(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20220902BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A61F13/532 100
A61F13/532 200
A61F13/533 100
(21)【出願番号】P 2019180591
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】大西 和彰
(72)【発明者】
【氏名】佃 淳志
(72)【発明者】
【氏名】多田 浩亜希
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-014667(JP,A)
【文献】特開2018-000872(JP,A)
【文献】特開2019-118722(JP,A)
【文献】特開2017-070497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、短手方向及び厚さ方向を有し、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品であって、
前記吸収コアは、非肌対向面及び肌対向面を有し、非肌対向面側の第1層と、肌対向面側の第2層と、からなり、
前記第1層は、
前記長手方向に沿って延在し、前記厚さ方向に貫通する複数の主溝部を含む複数の溝部と、
前記長手方向に沿って延在する複数の基部と、
を備え、
前記複数の主溝部のそれぞれと前記複数の基部のそれぞれとは、前記短手方向に交互に延在し、
前記複数の基部のそれぞれは、
前記第2層の前記非肌対向面側に隣接する基部内側部と、
前記基部内側部の前記非肌対向面側に隣接する基部外側部と、
からなり、
前記基部外側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記基部内側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、
吸収性物品。
【請求項2】
前記基部外側部の前記厚さ方向の厚さは、前記複数の基部のそれぞれの前記厚さ方向の厚さの20~80%の範囲である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第2層は、
前記厚さ方向において、前記複数の主溝部及び前記複数の基部と重複する位置に、それぞれ複数の主溝部対応部及び複数の基部対応部を備え、
前記複数の基部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度と、前記複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度とは、いずれも、前記複数の基部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記複数の基部のそれぞれの前記基部内側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記複数の基部のそれぞれの前記基部外側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記複数の溝部のそれぞれは、前記第1層の前記厚さ方向に貫通し、前記複数の主溝部のそれぞれと交差する方向に、所定の間隔で、前記複数の主溝部のそれぞれと基端を介して連通して存在する従溝部を更に備える、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記複数の溝部のそれぞれは、前記第1層の前記厚さ方向に貫通し、前記複数の主溝部のそれぞれと交差する方向に、所定の間隔で、前記複数の主溝部のそれぞれと基端を介して連通して存在する従溝部を更に備え、
前記第2層は、前記厚さ方向において、前記従溝部と重複する位置に、従溝部対応部を更に備え、
前記従溝部対応部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記複数の基部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、
請求項
3に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記複数の基部のそれぞれは、前記短手方向における一方の端部及び他方の端部と、前記一方の端部及び前記他方の端部の間の中央部と、において、
前記一方の端部及び前記他方の端部の各々に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記中央部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
体液を繰り返し吸収しても、吸収性能(例示:吸収速度及び液戻り抑制)に優れる吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品が開示されている。この吸収性物品では、吸収コアは、非肌対向面側の第1層と、肌対向面側の第2層と、からなる。第1層は、長手方向に沿って延在し、厚さ方向に貫通する複数の主溝部を含む複数の溝部と、長手方向に沿って延在する複数の基部と、を備え、複数の主溝部のそれぞれと複数の基部のそれぞれとは、短手方向に交互に延在している。第2層は、厚さ方向において、複数の主溝部及び複数の基部と重複する位置に、それぞれ複数の主溝部対応部及び複数の基部対応部と、を備えている。複数の基部のそれぞれに含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度と、複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度とは、いずれも、複数の基部対応部のそれぞれに含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような吸収性物品は、非肌対向面側の第1層に、主溝部、及び、主溝部に隣接する基部を備えている。そのため、第2層を介して第1層に達した体液(例示:尿)が、主溝部内を長手方向に拡散できると共に、基部内に浸透して短手方向に拡散でき、基部内に保持され得る。その結果、吸収コア全体を体液の吸収に有効に利用することができる。更に、基部には、高吸収性ポリマー粒子が含まれており、体液を吸収することにより膨潤することで、主溝部の厚さ方向の形状を維持することができる。これらにより、このような吸収性物品は、体液を繰り返し吸収しても、吸収性能、例えば、体液の拡散性、吸収速度、及び液戻り抑制に優れる。
【0005】
しかし、このような吸収性物品では、吸収性物品が体液を吸収する回数が増えるに連れて、基部の高吸収性ポリマー粒子の膨潤の程度が大きくなり過ぎて、膨潤した高吸収性ポリマー粒子が体液をブロックするおそれがある(ブロッキング)。そうなると、体液が基部内へ浸透し難くなり、基部内で短手方向に拡散し難くなるため、体液が吸収コアに十分に吸収されず、吸収性物品の吸収性能、例えば、吸収速度及び液戻り抑制が低下するおそれがある。したがって、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能、例えば、吸収速度及び液戻り抑制には改善の余地がある。
【0006】
本発明は、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能、例えば、吸収速度及び液戻り抑制を改善することが可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長手方向、短手方向及び厚さ方向を有し、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品であって、前記吸収コアは、非肌対向面及び肌対向面を有し、非肌対向面側の第1層と、肌対向面側の第2層と、からなり、前記第1層は、前記長手方向に沿って延在し、前記厚さ方向に貫通する複数の主溝部を含む複数の溝部と、前記長手方向に沿って延在する複数の基部と、を備え、前記複数の主溝部のそれぞれと前記複数の基部のそれぞれとは、前記短手方向に交互に延在し、前記複数の基部のそれぞれは、前記第2層の前記非肌対向面側に隣接する基部内側部と、前記基部内側部の記非肌対向面側に隣接する基部外側部と、からなり、前記基部外側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記基部内側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、吸収性物品、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能、例えば吸収速度及び液戻り抑制を改善することが可能な吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る吸収性物品の構成例の平面図である。
【
図2】実施形態に係る吸収性物品の吸収体の構成例の平面図である。
【
図3】実施形態に係る吸収性物品の吸収コアの構成例の平面図である。
【
図4】実施形態に係る
図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】実施形態に係る
図2のV-V線に沿った断面図である。
【
図6】実施形態に係る
図2のIV-IV線に沿った断面での体液の流れを示す模式図である。
【
図7】別の実施形態に係る
図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図8】別の実施形態に係る
図2のV-V線に沿った断面図である。
【
図9】別の実施形態に係る
図2のIV-IV線に沿った断面での体液の流れを示す模式図である。
【
図10】実施形態に係る吸収性物品の製造方法に用いる製造装置の構成例を示す模式図である。
【
図11】製造装置のサクションドラム上での吸収性材料の供給状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
長手方向、短手方向及び厚さ方向を有し、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品であって、前記吸収コアは、非肌対向面及び肌対向面を有し、非肌対向面側の第1層と、肌対向面側の第2層と、からなり、前記第1層は、前記長手方向に沿って延在し、前記厚さ方向に貫通する複数の主溝部を含む複数の溝部と、前記長手方向に沿って延在する複数の基部と、を備え、前記複数の主溝部のそれぞれと前記複数の基部のそれぞれとは、前記短手方向に交互に延在し、前記複数の基部のそれぞれは、前記第2層の前記非肌対向面側に隣接する基部内側部と、前記基部内側部の前記非肌対向面側に隣接する基部外側部と、からなり、前記基部外側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記基部内側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、吸収性物品。
本吸収性物品は、第1層において所定の主溝部及び基部を備えるので、第2層を透過した体液が、主溝部に通水され、短手方向に基部に浸み出しつつ、長手方向に拡散する。ここで、本吸収性物品では、第1層の基部における基部外側部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、基部内側部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、吸収性物品が体液を吸収する回数が増えて、基部内側部の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングが生じそうなときでも、基部外側部の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングを生じ難くすることができる。その結果、体液が基部内へ浸透し難くなることや、基部内で短手方向に拡散し難くなることを抑制できる。一方で、基部内側部の高吸収性ポリマー粒子の膨潤により、主溝部が厚さ方向に潰れることを抑制できる。それらにより、吸収性物品全体として、主溝部で長手方向に体液を安定的に拡散させつつ、短手方向にも体液を安定的に拡散させることができる。したがって、吸収コア全体を体液の吸収により有効に利用でき、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能、例えば、吸収速度及び液戻り抑制を向上することができる。
【0011】
[態様2]
前記基部外側部の前記厚さ方向の厚さは、前記複数の基部のそれぞれの前記厚さ方向の厚さの20~80%の範囲である、態様1に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、基部外側部の厚さは基部の厚さの20~80%の範囲である。そのため、吸収性物品が体液を繰り返し吸収するとき、基部内側部の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングが生じそうなときでも、基部外側部の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングをより生じ難くすることができる。それゆえ、体液が基部内へ浸透し難くなることや、基部内で短手方向に拡散し難くなることをより安定的に抑制できる。
【0012】
[態様3]
前記第2層は、前記厚さ方向において、前記複数の主溝部及び前記複数の基部と重複する位置に、それぞれ複数の主溝部対応部及び複数の基部対応部を備え、前記複数の基部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度と、前記複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度とは、いずれも、前記複数の基部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、態様1又は2に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、基部及び主溝部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、いずれも、基部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、体液を吸収するとき、主溝部対応部を介して主溝部へ体液を透過し易くでき、主溝部の通水機能を確保できると共に、基部で保持しきれなくなった体液を、基部対応部で吸収し易くすることができる。このように、本吸収性物品では、体液が主溝部対応部から主溝部に透過し(「体液透過作用」ともいう。)、透過した体液が主溝部から隣接する基部に引き込まれ(「体液引き込み作用」ともいう。)、引き込まれた体液が、基部で保持しきれなくなると、基部対応部に吸い上げられる(「体液吸い上げ作用」ともいう。)、という体液吸収サイクルにより体液を吸収することができる。このとき、本吸収性物品では、基部内側部でブロッキングが生じそうなときでも、基部外側部でブロックを生じ難くすることができるため、体液吸収サイクルを安定的に維持できる。したがって、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0013】
[態様4]
前記複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記複数の基部のそれぞれの前記基部内側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、態様3に記載の吸収性物品。
本請求項4に係る吸収性物品では、主溝部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、基部の基部内側部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、主溝部対応部の膨潤を抑えることができ、体液透過作用を阻害し難くすることができる。それにより、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0014】
[態様5]
前記複数の基部のそれぞれの前記基部外側部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、態様4に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、基部の基部外側部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、主溝部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、基部外側部の膨潤を抑えることができ、体液引き込み作用を阻害し難くすることができる。それにより、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0015】
[態様6]
前記複数の溝部のそれぞれは、前記第1層の前記厚さ方向に貫通し、前記複数の主溝部のそれぞれと交差する方向に、所定の間隔で、前記複数の主溝部のそれぞれと基端を介して連通して存在する従溝部を更に備える、態様3乃至5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、溝部が主溝部に交差する従溝部を更に備えているので、溝部での体液の拡散をより迅速に行うことができる。それにより、吸収コア全体を体液の吸収に有効に利用することができ、それにより、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0016】
[態様7]
前記第2層は、前記厚さ方向において、前記従溝部と重複する位置に、従溝部対応部を更に備え、前記従溝部対応部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記複数の基部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、態様6に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、従溝部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、基部対応部のそれぞれに含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、体液を吸収するとき、従溝部対応部を介して従溝部へ体液を透過し易くでき、従溝部の通水機能を確保できる。更に、体液が、従溝部に沿って長手方向と交差する方向に拡散されつつ、基部に引き込まれて保持され、基部で保持しきれなくなった体液が、基部対応部に吸い上げられる、という体液吸収サイクルにより体液を更に吸収することができる。それにより、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0017】
[態様8]
前記複数の基部のそれぞれは、前記短手方向における一方の端部及び他方の端部と、前記一方の端部及び前記他方の端部の間の中央部と、において、前記一方の端部及び前記他方の端部の各々に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記中央部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い、態様1乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、短手方向において、基部の両端部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、中央部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、基部における主溝部に接する両端部の膨潤を抑えることができ、体液引き込み作用を阻害し難くすることができる。それにより、吸収性物品において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0018】
以下、実施形態に係る吸収性物品について、図面を参照しながら説明する。
本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例示:吸収性物品、吸収体、吸収コア)を、それらの厚さ方向の上方又は下方側から対象物を見ること」を「平面視」という。対象物が吸収性物品の場合、吸収性物品を展開した状態で表面シート側から厚さ方向に見ることを、単に「平面視」ということがある。対象物が吸収コアの場合、吸収性物品を展開した状態で吸収コアの非肌対向面側から厚さ方向に見ることを、単に「平面視」ということがある。
【0019】
本明細書において用いる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。「長手方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの長い方向」を指し、「短手方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向」を指し、「厚さ方向」は「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指す。これらの長手方向、短手方向及び厚さ方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。
【0020】
本明細書において、特に断りのない限り、吸収性物品の厚さ方向にて、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌対向面に対し相対的に近位側」を「肌対向面側」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌対向面に対し相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。本明細書においては、吸収性物品を構成する各種部材(例示:表面シート、吸収体、裏面シート)の「肌対向面側の表面」及び「非肌対向面側の表面」を、それぞれ単に「肌対向面」及び「非肌対向面」という。
【0021】
本明細書において、「主溝部」は、長手方向と平行な方向に延びる溝部のみならず、長手方向に沿って延びる溝部を意味する。主溝部は、長手方向となす角度が、好ましくは45°未満、より好ましくは30°未満、さらにより好ましくは15°未満である。主溝部は、直線状、非直線状、例えば、湾曲状に延びることができる。本明細書において、主溝部の幅は、対象部分における、主溝部が延びる方向と直交する方向における主溝部の長さを意味する。
【0022】
本明細書において、「従溝部」は、短手方向と平行又は略平行な方向に延びる溝部のみならず、長手方向以外の方向に延びる溝部を意味する。従溝部は、主溝部と連通する部分(基端)における主溝部(又は主溝部の接線)となす角度が、好ましくは45°以上、より好ましくは60°以上、さらにより好ましくは80°以上である。従溝部は、直線状、非直線状、例えば、湾曲状に延びることができる。本明細書において、従溝部の幅は、対象部分における、従溝部が延びる方向と直交する方向における従溝部の長さを意味する。
【0023】
本明細書において、「前胴周り領域」と、「後胴周り領域」と、「股部領域」とは、吸収性物品が使い捨ておむつである場合に用いられる用語であり、それらの意義は、以下の通りである。パンツ型使い捨ておむつにおいて、前胴周り領域は、前身頃のうち、前身頃及び後身頃を接合する短手方向の両端部の一対の接合部に挟まれた領域を意味し、後胴周り領域は、後身頃のうち、上記一対の接合部に挟まれた領域を意味する。股部領域は、前胴周り領域と、後胴周り領域との間の領域を意味する。股部領域はまた、一対の脚回り開口部に挟まれた領域に相当する。テープ型使い捨ておむつでは、あらかじめ定められた、テープファスナ用の固定領域に、一対のテープファスナの先端同士が隣接するように固定した固定状態で、胴周り領域及び股部領域を区画する。具体的には、胴周り領域は、上記の固定状態で、吸収性物品のうち、前身頃の胴周り形成部材と、後身頃の胴周り形成部材とが重複する、一対の重複部分を基準に判断する。前胴周り領域は、吸収性物品の前身頃のうち、一対の重複部分の間の領域を意味する。同様に、後胴周り領域は、吸収性物品1の後身頃のうち、一対の重複部分の間の領域を意味する。股部領域は、前胴周り領域と、後胴周り領域との間の領域を意味する。
【0024】
[吸収性物品]
(第1実施形態)
以下、実施形態に係る吸収性物品について説明する。
図1~
図6は、実施形態に係る吸収性物品1、具体的には、使い捨ておむつの構成例を示す図である。具体的には、
図1は実施形態に係る吸収性物品1の構成例の平面図である。
図2は実施形態に係る吸収性物品1の吸収体7の構成例の平面図である。
図3は実施形態に係る吸収性物品1の吸収コア9の構成例の平面図である。
図4及び
図5は、それぞれ
図2のIV-IV線に沿った断面図であり、V-V線に沿った断面図である。
図6は、
図2のIV-IV線に沿った断面における体液の流れを表す模式図である。
【0025】
図1に示すように、吸収性物品1は、液透過性シート3と、液不透過性シート5と、液透過性シート3及び液不透過性シート5の間の吸収体7と、を含む。
図2及び
図3に示すように、吸収体7は、長手方向Lと短手方向Wと厚さ方向Tとを有しており、肌対向面15及び非肌対向面17を有する吸収コア9を備える。本実施形態では、吸収コア9は、肌対向面15及び非肌対向面17を覆うティッシュからなるコアラップ11を備える。なお、本実施形態では、吸収性物品1の長手方向、短手方向及び厚さ方向は吸収体7のそれら方向と同じなので、吸収性物品1のそれら方向としても長手方向L、短手方向W及び厚さ方向Tを使用する。
【0026】
本実施形態では、
図1に示すように、吸収性物品1は、弾性部材103を含む一対の防漏壁101と、防漏壁101を液透過性シート3に固定する固定部105と、脚部周りの弾性部材107と、テープファスナ109等を更に備える。なお、これらは、当技術分野で公知のものであるため、説明を省略する。
【0027】
図3及び
図4に示すように、吸収コア9は、非肌対向面17及び肌対向面15を有し、非肌対向面側の第1層6と、肌対向面側の第2層8とからなる。また、第1層6は、長手方向Lに沿って直線状に延在し、厚さ方向Tに貫通する複数の主溝部19を含む複数の溝部18と、長手方向Lに沿って延在する複数の基部20と、を備え、主溝部19と基部20とは、短手方向Wに交互に延在している。主溝部19は、非肌対向面17から肌対向面15に向かって、吸収コア9の厚さ方向に窪んでおり且つ長手方向Lに延びている。基部20は、第2層8の非肌対向面17側に隣接する基部内側部36と、基部内側部36の非肌対向面17側に隣接する基部外側部34とからなる。
【0028】
本実施形態では、第2層8は、厚さ方向Tにおいて、複数の主溝部19と重複する位置に、複数の主溝部対応部22と、厚さ方向Tにおいて、複数の基部20と重複する位置に、複数の基部対応部24とを備える。更に、本実施形態においては、
図3及び
図5に示すように、溝部18は、複数の従溝部21を含む。また、第2層8は、厚さ方向Tにおいて、複数の従溝部21と重複する位置に、複数の従溝部対応部26を備える。
【0029】
本実施形態において、第1層6及び第2層8の厚さは、いずれも、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~4mm、さらにより好ましくは1~3mmである。なお、本実施形態では、第1層6及び第2層8の厚みは、それぞれレーザー変位計(例示:キーエンス株式会社製 高精度2次元レーザー変位計LJ-Gシリーズ(型式:LJ-G030))を使用して、次のように非接触方式で測定することができる。吸収性物品1にコールドスプレーを吹き付けて液透過性シート3、液不透過性シート5、及びコアラップ11を剥がして得た吸収コア9を100mm×100mmのサイズに切り出し、サンプルとする。当該サンプルを、複数の溝部18と基部20とが形成された非肌対向面17が上になるように、水平な測定台に載置し、異なる5つの基部20について、測定台からの変位をレーザー変位計で測定し、5つの測定値の平均値をAx(mm)とする。同様に、異なる5つの溝部18(主溝部19)について、測定台からの変位をレーザー変位計で測定し、5つの測定値の平均値をAy(mm)とする。第2層8の厚みは、Ay(mm)であり、第1層6の厚さは、Ax(mm)とAy(mm)との差から算出する。
【0030】
吸収コア9は、吸水性繊維30及び高吸収性ポリマー粒子(SAP)32を含み、吸収性物品1に排出された体液を吸収、保持する機能を持つ。本実施形態では、第1層6及び第2層8における吸収性繊維の平均坪量は、いずれも、好ましくは50~250g/m2、より好ましくは80~200g/m2である。また、第1層6における高吸収性ポリマー粒子の平均坪量は、第2層8における高吸収性ポリマー粒子の平均坪量よりも小さい。第1層6における高吸収性ポリマー粒子の平均坪量は、好ましくは20~150g/m2、より好ましくは30~100g/m2であり、第2層8における高吸収性ポリマー粒子の平均坪量は、好ましくは50~350g/m2、より好ましくは100~250g/m2である。吸収コア9全体における高吸収性ポリマー粒子の平均坪量に対する第1層6における高吸収性ポリマー粒子の平均坪量の比率は、好ましくは20~45%、より好ましくは25~35%である。
【0031】
図4に示すように、吸収コア9では、基部20の基部外側部34及び基部20の基部内側部36のそれぞれにおいて、異なる高吸収性ポリマー粒子の平均密度を有する。具体的には、基部外側部34に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。本実施形態では、更に、基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、第2層8に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度と等しい、又は、第2層8に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。
【0032】
このように、本実施形態では、高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、基部外側部34<基部内側部36≦第2層8という関係にある。このような構成では、例えば、
図6に示すように、本実施形態において、体液は概ね以下の順番で吸収コア9内を移動する。
(i)コアラップ11に到達した体液は、第2層を通過した後、重力により主に主溝部19に移動する(矢印A)。
(ii)主溝部19に移動した体液は、短手方向Wに隣接する基部20の基部外側部34及び基部内側部36に浸み出しつつ(矢印B1、B2)、長手方向Lに拡散する。
(iii)基部20で保持しきれなくなった体液は、基部対応部24に吸い上げられ、保持され得る(矢印C)。
【0033】
本吸収性物品1は、第1層6において所定の主溝部19及び基部20を備えるので、第2層8を透過した体液が、主溝部19に通水され、短手方向Wに基部20に浸み出しつつ、長手方向Lに拡散する。ここで、本吸収性物品1では、第1層6の基部20における基部外側部34に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、吸収性物品1が体液を吸収する回数が増えて、基部内側部36の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングが生じそうなときでも(矢印B2が停止)、基部外側部34の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングを生じ難くすることができる。すなわち、体液の吸収回数の増加に拘わらず、主溝部19に移動した体液が基部外側部34へ継続的に浸み出し易い状態を維持することができる(矢印B1が継続)。その結果、体液が基部20内へ浸透し難くなることや、基部20内で短手方向Wに拡散し難くなることを抑制できる。一方で、基部内側部36の高吸収性ポリマー粒子の膨潤により、主溝部19が厚さ方向Tに潰れることを抑制できる。それらにより、吸収性物品1全体として、主溝部19で長手方向Lに体液を安定的に拡散させつつ、短手方向Wにも体液を安定的に拡散させることができる。したがって、吸収コア9全体を体液の吸収により有効に利用でき、吸収性物品1において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能、例えば吸収速度及び液戻り抑制を向上することができる。
【0034】
本実施形態において、基部外側部34に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、好ましくは0~0.15g/cm3、より好ましくは0~0.1g/cm3、更に好ましくは0~0.08g/cm3、である。基部外側部34に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が多過ぎる場合、基部外側部34の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングを生じ易くなり、基部外側部34が基部内側部36よりもブロッキングし難いという効果を奏し難くなる。
【0035】
一方、基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、好ましくは0.02~0.35g/cm3、より好ましくは0.03~0.3g/cm3、更に好ましくは0.04~0.25g/cm3、である。基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が少な過ぎる場合、基部内側部36の高吸収性ポリマー粒子が膨潤し難くなり、主溝部19が厚さ方向Tに潰れ易くなる。基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が多過ぎる場合、基部内側部36の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングが生じ易くなり、短手方向Wへの体液の拡散が低下し易くなる。
【0036】
このとき、基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度と基部外側部34に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度との差は、好ましくは0.01~0.35g/cm3、より好ましくは0.02~0.3g/cm3、更に好ましくは0.03~0.25g/cm3、である。差が小さ過ぎると、基部20全体でブロッキングが生じ易くなる(平均密度が高い場合)、又は、主溝部19が厚さ方向Tに潰れ易くなる(平均密度が低い場合)。差が大き過ぎると、基部内側部36の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングが生じ易くなる。
【0037】
更に、第2層8に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、好ましくは0.03~0.4g/cm3、より好ましくは0.04~0.35g/cm3、更に好ましくは0.05~0.3g/cm3、である。第2層8に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が少な過ぎる場合、吸収体7全体の体液の吸収量が低下し易くなる。第2層8に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が多過ぎる場合、第2層8の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングが生じ易くなり、基部20での体液の吸収量が低下し易くなる。なお、本実施形態では、第2層8では、主溝部対応部22、基部対応部24及び従溝部対応部26の高吸収性ポリマー粒子の平均密度は概ね同じである。
【0038】
高吸収性ポリマー粒子の平均密度の測定方法は、以下の通りである。吸収コア9から所定の長さ及び幅のサンプルを5つ切り出し(例示:4mm×4mm)、各サンプルに含まれる高吸収性ポリマー粒子を選別し、各サンプルに含まれる高吸収性ポリマー粒子の合計質量をそれぞれ計測し、この計測値を、後述するサンプルの厚みとサンプルの面積とで得られるサンプルの体積で除したものの平均値により得られる。
【0039】
本明細書において、吸収コア9内における基部20(基部外側部34、基部内側部36)、第2層8(主溝部対応部22、基部対応部24)の各部における高吸収性ポリマー粒子の平均密度の高低を評価する場合、以下の方法によってもよい。例えば、サンプルとなる吸収性物品1を液体窒素に含浸させて凍結させた後、剃刀で当該吸収性物品1を厚さ方向Tにカットし、主溝部19が延びる方向と交差する面における断面を得る。次いで、当該サンプルを常温に戻し、電子顕微鏡(例えば、キーエンス社VE7800)を用いて、50倍の倍率の断面画像を得る。そして当該断面画像において、基部20、主溝部対応部22、及び基部対応部24の各部における高吸収性ポリマー粒子の平均密度の高低を目視により評価する。なお、後述する従溝部対応部26における高吸収性ポリマー粒子の平均密度と基部20及び基部対応部24のそれぞれにおける高吸収性ポリマー粒子の平均密度との高低を評価する場合には、上記方法に代えて従溝部25が延びる方向と交差する面における断面画像を用いて、上記と同様の方法により評価することができる。
【0040】
本実施形態において、基部外側部34の厚さ方向Tの厚さは、複数の基部20のそれぞれの厚さ方向Tの厚さの20~80%の範囲が好ましく、30~70%の範囲がより好ましく、35~65%の範囲が更に好ましい。ただし、基部20の厚さ方向Tの厚さとは、第1層6(基部内側部36+基部外側部34)の厚さ、又は、主溝部19の溝深さということができる。
【0041】
このような吸収性物品1では、基部外側部34の厚さは基部の厚さの20~80%の範囲である。そのため、吸収性物品1が体液を繰り返し吸収するとき、基部内側部36の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングが生じそうなときでも、基部外側部34の高吸収性ポリマー粒子の膨潤によるブロッキングをより生じ難くすることができる。すなわち、基部内側部36を介して体液が基部20内へ浸透し難くなっても、基部外側部34を介して、体液を基部20内へ浸透させることができる。よって、体液が基部20内へ浸透し難くなることや、基部20内で短手方向Wに拡散し難くなることをより安定的に抑制できる。
【0042】
なお、基部20の厚さに対する基部内側部36の厚さの比が小さ過ぎる場合、基部内側部36にて膨潤する高吸収性ポリマー粒子が少なくなり、主溝部19が厚さ方向Tに潰れ易くなる。一方、基部20の厚さに対する基部内側部36の厚さの比が大き過ぎる場合、高吸収性ポリマー粒子の膨潤で基部内側部36を介して体液が基部20内へ浸透し難くなったとき、基部外側部34を介して基部20内へ浸透する体液が少なくなり、基部20での体液の吸収量が低下し易くなる。
【0043】
本明細書において、基部外側部34及び基部内側部36の相対的な厚さの測定・算出方法は以下のとおりである。
(1)サンプル断面のX線透視画像の取得
吸収性物品1より測定対象部位を含むサンプル片を準備する。当該サンプル片は、吸収性物品1の弾性部材、液透過性シート3及び液不透過性シート5などを取り除いた、吸収コア9とコアラップ11とを含む吸収体7であって、吸収体7を短手方向に亘って、平面視にて15mmの幅に切りだしたX線断面観測用試験片である。なお、吸収性物品1が、吸収体7と液透過性シート3と液不透過性シート5とが一体的に形成されている場合であって、吸収体7の形状を破壊することなしに液透過性シート3と液不透過性シート5とを取り除くことができない場合、サンプル片は、吸収性物品1の弾性部材を取り除いた、吸収コア9とコアラップ11とを含む吸収体7と、液透過性シート3と液不透過性シート5とを有し、吸収体7を短手方向に亘って、平面視にて幅15mmの幅に切りだしたX線断面観測用試験片とする。次いで、下記X線撮影装置及び画像処理ソフトを使用し、前記サンプル片の断面を透過撮影することにより、その厚さ方向Tを含む内部断面写真をBMP形式で得る。そして、得られた視野サイズ30×20mmのX線透視画像を吸収体7の短手方向にタイリングして合成画像解析ソフトのピクセル数で、吸収体7の厚さ、基部外側部34の厚さ、及び主溝部19の溝深さを算出する。その後、吸収体7全体厚さを100として、主溝部19の溝深さと基部外側部34の厚さとの比率を算出する。
測定・撮影機器:X線透視装置:FLEX-M863((株)ビームセンス製)
撮影条件:管電圧35kV、管電流100μA、画素サイズ:20×20μm
画素数:1500×1000画素、分解能:2μm(幾何倍率10倍)
画像連結ソフト・画像計測ソフト:UNアナライザー((株)ユニーク製)
(2)サンプルにおける測定対象部位の相対的な厚さ・深さの測定・算出方法
上記(1)で得られたBMP形式の内部断面写真より、吸収体7の全体厚さ、基部外側部34の厚さ、主溝部19の溝深さに相当する画素数を読み取る。そして、吸収体7の全体厚さ、主溝部19の溝深さ、基部外側部34の厚さ、基部内側部36の厚さ(主溝部19の溝深さ-基部外側部34の厚さ)、第2層8の厚さ(吸収体7の全体厚さ-主溝部19の溝深さ)を算出する。その後、吸収体7の全体厚さを100として、主溝部19の溝深さ、基部外側部34の厚さ、基部内側部36の厚さ、第2層8の厚さの比率を相対的な厚さ・深さとして算出する。
【0044】
本実施形態では好ましい態様として、基部20は、短手方向Wにおける一方の端部及び他方の端部と、一方の端部及び他方の端部の間の中央部と、において、一方の端部及び他方の端部の各々に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、中央部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。ただし、端部とは、基部20の短手方向Wの端縁から、基部20の短手方向Wの長さの1/5の範囲をいうものとする。このような吸収性物品1では、基部における主溝部19に接する両端部の膨潤を抑えることができ、体液引き込み作用を阻害し難くすることができる。それにより、本吸収性物品1において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0045】
(第2実施形態)
以下、実施形態に係る吸収性物品について説明する。
本実施形態では、第1実施形態と相違点について主に説明する。
図7~
図9は、実施形態に係る吸収性物品1、具体的には、使い捨ておむつの構成例を示す図である。具体的には、
図7及び
図8は、それぞれ
図2のIV-IV線に沿った断面図であり、V-V線に沿った断面図である。
図9は、
図2のIV-IV線に沿った断面における体液の流れを表す模式図である。
【0046】
図7に示すように、吸収コア9は、基部20の基部外側部34及び基部内側部36、主溝部対応部22、並びに、基部対応部24のそれぞれにおいて、異なる高吸収性ポリマー粒子の平均密度を有する。具体的には、基部20(基部外側部34及び基部内側部36)に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度並びに主溝部対応部22に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、基部対応部24に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。
【0047】
本実施形態において、基部20の基部外側部34及び基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は第1実施形態に記載のとおりである。主溝部対応部22に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、好ましくは0~0.25g/cm3、より好ましくは0~0.2g/cm3、更に好ましくは0~0.15g/cm3、である。一方、基部対応部24に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、好ましくは0.1~0.45g/cm3、より好ましくは0.1~0.4g/cm3、更に好ましくは0.1~0.35g/cm3、である。
【0048】
このように、本実施形態では、高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、基部20(基部外側部34及び基部内側部36)・主溝部対応部22<基部対応部24という関係にある。このような構成により、
図6に示すように、本実施形態において、体液は概ね以下の順番で吸収コア9内を移動する。
(i)コアラップ11に到達した体液は、第2層8において、高吸収性ポリマー粒子の平均密度が相対的に低く、体液を透過し易い主溝部対応部22の内部に浸透し、さらに重力により主溝部19に移動する(矢印A)。
(ii)主溝部19に移動した体液は、短手方向Wに隣接する基部20の基部外側部34及び基部内側部36に浸み出しつつ(矢印B1、B2)、長手方向Lに拡散する。
(iii)基部20で保持しきれなくなった体液は、吸収コア9内において最も高吸収性ポリマー粒子の平均密度が高い基部対応部24に吸い上げられ、保持される(矢印C)。
【0049】
本吸収性物品1では、基部20及び主溝部対応部22に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、いずれも、基部対応部24に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。そのため、体液を吸収するとき、主溝部対応部22を介して主溝部19へ体液を透過し易くでき、主溝部19の通水機能を確保できると共に、基部20で保持しきれなくなった体液を、基部対応部24で吸収し易くすることができる。このように、本吸収性物品1では、体液が主溝部対応部22から主溝部19に透過し(「体液透過作用」ともいう。)、透過した体液が主溝部19から隣接する基部20に引き込まれ(「体液引き込み作用」ともいう。)、引き込まれた体液が、基部20で保持しきれなくなると、基部対応部24に吸い上げられる(「体液吸い上げ作用」ともいう。)、という体液吸収サイクルにより体液を吸収することができる。このとき、本吸収性物品1では、基部内側部36でブロッキングが生じそうなときでも、基部外側部34でブロックを生じ難くすることができるため、体液吸収サイクルを安定的に維持できる。したがって、本吸収性物品1において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0050】
本実施形態では好ましい態様として、主溝部対応部22に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、基部20の基部内側部36に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。このような吸収性物品1では、主溝部対応部22の膨潤を抑えることができ、体液透過作用を阻害し難くすることができる。それにより、本吸収性物品1において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0051】
本実施形態では好ましい態様として、基部20の基部外側部34に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、主溝部対応部22に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。このような吸収性物品1では、基部外側部34の膨潤を抑えることができ、体液引き込み作用を阻害し難くすることができる。それにより、本吸収性物品1において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0052】
本実施形態では好ましい態様として、従溝部対応部26に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、基部対応部24に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。このとき、従溝部対応部26に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、主溝部対応部22に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度と同程度である。このような吸収性物品1では、体液を吸収するとき、従溝部対応部26を介して従溝部21へ体液を透過し易くでき、従溝部21の通水機能を確保できる。更に、体液が、従溝部21に沿って長手方向Lと交差する方向に拡散されつつ、基部20(基部外側部34、基部内側部36)に引き込まれて保持され、基部20で保持しきれなくなった体液が、基部対応部24に吸い上げられる、という体液吸収サイクルにより体液を更に吸収することができる。それにより、本吸収性物品1において体液を繰り返し吸収させる場合での吸収性能を向上できる。
【0053】
第1及び第2の実施形態の好ましい態様において、吸収体7は、
図2に示すように、吸収体7を短手方向Wに2等分する、長手方向中央軸線VLにより、右側領域RAと、左側領域LAとに区画される。そして、吸収体7は、主溝部19を、右側領域RA、左側領域LAにそれぞれ二本ずつ備える。
【0054】
第1及び第2の実施形態では、吸収性物品1は、
図1に示すように、長手方向Lにおいて、前胴周り領域FWと、後胴周り領域RWと、前胴周り領域FW及び後胴周り領域RWの間の股部領域Cとの三領域に区画される。そして、吸収体7は、上記三領域に亘って配置されており、従溝部21を上記三領域の全てに備えている。
【0055】
第1及び第2の実施形態において、溝部18は、主溝部19が長手方向Lに沿って直線状に延在し、従溝部21が主溝部19に直交する構成に限定されない。溝部18は、例えば、主溝部19のみからなり、従溝部21を備えなくてもよい。また、主溝部19は、吸収コア9の長手方向Lに、前胴周り領域FW、股部領域C及び後胴周り領域RWに亘って延在していなくてもよく、例えば股部領域Cの領域のみに配置されていてもよい。また、複数の主溝部19のそれぞれは、平面視にて、長手方向Lに沿ってジグザグ状に延在し、隣り合う主溝部19同士により、幅の長さが相対的に広い幅広基部と幅の長さが相対的に狭い幅狭基部とを、長手方向Lに交互に形成するように配置されてもよい。あるいは、複数の主溝部のそれぞれが、平面視にて、長手方向Lに沿ってジグザグ状に延在し、隣り合う主溝部19同士により、基部20の幅が一定になるように配置されていてもよいし、複数の主溝部19のそれぞれが、平面視にて、波型状に延在していてもよい。
【0056】
第1及び第2の実施形態において、
図4に示すように、吸収コア9の非肌対向面17を覆うコアラップ11は、主溝部19内において主溝部対応部22に当接していないが、肌対向面15側に凸になるように配置されていてもよい。かかる場合、主溝部19における体液の長手方向L及び短手方向Wの拡散性を向上させることができる。あるいは、吸収コア9の非肌対向面17を覆うコアラップ11が、主溝部対応部22に当接していてもよいし、主溝部対応部22と部分的又は連続的に圧搾部や接合部で接合されていてもよい。このように主溝部19が、主溝部対応部22の幅の一部を、主溝部19に沿って間欠的に圧搾又は接合して形成することにより、着用者が、圧搾部又は接合部の硬さを感じにくくなる。また、主溝部19が、主溝部対応部22の幅の一部を、長手方向Lに連続的に圧搾又は接合することにより形成することにより、吸収性物品1が、主溝部19を基準により折れ曲がりやすくなり、より一層フィット性に優れる。
【0057】
第1及び第2の実施形態において、吸収性物品1では、主溝部19は、吸収体7の厚さの、好ましくは0.5~3.0倍、より好ましくは0.8~2.5倍、そしてさらに好ましくは1.0~2.0倍の幅を有する。主溝部19の幅が上記範囲内にあると、吸収性物品1が体液を吸収した後に、主溝部19がその通水機能を保持しやすい。
【0058】
本明細書において、特に断りのない限り、対象物(例示:吸収体、吸収コア)の厚さ(mm)は、以下の通り測定される。株式会社大栄科学精器製作所製 FS-60DS[測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2]を準備し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)の下、対象物の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定し、5つの測定値の平均値を吸収体の厚さとする。
【0059】
第1及び第2の実施形態において、短手方向Wに隣接する従溝部21の間隔が、短手方向Wに隣接する複数の主溝部19の間隔の好ましくは10~80%であり、より好ましくは20~60%である。このように、従溝部21が所定の間隔を有すると、従溝部21同士の間に存在する基部20に所定の幅を確保でき、当該従溝部21を介して基部20に吸収された体液が長手方向Lに拡散され易く、体液を繰り返し吸収しても、当該吸収性物品1は、拡散性、吸収速度、及び液戻り抑制に優れる。
【0060】
[吸収性物品の製造方法]
上記の実施形態に記載の構成を有する吸収性物品1を製造する場合には、製造方法に制限はないが、例えば次のような方法を用いることができる。ただし、本明細書において、「材料又は製品の搬送方向」を「MD方向」、「MD方向と水平面上において直交する方向」(すなわち、製造ラインの幅方向)を「CD方向」、「これらMD方向とCD方向と直交する方向」(すなわち、製造ラインの垂直方向)を「TD方向」とそれぞれいう。
【0061】
図10は、実施形態に係る吸収性物品1の製造するための製造装置50の構成例を示す模式図である。また、
図11(a)~
図11(c)は、
図10の製造装置50のサクションドラム52上での吸収性材料の供給状態を示す模式図である。
【0062】
製造装置50は、搬送管51とサクションドラム52とを備えている。搬送管51は、開繊された吸水性繊維8aや高吸収性ポリマー粒子8bを含む吸収性材料をサクションドラム52へ搬送する。搬送管51は、高吸収性ポリマー粒子8bを吐出口51Spからサクションドラム52へ吐出する搬送管ノズル51Sを含む。サクションドラム52は、回転自在であり、搬送管51内の吸収性材料を吸引し、その吸収性材料を、外周面に周方向に沿って一定間隔で配設された複数の凹状の型部材53内に積層させることで、後工程で吸収体7の吸収コア9となる第1積層体61を形成する。
【0063】
製造装置50は、更に、コアラップ連続体用の巻出ロール54を備えている。巻出ロール54は、長尺のコアラップ連続体62をサクションドラム52へ向かって巻き出す。サクションドラム52は、外周面にある第1積層体61を、コアラップ連続体62上に載置する。コアラップ連続体62上に載置された第1積層体61がコアラップ連続体62で被覆されることにより、第2積層体63が形成される。製造装置50は、更に、プレス装置55を備えている。プレス装置55は、第2積層体63を、厚さ方向(TD方向)に加圧して圧縮させる一対のプレスロール55a,55bを含む。第2積層体63がプレス加工されることで第3積層体64が形成される。製造装置50は、更に、液透過性シート連続体用の巻出ロール57を備えている。巻出ロール57は、第3積層体64の一面(
図10の場合、上面)に対して、液透過性シート3となる長尺の液透過性シート連続体66を巻き出して積層させる。第3積層体64に液透過性シート連続体66が積層されることにより第4積層体65が形成される。製造装置50は、更に、液不透過性シート連続体用の巻出ロール58を備えている。巻出ロール58は、第4積層体65における液透過性シート連続体66とは反対側の面(
図10の場合、下面)に対して、液不透過性シート5となる長尺の液不透過性シート連続体68を巻き出して接合させる。第4積層体65に液不透過性シート連続体68が積層されることにより第5積層体67が形成される。
【0064】
なお、製造装置50は、巻出ロール58よりもMD方向の下流に、第5積層体67を吸収性物品1の形状に切断し、単体の吸収性物品1とする装置(図示せず)や第5積層体67に防漏壁101やテープファスナ109を圧着する各装置(図示せず)を備える。ただし、これらの装置は、当業界において知られている通常の装置であるため、その詳細な説明を省略する。
【0065】
前述の製造装置50を用いて吸収性物品1を製造する場合、以下の工程を実施する。すなわち、第1積層体61を形成する第1工程と、コアラップ連続体62により第1積層体61を被覆して第2積層体63を形成する第2工程と、第2積層体63をプレス装置55によりTD方向に圧縮して第3積層体64とする第3工程とを順次実施する。更に、第3積層体64に液透過性シート連続体66を積層して第4積層体65とする第4工程と、第4積層体65に液不透過性シート連続体68を接合して第5積層体67とする第5工程とを順次実施する。
【0066】
まず、最終的に吸収体7の吸収コア9を構成することとなる第1積層体61を形成する第1工程を実施する。第1工程は、吸水性繊維8aや高吸収性ポリマー粒子8bを含む吸収性材料を、搬送管51を通じてサクションドラム52により吸引して、サクションドラム52の外周面の型部材53内に積層させて、第1積層体61を形成する。
【0067】
ここで、型部材53は、底部53cに、サクションドラム52の周方向に延びる断面四角形状の4対の突起部(
図11では53a、53bのみを図示)を備えている。具体的には、突起部53a、53bのそれぞれは、矩形形状を有している。これらの突起部53a、53bは、吸収体7の主溝部19の位置に適応する位置に、主溝部19の長さ方向の形状及び幅に適応する長さ方向の形状及び幅を有した態様に配設されている。
【0068】
図11(a)は、搬送管51における吸収性材料が供給される領域のうちの最初の領域(例示:全領域の最初の1/5)でのサクションドラム52上での吸収性材料の供給状態を示している。この領域は、吐出口51Spから吐出された高吸収性ポリマー粒子8bが少量だけ供給され又はほとんど供給されず、かつ、吸水性繊維8aが所定量だけ供給されるように制御された領域である。それゆえ、サクションドラム52の型部材53の底部53cには、主に吸水性繊維8aが供給され、積層される。高吸収性ポリマー粒子8bと吸水性繊維8aとを合わせた全体の積層厚さは突起部53a、53bの高さよりも低い。それにより、基部外側部34に対応する部分が形成される。
【0069】
図11(b)は、搬送管51における吸収性材料が供給される領域のうちの中間の領域(例示:全領域の中間の1/5)でのサクションドラム52上での吸収性材料の供給状態を示している。この領域は、吐出口51Spから吐出された高吸収性ポリマー粒子8bが他の所定量((a)の「少量」より多い)だけ供給され、かつ、吸水性繊維8aが所定量だけ供給されるように制御された領域である。それゆえ、サクションドラム52の外周面の型部材53の底部53c及び突起部53a、53bの上部には、高吸収性ポリマー粒子8b及び吸水性繊維8aが供給され、積層される。高吸収性ポリマー粒子8bと吸水性繊維8aとを合わせた全体の積層厚さは突起部53a、53bの高さよりも高い。それにより、更に、基部内側部36に対応する部分、及び、第2層8の一部が形成される。
【0070】
図11(c)は、搬送管51における吸収性材料が供給される領域のうちの最終の領域(例示:全領域の最後の1/5)でのサクションドラム52上での吸収性材料の供給状態を示している。この領域は、吐出口51Spから吐出された高吸収性ポリマー粒子8bが少量又は他の所定量だけ供給され、かつ、吸水性繊維8aが所定量だけ供給されるように制御された領域である。それゆえ、サクションドラム52の型部材53の底部53c及び突起部53a、53bの上部には、高吸収性ポリマー粒子8b及び吸水性繊維8aが供給され、積層される。高吸収性ポリマー粒子8bと吸水性繊維8aとを合わせた全体の積層厚さは突起部53a、53bの高さよりも高い。それにより、更に、第2層8の残りが形成されて、最終的に吸収コア9が形成される。
【0071】
なお、第2実施形態おける第2層8の主溝部対応部22(又は従溝部対応部26)において、高吸収性ポリマー粒子の平均密度を低下させたい場合には、特許文献1(特開2018-872号公報)の製造方法を適用することができる。例えば、搬送管51に、高吸収性ポリマー粒子8bを相対的に多い量で吐出する搬送管ノズル51Hを更に配置し、第2層8を形成するとき、搬送管ノズル51Sより低位置に存在する搬送管ノズル51Hから吸収性材料を供給する。その場合、高吸収性ポリマー粒子8bが高吐出量で含まれるため、高吸収性ポリマー粒子8bが突起部53a、53bに衝突すると、高吸収性ポリマー粒子8bが跳ね返り易くなり、その結果、第1積層体61には、突起部53a、53b上の部分において高吸収性ポリマー粒子8bの平均密度が低くなる部分が存在することになる。突起部53a、53b上の部分が主溝部対応部22(又は従溝部対応部26)に対応する部分となる。
【0072】
第2工程では、回転したサクションドラム52が型部材53内の第1積層体61を、コアラップ連続体用の巻出ロール54から巻き出されてMD方向に移動しているコアラップ連続体62(接着剤塗布済)上に転写して載置する。そして、図示しない折曲手段によってコアラップ連続体62を第1積層体61の外周面に沿って、MD方向と直交するCD方向に折曲げ、コアラップ連続体62を第1積層体61に巻くことにより被覆し、長尺の第2積層体63とする。次いで、第3工程では、プレス装置55の一対のプレスロール55a,55bの間に第2積層体63を通すことにより、第2積層体63をTD方向に圧縮する。このとき、第3積層体64が形成される。次いで、第4工程では、第3積層体64の上面に、ホットメルト型接着剤等の接着剤を介して、液透過性シート連続体用の巻出ロール57から巻き出した液透過性シート連続体66を積層して長尺の第4積層体65とする。次いで、第5工程では、第4積層体65の下面に、ホットメルト型接着剤等の接着剤を介して、液不透過性シート連続体用の巻出ロール58から巻き出した液不透過性シート連続体68を接合して、長尺の第5積層体67とする。第5の工程終了後、切断装置によって第5積層体67を吸収性物品1の形状に切断する。この結果、吸収性物品1が完成することとなる。
【0073】
上記製造方法では型部材53が主溝部19形成用の突起部53a、53bを備える態様を説明したが、吸収性物品の製造方法として、型部材53は従溝部21形成用の突起部を備えてもよい。さらに、各工程は本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0075】
(A)試料
パルプ(平均坪量:220g/m
2)と、高吸収性ポリマー粒子(平均坪量:230g/m
2)とを含む、350mm×120mm(長手方向×短手方向)のサイズの吸収コアを、前述の製造方法にしたがって製造した。ただし、前述の製造方法において、
図11(a)の工程をほぼ吸水性繊維のみで形成し、
図11(b)、(c)の工程を吸水性繊維及び高吸収性ポリマー粒子で概ね均一に形成した。実施例1~4の吸収コアは、
図11(a)の工程に供給される吸水性繊維を、供給される全吸水性繊維の7.5%、15%、22.5%、30%となるようにした。坪量としては、概ね17g/m
2、33g/m
2、50g/m
2、66g/m
2に相当した。一方、比較例1、2の吸収コアは、
図11(a)の工程に供給される吸水性繊維を、供給される全吸水性繊維0%、50%となるようにした。坪量としては、概ね0、110g/m
2に相当した。吸収コアは、第1層に、4本の主溝部(幅:4mm)が、18mmの間隔で配置された。
【0076】
次いで、各吸収コアを、ホットメルト接着剤を間に挟んで、コアラップとしての2枚のティッシュ(坪量:16g/m2,400mm×150mm)で覆った。二枚のティッシュに覆われた吸収コアを油圧プレス機でプレスすることにより吸収コアの厚さを調整した。それにより、実施例1~4の吸収コアから実施例1~4の吸収体を形成し、比較例1、2の吸収コアから比較例1、2の吸収体を形成した。その後、各吸収体の第2層側に液透過性シート(エアスルー不織布)を貼り付け、そして第1層側に液不透過性シート(ポリエチレンフィルム)を貼り付けた。それにより、実施例1~4の吸収体から実施例1~4の簡易の吸収性物品を形成し、比較例1、2の吸収体から比較例1、2の簡易の吸収性物品を形成した。
【0077】
(B)評価
実施例1~4の吸収性物品及び比較例1、2の吸収性物品に、以下に規定する吸収性試験を行い、吸収速度、液戻り量(リウェット)を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0078】
[吸収性試験]
(1)吸収性物品を、側面視が略U字型であるU字器具にセットする。なお、吸収性物品は、U字器具に、吸収体の長手方向の中央位置と、U字器具中央部(最も高さが低い位置)との位置を合わせるようにセットする。
【0079】
<第1サイクル>
(2)吸収体の中央位置に、ビュレットから、80mLの人工尿(1回目)を、80mL/10秒の速度で注入する。
(3)1回目の人工尿の注入開始から、U字器具内の人工尿がなくなるまでの時間を、吸収時間(80mL)として記録する。
(4)1回目の人工尿の注入開始から3分後、吸収性物品の液透過性シートにおいて、人工尿が拡散した領域の輪郭(80mL)を記録する。
【0080】
<第2サイクル>
(5)1回目の人工尿の注入開始から10分後、吸収体の中央位置に、ビュレットから、80mLの人工尿(2回目)を、80mL/10秒の速度で注入する。
(6)2回目の人工尿の注入開始から、U字器具内の人工尿がなくなるまでの時間を、吸収時間(160mL)として記録する。
(7)2回目の人工尿の注入開始から3分後、吸収性物品の液透過性シートにおいて、人工尿が拡散した領域の輪郭(160mL)を記録する。
【0081】
<第3サイクル>
(8)上記の(5)~(7)の操作を繰り返し、吸収時間(240mL)を測定し、輪郭(240mL)を記録する(表1の「U字3サイクル吸収速度(s/80ml)」)。
【0082】
(9)3回目の人工尿の注入開始から4分後、U時器具から吸収性物品を取り出し、アクリル製の平板上に、液透過性シートが上面となるように吸収性物品を拡げて1分間静置する。
(10)3回目の人工尿の注入開始から5分後、100mm×100mmのろ紙60gを、人工尿注入点を中心として吸収性物品の液透過性シート上に静置する。さらに、その上に3.5kg、100mm×100mm×50mm(高さ)の錘を静置する。なお、ろ紙については事前に試験前の質量を測定する。
(11)3回目の人工尿の注入開始から8分後、錘を取り除いて、ろ紙の質量を測定し、試験前のろ紙の質量を差し引き、その差分を液戻り量とする(表1の「U字3サイク液戻り量(g/240ml)」)。
【0083】
なお、人工尿は、イオン交換水10Lに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム8g、塩化カルシウム3g及び色素:青色1号約1gを溶解させることにより調製した。
【0084】
【0085】
3サイクルの吸収性試験を終えた実施例1~4の吸収性物品は、比較例1、2の吸収性物品と比較すると、吸収時間が25秒/80ml以下、かつ、液戻り量が36g/240ml以下の両方の基準を同時に満足していた。特に、実施例2、3は、吸収時間が22秒/80ml以下、かつ、液戻り量が31g/240ml以下であり非常に良好であった。したがって、基部の厚さに対する基部外側部の厚さ比率は20~80%が好ましいく、30~70%がより好ましいことが分かった。
【0086】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 吸収性物品
6 第1層
8 第2層
9 吸収コア
18 溝部
19 主溝部
20 基部
34 基部外側部
36 基部内側部