(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20220902BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20220902BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B60R16/02 622
H01B17/58 C
H02G3/22
(21)【出願番号】P 2018107977
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信
(72)【発明者】
【氏名】内堀 正紀
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-059361(JP,U)
【文献】特開2017-158368(JP,A)
【文献】特開2012-100396(JP,A)
【文献】特開平08-168144(JP,A)
【文献】特開2001-099359(JP,A)
【文献】特開2005-080427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H01B 17/58
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに設けたパネル孔よりも小径に形成され、内部にワイヤーハーネスを挿通する筒状の小径筒部と、
前記パネル孔に嵌合するように前記パネル孔よりも大径に形成され、前記ワイヤーハーネスの挿通方向に沿って前記小径筒部が貫通する底面部が備えられた有底筒状の大径筒部とが一体構成され、
有底筒状の前記大径筒部において前記底面部から開口に向かう方向を開口側とし、
前記底面部における一部分が、前記底面部における他の部分よりも変形性の高い変形部で形成されるとともに、
前記小径筒部に対して径方向に所定の間隔を隔てるように、前記大径筒部から前記開口側に向けて延出する延出部が設けら
れ、
前記大径筒部は、
前記挿通方向の厚みが、前記底面部における他の部分よりも薄い薄肉部で構成された前記変形部と、前記薄肉部の前記径方向の外側に設けられ、前記パネル孔と嵌合する嵌合部が備えられた外縁部とで一体構成された前記底面部と、
前記外縁部から前記開口側に突出するとともに、前記開口側に向かうに伴い、前記挿通方向から視て前記変形部と重なる位置まで縮径する縮径部とを有し、
前記縮径部から、前記小径筒部の周方向に沿って不連続に構成されるとともに、前記小径筒部を挟んで2つの前記延出部が延出し、
前記底面部を貫通する前記小径筒部は、前記延出部よりも前記開口側に向けて突出しているとともに、前記延出部との間に人の親指が挿入できる程度の隙間が形成された
グロメット。
【請求項2】
前記変形部が、
前記底面部を貫通する前記小径筒部の外周を囲むように配置された
請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記薄肉部の前記挿通方向の厚さが、前記外縁部における前記挿通方向の厚さの6分の1以上、3分の1以下である
請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記小径筒部は、
前記底面部を貫通した貫通部位における前記径方向の厚みが、前記貫通部位よりも前記開口側における前記径方向の厚みよりも厚く構成された
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項5】
前記延出部と前記小径筒部との間隔が、
所定の間隔で維持され、又は、前記開口側に向かうに伴い広がるように構成された
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項6】
前記延出部の前記開口側に滑り止め手段が設けられた
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項7】
前記延出部は、
前記挿通方向から視て、前記底面部を貫通する前記小径筒部に沿った円弧状に形成された
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車体パネルに設けられたパネル孔に挿通されるワイヤーハーネスを保護するグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧電線であるワイヤーハーネスを車両に配策する場合、車両のフロアパネルの床下に配線するとともに、ワイヤーハーネスの一端側をフロアパネルに設けられたパネル孔に挿通させてフロアパネル上に引き出し、車内側のバッテリ等と接続することがある。
【0003】
このようにワイヤーハーネスをパネル孔に挿通させる場合、ワイヤーハーネスをグロメットに挿通させ、このグロメットをパネル孔に装着することで、ワイヤーハーネスをパネル孔に挿通させている。これにより、ワイヤーハーネスがパネル孔と干渉して損傷することを防止できるとともに、車内側への防水や防塵を図ることができる。
【0004】
パネル孔に装着させるグロメットの一例として、車体パネルに設けられたパネル孔よりも小径で、ワイヤーハーネスを挿通できる小径筒部と、パネル孔よりも大径で、小径筒部が貫通する大径筒部とで構成され、大径筒部の外周面にはパネル孔に仮係止できる仮係止部が備えられたグロメットが特許文献1に開示されている。
【0005】
この特許文献1に開示されているグロメットは、車外側からグロメットに挿通したワイヤーハーネスを車内側に挿通させ、車内側から小径筒部を引っ張り込むことでグロメット(大径筒部)をパネル孔に装着させることができる。このとき、仮係止部をパネル孔に仮係止させることで、車内側に引っ張り込む前にワイヤーハーネスの重みでグロメットが車外側に落ちることを防止でき、グロメットの装着作業性を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、作業者やグロメットのサイズによっては、小径の小径筒部を把持して車内側に引っ張り込むことが困難であることから、パネル孔にグロメットを装着させることが困難であり、引っ張りによるグロメットの装着作業性を向上させることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の問題に鑑み、パネル孔への装着作業性を向上させることができるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車体パネルに設けたパネル孔よりも小径に形成され、内部にワイヤーハーネスを挿通する筒状の小径筒部と、前記パネル孔に嵌合するように前記パネル孔よりも大径に形成され、前記ワイヤーハーネスの挿通方向に沿って前記小径筒部が貫通する底面部が備えられた有底筒状の大径筒部とが一体構成され、有底筒状の前記大径筒部において前記底面部から開口に向かう方向を開口側とし、前記底面部における一部分が、前記底面部における他の部分よりも変形性の高い変形部で形成されるとともに、前記小径筒部に対して径方向に所定の間隔を隔てるように、前記大径筒部から前記開口側に向けて延出する延出部が設けられ、前記大径筒部は、前記挿通方向の厚みが、前記底面部における他の部分よりも薄い薄肉部で構成された前記変形部と、前記薄肉部の前記径方向の外側に設けられ、前記パネル孔と嵌合する嵌合部が備えられた外縁部とで一体構成された前記底面部と、前記外縁部から前記開口側に突出するとともに、前記開口側に向かうに伴い、前記挿通方向から視て前記変形部と重なる位置まで縮径する縮径部とを有し、前記縮径部から、前記小径筒部の周方向に沿って不連続に構成されるとともに、前記小径筒部を挟んで2つの前記延出部が延出し、前記底面部を貫通する前記小径筒部は、前記延出部よりも前記開口側に向けて突出しているとともに、前記延出部との間に人の親指が挿入できる程度の隙間が形成されたグロメットであることを特徴とする。
【0010】
前記底面部は、平面で構成されている場合や曲面で構成されている場合を含む。
前記変形部は、例えば、前記底面部における他の部分と形状が異なるために変形性が高い場合や、材質が異なるため変形性が高い場合などを含む。具体的には、前記底面部における他の部分に比べて前記挿通方向に沿った厚みが薄くなるように形成されている場合や、前記底面部の前記開口側に溝を設けるなど前記底面部が変形性の高い形状に形成されている場合、前記底面部における他の部分よりも剛性が低い部材で構成されている場合、前記底面部における他の部分よりも剛性が高い部材で構成しつつ、形状により変形性を向上させた場合などを含む。
【0011】
前記延出部は、1又は複数設けられている場合を含む。また、前記延出部は、挿通方向から視て前記小径筒部の周方向に沿って部分的又は全周にわたって円弧状に形成されている場合や、挿通方向と直交する直線状に形成されている場合を含む。
【0012】
上述の前記大径筒部から前記開口側に向けて延出するとは、前記変形部や、前記変形部の外縁部、前記底面部における前記変形部以外の部位、前記大径筒部における前記底面部以外の部位などから延出する場合を含む。
【0013】
上述の開口側に向けて延出するとは、前記延出部が前記小径筒部と平行に延出する場合や、前記径方向の外側に向けて広がるように延出する場合、前記径方向の内側に向けて延出する場合を含む。
上述の前記小径筒部を挟んでとは、2つ設けられた前記延出部が、前記挿通方向に直交する直交面に対して面対称である場合や面対称でない場合も含むが、直交面に対して面対称である場合が好ましい。
【0014】
この発明により、前記大径筒部をパネル孔に装着させる装着作業性を向上させることができる。
詳述すると、前記小径筒部に対して前記径方向に所定の間隔を隔てるように、前記大径筒部から前記開口側に向けて延出する延出部が設けられることにより、前記延出部と前記小径筒部との間に指などを入れて前記延出部を把持することができる。これにより、径の小さい前記小径筒部を把持して引っ張る場合に比べて、前記大径筒部を前記開口側に引っ張りやすく、前記大径筒部をパネル孔に装着させる装着作業性を向上させることができる。
【0015】
また、一般に前記パネル孔に前記大径筒部を装着させる作業は、前記パネル孔に前記大径筒部の一部を係止させ、係止させた箇所を支点として前記大径筒部を前記他方側に引っ張る作業を行っている。
本発明において、前記パネル孔に前記大径筒部の一部を係止させ、係止させた箇所を支点として前記延出部を前記開口側に引っ張ることにより、前記変形部を前記開口側に湾曲するように変形させることができる。この変形部の変形により、前記大径筒部の径方向の外側を前記開口側に湾曲させることができ、前記大径筒部が前記挿通方向から視て縮径することとなる。したがって、前記大径筒部を前記パネル孔に容易に挿通させることができる。
【0016】
このように、大径筒部と小径筒部とで構成されたグロメットにおいて、前記大径筒部を構成する前記底面部に、前記底面部における他の部位よりも変形性の高い変形部が形成されるとともに、前記径方向に対して前記小径筒部と所定の間隔を隔てるように、前記大径筒部から前記開口側に前記延出部を延出させることにより、前記パネル孔に前記大径筒部を装着する装着作業性を向上させるとともに、容易に前記大径筒部を前記パネル孔に装着することができる。
【0017】
さらにまた、前記大径筒部が前記パネル孔に取り付けられた状態において、前記小径筒部に挿通させた前記ワイヤーハーネスが前記小径筒部の内周面に当たった場合でも、前記変形部が衝撃を吸収する緩衝部として作用するため、前記小径筒部に対して意図せずに前記ワイヤーハーネスが当たるなどして、前記大径筒部が前記パネル孔から外れることを防止できる。
【0018】
また、前記底面部における薄肉部と他の部分とを同一部材で構成しながら、前記薄肉部の変形性を向上させることができる。すなわち、複数の部材を用いることなく、前記底面部における一部分が変形性の高い大径筒部を容易に製造することができる。またこれにより、製造コストを削減することができる。
【0019】
さらにまた、前記大径筒部は、前記変形部と、前記底面部の前記径方向の外側に設けられた外縁部とで構成された前記底面部と、前記外縁部から前記開口側に突出しているとともに、前記開口側に向かうに伴い、前記挿通方向から視て前記変形部と重なる位置まで縮径する縮径部とを有し、前記縮径部から前記延出部が延出している。
【0020】
これにより、前記延出部に対して前記開口側への引張力を作用させた場合に、前記外縁部に対して前記径方向の内側に引張力が作用するため、前記外縁部の内側に設けられた前記変形部をより変形させることができる。これにより、前記底面部をより確実に縮径させることができ、前記大径筒部を前記パネル孔に装着させる装着作業性を向上させることができる。
【0021】
また、前記延出部が、前記小径筒部を挟んで2つ設けられていることにより、前記パネル孔に対する前記大径筒部の装着作業性をより向上させるとともに、前記大径筒部の装着を確実に行うことができる。
【0022】
詳述すると、前記大径筒部の一部を前記パネル孔に係止させて前記延出部を引っ張り込む場合に、前記延出部のうち係止させた側を把持して固定しながら、他方を引っ張って前記大径筒部を前記パネル孔に装着することができるため、確実に前記他方側を枢動させることができ、前記パネル孔に対する前記大径筒部の装着作業性をより向上させることができる。
【0023】
また、前記延出部のうち係止させた側を把持して固定することができるため、グロメットの装着作業中において、前記大径筒部が前記挿通方向を回転軸として軸回転することを防止でき、前記パネル孔に対して確実に前記大径筒部を装着させることができる。
【0024】
この発明の態様として、前記底面部が、前記径方向に沿って形成されてもよい。
上述の前記底面部が、前記径方向に沿って形成されるとは、前記底面部における前記開口から視て前記底面部側が前記挿通方向と直交する前記径方向に沿った平面で形成されていることをさす。
【0025】
この発明により、前記グロメットを前記パネル孔に装着させた状態において、前記底面部が突っ張りとして作用することとなる。したがって、前記大径筒部に外部から意図しない外力が作用した場合であっても、前記大径筒部が前記パネル孔から外れることを防止できる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記変形部が、前記底面部を貫通する前記小径筒部の外周を囲むように配置されてもよい。
上述の前記小径筒部の外周を囲むようにとは、前記小径筒部の外周全周を囲む場合の他、前記小径筒部の外周の大部分を囲む場合を含む。
【0027】
この発明により、前記延出部を前記開口側に引っ張った場合に、前記大径筒部を確実に縮径させることができるため、前記大径筒部を容易かつ確実に前記パネル孔に挿通させ、装着させることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記底面部は、前記薄肉部と、前記薄肉部の前記径方向の外側に設けられ、前記パネル孔と嵌合する外縁部とを有し、前記薄肉部の前記挿通方向の厚さが、前記外縁部における前記挿通方向の厚さの6分の1以上、3分の1以下であってもよい。
【0029】
この発明により、前記大径筒部を前記パネル孔により容易に装着できるとともに、前記パネル孔に装着された前記大径筒部が意図せずに外れることを防止できる。
詳述すると、前記薄肉部の厚さが前記外縁部の6分の1未満である場合、前記薄肉部の変形性は向上するものの、前記薄肉部が容易に変形するため、意図しない外力が前記大径筒部に作用した場合に前記底面部が変形し、パネル孔に装着した前記大径筒部が意図せずに外れるおそれがある。
【0030】
一方で、前記薄肉部の厚さが前記外縁部の厚さの3分の1よりも大きい場合には、前記薄肉部の変形性が低減し、前記薄肉部が容易に変形しなくなる。このため、前記延出部を前記開口側に引っ張った場合に、前記大径筒部が前記挿通方向から視て前記パネル孔に挿通できる程度まで縮径されず、前記パネル孔に装着するのが困難となる。
【0031】
これに対して、前記薄肉部の厚さが前記外縁部の厚さの6分の1以上3分の1以下である場合には、前記薄肉部の変形性を十分に向上させるとともに、意図しない外力が前記大径筒部に作用した場合でも前記大径筒部の形状を維持することができる。したがって、前記大径筒部を前記パネル孔により容易に装着できるとともに、前記パネル孔に装着された前記大径筒部が意図せずに取り外されることを確実に防止できる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記小径筒部は、前記底面部を貫通した貫通部位における前記径方向の厚みが、前記貫通部位よりも開口側における前記径方向の厚みよりも厚く構成されてもよい。
【0033】
上述の前記径方向の厚みが、前記貫通部位よりも開口側における前記径方向の厚みよりも厚く構成されとは、前記変形部を貫通する前記小径筒部の径方向の厚みが、前記開口側に向かうに伴い連続的に薄くなる構成や、段階的に薄くなる構成を含む。
【0034】
この発明により、前記変形部を貫通する前記小径筒部における貫通部位の変形性を低下させることができる。これにより、前記小径筒部における前記貫通部位が変形せずに前記底面部を支持するため、前記変形部がより変形しやすくできる。したがって、前記大径筒部をより容易に前記パネル孔に装着することができる。
【0035】
また、前記開口側の端部側の厚みが薄く構成されている前記小径筒部は、前記端部側が変形しやすく構成されているため、例えば前記小径筒部に挿通させるワイヤーハーネスが湾曲した場合などに、前記小径筒部が前記ワイヤーハーネスの湾曲を追従し、前記ワイヤーハーネスにより作用する外力を緩衝することができる。したがって、前記ワイヤーハーネスが前記小径筒部の内周面に当たった場合であっても前記変形部が変形することを防止できる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記延出部と前記小径筒部との間隔が、所定の間隔で維持され、又は、前記開口側に向かうに伴い広がるように構成されてもよい。
この発明により、前記小径筒部と前記延出部とが所定の間隔以上に形成されるため、前記延出部を確実に把持することができるため、前記グロメットの装着作業をより容易かつ確実に行うことができる。
【0037】
またこの発明の態様として、前記延出部の前記開口側に滑り止め手段が設けられてもよい。
前記滑り止め手段は、例えば前記延出部の開口側の端部に前記径方向に突出部が形成されている場合や、前記延出部の開口側が凹凸形状で形成されている場合、前記延出部の開口側に滑り止め材が塗布されている場合などを含む。
【0038】
この発明により、前記延出部をより確実に把持することができるため、前記延出部の前記挿通方向外側をより確実に前記開口側へ引っ張ることができる。したがって、前記パネル孔に前記グロメットを装着させる装着作業性を向上させることができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記延出部は、前記挿通方向から視て、前記底面部を貫通する前記小径筒部に沿って円弧状に形成されてもよい。
この発明により、例えば作業者の親指を前記小径筒部と前記延出部との間に挿入させるとともに、前記延出部の円弧に沿って作業者の人差し指を這わせることができるため、前記延出部を力強く把持することができる。これにより確実に前記延出部を前記開口側へ引っ張ることができ、より確実かつ容易にグロメットをパネル孔に装着させることができる。
【発明の効果】
【0040】
この発明により、パネル孔への装着作業性を向上させることができるグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【発明を実施するための形態】
【0042】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1はグロメット1の概略斜視図を示し、
図2はグロメット1の側面図を示し、
図3はグロメット1の先端側の説明図を示し、
図4はグロメット1の先端側の側方断面図を示す。
【0043】
図3について詳述すると、
図3はグロメット1の先端側を説明するための説明図であり、
図3(a)はグロメット1の先端側の拡大側面図を示し、
図3(b)はグロメット1の先端側を長手方向に沿って視た正面図を示す。なお、
図4は
図3(b)におけるA-A矢視断面図を示す。
【0044】
ここで、グロメット1の長手方向を長手方向Lとし、グロメット本体11に対して先端筒部12が配置されている方向(
図1中の右側)を先端側(+L方向)とし、グロメット本体11に対して基端筒部13が配置されている方向(
図1中の左側)を基端側(-L方向側)とする。
また長手方向Lに対して直交する平面において、小径筒部10の中心軸に対して放射線状に広がる方向を径方向とし、径方向の外側を径外側、内側を径内側とする。
【0045】
グロメット1は、ゴムまたは柔軟なエラストマーで形成された中空状の円筒体であり、ワイヤーハーネスWHを内部に挿通させて保護することができる。このグロメット1は、
図1及び
図2に示すように、ワイヤーハーネスWHを長手方向Lに沿って内部に挿通させる小径筒部10と、後述する車体パネルPを貫通させた円形状の貫通孔であるパネル孔Hに装着可能な大径筒部20とで一体に構成されている。
【0046】
小径筒部10は、パネル孔Hよりも小径に形成された環状の底面で形成された長尺状の円筒体であり、長手方向Lに沿った円筒状のグロメット本体11と、グロメット本体11の先端側(+L側)に配置されている先端筒部12と、グロメット本体11の基端側に配置されている基端筒部13とで構成されている。
【0047】
グロメット本体11は底面が真円の環状である中空状の円筒体であり、内径がワイヤーハーネスWHの外径よりも大きく形成され、外径方向に隆起する隆起部111と、内径方向に凹んだ溝部112とが長手方向Lに沿って交互に配置された屈曲自在な蛇腹構造で構成されている。
【0048】
なお、本実施形態においてグロメット本体11は蛇腹構造としているが、必ずしも蛇腹構造である必要はなく、屈曲自在な円筒体であってもよいし、また蛇腹構造と円筒体とを組み合わせた構成でもよい。
【0049】
先端筒部12は、グロメット本体11の先端側(+L側)に設けられた円筒状の開口端部であり、後述する底面部21の中心部分を貫通するとともに、長手方向Lに沿って先端側(+L側)に突出している。
【0050】
この先端筒部12は、
図4に示すように、先端側(+L側)に向かうに伴い連続的に縮径する略円錐台状の円筒体で構成されている。換言すると、先端筒部12は、先端側(+L側)の厚みが先端筒部12の基端側(-L側)の厚みよりも薄くなっている。
【0051】
このため、先端筒部12の先端側(+L側)の変形性は先端筒部12の基端側に比べて高く、先端筒部12に挿通させたワイヤーハーネスWHの湾曲に追従して湾曲させるとともに、湾曲したワイヤーハーネスWHが先端筒部12の内周面に当接した際の外力を吸収する緩衝部として作用する。
【0052】
また、先端筒部12の先端側(+L側)の外周面には、小径筒部10に挿通させたワイヤーハーネスWHを固定するための結束バンドを巻きつけるための先端側バンド装着部121が形成されている。
この先端側バンド装着部121と対向する先端筒部12の内周面には、径内方向に向けて突出した突出部122が設けられており、先端側バンド装着部121に巻きつけた結束バンドによりワイヤーハーネスWHをしっかりと固定することができる。
【0053】
基端筒部13は、グロメット本体11の基端側(-L)に設けられた円筒状の開口端部であり、グロメット本体11の内部に挿通させたワイヤーハーネスWHの基端部側を挿通可能に形成されている。なお、基端筒部13の外周面には、グロメット本体11に挿通させたワイヤーハーネスWHを固定するための結束バンドを巻きつけるための基端側バンド装着部131が形成されている。
【0054】
大径筒部20は、基端側に底面を有し、先端側(+L側)が開口した有底の円筒体であり、
図1乃至
図4に示すように、長手方向Lから視てパネル孔Hよりも大径に形成された円形状の底面で形成された底面部21と、底面部21から先端側(+L側)に縮径しながら突出する縮径部22とで一体に構成されている。
【0055】
底面部21は、基端側(-L側)が径方向に沿って平面状に形成された真円状の底面を有する有底の円管体であり、
図4に示すように、底面部21の外周側を形成する外縁部211と、底面部21の径方向内側に形成された薄肉部212とで一体構成されている。
【0056】
外縁部211は、長手方向Lに沿って所定の厚みL1を有し、また径方向にも所定の厚みを有した円筒体であり、基端側は長手方向Lと直交して平面上に形成されている。また、外縁部211の先端側(+L側)に形成された面には-L方向側に向けて窪んだ凹部211aが円環状に形成されている。
【0057】
厚みL1について詳述すると、外縁部211の厚みL1は、外縁部211の基端側(-L側)の底面から凹部211aまでの長さをさす。なお、本実施形態において厚みL1は上述の定義に限定されず、例えば外縁部211における長手方向の厚みの平均値で定義づけしてもよい。
この外縁部211は、長手方向Lに沿って十分な厚みL1を有しているため、剛性が高く、容易に変形しないように形成されている。
【0058】
底面部21の径内側に形成された薄肉部212は、長手方向Lに対して直交する円形状の面であり、中央部分に先端筒部12が貫通している。すなわち、薄肉部212は、中央部分を貫通する先端筒部12の外周面の全周を囲繞するように配置されている。
【0059】
また、薄肉部212における長手方向Lの沿った厚みL2は、薄肉部212において最も板厚の薄い部分での板厚であり、厚みL1の6分の1以上、3分の1以下である、5分の1となるように形成されている。すなわち、薄肉部212は、外縁部211に比べて長手方向Lに沿った板厚が薄い薄肉状に形成されている。
【0060】
なお、
図4に示すように、薄肉部212の先端側(+L側)における径外側は、先端側(+L側)に向かうに伴い厚みが徐々に厚くなっており、側方断面視において外縁部211の内周面と滑らかな円弧状を形成しながら連結している。
【0061】
このように形成された底面部21は、外縁部211の厚みL1が厚く形成されているとともに、薄肉部212の厚みL2が薄く形成されていることにより、外周面を形成する外縁部211の変形性が低く構成されているとともに、薄肉部212の変形性が高く構成されている。
【0062】
また、上述したように、先端筒部12の基端側、すなわち薄肉部212と先端筒部12との連結部位における先端筒部12の厚みが先端側(+L側)と比べて厚いため、先端筒部12の基端側(-L側)の変形性が低くなっている。すなわち、薄肉状に形成された薄肉部212は変形性の低い2つの部材(先端筒部12及び外縁部211)に挟まれているため、後述する延出部30に作用させた第二引張力F2により変形しやすく形成されている。
【0063】
縮径部22は、長手方向Lから視て環状に形成された、側面視略円錐台形状の円筒体であり、
図3及び
図4に示すように、外縁部211の径方向内側端部から先端側(+L側)にわずかに突出する溝形成部221と、外周面が溝形成部221の先端から径方向外側に広がるように先端側(+L側)に向けて延びる拡径部222と、拡径部222の先端から径方向内側に狭まるように先端側(+L側)に向けて延びる先端縮径部223と構成されており、先端縮径部223の先端からは先端側(大径筒部20における底面部21から開口)に向けて延出部30が延出している。
【0064】
先端縮径部223は、
図4に示すように、先端部分が長手方向Lから視て薄肉部212と重なる位置まで伸びており、底面部21を貫通する先端筒部12との間に、人の親指が挿入できる程度の隙間が形成されている。
【0065】
このように形成された底面部21と縮径部22との間には、外縁部211と溝形成部221と拡径部222とで径方向内側に窪んだ真円状の溝で構成された嵌合部23が形成されている。なお、嵌合部23はパネル孔Hを形成するパネル孔形成枠P1の径を等しくなるように形成されており、グロメット1をパネル孔Hに装着させた状態においてパネル孔形成枠P1と嵌合することができる(
図6(b)参照)。
【0066】
先端縮径部223の先端から延出する延出部30は、長手方向Lに沿って延びる先端筒部12と所定の間隔を隔てて設けられた略板状体であり、
図3及び
図4に示すように、先端縮径部223から延出する延出基部31と、延出基部31に外周面及び内周面からそれぞれ径方向に突出した滑り止め部32とで構成されている。
【0067】
延出基部31は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、先端縮径部223の径内側の端部から長手方向Lに沿って延出する板状体であって、長手方向Lから視て先端筒部12の外周面に沿うような円弧状に形成されている。なお、円弧状に形成された延出基部31の中心角αは先端筒部12の中心軸を中心として70度となるように形成されている(
図3(b)参照)。
【0068】
本実施形態において、延出基部31における中心角は70度としているが、延出基部31における中心角は70度に限定するわけではなく、グロメット1の装着作業を行う作業者が延出部30を把持して+L側に引っ張りやすい長さとなるような中心角が好ましく、具体的には40~90度とすることが好ましく、また60~80度がより好ましい。
【0069】
滑り止め部32は、延出基部31の先端側(+L側)に外周面及び内周面から、それぞれ径方向に突出した凸部であり、長手方向Lに沿って複数(本実施形態では3つ)設けられている。これにより、作業者が延出部30を把持したときに、作業者の手が滑ることを防止でき、より効率よく装着作業を行うことができる。
【0070】
このように構成された延出部30は、
図1~
図4に示すように、先端縮径部223の図中における上方及び下方から先端側(+L側)に2つ延出している。すなわち、延出部30は先端筒部12を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。
【0071】
なお、本実施形態において、延出部30は先端筒部12の中心軸を回転軸として回転対称の位置に2つ設けられているが、必ずしも2つである必要はなく、例えば1つでもよければ、奇数個又は偶数個設けてもよい。
また、複数の延出部30を先端縮径部223から延出する場合にこれらの延出部30は先端筒部12の中心軸を回転軸として回転対称としてもよいし、非回転対称としてもよい。
【0072】
次にグロメット1を車体パネルPに設けたパネル孔Hに装着する装着作業について、
図5及び
図6に基づいて説明する。
ここで
図5及び
図6は、車体パネルPに設けられたパネル孔Hに対してグロメット1を装着する装着作業を、
図3(b)に対応する断面図を用いて説明する説明図を示す。
【0073】
詳しくは、
図5(a)は車体パネルPに設けたパネル孔形成枠P1の側方断面図を示し、
図5(b)は小径筒部10をパネル孔形成枠P1に一部分を引掛けた状態の側方断面図を示し、
図6(a)は延出部30を先端側(+L側)に引っ張った状態の側方断面図を示し、
図6(b)は小径筒部10がパネル孔形成枠P1に装着した状態の側方断面図を示す。なお、
図5及び
図6において、グロメット1に挿通させているワイヤーハーネスWHは破線で表す。
【0074】
はじめに、
図5(a)に示すように、ワイヤーハーネスWHを挿通させたグロメット1において延出部30が図中における上下方向に配置されるように、ワイヤーハーネスWHの先端側(+L側)を車体パネルPに設けたパネル孔Hに挿通させる。
【0075】
次に、
図5(b)に示すように、グロメット1の先端側(+L側)をパネル孔Hに挿入させるとともに、図中の下方側の嵌合部23をパネル孔形成枠P1に係止させる。
そして、
図6(a)に示すように、図中の下方側の延出部30(延出部30d)を先端側(+L側)に軽く引っ張るように把持して大径筒部20を固定するとともに、上方側の延出部30(延出部30u)を先端側(+L側)に強く引っ張り、大径筒部20をパネル孔Hに挿通させる。
【0076】
詳述すると、延出部30dを把持し、長手方向Lの先端側(+L側)に向けて第一引張力F1を作用させることで、パネル孔形成枠P1に係止させた大径筒部20が動かないように固定する。この状態で延出部30uを把持して長手方向Lの先端側(+L側)に向けて第二引張力F2を作用させることにより、延出部30dとパネル孔形成枠P1との係止位置を支点として大径筒部20を枢動させることができる。
【0077】
このとき、先端縮径部223が径内側に向けて縮径しているため、延出部30を先端側(+L側)に引っ張ることにより、先端縮径部223が径内側に向けて入り込むこととなる。これにより、拡径部222が内側に引き込まれることとなる(
図6(a)参照)。
【0078】
また、先端筒部12と外縁部211に挟まれた薄肉状の薄肉部212は、変形性が高いため、延出部30に作用させた第二引張力F2が縮径部22及び底面部21を介して薄肉部212に伝達され、薄肉部212の径外側が先端側(+L側)に引っ張られることとなる。また、先端筒部12の基端側は変形性が低いため、薄肉部212の径内側は変形されない(
図6(a)参照)。
【0079】
なお、薄肉部212の先端側外側は、側方断面において円弧状に形成されているため、外縁部211を介して薄肉部212に確実かつ滑らかに第二引張力F2を伝達でき、第二引張力F2により薄肉部212と外縁部211との連結部位が破損することを防止できる。
これにより薄肉部212の径外側が先端側(+L側)に向けて湾曲し、外縁部211が内側に入り込むこととなり、長手方向Lから視て拡径部222の上方側が径内側に向けて縮径する。
【0080】
このように、延出部30uに第二引張力F2を作用させることにより、拡径部222が径内側に向けて縮径するため、縮径部22がパネル孔Hに入り込みやすくなり、大径筒部20をパネル孔Hに挿通させることができる。
【0081】
そして、
図6(b)に示すように、延出部30に作用させている第一引張力F1及び第二引張力F2を解除することにより、ゴムまたは柔軟なエラストマーで形成された大径筒部20が元の形状に戻り、パネル孔形成枠P1が嵌合部23に嵌合され、グロメット1(大径筒部20)をパネル孔Hに嵌合させることができる。
【0082】
このようにグロメット1は、車体パネルPに設けたパネル孔Hよりも小径に形成され、内部にワイヤーハーネスWHを挿通する筒状の小径筒部10と、パネル孔Hに嵌合するようにパネル孔Hよりも大径に形成され、ワイヤーハーネスWHの長手方向Lに沿って小径筒部10が貫通する底面部21が備えられた有底筒状の大径筒部20とが一体構成され、有底筒状の大径筒部20において底面部21から開口に向かう方向を先端側(+L側)とし、底面部21における一部分が、底面部21における他の部分よりも変形性の高い薄肉部212で形成されるとともに、小径筒部10に対して径方向に所定の間隔を隔てるように、大径筒部20から先端側(+L側)に向けて延出する延出部30が設けられたことにより、大径筒部20をパネル孔Hに装着させる装着作業性を向上させることができる。
【0083】
詳述すると、小径筒部10に対して径方向に所定の間隔を隔てるように、大径筒部20(先端縮径部223)から先端側(+L側)に向けて延出する延出部30が設けられることにより、延出部30と小径筒部10との間に指などを入れて延出部30を把持することができる。これにより、径の小さい小径筒部10を把持して引っ張る場合に比べて、大径筒部20を先端側(+L側)に引っ張りやすく、大径筒部20をパネル孔Hに装着させる装着作業性を向上させることができる。
【0084】
また、
図5(b)及び
図6(a)に示すように、パネル孔Hに大径筒部20の一部を係止させ、係止させた箇所を支点として延出部30を先端側(+L側)に引っ張ることにより薄肉部212を変形させることができる。この薄肉部212の変形により、大径筒部20の径外側が先端側(+L側)に湾曲させることができる。したがって、長手方向Lから視て大径筒部20が縮径し、大径筒部20をパネル孔Hに容易に挿通させることができる。
【0085】
このように、小径筒部10と大径筒部20とで構成されたグロメット1は、大径筒部20を構成する底面部21に、大径筒部20における他の部位よりも変形性の高い薄肉部212が形成されるとともに、径方向に対して小径筒部10と所定の間隔を隔てるように、大径筒部20から延出方向に延出部30が延出させることにより、パネル孔Hに大径筒部20を装着する装着作業性を向上させるとともに、容易に大径筒部20をパネル孔Hに装着することができる。
【0086】
さらにまた、大径筒部20がパネル孔Hに取り付けられた状態において、小径筒部10に挿通させたワイヤーハーネスWHが小径筒部10の内周面に当たった場合でも、薄肉部212が衝撃を吸収する緩衝部として作用することとなるため、大径筒部20がパネル孔Hから意図せずに外れることを防止できる。
【0087】
また、底面部21が、径方向に沿って形成されていることにより、グロメット1をパネル孔Hに装着させた状態において、底面部21がパネル孔Hが形成された車体パネルPに平行となり、底面部21が突っ張りとして作用することとなる。したがって、大径筒部20の剛性を向上させることができ、例えば大径筒部20に外部から意図しない外力が作用した場合であっても、大径筒部20がパネル孔Hから外れることを防止できる。
【0088】
また、薄肉部212が、底面部21を貫通する小径筒部10の外周全周を囲むように配置されることにより、延出部30を先端側(+L側)に引っ張った場合に、大径筒部20を確実に縮径させることができるため、大径筒部20を容易かつ確実にパネル孔Hに挿通させて、装着させることができる。
【0089】
また、薄肉部212は、長手方向Lの厚みが、底面部21における他の部分よりも薄く構成されていることにより、底面部21における薄肉部212と他の部分(外縁部211)とを同一部材で構成しながら、薄肉部212の変形性を向上させることができる。
すなわち、複数の部材を用いることなく、底面部21における一部分が変形性の高い大径筒部20を容易に製造することができる。またこれにより、製造コストを削減することができる。
【0090】
また、底面部21は、薄肉部212と、薄肉部212の径外側に設けられ、パネル孔Hと嵌合する外縁部211とを有し、薄肉部212の長手方向Lの厚さL2が、外縁部211における長手方向Lの厚さL1の6分の1以上、3分の1以下である5分の1とすることにより、大径筒部20をパネル孔Hにより容易に装着できるとともに、パネル孔Hに装着された大径筒部20が意図せずに外れることを防止できる。
【0091】
詳述すると、薄肉部212の厚さL2が外縁部211の厚さL1の6分の1未満である場合、薄肉部212の変形性は向上するものの、薄肉部212が容易に変形するため、意図しない外力が大径筒部20に作用した場合に底面部21が意図せずに変形し、パネル孔Hに装着した大径筒部20が意図せずに外れるおそれがある。
【0092】
一方で、薄肉部212の厚さL2が外縁部211の厚さL1の3分の1よりも大きい場合には、薄肉部212の変形性が低減し、薄肉部212が容易に変形しなくなる。このため、延出部30を先端側(+L側)に引っ張った場合に、大径筒部20が長手方向Lから視てパネル孔Hに挿通できる程度まで縮径されず、パネル孔Hに装着するのが困難となる。
【0093】
しかしながら、薄肉部212の厚さが外縁部211の厚さL1の6分の1以上3分の1以下である5分の1とすることにより、薄肉部212の変形性を十分に向上させるとともに、意図しない外力が大径筒部20に作用した場合でも大径筒部20の形状を維持することができる。したがって、大径筒部20をパネル孔Hにより容易に装着できるとともに、パネル孔Hに装着された大径筒部20が意図せずに取り外されることを確実に防止できる。
【0094】
また、大径筒部20は、薄肉部212と、底面部21の径外側に設けられた外縁部211とで構成された底面部21と、外縁部211から先端側(+L側)に突出しているとともに、先端側(+L側)に向かうに伴い、長手方向Lから視て薄肉部212と重なる位置まで縮径する縮径部22とを有し、縮径部22から延出部30が延出していることにより、延出部30に対して先端側(+L側)へ第二引張力F2を作用させた場合に、外縁部211に対して径内側に力が作用することとなる。
【0095】
このため、外縁部211の内側に設けられた薄肉部212をより変形させることができ、底面部21をより確実に縮径させることができる。したって、確実かつ容易に大径筒部20をパネル孔Hに装着でき、グロメット1の装着作業性を向上させることができる。
【0096】
また、小径筒部10は、底面部21を貫通した貫通部位における径方向の厚みが、貫通部位よりも先端側(+L側)における径方向の厚みよりも厚く構成されることにより、薄肉部212を貫通する小径筒部10における貫通部位の変形性を低下させることができる。これにより、小径筒部10における前記貫通部位が変形せずに薄肉部212を支持するため、薄肉部212がより変形しやすくなり、大径筒部20をより容易にパネル孔Hに装着することができる。
【0097】
また、先端側(+L側)の端部の厚みが基端側に比べて薄く構成されている小径筒部10は、先端部側が変形しやすく構成されているため、例えば小径筒部10に挿通させるワイヤーハーネスWHが湾曲した場合などに、小径筒部10がワイヤーハーネスWHの湾曲を追従し、ワイヤーハーネスWHにより作用する外力を緩衝することができる。したがって、ワイヤーハーネスWHが小径筒部10の内周面に当たった場合であっても薄肉部212が変形することを防止できる。
【0098】
さらにまた、延出部30と小径筒部10との間隔が、所定の間隔で維持されるように構成されていることにより、延出部30を確実に把持することができるため、グロメット1の装着作業をより容易かつ確実に行うことができる。
【0099】
また、延出部30が、小径筒部10を挟んで2つ設けられていることにより、パネル孔Hに対する大径筒部20の装着作業性をより向上させるとともに、大径筒部20の装着を確実に行うことができる。
【0100】
詳述すると、
図5及び
図6に示すように、大径筒部20の一部をパネル孔Hに係止させて延出部30を引っ張り込む場合に、延出部30のうち係止させた側(延出部30d)を把持して固定しながら、他方(延出部30u)を引っ張って大径筒部20をパネル孔Hに装着することができるため、他方(延出部30u)を確実に枢動させることができ、パネル孔Hに対する大径筒部20の装着作業性をより向上させることができる。
【0101】
また、延出部30dを把持して固定することができるため、グロメット1の装着作業中において、大径筒部20が長手方向Lを回転軸として軸回転することを防止できるため、パネル孔Hに対して確実に大径筒部20を装着させることができる。
【0102】
また、延出部30の先端側(+L側)に滑り止め部32が設けられることにより、延出部30をより確実に把持することができるため、延出部30の長手方向L外側をより確実に先端側(+L側)へ引っ張ることができる。したがって、パネル孔Hにグロメット1を装着させる装着作業性を向上させることができる。
【0103】
さらにまた、延出部30は、長手方向Lから視て、底面部21を貫通する小径筒部10に沿って円弧状に形成されることにより、例えば作業者の親指を小径筒部10と延出部30との間に挿入させるとともに、延出部30の円弧に沿って作業者の人差し指を這わせることができ、延出部30を力強く把持することができる。これにより確実に延出部30を先端側(+L側)へ引っ張ることができ、より確実かつ容易にグロメット1をパネル孔Hに装着させることができる。
【0104】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
変形部は、薄肉部212に対応し、
挿通方向は、長手方向Lに対応し、
開口側は、先端側(+L側)に対応し、
滑り止め手段は、滑り止め部32に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0105】
例えば、本実施形態において、底面部21における基端側(-L側)及び薄肉部212は、平面状に形成されているが、必ずしも平面状である必要はなく、例えば一部分が曲面状に形成されていてもよい。しかしながら、底面部21における基端側が平面状に形成されることにより、グロメット1の装着状態において底面部21又は薄肉部212が突っ張りとして機能するため、より好ましい。
【0106】
また、薄肉部212は、底面部21における他の部分である外縁部211に比べて長手方向Lに沿った厚みが薄くなるように形成されているが、必ずしもこの構成である必要はなく、例えば
図7に示すように薄肉部212の先端側(+L側)に先端筒部12の外周面に沿った凹状の溝部212aを形成することにより変形性を向上させている場合や、外縁部211よりも剛性が低い部材で構成されることで変形性を向上させている場合、外縁部211よりも剛性が高い部材で構成しつつ、形状により変形性を向上させている場合などでもよい。
なお、先端筒部12の外周面に沿った溝部212aは一つである必要はなく複数形成されていてもよい。
【0107】
なお、本実施形態において底面部21は外縁部211と薄肉部212とで構成されているが、例えば薄肉部212と先端筒部12との間に、薄肉部212よりも板厚の厚い部位を設けた場合や、外縁部211と薄肉部212との間に板厚の厚い部位を設ける場合などでもよい。さらにまた、薄肉部212と縮径部22とで大径筒部20をパネル孔形成枠P1に嵌合し、嵌合状態を維持できるのであれば底面部21は薄肉部212で構成されていてもよい。
【0108】
また本実施形態において延出部30は、長手方向Lから視て小径筒部10の周方向に沿って部分的又は全周にわたって円弧状に形成されているが、必ずしもこの形状である必要はなく、長手方向Lから視て小径筒部10の接線方向に沿って直線状に形成されている場合や、長手方向Lから視て小径筒部10の径方向に沿って直線状に形成されている場合でもよい(
図8参照)。
【0109】
なお、延出部30は先端縮径部223から先端側(+L側)に向けて延出しているが、例えば薄肉部212や、薄肉部212の径外側に形成されている外縁部211、底面部21における薄肉部212以外の部位などから先端側(+L側)に向けて延出してもよい。
【0110】
また、本実施形態において、薄肉部212は小径筒部10の外周全周を囲むように構成されているが、必ずしも小径筒部10の外周全周を囲む必要はなく、例えば小径筒部10の外周全周の大部分を囲む構成でもよく、また第二引張力F2を作用させる側における小径筒部10の外周の少なくとも半分以上(図中における上方側半分以上)を囲む構成でもよい。
【0111】
さらにまた、薄肉部212を貫通する小径筒部10の径方向の厚みは、先端側(+L側)に向かうに伴い連続的に薄くなる構成としているが、例えば小径筒部10の基端側(-L側)から先端側(+L側)に向かうに伴い小径筒部の径方向の厚みが段階的に薄くなる構成としてよい。
【0112】
さらにまた、本実施形態において、延出部30と先端筒部12との間隔が、所定の間隔を維持するように構成されているが、必ずしもこの構成である必要はなく、延出部30が先端筒部12に対して先端側(+L側)に向かうに伴い広がるように構成されてもよい。これにより、より延出部30を把持しやすい構成とすることができる。
【0113】
また、本実施形態において、滑り止め部32は、延出部30の先端側が凹凸形状で形成されている構成であるが、必ずしもこの構成である必要はなく、延出部30を把持した作業者の手が滑ることを防止出来ればどのような構成でもよく、例えば、延出部30の先端側端部が径内側及び外側に突出しており作業者の指を引掛けることができる構成や、延出部30の先端側に滑り止め材が塗布されている構成などであってもよい。
なお、上述の構成は、相互に矛盾がなく、本願発明の効果を奏する限り適宜組み合わせることができる。
【0114】
1 グロメット
10 小径筒部
11 グロメット本体
12 先端筒部
13 基端筒部
20 大径筒部
21 底面部
22 縮径部
211 外縁部
212 薄肉部
30 延出部
32 滑り止め部
L 長手方向
P 車体パネル
H パネル孔
WH ワイヤーハーネス