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特許7133895プロセスチーズ類、プロセスチーズ類の製造方法、および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】プロセスチーズ類、プロセスチーズ類の製造方法、および製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/08 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
A23C19/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2015246798
(22)【出願日】2015-12-17
(65)【公開番号】P2017108699
(43)【公開日】2017-06-22
【審査請求日】2018-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】昆野 慶
(72)【発明者】
【氏名】郷田 雅之
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】井上 典之
【審判官】森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-177854(JP,A)
【文献】特開2013-158278(JP,A)
【文献】特開2004-194578(JP,A)
【文献】特開2003-225052(JP,A)
【文献】特開平05-304888(JP,A)
【文献】特開2004-024256(JP,A)
【文献】”焼きチーズbyあんぶらっせ[クックパッド]簡単おいしいみんなのレシピが315万品”,2014年4月21日,[2019年8月22日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/2595577>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチーズ類の製造方法において、
冷却機構で冷却しながら、プロセスチーズ類の焦げ目を付与する表面を加熱することで当該表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する焦げ目付与工程を有する
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスチーズ類の製造方法において、
溶融チーズを冷却しながら連続的に引き出してシート状チーズを成形する成形工程と、
前記冷却機構で冷却しながら、前記シート状チーズの焦げ目を付与する表面を加熱することで当該表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する前記焦げ目付与工程と、
前記シート状チーズを切断する切断工程とを有する
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセスチーズ類の製造方法において、
前記溶融チーズ中に糖類を添加する
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプロセスチーズ類の製造方法において、
前記焦げ目付与工程より前に、前記シート状チーズの焦げ目を付与する表面に糖類を含む液体を塗布する液体塗布工程を有する
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のプロセスチーズ類の製造方法において、
焦げ目を付与する表面とは別の面を冷却しながら、当該焦げ目を付与する表面を加熱する
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項6】
プロセスチーズ類の製造装置において、
冷却機構で冷却しながら、プロセスチーズ類の焦げ目を付与する表面を加熱することで当該表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する焦げ目付与部を有する
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスチーズ類の製造装置において、
溶融チーズを冷却しながら連続的に引き出してシート状チーズを成形する成形部と、
前記冷却機構で冷却しながら、前記シート状チーズの焦げ目を付与する表面を加熱することで当該表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する前記焦げ目付与部と、
前記シート状チーズを切断する切断部とを有する
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスチーズ類の製造装置において、
前記焦げ目付与部は、前記シート状チーズの搬送方向に対し前記切断部よりも上流側に配置されている
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のプロセスチーズ類の製造装置において、
前記シート状チーズの搬送方向にて前記焦げ目付与部よりも上流側には、前記シート状チーズの焦げ目を付与する表面に糖類を含む液体を塗布する液体塗布部が配置されている
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載のプロセスチーズ類の製造装置において、
前記焦げ目付与部は、熱源を有する焼成機を含んで構成される
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載のプロセスチーズ類の製造装置において、
前記熱源は、ガスバーナ、レーザー、ランプヒータ、セラミックヒータ、熱風ヒータ、
電熱線のいずれかである
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【請求項12】
請求項6ないし請求項11のいずれか一項に記載のプロセスチーズ類の製造装置において、
前記冷却機構を有した搬送装置が設けられ
前記冷却機構で冷却する際、焦げ目を付与する表面とは反対側の面が前記冷却機構に載置され
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【請求項13】
請求項6ないし請求項12のいずれか一項に記載のプロセスチーズ類の製造装置において、
前記焦げ目付与部には、排気装置が設けられている
ことを特徴とするプロセスチーズ類の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスチーズ類、プロセスチーズ類の製造方法、および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品分野では、焼き豆腐や焼きちくわ、焼きサバ寿司用の炙りサバなど、食品の成形後に焦げ目を付与することで、香ばしさを足した美味しさを引き出す加工が行われている。このような食品は、消費者によって焦げ目が付けられる訳ではなく、食品購入時点で既に焦げ目が付いていることから、見た目に美味しさ感が増し、購入意欲がそそられることとなる。
【0003】
一方、消費者による加熱調理により、表面に容易に焦げ目が付くようにしたチーズが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のチーズは、表面に糖類およびカルボキシル基を有する弱酸性およびその塩の少なくとも一方を付着させたものである。このようなチーズによれば、より短時間の加熱調理であっても褐変し、良好な焦げ目と香ばしい焼成風味を付与することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-225052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、特許文献1に記載のチーズは、消費者による加熱調理にて焦げ目が付き易くしたものであり、消費者が購入する以前においては焦げ目が付いていない。すなわち、消費者が購入する以前から既に焦げ目が付いていることで、チーズ本来の美味しさに香ばしさが付与されているチーズは、これまでにおいて存在しておらず、提供されていなかった。
なお、一般的にスモークチーズと称されるチーズの燻製が流通しているが、これは燻煙によってチーズ表面が褐色になったものであり、焦げ目とは異なる。
【0006】
本発明の目的は、チーズに焦げ目が付与されているプロセスチーズ類、プロセスチーズ類の製造方法、および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロセスチーズ類は、表面の少なくとも一部に焦げ目が付与されていることを特徴とする。
ここで、「プロセスチーズ類」とは、プロセスチーズの規格に属するものの他、チーズフードの規格や乳等を主要原料とする食品の規格に属するものを含む。また、「焦げ目」とは、メイラード反応などによりシート状チーズ自身が茶色または黒色になることであり、特に黒い焦げ目は多くなり過ぎると焦げ感が増す。
本発明のプロセスチーズ類によれば、例えば工場での製造にあたって表面に焦げ目を付けることで、消費者が購入後に調理しなくとも、購入した時点で既にチーズ本来の美味しさに香ばしさが付与されているプロセスチーズ類を提供することができる。
【0008】
シート状チーズを基に形成されているとともに、前記シート状チーズの段階でその表面の少なくとも一部に前記焦げ目が付与されていることが好ましい。
溶融チーズを単にシート状チーズに成形し、このシート状チーズをオーブンやグリル、または鉄板等で焼くことで焦げ目を付けようとすると、シート状チーズは、チーズ全体に伝達された熱で溶けてしまったり、溶けないまでも、製造工程間の搬送に耐え得ない程に軟化したりして、製造が困難であることがわかった。
そこで本発明のプロセスチーズ類では、溶融チーズを冷却しながら引き出してシート状チーズを成形することとし、高熱源を用いた短時間加熱により搬送に耐え得ない程に軟化したりすることを抑制しながら、焦げ目を付与することができる。
【0009】
前記シート状チーズの厚さが1mmから15mmであることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類では、シート状チーズの厚さが1mmから15mmとされているため、例えば厚さが1mmあるいはそれに近い比較的薄いシート状チーズであれば、シュレッド状に切断しやすく、ピザやグラタン等に用いられる好適なプロセスチーズ類として提供することができる。厚さが15mmあるいはそれに近い比較的厚いシート状チーズであれば、ダイス状に切断しやすく、一口サイズで気軽に食することができるプロセスチーズ類を提供することができる。また、これらを複数枚積層して積層チーズとすれば、初めから切れ目の入ったプロセスチーズ類の積層チーズを容易に提供することができるし、厚さが薄めの場合では、より小さいシート状に成形することで、トーストやサンドイッチ等に用いられる所謂スライスチーズと称するプロセスチーズ類として提供することができる。
【0010】
ドット状の前記焦げ目が多数付与されていたり、前記焦げ目が一様であったりすることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類では、見た目上、質感に優れたプロセスチーズ類に仕上げることができる。
【0011】
香料が添加されていることが好ましい。
例えばチーズを焼いたような香ばしい風味の香料を添加した場合、本発明のプロセスチーズ類では、香ばしさを香料にて補うことができるため、焦げ目をより低温で付けた場合でも、十分な焼成風味を出すことができるうえ、焦げ目を付与する際の熱影響を少なくして、保形性をさらに向上させることができる。
一方、ハムなどのような香料を添加した場合、本発明のプロセスチーズ類では、ローストしたハムとチーズの風味を出すことができる。
【0012】
本発明のプロセスチーズ類の製造方法は、加熱することでプロセスチーズ類の表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する焦げ目付与工程を有することを特徴とする。
本発明のプロセスチーズ類の製造方法によれば、例えば工場での製造工程として焦げ目付与工程を設ける。そして、焦げ目付与工程にて表面に焦げ目を付けることで、消費者が購入後に調理しなくとも、購入した時点で既にチーズ本来の美味しさに香ばしさが付与されているプロセスチーズ類を提供することができる。
【0013】
溶融チーズを冷却しながら連続的に引き出してシート状チーズを成形する成形工程と、前記シート状チーズを加熱することで前記シート状チーズの表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する前記焦げ目付与工程と、前記シート状チーズを切断する切断工程とを有することが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造方法では、シート状チーズへの成形工程において、溶融チーズを冷却するので、引き出されるシート状チーズの温度を低くすることができ、焦げ目付与工程中にチーズ全体が即座に溶けてしまったり、搬送に耐え得ない程に軟化したりすることを抑制することができ、シート状チーズの形状が良好に維持されて、焦げ目を確実に付けることができる。また、切断工程を設けるため、ピザやグラタン用、おつまみ用、トーストやサンドイッチ用など、消費者の用途に応じた形態のプロセスチーズ類を容易に製造することができる。
【0014】
前記溶融チーズ中に糖類を添加したり、前記焦げ目付与工程より前に、前記シート状チーズの表面に糖類を含む液体を塗布する液体塗布工程を有したりすることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造方法では、シート状チーズの表面の糖分によるメイラード反応により、表面の広範囲にわたってより均一な焦げ目を付与することができる。
【0015】
前記切断工程では、前記シート状チーズを短冊状の切断チーズに切断することが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造方法では、積層構造を有する積層チーズや、より小さなシート状のプロセスチーズ類を得る基材として短冊状の切断チーズを成形することができる。
【0016】
焦げ目を付与する表面とは別の面を冷却することが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造方法では、焦げ目を付与している間にも別の面を冷却することで、シート状チーズの保形性を一層向上させることができる。
【0017】
本発明のプロセスチーズ類の製造装置は、加熱することでプロセスチーズ類の表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する焦げ目付与部を有することを特徴とする。
本発明のプロセスチーズ類の製造装置によれば、例えば工場での製造装置として焦げ目付与部を設置する。そして、焦げ目付与部にて表面に焦げ目を付けることで、消費者が購入後に調理しなくとも、購入した時点で既にチーズ本来の美味しさに香ばしさが付与されているプロセスチーズ類を提供することができる。
【0018】
溶融チーズを冷却しながら連続的に引き出してシート状チーズを成形する成形部と、前記シート状チーズを加熱することで当該シート状チーズの表面の少なくとも一部に焦げ目を付与する前記焦げ目付与部と、前記シート状チーズを切断する切断部とを有することが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造装置では、シート状チーズへの成形部において、溶融チーズを冷却するので、引き出されるシート状チーズの温度を低くすることができ、焦げ目付与部にてチーズ全体が即座に溶けてしまったり、搬送に耐え得ない程に軟化したりすることを抑制することができ、シート状チーズの形状が良好に維持されて、焦げ目を確実に付けることができる。また、切断工程を設けるため、ピザやグラタン用、おつまみ用、トーストやサンドイッチ用など、消費者の用途に応じた形態のプロセスチーズ類を容易に製造することができる。
【0019】
前記焦げ目付与部は、前記シート状チーズの搬送方向に対し前記切断部よりも上流側に
配置されていることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造装置では、焦げ目付与部で付与される焦げ目によってシート状チーズの表面がある程度硬化するから、その後に切断部によってシート状チーズを切断した場合の保形性を良好にすることができる。
【0020】
前記シート状チーズの搬送方向にて前記焦げ目付与部よりも上流側には、前記シート状チーズの表面に糖類を含む液体を塗布する液体塗布部が配置されていることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造装置では、シート状チーズの表面の塗布した糖分によるメイラード反応により、表面の広範囲にわたってより均一な焦げ目を付与することができる。
【0021】
前記焦げ目付与部は、熱源を有する焼成機を含んで構成されることが好ましく、熱源としては、ガスバーナ、レーザー、ランプヒータ、セラミックヒータ、熱風ヒータ、電熱線のいずれかであることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造装置では、それらの熱源を有した焼成機によって焦げ目を確実に付与することができる。
【0022】
焦げ目が付与される表面とは反対側の面が載置される冷却機構を有した搬送装置が設けられていることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造装置では、焦げ目付与部で焦げ目を付与している間を含め、製造装置内を搬送中に冷却機構によって冷却でき、保形性を向上させることができる。
【0023】
前記焦げ目付与部には、排気装置が設けられていることが好ましい。
本発明のプロセスチーズ類の製造装置では、焦げ目を付与する際に生じる煙を排気装置で確実に排気でき、製造環境を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るプロセスチーズ類の製造装置を示す模式図。
図2】製造装置で製造されるチーズの形態を示す図であり、(A)は短冊状の切断チーズ、(B)はダイス状のプロセスチーズ類、(C)はシュレッド状のプロセスチーズ類を示す図。
図3】シート状チーズに焦げ目を付与した積層チーズを示す図。
図4】第1実施形態の製造方法を説明するための工程図。
図5】本発明の第2実施形態に係るプロセスチーズ類の製造装置を示す模式図。
図6】第2実施形態の製造方法を説明するための工程図。
図7】本発明の第3実施形態に係るプロセスチーズ類の製造装置を示す模式図。
図8】第3実施形態の製造方法を説明するための工程図。
図9】チーズ表面の焦げ目の状態を示す写真。
図10図9のXで囲まれた領域を拡大して示す焦げ目の写真。
図11】積層チーズの表面に焦げ目を付与した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1から第3実施形態について図面を参照して説明する。
なお、後述する第2、第3実施形態の説明において、第1実施形態と同一構成要素または同一機能要素については同一符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0026】
[第1実施形態]
(製造装置の概略全体)
図1は、本実施形態に係るプロセスチーズ類PCの製造装置1を示す模式図である。
図1において、本実施形態の製造装置1は、焦げ目が付与されたプロセスチーズ類PCを製造する装置であって、上流から下流に向けて順に、溶融部11、成形部12、焦げ目付与部13、および切断部14を備えている。また、製造装置1には、例えばベルトコンベア式の搬送装置15が設けられている。搬送装置15による搬送方向を図中に白抜き矢印で示してある。
【0027】
(溶融部)
溶融部11は、所定の大きさに砕いたナチュラルチーズを加熱溶融し、添加された溶融塩によって乳化するように構成されている。この溶融部11では、溶融チーズMCを得ることが可能である。
【0028】
(成形部)
成形部12は、例えば内向きに回転する一対の回転式冷却装置121と複数段の回転式冷却装置122,123等で構成される。図1において、回転式冷却装置121,122,123を実線で示し、成形途中のチーズを点線で示してある。具体的に成形部12では、所定間隔で対向配置された一対の回転式冷却装置121間に溶融部11からの溶融チーズMCが供給され、当該所定間隔によって決定される厚さを有したシート状に溶融チーズMCを成形し、その成形された溶融チーズMCをより下段の回転式冷却装置122,123によってさらに冷却しながら、最終的に連続的に引き出してシート状チーズSCを成形する。ただし、成形部12としては、両面を冷却可能な冷却ベルト式や、片面を冷却可能な冷却ベルト式であってもよい。シート状チーズSCの厚さとしては、1mmから15mmである。成形部12では、その範囲を含んで厚さを任意に設定可能である。
【0029】
(焦げ目付与部)
焦げ目付与部13は、シート状チーズSCを加熱することで当該シート状チーズSCの表面である上面の少なくとも一部に焦げ目を付与する機能を有している。この焦げ目付与部13は、熱源131を有する焼成機132と、熱源131の周囲を覆うように設置された排気装置133を含んで構成されている。
【0030】
焦げ目はドット状であり、上面の略全域にわたって多数付与されている。焦げ目を図9図10の写真に基づいて詳説すると、焦げ目は、焼成機132により加熱でチーズ表面が凹凸状となり、メイラード反応などにより茶色に変色した部分として現れる。また、図10図9の一部を拡大して示すように、焦げ目の一部には、茶色になった部分の中央が破裂等して凹状にクレーター化しているものもあり、このような場合の焦げ目は、当該凹状部分周りに環状に近い形で現れる。このような焦げ目の付いたシート状チーズSCの表面は、焦げ目が付けられる以前に比較して僅かに硬化している。
【0031】
一方、焦げ目は均一状であり、上面の略全域にわたって一様に付与されている。このような焦げ目は、後述する焼成機132の熱源としてランプヒータやレーザーを用い、さらに集光することで非常に高いエネルギを均一にチーズ表面に照射することで形成される。上記同様にシート状チーズSCの表面は、焦げ目が付けられる以前に比較して僅かに硬化している。
【0032】
なお、図9には、シート状チーズSCを後述する切断部14にて所定の大きさの切断チーズCCに切断したものが示されている。また、図9の各切断チーズCCでは、焦げ目の付与具合を意図的に異ならせている。図中の下側の切断チーズCCの焦げ感が強く、上側の切断チーズCCの焦げ感が弱い。このような焦げ感は、焼成機132の熱源の強弱によって調整可能である。切断チーズCCの周縁部分の焦げが著しいのは、熱源からの熱が集中し易いからである。
【0033】
焼成機132の熱源としては、特に限定されないが、例えばガスバーナ、レーザー、ランプヒータ、セラミックヒータ、熱風ヒータ、電熱線のいずれかであってよい。シート状チーズSCは、40%から50%程度の水分を含有しているため、表面のみに熱を与えるためには、熱源として800℃以上、好ましくは1000℃以上の熱を発する手段が好ましい。また、シート状チーズSCの表面温度が150℃以上、好ましくは160℃以上に達するように熱源の大きさを調整することが好ましい。焦げ目の程度にもよるが、達温後1秒以上、好ましくは3秒以上の焼成時間が好ましい。焼成時間は焼成機の長さや搬送スピードで制御できる。
一方、ランプヒータやレーザーの場合はレンズによる集光や、表面の色を白系から黒系にし、光の反射率を下げることでより低いワット数で焦げ目を付与することができる。さらに、集光したスポット径を5mm以下、好ましくは2mm以下程度に調整し、そのスポット径を均一にチーズ表面に照射することで、焦げ目を均一に付与することも可能である。具体的には、同心円状のスポットを走査する方法やライン状のスポットとし、チーズシートを搬送しながら均一に照射する方法などが可能である。
【0034】
シート状チーズSCと熱源との距離は、熱源の種類にもよるが互いに離れ過ぎていると熱が伝わらないため、20mmから500mm程度、好ましくは50mmから300mm程度が好ましい。発明者らの検討の結果、シート状チーズSCの表面温度が150℃以上、好ましくは160℃以上に達するように高さを調整することが好ましい。
【0035】
シート状チーズSCの片面だけではなく、両面に焦げ目を付与する場合、焦げ目付与部を2つ直列に並べることで達成できる。具体的には、片面に焦げ目を付与した後、焦げ目が付与された面を搬送装置15に載置される搬送面とし、もう一方の面を非接触面とした後、下流側の焦げ目付与部において被接触面に焦げ目を付与する。
【0036】
また、排気装置133は、シート状チーズSCへの焦げ目付与時に生じる煙を焦げ目付与部13から排気する機能を有する。排気された煙は、排気管や排気ダクトを通してスクラバー等の排煙処理装置に送られ、適切に処理される。
【0037】
(切断部)
切断部14は、シート状チーズSCを搬送方向に沿って複数列連続して切断することで、所定の幅寸法を有した平面視で帯状の複数の切断チーズCC(図2(A)参照)に切断したり、切断チーズCCに切断することなく、シュレッド状のプロセスチーズ類PC(図2(C)参照)に切断したりするように構成されている。この際の切断チーズのCCの切断幅は、任意に設定可能である。切断部14で用いられる具体的な装置としては、スリッターや、ワイヤカッター、円板カッター、魚籠式抜き型などである。
【0038】
図2には、切断部14での切断後の複数の切断チーズCCで構成されるシート状チーズSCや、プロセスチーズ類PCが示されている。
図2(A)には、シート状チーズSCを搬送方向に沿って切断することで得られる複数の帯状の切断チーズCCが示されている。このような切断チーズCCの厚さは、1mmから15mmの間で様々である。
【0039】
その中でも厚めの切断チーズCCは、製造装置1内での一連の流れ工程の中で複数枚積層されることで、図3に示すように、積層チーズLCとして形成される。図3において、このような積層チーズLCは切断部14とは別の切断部(図示略)にて所定の大きさにさらに切断されることで、初めから切れている状態とされたプロセスチーズ類PCが複数枚積層されたものとして提供される。薄めの切断チーズCCは、図示を省略するが、積層されることなく、別の切断部にて幅方向に切断されることで、平面視で正方形とされた所定の大きさに形成され、トーストやサンドイッチ等に好適な所謂スライスチーズと称するシート状のプロセスチーズ類PCとして提供される。
【0040】
図2(B)に示すプロセスチーズ類PCは、例えば厚さが8mmあるいはそれに近い厚さのシート状チーズSCを切断部14にて帯状に切断した後、別の切断部にて幅方向に切断することで、ダイス状に形成されたものである。ダイス状のプロセスチーズ類PCは、一口サイズで気軽に食することができ、おつまみやおやつ用に好適である。
【0041】
図2(C)に示すプロセスチーズ類PCは、厚さが1mmあるいはそれに近い比較的薄いシート状チーズSCをシュレッド状に切断したものである。シュレッド状のプロセスチーズ類PCは、ピザやグラタン等に好適に用いられる。このようなプロセスチーズ類PCは、切断部14にてシート状チーズSCを帯状の切断チーズCCに切断した後、別の切断部にて切断チーズCCをシュレッド状に切断したものであってもよいし、帯状の切断チーズCCすることなしに、切断部14にてシート状チーズSCを直接的にシュレッド状に切断したものであってもよい。
【0042】
(搬送装置)
搬送装置15は、コンベアベルトとして機能する冷却機構としての冷却ベルト151が用いられ、冷却ベルト151を冷却する冷却装置152を有している。冷却装置152としては、低温の冷却媒体を循環させる形式や熱電素子を用いた形式のものなど、形式は任意である。冷却されて全体として低温とされた冷却ベルト151上には、成形部12から引き出されたシート状チーズSCが載せられる。
【0043】
この結果、シート状チーズSCは、冷却ベルト151と接触する表面、すなわち、焦げ目が付与される上面とは反対側の下面から冷却される。なお、シート状チーズSCのいずれの面を冷却するかは、搬送装置の構造や、シート状チーズSCの厚さ等を勘案して任意に決められてよいが、焦げ目を付与した面の裏面のほうが冷却効率の観点から好ましい。また、冷却装置152の冷却温度は5℃以下、好ましくは0℃以下に設定する。
【0044】
(プロセスチーズ類の製造方法)
以下には、プロセスチーズ類PCの製造方法を図4をも参照して説明する。
プロセスチーズ類PCの製造方法としては、工程順に説明すると、溶融部11による溶融工程、成形部12による成形工程、焦げ目付与部13による焦げ目付与工程、および切断部14による切断工程を有する。
【0045】
簡略化して説明すると、溶融工程では、原料となるナチュラルチーズの溶融および乳化などが行われ、溶融チーズMCを成形する。
成形工程では、溶融チーズMCを冷却しながらシート状に引き延ばし、シート状チーズSCに成形して搬送装置15上に供給する。
焦げ目付与工程では、焼成によりシート状チーズの上面に焦げ目を付与するとともに、この際に生じる煙を排気する。
切断工程では、シート状チーズSCを短冊状、ダイス状、シュレッド状、より小さなシート状等に切断する。
【0046】
(実施形態の効果)
以上に説明した実施形態によれば、工場での製造にあたってシート状チーズSCの上面に焦げ目を付けるので、消費者が購入後に調理しなくとも、購入した時点で既にチーズ本来の美味しさに香ばしさが付与されているプロセスチーズ類PCを提供することができるという効果がある。
【0047】
[第2実施形態]
(製造装置の概略全体)
図5は、本実施形態に係るプロセスチーズ類PCの製造装置1を示す模式図である。
図5において、本実施形態の製造装置1では、シート状チーズSCの搬送方向にて焦げ目付与部13の上流側には、シート状チーズSCの表面、すなわち、焦げ目が付与されることとなる上面に糖類を含む液体を塗布する液体塗布部16が配置されている。その他の構成は、前記第1実施形態と同じである。
【0048】
(液体塗布部)
液体塗布部16は、1流体ノズルや2流体ノズルといった噴霧式のスプレーノズル、あるいはディスペンサなど、適宜な塗布装置161を有している。塗布される糖類としては、キシロース、ラクトース、スクロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アミノ糖、および糖誘導体の中から選択的に用いられる。糖類を含む液体は、可能な限り濃い濃度で少量塗布されることが好ましい。
【0049】
(プロセスチーズ類の製造方法)
本実施形態での製造工程としては、図6に示すように、焦げ目付与工程より前に、液体塗布部16による工程、つまり、シート状チーズSCの上面に糖類を含む液体を塗布する液体塗布工程を有している。糖類を含む液体をシート状チーズSCの上面に塗布することで、糖分によるメイラード反応が促進されるため、シート状チーズSCの上面の広範囲にわたってより均一な焦げ目を付与することが可能である。
【0050】
[第3実施形態]
(製造装置および製造方法)
図7は、本実施形態に係るプロセスチーズ類PCの製造装置1を示す模式図である。
図7において、本実施形態の製造装置1としては、前述の第1実施形態と同じである。ただし、溶融部11では、図7中に2点鎖線で示すように、溶融チーズMCの中に糖類、および香ばしさを付与する香料が添加される。従って、図8に示す製造方法では、溶融工程として、糖類の添加および香料の添加を実施することになる。糖類の添加量は、好ましくは0.1重量%以上、0.9重量%以下程度である。
【0051】
糖類の添加により、前記第2実施形態と同様な作用を奏する。また、香料の添加により、香ばしさをより際立たせることができる。このため、例えば熱源からの少ない熱エネルギーにてシート状チーズSCを低温で加熱した結果、生じた焦げ目が小さく、色合いも控えめとなった場合でも、香ばしさを十分に出すことができる。しかも、低温で加熱することで、焦げ目を付与する際のシート状チーズSC全体への熱影響が少なくなるから、保形性を向上させることができる。
【0052】
[変形例]
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形例等は、本発明に含まれる。
例えば前記各実施形態では、シート状チーズSCに焦げ目を付与した後に当該シート状チーズSCを切断していたが、プロセスチーズ類PCの最終的な形状などによっては、シート状チーズSCを切断した後に焦げ目を付与してもよい。
【0053】
前記各実施形態では、成形部12(成形工程)や搬送装置15にてシート状チーズSCを積極的に冷却していたが、焦げ目付与部13(焦げ目付与工程)までの搬送長さをより長く設定するなど、その間に自然冷却させる場合でも、本発明に含まれる。
【0054】
前記各実施形態では、シート状チーズSCに対して焦げ目を付与したが、これに限定されない。例えば包装状態のプロセスチーズ類PCであっても、プロセスチーズ類PCを取り出し、このプロセスチーズ類PCに焦げ目を付与してもよい。この場合でも、工場出荷前の時点、すなわち、購入した時点では既に焦げ目が付与されているから、本発明の目的を達成できる。
【0055】
また、シート状チーズSCに対して焦げ目を付与するのではなく、図11に示すように、シート状チーズSCを複数積層することで得られる積層チーズLCの表面に焦げ目を付与してもよい。
この場合、積層チーズLCとしては、図3図11に示すようなものに限らず、シート状チーズSCを切断工程にて所定の大きさの帯状の切断チーズCCに切断した後に、それらの切断チーズCCをさらに別な切断工程にて幅方向に切断して短冊状に形成し、これを複数枚積層したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、多様な形態のプロセスチーズ類に良好に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1…製造装置、12…成形部、13…焦げ目付与部、14…切断部、15…搬送装置、16…液体塗布部、132…焼成機、133…排気装置、151…冷却機構である冷却ベルト、MC…溶融チーズ、PC…プロセスチーズ類、SC…シート状チーズ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11