(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】光電変換素子、撮像素子、光センサ、光電変換素子用材料、撮像素子用材料、光センサ用材料
(51)【国際特許分類】
H01L 51/42 20060101AFI20220901BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220901BHJP
H01L 27/30 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
H01L31/08 T
H01L27/146 E
H01L27/30
(21)【出願番号】P 2021511449
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012327
(87)【国際公開番号】W WO2020203355
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019067494
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 知昭
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 孝一
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207722(WO,A1)
【文献】特開2015-065266(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111811(WO,A1)
【文献】特開2011-254071(JP,A)
【文献】特開2010-129919(JP,A)
【文献】特開2012-049352(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107987093(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/00-51/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で積層してなる光電変換素子であって、
前記光電変換膜が少なくとも、式(1)で表され
、且つ、分子量が450~1000である化合物
と、n型半導体材料とを含む、光電変換素子。
【化1】
式(1)中、Ar
1及びAr
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、芳香環を表す。
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香環を表す。
L
1及びL
2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、CR
1R
2、SiR
3R
4、又はNR
5を表す。
R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
n1及びn2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。但し、前記n1が0を表す場合、L
1は存在せず、前記Ar
1と前記Ar
2とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。また、前記n2が0を表す場合、L
2は存在せず、前記Ar
3と前記Ar
4とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。
A
1は、式(1-A)~式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す。
【化2】
式(1-A)中、R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化3】
式(1-B)中、X
b1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
b7=CR
b8-、SiR
b9R
b10、NR
b11、又はCR
b12R
b13を表す。
R
b1~R
b13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化4】
式(1-C)中、X
c1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
c7=CR
c8-、SiR
c9R
c10、NR
c11、又はCR
c12R
c13を表す。
R
c1~R
c13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【請求項2】
前記A
1が、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す、請求項
1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記式(1-B)中、X
b1が、硫黄原子、酸素原子、又はNR
b11を表し、且つR
b11が、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、
前記式(1-C)中、X
C1が、硫黄原子、酸素原子、又はNR
c11を表し、且つR
c11が、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す、請求項
1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記式(1)中、Ar
1及びAr
4の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有する、請求項1
~3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記式(1)中、Ar
2及びAr
3の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、チオフェン環を表す、請求項1
~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記光電変換膜が、前記式(1)で表される化合物と前記n型半導体材料とが混合された状態で形成されるバルクへテロ構造を有する、請求項1
~5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記導電性膜と前記透明導電性膜との間に、前記光電変換膜の他に1種以上の中間層を有する、請求項1
~6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記n型半導体材料が、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類を含む、請求項1
~7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
請求項1
~8のいずれか1項に記載の光電変換素子を有する、撮像素子。
【請求項10】
請求項1
~8のいずれか1項に記載の光電変換素子を有する、光センサ。
【請求項11】
下記式(1)で表され
、且つ、分子量が450~1000である化合物を含む、光電変換素子用材料。
【化5】
式(1)中、Ar
1及びAr
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、芳香環を表す。
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香環を表す。
L
1及びL
2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、CR
1R
2、SiR
3R
4、又はNR
5を表す。
R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
n1及びn2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。但し、前記n1が0を表す場合、L
1は存在せず、前記Ar
1と前記Ar
2とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。また、前記n2が0を表す場合、L
2は存在せず、前記Ar
3と前記Ar
4とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。
A
1は、式(1-A)~式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す。
【化6】
式(1-A)中、R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化7】
式(1-B)中、X
b1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
b7=CR
b8-、SiR
b9R
b10、NR
b11、又はCR
b12R
b13を表す。
R
b1~R
b13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化8】
式(1-C)中、X
c1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
c7=CR
c8-、SiR
c9R
c10、NR
c11、又はCR
c12R
c13を表す。
R
c1~R
c13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
但し、A
1
が式(1-A)を表すとき、Ar
2
で表される単環の芳香環が置換基を2個以上有する場合には、置換基同士が結合して環を形成しない。また、Ar
3
で表される単環の芳香環が置換基を2個以上有する場合には、置換基同士が結合して環を形成しない。
【請求項12】
下記式(1)で表される化合物を含む、撮像素子用材料。
【化9】
式(1)中、Ar
1及びAr
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、芳香環を表す。
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香環を表す。
L
1及びL
2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、CR
1R
2、SiR
3R
4、又はNR
5を表す。
R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
n1及びn2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。但し、前記n1が0を表す場合、L
1は存在せず、前記Ar
1と前記Ar
2とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。また、前記n2が0を表す場合、L
2は存在せず、前記Ar
3と前記Ar
4とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。
A
1は、式(1-A)~式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す。
【化10】
式(1-A)中、R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化11】
式(1-B)中、X
b1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
b7=CR
b8-、SiR
b9R
b10、NR
b11、又はCR
b12R
b13を表す。
R
b1~R
b13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化12】
式(1-C)中、X
c1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
c7=CR
c8-、SiR
c9R
c10、NR
c11、又はCR
c12R
c13を表す。
R
c1~R
c13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【請求項13】
下記式(1)で表される化合物を含む、光センサ用材料。
【化13】
式(1)中、Ar
1及びAr
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、芳香環を表す。
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香環を表す。
L
1及びL
2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、CR
1R
2、SiR
3R
4、又はNR
5を表す。
R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
n1及びn2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。但し、前記n1が0を表す場合、L
1は存在せず、前記Ar
1と前記Ar
2とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。また、前記n2が0を表す場合、L
2は存在せず、前記Ar
3と前記Ar
4とは、前記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。
A
1は、式(1-A)~式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す。
【化14】
式(1-A)中、R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化15】
式(1-B)中、X
b1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
b7=CR
b8-、SiR
b9R
b10、NR
b11、又はCR
b12R
b13を表す。
R
b1~R
b13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【化16】
式(1-C)中、X
c1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CR
c7=CR
c8-、SiR
c9R
c10、NR
c11、又はCR
c12R
c13を表す。
R
c1~R
c13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*1は、前記Ar
2との結合位置を表し、*2は、前記Ar
3との結合位置を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、撮像素子、光センサ、光電変換素子用材料、撮像素子用材料、及び、光センサ用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換膜を有する素子(例えば、撮像素子)の開発が進んでいる。
例えば、特許文献1において、所定の化合物を含む層を有する有機光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、撮像素子及び光センサ等の性能向上の要求に伴い、これらに使用される光電変換素子に求められる諸特性に関しても更なる向上が求められている。
例えば、光電変換素子には、光電変換効率の更なる向上が求められている。
また、製造上の要請から、光電変換素子は、長時間(例えば5時間)連続的に蒸着に供している蒸着材を用いて光電変換膜を蒸着製造した場合でも安定した性能であることが求められている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、光電変換効率に優れ、且つ、長時間連続的に蒸着に供している蒸着材を用いて光電変換膜を蒸着製造した場合でも安定した性能を有する光電変換素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、撮像素子、光センサ、光電変換素子用材料、撮像素子用材料、及び、光センサ用材料を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、下記構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
〔1〕 導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で積層してなる光電変換素子であって、上記光電変換膜が少なくとも、後述する式(1)で表される化合物、及びn型半導体材料を含む、光電変換素子。
〔2〕 上記式(1)で表される化合物の分子量が、450~1000である、〔1〕に記載の光電変換素子。
〔3〕 上記A1が、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す、〔1〕又は〔2〕に記載の光電変換素子。
〔4〕 上記式(1-B)中、Xb1が、硫黄原子、酸素原子、又はNRb11を表し、且つRb11が、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、
上記式(1-C)中、XC1が、硫黄原子、酸素原子、又はNRc11を表し、且つRc11が、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔5〕 上記式(1)中、Ar1及びAr4の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔6〕 上記式(1)中、Ar2及びAr3の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、チオフェン環を表す、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔7〕 上記光電変換膜が、上記式(1)で表される化合物と上記n型半導体材料とが混合された状態で形成されるバルクへテロ構造を有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔8〕 上記導電性膜と上記透明導電性膜との間に、上記光電変換膜の他に1種以上の中間層を有する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔9〕 上記n型半導体材料が、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類を含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の光電変換素子を有する、撮像素子。
〔11〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の光電変換素子を有する、光センサ。
〔12〕 後述する式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子用材料。
〔13〕 後述する式(1)で表される化合物を含む、撮像素子用材料。
〔14〕 後述する式(1)で表される化合物を含む、光センサ用材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光電変換効率に優れ、且つ、長時間連続的に蒸着に供している蒸着材を用いて光電変換膜を蒸着製造した場合でも安定した性能を有する光電変換素子を提供できる。
また、本発明によれば、撮像素子、光センサ、光電変換素子用材料、撮像素子用材料、及び、光センサ用材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
【
図2】光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光電変換素子]
以下に、本発明の光電変換素子の好適実施形態について説明する。
また、本明細書において、「置換基」は、特段の断りがない限り、後述する置換基Wで例示される基が挙げられる。
【0011】
(置換基W)
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wは、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等)、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、及び、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、及びビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基(ヘテロ環基といってもよい。)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、及びボロン酸基(-B(OH)2)が挙げられる。また、上述の各基は、可能な場合、更に置換基(例えば、上述の各基のうちの1以上の基)を有してもよい。例えば、置換基を有してもよいアルキル基も、置換基Wの一形態として含まれる。
また、置換基Wが炭素原子を有する場合、置換基Wが有する炭素数は、例えば、1~20である。
置換基Wが有する水素原子以外の原子の数は、例えば、1~30である。
【0012】
また、本明細書において、特段の断りがない限り、アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、及びシクロペンチル基等が挙げられる。
また、アルキル基は、例えば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、及びトリシクロアルキル基であってもよく、これらの環状構造を部分構造として有してもよい。
置換基を有してもよいアルキル基において、アルキル基が有してもよい置換基は特に制限されないが、例えば、置換基Wが挙げられ、アリール基(好ましくは炭素数6~18、より好ましくは炭素数6)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数5~18、より好ましくは炭素数5~6)、又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子又は塩素原子)が好ましい。
【0013】
また、本明細書において、特段の断りがない限り、アルコキシ基におけるアルキル基部分は上記アルキル基が好ましい。アルキルチオ基におけるアルキル基部分は上記アルキル基が好ましい。
置換基を有してもよいアルコキシ基において、アルコキシ基が有してもよい置換基は、置換基を有してもよいアルキル基における置換基と同様の例が挙げられる。置換基を有してもよいアルキルチオ基において、アルキルチオ基が有してもよい置換基は、置換基を有してもよいアルキル基における置換基と同様の例が挙げられる。
【0014】
また、本明細書において、炭素数6以下のアルキル基と記載する場合、炭素数としては、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
炭素数6以下のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
炭素数6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、及びシクロペンチル基等が挙げられる。
また、炭素数6以下のアルキル基が有してもよい置換基としては特に制限されないが、例えば、置換基Wが挙げられ、アリール基(好ましくは炭素数6~18、より好ましくは炭素数6)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数5~18、より好ましくは炭素数5~6)、又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子又は塩素原子)が好ましい。
【0015】
また、本明細書において、炭素数6以下のアルコキシ基と記載する場合、炭素数6以下のアルコキシ基におけるアルキル基部分としては、上述した炭素数6以下のアルキル基と同様の態様が挙げられる。
また、上記炭素数6以下のアルコキシ基において、アルコキシ基が有してもよい置換基としては、上述した炭素数6以下のアルキル基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0016】
また、本明細書において、炭素数6以下のアルキルチオ基と記載する場合、炭素数6以下のアルキルチオ基におけるアルキル基部分としては、上述した炭素数6以下のアルキル基と同様の態様が挙げられる。
また、上記炭素数6以下のアルキルチオ基において、アルキルチオ基が有してもよい置換基としては、上述した炭素数6以下のアルキル基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0017】
また、本明細書において、特段の断りがない限り、アリール基は、環員数が6~18のアリール基が好ましい。
アリール基は、単環でも多環でもよい。
アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントレニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
置換基を有してもよいアリール基において、アリール基が有してもよい置換基は特に制限されないが、例えば、置換基Wが挙げられ、置換基を有してもよいアルキル基(好ましくは炭素数1~10)が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0018】
また、本明細書において、特段の断りがない限り、ヘテロアリール基は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及び/又はホウ素原子等のヘテロ原子を含む、単環又は多環の環構造を有するヘテロアリール基が好ましい。
上記ヘテロアリール基の環員原子中の炭素数は特に制限されないが、3~18が好ましく、3~5がより好ましい。
ヘテロアリール基の環員原子中のヘテロ原子の数は特に制限されず、1~10が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が更に好ましい。
ヘテロアリール基の環員数は特に制限されないが、5~8が好ましく、5~7がより好ましく、5~6が更に好ましい。
上記ヘテロアリール基は、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、プテリジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、ピリミジニル基、キナゾリル基、ピリダジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾピリジニル基、及びカルバゾリル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいヘテロアリール基において、ヘテロアリール基が有してもよい置換基は特に制限されないが、例えば、置換基Wが挙げられる。
【0019】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0020】
本明細書において、水素原子は、軽水素原子(通常の水素原子)であってもよいし、重水素原子(二重水素原子等)であってもよい。
【0021】
本発明の光電変換素子の特徴点としては、光電変換膜が、後述する式(1)で表される化合物(以下、「特定化合物」とも言う)及びn型半導体材料を含む点が挙げられる。
本発明の光電変換素子がこのような構成をとることで上記課題を解決できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、特定化合物は、中心環である縮合環(式(1)中の、式(1-A)~式(1-C)で表されるいずれかの構造)の両側に、所定の構造の芳香環が結合している構造を有する。この結果として、特定化合物を含む光電変換膜は、電荷を効率的に分離でき、光電変換効率に優れると推測される。また、特定化合物を含む光電変換膜は、特定化合物の上述した構造に起因して製造性(特に、連続蒸着適性)にも優れている(以下、「光電変換膜の連続蒸着適性に優れる」ともいう。)と推測される。この結果として、光電変換膜が長時間の連続的な蒸着によって蒸着製造される場合であっても光電変換素子の性能は高い安定性を有する。
以下、光電変換効率が優れること、及び/又は光電変換膜の連続蒸着適性に優れることを、単に「本発明の効果が優れる」ともいう。
【0022】
図1に、本発明の光電変換素子の一実施形態の断面模式図を示す。
図1に示す光電変換素子10aは、下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とも記す)11と、電子ブロッキング膜16Aと、後述する特定化合物を含む光電変換膜12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とも記す)15とがこの順に積層された構成を有する。
図2に別の光電変換素子の構成例を示す。
図2に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング膜16Aと、光電変換膜12と、正孔ブロッキング膜16Bと、上部電極15とがこの順に積層された構成を有する。なお、
図1及び
図2中の電子ブロッキング膜16A、光電変換膜12、及び正孔ブロッキング膜16Bの積層順は、用途及び特性に応じて、適宜変更してもよい。
【0023】
光電変換素子10a(又は10b)では、上部電極15を介して光電変換膜12に光が入射されることが好ましい。
また、光電変換素子10a(又は10b)を使用する場合には、電圧を印加できる。この場合、下部電極11と上部電極15とが一対の電極をなし、この一対の電極間に、1×10
-5~1×10
7V/cmの電圧を印加することが好ましい。性能及び消費電力の点から、印加される電圧としては、1×10
-4~1×10
7V/cmがより好ましく、1×10
-3~5×10
6V/cmが更に好ましい。
なお、電圧印加方法については、
図1及び
図2において、電子ブロッキング膜16A側が陰極となり、光電変換膜12側が陽極となるように印加することが好ましい。光電変換素子10a(又は10b)を光センサとして使用した場合、また、撮像素子に組み込んだ場合も、同様の方法により電圧を印加できる。
後段で、詳述するように、光電変換素子10a(又は10b)は撮像素子用途に好適に適用できる。
【0024】
以下に、本発明の光電変換素子を構成する各層の形態について詳述する。
【0025】
〔光電変換膜〕
光電変換膜は、特定化合物を含む膜である
以下、特定化合物について詳述する。
【0026】
<式(1)で表される化合物(特定化合物)>
特定化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0027】
【0028】
式(1)中、Ar1及びAr4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子(ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子等が挙げられる。なお、以下に記載するハロゲン原子についても同様である)からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、芳香環を表す。
【0029】
上記芳香環としては、単環でも多環でもよい。多環の芳香環としては、5員環及び6員環の少なくともいずれかを含む縮合環であることが好ましい。上記縮合環を形成する環の数としては、2~4が好ましく、2~3がより好ましい。
上記芳香環としては、芳香族炭化水素環でもよいし、芳香族複素環でもよい。
上記芳香族複素環のヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられる。上記芳香族複素環の環員原子中のヘテロ原子の数としては、1~5が好ましく、1~2がより好ましい。
上記芳香環の環員数としては、5~20が好ましく、6~10がより好ましい。
上記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、キノキサリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、イミダゾール環、及びオキサゾール環が挙げられる。
【0030】
Ar1及びAr4で表される芳香環が有してもよい置換基としては、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基である。
上記置換基を有してもよいシリル基としては、例えば、-Si(RS1)(RS2)(RS3)で表される基が挙げられる。RS1、RS2、及びRS3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。
【0031】
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ar1及びAr4の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有することが好ましい。
なお、置換基を有してもよいアリール基、及び置換基を有してもよいヘテロアリール基の具体例としては、各々、上述した通りである。
【0032】
また、Ar1及び/又はAr4で表される芳香環が、上述した置換基を2個以上有する場合、置換基同士が結合して環を形成してもよい。例えば、Ar1で表される芳香環が置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基と置換基を有してもよいアリール基とを有する場合、上記置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基と上記置換基を有してもよいアリール基とは結合して環を形成していてもよい。
なお、本発明の効果がより優れる点で、Ar1及び/又はAr4で表される単環の芳香環が上述した置換基を2個以上有する場合、置換基同士が結合して環を形成しないことが好ましい。
【0033】
また、式(1)中、n1が1を表し、Ar1が置換基としてアリール基を有する場合、上記アリール基とAr1で表される芳香環は環を形成しないことが好ましい。また、n2が1を表し、Ar4が置換基としてアリール基を有する場合、上記アリール基とAr4で表される芳香環は環を形成しないことが好ましい。
【0034】
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香環を表す。
【0035】
Ar2及びAr3で表される単環の芳香環としては特に制限されず、芳香族炭化水素環でもよいし、芳香族複素環でもよい。
上記芳香族複素環のヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられる。上記芳香族複素環の環員原子中のヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。
Ar2及びAr3で表される単環の芳香環の環員数としては、5~10が好ましく、5又は6がより好ましく、6が更に好ましい。
Ar2及びAr3で表される単環の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チアゾール環、チオフェン環、イミダゾール環、及びオキサゾール環等が挙げられる。
Ar2及びAr3で表される単環の芳香環としては、なかでも、ベンゼン環、又はチオフェン環が好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ar2及びAr3で表される単環の芳香環がいずれもチオフェン環であることが好ましい。
【0036】
Ar2及びAr3で表される単環の芳香環が有してもよい置換基としては、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基である。
なお、上記置換基を有してもよいシリル基としては、Ar1及びAr4で表される芳香環が有してもよい置換基として上述した、置換基を有してもよいシリル基と同様のものが挙げられる。
【0037】
なお、Ar2及び/又はAr3で表される単環の芳香環が、上述した置換基を2個以上有する場合、置換基同士が結合して環を形成してもよい。例えば、Ar2で表される単環の芳香環が置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基と置換基を有してもよいアリール基とを有する場合、上記置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基と上記置換基を有してもよいアリール基とは結合して環を形成していてもよい。
なお、本発明の効果がより優れる点で、Ar2及び/又はAr3で表される単環の芳香環が上述した置換基を2個以上有する場合、置換基同士が結合して環を形成しないことが好ましい。
【0038】
式(1)中、L1及びL2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、CR1R2、SiR3R4、又はNR5を表す。
また、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
R1~R5で表される置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基が好ましい。
【0039】
式(1)中、n1及びn2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
但し、n1が0を表す場合、L1は存在せず、Ar1とAr2とは、式(1)中に明示された単結合のみで連結する。また、n2が0を表す場合、L2は存在せず、Ar3とAr4とは、上記式(1)中に明示された単結合のみで連結する。
つまり、n1及びn2がいずれも0を表す場合、式(1)で表される化合物は、下記式(1X)で表される化合物を意図する。また、n1が1を表し、且つn2が0を表す場合、式(1)で表される化合物は、下記式(1Y)で表される化合物を意図する。また、n1が0を表し、且つn2が1を表す場合、式(1)で表される化合物は、下記式(1Z)で表される化合物を意図する。
なお、下記式(1X)~式(1Z)中、Ar1~Ar4、L1、L2、及びA1は、それぞれ式(1)中のAr1~Ar4、L1、L2、及びA1と同義であり、好適態様も同じである。
【0040】
【0041】
式(1)中、A1は下記式(1-A)~式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す。
以下、式(1-A)~式(1-C)の各構造についてそれぞれ説明する。
【0042】
【0043】
式(1-A)中、Ra1~Ra6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
なお、Ra1~Ra6(好ましくは、Ra3とRa4、又は、Ra1とRa6)は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
Ra1~Ra6としては、なかでも水素原子が好ましい。
式(1-A)中、*1は、式(1)中のAr2との結合位置を表し、*2は、式(1)中のAr3との結合位置を表す。
【0044】
【0045】
式(1-B)中、Xb1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CRb7=CRb8-、SiRb9Rb10、NRb11、又はCRb12Rb13を表す。
Xb1としては、なかでも、硫黄原子、酸素原子、NRb11、又は-CRb7=CRb8-が好ましく、硫黄原子、酸素原子、又はNRb11がより好ましい。
【0046】
Rb1~Rb13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
なお、Rb1~Rb13(好ましくは、Rb2とRb3、Rb3とRb4、又は、Rb4とRb5)は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0047】
特に、Rb1~Rb8としては、水素原子が好ましい。
また、Rb9~Rb13で表される置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基が好ましい。
また、Xb1がCRb12Rb13で表される場合、Rb12及びRb13が連結する炭素原子がスピロ原子であってもよい。
式(1-B)中、*1は、式(1)中のAr2との結合位置を表し、*2は、式(1)中のAr3との結合位置を表す。
【0048】
【0049】
式(1-C)中、Xc1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、-CRc7=CRc8-、SiRc9Rc10、NRc11、又はCRc12Rc13を表す。
Xc1としては、なかでも、硫黄原子、酸素原子、NRc11、又は-CRc7=CRc8-が好ましく、硫黄原子、酸素原子、又はNRc11がより好ましい。
【0050】
Rc1~Rc13は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
なお、Rc1~Rc13(好ましくは、Rc1とRc2、Rc3とRc4、又は、Rc5とRc6)は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0051】
特に、Rc1~Rc8としては、水素原子が好ましい。
また、Rc9~Rc13で表される置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基が好ましい。
また、Xc1がCRc12Rc13で表される場合、Rc12及びRc13が連結する炭素原子がスピロ原子であってもよい。
式(1-C)中、*1は、式(1)中のAr2との結合位置を表し、*2は、式(1)中のAr3との結合位置を表す。
【0052】
A1としては、なかでも、本発明の効果がより優れる点で、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表すことが好ましい。
【0053】
特定化合物としては、なかでも、本発明の効果がより優れる点で、以下に示す条件1又は条件2を満たすことが好ましい。
条件1:式(1)中、A1が、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表し、且つ、Ar2及びAr3の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香族複素環(好ましくはチオフェン環)を表す。
条件2:式(1)中、A1が、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表し、Ar2及びAr3の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香族炭化水素環(好ましくはベンゼン環)を表し、且つ、Ar1及びAr4の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有する。
【0054】
以下に、特定化合物を例示するが、これに制限されない。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
特定化合物の分子量は特に制限されないが、450~1000が好ましい。分子量が1000以下であれば、蒸着温度が高くならず、化合物の分解が起こりにくい。分子量が450以上であれば、蒸着膜のガラス転移点が低くならず、光電変換素子の耐熱性が向上する。
特定化合物は1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
【0060】
特定化合物は、撮像素子、又は光センサに用いる光電変換膜の材料として特に有用である。また、特定化合物は、着色材料、液晶材料、有機半導体材料、電荷輸送材料、医薬材料、及び蛍光診断薬材料としても使用できる。
【0061】
特定化合物としては、後述のn型半導体材料とのエネルギー準位のマッチングの点で、単独膜でのイオン化ポテンシャルが-5.0~-6.0eVである化合物が好ましい。
【0062】
特定化合物の極大吸収波長としては特に制限されないが、例えば、300~500nmの範囲にあることが好ましい。
なお、上記極大吸収波長は、特定化合物の吸収スペクトルを吸光度が0.5~1になる程度の濃度に調整して溶液状態(溶剤:クロロホルム)で測定した値である。
【0063】
光電変換膜の極大吸収波長としては特に制限されないが、例えば、300~700nmの範囲にあることが好ましい。
【0064】
<n型半導体材料>
光電変換膜は、上述した特定化合物以外の他の成分として、n型半導体材料を含む。n型半導体材料は、アクセプター性有機半導体材料(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。
更に詳しくは、n型半導体材料は、上述の特定化合物と接触させて用いた場合に、特定化合物よりも電子親和力の大きい有機化合物をいう。
本明細書において、電子親和力の値としてはGaussian‘09(Gaussian社製ソフトウェア)を用いてB3LYP/6-31G(d)の計算により求められるLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)の値の反数の値(マイナス1を掛けた値)を用いる。
n型半導体材料のLUMOは、-2.5~-5.0eVが好ましい。
n型半導体材料としては、例えば、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類、縮合芳香族炭素環化合物(例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体);窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子の少なくとも1つを有する5~7員環のヘテロ環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、及びチアゾール等);ポリアリーレン化合物;フルオレン化合物;シクロペンタジエン化合物;シリル化合物;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物イミド誘導体、オキサジアゾール誘導体;アントラキノジメタン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体;トリアゾール化合物;ジスチリルアリーレン誘導体;含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体;シロール化合物;並びに、特開2006-100767号公報の段落[0056]~[0057]に記載の化合物が挙げられる。
【0065】
なかでも、n型半導体材料としては、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類を含むことが好ましい。
フラーレンとしては、例えば、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、及びミックスドフラーレンが挙げられる。
フラーレン誘導体は、例えば、上記フラーレンに置換基が付加した化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は複素環基が好ましい。フラーレン誘導体としては、特開2007-123707号公報に記載の化合物が好ましい。
n型半導体材料がフラーレン類を含む場合、光電変換膜中におけるn型半導体材料の合計の含有量に対するフラーレン類の含有量(=(フラーレン類の単層換算での膜厚/全n型半導体材料の単層換算での膜厚)×100)は、15~100体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましい。
【0066】
上段までに記載したn型半導体材料に代えて、又は上段までに記載したn型半導体材料とともに、n型半導体材料として有機色素を使用してもよい。
n型半導体材料として有機色素を使用することで、光電変換素子の吸収波長(極大吸収波長)を、任意の波長域にコントロールしやすい。
上記有機色素としては、例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、ロダシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素、金属錯体色素、特開2014-82483号公報の段落[0083]~[0089]に記載の化合物、特開2009-167348号公報の段落[0029]~[0033]に記載の化合物、及び特開2012-77064号公報の段落[0197]~[0227]に記載の化合物が挙げられる。
n型半導体材料が有機色素を含む場合、光電変換膜中におけるn型半導体材料の合計の含有量に対する有機色素の含有量(=有機色素の単層換算での膜厚/全n型半導体材料の単層換算での膜厚)×100)は、15~100体積%が好ましく、35~80体積%がより好ましい。
【0067】
n型半導体材料の分子量は、200~1200が好ましく、200~1000がより好ましい。
【0068】
光電変換膜は、特定化合物とn型半導体材料とが混合された状態で形成されるバルクヘテロ構造を有することが好ましい。バルクヘテロ構造は、光電変換膜内で、特定化合物とn型半導体材料とが混合、分散している層である。なお、バルクへテロ構造については、特開2005-303266号公報の段落[0013]~[0014]等において詳細に説明されている。
【0069】
光電変換素子の応答性の点から、特定化合物とn型半導体材料との合計の含有量に対する特定化合物の含有量(=特定化合物の単層換算での膜厚/(特定化合物の単層換算での膜厚+n型半導体材料の単層換算での膜厚)×100)は、15~75体積%が好ましく、30~75体積%がより好ましい。
なお、光電変換膜は、実質的に、特定化合物とn型半導体材料とから構成されることが好ましい。実質的とは、光電変換膜全質量に対して、特定化合物及びn型半導体材料の合計含有量が95質量%以上であることを意味する。
【0070】
なお、光電変換膜中に含まれるn型半導体材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
特定化合物を含む光電変換膜は非発光性膜であり、有機電界発光素子(OLED:Organic Light Emitting Diode)とは異なる特徴を有する。非発光性膜とは発光量子効率が1%以下の膜を意図し、発光量子効率は0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。
【0072】
〔成膜方法〕
光電変換膜は、主に、乾式成膜法により成膜できる。乾式成膜法としては、例えば、蒸着法(特に、真空蒸着法)、スパッタ法、イオンプレーティング法、及びMBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の物理気相成長法、並びに、プラズマ重合等のCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。なかでも、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法により光電変換膜を成膜する場合、真空度及び蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定できる。
【0073】
光電変換膜の厚みは、10~1000nmが好ましく、50~800nmがより好ましく、50~500nmが更に好ましく、50~300nmが特に好ましい。
【0074】
〔電極〕
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物等が挙げられる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対し透明であることが好ましい。上部電極15を構成する材料としては、例えば、アンチモン又はフッ素等をドープした酸化錫(ATO:Antimony Tin Oxide、FTO:Fluorine doped Tin Oxide)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)、及び酸化亜鉛インジウム(IZO:Indium zinc oxide)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、及びニッケル等の金属薄膜;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;並びに、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリピロール等の有機導電性材料等が挙げられる。なかでも、高導電性及び透明性等の点から、導電性金属酸化物が好ましい。
【0075】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態にかかる光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100~10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)15は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換膜での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、及び透過率の増加を考慮すると、上部電極15の膜厚は、5~100nmが好ましく、5~20nmがより好ましい。
【0076】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明性を持たせず光を反射させる場合とがある。下部電極11を構成する材料としては、例えば、アンチモン又はフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、及び酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、及びアルミ等の金属、これらの金属の酸化物又は窒化物等の導電性化合物(一例として窒化チタン(TiN)を挙げる);これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;並びに、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリピロール等の有機導電性材料等が挙げられる。
【0077】
電極を形成する方法は特に制限されず、電極材料に応じて適宜選択できる。具体的には、印刷方式、及びコーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタ法、及びイオンプレーティング法等の物理的方式;並びに、CVD、及びプラズマCVD法等の化学的方式等が挙げられる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタ法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル-ゲル法等)、及び酸化インジウムスズの分散物の塗布等の方法が挙げられる。
【0078】
〔電荷ブロッキング膜:電子ブロッキング膜、正孔ブロッキング膜〕
本発明の光電変換素子は、導電性膜と透明導電性膜との間に、光電変換膜の他に1種以上の中間層を有しているのも好ましい。上記中間層としては、電荷ブロッキング膜が挙げられる。光電変換素子がこの膜を有することにより、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率及び応答性等)がより優れる。電荷ブロッキング膜としては、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜とが挙げられる。以下に、それぞれの膜について詳述する。
【0079】
<電子ブロッキング膜>
電子ブロッキング膜は、ドナー性有機半導体材料(化合物)であり、例えば、下記のp型有機半導体を使用できる。p型有機半導体は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0080】
p型有機半導体としては、例えば、トリアリールアミン化合物(例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(TPD)、4,4’-ビス[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α-NPD)、特開2011-228614号公報の段落[0128]~[0148]に記載の化合物、特開2011-176259号公報の段落[0052]~[0063]に記載の化合物、特開2011-225544号公報の段落[0119]~[0158]に記載の化合物、特開2015-153910号公報の[0044]~[0051]に記載の化合物、及び特開2012-94660号公報の段落[0086]~[0090]に記載の化合物等)、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物(例えば、チエノチオフェン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ジチエノチオフェン誘導体、[1]ベンゾチエノ[3,2-b]チオフェン(BTBT)誘導体、チエノ[3,2-f:4,5-f´]ビス[1]ベンゾチオフェン(TBBT)誘導体、特開2018-14474号の段落[0031]~[0036]に記載の化合物、WO2016-194630号の段落[0043]~[0045]に記載の化合物、WO2017-159684号の段落[0025]~[0037]、[0099]~[0109]に記載の化合物、特開2017-076766号公報の段落[0029]~[0034]に記載の化合物等)、シアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体)、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、トリアゾール化合物、オキサジアゾール化合物、イミダゾール化合物、ポリアリールアルカン化合物、ピラゾロン化合物、アミノ置換カルコン化合物、オキサゾール化合物、フルオレノン化合物、シラザン化合物、並びに、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体が挙げられる。
p型有機半導体としては、n型半導体材料よりもイオン化ポテンシャルが小さい化合物が挙げられ、この条件を満たせば、n型半導体材料として例示した有機色素を使用し得る。
【0081】
また、電子ブロッキング膜として、高分子材料も使用できる。
高分子材料としては、例えば、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、及びジアセチレン等の重合体、並びに、その誘導体が挙げられる。
【0082】
なお、電子ブロッキング膜は、複数膜で構成してもよい。
電子ブロッキング膜は、無機材料で構成されていてもよい。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、無機材料を電子ブロッキング膜に用いた場合に、光電変換膜に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率が高くなる。電子ブロッキング膜となりうる無機材料としては、例えば、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、及び酸化イリジウムが挙げられる。
【0083】
<正孔ブロッキング膜>
正孔ブロッキング膜は、アクセプター性有機半導体材料(化合物)であり、上述のn型半導体材料を利用できる。
【0084】
電荷ブロッキング膜の製造方法は特に制限されないが、乾式成膜法及び湿式成膜法が挙げられる。乾式成膜法としては、蒸着法及びスパッタ法が挙げられる。蒸着法は、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)法及び化学蒸着(CVD)法のいずれでもよく、真空蒸着法等の物理蒸着法が好ましい。湿式成膜法としては、例えば、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、及びグラビアコート法が挙げられ、高精度パターニングの点からは、インクジェット法が好ましい。
【0085】
電荷ブロッキング膜(電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜)の厚みは、それぞれ、3~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、5~30nmが更に好ましい。
【0086】
〔基板〕
光電変換素子は、更に基板を有していてもよい。使用される基板の種類は特に制限されないが、半導体基板、ガラス基板、及びプラスチック基板が挙げられる。
なお、基板の位置は特に制限されないが、通常、基板上に導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で積層する。
【0087】
〔封止層〕
光電変換素子は、更に封止層を有していてもよい。光電変換材料は水分子等の劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまうことがある。そこで、水分子を浸透させない緻密な金属酸化物、金属窒化物、もしくは、金属窒化酸化物等のセラミクス、又はダイヤモンド状炭素(DLC:Diamond-like Carbon)等の封止層で光電変換膜全体を被覆して封止することで、上記劣化を防止できる。
なお、封止層としては、特開2011-082508号公報の段落[0210]~[0215]に記載に従って、材料の選択及び製造を行ってもよい。
【0088】
[撮像素子]
光電変換素子の用途として、例えば、撮像素子が挙げられる。撮像素子とは、画像の光情報を電気信号に変換する素子であり、通常、複数の光電変換素子が同一平面状でマトリクス上に配置されており、各々の光電変換素子(画素)において光信号を電気信号に変換し、その電気信号を画素ごとに逐次撮像素子外に出力できるものをいう。そのために、画素ひとつあたり、一つ以上の光電変換素子、一つ以上のトランジスタから構成される。
図3は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の概略構成を示す断面模式図である。この撮像素子は、デジタルカメラ及びデジタルビデオカメラ等の撮像素子、電子内視鏡、並びに、携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載される。
図3に示す撮像素子20aは、本発明の光電変換素子10a(緑色光電変換素子10a)と、青色光電変換素子22と、赤色光電変換素子24とを含み、これらは光が入射する方向に沿って積層されている。光電変換素子10aは、本発明の光電変換素子であり、主に、緑色光を受光できるように吸収波長をコントロールして、緑色光電変換素子としている。本発明の光電変換素子の吸収波長をコントロールする方法は、例えば、n型半導体材料として適当な有機色素を使用する方法が挙げられる。
撮像素子20aは、いわゆる積層体型の色分離撮像素子である。光電変換素子10a、青色光電変換素子22、及び赤色光電変換素子24は、それぞれ検出する波長スペクトルが異なる。つまり、青色光電変換素子22及び赤色光電変換素子24は、光電変換素子10aが受光(吸収)する光とは異なる波長の光を受光する光電変換素子に該当する。光電変換素子10aでは主に緑色光を受光でき、青色光電変換素子22では主に青色光を受光でき、赤色光電変換素子では主に赤色光を受光できる。
なお、緑色光とは波長500~600nmの範囲の光を、青色光とは波長400~500nmの範囲の光を、赤色光とは波長600~700nmの範囲の光を意図する。
撮像素子20aに矢印の方向から光が入射すると、まず、光電変換素子10aにおいて主に緑色光が吸収されるが、青色光及び赤色光に関しては光電変換素子10aを透過する。光電変換素子10aを透過した光が青色光電変換素子22に進んだ際には、主に青色光が吸収されるが、赤色光に関しては青色光電変換素子22を透過する。その後、青色光電変換素子22を透過した光は、赤色光電変換素子24によって吸収される。このように積層型の色分離撮像素子である撮像素子20aにおいては、緑、青、及び赤の3つの受光部で1つの画素を構成でき、受光部の面積を大きく取れる。
【0089】
青色光電変換素子22、及び赤色光電変換素子24の構成は特に制限されない。
例えば、シリコンを用いて光吸収長の差により色を分離する構成の光電変換素子でもよい。より具体的には、例えば、青色光電変換素子22と、赤色光電変換素子24とが、ともにシリコンからなっていてもよい。この場合、撮像素子20aに矢印の方向から入射した青色光と緑色光と赤色光とからなる光は、光電変換素子10aによって真ん中の波長の光である緑色光が主に受光され、残る青色光と赤色光とを色分離しやすくなる。青色光と赤色光とは、シリコンに対する光吸収長に差(シリコンに対する吸収係数の波長依存性)があり、青色光はシリコンの表面近傍で吸収されやすく、赤色光はシリコンの比較的深い位置まで侵入できる。このような光吸収長に差に基づき、より浅い位置に存在する青色光電変換素子22によって主に青色光が受光され、より深い位置に存在する赤色光電変換素子24によって主に赤色光が受光される。
また、青色光電変換素子22、及び赤色光電変換素子24は、導電性膜、青色光又は赤色光に吸収極大を有する有機の光電変換膜、及び透明導電成膜をこの順で有する構成の光電変換素子(青色光電変換素子22、又は赤色光電変換素子24)でもよい。例えば、青色光電変換素子22は、青色光に吸収極大を有するように吸収波長をコントロールした本発明の光電変換素子でもよい。同様に、赤色光電変換素子24は、赤色光に吸収極大を有するように吸収波長をコントロールした本発明の光電変換素子でもよい。
【0090】
図3においては、光の入射側から本発明の光電変換素子、青色光電変換素子、及び赤色光電変換素子の順に配置されていたが、この態様には限定されず、他の配置順であってもよい。例えば、光の入射する側から青色光電変換素子、本発明の光電変換素子、及び赤色光電変換素子の順に配置されていてもよい。
また、緑色光電変換素子を本発明の光電変換素子以外の光電変換素子として、青色光電変換素子及び/又は赤色光電変換素子を本発明の光電変換素子としてもよい。
【0091】
撮像素子として、上述のように、青色、緑色、及び赤色の三原色の光電変換素子を積み上げた構成を説明したが、2層(2色)、又は4層(4色)以上であってもかまわない。
たとえば、配列した青色光電変換素子22と赤色光電変換素子24の上に本発明の光電変換素子10aを配置する態様であってもよい。なお、必要に応じて、光の入射側に更に所定の波長の光を吸収するカラーフィルタを配置してもよい。
【0092】
撮像素子の形態は
図3及び上述の形態に限定されず、他の形態であってもよい。
例えば、同一面内位置に、本発明の光電変換素子、青色光電変換素子、及び赤色光電変換素子が配置された態様であってもよい。
【0093】
また、光電変換素子を単層で用いる構成であってもよい。例えば、本発明の光電変換素子10aのうえに、青、赤、緑のカラーフィルタを配置して色を分離する構成であってもよい。
【0094】
本発明の光電変換素子は光センサとして用いることが好ましい。光センサとしては、上記光電変換素子単独で用いてもよいし、上記光電変換素子を直線状に配したラインセンサ、又は平面上に配した2次元センサとして用いてもよい。
【0095】
[光電変換素子用材料、撮像素子用材料、光センサ用材料]
本発明は、光電変換素子用材料の発明、撮像素子用材料の発明、及び、光センサ用材料の発明にも関する。
本発明の光電変換素子用材料は、式(1)で表される化合物(特定化合物)を含む、光電変換素子の製造に用いられる材料である。
本発明の撮像素子用材料は、式(1)で表される化合物(特定化合物)を含む、撮像素子用の光電変換素子の製造に用いられる材料である。
本発明の光センサ用材料は、式(1)で表される化合物(特定化合物)を含む、光センサ用の光電変換素子の製造に用いられる材料である。
光電変換素子用材料、撮像素子用材料、及び、光センサ用材料における式(1)で表される化合物は、上述の式(1)で表される化合物と同様である。特に、撮像素子用材料及び光センサ用材料に含まれる特定化合物は、それぞれ、撮像素子及び光センサ用が備える光電変換膜の作製に用いられることが好ましい。
光電変換素子用材料、撮像素子用材料、及び、光センサ用材料に含まれる特定化合物の含有量は、それぞれ、光電変換素子用材料の全質量、撮像素子用材料の全質量、及び、光センサ用材料の全質量の、30~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、99~100質量%が更に好ましい。
光電変換素子用材料、撮像素子用材料、及び、光センサ用材料が含む特定化合物は、1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0096】
上記化合物は、光電変換素子の作製に適しており、光電変換膜の形成に使用されることが好ましい。
【実施例】
【0097】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0098】
[特定化合物の合成]
〔化合物(D-1)の合成〕
以下のスキームに従って、化合物(D-1)を合成した。
【0099】
【0100】
N-フェニル-3,6-ジブロモカルバゾール(2.00g、5.0mmol)、4-p-ビフェニルフェニルボロン酸(2.67g、13.5mmol)を、フラスコ内のテトラヒドロフラン(100mL)に添加し、そこに2M 炭酸ナトリウム水溶液(60mL)を添加した。フラスコ内の真空引き及び窒素置換の一連の操作をこの順で3回繰り返し、得られた反応液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(115mg、0.10mmol)を添加し、得られた反応液を還流させて6時間反応させた。反応液を放冷した後にろ過して、得られた固体を水、メタノールで洗浄することで粗体を得た。得られた粗体にクロロホルムを加えて1時間、還流下で分散洗浄した。放冷して室温に戻した後、ろ過しクロロホルム、メタノールで洗浄することで化合物(D-1)(2.30g、4.20mmol、収率84%)を得た。得られた化合物(D-1)はMS(Mass Spectrometry)により同定した。
1MS(ESI+)m/z:548.2([M+H]+)
【0101】
〔化合物(D-2)~(D-9)の合成〕
化合物(D-1)の合成を参考に、更に、化合物(D-2)~(D-9)を合成した。
【0102】
以下に、化合物(D-1)~(D-9)と、比較用の化合物(R-1)~(R-2)を示す。
【0103】
【0104】
【0105】
[各化合物のHOMO及びLUMOの計算値]
各化合物の、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)の値とLUMOの値を以下に示す。
なお、HOMOの値とLUMOの値とは、それぞれ、Gaussian‘09(Gaussian社製ソフトウェア)を用いてB3LYP/6-31G(d)の計算により求めた。得られたLUMOの値の反数の値を化合物の電子親和力の値として採用した。
=========================
HOMO(eV) LUMO(eV)
D-1 -5.15 -0.96
D-2 -5.14 -1.14
D-3 -5.47 -1.48
D-4 -5.45 -1.47
D-5 -5.00 -1.26
D-6 -5.04 -1.60
D-7 -5.23 -1.77
D-8 -5.29 -1.42
D-9 -5.34 -1.37
R-1 -5.27 -1.57
R-2 -5.42 -2.18
C60 -5.99 -3.23
============================
【0106】
[実施例及び比較例:光電変換素子の作製]
得られた化合物を用いて
図2の形態の光電変換素子を作製した。ここで、光電変換素子は、下部電極11、電子ブロッキング膜16A、光電変換膜12、正孔ブロッキング膜16B、及び上部電極15からなる。
具体的には、ガラス基板上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、下部電極11(厚み:30nm)を形成し、更に下部電極11上に下記の化合物(B-1)を真空加熱蒸着法により成膜して、電子ブロッキング膜16A(厚み:10nm)を形成した。
更に、基板の温度を25℃に制御した状態で、電子ブロッキング膜16A上に化合物(D-1)とフラーレン(C
60)とを2.0Å/秒の蒸着レートに設定し、それぞれ単層換算で100nm、100nmとなるように真空蒸着法により共蒸着して成膜し、200nmのバルクヘテロ構造を有する光電変換膜12を形成した(光電変換膜形成工程)。
さらに光電変換膜12上に下記の化合物(B-2)を成膜して正孔ブロッキング膜16B(厚み:10nm)を形成した。
更に、正孔ブロッキング膜16B上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、上部電極15(透明導電性膜)(厚み:10nm)を形成した。上部電極15上に、真空蒸着法により封止層としてSiO膜を形成した後、その上にALCVD(Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法により酸化アルミニウム(Al
2O
3)層を形成し、光電変換素子を作製した。
【0107】
【0108】
化合物(D-1)にかえて、化合物(D-2)~(D-9)、(R-1)~(R-2)を使用した以外は同様の方法により、各化合物を含む光電変換膜を有する光電変換素子を作製した。
【0109】
[評価]
〔量子効率(光電変換効率)の評価〕
得られた各光電変換素子の駆動の確認をした。各光電変換素子に3.0×105V/cmの電界強度となるように電圧を印加した。その後、上部電極(透明導電性膜)側から光を照射して400nmでの光電変換効率(外部量子効率)を評価した。外部量子効率は、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置を用いて測定した。照射した光量は50μW/cm2であった。量子効率が50%以上をA、30%以上50%未満をB、10%以上30%未満をC、10%未満をDとして評価した。
実用上、B以上が好ましく、Aがより好ましい。結果を表1に示す。
【0110】
〔駆動の確認(暗電流)の評価)〕
得られた素子の暗電流を測定した。光電変換素子の下部電極及び上部電極に、2.0×105V/cmの電界強度となるように電圧を印加して、暗所での電流値を測定した。結果、いずれの光電変換素子においても、暗所では1nA/cm2以下であり、十分に低い暗電流を示すことを確認した。
【0111】
〔連続蒸着適性の評価〕
光電変換膜の連続蒸着適性の評価を行った。
化合物(D-1)とフラーレン(C60)とを2.0Å/秒の蒸着レートに設定し、5時間連続で蒸着を行った。蒸着の開始時と、5時間経過時点とで、それぞれ上述の光電変換膜形成工程を実施して、2種の光電変換素子を作製した。
作製した2種の光電変換素子の暗電流について上述の方法で評価を行い、相対値で評価を行った。相対値は(5時間経過時点で光電変換膜形成工程を実施して作製した光電変換素子の暗電流の値/蒸着開始時に光電変換膜形成工程を実施して作製した光電変換素子の暗電流の値)で算出し、光電変換膜の連続蒸着適性を評価した。
化合物(D-1)にかえて、化合物(D-2)~(D-9)、(R-1)~(R-2)を使用した以外は同様の方法により、各化合物を含む光電変換膜の連続蒸着適性を評価した。
各化合物を使用した光電変換膜の連続蒸着適性は、相対値が1.5以下であればA、1.5より大きく3以下であればB、3より大きく10以下であればC、10より大きければDとして評価を行った。なお、実用上、B以上が好ましく、Aがより好ましい。結果を表1に示す。
なお、〔量子効率(光電変換効率)の評価〕及び〔駆動の確認(暗電流)の評価)〕において使用した光電変換素子は、蒸着の開始時に光電変換膜形成工程を実施して作製した光電変換素子である。
【0112】
各化合物を用いて作製した光電変換素子を使用して行った試験の結果を以下に示す。
なお、表中、「Ar1の置換基の有無と種類」欄において、「なし」は、特定化合物中のAr1で表される芳香環が、置換基を有さないことを表す。また、「置換基名(例えば、アリール基)」は、特定化合物中のAr1で表される芳香環が有する置換基の種類を表す。
また、表中、「Ar4の置換基の有無と種類」欄において、「なし」は、特定化合物中のAr4で表される芳香環が、置換基を有さないことを表す。また、「置換基名(例えば、アリール基)」は、特定化合物中のAr4で表される芳香環が有する置換基の種類を表す。
【0113】
【0114】
表1に示す結果より、本発明の光電変換素子は光電変換効率に優れることが確認された。また、本発明の光電変換素子は、長時間の連続的な蒸着によって蒸着製造される場合であっても、暗電流の値の増加が少なく、性能が安定する(言い換えると、光電変換膜の連続蒸着適性に優れる)ことが確認された。
すなわち、上記結果から、本発明の光電変換素子は、光電変換効率に優れ、且つ、長時間連続的に蒸着に供している蒸着材を用いて蒸着製造した場合でも安定した性能を有することが示された。
【0115】
また、実施例1と実施例2の対比から、式(1)中、Ar1及びAr4の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有する場合、光電変換素子の光電変換効率がより優れることが確認された。
また、実施例2~4の対比から、式(1)中、A1が、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表す場合、光電変換素子の光電変換効率がより優れることが確認された。
また、実施例の対比から、式(1)が以下に示す条件1又は条件2を満たす場合、光電変換素子の光電変換効率がより優れることが確認された。
条件1:式(1)中、A1が、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表し、且つ、Ar2及びAr3の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香族複素環(好ましくはチオフェン環)を表す。
条件2:式(1)中、A1が、式(1-B)及び式(1-C)で表されるいずれかの構造を表し、Ar2及びAr3の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以下のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいシリル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有してもよい、単環の芳香族炭化水素環(好ましくはベンゼン環)を表し、且つ、Ar1及びAr4の両方が、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有する。
【0116】
一方、比較例の光電変換素子は、優れた光電変換効率と連続蒸着適性との両立が所望の要求を満たさなかった。
【符号の説明】
【0117】
10a,10b 光電変換素子
11 導電性膜(下部電極)
12 光電変換膜
15 透明導電性膜(上部電極)
16A 電子ブロッキング膜
16B 正孔ブロッキング膜
20a 撮像素子
22 青色光電変換素子
24 赤色光電変換素子