと同義である。R15とR16、R17とR18はそれぞれその両者が水素原子であることはなく、環Cyを形成してもよい。R15とR16の少なくともいずれか、また、R17とR18の少なくともいずれかは重合性基Psを有し、重合性基は連結基Zpを介在して母構造に導入されていてもよい。
【0034】

以下に、式(N1)で表される特定の熱塩基発生剤をなす化合物を例示するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0035】

【化12】
【0036】

<<式(N2)>>

特定の熱塩基発生剤は下記式(N2)で表される構造を有することも好ましい。

【化13】

式(N2)中、R2は水素原子または有機基を表す。R2の有機基としては、後述する置換基Tの中で規定される有機基が挙げられる。有機基の炭素数は、1以上であることが好ましい。上限としては、30以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましい。特に、R2は、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)またはアリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)が好ましい。R2は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。
【0037】

3は、有機基であり、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~14がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~30が好ましく、6~24がより好ましく、6~18がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~31が好ましく、7~25がより好ましく、7~19がさらに好ましい)、または複素環基含有基(炭素数1~30が好ましく、2~24がより好ましく、3~18がさらに好ましい;複素環喜は5員環、6員環、またはそれらの組み合わせが好ましい;複素環基の具体例としては後述する置換基Tの例が挙げられる)が好ましい。R3は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。
【0038】

n4およびn5は1または2であり、n4+n5は3である。n5が2のときR2が2つとも水素原子であることはない。n4が2のとき( )内の基は互いに同じでも異なっていてもよい。n5が2のとき2つのR2は互いに同じでも異なっていてもよい。2つのR2は互いに連結して環状構造を形成していてもよく、形成される環としては環Cyの例が挙げられる。

2の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基の種類としては重合性基Psの例が挙げられ、母構造への連結は連結基Zpの例が挙げられる。
【0039】

上記式(N2)は下記式(N2-1)または式(N2-2)で表されることが好ましい。

【化14】
【0040】

式(N2-1)中、R21およびR22はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。ただし、R21およびR22の両者が水素原子であることはない。R21およびR22が有機基のとき、その有機基としては、後述する置換基Tの有機基が挙げられる。なかでもアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。R21およびR22は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

21およびR22の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基としては上記の重合性基Psの例が挙げられ、R21、R22側への連結は連結基Zpによりなされることが挙げられる。R21およびR22は互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyの例が挙げられる。

31は有機基であり、アルキル基であることが好ましい。このときのアルキル基は、炭素数1~24が好ましく、1~18がより好ましく、1~12がさらに好ましく、特に第三級アルキル基(例えば、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、アダマンチル基が挙げられる)が好ましい。R31は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。
【0041】

式(N2-2)中、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。ただし、R23およびR24の両者が水素原子であることはない。R23およびR24が有機基のとき、その有機基としては、後述する置換基Tの有機基が挙げられる。なかでもアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。R23およびR24は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

23およびR24の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基としては上記の重合性基Psの例が挙げられ、R23、R24側への連結は連結基Zpによりなされることが挙げられる。R23およびR24は互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyの例が挙げられる。

1は単結合または連結基であり、特に連結基であることが好ましい。L1が連結基であるとき、後述する連結基Lの例が挙げられ、中でもアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。

Ar2は芳香族環であり、芳香族炭化水素環(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~14がさらに好ましい;5員環または6員環あるいは少なくともいずれかの複環であることが好ましい;具体例としてはAryの例が挙げられる)または芳香族複素環(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、2~12がさらに好ましい;ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、ヘテロ原子はそれぞれの原子の数で1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;具体例としてはAroの例、あるいはチオキサンテン10,10-ジオキシドが挙げられる)が好ましい。Ar2は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。
【0042】

式(N2)で表される熱塩基発生剤として下記の化合物を例示することができるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。

【化15】
【0043】

<<式(N3)>>

特定の熱塩基発生剤は下記式(N3)で表される構造を有することも好ましい。

【化16】
【0044】

式(N3)中、R4はn8価の有機基を表す。有機基としては、後述する置換基Tの有機基が挙げられる(ただし価数はn8として解釈する)。なかでも、n8価のアルカン構造の基(炭素数1~18が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)またはアリール構造の基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)であることが好ましい。R4は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

5およびR6はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。有機基としては炭化水素基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基(炭素数1~18が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)および芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)がより好ましく、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)がさらに好ましい。R5およびR6は両方が水素原子であることが特に好ましい。R5およびR6が有機基であるとき、本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。R5およびR6は互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cfの例が挙げられる。

7~R9はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。R7~R9の炭化水素基としては、それぞれ独立に、後述する置換基Tの中で規定される炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。特に、R7~R9はそれぞれ独立に、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。R7~R9の炭化水素基は、本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。R7~R9はそれぞれ2つ以上が連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyが挙げられ、さらに具体的にはCnの例が挙げられ、なかでもピぺリジン環が挙げられる。

Aはm価の酸アニオンを表す。Aの具体例としては、*-COO-(カルボキシレートアニオン)を含む基(*は他の部位との結合手である)が例示され、*-COO-が好ましい。Aの式量は、44以上であることが好ましく、また、300以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。

mは1~4の整数である。n7は1~12の整数を表す。n8およびn9は1~12の整数を表す。ただし、n8=n9である。

7~R9の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基の種類は上記の重合性基Psの例が挙げられ、その連結の形態には連結基Zpの例が挙げられる。
【0045】

上記式(N3)は、下記式(N3-1)、式(N3-2)または式(N3-3)であることが好ましい。

【化17】
【0046】

式(N3-1)中、R41は有機基を表す。R41の有機基としては、後述する置換基Tの有機基が挙げられる。なかでも、アルキル基(炭素数1~18が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)またはアリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)であることが好ましい。R41は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tや重合性基Psを連結基Zp(単結合を含む)を介して有していてもよい。

71、R81およびR91はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。R71、R81およびR91の炭化水素基としては、それぞれ独立に、後述する置換基Tの中で規定される炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。特に、R71、R81およびR91はそれぞれ独立に、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。R71、R81およびR91は、本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。R71、R81およびR91はそれぞれ2つ以上が連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyが挙げられ、さらに具体的にはCnの例が挙げられ、なかでもピぺリジン環が挙げられる。

71、R81およびR91の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基の種類は上記の重合性基Psの例が挙げられ、その連結の形態には連結基Zpの例が挙げられる。

Aは酸アニオンであり、好ましい範囲は式(N3)とおなじである。
【0047】

式(N3-2)中、R42は有機基を表す。R42の有機基としては、後述する置換基Tの有機基が挙げられる。なかでも、アルキル基(炭素数1~18が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)またはアリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)であることが好ましい。R42は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tや重合性基Psを連結基Zp(単結合を含む)を介して有していてもよい。

82は炭化水素基を表す。この炭化水素基としては、後述する置換基Tの中で規定される炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。特に、R82はアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。R82は、本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

m1は0~10の整数である。

92は置換基を表す。R92の置換基としては後述する置換基Tの例が挙げられる。R92は2つ以上あるとき互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyの例が挙げられる。

82およびR92ならびにピペリジン環の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基の種類は上記の重合性基Psの例が挙げられ、その連結の形態には連結基Zpの例が挙げられる。

Aは酸アニオンであり、好ましい範囲は式(N3)とおなじである。
【0048】

式(N3-3)中、R43は有機基を表し、連結基Lの有機基の例が挙げられる。なかでも、アルキレン基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、(オリゴ)アルキレンオキシ基(1つの構成単位中のアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;繰り返し数は1~50が好ましく、1~40がより好ましく、1~30がさらに好ましい;末端の酸素原子は連結される元素の種類に応じて増減すればよい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、それらの組み合わせに係る基が好ましい。R43は、本発明の効果を奏する範囲で置換基Tや重合性基Psを連結基Zp(単結合を含む)を介して有していてもよい。

73、R83、R93、R74、R84およびR94はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。炭化水素基としては、それぞれ独立に、後述する置換基Tの中で規定される炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。特に、R73、R83、R93、R74、R84およびR94はそれぞれ独立に、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。R73、R83、R93、R74、R84およびR94は、本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。

73、R83、R93はそれぞれ2つ以上が連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyが挙げられ、さらに具体的にはCnの例が挙げられ、なかでもピぺリジン環が挙げられる。

74、R84、R94はそれぞれ2つ以上が連結して環を形成していてもよい。形成される環としては環Cyが挙げられ、さらに具体的にはCnの例が挙げられ、なかでもピぺリジン環が挙げられる。

73、R83およびR93の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基の種類は上記の重合性基Psの例が挙げられ、その連結の形態には連結基Zpの例が挙げられる。

74、R84およびR94の少なくとも1つは重合性基を有する。重合性基の種類は上記の重合性基Psの例が挙げられ、その連結の形態には連結基Zpの例が挙げられる。

Aは酸アニオンであり、好ましい範囲は式(N3)とおなじである。
【0049】

式(N3)で表される熱塩基発生剤として下記の化合物を例示することができるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。

【化18】
【0050】

式(N1)~(N3)のなかでは、式(N1)または式(N2)に係る熱塩基発生剤がより好ましい。式(N3)に含まれる塩の形態の熱塩基発生剤では、塩基性のアンモニウムイオンがポリマー前駆体の環化を進めることがあり得る。このような作用がなく保存安定性が一層高まる観点から、塩の形態をとらない特定の熱塩基発生剤が好ましい。
【0051】

特定の熱塩基発生剤の製造方法は常法によればよい。例えば、式(N1)で表される構造を有する熱塩基発生剤は、対応するラクトンまたは環状酸無水物に対しアミンを付加させることによって合成することができる。式(N2)で表される構造を有する熱塩基発生剤は、対応するアミンに酸クロライドまたは酸無水物を反応させることによって合成することができる。式(N3)で表される構造を有する熱塩基発生剤は、国際公開公報第WO2015/199219号パフレットに記載の方法で合成することができる。
【0052】

特定の熱塩基発生剤は、その窒素原子上のプロトン化した部分の共役酸のpKa(以下、単に「特定の熱塩基発生剤の共役酸のpKa」ということがある)が、4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましく、0.4以下であることが一層好ましい。上記pKaの下限値としては、-5以上であることが実際的である。特定の熱塩基発生剤の共役酸のpKaを上記上限値以下とすることで、ポリマー前駆体の環化反応を阻害しない点で好ましい。

本明細書でいうpKaとは、酸から水素イオンが放出される解離反応を考え、その平衡定数Kaをその負の常用対数pKaによって表したものである。pKaが小さいほど強い酸であることを示す。pKaは、特に断らない限り、ACD/ChemSketchによる計算値とする。あるいは、日本化学会編「改定5版 化学便覧 基礎編」に掲載の値を参照してもよい。

特定の熱塩基発生剤の共役酸のpKaについて、加熱による同pKaの上昇(ΔpKa)(加熱前後でのpKaの差)は2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。
【0053】

以下に特定の熱塩基発生剤の例示化合物の一部について、その共役酸のpKaを挙げる。
【0054】

【表1】
【0055】

特定の熱塩基発生剤の分子量は特に限定されないが、2,000以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。発生する塩基の揮発を抑えるために、塩基ないし熱塩基発生剤を高分子量のものとすることが考えられる。しかしながら、高分子の添加剤は組成物への溶解性やポリマー前駆体との相溶性に問題を生じることがある。これに対して、本発明に係る特定の熱塩基発生剤は、重合性基を介して塩基を系内に固定化することができるため、熱塩基発生剤を高分子量のものとする必要がなく、溶解性の問題を解決し得る点で好適である。また、低分子量の熱塩基発生剤とすることにより、配合量当たりの発生する塩基の量(モル数)を増加させることができる点でも好適である。特定の熱塩基発生剤の分子量の下限値は特に制限されないが、80以上であることが実際的である。
【0056】

特定の熱塩基発生剤は感光性樹脂組成物中で0.0025質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、例えば、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であってもよい。

ポリマー前駆体100質量部に対しては、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。上限としては、例えば、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、7.5質量部以下であることがさらに好ましく、5.0質量部以下であってもよい。

特定の熱塩基発生剤の含有量を上記下限値以上とすることで、良好な保存安定性を確保できる点で好ましい。一方で、上記上限値以下とすることで、金属の耐腐食性を確保できる点で好ましい。

さらに言うと、特定の熱塩基発生剤は、上述のように、発生する塩基が重合性基を持ち、高分子化するため、その揮発が効果的に抑えられる。これにより、塩基が組成物中により存在しやすくなり、より効果的な環化促進作用が期待できる。結果として、熱塩基発生剤の添加量を抑えることができ、これを添加することによる副次的な効果を低減させることができ、感光性樹脂組成物の物性やその硬化膜の性能を高めることができる。

特定の熱塩基発生剤は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記で規定の範囲となる。本発明の組成物が2種以上の塩基発生剤含む場合、好ましくは、組成物に含まれる80質量%以上(さらには90質量%以上、特には95質量%以上)が特定の熱塩基発生剤であることが好ましい。

なお、塩基が重合性基を介して固定される相手方の化合物は特に限定されない。例えば、発生した塩基どうしが結合ないし重合する態様が挙げられる。また、重合性化合物と重合してもよい。さらに、ポリマー前駆体が重合性基を有する場合は、かかる重合性基と重合してもよい。また、これらの重合が複合的に進む態様であってもよい。
【0057】

置換基Tとしては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~21が好ましく、7~15がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい)、アルキニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい)、有機アミノ基(-NRN 2)(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アルコキシ基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アシル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アシルオキシ基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリーロイル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アリーロイルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、カルバモイル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、スルファモイル基(炭素数0~12が好ましく、0~6がより好ましく、0~3がさらに好ましい)、アルキルスルホニル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールスルホニル基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、複素環基(酸素原子、窒素原子、および硫黄原子の少なくとも1つを含む;炭素数1~30が好ましく、2~24がより好ましく、3~18がさらに好ましい;5員環または6員環を含むことが好ましい)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イミノ基(=NRN)、アルキリデン基(=C(RN2)、カルボキシ基などの有機基が挙げられる。

また、置換基Tには、ヒドロキシ基、アミノ基(NH2)、スルファニル基、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、ホスホノオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基(=O)等の無機元素からなる基が含まれる。

Nはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、または複素環基であり、具体的には、後述する置換基Tに記載のアルキル基等から選択される。

各置換基に含まれるアルキル部位およびアルケニル部位は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。上記置換基Tが置換基を取りうる基である場合にはさらに置換基Tを有してもよい。例えば、アルキル基にヒドロキシ基が置換したヒドロキシアルキル基になっていてもよい。
【0058】

連結基Lとしては、アルキレン基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アルキニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、(オリゴ)アルキレンオキシ基(1つの構成単位中のアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;繰り返し数は1~50が好ましく、1~40がより好ましく、1~30がさらに好ましい;アルキレン基とオキシ基の化合物中での向きは問わない;末端の酸素原子は連結する元素に応じて増減してよい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、チオカルボニル基、-NH-、-NRN-、およびそれらの組み合わせに係る連結基が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基は上記置換基Tを有していてもよい。例えば、アルキレン基がヒドロキシ基を有していてもよい。

連結基Lの連結鎖長は、1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい。連結鎖長は連結に関与する原子団のうち最短の道程に位置する原子数を意味する。例えば、-CH2-(C=O)-O-であると3となる。

なお、連結基Lで規定されるアルキレン基、アルケニレン基、(オリゴ)アルキレンオキシ基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。

連結基Lを構成する原子としては、炭素原子と水素原子、必要によりヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1種等)を含むものであることが好ましい。連結基中の炭素原子の数は1~24個が好ましく、1~12個がより好ましく、1~6個がさらに好ましい。水素原子は炭素原子等の数に応じて定められればよい。ヘテロ原子の数は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、それぞれ独立に、0~12個が好ましく、0~6個がより好ましく、0~3個がさらに好ましい。
【0059】

<ポリマー前駆体>

本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体を含む。ポリマー前駆体としては、ポリイミド前駆体がより好ましく、下記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド前駆体であることがさらに好ましい。
【0060】

<ポリイミド前駆体>

ポリイミド前駆体としては下記式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。このような構成とすることにより、より膜強度に優れた組成物が得られる。

【化19】

1およびA2は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【0061】

1およびA2は、それぞれ独立に、酸素原子またはNHであり、酸素原子が好ましい。
【0062】

<<R111>>

111は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、直鎖または分岐の脂肪族基、環状の脂肪族基、および芳香族基、複素芳香族基、またはこれらの組み合わせからなる基が例示され、炭素数2~20の直鎖の脂肪族基、炭素数3~20の分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基がより好ましい。

芳香族基の例としては、下記AR-1~AR-10が挙げられる。
【0063】

【化20】
【0064】

式中、Aは、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NHCO-ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-および-SO2-から選択される基であることがより好ましく、-CH2-、-O-、-S-、-SO2-、-C(CF32-、および、-C(CH32-からなる群から選択される2価の基であることがさらに好ましい。
【0065】

111は、ジアミンから誘導されることが好ましい。ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンとしては、直鎖または分岐の脂肪族、環状の脂肪族または芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。

具体的には、ジアミンは、炭素数2~20の直鎖脂肪族基、炭素数3~20の分岐または環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または、これらの組み合わせからなる基を含むものであることが好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含むジアミンであることがより好ましい。
【0066】

ジアミンとしては、具体的には、国際公開公報第WO2015/199220号パンフレットの段落0032に記載の化合物を参照することができ、これを引用して本明細書に組み込む。
【0067】

111は、得られる硬化膜の柔軟性の観点から、-Ar0-L0-Ar0-で表されることが好ましい。但し、Ar0は、それぞれ独立に、芳香族基であり、芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が特に好ましい)が好ましく、フェニレン基がより好ましい。L0は、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NHCO-、およびこれらの組み合わせから選択される基を表す。好ましい範囲は、上述のAと同義である。
【0068】

111は、i線透過率の観点から下記式(51)または式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。

【化21】

50~R57は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の有機基であり、R50~R57の少なくとも1つはフッ素原子、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、または、トリフルオロメチル基である。

50~R57の1価の有機基として、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。

【化22】

58およびR59は、それぞれ独立にフッ素原子、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、または、トリフルオロメチル基である。

式(51)または(61)の構造を与えるジアミン化合物としては、ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらの1種を用いるか、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】

<<R115>>

式(1)におけるR115は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、芳香環を含む基であることが好ましく、下記式(5)または式(6)で表される基がより好ましい。

【化23】

112は、Aと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0070】

式(1)におけるR115が表す4価の有機基は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物基を除去した後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。テトラカルボン酸二無水物は、下記式(7)で表される化合物が好ましい。

【化24】

115は、4価の有機基を表す。R115は式(1)のR115と同義である。
【0071】

テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル誘導体および炭素数1~6のアルコキシ誘導体から選ばれる少なくとも1種が例示される。
【0072】

<<R113およびR114>>

式(1)におけるR113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。R113およびR114の少なくとも一方がラジカル重合性基を含むことが好ましく、両方がラジカル重合性基を含むことがより好ましい。ラジカル重合性基としては、ラジカルの作用により、架橋反応することが可能な基であって、好ましい例として、エチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。

エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、下記式(III)で表される基などが挙げられる。
【0073】

【化25】
【0074】

式(III)において、R200は、水素原子またはメチル基を表し、メチル基がより好ましい。

式(III)において、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CH2CH(OH)CH2-または炭素数4~30の(ポリ)オキシアルキレン基(アルキレン基としては炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい;繰り返し数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい)を表す。なお、(ポリ)オキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基を意味する。

好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、-CH2CH(OH)CH2-が挙げられ、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、-CH2CH(OH)CH2-がより好ましい。

特に好ましくは、R200がメチル基で、R201がエチレン基である。
【0075】

本発明におけるポリイミド前駆体の好ましい実施形態として、R113またはR114の1価の有機基として、1、2または3つの、好ましくは1つの酸基を有する、脂肪族基、芳香族基およびアリールアルキル基などが挙げられる。具体的には、酸基を有する炭素数6~20の芳香族基、酸基を有する炭素数7~25のアリールアルキル基が挙げられる。より具体的には、酸基を有するフェニル基および酸基を有するベンジル基が挙げられる。酸基は、ヒドロキシ基が好ましい。すなわち、R113またはR114はヒドロキシ基を有する基であることが好ましい。

113またはR114が表す1価の有機基としては、現像液の溶解度を向上させる置換基が好ましく用いられる。

113またはR114が、水素原子、2-ヒドロキシベンジル、3-ヒドロキシベンジルおよび4-ヒドロキシベンジルであることが、水性現像液に対する溶解性の点からは、より好ましい。
【0076】

有機溶剤への溶解度の観点からは、R113またはR114は、1価の有機基であることが好ましい。1価の有機基としては、直鎖または分岐のアルキル基、環状アルキル基、芳香族基を含むことが好ましく、芳香族基で置換されたアルキル基がより好ましい。

アルキル基の炭素数は1~30が好ましい(環状の場合は3以上)。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。直鎖または分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、1-エチルペンチル基、および2-エチルヘキシル基が挙げられる。環状のアルキル基は、単環の環状のアルキル基であってもよく、多環の環状のアルキル基であってもよい。単環の環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基が挙げられる。多環の環状のアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基およびピネニル基が挙げられる。また、芳香族基で置換されたアルキル基としては、次に述べる芳香族基で置換された直鎖アルキル基が好ましい。本明細書では、ここで規定したアルキル基を「Alk」と称する。
【0077】

芳香族基としては、具体的には、置換または無置換の芳香族炭化水素基(基を構成する環状構造としては、ベンゼン環(上記の式AR-1、AR-2、AR-3)、ナフタレン環、ビフェニル環(例えば上記の式AR-5、AR-6、AR-7)、ビスフェニル環(例えば上記の式AR-8、AR-9、AR-10)、フルオレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環等が挙げられる)(本明細書では、ここで規定した芳香族炭化水素基を「Ary」と称する)あるいは置換または無置換の芳香族複素環基(基を構成する環状構造としては、フルオレン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環またはフェナジン環)(本明細書では、ここで規定した芳香族複素環を「Aro」と称する)である。
【0078】

また、ポリイミド前駆体は、構成単位中にフッ素原子を有することも好ましい。ポリイミド前駆体中のフッ素原子含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以下がより好ましい。上限は特にないが50質量%以下が実際的である。
【0079】

また、基板との密着性を向上させる目的で、シロキサン構造を有する脂肪族基を式(1)で表される構成単位に共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(パラアミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどが挙げられる。
【0080】

式(1)で表される構成単位は、式(1-A)または式(1-B)で表される構成単位であることが好ましい。

【化26】

11およびA12は、酸素原子またはNHを表し、R111およびR112は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、R113およびR114の少なくとも一方は、ラジカル重合性基を含む基であることが好ましく、ラジカル重合性基であることがより好ましい。
【0081】

11、A12、R111、R113およびR114は、それぞれ独立に、好ましい範囲が、式(1)におけるA1、A2、R111、R113およびR114の好ましい範囲と同義である。

112の好ましい範囲は、式(5)におけるR112と同義であり、酸素原子であることがより好ましい。

式中のカルボニル基のベンゼン環への結合位置は、式(1-A)において、4,5,3’,4’であることが好ましい。式(1-B)においては、1,2,4,5であることが好ましい。
【0082】

ポリイミド前駆体において、式(1)で表される構成単位は1種であってもよいが、2種以上であってもよい。また、式(1)で表される構成単位の構造異性体を含んでいてもよい。また、ポリイミド前駆体は、上記の式(1)の構成単位のほかに、他の種類の構成単位も含んでもよい。
【0083】

本発明におけるポリイミド前駆体の一実施形態として、全構成単位の50モル%以上、さらには70モル%以上、特には90モル%以上が式(1)で表される構成単位であるポリイミド前駆体が例示される。上限としては100モル%以下が実際的である。
【0084】

ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000~500000であり、より好ましくは5000~100000であり、さらに好ましくは10000~50000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250000であり、より好ましくは、2000~50000であり、さらに好ましくは、4000~25000である。

ポリイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0085】

ポリイミド前駆体は、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体とジアミンを反応させて得られうる。好ましくは、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化させた後、ジアミンと反応させて得られる。

ポリイミド前駆体の製造方法では、反応に際し、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。

有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンが例示される。
【0086】

ポリイミド前駆体の製造に際し、固体を析出する工程を含んでいることが好ましい。具体的には、反応液中のポリイミド前駆体を、水中に沈殿させ、テトラヒドロフラン等のポリイミド前駆体が可溶な溶剤に溶解させることによって、固体析出することができる。
【0087】

<ポリベンゾオキサゾール前駆体>

ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。

【化27】

121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【0088】

121は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、脂肪族基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6が特に好ましい)および芳香族基(炭素数6~22が好ましく、6~14がより好ましく、6~12が特に好ましい)の少なくとも一方を含む基が好ましい。R121を構成する芳香族基としては、上記式(1)のR111の例が挙げられる。上記脂肪族基としては、直鎖の脂肪族基が好ましい。R121は、4,4’-オキシジベンゾイルクロリドに由来することが好ましい。

式(2)において、R122は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、上記式(1)におけるR115と同義であり、好ましい範囲も同様である。R122は、2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来することが好ましい。

123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、上記式(1)におけるR113およびR114と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0089】

ポリベンゾオキサゾール前駆体は上記の式(2)の構成単位のほかに、他の種類の構成単位も含んでよい。
【0090】

ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000~500000であり、より好ましくは5000~100000であり、さらに好ましくは10000~50000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250000であり、より好ましくは、2000~50000であり、さらに好ましくは、4000~25000である。

ポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量の分散度は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0091】

本発明の感光性樹脂組成物における、ポリマー前駆体の含有量は、組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることがさらに一層好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物における、ポリマー前駆体の含有量は、組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以下であることが一層好ましい。

本発明の感光性樹脂組成物は、ポリマー前駆体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0092】

<重合開始剤>

本発明の感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。また、熱重合開始剤(好ましくは熱ラジカル重合開始剤)を、熱塩基発生剤から発生した塩基の重合を促進させるものとしても併用してもよい。
【0093】

<<光重合開始剤>>

光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。

光重合開始剤は、約300~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0094】

本発明の好ましい実施形態に係る感光性樹脂組成物が特定の熱塩基発生剤と光重合開始剤とを含むことにより、以下の作用が期待される。

感光性樹脂組成物を半導体ウェハなどの基板等に適用して感光性樹脂組成物層を形成した後、加熱することにより、複素環含有ポリマーの前駆体を環化し組成物を硬化(一次硬化)することができる。この加熱硬化において、本発明に係る特定の熱塩基発生剤が有用である。次いで、硬化した感光性樹脂組成物層に光を照射する。これにより、上記光重合開始剤の作用により発生するラジカルに起因する硬化が起こる(二次硬化)。このとき、ポリマー前駆体が重合性基を有する場合の重合性基や重合性化合物が重合することにより光硬化する形態としてもよい。その結果、光照射部における溶解性を低下させることができる。この作用を利用し、溶解性の異なる領域を簡便に作製できるという利点がある。具体的には、電極部のみをマスクするパターンを持つフォトマスクを介して、感光性樹脂組成物層を露光する。これにより、電極のパターンにしたがって、溶解性の異なる領域を作製できる。
【0095】

光重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、国際公開公報第WO2015/199220号パンフレットの段落0107~119の記載を参照することができ、これを引用して本明細書に組み込む。
【0096】

本発明の感光性樹脂組成物においては、特に光重合開始剤としてオキシム化合物(オキシム系の光重合開始剤)を用いることが好ましい。オキシム系の光重合開始剤は、分子内に >C=N-O-C(=O)- の連結基を有する。

市販品ではIRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04、IRGACURE OXE 369(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-14052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831およびアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)も用いることができる。また、DFI-091(ダイトーケミックス株式会社製)を用いることができる。
【0097】

光重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが一層好ましい。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0098】

<<熱重合開始剤>>

本発明では、熱重合開始剤を用いてもよい。熱重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始または促進させる化合物である。熱重合開始剤を添加することによって、ポリマー前駆体の環化と共に、ポリマー前駆体の重合反応を進行させることもできるので、より高度な耐熱化が達成できることとなる。

熱重合開始剤として、具体的には、特開2008-63554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられる。
【0099】

熱重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは5~15質量%である。熱重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱重合開始剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0100】

<重合性化合物>

本発明の感光性樹脂組成物は重合性化合物を含み、ラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。重合性基としては、上記の重合性基Psの例が挙げられ、中でも、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合を有する基Etの例が挙げられる。重合性化合物に含まれる重合性基は、とくに(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0101】

重合性化合物が有する重合性基の数は、1個でもよく、2個以上でもよいが、重合性化合物は重合性基を2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましい。上限は、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましい。
【0102】

重合性化合物の分子量は、2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、900以下がさらに好ましい。重合性化合物の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0103】

本発明の感光性樹脂組成物は、現像性の観点から、重合性基(好ましくはラジカル重合性基)を2個以上含む2官能以上の重合性化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、3官能以上の重合性化合物を少なくとも1種含むことがより好ましい。また、2官能の重合性化合物と3官能以上の重合性化合物との混合物であってもよい。なお、重合性化合物の官能基数は、1分子中における重合性基の数を意味する。
【0104】

重合性化合物の具体例としては、国際公開公報第WO2015/199220号パンフレットの段落0056~0100に記載の化合物を参照することができ、これを引用して本明細書に組み込む。
【0105】

重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320;日本化薬(株)製、A-TMMT:新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH;新中村化学工業社製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0106】

重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるサートマー社製のSR-209、231、239、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0107】

重合性化合物の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。

重合性化合物を上記下限値以上で用いることにより、パターン形成の観点で利点があり好ましい。また、重合性化合物を上記上限値以下で用いることにより、破断伸び率の観点で利点があり好ましい。

重合性化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0108】

<溶剤>

本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、スルホキシド類、アミド類などの化合物が挙げられる。

エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチルおよび2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等が好適なものとして挙げられる。

エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が好適なものとして挙げられる。

ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が好適なものとして挙げられる。

芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等が好適なものとして挙げられる。

スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。

アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N -エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が好適なものとして挙げられる。
【0109】

溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。

本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される1種の溶剤、または、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用が特に好ましい。
【0110】

溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることがさらに好ましく、40~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、所望の厚さと塗布方法によって調節すればよい。

溶剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0111】

<マイグレーション抑制剤>

本発明の感光性樹脂組成物は、さらにマイグレーション抑制剤を含むことが好ましい。

マイグレーション抑制剤を含むことにより、金属層(金属配線)由来の金属イオンが感光性樹脂組成物層内へ移動することを効果的に抑制可能となる。

マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環および6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類およびメルカプト基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0112】

また、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0113】

その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-15701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-59656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116および0118に記載の化合物などを使用することができる。
【0114】

マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。

【化28】
【0115】

感光性樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることがさらに好ましい。

マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0116】

<重合禁止剤>

本発明の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。

重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、p-tert-ブチルカテコール、1,4-ベンゾキノン、ジフェニル-p-ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、フェノチアジン、N-ニトロソジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシアミンアンモニウム塩、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチル)フェニルメタンなどが好適に用いられる。また、特開2015-127817号公報の段落0060に記載の重合禁止剤、および、国際公開WO2015/125469号の段落0031~0046に記載の化合物を用いることもできる。

本発明の感光性樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~3質量%であることがより好ましく、0.05~2.5質量%であることがさらに好ましい。

重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0117】

<金属接着性改良剤>

本発明の感光性樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させるための金属接着性改良剤を含んでいることが好ましい。金属接着性改良剤としては、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0118】

シランカップリング剤の例としては、特開2014-191002号公報の段落0062~0073に記載の化合物、国際公開WO2011/080992A1号の段落0063~0071に記載の化合物、特開2014-191252号公報の段落0060~0061に記載の化合物、特開2014-41264号公報の段落0045~0052に記載の化合物、国際公開WO2014/097594号の段落0055に記載の化合物が挙げられる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。また、シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Etはエチル基を表す。

【化29】
【0119】

また、金属接着性改良剤は、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもできる。
【0120】

本発明の感光性樹脂組成物が金属接着性改良剤を有する場合、その含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~30質量%であり、より好ましくは0.5~15質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.5~5質量%の範囲である。上記下限値以上とすることで硬化工程後の硬化膜と金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることで硬化工程後の硬化膜の耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0121】

<その他の添加剤>

本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、光硬化促進剤、増感色素、連鎖移動剤、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、無機粒子、硬化剤、硬化触媒、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、その合計配合量は組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0122】

<<増感色素>>

本発明の感光性樹脂組成物は、増感色素を含んでいてもよい。増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、熱硬化促進剤、熱重合開始剤、光重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱硬化促進剤、熱重合開始剤、光重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸あるいは塩基を生成する。増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0123】

本発明の感光性樹脂組成物が増感色素を含む場合、増感色素の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることがさらに好ましい。増感色素は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0124】

<<連鎖移動剤>>

本発明の感光性樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、およびGeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物(例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール類、2-メルカプトベンゾチアゾール類、2-メルカプトベンズオキサゾール類、3-メルカプトトリアゾール類、5-メルカプトテトラゾール類等)を好ましく用いることができる。
【0125】

本発明の感光性樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0126】

<<界面活性剤>>

本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種類の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種類の界面活性剤を使用できる。また、下記界面活性剤も好ましい。

【化30】
【0127】

本発明の感光性樹脂組成物が界面活性剤を有する場合、界面活性剤の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005~1.0質量%である。界面活性剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。界面活性剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0128】

<<高級脂肪酸誘導体>>

本発明の感光性樹脂組成物は、酸素に起因する重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加して、塗布後の乾燥の過程で組成物の表面に偏在させてもよい。

本発明の感光性樹脂組成物が高級脂肪酸誘導体を有する場合、高級脂肪酸誘導体の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。高級脂肪酸誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。高級脂肪酸誘導体が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0129】

<その他の含有物質についての制限>

本発明の感光性樹脂組成物の水分含有量は、塗布面性状の観点から、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.6質量%未満がさらに好ましい。
【0130】

本発明の感光性樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満がさらに好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、クロム、ニッケルなどが挙げられる。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。

また、本発明の感光性樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、本発明の感光性樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、本発明の感光性樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフロロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0131】

本発明の感光性樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満がさらに好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満がさらに好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子が挙げられる。塩素原子および臭素原子、あるいは塩素イオンおよび臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0132】

本発明の感光性樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0133】

<組成物の調製>

本発明の感光性樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。

また、組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列または並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径または材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下が好ましい。

フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
【0134】

<硬化膜、積層体、半導体デバイス、およびそれらの製造方法>

次に、硬化膜、積層体、半導体デバイス、およびそれらの製造方法について説明する。

本発明の硬化膜は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化してなる。本発明の硬化膜の膜厚は、例えば、0.5μm以上とすることができ、あるいは、1μm以上とすることができる。また、上限値としては、100μm以下とすることができ、30μm以下とすることもできる。
【0135】

本発明の硬化膜を2層以上、さらには、3~7層積層して積層体としてもよい。本発明の硬化膜を2層以上有する積層体は、硬化膜の間に金属層を有する態様が好ましい。このような金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
【0136】

本発明の硬化膜の適用可能な分野としては、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、あるいは上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー株式会社「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
【0137】

また、本発明における硬化膜は、オフセット版面またはスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカーおよび誘電層の製造などにも用いることもできる。
【0138】

本発明の硬化膜の製造方法は、本発明の感光性樹脂組成物を用いることを含む。具体的には、以下の(a)を少なくとも含み、(a)と(d)を含むことが好ましく、(a)~(d)の工程を含むことがより好ましい。

(a)感光性樹脂組成物を基板に適用して膜を形成する膜形成工程

(b)膜形成工程の後、膜を露光する露光工程

(c)露光された感光性樹脂組成物層に対して、現像処理を行う現像工程

(d)現像された感光性樹脂組成物を80~450℃で加熱する加熱工程

この実施形態のように、現像の後、加熱することで、露光された樹脂層をさらに硬化させることができる。この加熱工程で本発明の熱塩基発生剤が作用し十分な硬化性が得られる。
【0139】

本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法は、本発明の硬化膜の製造方法を含む。本実施形態の積層体の製造方法は、上記の硬化膜の製造方法に従って、硬化膜を形成後、さらに、再度、(a)の工程、または(a)~(c)の工程、あるいは(a)~(d)の工程を行う。特に、上記各工程を順に、複数回、例えば、2~5回(すなわち、合計で3~6回)行うことが好ましい。このように硬化膜を積層することにより、積層体とすることができる。本発明では特に硬化膜を設けた部分の上または硬化膜の間、あるいはその両者に金属層を設けることが好ましい。なお、積層体の製造においては、(a)~(d)の工程をすべて繰り返す必要はなく、上記のとおり、少なくとも(a)、好ましくは(a)~(c)または(a)~(d)の工程を複数回行うことで硬化膜の積層体を得ることができる。

以下これらの詳細を説明する。
【0140】

<<膜形成工程(層形成工程)>>

本発明の好ましい実施形態に係る製造方法は、感光性樹脂組成物を基板に適用して膜(層状)にする、膜形成工程(層形成工程)を含む。

基板の種類は、用途に応じて適宜定めることができるが、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基板、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板など特に制約されない。本発明では、特に、半導体作製基板が好ましく、シリコン基板がより好ましい。

また、樹脂層の表面や金属層の表面に感光性樹脂組成物層を形成する場合は、樹脂層や金属層が基板となる。

感光性樹脂組成物を基板に適用する手段としては、塗布が好ましい。

具体的には、適用する手段としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、およびインクジェット法などが例示される。感光性樹脂組成物層の厚さの均一性の観点から、より好ましくはスピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法である。方法に応じて適切な固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの樹脂層を得ることができる。また、基板の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウェハ等の円形基板であればスピンコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基板であればスリットコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~2000rpmの回転数で、10秒~1分程度適用することができる。
【0141】

<<乾燥工程>>

本発明の製造方法は、感光性樹脂組成物層を形成後、膜形成工程(層形成工程)の後に、溶剤を除去するために乾燥する工程を含んでいてもよい。好ましい乾燥温度は50~150℃で、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃がさらに好ましい。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、3分~7分がより好ましい。
【0142】

<<露光工程>>

本発明の製造方法は、上記感光性樹脂組成物層を露光する露光工程を含んでもよい。露光量は、感光性樹脂組成物を硬化できる限り特に定めるものではないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で100~10000mJ/cm2照射することが好ましく、200~8000mJ/cm2照射することがより好ましい。

露光波長は、190~1000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。

露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、F2エキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極端紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線等が挙げられる。本発明の感光性樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、なかでも、i線による露光が好ましい。これにより、特に高い露光感度が得られうる。
【0143】

<<現像処理工程>>

本発明の製造方法は、露光された感光性樹脂組成物層に対して、現像処理を行う現像処理工程を含んでもよい。現像を行うことにより、露光されていない部分(非露光部)が除去される。現像方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、例えば、パドル、スプレー、浸漬、超音波等の現像方法が採用可能である。

現像は現像液を用いて行う。現像液は、露光されていない部分(非露光部)が除去されるのであれば、特に制限なく使用できる。現像液は、有機溶剤を含むことが好ましく、現像液が有機溶剤を90%以上含むことがより好ましい。本発明では、現像液は、ClogP値が-1~5の有機溶剤を含むことが好ましく、ClogP値が0~3の有機溶剤を含むことがより好ましい。ClogP値は、ChemBioDrawにて構造式を入力して計算値として求めることができる。

有機溶剤としては、上記<溶剤>の項で例示したものを好適に用いることができる。

本発明では、特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトンが好ましく、シクロペンタノンがより好ましい。

現像液は、50質量%以上が有機溶剤であることが好ましく、70質量%以上が有機溶剤であることがより好ましく、90質量%以上が有機溶剤であることがさらに好ましい。また、現像液は、100質量%のものが有機溶剤であってもよい。
【0144】

現像時間としては、10秒~5分が好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、通常、20~40℃で行うことができる。

現像液を用いた処理の後、さらに、リンスを行ってもよい。リンスは、現像液とは異なる溶剤で行うことが好ましい。例えば、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤を用いてリンスすることができる。リンス時間は、5秒~1分が好ましい。
【0145】

<<加熱工程>>

本発明の製造方法は、膜形成工程(層形成工程)、乾燥工程、または現像工程の後に加熱する工程を含むことが好ましい。加熱工程では、ポリマー前駆体の環化反応が進行する。このとき、特定の熱塩基発生剤が感光性を阻害することなく良好な露光現像性を実現できる。そして、現像後に残された樹脂パターンを加熱することで、特定の熱塩基発生剤が塩基を放出し、樹脂の環化による速やかかつ十分な硬化が進行する。

加熱工程における層の加熱温度(最高加熱温度)としては、50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましく、150℃以上であることが一層好ましく、160℃以上であることがより一層好ましく、170℃以上であることがさらに一層好ましい。上限としては、500℃以下であることが好ましく、450℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることがさらに好ましく、250℃以下であることが一層好ましく、220℃以下であることがより一層好ましく、200℃以下であることがさらに一層好ましい。

加熱は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分の昇温速度で行うことが好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分がさらに好ましい。昇温速度を1℃/分以上とすることにより、生産性を確保しつつ、塩基の過剰な揮発を防止することができ、昇温速度を12℃/分以下とすることにより、硬化膜の残存応力を緩和することができる。

加熱開始時の温度は、20℃~150℃が好ましく、20℃~130℃がより好ましく、25℃~120℃がさらに好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。例えば、感光性樹脂組成物を基板の上に適用した後、乾燥させる場合、この乾燥後の膜(層)の温度であり、例えば、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点よりも、30~200℃低い温度から徐々に昇温させることが好ましい。

加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、10~360分であることが好ましく、20~300分であることがより好ましく、30~240分であることがさらに好ましい。

特に多層の積層体を形成する場合、硬化膜の層間の密着性の観点から、加熱温度は180℃~320℃で加熱することが好ましく、180℃~260℃で加熱することがより好ましい。その理由は定かではないが、この温度とすることで、層間のポリマー前駆体のエチニル基同士が架橋反応を進行しているためと考えられる。
【0146】

加熱は段階的に行ってもよい。例として、25℃から180℃まで3℃/分で昇温し、180℃にて60分保持し、180℃から200℃まで2℃/分で昇温し、200℃にて120分保持する、といった前処理工程を行ってもよい。前処理工程としての加熱温度は100~200℃が好ましく、110~190℃であることがより好ましく、120~185℃であることがさらに好ましい。この前処理工程においては、米国特許9159547号公報に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は10秒間~2時間程度の短い時間で行うとよく、15秒~30分間がより好ましい。前処理は2段階以上のステップとしてもよく、例えば100~150℃の範囲で前処理工程1を行い、その後に150~200℃の範囲で前処理工程2を行ってもよい。

さらに、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
【0147】

加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことがポリマー前駆体の分解を防ぐ点で好ましい。酸素濃度は、50ppm(体積比)以下が好ましく、20ppm(体積比)以下がより好ましい。
【0148】

<<金属層形成工程>>

本発明の製造方法は、現像処理後の感光性樹脂組成物層の表面に金属層を形成する(e)金属層形成工程を含んでいることが好ましい。

金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金およびタングステンが例示され、銅およびアルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。

金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、リフトオフ、電解メッキ、無電解メッキ、エッチング、印刷、およびこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィおよびエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解メッキを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。

金属層の厚さとしては、最も厚肉部で、0.1~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0149】

<<積層工程>>

本発明の製造方法は、さらに、積層工程を含むことが好ましい。

積層工程とは、硬化膜(樹脂層)または金属層の表面に、再度、(a)膜形成工程(層形成工程)、(b)露光工程、(c)現像処理工程、(d)加熱工程を、この順に行うことを含む一連の工程である。ただし、(d)加熱工程は積層の最後または中間に一括して行う態様としてもよい。すなわち、(a)~(c)の工程を所定の回数繰り返し行い、その後に(d)の加熱をすることで、積層された感光性樹脂組成物層を一括で硬化する態様としてもよい。また、(c)現像工程の後には(e)金属層形成工程を含んでもよく、このときにも都度(d)の加熱を行っても、所定回数積層させた後に一括して(d)の加熱を行ってもよい。積層工程には、さらに、上記乾燥工程や加熱工程等を適宜含んでいてもよいことは言うまでもない。

積層工程後、さらに積層工程を行う場合には、上記加熱工程後、上記露光工程後、または、上記金属層形成工程後に、さらに、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。

上記積層工程は、2~5回行うことが好ましく、3~5回行うことがより好ましい。

例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のような、樹脂層が3層以上7層以下の構成が好ましく、3層以上5層以下がさらに好ましい。

すなわち、本発明では特に、金属層を設けた後、さらに、上記金属層を覆うように、上記感光性樹脂組成物の硬化膜(樹脂層)を形成する態様が好ましい。具体的には、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(e)金属層形成工程、(d)加熱工程の順序で繰り返す態様、あるいは、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(e)金属層形成工程の順序で繰り返し、最後または中間に一括して(d)加熱工程を設ける態様が挙げられる。感光性樹脂組成物層(樹脂)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、感光性樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
【0150】

本発明は、本発明の硬化膜または積層体を有する半導体デバイスも開示する。本発明の感光性樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載および図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0151】

以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0152】

<合成例1>

[ピロメリト酸二無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよびベンジルアルコールからのポリイミド前駆体(A-1:ラジカル重合性基を有さないポリイミド前駆体)の合成]

14.06g(64.5ミリモル)のピロメリト酸二無水物(140℃で12時間乾燥)と、14.22g(131.58ミリモル)のベンジルアルコールを、50mLのN-メチルピロリドンに懸濁させ、モレキュラーシーブで乾燥させた。懸濁液を100℃で3時間加熱した。加熱してから数分後に透明な溶液が得られた。反応混合物を室温に冷却し、21.43g(270.9ミリモル)のピリジンおよび90mLのN-メチルピロリドンを加えた。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±4℃に保ちながら16.12g(135.5ミリモル)のSOCl2を10分かけて加えた。SOCl2を加えている間、粘度が増加した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、100mLのN-メチルピロリドンに11.08g(58.7ミリモル)の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-5~0℃で20分かけて反応混合物に滴下した。次いで、反応混合物を0℃で1時間反応させたのち、エタノールを70g加えて、室温で1晩撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して除き、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再びろ過した。次いで、得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥した。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、18,000であった。
【0153】

A-1

【化31】
【0154】

<合成例2>

[ピロメリト酸二無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-2:ラジカル重合性基を有するポリイミド前駆体)の合成]

14.06g(64.5ミリモル)のピロメリト酸二無水物(140℃で12時間乾燥した)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を混合し、60℃の温度で18時間撹拌して、ピロメリト酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した後、合成例1と同様の方法で4,4’-ジアミノジフェニルエーテルでポリイミド前駆体に変換し、合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、19,000であった。
【0155】

A-2

【化32】
【0156】

<合成例3>

[4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-3:ラジカル重合性基を有するポリイミド前駆体)の合成]

20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥した)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)のピリジンと、100gのダイグライムとを混合し、60℃の温度で18時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した後、合成例1と同様の方法で4,4’-ジアミノジフェニルエーテルでポリイミド前駆体に変換し、合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、18,000であった。
【0157】

A-3

【化33】
【0158】

<合成例4>

[4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル(オルトトリジン)および2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-4:ラジカル重合性基を有するポリイミド前駆体)の合成]

20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥した)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライムとを混合し、60℃の温度で18時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した後、合成例1と同様の方法で4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニルでポリイミド前駆体に変換し、合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、19,000であった。
【0159】

A-4

【化34】
【0160】

<合成例5>

[2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'-オキシジベンゾイルクロリドからのポリベンゾオキサゾール前駆体(A-5)の合成]

N-メチル-2-ピロリドン100mLに、2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92gを添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0~5℃に保ちながら、11.21gの4,4'-オキシジベンゾイルクロリドを10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。次いで、6リットルの水の中でポリベンゾオキサゾール前駆体を沈殿させ、水-ポリベンゾオキサゾール前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリベンゾオキサゾール前駆体を濾過して除き、6リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリベンゾオキサゾール前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥した。このポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量は、15,000であった。
【0161】

A-5

【化35】
【0162】

実施例および比較例

<感光性樹脂組成物の調製>

下記表2に記載の成分を混合し、各感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を、細孔の幅が0.8μmのフィルターを通して加圧ろ過した。表に記載の化合物の名称や構造などの詳細については、表の下に注記として示している。

調製した各感光性樹脂組成物について、下記の評価試験を行った。結果を表3に示した。
【0163】

<保存安定性>

上記ろ過後の感光性樹脂組成物の粘度(0日)を、E型粘度計を用いて測定した。密閉容器中、25℃で14日間、感光性樹脂組成物を静置した後、再度E型粘度計を用いて粘度(14日)を測定した。以下の式から、粘度変動率を算出した。粘度変動率が低ければ低い程、保存安定性が高いことを表す。

粘度変動率=|100×{1-(粘度(14日)/粘度(0日))}|

粘度の測定は25℃で行うこととし、その他はJIS Z 8803:2011に準拠することとした。

A:粘度変動率が5%以下

B:粘度変動率が5%を超えて10%以下

C:粘度変動率が10%を超えて15%以下

D:粘度変動率が15%を超えて20%以下

E:粘度変動率が20%を超える
【0164】

<破断伸び>

上記ろ過後の各感光性樹脂組成物を、シリコンウェハ上にスピンコート法により層状に適用して、感光性樹脂組成物層を形成した。感光性樹脂組成物層を形成したシリコンウェハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウェハ上に20μmの厚さの均一な感光性樹脂組成物層とした。シリコンウェハ上の感光性樹脂組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cm2の露光エネルギーで露光し、露光した感光性樹脂組成物層(樹脂層)を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、180℃に達したのちこの温度を3時間維持した。硬化後の樹脂層を4.9%フッ化水素酸溶液に浸漬し、シリコンウェハから樹脂層を剥離し、樹脂膜1を得た。
【0165】

樹脂膜1の破断伸びを、引張り試験機(テンシロン)を用いて測定した。具体的には、クロスヘッドスピード300mm/分、幅10mm、試料長50mmとしてフィルムの長手方向、幅方向について、25℃、65%相対湿度(RH)の環境下にてJIS-K6251:2017に準拠して破断伸びを測定した。破断伸びは、Eb(%)=(Lb-L0)/L0(Eb:切断時伸び、L0:試験前の試験片の長さ、Lb:試験片が切断した時の試験片の長さ)で算出した。評価は長手方向、幅方向それぞれの破断伸びを各5回ずつ測定し、長手方向と幅方向の平均値を用いた。

A:破断伸びが85%を超えた

B:破断伸びが80%を超えて85%以下

C:破断伸びが75%を超えて80%以下

D:破断伸びが70%を超えて75%以下

E:破断伸びが70%以下
【0166】

【表2】

【表3】
【0167】

(A)ポリイミド前駆体:上記で合成例を示した各化合物
【0168】

(B)熱塩基発生剤等

【化36】

【化37】
【0169】

熱塩基発生剤について、上記実施例における例示番号と、先に一般的な説明で例示した化合物の番号との関係を以下の表4に示しておく。

【表4】
【0170】

比較例の化合物

【化38】
【0171】

(C)光重合開始剤

C-1:IRGACURE OXE 01(BASF社製)

C-2:IRGACURE OXE 02(BASF社製)

C-3:IRGACURE 369(BASF社製)
【0172】

(D)重合性化合物

D-1:A-DPH(新中村化学工業社製)

D-2:SR-209(サートマー社製)

【化39】

D-3:A-TMMT(新中村化学工業社製)
【0173】

(E)重合禁止剤

E-1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(東京化成工業社製)

E-2:パラベンゾキノン(東京化成工業社製)

E-3:パラメトキシフェノール(東京化成工業社製)
【0174】

(F)マイグレーション抑制剤

F-1:先に例示した化合物 M-1

F-2:先に例示した化合物 M-2

F-3:先に例示した化合物 M-3

F-4:先に例示した化合物 M-4
【0175】

(G)金属接着性改良剤

G-1:先に例示した化合物 SC-1

G-2:先に例示した化合物 SC-2

G-3:先に例示した化合物 SC-3
【0176】

(I)溶剤

I-1:γ-ブチロラクトン(三和油化社製)

I-2:ジメチルスルホキシド(和光純薬工業社製)

I-3:N-メチル-2-ピロリドン(Ashland社製)
【0177】

上記の結果から分かるとおり、発生する塩基となる部分に重合性基を有する熱塩基発生剤を用いた実施例の感光性樹脂組成物においては、いずれの硬化膜も良好な破断伸度(80%以上)を示した(実施例1~25)。硬化膜が高い破断伸度を示すということは、感光性樹脂組成物の熱硬化が十分に進行したことを意味し、B-1~B-20の熱塩基発生剤は膜硬化温度である180℃で塩基を効果的に発生させ、かつ、発生した塩基の揮発が抑制されたものと考えられる。さらに、必要に応じて、感光性樹脂組成物を保存安定性に優れたものとすることもでき(実施例1、3~7、9、11~24)、そこでは加熱前の塩基性が低く抑えられポリマー前駆体の経時での硬化が抑制されたものと解された。

一方、重合性基をもたない熱塩基発生剤を用いた比較例の感光性樹脂組成物では、いずれも、熱硬化性樹脂の硬化反応が十分に進行しなかったと考えられ、結果として硬化膜の破断伸度が大きく劣った。また、保存安定性についても、比較例1及び2は極めて低い結果となった。
【0178】

<実施例100>

実施例1の感光性樹脂組成物1を、細孔の幅が1.0μmのフィルターを通して加圧濾過した後、銅薄層が形成された樹脂基板の表面にスピニング(3500rpm、30秒)して適用した。樹脂基板に適用した感光性樹脂組成物を、100℃で2分間乾燥した後、ステッパー(ニコン製、NSR1505i6)を用いて露光した。露光はマスクを介して、波長365nmで200mJ/cm2の露光量で露光した。露光の後、ベークを行い、シクロペンタノンで30秒間現像し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で20秒間リンスし、パターンを得た。

次いで、230℃で3時間加熱し、再配線層用層間絶縁膜を形成した。この再配線層用層間絶縁膜は、絶縁性に優れていた。
【0179】

また、上記特許文献3(特開2006-282880号公報)に記載の化合物X-4およびX-5は、光照射によって塩基を発生するが、200℃以下では、塩基の発生は認められなかった。