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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】基板載置台及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220902BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220902BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220902BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H01L21/302 101C
H01L21/302 101G
H01L21/31 B
H01L21/205
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018109738
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019212844
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】南 雅人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】神戸 喬史
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092104(JP,A)
【文献】特開2003-243490(JP,A)
【文献】特開2018-026571(JP,A)
【文献】特開2016-082077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内で基板を処理するに際し、前記基板を載置して温調する基板載置台であって、
隙間を介して隔てられた複数の金属製の分離プレートにより形成された第1プレートと、
それぞれの前記分離プレートに接して、前記第1プレートよりも低い熱伝導率を有する金属製の第2プレートと、を有し、
それぞれの前記分離プレートは、固有の温調を行う温調部を内蔵し
いずれか1つの前記分離プレートに電源が電気的に接続され、前記電源に接続されている前記分離プレートに対して、他の前記分離プレートが前記第1プレートよりも低い熱伝導率を有する導電性の連結プレートを介して接続されている、基板載置台。
【請求項2】
前記基板を載置する上面を有する前記第2プレートが、前記第1プレートの上面に載置されている、請求項1に記載の基板載置台。
【請求項3】
前記第2プレートがオーステナイト系ステンレス鋼から形成されている、請求項1又は2に記載の基板載置台。
【請求項4】
前記第1プレートがアルミニウムもしくはアルミニウム合金から形成されている、請求項3に記載の基板載置台。
【請求項5】
前記第2プレートの厚みが20mm乃至45mmの範囲にある、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板載置台。
【請求項6】
前記連結プレートがオーステナイト系ステンレス鋼から形成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板載置台。
【請求項7】
前記温調部は、ヒータと、温調媒体が流通する温調媒体流路の少なくともいずれか一方を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板載置台。
【請求項8】
処理容器と、前記処理容器内において基板を載置して温調する基板載置台と、前記基板載置台の温調源と、を有する基板処理装置であって、
前記基板載置台は、
隙間を介して隔てられた複数の金属製の分離プレートにより形成された第1プレートと、
それぞれの前記分離プレートに接して、前記第1プレートよりも低い熱伝導率を有する金属製の第2プレートと、を有し、
それぞれの前記分離プレートは、固有の温調を行う温調部を内蔵しており、
前記温調源により前記温調部を温調し、
いずれか1つの前記分離プレートに電源が電気的に接続され、前記電源に接続されている前記分離プレートに対して、他の前記分離プレートが前記第1プレートよりも低い熱伝導率を有する導電性の連結プレートを介して接続されている、基板処理装置。
【請求項9】
前記温調部は、ヒータと、温調媒体が流通する温調媒体流路の少なくともいずれか一方を有し、
前記ヒータに対応する前記温調源はヒータ電源であり、前記温調媒体流路に対応する前記温調源はチラーである、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板処理装置は制御部をさらに有し、
前記制御部は、前記温調源に対して、それぞれの前記分離プレートの有する前記温調部が固有の温度で温調を行う処理を実行させる、請求項8又は9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板載置台が平面視矩形の外形を有し、
前記分離プレートが、矩形枠状の外側プレートと、前記外側プレートの内側において前記隙間を介して配設される平面視矩形の内側プレートと、を有し、
前記外側プレートと前記内側プレートが共に前記温調媒体流路を内蔵し、
前記制御部は、前記温調源に対して、前記外側プレートの前記温調媒体流路を流通する温調媒体よりも相対的に高温の温調媒体を前記内側プレートの前記温調媒体流路に流通させる制御を実行する、請求項9に従属する請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板を載置する上面を有する前記第2プレートが、前記第1プレートの上面に載置されている、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板載置台及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属製の基材と、基板を吸着する静電チャックとを有し、基材の少なくとも静電チャックと接触する部分が、マルテンサイト系ステンレス鋼もしくはフェライト系ステンレス鋼により構成されている基板載置台が開示されている。特許文献1に開示の基板載置台とこの基板載置台を備えた基板処理装置によれば、基材と静電チャックの熱膨張差に起因する静電チャックの破損を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-147278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display、以下、「FPD」という)の製造過程においてFPD用の基板に対してエッチング処理等を行うに当たり、面内均一性の高い処理を行うのに有利な基板載置台及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板載置台は、
処理容器内で基板を処理するに際し、前記基板を載置して温調する基板載置台であって、
隙間を介して隔てられた複数の金属製の分離プレートにより形成された第1プレートと、
それぞれの前記分離プレートに接して、前記第1プレートよりも低い熱伝導率を有する金属製の第2プレートと、を有し、
それぞれの前記分離プレートは、固有の温調を行う温調部を内蔵している。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、FPD用の基板に対してエッチング処理等を行うに当たり、面内均一性の高い処理を行う基板載置台及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る基板載置台と基板処理装置の一例を示す断面図である。
図2図1のII-II矢視図であって、第1プレートの横断面図である。
図3図1のIII-III矢視図であって、第1プレートを下方から見た図である。
図4A】第1プレートの一例を模擬した平面図である。
図4B】第1プレートの他の例を模擬した平面図である。
図4C】第1プレートのさらに他の例を模擬した平面図である。
図4D】第1プレートのさらに他の例を模擬した平面図である。
図5A】温度解析にて用いた基板載置台モデルの側面図である。
図5B図5AのB-B矢視図であって、第1プレートモデルの横断面図である。
図6A図5BにおけるB-A線上における温度解析結果を示す図である。
図6B図5BにおけるO-C線上における温度解析結果を示す図である。
図7】エッチングレート及び選択比を検証する実験において適用した基板載置台の平面図を模擬した図である。
図8】SiN膜のエッチングレートの温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。
図9】SiO膜のエッチングレートの温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。
図10】Si膜のエッチングレートの温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。
図11】SiO/Si選択比の温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態に係る基板載置台及び基板処理装置について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0009】
[実施形態]
<基板処理装置及び基板載置台>
はじめに、本開示の実施形態に係る基板処理装置と基板処理装置を構成する基板載置台の一例について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、実施形態に係る基板載置台と基板処理装置の一例を示す断面図である。また、図2は、図1のII-II矢視図であって、第1プレートの横断面図であり、図3は、図1のIII-III矢視図であって、第1プレートを下方から見た図である。
【0010】
図1に示す基板処理装置100は、FPD用の平面視矩形の基板(以下、単に「基板」という)Gに対して、各種の基板処理を行う誘導結合型プラズマ(Inductive Coupled Plasma: ICP)処理装置である。基板Gの材料としては主にガラスが用いられ、用途によっては透明の合成樹脂などが用いられることもある。ここで、基板処理には、エッチング処理や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いた成膜処理等が含まれる。FPDとしては、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display: LCD)やエレクトロルミネセンス(Electro Luminescence: EL)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)等が例示される。また、FPD用基板の平面寸法は世代の推移と共に大規模化しており、基板処理装置100によって処理される基板Gの平面寸法は、例えば、第6世代の1500mm×1800mm程度の寸法から、第10世代の2800mm×3000mm程度の寸法までを少なくとも含む。また、基板Gの厚みは0.5mm乃至数mm程度である。
【0011】
図1に示す基板処理装置100は、直方体状の箱型の処理容器10と、処理容器10内に配設されて基板Gが載置される平面視矩形の外形の基板載置台60と、制御部90とを有する。
【0012】
処理容器10は誘電体板11により上下2つの空間に区画されており、上側空間はアンテナ室12となり、下方空間は処理室を形成するチャンバー13となる。処理容器10において、チャンバー13とアンテナ室12の境界となる位置には矩形環状の支持枠14が処理容器10の内側に突設するようにして配設されており、支持枠14に誘電体板11が載置されている。処理容器10は、接地線13cにより接地されている。
【0013】
処理容器10はアルミニウム等の金属により形成されており、誘電体板11はアルミナ(Al)等のセラミックスや石英にて形成されている。
【0014】
チャンバー13の側壁13aには、チャンバー13に対して基板Gを搬出入するための搬出入口13bが開設されており、搬出入口13bはゲートバルブ20により開閉自在となっている。チャンバー13には搬送機構を内包する搬送室(いずれも図示せず)が隣接しており、ゲートバルブ20を開閉制御し、搬送機構にて搬出入口13bを介して基板Gの搬出入が行われる。
【0015】
また、チャンバー13の底部には複数の排気口13dが開設されており、排気口13dにはガス排気管51が接続され、ガス排気管51は開閉弁52を介して排気装置53に接続されている。ガス排気管51、開閉弁52及び排気装置53により、ガス排気部50が形成される。排気装置53はターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有し、プロセス中にチャンバー13内を所定の真空度まで真空引き自在となっている。尚、チャンバー13の適所に圧力計(図示せず)が設置されており、圧力計によるモニター情報が制御部90に送信されるようになっている。
【0016】
誘電体板11の下面において、誘電体板11を支持するための支持梁が設けられており、支持梁はシャワーヘッド30を兼ねている。シャワーヘッド30は、アルミニウム等の金属により形成されており、陽極酸化による表面処理が施されていてよい。シャワーヘッド30内には、水平方向に延設するガス流路31が形成されており、ガス流路31には、下方に延設してシャワーヘッド30下方にある処理空間Sに臨むガス吐出孔32が連通している。
【0017】
誘電体板11の上面にはガス流路31に連通するガス供給管41が接続されており、ガス供給管41は処理容器10の天板を気密に貫通し、処理ガス供給源44に接続されている。ガス供給管41の途中位置には開閉バルブ42とマスフローコントローラのような流量制御器43が介在している。ガス供給管41、開閉バルブ42、流量制御器43及び処理ガス供給源44により、処理ガス供給部40が形成される。尚、ガス供給管41は途中で分岐しており、各分岐管には開閉バルブと流量制御器、及び処理ガス種に応じた処理ガス供給源が連通している(図示せず)。プラズマ処理においては、処理ガス供給部40から供給される処理ガスがガス供給管41を介してシャワーヘッド30に供給され、ガス吐出孔32を介して処理空間Sに吐出される。
【0018】
アンテナ容器12内には、高周波アンテナ15が配設されている。高周波アンテナ15は、銅やアルミニウム等の良導電性の金属から形成されるアンテナ線15aを、環状もしくは渦巻き状に巻装することにより形成される。例えば、環状のアンテナ線15aを多重に配設してもよい。
【0019】
アンテナ線15aの端子にはアンテナ室12の上方に延設する給電部材16が接続されており、給電部材16の上端には給電線17が接続され、給電線17はインピーダンス整合を行う整合器18を介して高周波電源19に接続されている。高周波アンテナ15に対して高周波電源19から例えば13.56MHzの高周波電力が印加されることにより、チャンバー13内に誘導電界が形成される。この誘導電界により、シャワーヘッド30から処理空間Sに供給された処理ガスがプラズマ化されて誘導結合型プラズマが生成され、プラズマ中のイオンが基板Gに提供される。高周波電源19はプラズマ発生用のソース源であり、以下で詳説するように基板載置台60に接続されている高周波電源73(電源の一例)は、発生したイオンを引き付けて運動エネルギを付与するバイアス源となる。このように、イオンソース源には誘導結合を利用してプラズマを生成し、別電源であるバイアス源を基板載置台60に接続してイオンエネルギの制御を行うことより、プラズマの生成とイオンエネルギの制御が独立して行われ、プロセスの自由度を高めることができる。高周波電源19から出力される高周波電力の周波数は、0.1乃至500MHzの範囲内で設定されるのが好ましい。
【0020】
次に、基板載置台60について説明する。図1に示すように、基板載置台60は、複数の分離プレート61a、61bにより形成された金属製の第1プレート61と、それぞれの分離プレート61a,61bに接する1枚の金属製の第2プレート63とを有する。第1プレート61を形成する各分離プレート61a,61bは隙間66を介して分離されており、各分離プレート61a,61bを電気的に接続するように1枚の第2プレート63が各分離プレート61a、61bの上面に接続されている。
【0021】
第2プレート63の平面視形状は矩形であり、基板載置台60に載置されるFPDと同程度の平面寸法を有する。例えば、図2に示す第1プレート61は、載置される基板Gと同程度の平面寸法を有し、長辺の長さt2は1800mm乃至3000mm程度であり、短辺の長さt3は1500mm乃至2800mm程度の寸法に設定できる。この平面寸法に対して、第1プレート61と第2プレート63の厚みの総計は、例えば50mm乃至100mm程度となり得る。
【0022】
各分離プレート61a、61bを電気的に接続する第2プレート63は、第1プレート61(を形成する分離プレート61a、61b)よりも低い熱伝導率を有する金属製のプレートである。例えば、第1プレート61(を形成する分離プレート61a、61b)は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金から形成される。一方、第2プレート63は、ステンレス鋼から形成される。
【0023】
第1プレート61の形成材料であるアルミニウムは熱伝導率の高い金属材料であり、JIS規格として、A5052、A6061、A1100等が挙げられる。A5052の熱伝導率は138W/m・Kであり、A6061の熱伝導率は180W/m・Kであり、A1100の熱伝導率は220W/m・Kである。
【0024】
一方、第2プレート63の形成材料であるステンレス鋼は熱伝導率の低い金属材料である。ステンレス鋼には、マルテンサイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼が含まれる。
【0025】
マルテンサイト系ステンレス鋼は、金属組織が主としてマルテンサイト相からなり、JIS規格として、SUS403、SUS410、SUS420J1、SUS420J2が好適である。また、その他のマルテンサイト系ステンレス鋼として、SUS410S、SUS440A、SUS410F2、SUS416、SUS420F2、SUS431等を挙げることができる。マルテンサイト系ステンレス鋼の熱伝導率に関し、SUS403の熱伝導率は25.1W/m・K、SUS410の熱伝導率は24.9W/m・K、SUS420J1の熱伝導率は30W/m・K、SUS440Cの熱伝導率は24.3W/m・Kである。
【0026】
一方、フェライト系ステンレス鋼は、金属組織が主としてフェライト相からなり、JIS規格としてSUS430が好適である。また、その他のフェライト系ステンレス鋼として、SUS405、SUS430LX、SUS430F、SUS443J1、SUS434、SUS444等を挙げることができる。フェライト系ステンレス鋼の熱伝導率に関し、SUS430の熱伝導率は26.4W/m・Kである。
【0027】
さらに、オーステナイト系ステンレス鋼は、金属組織が主としてオーステナイト相からなり、JIS規格として、SUS303、SUS304、SUS316が好適である。オーステナイト系ステンレス鋼の熱伝導率に関し、SUS303及びSUS316の熱伝導率は15W/m・Kであり、SUS304の熱伝導率は16.3W/m・Kである。
【0028】
このように、アルミニウムの熱伝導率に対してステンレス鋼の熱伝導率は1/5乃至1/10程度と低い熱伝導率を有する。
【0029】
第1プレート61と第2プレート63の積層体は、絶縁材料からなる矩形部材68上に載置されており、矩形部材68はチャンバー13の底板上に固定されている。
【0030】
基板Gを載置する第2プレート63の上面には、基板Gが直接載置される載置面を備えた静電チャック67が形成されている。静電チャック67は、アルミナ等のセラミックスを溶射して形成される誘電体被膜であり、静電吸着機能を有する電極67aを内蔵する。電極67aは、給電線74を介して直流電源75に接続されている。制御部90により、給電線74に介在するスイッチ(図示せず)がオンされると、直流電源75から電極67aに直流電圧が印加されることによりクーロン力が発生し、クーロン力によって基板Gが静電チャック67の上面に静電吸着され、第2プレート63の上面に載置された状態で保持される。
【0031】
基板載置台60は、第1プレート61と第2プレート63、及び静電チャック67にて構成される。静電チャック67の上面(基板Gの載置面)もしくは第2プレート63には、熱電対(図示せず)等の温度センサが配設されて、温度センサが静電チャック67の上面もしくは第2プレート63及び基板Gの温度を随時モニターするようにしてもよい。基板載置台60には、基板Gの受け渡しを行うための複数のリフタピン(図示せず)が基板載置台60の上面(静電チャック67の上面)に対して突没自在に設けられている。
【0032】
図2に示すように、第1プレート61を形成する分離プレートのうち、外側にある分離プレート61bは矩形枠状の外側プレートであり、外側プレート61bの内側には、隙間66を介して、他方の分離プレート61aである平面視矩形の内側プレートが配設されている。
【0033】
内側プレート61aには、矩形平面の全領域をカバーするように蛇行した温調媒体流路62aが設けられている。図示例の温調媒体流路62aでは、例えば温調媒体流路62aの一端62a1が温調媒体の流入部であり、他端62a2が温調媒体の流出部である。
【0034】
一方、外側プレート61bには、矩形枠状の全領域をカバーするように、温調媒体が流通する往路と復路が連続する温調媒体流路62bが設けられている。図示例の温調媒体流路62bでは、例えば温調媒体流路62bの一端62b1が温調媒体の流入部であり、他端62b2が温調媒体の流出部である。
【0035】
温調媒体としては冷媒が適用され、この冷媒には、ガルデン(登録商標)やフロリナート(登録商標)等が適用される。
【0036】
内側プレート61aの内蔵する温調媒体流路62aと外側プレート61bの内蔵する温調媒体流路62bは、いずれも「温調部」の一例である。温調部には、温調媒体が流通する温調媒体流路62a、62bの他、ヒータ等も含まれる。より具体的には、内側プレート61aと外側プレート61bの双方が、温調部として、温調媒体流路のみを有する図示例の形態の他、ヒータのみを有する形態、さらには温調媒体流路とヒータの双方を有する形態などがある。そして、温調部は、図示例におけるチラー81,84等の温調源を含んでおらず、あくまでも基板載置台60を構成する第1プレート61に内蔵される温調部材のみを指称する。尚、抵抗体であるヒータは、タングステンやモリブデン、もしくはこれらの金属のいずれか一種とアルミナやチタン等との化合物から形成される。
【0037】
図1に戻り、内側プレート61aに内蔵されている温調媒体流路62aの両端には、温調媒体流路62aに対して温調媒体が供給される送り配管64aと、温調媒体流路62aを流通して昇温された温調媒体が排出される戻り配管64bとが連通している。送り配管64aと戻り配管64bにはそれぞれ、送り流路82と戻り流路83が連通しており、送り流路82と戻り流路83はチラー81に連通している。チラー81は、温調媒体の温度や吐出流量を制御する本体部と、温調媒体を圧送するポンプとを有する(いずれも図示せず)。
【0038】
チラー81と、送り流路82及び戻り流路83とにより、内側プレート61aに固有の温調源80Aが形成される。
【0039】
一方、外側プレート61bに内蔵されている温調媒体流路62bの両端には、温調媒体流路62bに対して温調媒体が供給される送り配管64cと、温調媒体流路62bを流通して昇温された温調媒体が排出される戻り配管64dとが連通している。送り配管64cと戻り配管64dにはそれぞれ、送り流路85と戻り流路86が連通しており、送り流路85と戻り流路86はチラー84に連通している。チラー84は、温調媒体の温度や吐出流量を制御する本体部と、温調媒体を圧送するポンプとを有する(いずれも図示せず)。
【0040】
チラー84と、送り流路85及び戻り流路86とにより、外側プレート61bに固有の温調源80Bが形成される。
【0041】
基板載置台60は、内側プレート61aに対応するセンターエリアと、外側プレート61bに対応するエッジエリアとに対して、それぞれ異なる温度の温調媒体を供給することにより、各エリアを異なる温度に温調する、エリア分割温調を行う載置台である。そのため、内側プレート61aと外側プレート61bは、それぞれに固有の温調源80A,80Bを有する。
【0042】
尚、チラーを共通にした上で、例えば送り流路82,85にヒータ等の温調機構を設け、各温調機構で温調媒体の温度を変化させた後に各温調媒体流路62a,62bに異なる温度の温調媒体を供給する形態であってもよい。また、温調部がヒータを含む場合は、ヒータに給電線を介して接続される直流電源(ヒータ電源)が温調源に含まれる。
【0043】
静電チャック67の上面もしくは第2プレート63に熱電対等の温度センサが配設されている場合、温度センサによるモニター情報は、制御部90に随時送信され、モニター情報に基づいて基板載置台60(の静電チャック67)もしくは第2プレート63及び基板Gの温調制御が制御部90にて実行される。より具体的には、制御部90により、チラー81、84から送り流路82,85に供給される温調媒体の温度や流量が調整される。そして、温度調整や流量調整が行われた温調媒体が温調媒体流路62a,62bに循環されることにより、基板載置台60のセンターエリアとエッジエリアをそれぞれ固有の温度にて温調制御することができる。静電チャック67と基板Gの間には、伝熱ガス供給部から供給流路(いずれも図示せず)を介して、例えばHeガス等の伝熱ガスが供給されるようになっている。静電チャック67には多数の貫通孔(図示せず)が開設され、第2プレート63等には供給流路が埋設されている。供給流路を介し、静電チャック67の有する貫通孔を介して基板Gの下面に伝熱ガスを供給することにより、温調制御される基板載置台60の温度が伝熱ガスを介して基板Gに速やかに熱伝達され、基板Gの温調制御が行われる。
【0044】
図1に示すように、静電チャック67及び第2プレート63の外周と矩形部材68の上面とにより段部が形成され、この段部には、矩形枠状のフォーカスリング69が載置されている。段部にフォーカスリング69が設置された状態において、フォーカスリング69の上面の方が静電チャック67の上面よりも低くなるように設定されている。フォーカスリング69は、アルミナ等のセラミックスもしくは石英等から形成される。基板Gが静電チャック67の載置面に載置された状態において、フォーカスリング69の上端面の内側端部は基板Gの外周縁部に覆われる。
【0045】
内側プレート61aの下面には、下方に延設する給電部材70が接続されており、給電部材70の下端には給電線71が接続され、給電線71はインピーダンス整合を行う整合器72を介してバイアス電源である高周波電源73に接続されている。すなわち、内側プレート61aが高周波電源73に対して電気的に接続されている。基板載置台60に対して高周波電源73から例えば13.56MHzの高周波電力が印加されることにより、プラズマ発生用のソース源である高周波電源19にて生成されたイオンを基板Gに引き付けることができる。従って、プラズマエッチング処理においては、エッチングレートとエッチング選択比を共に高めることが可能になる。
【0046】
図1に示すように、高周波電源73は内側プレート61aにのみ接続されている。一方、内側プレート61aと外側プレート61bは隙間66を介して分離されているが、内側プレート61aと外側プレート61bの上面同士が例えばステンレス鋼からなる第2プレート63にて一体に接続されている。そのため、高周波電源73から内側プレート61aに印加される高周波電力を、外側プレート61bにも導通することができる。
【0047】
また、図1及び図3に示すように、内側プレート61aと外側プレート61bは、それぞれの下面同士が導電性の連結プレート65にて連結されている。図示する実施形態では、矩形枠状の隙間66に対して、矩形の短辺に間隔を置いて2つの連結プレート65が配設され、矩形の長辺には中央位置に1つの連結プレート65が配設されている。このように、導電性の連結プレート65にて内側プレート61aと外側プレート61bの下面同士が連結されることにより、内側プレート61aから外側プレート61bへの導通をより一層促進させることができる。尚、連結プレート65の形態は図示例の形態に限定されるものでなく、例えば、矩形枠状の隙間66を完全に包囲するような矩形枠状の連結プレート等が適用されてもよい。
【0048】
基板載置台60は、内側プレート61aと外側プレート61bのそれぞれに対して、例えば異なる温度の温調媒体を流通させることにより、基板載置台60のセンターエリアとエッジエリアを個別に温調制御する載置台である。そのために、内側プレート61aと外側プレート61bの間に隙間66を設け、双方を分離している。例えば、外側プレート61bに対して内側プレート61aが相対的に高温に制御され得る。内側プレート61aと外側プレート61bが共に熱伝導率の高いアルミニウムから形成されている場合は、例えば、内側プレート61aの全体を均一な高温状態とすることができ、外側プレート61bの全体を均一な低温状態とすることができる。
【0049】
仮に、内側プレート61aと外側プレート61bに接続される第2プレート63や連結プレート65の熱伝導率が高いと、それぞれ異なる温度で温調されていた内側プレート61aと外側プレート61bの温調状態が阻害され得る。具体的には、例えば相対的に高温の内側プレート61aから相対的に低温の外側プレート61bへの熱伝導が促進され、双方のプレートの温度が近づけられる作用が生じ得る。そこで、基板載置台60においては、第1プレート61よりも低い熱伝導率を有する第2プレート63が配設される。そして、第2プレート63の熱伝導率が低くなるに従い内側プレート61aから外側プレート61bへの伝熱作用が少なくなることから、第2プレート63は、ステンレス鋼の中でも熱伝導率の最も低いオーステナイト系ステンレス鋼から形成されるのが好ましい。そして、連結プレート65も第2プレート63と同様に熱伝導率の低い金属材料から形成されるのがよく、第2プレート63と同様にオーステナイト系ステンレス鋼から形成されるのが好ましい。
【0050】
さらに、第2プレート63の厚み(図1に示す厚みt1)が薄くなるにつれて、内側プレート61aから外側プレート61bへの伝熱作用が低下することが本発明者による解析にて検証されている。この解析結果は以下で詳説するが、第2プレート63の厚みt1としては、例えば20mm乃至45mmの範囲が好ましい。
【0051】
第2プレート63は、FPD用の基板Gと同程度の平面寸法を有していることから、第2プレート63の厚みt1が20mmよりも薄くなると、撓み等に起因して塑性変形に至り得る等、構造上の問題が生じ得ることより、厚みt1を20mm以上に設定するのがよい。一方、基板載置台の材料として汎用性の高いステンレス鋼の厚みが45mm程度であること(材料コスト)と、伝熱作用との観点から、厚みt1を45mm以下に設定するのがよい。
【0052】
制御部90は、基板処理装置100の各構成部、例えば、温調源80A、80Bを構成するチラー81,84や、高周波電源19,73、処理ガス供給部40、圧力計から送信されるモニター情報に基づくガス排気部50等の動作を制御する。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。CPUは、RAM等の記憶領域に格納されたレシピ(プロセスレシピ)に従い、所定の処理を実行する。レシピには、プロセス条件に対する基板処理装置100の制御情報が設定されている。制御情報には、例えば、ガス流量や処理容器10内の圧力、処理容器10内の温度や第1プレート61を構成する内側プレート61aと外側プレート61bの温度、プロセス時間等が含まれる。例えば、内側プレート61aと外側プレート61bのそれぞれの温度をプラズマエッチング処理等に好適な固有の温度に制御する処理がレシピに含まれる。ここで、「プラズマエッチング処理等に好適な固有の温度」とは、FPD用の広幅の基板Gの全範囲における絶縁膜や電極膜等のエッチングレートが同程度となり、面内均一性の高い処理が行われるのに好適なエリアごとに固有の温度のことである。
【0053】
レシピ及び制御部90が適用するプログラムは、例えば、ハードディスクやコンパクトディスク、光磁気ディスク等に記憶されてもよい。また、レシピ等は、CD-ROM、DVD、メモリカード等の可搬性のコンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体に収容された状態で制御部90にセットされ、読み出される形態であってもよい。制御部90はその他、コマンドの入力操作等を行うキーボードやマウス等の入力装置、基板処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等の表示装置、及びプリンタ等の出力装置といったユーザーインターフェイスを有している。
【0054】
(第1プレートの変形例)
次に、複数の分離プレートを有する第1プレートの変形例について、図4を参照して説明する。図4A乃至図4Dは、第1プレートの変形例を模擬した平面図である。
【0055】
図4Aに示す第1プレート61Aは、平面視矩形の金属製プレートが中心から外周側に向かって2つの矩形枠状の隙間66により3つのエリアに分割され、内側プレート61c、中間プレート61d、及び外側プレート61eを有する。内側プレート61c、中間プレート61d、及び外側プレート61eは、それぞれ固有の温調媒体流路やヒータ等の温調部を内蔵し、それぞれの温調部は固有の温調源を有する(いずれも図示せず)。例えば、内側プレート61c、中間プレート61d、及び外側プレート61eの順に温度が低くなるように各プレートの温調制御が行われる。
【0056】
一方、図4Bに示す第1プレート61Bは、平面視矩形の金属製プレートの4つの隅角部がL型もしくは逆L型の隙間66により5つのエリアに分割され、中央プレート61fと4つの隅角プレート61gを有する。例えば、隅角プレート61gに対して中央プレート61fが相対的に高温となるように各プレートの温調制御が行われる。
【0057】
一方、図4Cに示す第1プレート61Cは、平面視矩形の金属製プレートの4つの端辺の中央位置がコの字型もしくは逆コの字型の隙間66にて5つのエリアに分割され、中央プレート61hと4つの端辺中央プレート61jを有する。例えば、端辺中央プレート61jに対して中央プレート61hが相対的に高温となるように各プレートの温調制御が行われる。
【0058】
さらに、図4Dに示す第1プレート61Dは、平面視矩形の金属製プレートが格子状の9つのエリアに分割され、中央プレート61k、角プレート61m、辺中央プレート61nを有する。中央プレート、角プレート、辺中央プレートは、それぞれ固有の温調媒体流路やヒータ等の温調部を内蔵し、それぞれの温調部は固有の温調源を有する(いずれも図示せず)。例えば、中央プレート61k、角プレート61m、及び辺中央プレート61nの順に温度が低くなるように各プレートの温調制御が行われる。
【0059】
いずれの変形例に係る第1プレートにおいても、エリアごとに固有の温調制御が行われることにより、FPD用の広幅の基板Gにおいて、面内均一性の高い処理を実現することができる。
【0060】
[温度解析]
次に、第2プレートの厚みを種々変化させた際の、内側プレートと外側プレートのそれぞれの温度と温度差を検証した温度解析について、図5及び図6を参照して説明する。ここで、図5Aは、温度解析で用いた基板載置台モデルの側面図であり、図5Bは、図5AのB-B矢視図であって、第1プレートモデルの横断面図である。
【0061】
(解析概要)
本発明者等は、コンピュータ内において、図5A及び図5Bに示す基板載置台モデルMを作成した。基板載置台モデルMは、第1プレートモデルM1と第2プレートモデルM2を有し、平面視矩形の解析モデルである。第1プレートモデルM1は、平面視矩形の内側プレートモデルM1aと、平面視矩形枠状の外側プレートモデルM1bを有し、隙間モデルGを介して相互に離間している。内側プレートモデルM1aは、蛇行する温調媒体流路モデルM3を有し、外側プレートモデルM1bは蛇行する温調媒体流路モデルM4を有する。
【0062】
第1プレートモデルM1はアルミニウムの解析諸元を有し、第2プレートモデルM2はオーステナイト系ステンレス鋼の解析諸元を有する。また、図5Aに示すように、隙間モデルGの幅を20mmに設定し、第1プレートモデルM1の厚みを45mmに設定し、第2プレートモデルM2の厚みt1をパラメータとして3種の厚みとし、各厚みの第2プレートモデルM2を有する基板載置台モデルMに対して温度解析を行った。3種の厚みt1は、20mm、25mm、及び35mmである。
【0063】
温度解析では、図5Bに示す温調媒体流路モデルM3に50℃の温調媒体を流通させ、温調媒体流路モデルM4に0℃の温調媒体を流通させた。
【0064】
(解析結果)
図6Aは、図5BのX軸上の温度分布に関する解析結果を示し、図6Bは、第1プレートモデルM1の中心点Oと右上の隅角点Cを結ぶO-C軸上の温度分布に関する解析結果を示す。また、各ケースにおけるO-C軸上の最高温度(中心点Oの温度)と最低温度(隅角点Cの温度)、及び双方の差分値を以下の表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
図6A及び図6Bより、中心点Oで温度が最高となり、端辺に向かって緩やかに曲線的に降温し、隙間モデルG当たりで曲線の変曲点を有し、端辺との交点B,Aや隅角点Cで温度が最低となる温度分布を示すことが分かる。
【0067】
また、図6A図6B及び表1より、厚みの最も薄い20mmのケース3で最高温度が最も高くなり(37.1℃)、かつ最低温度が最も低くなり(11.1℃)、差分値が最も大きくなる(26.0℃)結果が得られている。本温度解析より、第2プレートモデルM2の厚みt1が薄いほど、基板載置台モデルMのセンターエリアとエッジエリアにおいて、より高い制御性の下での温調制御が実現されることが検証されている。
【0068】
このように、温度解析の結果に基づけば第2プレートの厚みt1は可及的に薄い方が好ましい。その一方で、既に述べたように、第2プレートはFPD用の基板Gと同程度の平面寸法を有していることから、構造耐力上の観点からも厚みt1を設定することが肝要である。従って、第2プレートの厚みt1は20mm以上の厚みに設定されるのが好ましい。
【0069】
[エッチングレート及び選択比の温度依存性に関する実験]
次に、複数の絶縁膜のエッチングレート及び選択比の温度依存性に関する実験について、図7乃至図11を参照して説明する。ここで、図7は、実験にて適用した基板載置台の平面図を模擬した図である。
【0070】
(実験概要)
本実験では、基板載置台の温度を変え、それぞれの領域におけるプロセス性能について評価した。実験において、内側プレートに対応する中央の平面視矩形エリアをセンターエリアとし、外側プレートに対応する外側の平面視矩形枠状のエリアをエッジエリアとする。さらに、センターエリアとエッジエリアの中間ラインをミドルエリアとする。
【0071】
本実験において、基板載置台が収容される基板処理装置は誘導結合型プラズマ処理装置であり、チャンバー内の圧力を5mTorr乃至15mTorr(0.665Pa乃至1.995Pa)に設定し、ICPソース電力とバイアス電力を共に5kW乃至15kWに設定した。そして、エッチングガスとして、F系ガス、例えばCHF、CH、CHF、CF、C、Cなどから選択されるガスと、希釈ガス、例えばHe、Ar、Xeなどから選択されるガスと、からなる混合ガスを適用してプラズマエッチング処理を行った。
【0072】
本実験では、基板上にSiN膜が成膜されている試験体、基板上にSiO膜が成膜されている試験体、基板上にゲート電極用のSi膜(Poly-Si膜、ポリシリコン膜)が成膜されている試験体について、それぞれの絶縁膜や電極膜のエッチングレートの温度依存性を検証した。さらに、基板上にSi膜とSiO膜が成膜されている多層膜において、SiO/Si選択比(SiO膜の選択性)の温度依存性についても検証した。
【0073】
(実験結果)
図8は、SiN膜のエッチングレートの温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。また、図9は、SiO膜のエッチングレートの温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。また、図10は、Si膜のエッチングレートの温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。さらに、図11は、SiO/Si選択比の温度依存性に関する実験結果を示すグラフである。
【0074】
各グラフ共に、実線グラフは図7に示す基板載置台のエッジエリアにおけるエッチングレートおよび選択比の温度依存性に関するグラフであり、点線グラフは図7に示すセンターエリアにおけるエッチングレート及び選択比の温度依存性に関するグラフである。さらに、一点鎖線は、図7に示すミドルエリアにおけるエッチングレート及び選択比の温度依存性に関するグラフである。
【0075】
図8より、SiN膜は温度依存性を有することが実証されている。エッジエリアのエッチングレートに関しては、低温と高温の間で大きなエッチングレートの差がないことが分かる。一方、センターエリアにおけるエッチングレートに関しては、低温でエッチングレートが低く、高温でエッチングレートが高くなり、エッジエリアの低温時のエッチングレートと同程度になることが分かる。
【0076】
図8に示す実験結果より、SiN膜のエッチング処理に関しては、基板載置台のエッジエリアを低温に温調し、センターエリアを高温に温調する制御を行うことにより、基板載置台の全範囲に亘って可及的に均一で高いエッチングレートが得られることが実証されている。
【0077】
次に、図9より、SiO膜は温度依存性がないことが実証されている。従って、SiO膜のエッチングの際に、エリア別の温調制御は必ずしも必要でないことが分かる。
【0078】
次に、図10より、Si膜は温度依存性を有することが実証されている。エッジエリアのエッチングレートに関しては、低温と高温の間でエッチングレートにある程度の差がある一方、センターエリアにおけるエッチングレートに関しては、低温と高温の間でエッジエリアほどのエッチングレートの差がないことが分かる。
【0079】
図10に示す実験結果より、Si膜のエッチング処理に関しては、基板載置台のエッジエリアを低温に温調し、センターエリアを高温に温調する制御を行うことにより、基板載置台の全範囲に亘って可及的に均一なエッチングレートが得られることが実証されている。尚、図8及び図9図10を比較することにより、Si膜のエッチングレートは、SiN膜やSiO膜等の絶縁膜のエッチングレートと比べて低いことが分かる。このことは、図11に示すSiO/Si選択比が高くなることに繋がる。
【0080】
図11より、SiO/Si選択比は温度依存性を有することが実証されている。エッジエリアの選択比に関しては、低温で高く、高温に行くに従い急激に低くなることが分かり、図8及び図10に示す端辺グラフと逆の傾向を示す。一方、センターエリアの選択比に関しては、低温で高く(エッジグラフよりも高い)、高温に行くに従い徐々に低くなるものの、エッジグラフの低温時の選択比と同程度になることが分かる。
【0081】
図11に示す実験結果より、Si膜上に成膜されているSiO膜のエッチング処理に関しては、基板載置台のエッジエリアを低温に温調し、センターエリアを高温に温調することにより、基板載置台の全範囲に亘って可及的に均一で高いSiO選択性が得られることが実証されている。
【0082】
本実験により、SiN膜のエッチング処理、Si膜のエッチング処理のいずれにおいても、基板載置台のエッジエリアを低温に温調し、センターエリアを高温に温調する制御を行うことにより、基板の全範囲に亘って可及的に均一なエッチング処理を行うことができる。特に、SiN膜の場合、基板の全範囲に亘って可及的に均一なエッチング処理を行うことに加えて、高いエッチングレートが得られることになる。また、Si膜上に成膜されているSiO膜のエッチング処理に関しても、基板載置台のエッジエリアを低温に温調し、センターエリアを高温に温調する制御を行うことにより、基板の全範囲に亘って可及的に均一で高いSiO/Si選択比が得られることになる。
【0083】
尚、SiN膜やSiO膜等の絶縁膜、Si膜等の電極膜の種類により、エッジエリアとセンターエリアのそれぞれに好適な温調温度は相違し得ることから、絶縁膜種や電極膜種に応じて、それぞれに好適な温調温度にてエリアごとの温調制御を行うことが望ましい。
【0084】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本開示はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0085】
例えば、図示例の基板処理装置100は誘電体窓を備えた誘導結合型のプラズマ処理装置として説明したが、誘電体窓の代わりに金属窓を備えた誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよく、他の形態のプラズマ処理装置であってもよい。具体的には、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(Electron Cyclotron resonance Plasma; ECP)やヘリコン波励起プラズマ(Helicon Wave Plasma; HWP)、平行平板プラズマ(Capacitively coupled Plasma; CCP)が挙げられる。また、マイクロ波励起表面波プラズマ(Surface Wave Plasma; SWP)が挙げられる。これらのプラズマ処理装置は、ICPを含めて、いずれもイオンフラックスとイオンエネルギを独立に制御でき、エッチング形状や選択性を自由に制御できると共に、1011乃至1013cm-3程度と高い電子密度が得られる。
【0086】
また、基板処理装置100は、基板Gの対向面に高周波電源19による高周波電極を有し、基板載置台60にも高周波電源73による高周波電極を有する装置であるが、いずれか一方の高周波電極のみを有する基板処理装置であってもよい。
【0087】
また、基板処理装置100の第1プレート61を構成する各分離プレートが温調部としてヒータを内蔵し、熱CVD法を用いて成膜処理を行う場合には、プラズマの生成は必ずしも必要ない。
【0088】
また、第2プレート63の上面に静電チャック67やフォーカスリング69を備えていない基板載置台が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 処理容器
19 高周波電源
60 基板載置台
61 第1プレート
61a 分離プレート(内側プレート)
61b 分離プレート(外側プレート)
62a,62b 温調媒体流路(温調部)
63 第2プレート
65 連結プレート
66 隙間
73 高周波電源(電源)
80A、80B 温調源
81,84 チラー
90 制御部
100 基板処理装置
G 基板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11