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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】流体制御弁及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20220902BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20220902BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
F16K1/32 A
F16K1/00 E
F16K1/32 B
F16K37/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018037138
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019152256
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠弘
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0269533(US,A1)
【文献】特開2006-090386(JP,A)
【文献】特開2016-011751(JP,A)
【文献】特開2016-169867(JP,A)
【文献】特表2009-508073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
7/00-7/20
13/00-13/10
17/18-17/34
25/00-25/04
29/00-29/02
31/12-31/165
31/36-31/62
33/00
37/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に対して接離方向へ移動できるように設置された弁体をアクチュエータによって移動させる流体制御弁であって、
前記弁体と前記アクチュエータとの間に介在し、前記アクチュエータの動力を前記弁体に伝達するプランジャと、
前記プランジャの周面に接続されたダイアフラムとを具備し、
前記プランジャが、
前記ダイアフラムに接続された第1分割体と、
前記第1分割体よりも前記アクチュエータ側に配置されると共に、ネジ部材がネジ止めされる第2分割体とを備え、
前記プランジャが、前記第1分割体及び前記第2分割体を含む複数の分割体に分割されており、
前記第2分割体が、当該第2分割体に隣接する他の分割体と連結するものであり、
前記第2分割体又は前記他の分割体のいずれか一方に連結凸部が設けられていると共に、他方に当該連結凸部が連結される連結凹部が設けられており、
前記連結凸部及び前記連結凹部の間に、前記連結凸部の径方向外側に位置する隙間が形成されており、
前記第2分割体が、前記第1分割体に対し、その周方向へ回転できるように構成されており、
前記連結凸部の径方向外側に位置する前記隙間が、前記ネジ部材の回転により生じる周方向に沿った力である回転力を前記ダイアフラムに伝えることなく、前記ネジ部材を回転させる機能を発揮することを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
前記弁座に対する前記弁体の位置を示す出力値を出力する位置センサをさらに具備している請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記位置センサが、
前記弁座との位置が変化しないように固定される第1センサ部と、
前記第2分割体に対して前記ネジ部材を介して固定される第2センサ部とを備え、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の相対位置に基づき前記出力値を出力するものである請求項2記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記第2分割体を前記アクチュエータ側へ押圧する弾性体をさらに具備し、
前記弾性体が、前記ダイアフラムが前記弁体側へ撓むように前記プランジャが移動した状態において、前記第2分割体を押圧するように構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記第2分割体が、前記第1分割体に対し、前記プランジャの軸方向へ所定距離スライドできるように構成されている請求項4記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記連結凸部の外周面又は前記連結凹部の内周面のいずれか一方に嵌合片が設けられていると共に、他方に当該嵌合片が嵌り込む嵌合溝が設けられており、
前記嵌合片及び前記嵌合溝の少なくとも一方が前記プランジャの周方向に周回するように形成されており、
前記連結凸部及び前記連結凹部を連結し、前記嵌合片及び前記嵌合溝を嵌め合わせた状態で、前記第2分割体が、前記他方の分割体に設けられた前記嵌合片又は前記嵌合溝に沿って回転するように構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記嵌合溝の前記プランジャの軸方向に対する幅が、前記嵌合片の前記プランジャの軸方向に対する幅よりも所定距離長くなっており、
前記連結凸部及び前記連結凹部を連結し、前記嵌合片及び前記嵌合溝を嵌め合わせた状態で、前記第2分割体が、前記他方の分割体に設けられた前記嵌合片又は前記嵌合溝に沿って前記所定距離スライドするように構成されている請求項6記載の流体制御弁。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれかに記載の流体制御弁を備えた流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁及び流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から流体制御装置(所謂マスフローコントローラ)に用いられる流体制御弁として、弁座と、弁座に対して接離方向へ移動する弁体と、弁体を移動させるアクチュエータと、弁体とアクチュエータとの間に介在し、アクチュエータの動力を弁体に伝達するプランジャと、弁体が収容される弁室の少なくとも一部を構成し、プランジャの周面に接続されるダイアフラムと、を具備するものがある。
【0003】
前記従来の流体制御弁においては、その設計上の都合等からプランジャに対してネジ部材がネジ止めされる場合があり、例えば、特許文献1には、位置センサを構成するターゲット部材をプランジャに対してネジ部材によってネジ止めした構造のものが開示されている。
【0004】
ところが、前記のとおり、プランジャには、薄膜状のダイアフラムが接続されており、プランジャにネジ部材を締め付ける際に、その力がダイアフラムに伝わり、ダイアフラムに歪みが生じてしまうことがあった。なお、このダイアフラムの歪みは、組立時におけるネジ部材の締め付け具合によって変化するため、製品の再現性が悪くなり、製品毎に流量制御のバラつきが生じる原因となる。
【0005】
また、前記従来の流体制御弁においては、プランジャ全体がダイアフラムの復元力に依存してアクチュエータ側へ移動する。このため、ダイアフラムに対する負担が大きくなってダイアフラムが損傷する原因となり、また、流体制御弁の応答性が遅くなる原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-3571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、プランジャに対してネジ部材をネジ止めする構造の流体制御弁において、組立時にダイアフラムに歪みが生じ難くすることを主な課題とするものである。また、本発明は、プランジャがアクチュエータ側へ移動する際に生じるダイアフラムへの負担が軽減される構造の流体制御弁を提供することも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る流体制御弁は、弁座に対して接離方向へ移動できるように設置された弁体をアクチュエータによって移動させる流体制御弁であって、前記弁体と前記アクチュエータとの間に介在し、前記アクチュエータの動力を前記弁体に伝達するプランジャと、前記プランジャの周面に接続されたダイアフラムとを具備し、前記プランジャが、前記ダイアフラムに接続された第1分割体と、前記第1分割体よりも前記アクチュエータ側に配置されると共に、ネジ部材がネジ止めされる第2分割体とを備え、前記第2分割体が、前記第1分割体に対し、その周方向へ回転できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
このようなものであれば、第2分割体にネジ部材を締め付ける場合や、第2分割体からネジ部材を緩める場合に、第2分割体が第1分割体に対してその周方向に回転するため、ネジ部材の回転によって生じる力が、ダイアフラムに直接的に伝達されなくなり、ダイアフラムに歪みが生じることを抑制できる。
【0010】
なお、プランジャをダイアフラム及びアクチュエータの間の二カ所以上で分割した場合、言い換えれば、プランジャをダイアフラム及びアクチュエータの間で三分割以上に分割した場合には、第2分割体は、必ずしも第1分割体に隣接して配置される分割体である必要はなく、第1分割体と1以上の分割体を挟んで配置される分割体であってもよい。
【0011】
また、前記弁座に対する前記弁体の位置を示す出力値を出力する位置センサをさらに具備しているものであってもよく、この場合、前記位置センサが、前記弁座との位置が変化しないように固定される第1センサ部と、前記プランジャに対して前記ネジ部材を介して固定される第2センサ部とを備え、前記第1センサ部及び前記第2センサ部の相対位置に基づき前記出力値を出力するものであってもよい。
【0012】
このようなものであれば、位置センサをプランジャに対して位置ズレが生じないように強固に固定することができ、位置センサの精度を向上させることができる。
【0013】
また、前記第2分割体を前記アクチュエータ側へ押圧する弾性体をさらに具備し、前記弾性体が、前記ダイアフラムが前記弁体側へ撓むように前記プランジャが移動した状態において、前記第2分割体を押圧するように構成されているものであってもよい。
【0014】
このようなものであれば、プランジャがアクチュエータ側に移動する場合に、第2分割体のアクチュエータ側への移動が弾性体によって補助され、これにより、プランジャ全体をダイアフラムの復元力によってアクチュエータ側へ移動させる必要がなくなる。よって、ダイアフラムに対する負担が軽減し、結果として、ダイアフラムの損傷を抑制できる。
【0015】
また、前記第2分割体が、前記第1分割体に対し、前記プランジャの軸方向へ所定距離スライドできるように構成されているものであってもよい。
【0016】
このようなものであれば、第2分割体が弾性体によってアクチュエータ側へ移動する場合に、その力が第1分割体に対する第2分割体のスライド動作によって吸収され、ダイアフラムに直接的に伝達され難くなる。その結果、ダイアフラムの損傷が抑制される。
【0017】
また、具体的な構成としては、前記プランジャが、前記第1分割体及び前記第2分割体を含む複数の分割体に分割されており、前記第2分割体が、当該第2分割体に隣接する他の分割体と連結するものであり、前記第2分割体又は前記他の分割体のいずれか一方に連結凸部が設けられていると共に、他方に当該連結凸部が連結される連結凹部が設けられており、前記連結凸部の外周面又は前記連結凹部の内周面のいずれか一方に嵌合片が設けられていると共に、他方に当該嵌合片が嵌り込む嵌合溝が設けられており、前記嵌合片及び前記嵌合溝の少なくとも一方が前記プランジャの周方向に周回するように形成されており、前記連結凸部及び前記連結凹部を連結し、前記嵌合片及び前記嵌合溝を嵌め合わせた状態で、前記第2分割体が、前記他方の分割体に設けられた前記嵌合片又は前記嵌合溝に沿って回転するように構成されているものであってもよく、この場合、前記嵌合溝の前記プランジャの軸方向に対する幅が、前記嵌合片の前記プランジャの軸方向に対する幅よりも所定距離長くなっており、前記連結凸部及び前記連結凹部を連結し、前記嵌合片及び前記嵌合溝を嵌め合わせた状態で、前記第2分割体が、前記他方の分割体に設けられた前記嵌合片又は前記嵌合溝に沿って前記所定距離スライドするように構成されているものであってもよい。
【0018】
また、本発明は、前記いずれかの流体体制御弁を備えた流体制御装置である。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した流体制御弁によれば、プランジャに対してネジ部材をネジ止めする構造の流体制御弁において、組立時にダイアフラムに歪みが生じ難くなって製品の再現性が向上し、これにより、製品毎の流量制御のバラつきも抑制できる。また、プランジャがアクチュエータ側へ移動する際に生じるダイアフラムへの負担が軽減され、ダイアフラムの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係る流体制御装置の全体構成を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る流体制御弁の構成を示す部分模式図である。
図3】実施形態1に係る流体制御弁を構成する一部の部品を分解した状態を示す断面斜視図である。
図4】実施形態1に係る流体制御弁を構成するプランジャの一部を示す拡大模式図である。
図5】その他の実施形態に係るプランジャを示す模式図である。
図6】その他の実施形態に係る流体制御弁の弁体近傍を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る流体制御弁及びその流体制御弁を用いた流体制御装置を図面に基づいて説明する。
【0022】
本発明に係る流体制御装置は、半導体製造プロセスに使用される所謂マスフローコントローラである。なお、本発明に係る流体制御装置は、半導体制御プロセスだけでなく、その他のプロセスにおいても使用することができる。
【0023】
<実施形態1> 本実施形態に係る流体制御装置MFCは、図1に示すように、圧力式のものである。具体的には、流体制御装置MFCは、その内部に流路Lが設けられたブロック体Bと、ブロック体Bに設置される流体制御弁Vと、ブロック体Bの流体制御弁Vよりも下流側に設置される一対の圧力センサPS1,PS2と、一対の圧力センサPS1,PS2で測定される圧力値に基づき算出される流路Lの流量値が予め定められた目標値に近づくように流体制御弁Vをフィードバック制御する制御部Cと、を備えている。
【0024】
前記ブロック体Bは、矩形状のものであり、その所定面に流体制御弁V及び一対の圧力センサPS1,PS2が設置されている。また、ブロック体Bには、その所定面に流体制御弁Vを設置するための凹状の収容部B1が設けられており、その収容部B1によって流路Lが上流側流路L1と下流側流路L2とに分断されている。そして、収容部B1には、その底面に上流側流路L1の一端が開口していると共に、その側面に下流側流路L2の一端が開口している。
【0025】
前記一対の圧力センサPS1,PS2は、流路Lにおける層流素子S1の上流側と下流側にそれぞれ接続されており、いずれも一対の設けられた第1圧力センサPS1と、第2圧力センサPS2と、第1圧力センサPS1と第2圧力センサPS2の出力に基づいて流量を算出する流量算出部S2に接続されている。一対の圧力センサPS1,PS2は、ブロック体Bの所定面に対して流体制御弁Vと共に一列に並べて取り付けてある。
【0026】
前記流体制御弁Vは、所謂ノーマルオープンタイプのものである。具体的には、流体制御弁Vは、ブロック体Bの収容部B1に嵌め込まれる弁座10と、弁座10に対して接離方向へ移動できるように設置された弁体20と、弁体20を移動させるアクチュエータ30と、弁体20とアクチュエータ30との間に介在し、アクチュエータ30の動力を弁体20に伝達するプランジャ40と、アクチュエータ30とプランジャ40との間に介在し、プランジャ40をアクチュエータ30に接続する接続機構50と、弁体20を収容する弁室VRの一部を構成し、プランジャ40と一体的に接続された薄膜状のダイアフラム60と、プランジャ40に設置され、弁座10に対する弁体20の位置を示す出力値を出力する位置センサ70と、を備えている。
【0027】
また、前記流体制御弁Vは、アクチュエータ30及びプランジャ40を内部空間に収容し、ブロック体Bの所定面に設置される略筒状の筐体80を備えている。筐体80は、組立を考慮して複数の部品に分割されており、各部品は、ネジ止め或いはカシメ等によって連結される。なお、筐体80には、その一端側に内部空間をダイアフラム60によって仕切って形成された凹部81が設けられている。そして、ブロック体Bの収容部B1に弁座10を嵌め込んだ状態で、その収容部B1を塞ぐように筐体80の一端を所定面に密着させることにより、その一端側に設けられた凹部81によって弁室VRが形成されるように構成されている。よって、弁室VRは、その内面の一部、具体的には、弁座10と対向する面がダイアフラム60で構成される。そして、流体制御弁Vは、このダイアフラム60の撓みを利用し、弁室VRの気密性を保持しながら、アクチュエータ30の動力をプランジャ40を介して弁体20に伝達するようになっている。
【0028】
次に、本実施形態に係る流体制御弁Vの構成する各部材を図2図4に基づき詳細に説明する。なお、図3は、流体制御弁Vを構成する部品、特に、プランジャ40や弁体10及びその周辺を構成する部品のみを図示している。
【0029】
前記弁座10は、ブロック体Bの収容部B1に嵌り込むブロック状のものである。そして、弁座10は、ブロック体Bの収容部B1に嵌め込んだ状態で、そのブロック体Bの所定面と同一方向を向く面が弁座面11となっており、その弁座面11が弁室VRの内面の一部を構成している。また、弁座10の内部には、上流側流路L1と連通する第1流路l1と下流側流路L2と連通する複数の第2流路l2とが設けられている。
【0030】
前記第1流路l1は、その一端が弁座面11の中央に開口していると共に、その他端が収容部B1の底面と対向する面に開口している。また、前記第2流路l2は、その一端が弁座面11の中央を中心とした同心円上に開口していると共に、その他端が収容部B1の内側面と対向する外側面に開口している。そして、弁座10の外側面は、段状になっており、弁座面11側が収容部B1の内側面と密着するようになっていると共に、弁座面11と反対面側が収容部B1の内側面と隙間12を空けて対向するようになっている。これにより、ブロック体Bの収容部B1に弁座10を嵌め込んだ状態で、第1流路L1が上流側流路l1と連通すると共に、第2流路L2が隙間12を介して下流側流路l2と連通するようになっている。
【0031】
前記弁座面11には、その中央を中心として同心円状に複数の導通溝13が形成されている。そして、各流通溝13には、第2流路l2へと連通する複数の導通孔14が等間隔に配置されている。これにより、弁室VR内に滞留する流体が偏りなく第2流路l2へ導出されるようになっている。
【0032】
前記弁体20は、弁座面11と対向する平坦な着座面21を有する薄板状のものである。そして、弁体20には、着座面21と反対側の面であるダイアフラム60と対向する面に曲面状(具体的には、球面状)の傾斜抑制突起22が設けられている。なお、傾斜抑制突起22は、ダイアフラム60に接続されるプランジャ40と対向するように設けられている。また、弁体20は、弁座面11に対し、その弁座面11に設置された支持リング23上に載置されるリング状の板バネ24を介して支持されている。これにより、弁体20は、弁座10側に対する押圧力に対して板バネ24によって反発するようになっている。
【0033】
前記アクチュエータ30は、ピエゾ素子を複数枚積層してなるピエゾスタック31と、ピエゾスタック31に対して電圧(又は電流)を印加するための端子32(図1参照)と、を備えている。そして、アクチュエータ30は、筐体80の他端側に保持されており、端子32を介して印加される電圧によってピエゾスタック31が筐体80の一端側に向かって伸長するように構成されている。
【0034】
前記プランジャ40は、その一端側がダイアフラム60と一体的に形成され、その他端側がアクチュエータ30側へ伸びる棒状のものである。そして、プランジャ40は、ダイアフラム60とアクチュエータ30との間で分割されており、ダイアフラム60と接続される第1分割体41と、第1分割体41よりもアクチュエータ30側に配置される第2分割体42と、を備えている。
【0035】
前記第1分割体41は、その弁体20側の周面41sにダイアフラム60が一体的に形成されている。なお、周面41sは、図3に示す周方向Aに沿った面である。そして、第1分割体41は、その弁体20側の先端面が当該弁体20の傾斜抑制突起22と点接触するように構成されている。また、第1分割体41は、そのアクチュエータ30側に第2分割体42と連結される連結凸部41zが設けられている。
【0036】
前記第2分割体42は、そのアクチュエータ30側の周面にネジ溝42xが形成されている。そして、第2分割体42は、そのアクチュエータ30側が接続機構50を介してアクチュエータ30に接続されている。具体的には、接続機構50は、第2分割体42のネジ溝42xが嵌り込むネジ孔51xを備えた略ナット状のネジ部材51と、ネジ部材51と嵌り合ってアクチュエータ30と接触する接触部材52と、を備えており、これらの部材51,52を介して第2分割体42は、アクチュエータ30に接続されている。また、第2分割体42は、その弁体20側に第1分割体41と連結される連結凹部42zが設けられている。
【0037】
なお、前記ネジ部材51及び前記接触部材52は、プランジャ40の軸方向に対して交差する方向(直交する方向)へ互いに摺動できるように接続されている。これにより、前記各部材の製造や組立てによる誤差によって生じる前記軸方向と直交する方向への軸ズレを吸収できるようになっている。
【0038】
さらに、前記第2分割体42には、その軸方向と直交する方向へ貫通する第1ピン孔42yが形成されている。また、筐体80にも、第1ピン孔42yと対向する側面に第2ピン孔80yが貫通している。そして、第1ピン孔42y及び第2ピン孔80yにピン(図示せず)を差し込むことにより、筐体80に対する第2分割体42の周方向への回転を規制できるようになっている。
【0039】
また、前記第2分割体42は、押圧機構90によってアクチュエータ30側に押圧される構造になっている。具体的には、押圧機構90は、筐体80内で位置ズレしないように保持された支持部材91と、第1分割体41が通され、支持部材91に一端が支持される弾性体92(例えば、コイルバネ)と、を備えている。そして、第2分割体42は、プランジャ40がアクチュエータ30に押圧されて弁体20側へ移動し、ダイアフラム60が弁室VR側へ撓んだ状態になると、弾性体92によってアクチュエータ30側に押圧されるようになっている。
【0040】
次に、前記第1分割体41及び前記第2分割体42の連結構造について図4に基づき詳述する。
【0041】
前記第1分割体41及び前記第2分割体42は、連結凸部41z及び連結凹部42zを介して互いに連結するように構成されている。前記連結凸部41zは、断面T字状に形成されている。連結凸部41zには、その外周面に嵌合片41aが設けられている。なお、嵌合片41aは、プランジャ40の軸方向に伸びる軸を中心として回転対称となる形状になっており、これにより、プランジャ40の周方向に周回する形状になっている。また、前記連結凹部42xは、断面T字状に形成されており、一側面から当該一側面と反対面へ貫通している。連結凹部42xには、その内周面に嵌合片41aが嵌り込む嵌合溝42aが設けられている。
【0042】
また、嵌合溝42aのプランジャ40の軸方向に対する幅は、嵌合片41aの当該軸方向に対する幅よりも所定距離αだけ長くなっている。さらに、嵌合溝42aのプランジャ40の軸方向と直交する方向に対する径は、嵌合片41aの当該直交する方向に対する径よりも所定距離βだけ長くなっている。
【0043】
前記第1分割体41及び前記第2分割体42は、連結凸部41aを連結凹部42aにスライドして嵌め込んで連結できるように構成されており、この時、嵌合片41aに嵌合溝42aが嵌り込んだ状態となる。そして、第2分割体42は、嵌合片41a及び嵌合溝42aの嵌め合わせにより、嵌合片41aに沿って嵌合溝42aを摺動させて、第2分割体42の周方向(図3中、矢印A方向)へフリー回転するように構成されている。言い換えれば、第2分割体42は、第1分割体41に対し、ネジ部材51の締め方向及び緩め方向へ回転自在になっている。また、第2分割体42は、嵌合片41a及び嵌合溝42aの嵌め合わせにより、嵌合片41aに沿って嵌合溝42aをプランジャ40の軸方向へ摺動させて所定距離αスライドするように構成されている。さらに、第2分割体42は、嵌合片41a及び嵌合溝42aの嵌め合わせにより、嵌合片41aに沿ってプランジャ40の軸方向と直交する方向へ摺動させて所定距離βスライドできるように構成されている。
【0044】
前記ダイアフラム60は、筐体80の内部空間を仕切るように形成されており、弁室VRの気密性を保持しながらプランジャ40の動きを弁体20に伝達する役割を果たすものである。
【0045】
前記位置センサ70は、弁座10の弁座面11に対する弁体20の着座面21の位置を示す出力値を出力するものである。そして、位置センサ70は、弁座10の弁座面11に対する相対位置が変化しないように筐体80に固定された第1センサ部71と、第2分割体42に固定される第2センサ部72と、を備えており、第1センサ部71とそのターゲットとなる第2センサ部72との相対位置(相対距離)に基づく値を前記出力値として出力するように構成されている。なお、第1センサ部71は、筐体80に支持された板バネ73によって弁座10側へ常時押圧されており、これにより、位置ズレを抑制している。また、第2センサ部72は、第2分割体42に対してネジ部材51を介して位置ズレしないように固定されている。これにより、位置センサ70を構成する各部材の位置が固定され、位置センサ70による検出精度が向上する。
【0046】
前記制御部Cは、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ等を備えた所謂コンピュータを有し、前記メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協働することによって前記各機能が実現されるようにしてある。具体的には、流量算出部S3で算出された流量値が予めメモリに記憶された目標値に近づくように流体制御弁Vを位置センサ70の出力値をフィードバック制御するものである。
【0047】
次に、本実施形態に係る流体制御弁Vの動作について説明する。
【0048】
前記流体制御弁Vは、アクチュエータ30に電圧が印加されていない状態において、弁開度(弁座10の弁座面11と弁体20の着座面21との間の距離)が所定値になるように設定されている。なお、この弁開度が所定値になった状態が流体制御弁Vの全開状態となる。
【0049】
次に、アクチュエータ30に電圧が印加された状態になると、アクチュエータ30が伸びる。そして、このアクチュエータ30の伸びに伴う動力が接続機構50、第2分割体42(プランジャ)、第1分割体41(プランジャ)の順番で弁体20へと伝達され、弁体20が板バネ24の押圧に抗するように弁座20に接触する方向(近づく方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が所定値よりも小さい値となる。なお、アクチュエータ30は、印加される電圧値(又は電流値)が大きくなるほどその伸びが大きくなるため、電圧値の大きさを調節することにより、弁開度を制御できるようになっている。
【0050】
続いて、アクチュエータ30に印加される電圧が小さくなると、アクチュエータ30が縮む。そして、このアクチュエータ30の縮みに伴って弁体20が板バネ24の押圧によって弁座10と離間する方向(遠ざかる方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が大きい値になる。
【0051】
ここで、アクチュエータ30に印加された電圧が小さくなる場合には、アクチュエータ30の縮みに伴う動力が直接ダイアフラム60に伝達されないようになっている。詳述すると、アクチュエータ30が縮むと、第2分割体42は、弾性体92の押圧によってアクチュエータ30側へ移動する。しかし、第2分割体42は、第1分割体41に対して所定距離αスライドできるように構成されていることから、第2分割体42の動作がこのスライド動作によって吸収されて第1分割体41に対して直接伝達されないようになっている。そして、第1分割体41が、ダイアフラム60の復元力によってアクチュエータ30側へ移動すると共に、弁体20が、板バネ24の押圧によって弁座10から離間する方向へ移動し、弁開度が大きい値になる。これにより、アクチュエータ30の縮みに伴う力がダイアフラム60へ直接伝達され難くなり、ダイアフラム60の損傷を抑制できる。また、プランジャ40が一体に形成されたものに比べて、プランジャ40をアクチュエータ30側へ移動させるための動力(押圧機構90の押圧力、ダイアフラム60の復元力)が増える。これにより、アクチュエータ30の縮みによる動きに伴うプランジャ40の追従動作が速くなり、流体制御弁Vの応答性が向上する。
【0052】
次に、本実施形態に係る流体制御弁Vのプランジャ40を組み付ける工程を説明する。
【0053】
前記流体制御弁Vは、基本的にブロック体B側に配置される部材から順番に積み上げるように連結して組み上げられる。そして、プランジャ40を組み付ける場合には、先ず、第1分割体41に対して第2分割体42を連結する。この状態において、第1ピン孔42y及び第2ピン孔80yにピンを差し込み、筐体80を構成する部材に対して第2分割体42が回転しないように固定する。この状態で、第2分割体42に対して位置センサ70の第2センサ部72を嵌め込んでネジ部材51によって固定する。なお、この場合、各ピン孔42y、80yとピンとのがたつきによって多少第2分割体42が第1分割体41に対して回転したとしても、第1分割体41に対してその周方向に回転自在になっていることから、第2分割体42に対してネジ部材51を締め付けたり、緩めたりした場合に生じる回転力がダイアフラム60に伝達され難くなる。そして、その後、第1ピン孔42y及び第2ピン孔80yからピンを抜き取り、筐体80に対してプランジャ40が移動できるようにする。
【0054】
なお、前記第1分割体41の嵌合片41aに対し、前記第2分割体42の嵌合溝42aのプランジャ40の軸方向の幅及び当該軸方向と直交する方向の幅がいずれも大きくなっている。このため、第1分割体41及び第2分割体42は、その連結箇所においても弁体20の傾斜を吸収できるようになっている。
【0055】
<その他の実施形態> 前記実施形態1においては、プランジャ40のダイアフラム60よりもアクチュエータ30側を一カ所で分割しているが、二カ所以上で分割してもよい。この場合、必ずしもダイアフラム60に接続される第1分割体41と隣接して配置される分割体を第2分割体42に設定する必要はなく、当該第1分割体41と他の分割体を挟んで配置される分割体を第2分割体42に設定してもよい。
【0056】
例えば、図5に示すように、プランジャ40のダイアフラム60よりもアクチュエータ30側を二カ所で分割した場合には、第1分割体41と隣接して配置される分割体Aを第2分割体42としてもよく、第1分割体41と分割体Aを挟んで配置される分割体Bを第2分割体42としてもよい。なお、前者の場合、第2分割体42となる分割体Aよりもアクチュエータ30側に位置する分割体Bも、第1分割体41に対し、分割体Aと同様に動作する。よって、この場合、分割体Bも第2分割体42の一部ともいえる。
【0057】
また、前記実施形態1においては、ノーマルオープンタイプの流体制御弁Vを例示して本発明を説明しているが、本発明は、ノーマルクローズタイプの流体制御弁にも適用することができる。例えば、ノーマルクローズタイプの流体制御弁としては、図6に示すように、ブロック体Bの収容部B1に嵌め込まれる弁座10と、弁座10に対して接離方向へ移動できるように設置された弁体20と、弁体20を移動させるアクチュエータ(図示せず)と、弁体20とアクチュエータ30との間に介在し、アクチュエータ30の動力を弁体20に伝達するプランジャ40と、プランジャ40と一体的に接続された薄膜状のダイアフラム60と、を備えている。なお、弁体20は、ブロック体Bの上流側流路l1と弁座10との間に介在するように収容部B1内に設置されており、当該収容部B1に保持された板バネ24´によって常時弁座20側に向かって押圧されている。また、プランジャ40は、ダイアフラム60から弁座10を貫通して弁体20に接触するように伸びている。そして、当該流体制御弁Vは、プランジャ40によって弁体20が押圧されると、板バネ24´の押圧に抗して弁体20が弁座10から離間する方向へ移動し、弁座10及び弁体20の間に隙間(この隙間の距離が弁開度となる)が生じる。これにより、上流側流路l1から板バネ24´に設けられた導通孔24´hを介して当該隙間に流れ込んだ流体が、弁座10とダイアフラム60との間に流れ込んで下流側流路l2へと流れるようになっている。よって、当該流体制御弁Vは、アクチュエータに電圧を印加させない状態で全閉状態となり、アクチュエータに電圧を印加することによって弁開度が広がるように構成されている。
【0058】
また、前記実施形態1においては、流体制御弁Vのアクチュエータ30としてピエゾ素子(ピエゾスタック)を使用しているが、ソレノイド等を使用してもよい。
【0059】
また、前記実施形態1においては、流体制御装置MFCとして、位置センサ70の出力値に基づき流体制御弁Vをフィードバック制御する方式のマスフローコントローラを例示して説明しているが、本発明は、熱式流量センサ又は圧力式流量センサの測定値に基づき流体制御弁をフィードバック制御する方式のマスフローコントローラにも適用できる。
【0060】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
MFC 流体制御装置
B ブロック体
S 流量センサ
V 流体制御弁
10 弁座
20 弁体
30 アクチュエータ
40 プランジャ
41 第1分割体
41s 周面
41z 連結凸部
41a 嵌合片
42 第2分割体
42z 連結凹部
42a 嵌合溝
50 接続機構
51 ネジ部材
60 ダイアフラム
70 位置センサ
71 第1センサ部
72 第2センサ部
80 筐体
90 押圧機構
91 支持部材
92 弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6