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特許7134417PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬との併用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬との併用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5415 20060101AFI20220905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A61K31/5415
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019530587
(86)(22)【出願日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2018027041
(87)【国際公開番号】W WO2019017420
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2017140891
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018016074
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000238201
【氏名又は名称】扶桑薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】今内 覚
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 史郎
(72)【発明者】
【氏名】岡川 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】前川 直也
(72)【発明者】
【氏名】西森 朝美
(72)【発明者】
【氏名】後藤 伸也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 定彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 千絵
(72)【発明者】
【氏名】佐治木 大和
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0196835(US,A1)
【文献】ZELENAY, S. et al.,Cyclooxygenase-Dependent Tumor Growth through Evasion of Immunity,Cell,2015年,Vol.162,p.1257-1270,ISSN 0092-8674
【文献】LI, Y. et al.,Hydrogel Dual Delivered Celecoxib and Anti-PD-1 Synergistically Improve Antitumor Immunity,Oncoimmunology,2016年,Vol.5, No.2, e1074374,p.1-12,ISSN 2162-4011
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2013年,Vol.438,p.249-256
【文献】Veterinary Research,2011年,Vol.42:103,p.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 31/00
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メロキシカムを含み、抗PD-L1抗体を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に投与する、がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【請求項2】
抗PD-L1抗体と、メロキシカムとが別々に投与される請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
抗PD-L1抗体と、メロキシカムとを含む配合剤である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
メロキシカムを含む、抗PD-L1抗体の免疫賦活効果増強剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-1とPD-L1の相互作用は腫瘍および感染症が免疫応答を回避する主要な分子機構の一つであり、これらの分子に特異的に結合する抗体を用いて相互作用を阻害することで抗腫瘍効果および抗病原体効果が得られることが報告されている(非特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Bramer J, Reckamp K, et al: Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med, 373:1627-1639, 2015.
【文献】Hamanishi J, Mandai M, Ikeda T, et al: Safety and Antitumor Activity of Anti-PD-1 Antibody, Nivolumab, in Patients With Platinum-Resistant Ovarian Cancer. J Clin Oncol, 33:4015-4022, 2015.
【文献】Motzer RJ, Escudier B, McDermott DF, et al: Nivolumab versus Everolimus in Advanced Renal-Cell Carcinoma. N Engl J Med, 373:1803-1813, 2015.
【文献】Barber DL, Wherry EJ, Masopust D, et al: Restoring function in exhausted CD8 T cells during chronic viral infection. Nature, 439:682-687, 2006.
【文献】Velu V, Titanji K, Zhu B, et al: Enhancing SIV-specific immunity in vivo by PD-1 blockade. Nature 458:206-210, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬による新たな治療戦略を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、イヌの腫瘍疾患やウシの感染症における新規制御法の確立をめざして、COX-2阻害薬による免疫活性化効果と、抗PD-L1抗体との併用による効果の増強をin vitro試験にて確認した。本発明は、この知見により完成されたものである。
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)COX-2阻害薬を含み、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に投与する、医薬組成物。
(2)PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬が抗体である(1)記載の医薬組成物。
(3)抗体が、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体である(1)又は(2)記載の医薬組成物。
(4)COX-2阻害薬が、メロキシカム、ピロキシカム、セレコキシブ、フィロコキシブ、ロベナコキシブ、カルプロフェン、エトドラク
からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である(1)~(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療のための(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6)PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬と、COX-2阻害薬とが別々に投与される(1)~(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬と、COX-2阻害薬とを含む配合剤である(1)~(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)COX-2阻害薬を含む、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬の免疫賦活効果増強剤。
(9)PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に、COX-2阻害薬を医薬的に有効な量で被験者又は被験動物に投与することを含む、がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療方法。
(10)がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療のための、COX-2阻害薬の使用であって、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に、COX-2阻害薬が投与される前記使用。
(11)がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療方法に使用するための、COX-2阻害薬の使用であって、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に、COX-2阻害薬が投与される前記使用。
【発明の効果】
【0007】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬を併用することで、免疫活性化効果が増強される。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2017-140891及び特願2018-016074の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】イヌ腫瘍細胞株 CMeC、LMeC、CMM-1、CMM-2(メラノーマ由来)およびHM-POS(骨肉腫由来)からのPGE2産生。CMM-1およびHM-POSでPGE2産生量が高い傾向にあった。
図2】イヌ腫瘍細胞株 CMeC、LMeC、CMM-1、CMM-2(メラノーマ由来)およびHM-POS(骨肉腫由来)におけるCOX2遺伝子発現量。PGE2産生量に一致してCMM-1およびHM-POSでCOX2遺伝子の発現量が高かった。
図3】イヌ末梢血単核球(PBMC)に対するPGE2の影響。イヌPBMCをスーパー抗原SEBおよび抗CD28抗体存在下で3日間刺激培養し、上清中のIL-2およびIFN-γ濃度をELISA法により定量した。PGE2はイヌPBMCからのIL-2およびIFN-γ産生を抑制した。
図4】イヌ腫瘍細胞株に対するCOX-2阻害薬のPGE2産生抑制効果。Meloxicamはイヌ腫瘍細胞株CMM-1(メラノーマ由来)およびHM-POS(骨肉腫由来)から産生されるPGE2量を低下させる傾向にあった。
図5】イヌPBMCに対するCOX-2阻害薬のPGE2産生抑制効果。Meloxicamはスーパー抗原SEBおよび抗CD28抗体存在下で3日間刺激培養したイヌPBMCから産生されるPGE2量を低下させた。
図6】COX-2阻害薬のイヌ免疫担当細胞活性化効果。イヌPBMCをスーパー抗原SEBおよび抗CD28抗体存在下で3日間刺激培養し、上清中のIL-2濃度をELISA法により定量した。MeloxicamはイヌPBMCからのIL-2産生を増加させた。
図7】抗PD-L1抗体およびCOX-2阻害薬の併用によるイヌ免疫担当細胞活性化効果。イヌPBMCをスーパー抗原SEBおよび抗CD28抗体存在下で3日間刺激培養し、上清中のIL-2濃度をELISA法により定量した。抗PD-L1抗体は単独でもイヌPBMCからのIL-2産生を増加させたが、Meloxicamを併用することでさらなるIL-2産生の増加が認められた。
図8】組み換えイヌPD-1に対する組み換えイヌPD-L1結合の阻害。イヌPD-1-IgへのイヌPD-L1-Igの結合をELISAプレート上で検出した。抗体非添加時の吸光度(O.D.)を100%とし、各抗体濃度におけるO.D.を相対値として表した。イヌPD-L1に交差反応を示したラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12; Rat IgG2a (κ) 、5A2; Rat IgG1 (κ) 、および6G7; Rat IgM (κ)のうち、4G12, 6G7両クローンは結合阻害能が高かった。
図9】pDC6ベクターとラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体の模式図。
図10】ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12およびc6G7の発現と精製。非還元条件にてSDS-PAGEを行い、CBB染色によりバンドを可視化した。a:プロテインA精製のみ、b:+ゲル濾過クロマトグラフィー精製。
図11】ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12およびc6G7のPD-1/PD-L1結合阻害活性。
図12】ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12高発現細胞の樹立。
図13】ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12のSDS-PAGE像。ラット抗ウシPD-L1抗体4G12およびラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12を還元条件および非還元条件にて電気泳動し、CBB染色により可視化した。還元条件では50 kDa付近に抗体重鎖、25 kDa付近に抗体軽鎖のバンドが見られた。目的以外のバンドは検出されなかった。
図14】ラット抗ウシPD-L1抗体4G12およびラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12のイヌPD-1/PD-L1結合およびCD80/PD-L1結合阻害活性。ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12およびラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12はイヌPD-1-IgおよびCD80-IgへのPD-L1-Ig結合量を低下させ、キメラ抗体化による結合阻害活性の変化は認められなかった。
図15】ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12によるイヌ免疫担当細胞活性化効果。イヌPBMCを3日間刺激培養し、上清中のIL-2およびIFN-γ濃度をELISA法により定量した。また、刺激培養2日目に培養液中に核酸アナログEdUを添加し、その取り込み量をフローサイトメトリーにより定量した。ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12はイヌPBMCからのIL-2およびIFN-γ産生を増大させ、CD4+およびCD8+リンパ球の増殖を亢進した。
図16】口腔内メラノーマ(A)および未分化肉腫(B)におけるPD-L1の発現。
図17】口腔内メラノーマ罹患犬を対象に行ったラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12投与治療試験における腫瘍のCT画像および外観。(a,d) 治療開始前、(b,e) 治療10週時点、(c,f) 治療34週時点。5回の抗体投与(治療開始後10週)で顕著な抗腫瘍効果が認められ、34週時点ではさらなる腫瘍の縮小が確認された。
図18図17で示した口腔内メラノーマ罹患犬における腫瘍長径の推移。ベースライン長径に比して、30%以上の縮小を部分奏功(PR)とした。
図19】未分化肉腫罹患犬を対象に行ったラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12投与治療試験におけるCT画像。(a,c) 治療開始前、(b,d) 治療3週時点。2回の抗体投与で顕著な腫瘍の縮小が認められた。
図20】口腔内メラノーマ罹患犬(肺転移症例)を対象に行ったラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12投与治療試験におけるCT画像。(a,d,g) 治療開始前、(b,e,h) 治療6週時点、(c,f,i) 治療18週時点。9回の抗体投与により複数の肺転移巣が消失した。
図21】口腔内メラノーマ罹患犬の肺転移発生後の生存率の推移。抗体投与群では、対照群と比べて生存期間が延長された可能性がある。
図22】ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のL鎖可変領域及びH鎖可変領域における、CDR1、CDR2及びCDR3領域を図示する。
図23】PGE2によるウシのT細胞応答への影響。
図24】ウシPBMCにおける免疫関連遺伝子の発現に対するPGE2の影響。
図25】ウシPBMCにおけるPD-L1の発現に対するPGE2の影響。
図26】ウシPBMCにおけるCOX-2阻害剤の免疫活性化効果。
図27】ヨーネ菌感染牛におけるPGE2の動態解析。
図28】ヨーネ菌感染牛における抗原刺激によるPD-L1発現量の変化。
図29】ヨーネ病病変部でのPGE2、EP2およびPD-L1の発現解析。
図30】COX-2阻害剤によるヨーネ菌特異的な免疫応答の活性化効果。
図31】ヨーネ菌感染牛におけるラット抗ウシPD-L1抗体の免疫活性化効果。
図32】COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用によるヨーネ菌特異的な免疫活性化効果。
図33】COX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の併用によるヨーネ菌特異的な免疫活性化効果。
図34】BLV感染牛におけるPGE2の動態解析。
図35】BLV感染牛におけるCOX2およびEP4遺伝子の発現解析。
図36】BLV感染牛における抗原刺激によるPGE2産生量の変化。
図37】BLV感染牛由来PBMC中のBLVプロウイルスに対するPGE2の影響。
図38】BLV感染牛における抗原刺激によるPD-L1発現量の変化。
図39】COX-2阻害剤によるBLV特異的な免疫応答の活性化効果。
図40】BLV感染牛におけるCOX-2阻害剤の抗ウイルス作用。
図41】COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用によるBLV特異的な免疫活性化効果。
図42】COX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の併用によるBLV特異的な免疫活性化効果。
図43】BLV感染牛におけるCOX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の併用による抗ウイルス作用。
図44】Mycoplasma bovis感染牛におけるPGE2の動態解析。
図45】Mycoplasma bovis感染牛における血漿PGE2量と免疫抑制の指標の相関性。
図46】Mycoplasma bovis感染牛におけるCOX2およびEP4遺伝子の発現解析。
図47】Mycoplasma bovis感染牛におけるCOX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用による免疫活性化効果。
図48】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12の アミノ酸配列。ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のL鎖可変領域及びH鎖可変領域における、CDR1、CDR2及びCDR3領域を示し、さらに、ウシIgG1(CH2ドメイン)に変異を加えたアミノ酸(アミノ酸番号および変異:250 E→P, 251 L→V, 252 P→A, 253 G→deletion, 347 A→S, 348 P→S)も示す。
図49】pDC6ベクターとラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12の模式図。
図50】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12の精製純度の確認。
図51】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12の結合特異性。
図52】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12のウシPD-1/PD-L1結合阻害活性(ウシPD-L1発現細胞と可溶性ウシPD-1の結合阻害試験の結果)。
図53】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12のウシPD-1/PD-L1結合阻害活性(ウシPD-1発現細胞と可溶性ウシPD-L1の結合阻害試験の結果)。
図54】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12のBLV抗原に対する応答性(細胞増殖)。
図55】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12のBLV抗原に対する応答性(IFN-γ産生量)。
図56】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12を投与したBLV実験感染牛におけるBLV抗原に対するT細胞の細胞増殖応答。
図57】ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12を投与したBLV実験感染牛におけるBLVプロウイルス量の変化。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、COX-2阻害薬を含み、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に投与する、医薬組成物を提供する。
【0011】
シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)は、プロスタグランジンE2(PGE2)を含むプロスタノイドを生合成する過程に関与する酵素である。恒常的に発現するCOX-1とは対照的に、炎症組織においてサイトカインや増殖因子の刺激によりその発現が誘導される。種々の腫瘍および感染症においてCOX-2の高発現が報告され、腫瘍細胞および感染細胞の増殖や病態の形成に関与していると考えられている。PGE2はレセプターEP2およびEP4を介して特に細胞傷害性T細胞のエフェクター機能を抑制するため、免疫抑制的な腫瘍微小環境を構成する液性因子として近年注目されている。一方でCOX-2阻害薬はPGE2産生を低下させ、免疫細胞にかかる抑制を低減する作用が期待される。マウスモデルにおいては、セレコキシブ等のCOX-2阻害薬とPD-1/PD-L1を標的とする阻害薬の併用において抗腫瘍効果および抗ウイルス効果の増進が認められている。
【0012】
COX-2阻害薬は、COX-2を選択的に阻害する薬であるとよく、メロキシカム、ピロキシカム、セレコキシブ、フィロコキシブ、ロベナコキシブ、カルプロフェン、エトドラクなどを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0013】
PD-1(Programmed cell death-1)は、活性化したT細胞やB細胞に発現する膜タンパク質であり、そのリガンドであるPD-L1は、単球や樹状細胞などの抗原提示細胞、がん等様々な細胞に発現する。PD-1及びPD-L1は、T細胞の活性化を抑制する抑制因子として働く。ある種の癌細胞やウイルス感染細胞は、PD-1のリガンドを発現することにより、T細胞の活性化を抑制し、宿主の免疫監視から逃避している。
【0014】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬としては、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する物質が挙げられ、そのような物質としては、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、核酸(天然型核酸、人工核酸を含む)、低分子有機化合物、無機化合物、細胞抽出物、動植物や土壌などからの抽出物などがありうる。物質は、天然物であっても、合成物であってもよい。好ましいPD-1/PD-L1を標的とする阻害薬は、抗体であり、より好ましくは、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体などの抗体である。抗体は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害活性をもつものであればよく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、ヒト型抗体のいずれであってもよい。それらの抗体の製造方法は公知である。抗体は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、モルモット、イヌ、ウシなど、いずれの生物に由来するものであってもよい。また、本明細書において、抗体とは、Fab、F(ab)’2、ScFv、Diabody、VH、VL、Sc(Fv)2、Bispecific sc(Fv)2、Minibody、scFv-Fc monomer、scFv-Fc dimerなどの低分子化されたものも含む概念である。
【0015】
抗PD-L1抗体としては、(a)QSLLYSENQKDY(配列番号37)のアミノ酸配列を有するCDR1、WATのアミノ酸配列を有するCDR2及びGQYLVYPFT(配列番号38)のアミノ酸配列を有するCDR3を含むL鎖可変領域と、ラット以外の動物の抗体のL鎖定常領域とを有するL鎖と、(b)GYTFTSNF(配列番号39)のアミノ酸配列を有するCDR1、IYPEYGNT(配列番号40)のアミノ酸配列を有するCDR2及びASEEAVISLVY(配列番号41)のアミノ酸配列を有するCDR3を含むH鎖可変領域とラット以外の動物の抗体のH鎖定常領域とを有するH鎖とを含む、抗PD-L1抗体を例示することができる。
【0016】
ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のL鎖可変領域におけるCDR1~3は、ぞれぞれ、QSLLYSENQKDY(配列番号37)のアミノ酸配列からなる領域、WATのアミノ酸配列からなる領域、GQYLVYPFT(配列番号38)のアミノ酸配列からなる領域である(図22参照)。
【0017】
また、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のH鎖可変領域におけるCDR1~3は、ぞれぞれ、GYTFTSNF(配列番号39)のアミノ酸配列からなる領域、IYPEYGNT(配列番号40)のアミノ酸配列からなる領域及びASEEAVISLVY(配列番号41)のアミノ酸配列からなる領域である(図22参照)。
【0018】
QSLLYSENQKDY(配列番号37)のアミノ酸配列、WATのアミノ酸配列及びGQYLVYPFT(配列番号38)のアミノ酸配列、並びに、GYTFTSNF(配列番号39)のアミノ酸配列、IYPEYGNT(配列番号40)のアミノ酸配列及びASEEAVISLVY(配列番号41)のアミノ酸配列においては、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてもよい。
【0019】
上記の抗PD-L1抗体において、L鎖可変領域とH鎖可変領域がラットに由来するとよい。例えば、L鎖可変領域がラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域であり、H鎖可変領域がラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域であるとよい。
【0020】
ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域のアミノ酸配列及びH鎖可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1及び2に示すが、配列番号1及び2のアミノ酸配列においては、1若しくは複数個(例えば、5個以下、多くても10個程度)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてもよく、これらの変異が導入されても、PD-L1抗体のL鎖可変領域又はH鎖可変領域としての機能を有しうる。
【0021】
ラット以外の動物の抗体のL鎖定常領域及びH鎖定常領域は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12と交差反応するPD-L1を産生する動物由来のものであるとよい。
【0022】
抗体のL鎖には、Kappa鎖(カッパ鎖)とLambda鎖(ラムダ鎖)があり、上記の抗PD-L1抗体において、ラット以外の動物の抗体のL鎖定常領域は、Kappa鎖又はLambda鎖のどちらの鎖の定常領域のアミノ酸配列を有するものであってもよいが、存在比率は、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシではLambda鎖の方が高く、マウス、ラット、ヒト、ブタではKappa鎖の方が高い。存在比率の高い鎖の方が好ましいと考えられるので、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシではLambda鎖の定常領域のアミノ酸配列を有することが好ましく、マウス、ラット、ヒト、ブタではKappa鎖の定常領域のアミノ酸配列を有することが好ましい。
【0023】
ラット以外の動物の抗体のH鎖定常領域は、ヒトのIgG4に相当する免疫グロブリンの定常領域のアミノ酸配列を有するとよい。H鎖は、定常領域の違いにより、γ鎖、μ鎖、α鎖、δ鎖、ε鎖に分けられ、この違いによりそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類のクラス(アイソタイプ)の免疫グロブリンが形成される。
【0024】
免疫グロブリンG(IgG)はヒト免疫グロブリンの70-75%を占め、血漿中に最も多い単量体の抗体である。軽鎖2本と重鎖2本の4本鎖構造をもつ。ヒトIgG1、IgG2、IgG4は分子量は約146,000であるが、ヒトIgG3はFab領域とFc領域をつなぐヒンジ部が長く、分子量も170,000と大きい。ヒトIgG1はヒトIgGの65%程度、ヒトIgG2は25%程度、ヒトIgG3は7%程度、ヒトIgG4は3%程度を占める。血管内外に平均して分布する。ヒトIgG1は、エフェクター細胞表面のFcレセプターや補体因子に強い親和性を有するので、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を誘導し、また、補体を活性化して補体依存性細胞傷害活性(CDC)を誘導する。ヒトIgG2とヒトIgG4は、Fcレセプターや補体因子への親和性が低いことから、ADCC活性及びCDC活性が低い。
【0025】
免疫グロブリンM(IgM)はヒト免疫グロブリンの約10%を占める、基本の4本鎖構造が5つ結合した五量体の抗体である。分子量は970,000。通常血中のみに存在し、感染微生物に対して最初に産生され、初期免疫を司る免疫グロブリンである。
【0026】
免疫グロブリンA(IgA)はヒト免疫グロブリンの10-15%を占める。分子量は160,000。分泌型IgAは2つのIgAが結合した二量体の抗体になっている。IgA1は血清、鼻汁、唾液、母乳中に存在し、腸液にはIgA2が多く存在する。
【0027】
免疫グロブリンD(IgD)はヒト免疫グロブリンの1%以下の単量体の抗体である。B細胞表面に存在し、抗体産生の誘導に関与する。
【0028】
免疫グロブリンE(IgE)はヒト免疫グロブリンの0.001%以下と極微量しか存在しない単量体の抗体である。寄生虫に対する免疫反応に関与していると考えられるが、寄生虫の稀な先進国においては、特に気管支喘息やアレルギーに大きく関与している。
【0029】
イヌでは、IgGのH鎖として、IgG-A(ヒトIgG2に相当)、IgG-B(ヒトIgG1に相当)、IgG-C(ヒトIgG3に相当)、IgG-D(ヒトIgG4に相当)の配列が同定されている。上記の抗PD-L1抗体では、ADCC活性、CDC活性をともに持たないIgG H鎖定常領域が好ましい(ヒトではIgG4)。ヒトIgG4に相当する免疫グロブリンの定常領域が同定されていない場合には、ヒトIgG1に相当する免疫グロブリンの当該領域に変異を加えることにより、ADCC活性、CDC活性をともに持たなくなったものを使用するとよい。
【0030】
ウシにおいて、ヒトIgG4に相当する免疫グロブリンの定常領域が同定されていないので、ヒトIgG1に相当する免疫グロブリンの当該領域に変異を加え、これを使用することができる。その一例として、ウシ抗体のH鎖定常領域(IgG1鎖, GenBank: X62916)のCH2ドメインに変異を加えたアミノ酸配列とヌクレオチド配列(コドンを最適化したもの)を、ぞれぞれ、配列番号102及び103に示す。
【0031】
ラット以外の動物がイヌまたはウシであり、イヌ抗体またはウシ抗体のL鎖定常領域が、Lambda鎖の定常領域のアミノ酸配列を有し、かつ、イヌ抗体またはウシ抗体のH鎖定常領域が、ヒトのIgG4に相当する免疫グロブリンの定常領域のアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体がより好ましい。
【0032】
上記の抗PD-L1抗体は、ラット-イヌキメラ抗体、イヌ化抗体、ラット-ウシキメラ抗体、ウシ化抗体を包含するが、動物は、イヌまたはウシに限定されるわけではなく、ヒト、ブタ、サル、マウス、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、水牛、ウサギ、ハムスター、モルモット、ウシ等などを例示することができる。
【0033】
例えば、上記の抗PD-L1抗体は、イヌ抗体のL鎖定常領域が配列番号3のアミノ酸配列を有し、イヌ抗体のH鎖定常領域が配列番号4のアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体、若しくはウシ抗体のL鎖定常領域が配列番号100のアミノ酸配列を有し、ウシ抗体のH鎖定常領域が配列番号102のアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体であるとよい。
【0034】
配列番号3、4、100及び102のアミノ酸配列においては、1若しくは複数個(例えば、5個以下、多くても10個程度)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてもよく、これらの変異が導入されても、抗体のL鎖定常領域又はH鎖定常領域としての機能を有しうる。
【0035】
上記の抗PD-L1抗体は、L鎖2本とH鎖2本の4本鎖構造を持つとよい。
【0036】
上記の抗PD-L1抗体は、以下のようにして製造することができる。同定したラット抗ウシPD-L1抗体の可変領域配列とラット以外の動物(例えば、イヌまたはウシなど)の抗体(好ましくは、ヒトIgG4抗体又はヒトIgG4抗体に相当する抗体)の定常領域配列を含む人工遺伝子を合成し、その人工遺伝子をベクター(例えば、プラスミド)に挿入後、宿主細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳類細胞)に導入し、該宿主細胞を培養することにより、培養物から抗体を採取する。
【0037】
本発明者らが同定したラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域のアミノ酸配列とヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号1及び5に示す。さらに、コドン最適化後のヌクレオチド配列を配列番号15および112に示す。
【0038】
本発明者らが同定したラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域のアミノ酸配列とヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号2及び6に示す。さらに、コドン最適化後のヌクレオチド配列を配列番号16および113に示す。
【0039】
イヌ抗体のL鎖定常領域(Lambda鎖, GenBank: E02824.1)のアミノ酸配列とヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号3及び7に示す。さらに、コドン最適化後のヌクレオチド配列を配列番号17に示す。
【0040】
イヌ抗体のH鎖定常領域(IgG-D鎖, GenBank: AF354267.1)のアミノ酸配列とヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号4及び8に示す。さらに、コドン最適化後のヌクレオチド配列を配列番号18に示す。
【0041】
また、配列番号9は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域とイヌ抗体のL鎖定常領域(Lambda鎖, GenBank: E02824.1)とからなるキメラL鎖のアミノ酸配列を示す。ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域とイヌ抗体のL鎖定常領域(Lambda鎖, GenBank: E02824.1)とからなるキメラL鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後)を配列番号19に示す。
【0042】
配列番号10は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とイヌ抗体のH鎖定常領域(IgG-D鎖, GenBank: AF354267.1)とからなるキメラH鎖のアミノ酸配列を示す。ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とイヌ抗体のH鎖定常領域(IgG-D鎖, GenBank: AF354267.1)とからなるキメラH鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後)を配列番号20に示す。
【0043】
ウシ抗体のL鎖定常領域(Lambda鎖, GenBank: X62917)のアミノ酸配列とヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号100及び101に示す。さらに、コドン最適化後のヌクレオチド配列を配列番号114に示す。
【0044】
ウシ抗体のH鎖定常領域(IgG1鎖, GenBank: X62916を改変)のアミノ酸配列とヌクレオチド配列(コドン最適化後)を、それぞれ、配列番号102及び103に示す。
【0045】
また、配列番号115は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域とウシ抗体のL鎖定常領域(Lambda鎖, GenBank: X62917)とからなるキメラL鎖のアミノ酸配列を示す。ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域とウシ抗体のL鎖定常領域(Lambda鎖, GenBank: X62917)とからなるキメラL鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後)を配列番号117に示す。
【0046】
配列番号116は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とウシ抗体のH鎖定常領域(IgG1鎖, GenBank: X62916を改変)とからなるキメラH鎖のアミノ酸配列を示す。ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とウシ抗体のH鎖定常領域(IgG1鎖, GenBank: X62916を改変)とからなるキメラH鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後)を配列番号118に示す。
【0047】
この他、ラットとイヌ、ウシ以外の動物のL鎖定常領域及びH鎖定常領域のアミノ酸配列とヌクレオチド配列は、公知のデータベースから入手することができ、これらの配列を利用することができる。
【0048】
イヌ、ヒツジ、ブタ、スイギュウ、ヒト、ウシのL鎖定常領域及びH鎖定常領域のアミノ酸配列とヌクレオチド配列を下記の表にまとめた。
(表)







(ブタ続き)












ヒトIgG1の定常領域は野生型ではADCC活性およびCDC活性を持つが、特定の部分にアミノ酸置換や欠損を加えることにより、それらの活性を低下させられることが知られている。ヒト以外の動物において、ヒトIgG4に相当する免疫グロブリンの定常領域が同定されていない場合、ヒトIgG1に相当する免疫グロブリンの当該領域に変異を加え、ADCC活性およびCDC活性を低下させたものを使用することができる。
【0049】
配列番号4、3、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、12、80、82、84~91、100、102及び11のアミノ酸配列においては、1若しくは複数個(例えば、5個以下、多くても10個程度)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてもよい。
【0050】
本発明の医薬組成物は、がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療に用いることができる。がん及び/又は感染症としては、腫瘍性疾患(例えば、悪性黒色腫、肺がん、胃がん、腎臓がん、乳がん、膀胱がん、食道がん、卵巣がん等)、白血病、ヨーネ病、アナプラズマ病、細菌性乳房炎、真菌性乳房炎、マイコプラズマ感染症(例えば、マイコプラズマ性乳房炎、マイコプラズマ性肺炎など)、結核、小型ピロプラズマ病、クリプトスポリジウム症、コクシジウム症、トリパノソーマ病及びリーシュマニア症などを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
本発明の医薬組成物は、COX-2阻害薬を含み、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に投与される。
【0052】
本発明の医薬組成物において、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬と、COX-2阻害薬とを併用あるいは合剤化することができる。
【0053】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬とを併用する場合、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬とは別々に投与されるとよい。
【0054】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬とを合剤化する場合、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬とを含む配合剤とするとよい。
【0055】
本発明の医薬組成物は、全身又は局所的に、経口又は非経口で被験者又は被験動物に投与される。
【0056】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬は、PBSなどの緩衝液、生理食塩水、滅菌水などに溶解し、必要に応じてフィルターなどで濾過滅菌した後、注射により被験動物(ヒトも含む)に投与するとよい。また、この溶液には、添加剤(例えば、着色剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、溶解補助剤、安定化剤、保存剤、酸化防止剤、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤など)などを添加してもよい。投与経路としては、静脈、筋肉、腹腔、皮下、皮内投与などが可能であり、また、経鼻、経口投与してもよい。
【0057】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬の製剤中における含量は、製剤の種類により異なるが、通常1~100 重量%、好ましくは50~100 重量%である。製剤は、単位投与製剤に製剤化するとよい。
【0058】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬(例えば、PD-L1抗体)の投与量、投与の回数及び頻度は、被験動物又は被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、通常、成獣又は成人一匹当たり0.1~100 mg/kg体重、好ましくは、1~10 mg/kg体重を、少なくとも1回、所望の効果が得られる頻度で投与するとよい。
【0059】
COX-2阻害薬は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を含む製剤に含有させてもよいが、単独で、あるいは賦形剤または担体と混合し、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、シロップ、エアロゾル、坐剤、注射剤等に製剤化してもよい。賦形剤または担体は、当分野で常套的に使用され、医薬的に許容されるものであればよく、その種類及び組成は適宜変更される。例えば、液状担体としては水、植物油などが用いられる。固体担体としては、乳糖、白糖、ブドウ糖などの糖類、バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなどのデンプン、結晶セルロースなどのセルロース誘導体などが使用される。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースなどの崩壊剤等を添加してもよい。その他、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、保存剤等を添加してもよい。
【0060】
COX-2阻害薬は、経口、経鼻、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内などの種々の経路によって投与できる。
【0061】
COX-2阻害薬の製剤中における含量は、製剤の種類により異なるが、通常1~100 重量%、好ましくは50~100 重量%である。例えば、液剤の場合にはCOX-2阻害薬の製剤中における含量は、1~100重量%が好ましい。カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤の場合は、COX-2阻害薬の製剤中における含量は、通常約10~100 重量%、好ましくは50~100 重量%であり、残部は担体である。製剤は、単位投与製剤に製剤化するとよい。
【0062】
COX-2阻害薬の投与量、投与の回数及び頻度は、被験動物又は被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、通常、成獣又は成人一人当たり、有効成分の量に換算して、0.05~20 mg/kg体重程度を少なくとも1回、所望の効果が確認できる頻度で投与するとよい。
【0063】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬の比率(質量)は、1:100~1000:1程度が適当であり、好ましくは1:10~100:1である。
【0064】
本発明は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に、COX-2阻害薬を医薬的に有効な量で被験者又は被験動物に投与することを含む、がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療方法を提供する。
【0065】
また、本発明は、がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療のための、COX-2阻害薬の使用であって、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に、COX-2阻害薬が投与される前記使用を提供する。
【0066】
さらに、本発明は、がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療方法に使用するための、COX-2阻害薬の使用であって、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬を投与する前、後又は同時のいずれかの時期に、COX-2阻害薬が投与される前記使用を提供する。
【0067】
PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬をCOX-2阻害薬と併用することで、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬の免疫賦活効果が増強される。よって、本発明は、COX-2阻害薬を含む、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬の免疫賦活効果増強剤を提供する。
【0068】
本発明の薬剤は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬との併用薬又は配合剤として用いることができる。PD-1/PD-L1を標的とする阻害薬とCOX-2阻害薬との併用及び合剤化については、上述した。本発明の薬剤は、医薬としての用途の他、実験試薬としても利用できる。
【実施例
【0069】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
イヌにおける抗PD-L1抗体とCOX-2阻害薬との併用効果の検討
1.序論
PD-1とPD-L1の相互作用は腫瘍が免疫応答を回避する主要な分子機構の一つであり、これらの分子に特異的に結合する抗体を用いて相互作用を阻害することで抗腫瘍効果が得られることが報告されている。本実施例では、イヌの腫瘍疾患における新規制御法の確立をめざして、COX-2阻害薬による免疫活性化効果と、抗PD-L1抗体との併用による効果の増強をin vitro試験にて確認した。
【0070】
2.材料および方法、実験結果
2.1. イヌ腫瘍細胞株からのPGE2産生
イヌのメラノーマ由来株化細胞CMeCおよびLMeC (Ohashi E, Inoue K, Kagechika H, Hong SH, Nakagawa T, et al: Effect of natural and synthetic retinoids on the proliferation and differentiation of three canine melanoma cell lines. J Vet Med Sci 64: 169-172, 2002.)、CMM-1およびCMM-2 (Ohashi E, Hong SH, Takahashi T, Nakagawa T, Mochizuki M, et al.: Effect of retinoids on growth inhibition of two canine melanoma cell lines. J Vet Med Sci 63: 83-86, 2001.) は、2メルカプトエタノール2×10-5 M、10% 非働化牛胎仔血清 (Valley Biomedical社)、抗生物質 (ストレプトマイシン100 μg/ml、ペニシリン100 U/ml) (Invitrogen社)、2 mM L-グルタミン (Invitrogen社) を添加したRPMI 1640培地 (Sigma社) にて37℃、5% CO2存在下で培養した。イヌ骨肉腫由来株化細胞HM-POS (Barroga EF, Kadosawa T, Okumura M, Fujinaga T : Establishment and characterization of the growth and pulmonary metastasis of a highly lung metastasizing cell line from canine osteosarcoma in nude mice. J Vet Med Sci 61: 361-367, 1999.) は、10% 非働化牛胎仔血清 (Valley Biomedical社)、抗生物質 (ストレプトマイシン100 μg/ml、ペニシリン100 U/ml) (Invitrogen社)、2 mM L-グルタミン (Invitrogen社) を添加したDulbecco’s Modified Eagle Medium (D-MEM; Invitrogen社) にて37℃、5% CO2存在下で培養した。5×105/mLに調製した細胞を24時間培養した後、培養上清中のPGE2量をProstaglandin E2 Express EIA Kit (Cayman Chemical社)を用いて定量したところ、CMM-1およびHM-POSにおいてPGE2の産生が高い傾向にあった(図1)。
【0071】
2.2. イヌ腫瘍細胞株におけるCOX2遺伝子発現
材料および方法2.1に記載の方法に従って培養したイヌの腫瘍由来細胞株から、TRI reagent (Molecular Research Center社) を用いてRNAを抽出し、NanoDrop8000 (Thermo Scientific社) により濃度を計測した。実験に供するまでRNA試料は-80℃に保存した。
【0072】
上記RNA 1 μgを用いて、DNase I Reaction buffer, 1 U DNase I Amplification Grade (Invitrogen社) を加え、deionized distilled waterにより10 μlとして、室温で15分DNase I 処理を行った。次に25 nmol エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) を混和し、65℃で10分間処理した。これに200 pmol oligo-dTプライマーを添加し、65℃で5分間処理した後、逆転写反応液(PrimeScript Buffer;TaKaRa社、7.5 nmol dNTPs、20 U RNase Plus RNase inhibitor;Promega社、100 U PrimeScript RTase;TaKaRa社)を加え、最終容量20 μlとして、42℃にて60分間逆転写反応を行い、一本鎖cDNAを合成した。

The National Center for Biotechnology Information (NCBI) に登録されているイヌのCOX2の塩基配列 (NM_001003354.1) およびHPRT1の塩基配列 (AY283372.1) からプライマー (canine COX2 rt Fおよびcanine COX2 rt R、canine HPRT1 rt Fおよびcanine HPRT1 rt R) を設計し、Real-Time PCR法を行った。腫瘍由来細胞株cDNA 1 μlを鋳型として、10 pmol/μlに調製したプライマーcanine COX2 rt Fおよびcanine COX2 rt R、あるいはcanine HPRT1 rt Fおよびcanine HPRT1 rt Rを各0.3 μl、SYBR Premix DimerEraser (TaKaRa社) 5μl、DDW 3.4 μlを含むPCR反応液中で以下の条件下でReal-Time PCR(LightCycler480 System II; Roche社)を行った。
プライマー (canine COX2 rt F) : AAGCTTCGATTGACCAGAGCAG(配列番号108)
プライマー (canine COX2 rt R) : TCACCATAAAGGGCCTCCAAC(配列番号109)
プライマー (canine HPRT1 rt F) : TGGCGTCGTGATTAGTGATGA(配列番号110)
プライマー (canine HPRT1 rt R) : CAGAGGGCTACGATGTGATGG(配列番号111)

(PCR反応条件)
1. Pre incubation 95℃ 30秒
2. Quantification 下記の3ステップを50サイクル
I. 熱変性 95℃ 5秒間
II. アニーリング 58℃ 30秒間
III. 伸長反応 72℃ 30秒間
3. Melting curve
I. 95℃ 1秒間
II. 65℃ 15秒間
III. 95℃ continue
4. Cooling 40℃

得られたCOX2 mRNA発現量を内部標準遺伝子HPRT1 mRNA発現量で除した値をCOX2遺伝子発現量としたところ、培養上清中のPGE2産生量の結果と一致してCMM-1およびHM-POSでCOX2の遺伝子発現量が高かった(図2、Tukeyの多重比較検定、P < 0.05)。
【0073】
2.3. イヌ末梢血単核球からのサイトカイン産生におけるPGE2の影響
健康なビーグルおよび雑種犬より採血したヘパリン加イヌ末梢血から、Percoll (GE Healthcare社) を用いて密度勾配遠心分離法により末梢血単核球 (PBMC)を分離した。得られたPBMC は、10% 非働化牛胎仔血清 (Valley Biomedical社)、抗生物質 (ストレプトマイシン100 μg/ml、ペニシリン100 U/ml) (Invitrogen社)、2 mM L-グルタミン (Invitrogen社) を添加したRPMI 1640培地 (Sigma社) に、Staphylococcal Enterotoxin B (SEB) (Sigma社) 5 μg/mlおよびAnti-Canine CD28 (eBioscience社) 1 μg/mlを添加して、37℃、5% CO2存在下で3日間培養した。Prostaglandin E2 (Cayman Chemical社) を終濃度2.5 μMにて添加した場合の培養上清中へのインターロイキン2(IL-2)およびインターフェロンγ(IFN-γ)産生量をCanine IL-2 DuoSet ELISA (R&D systems社) およびCanine IFN-gamma DuoSet ELISA (R&D systems社) を用いて測定した。PGE2はイヌPBMCからのIL-2およびIFN-γ産生量を有意に低下させた(図3、Wilcoxonの符号付順位和検定、P < 0.01およびP < 0.05)。
【0074】
2.4. COX-2阻害薬のPGE2産生抑制効果
イヌ腫瘍細胞株CMM-1およびHM-POSを、材料と方法2.1に記載の方法に従って培養し、Meloxicam (Sigma社) を終濃度5 μMとなるように添加した。各腫瘍細胞株からのPGE2産生量をEIA法により定量したところ、Meloxicam添加によりPGE2産生量が低下する傾向にあった(図4)。また、イヌPBMCを材料と方法2.3に記載の方法に従って培養し、Meloxicam (Sigma社) を終濃度5 μMとなるように添加したところ、PBMCからのPGE2産生量が有意に低下した(図5、Wilcoxonの符号付順位和検定、P < 0.05)。
【0075】
2.5. イヌ末梢血単核球からのサイトカイン産生におけるCOX-2阻害薬の影響
イヌPBMCを材料と方法2.3に記載の方法に従って培養し、Meloxicam (Sigma社) を終濃度5 μMとなるように添加し、培養上清中のIL-2濃度をELISA法により定量した。Meloxicam添加によりイヌPBMCからのIL-2産生量が有意に増加した(図6、Wilcoxonの符号付順位和検定、P < 0.01)。
【0076】
2.6. 抗PD-L1抗体とCOX-2阻害薬併用によるイヌPBMC活性化効果の増強
イヌPBMCを材料と方法2.3に記載の方法に従って培養し、ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12(Maekawa et al., 2017, data in submission、後述の参考例1)を終濃度20 μg/mL、並びにMeloxicam (Sigma社) を終濃度5 μMとなるように添加し、培養上清中のIL-2濃度をELISA法により定量した。抗PD-L1抗体単独でもIL-2産生量が増加したが、Meloxicamを併用することでさらなるIL-2産生量の増大を認めた(図7、Steel-Dwass検定、P < 0.05)。
【0077】
〔参考例1〕
ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体
1.序論
免疫抑制受容体Programmed death 1 (PD-1) とそのリガンドであるProgrammed death ligand 1 (PD-L1)は過剰な免疫応答を抑制し、免疫寛容に深く関連している因子として京都大学、本庶 佑氏らによって同定された分子である。腫瘍における免疫抑制に関与していることも近年明らかにされている。本実施例では、イヌ腫瘍疾患に対する新規治療法の樹立を目的にイヌPD-1およびPD-L1の結合を阻害可能なラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体(4G12)の可変領域遺伝子と、イヌ免疫グロブリン(IgG4)の定常領域遺伝子を組み合わせたキメラ抗体遺伝子を発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovary cell:CHO細胞)を培養増殖させて得たラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12を作製し、in vitro及びin vivoの効果を確認した。
【0078】
2.材料および方法、実験結果
2.1ウシPD-L1モノクローナル抗体産生細胞
ウシPD-L1遺伝子配列を同定し(Ikebuchi R, Konnai S, Shirai T, Sunden Y, Murata S, Onuma M, Ohashi K.Vet Res. 2011 Sep 26;42:103.)、その遺伝子情報より組換えウシPD-L1を作製した。同組換えタンパク質をラットに免疫しラット抗ウシPD-L1抗体を得た(Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K.Immunology. 2014 Aug;142(4):551-61.この論文に後にイヌキメラ抗体の可変領域となるクローン4G12が掲載されている)。
【0079】
2.2完全長イヌPD-1およびPD-L1遺伝子の同定
イヌPD-1およびPD-L1 cDNA全長を決定するために、まずThe National Center for Biotechnology Information (NCBI) に既に登録されているイヌのPD-1およびPD-L1の予想塩基配列 (GenBank accession number; XM_543338およびXM_541302) から遺伝子のオープンリーディングフレーム (ORF) 内部を増幅するようにプライマー (cPD-1 inner FおよびR、cPD-L1 inner FおよびR) を設計しPCR法を行った。得られた増幅産物について、常法に従いキャピラリーシーケンサーにより塩基配列を決定した。さらに完全長PD-1およびPD-L1 cDNAの塩基配列を決定するために、上記で決定したイヌPD-1およびPD-L1 cDNA配列を基にプライマー(cPD-1 5´GSPおよび3´GSP、cPD-L1 5´GSPおよび3´GSP)を設計し、それぞれ5´ RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends および3´ RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends (Invitrogen社) を用いて5´および3´RACE法を行った。5´および3´RACE法により得られた目的とする遺伝子断片は上記の方法にしたがって塩基配列を決定した (Maekawa N, Konnai S, Ikebuchi R, Okagawa T, Adachi M, Takagi S, Kagawa Y, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. PLoS One. 2014 Jun 10;9(6):e98415. )。
プライマー(cPD-1 inner F):AGGATGGCTCCTAGACTCCC(配列番号21)
プライマー(cPD-1 inner R):AGACGATGGTGGCATACTCG(配列番号22)
プライマー(cPD-L1 inner F):ATGAGAATGTTTAGTGTCTT(配列番号23)
プライマー(cPD-L1 inner R):TTATGTCTCTTCAAATTGTATATC(配列番号24)
プライマー(cPD-1 5´GSP):GTTGATCTGTGTGTTG(配列番号25)
プライマー(cPD-1 3´GSP): CGGGACTTCCACATGAGCAT(配列番号26)
プライマー(cPD-L1 5´GSP):TTTTAGACAGAAAGTGA(配列番号27)
プライマー(cPD-L1 3´GSP):GACCAGCTCTTCTTGGGGAA(配列番号28)
【0080】
2.3 イヌPD-1およびPD-L1発現COS-7細胞の構築
イヌPD-1-EGFPおよびPD-L1-EGFP発現プラスミドを作製するため、合成したビーグルPBMC由来cDNAを鋳型に、5´末端側に制限酵素XhoIおよびBamHI (PD-1)、BglIIおよびEcoRI (PD-L1) 認識部位を付加して設計したプライマー(cPD-1-EGFP FおよびR、cPD-L1-EGFP FおよびR)を用いてPCRを行った。得られたPCR産物をXhoI (Takara社) およびBamHI (Takara社) (PD-1) 、BglII (New England Biolabs社) およびEcoRI (Takara社) (PD-L1) により処理した後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit (NIPPON Genetics社) を用いて精製し、同様の制限酵素処理を行ったpEGFP-N2 vector (Clontech社) を用いてクローニングを行った。得られた目的の発現プラスミドはQIAGEN Plasmid Midi kit (Qiagen社) を用いて抽出し、実験に供するまで-30℃で保存した。以降、作製した発現プラスミドをpEGFP-N2-cPD-1あるいはpEGFP-N2-cPD-L1と表記した。
プライマー(cPD-1-EGFP F): CCGCTCGAGATGGGGAGCCGGCGGGGGCC(配列番号29)
プライマー(cPD-1-EGFP R): CGCGGATCCTGAGGGGCCACAGGCCGGGTC(配列番号30)
プライマー(cPD-L1-EGFP F):GAAGATCTATGAGAATGTTTAGTGTC(配列番号31)
プライマー(cPD-L1-EGFP R):GGAATTCTGTCTCTTCAAATTGTATATC(配列番号32)
5×104/cm2のCOS-7細胞を6穴プレートに継代し、10% 非働化牛胎仔血清、0.01% L-グルタミンを含むRPMI 1640培地にて37°C、5% CO2存在下で一晩培養した。pEGFP-N2-cPD-1、pEGFP-N2-cPD-L1、あるいは陰性対照としてpEGFP-N2 0.4 μg/cm2をLipofectamine 2000 試薬 (Invitrogen社) を用いて、COS-7細胞にそれぞれ導入し48時間培養した (cPD-1-EGFP発現細胞およびcPD-L1-EGFP発現細胞)。作製した発現細胞におけるイヌPD-1およびPD-L1の発現を確かめるために、倒立型共焦点レーザー顕微鏡 LSM700 (ZEISS社) により、Enhanced green fluorescent protein (EGFP) の細胞内局在を可視化した(Maekawa N, Konnai S, Ikebuchi R, Okagawa T, Adachi M, Takagi S, Kagawa Y, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. PLoS One. 2014 Jun 10;9(6):e98415.)。
【0081】
2.4 組換えイヌPD-1、PD-L1およびCD80の構築
イヌPD-1、PD-L1およびCD80の予想アミノ酸配列より推定された細胞外領域を増幅するように5´末端側にNheIあるいはEcoRV(PD-1およびPD-L1)の認識配列を付加したプライマー(cPD-1-Ig FおよびR、cPD-L1-Ig FおよびR)、または5´末端側にEcoRVあるいはKpnI(CD80)の認識配列を付加したプライマー(cCD80-Ig FおよびR)を設計した。合成したビーグルPBMC由来cDNAを鋳型にPCRを行い、PCR産物をNheI (Takara社) およびEcoRV (Takara社)、またはEcoRV (Takara社)およびKpnI (New England Biolabs社)によって処理した後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit (NIPPON Genetics社) を用いて精製し、同様の制限酵素処理を行ったpCXN2.1-Rabbit IgG Fc vector (Niwa et al., 1991; Zettlmeissl et al.,1990; 順天堂大学大学院医学研究科教授 横溝 岳彦 先生より分与されたものを当研究室で改変) を用いて、クローニングを行った。発現プラスミドはQIAGEN Plasmid Midi kit (Qiagen社) によって精製し、実験に供するまで-30°Cにて保存した。以降、作製した発現プラスミドをそれぞれpCXN2.1-cPD-1-Ig、pCXN2.1-cPD-L1-IgあるいはpCXN2.1-cCD80-Igと表記した。
プライマー(cPD-1-Ig F): CGCGGCTAGCATGGGGAGCCGGCGGGGGCC(配列番号33)
プライマー(cPD-1-Ig R): CGCGGATATCCAGCCCCTGCAACTGGCCGC(配列番号34)
プライマー(cPD-L1-Ig F):CGCGGCTAGCATGAGAATGTTTAGTGTCTT(配列番号35)
プライマー(cPD-L1-Ig R):CGCGGATATCAGTCCTCTCACTTGCTGGAA(配列番号36)
プライマー(cCD80-Ig F):CGCGGATATCATGGATTACACAGCGAAGTG(配列番号104)
プライマー(cCD80-Ig R):CGGGGTACCCCAGAGCTGTTGCTGGTTAT(配列番号105)
【0082】
これらの発現ベクターをExpi293F細胞(Life Technologies社)へトランスフェクションし、組み換えIg融合タンパク質を含む培養上清を得た。産生した組み換えタンパク質は上清よりAb Capcher Extra(プロテインA変異体、ProteNova社)を用いて精製を行い、PD-MidiTrap G-25 (GE Healthcare社) を用いてバッファーをリン酸緩衝生理食塩水 (PBS; pH 7.4) に置換し、実験に供するまで-30°Cにて保存した (cPD-1-I、cPD-L1-IgおよびcCD80-Ig)。タンパク質の濃度はPierce BCA Protein Assay Kit (Thermo Fisher Scientific社)により定量し、以後の実験に用いた。
【0083】
2.5 イヌPD-L1に交差反応を示すラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体の同定
イヌPD-L1に交差反応を示すラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体を同定するため、2.1で作製した抗ウシPD-L1抗体を用いてフローサイトメトリーを行った。2×105-1×106個の細胞に対し、10 μg/mlの抗ウシPD-L1抗体を室温で30分間反応させ、洗浄した後にAllophycocyanine標識抗ラットIgヤギ抗体 (Beckman Coulter社) を用いて抗ウシPD-L1抗体の検出を行った。解析にはFACS Verse (Becton, Dickinson and Company社) を用いた。陰性対照抗体として、ラットIgG2a (κ) アイソタイプコントロール (BD Biosciences社) 、ラットIgG1 (κ) アイソタイプコントロール (BD Biosciences社) 、ラットIgM (κ) アイソタイプコントロール (BD Biosciences社) を使用した。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には、10% 非働化ヤギ血清加PBSを使用した(Maekawa N, Konnai S, Ikebuchi R, Okagawa T, Adachi M, Takagi S, Kagawa Y, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. PLoS One. 2014 Jun 10;9(6):e98415. ウシPD-L1モノクローナル抗体3種:4G12; Rat IgG2a (κ) 、5A2; Rat IgG1 (κ) 、および6G7; Rat IgM (κ)を使用した論文)。
【0084】
2.6 ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体樹立のための可変部位の選定試験
以下、イヌPD-L1に交差反応を示したラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体10クローンのうち4G12; Rat IgG2a (κ) 、5A2; Rat IgG1 (κ) 、および6G7; Rat IgM (κ)を選抜し、これらの抗体がイヌPD-1/PD-L1結合を阻害するか検討した。すなわち、イヌPD-1-Ig(2.4で作製)を平底96穴プレート上に固層化し、1% BSAおよび0.05% Tween20を含むPBSにてブロッキング操作を行った。Lightning-Link Biotin Conjugation Kit (Innova Biosciences社) を用いてビオチン化したイヌPD-L1-Ig(2.4で作製)を、各濃度 (0、2.5、5、10 μg/ml) のラット抗ウシPD-L1抗体4G12、5A2および 6G7と37°Cで30分間反応させた後、プレートに添加し、cPD-L1-IgのcPD-1-Igに対する結合をNeutravidin-HRP (Thermo Fisher Scientific社) および TMB one component substrate (Bethyl Laboratories社)を用いた発色反応により定量した。ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12および6G7は良好なイヌPD-1/PD-L1結合阻害活性を示したが、5A2は結合阻害活性を持たなかった。(図8
【0085】
2.7 ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体発現ベクターの作製(図9)
以下、2.6の選定試験によってイヌPD-1/PD-L1結合に対し良好な阻害活性を示した(図8)ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体:4G12および6G7をラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体の可変部とし、2種類のラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体を樹立した。
ラット抗ウシPD-L1抗体4G12および6G7を産生するハイブリドーマより可変領域(重鎖および軽鎖)遺伝子を同定した。さらに、当該ラット抗体重鎖および軽鎖可変領域配列を既知のイヌ抗体の重鎖IgG4の定常領域および軽鎖ラムダ鎖の定常領域と結合させた遺伝子配列を作成し、コドン最適化を行ったのち(配列番号9及び10(アミノ酸配列)、配列番号19及び20(コドン最適化後ヌクレオチド配列))、NotI制限酵素認識配列、KOZAK配列、キメラ抗体軽鎖配列、ポリA付加シグナル配列(PABGH)、プロモーター配列(PCMV)、SacI制限酵素認識配列、イントロン配列(INRBG)、KOZAK配列、キメラ抗体重鎖配列、XbaI制限酵素認識配列を上記の順で配置するように遺伝子合成を行った。合成した遺伝子鎖を、発現用ベクターpDC6(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 鈴木 定彦 教授より分与)のクローニングサイト(PCMV下流、INRBGとPABGHの間にあるNotIおよびXbaI制限酵素認識配列)へ制限酵素認識配列を利用して上記の順で配置するように組み込み(図9)、ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体発現ベクターを構築した。この発現ベクターをExpi293F細胞(Life Technologies社)へトランスフェクションし、キメラ抗体を含む培養上清を得た。上清よりAb Capcher Extra(プロテインA変異体、ProteNova社)を用いて精製を行い、さらにゲル濾過クロマトグラフィーにより精製を行った。10%アクリルアミドゲルを用いて非還元条件下にてSDS-PAGEを行い、Quick-CBB kit(和光純薬工業社)により染色を行った後、蒸留水中で脱色を行った。プロテインA精製のみでは夾雑タンパク質が認められたが、ゲル濾過クロマトグラフィー精製をすることで純度の高い精製抗体を得た(図10)。得られた精製抗体はフローサイトメトリーを用いてイヌPD-L1発現細胞に特異的に結合することを確認した(データは示さず)。該キメラ抗体2種のイヌPD-1/PD-L1結合阻害活性を2.6に示した方法により検討した結果、ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12は元となったラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12と同様の結合阻害活性を示したが、ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c6G7では結合阻害能が明らかに減弱した(図11)。よって治療用抗体としてラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12の可変領域配列(配列番号2及び1(アミノ酸配列)、配列番号16及び15(コドン最適化後ヌクレオチド配列))を組込んだラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12を選定した。c4G12のL鎖のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列(コドン最適化後)を配列番号9及び19に、H鎖のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列(コドン最適化後)を配列番号10及び20に示す。
【0086】
2.8 ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12の発現
2.7で使用したラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12発現pDC6ベクターをジヒドロ葉酸還元酵素欠損細胞であるCHO-DG44細胞(CHO-DG44(dfhr-/-))へトランスフェクションし、高発現クローンをドットブロット法により選抜した。さらに60 nMのメトトレキサート(Mtx)を含む培地で負荷をかけることにより遺伝子増幅処理を行った。遺伝子増幅終了後のラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12安定発現細胞(クローン名:4.3F1)を、Mtxを含まないOpti-CHO培地へ移し、14日間の振盪培養を行った(125 rpm, 37℃, 5% CO2)。トリパンブルー染色により細胞生存率を算出した(図12)。ELISA法により培養上清中のキメラ抗体産生量を定量した(図12)。14日目の培養上清を10,000 gで10分間遠心し、細胞を除いた後、0.22 μmのフィルターを通し、抗体の精製ステップに進んだ。
なお、培地をDynamis培地に替え、適切なFeedを行うことで、抗体産生量が従来のおよそ2倍に向上した(データは示さず)。
【0087】
2.9.ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12の精製
上記の方法により準備した培養上清は、Ab Capcher Extra(ProteNova社)を用いて精製した。レジンへの結合はオープンカラム法を用い、平衡化バッファーおよび洗浄バッファーとしてPBS pH7.4を使用した。溶出バッファーにはIgG Elution Buffer(Thermo Scientific社)を、中和バッファーには1M Trisを使用した。精製した抗体はAmicon Ultra-15 (50 kDa、Millipore社)を用いて限外濾過法により濃縮と、PBSへのバッファー置換を行った。0.22 μmのフィルターを通し、各実験に使用した。
【0088】
2.10. ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12の精製の確認(図13)
精製した抗体の純度を確かめるため、SDS-PAGEおよびCBB染色により抗体タンパク質の検出を行った。SuperSep Ace 5-20%(Wako社)グラジエントゲルを用い、ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12およびラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12を還元条件下および非還元条件下にて電気泳動した。Quick-CBB kit(和光純薬工業社)により染色を行った後、蒸留水中で脱色を行った。抗体に相当する分子量の位置にバンドが見られ、夾雑タンパク質のバンドは視認されなかった。
【0089】
2.11. ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12およびラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12のcPD-L1-Hisに対する結合親和性の測定
イヌPD-L1の予想アミノ酸配列より推定された細胞外領域を増幅するように5´末端側にNheI認識配列を付加したプライマー(cPD-L1-His F)と、5´末端側にEcoRV認識配列および6xHisタグ配列を付加したプライマー(cPD-L1-His R)を設計した。合成したビーグルPBMC由来cDNAを鋳型にPCRを行い、PCR産物をNheI (Takara社) およびEcoRV (Takara社)によって処理した後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit (NIPPON Genetics社) を用いて精製し、同様の制限酵素処理を行ったpCXN2.1 vector (Niwa et al., 1991; 順天堂大学大学院医学研究科教授 横溝 岳彦 先生より分与) を用いて、クローニングを行った。発現プラスミドはQIAGEN Plasmid Midi kit (Qiagen社) によって精製し、実験に供するまで-30°Cにて保存した。以降、作製した発現プラスミドをpCXN2.1-cPD-L1-Hisと表記した。
プライマー(cPD-L1-His F):CGCGGCTAGCATGAGAATGTTTAGTGTCTT(配列番号106)
プライマー(cPD-L1-His R):CGCGGATATCTTAATGGTGATGGTGATGGTGAGTCCTCTCACTTGCTGG(配列番号107)
【0090】
発現ベクターをExpi293F細胞(Life Technologies社)へトランスフェクションし、組み換えタンパク質を含む培養上清を得た。産生した組み換えタンパク質は上清よりTALON Metal Affinity Resin (Clontech社)を用いて精製を行い、Amicon Ultra-4 Ultracel-3 (Merck Millipore社)を用いてバッファーをPBSに置換し、実験に供するまで4 °Cにて保存した (cPD-L1-His)。タンパク質の濃度はPierce BCA Protein Assay Kit (Thermo Fisher Scientific社)により定量し、以後の実験に用いた。
【0091】
生体分子相互作用測定器(Biacore X100)を用いて、ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体4G12およびラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12のcPD-L1-Hisに対する結合親和性(Avidity)を評価した。すなわち、抗ヒスチジン抗体をCM5センサーチップに固定し、cPD-L1-Hisをキャプチャした後に、モノクローナル抗体をアナライトとして添加することで特異的結合を観察した。両抗体とも特異的結合を示し、Avidityはほぼ同等であった(表1)。また、同様にcPD-L1-Hisに対するイヌPD-1-IgおよびCD80-IgのAvidityを測定したところ、ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12と比べ明らかに結合親和性が低かった(表1)。
【0092】
表1.各抗体および組み換えタンパク質のイヌPD-L1-Hisに対する結合親和性
【0093】
2.12.ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12のイヌPD-1/PD-L1結合およびCD80/PD-L1結合阻害活性(図14)
イヌPD-1-Ig、PD-L1-IgおよびCD80-Ig(前述)を用いて、抗PD-L1抗体によるイヌPD-1/PD-L1結合およびCD80/PD-L1結合阻害試験を行った。イヌPD-1-IgあるいはCD80-Igを平底96穴プレート上に固層化し、2.6で行った手順に従い各濃度 (0、2.5、5、10 μg/ml) のラット抗ウシPD-L1抗体4G12あるいはラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12と反応させたイヌPD-L1-Igの結合量を評価した。キメラ抗体化による結合阻害活性の変化は認められなかった。
【0094】
2.13. ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12のイヌ免疫担当細胞活性化効果(図15
イヌPBMCをスーパー抗原であるStaphylococcal Enterotoxin B(SEB)刺激化で3日間培養し、ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12の添加によるサイトカイン産生量の変化をDuoset ELISA canine IL-2 or IFN-γ (R&D systems社)を用いて ELISA法により定量した。ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12はイヌPBMCからのIL-2およびIFN-γ産生量を増大させた。また同様に、SEB刺激2日目の培養液中に核酸アナログであるEdUを添加し2時間培養後、その取り込みをClick-iT Plus EdU flow cytometry assay kit (Life Technologies社)を用いてフローサイトメトリーにより定量したところ、イヌCD4+またはCD8+リンパ球におけるEdU取り込みがラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12添加により亢進し、細胞増殖能の上昇が認められた。
【0095】
2.14. イヌへの接種試験に用いる腫瘍罹患犬の選抜
本治療法は腫瘍にPD-L1が発現している場合により効果が見込まれるため、免疫組織化学染色法によりイヌ腫瘍部におけるPD-L1発現解析を行った。ホルムアルデヒド固定し、パラフィン包埋した腫瘍組織をミクロトームで4 μm厚に薄切し、シランコーティングスライドグラス (松浪硝子工業社) に貼付・乾燥させた後、キシレン・アルコールで脱パラフィン処理を行った。クエン酸バッファー {クエン酸 (和光純薬工業社) 0.37 g、クエン酸3ナトリウム2水和物 (キシダ化学社) 2.4 g、蒸留水1000 ml} に浸漬しながらマイクロウェーブにて10分間抗原賦活化処理を行い、ニチレイ自動免疫染色装置により染色を行った。前処理として、0.3% 過酸化水素を含むメタノール溶液に室温で15分間浸漬した後、PBSで洗浄し、抗ウシPD-L1モノクローナル抗体を添加して室温で30分反応させた。PBSで洗浄後、ヒストファインシンプルステインMAX-PO (Rat) (ニチレイバイオサイエンス社) を添加し室温で30分間反応させた後,3, 3´-diaminobenzidine tetrahydrocholrideで発色し,光学顕微鏡を用いて観察した。腫瘍細胞がPD-L1陽性であった口腔内メラノーマおよび未分化肉腫罹患犬を以下の接種試験(臨床試験)に用いた。抗ウシPD-L1モノクローナル抗体は、ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ(Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology. 2014 Aug;142(4):551-61.)より樹立した。
【0096】
2.15. イヌへの接種試験
臨床試験においてイヌに接種するラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12については、夾雑物や重合体タンパク質を除去する目的で、2.8で示した手順により得た培養上清からMabSelect SuRe LX (GE Healthcare社) を用いたアフィニティークロマトグラフィー精製を行った後、BioScale CHT20-I prepacked column (Bio-Rad社)を用いてハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー精製を行った。アグリゲイトを含むフラクションはさらにHiScreen Q-Sepharose HP prepacked column (GE Healthcare社)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー精製を行った。
(1)安全性試験:イヌ(ビーグル、避妊雌、13歳、体重 およそ10 kg)に樹立したラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12 2 mg/kgを2週間間隔で全3回点滴静注した。アナフィラキシー他、臨床上問題となるような副作用は観察されなかった。
(2)臨床試験1:PD-L1陽性である口腔内メラノーマ(図16A)再発犬(ミニチュアダックスフンド、雄、11歳、体重 およそ7.5 kg)に樹立したラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12 2 mg/kgあるいは5 mg/kgを2週間間隔で22回点滴静注した。治療開始10週時点で顕著な腫瘍の縮小が認められ、治療開始34週時点ではさらなる縮小が確認された(図17)。44週間の観察期間中、リンパ節や肺への転移も認められなかった。ベースライン時と比較して、30%以上の腫瘍長径の減少をPR(部分奏功)と定義すると、16-20週時点および34週以降でPRの基準を満たしていた(図18)。
(3)臨床試験2:原発巣がPD-L1陽性であり(図16B)、全身の筋肉内に複数の転移巣のある未分化肉腫罹患犬(ウエストハイランドホワイトテリア、去勢雄、12歳、体重およそ8 kg)にラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12 5 mg/kgを2週間間隔で2回点滴静注した。治療開始3週時点で明らかな腫瘍の退縮が認められた(図19)。
(4)臨床試験3:原発巣を外科手術で摘出した口腔内メラノーマ罹患犬(ビーグル、避妊メス、11歳、体重およそ10 kg)に対し、ラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12 2 mg/kgあるいは5 mg/kgを2週間間隔で9回点滴静注した。治療開始18週時点で複数の肺転移巣が消失した(図20)。
(5)臨床試験4:肺転移のある口腔内メラノーマ罹患犬4頭にラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体c4G12 2 mg/kgあるいは5 mg/kgを2週間間隔で点滴静注した。観察期間中に明らかな腫瘍の縮小は見られなかったが、肺転移が確認されてからの生存期間は対照群(抗体非投与、ヒストリカルコントロール群:n = 15)と比べ長い傾向にあったため(図21)、抗体投与により生存期間が延長された可能性がある。
【0097】
2.16. 抗PD-L1抗体のCDR解析
NCBI IGBLAST (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/) を用いて、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12の相補性決定領域(CDR)を決定した。結果を図22に示す。
【0098】
〔実施例2〕
ヨーネ病罹患牛における抗ウシPD-L1抗体とCOX-2阻害薬との併用効果の検討
1.序論
PD-1とPD-L1の相互作用は病原体が免疫応答を回避する主要な分子機構の一つであり、これらの分子に特異的に結合する抗体を用いて相互作用を阻害することで抗病原体効果が得られることが報告されている。本実施例では、ヨーネ病に対する新規制御法の確立をめざして、COX-2阻害薬による免疫活性化効果と、抗ウシPD-L1抗体との併用による効果の増強をin vitro試験にて確認した。
【0099】
2.材料および方法、実験結果
2.1. PGE2の免疫抑制効果の検討
ウシにおけるPGE2の免疫抑制効果を検討するために、抗CD3モノクローナル抗体および抗CD28モノクローナル抗体で刺激した非感染牛由来PBMCのPGE2存在下での増殖能およびサイトカイン産生能、サイトカインや転写因子の遺伝子およびPD-L1の発現量の変化を評価した。
【0100】
(1) PGE2による細胞増殖能の変化
ヨーネ菌非感染牛 (以下、非感染牛) 由来末梢血単核球(PBMC)を96穴プレート (Corning社) に4×105個ずつ播種し、10% 非働化牛胎仔血清 (Thermo Fisher Scientific社)、抗生物質 (ストレプトマイシン100 μg/ml、ペニシリン100 U/ml) (Thermo Fisher Scientific社)、2 mM L-グルタミン (Thermo Fisher Scientific社) を添加したRPMI 1640培地 (Sigma-Aldrich社) を用いて37°C、5% CO2存在下で3日間培養した。PBMCはCarboxyfluorescein Diacetate Succinimidyl Ester (CFSE, Invitrogen社) によって標識した。培地には2.5 nMから2,500 nMまで10倍階段希釈したPGE2 (Cayman Chemical社) もしくは陰性対照としてリン酸緩衝生理食塩水 (PBS,pH7.2, 和光純薬工業社) を加え、計200 μlとした。T細胞への刺激として1 μg/mlの抗CD3モノクローナル抗体 (MM1A; Washington State University Monoclonal Antibody Center) および1 μg/mlの抗CD28モノクローナル抗体 (CC220; Bio-Rad社) を加えた。培養後、PBMCを回収してフローサイトメトリー法により解析を行った。非特異的反応を防ぐために10%非働化ヤギ血清 (Thermo Fisher Scientific社) 加PBSを各ウェル100 μl加え、室温で15分静置した。洗浄後、Alexa Fluor 647標識抗CD4モノクローナル抗体 (CC30; Bio-Rad社) 、peridinin-chlorophyII-protein complex/cyanin 5.5 (PerCp/Cy 5.5) 標識抗CD8モノクローナル抗体 (CC63; Bio-Rad社) およびphycoerythrin/cyanin 7 (PE/Cy7) 標識抗IgMモノクローナル抗体 (IL-A30; Bio-Rad社) を室温で20分反応させた。抗CD4モノクローナル抗体 (CC30) はZenon Mouse IgG1 labeling Kits (Thermo Fisher Scientific社) を用いてAlexa Fluor 647を標識した。抗CD8モノクローナル抗体 (CC63) および抗IgMモノクローナル抗体 (IL-A30) はLightning-Link Conjugation Kit (Innova Biosciences社) を用いてPerCp/Cy5.5およびPE/Cy7をそれぞれ標識した。反応後2回洗浄し、FACS Verse (BD Biosciences社) およびFCS Express 4 (De Novo Software社) を用いて解析した。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には1%ウシ血清アルブミン (Sigma-Aldrich社) 加PBSを使用した。
【0101】
(2) PGE2によるサイトカイン産生量の変化
非感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、(1) と同様に3日間培養した (TNF-α産生量の解析はPGE2 2,500 nMの刺激培養のみ実施)。3日後、培養上清を回収し、IFN-γの産生量はELISA for Bovine IFN-γ (MABTECH社)、TNF-αの産生量はBovine TNF alpha Do-It-Yourself ELISA (Kingfisher Biotech社)を用いて測定した。測定にはマイクロプレートリーダー MTP-900 (コロナ電気社) を用いて450 nmの吸光度を測定した。
【0102】
(1)、(2)の実験結果を図23に示す。PGE2を25 nM、250 nMおよび2,500 nM添加した群において、CD4陽性細胞およびCD8陽性細胞の有意な増殖抑制が確認された (図23a,b)。IFN-γ産生も同様に、PGE2を25 nM、250 nMおよび2,500 nM添加した群において有意に抑制された (図23c)。さらに、PGE2を2,500 nM添加した群において、TNF-α産生も有意に抑制された (図23d)。以上の結果より、ウシにおいてもPGE2が免疫抑制効果を持つことが示された。
【0103】
(3) PGE2によるサイトカイン等のmRNA発現量の変化
非感染牛由来PBMCを96穴プレートに1×106個ずつ播種し、2,500 nM PGE2もしくはDMSO存在下で3日間培養した。培養後のPBMCからTRI reagent (Molecular Research Center社)を用いて全細胞RNAを抽出し、PrimeScript Reverse Transcriptase (TaKaRa社)およびOligo-dTプライマーを用いてcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、SYBR Premix DimerEraser (TaKaRa社) と各遺伝子に特異的なプライマー各3 pmolを含む10 μlの反応液でリアルタイムPCR (LightCycler480 System II; Roche社) を行い、各遺伝子発現量の変化を観察した。
プライマー(boIL2 F):TTT TAC GTG CCC AAG GTT AA(配列番号119)
プライマー(boIL2 R):CGT TTA CTG TTG CAT CAT CA(配列番号120)
プライマー(boIL10 F):TGC TGG ATG ACT TTA AGG G(配列番号121)
プライマー(boIL10 R):AGG GCA GAA AGC GAT GAC A(配列番号122)
プライマー(boIFNγ F):ATA ACC AGG TCA TTC AAA GG(配列番号123)
プライマー(boIFNγ R):ATT CTG ACT TCT CTT CCG CT(配列番号124)
プライマー(boTNFα F):TAA CAA GCC AGT AGC CCA CG(配列番号125)
プライマー(boTNFα R):GCA AGG GCT CTT GAT GGC AGA(配列番号126)
プライマー(boTGFβ1 F):CTG CTG AGG CTC AAG TTA AAA GTG(配列番号127)
プライマー(boTGFβ1 R):CAG CCG GTT GCT GAG GTA G(配列番号128)
プライマー(boFoxp3 F):CAC AAC CTG AGC CTG CAC AA(配列番号129)
プライマー(boFoxp3 R):TCT TGC GGA ACT CAA ACT CAT C(配列番号130)
プライマー(boSTAT3 F):ATG GAA ACA ACC AGT CGG TGA(配列番号131)
プライマー(boSTAT3 R):TTT CTG CAC ATA CTC CAT CGC T(配列番号132)
プライマー(boACTB F):TCT TCC AGC CTT CCT TCC TG(配列番号133)
プライマー(boACTB R):ACC GTG TTG GCG TAG AGG TC(配列番号134)
プライマー(boGAPDH F):GGC GTG AAC CAC GAG AAG TAT AA(配列番号135)
プライマー(boGAPDH R):CCC TCC ACG ATG CCA AAG T(配列番号136)
リアルタイムPCRの反応条件は以下の通りとした。
熱変性 95°C 5秒間 (初回のみ30秒間)
アニーリング 60°C 30秒間
伸長反応 72°C 30秒間
熱変性、アニーリングおよび伸長反応を45サイクル繰り返した後、融解曲線解析のために65°Cから95°Cまで0.1°C/秒で上昇させた。増幅産物の融解温度を計測し、特異性の確認を行った。各サンプルについて内部標準としてACTB遺伝子およびGAPDH遺伝子発現量を定量した。
【0104】
(3)の実験結果を図24に示す。PGE2の添加により、PBMCにおけるIFNγ、IL2およびTNFαの遺伝子発現量が有意に減少した。一方で、PGE2はPBMCにおけるIL10、STAT3、Foxp3およびTGFβ1の遺伝子発現量を有意に増加させた。
【0105】
(4) PGE2によるPD-L1発現量の変化
非感染牛由来PBMCを96穴プレートに1×106個ずつ播種し、(1) と同様の培養条件で24時間培養した。(3) と同様に、培養後のPBMCから全細胞RNAを抽出し、cDNAを合成した。そして、PDL1遺伝子特異的なプライマーを用いてリアルタイムPCRを行った。
プライマー(boPDL1 F):GGG GGT TTA CTG TTG CTT GA(配列番号137)
プライマー(boPDL1 R):GCC ACT CAG GAC TTG GTG AT(配列番号138)
また、フローサイトメトリー法により培養後のPBMC におけるPD-L1タンパク質の発現を解析した。回収したPBMCに10%非働化ヤギ血清(Thermo Fisher Scientific社)加PBSを各ウェル100 μl加え、室温で15分静置した。洗浄後、ラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Rat IgG2a; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) あるいはラットIgG2aアイソタイプコントロール(BD Bioscience社)を添加し、室温で20分反応させた。洗浄を2回行った後、allophycocyanin (APC) 標識抗ラットIg抗体 (Southern Biotech社) を加え、室温で20分反応させた。2回洗浄を行い、FACS Verse (BD Biosciences社) およびFCS Express 4 (De Novo Software社) を用いて解析した。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には1%ウシ血清アルブミン (Sigma-Aldrich社) 加PBSを使用した。
【0106】
(3)の実験結果を図25に示す。PGE2を添加して培養した非感染牛由来PBMCでは、PD-L1 mRNA (図25a) およびタンパク質 (図25b) の発現が有意に上昇した。以上の結果より、ウシにおいてもPGE2がPD-L1発現に影響を与える可能性が示された。
【0107】
2.2. ウシPBMCにおけるCOX-2阻害剤の免疫活性化効果の検討
ウシにおけるCOX-2阻害剤の免疫活性化効果を検討するため、抗CD3モノクローナル抗体および抗CD28モノクローナル抗体刺激下のPBMC培養試験に、COX-2阻害剤(メロキシカム)を添加し、非感染牛由来PBMCの増殖能およびサイトカイン産生能を評価した。
非感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、1,000 nMのメロキシカム (Signa-Aldrich社) もしくは陰性対照としてDMSO存在下で3日間培養した。T細胞刺激として1 μg/mlの抗CD3モノクローナル抗体 (MM1A; Washington State University Monoclonal Antibody Center) および1 μg/mlの抗CD28モノクローナル抗体 (CC220; Bio-Rad社) を加えた。3日後、前述の2.1.(1) および (2) と同様にして細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0108】
実験結果を図26に示す。メロキシカムを添加した群においてCD8陽性細胞の増殖率が有意に上昇し (図26a)、また、IFN-γおよびTNF-αの産生量も有意に増加した (図26b,c)。以上の結果より、ウシにおいてもCOX-2阻害剤が免疫活性化効果を持つことが示された。
【0109】
2.3. ヨーネ菌感染牛におけるPGE2の動態解析
ウシの慢性感染症とPGE2の関連を明らかにするため、ヨーネ菌感染牛におけるPGE2の動態解析を行った。
【0110】
(1) 血清PGE2量の測定
まず、自然感染によりヨーネ病を発症したウシの血清および非感染牛の血清中に含まれるPGE2量をELISA法によって定量した。自然感染によるヨーネ病発症牛の血清 (農研機構・動物衛生研究部門 森康行博士より分与) に含まれるPGE2の量をProstaglandin E2 Express ELISA Kit (Cayman Chemical社) によって定量した。測定にはマイクロプレートリーダー MTP-900 (コロナ電気社) を用いて450 nmの吸光度を測定した。
【0111】
(1)の実験結果を図27aに示す。非感染牛と比較して、ヨーネ病発症牛では血清中のPGE2量が有意に増加していた。
【0112】
(2) ヨーネ抗原刺激によるPGE2産生量の変化
ヨーネ抗原によってPGE2の産生が促進されることを確認するため、ヨーネ菌実験感染牛および非感染牛由来PBMCをヨーネ抗原と培養し、培養上清中のPGE2量をELISA法により定量した。ヨーネ菌実験感染牛および非感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、1 μg/mlのヨーネ菌抗原存在下で5日間培養した。ヨーネ菌抗原としてJohnin Purified Protein Derivative (J-PPD) を用いた。また、抗原刺激によるPGE2産生がCOX-2阻害剤によって抑制されることを確認するため、培地に1 μg/mlのJ-PPDおよび1,000 nMのメロキシカム (Signa-Aldrich社) を加えた。5日後、培養上清を回収して、培養上清中に含まれるPGE2の量をProstaglandin E2 Express ELISA Kit (Cayman Chemical社) によって定量した。
【0113】
(2)の実験結果を図27bおよびcに示す。ヨーネ菌実験感染牛において、ヨーネ抗原を加えることでPBMCからのPGE2産生が有意に促進された(図27c)。一方で、非感染牛においては有意な差が認められず(図27b)、J-PPDによるヨーネ菌実験感染牛からのPGE2産生の促進は、ヨーネ菌に対する特異的な応答であることが明らかとなった。また、その条件下にCOX-2阻害剤を添加して培養することによって、PGE2の産生が有意に抑制された(図27c)。
【0114】
(3) ヨーネ抗原刺激によるCOX2発現量の変化
ヨーネ菌実験感染牛由来PBMCを96穴プレートに1×106個ずつ播種し、J-PPD存在下で24時間培養した。培養後、PBMCを回収し、前述した方法で全細胞RNAを抽出し、cDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型とし、COX2特異的プライマーを用いて上述した方法に従いリアルタイムPCRを行った。
プライマー(boCOX2 F):ACG TTT TCT CGT GAA GCC CT(配列番号139)
プライマー(boCOX2 R):TCT ACC AGA AGG GCG GGA TA(配列番号140)
【0115】
(3)の実験結果を図27dに示す。ヨーネ抗原刺激により、ヨーネ菌実験感染牛においてCOX2発現量が有意に増加した。以上の結果より、ヨーネ菌感染牛において、ヨーネ抗原刺激によってCOX-2の発現が上昇し、それに伴いPGE2の産生が促進されることが示唆された。
【0116】
2.4. ヨーネ菌抗原刺激によるPD-L1発現量の変化
ヨーネ菌感染牛において、ヨーネ抗原刺激がPD-L1発現量に与える影響を評価した。ヨーネ菌実験感染牛および非感染牛由来PBMCを96穴プレートに1×106個ずつ播種し、ヨーネ抗原存在下で24時間培養した。培養後のPBMCを回収し、フローサイトメトリー法によりリンパ球、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、IgM陽性細胞およびCD14陽性細胞上のPD-L1発現を解析した。10%非働化ヤギ血清 (Thermo Fisher Scientific社) 加PBSを各ウェル100 μl加え、室温で15分静置した。洗浄後、ラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Rat IgG2a; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) あるいはラットIgG2aアイソタイプコントロール(BD Bioscience社)を添加し、室温で20分反応させた。洗浄を2回行った後、二次抗体を加え、室温で20分反応させた。二次抗体として、T細胞およびIgM陽性細胞上のPD-L1の発現解析にはphycoerythrin (PE) 標識抗CD3モノクローナル抗体 (MM1A; Washington State University Monoclonal Antibody Center) 、fluorescein isothiocyanate (FITC) 標識抗CD4モノクローナル抗体 (CC8; Bio-Rad社) 、PerCp/Cy 5.5標識抗CD8モノクローナル抗体 (CC63; Bio-Rad社) 、PE/Cy7標識抗IgMモノクローナル抗体 (IL-A30; Bio-Rad社) およびAPC標識抗ラットIg抗体 (Southern Biotech社) を用いた。抗CD3モノクローナル抗体 (MM1A) はZenon Mouse IgG1 labeling Kitを用いてPEを標識した。CD14陽性細胞上のPD-L1の発現解析にはPerCp/Cy5.5標識抗CD14モノクローナル抗体 (CAM36A; Washington State University Monoclonal Antibody Center) およびAPC標識抗ラットIg抗体 (Southern Biotech社) を用いた。抗CD14モノクローナル抗体 (CAM36A) は、Lightning-Link Conjugation Kitを用いてPerCp/Cy5.5を標識した。反応後、2回洗浄を行い、FACS Verse (BD Biosciences社) およびFCS Express 4 (De Novo Software社) を用いて解析した。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には1%ウシ血清アルブミン (Sigma-Aldrich社) 加PBSを使用した。
【0117】
実験結果を図28に示す。非感染牛と比較して、ヨーネ菌実験感染牛において、ヨーネ抗原を加えた群で有意にPD-L1の発現率が増加することが示された (図28a)。ヨーネ菌実験感染牛のCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、IgM陽性B細胞およびCD14陽性細胞においても、ヨーネ抗原刺激によってPD-L1の発現率が増加した (図28b-e)。
【0118】
2.5.ヨーネ病病変部でのPGE2、EP2およびPD-L1の発現解析
次に、ヨーネ病の病変部におけるPGE2およびEP2の発現解析を免疫組織化学染色法により行った。ヨーネ病の野外発症牛 (#1, 下痢や重度の削痩などヨーネ病の臨床症状を示していた)、ヨーネ菌実験感染牛 (#65, 排菌および下痢などの臨床症状が観察された; Okagawa T, Konnai S, Nishimori A, Ikebuchi R, Mizorogi S, Nagata R, Kawaji S, Tanaka S, Kagawa Y, Murata S, Mori Y and Ohashi K. Infect Immun, 84:77-89, 2016.) および非感染コントロール牛 (C#6) の回腸組織ブロック (農研機構・動物衛生研究部門 森 康行 博士より分与) を用いて、免疫組織化学染色を行った。4%パラホルムアルデヒド {パラホルムアルデヒド20 g、PBS (pH7.4) 500 ml} を用いて固定し、パラフィン包埋したサンプルをミクロトームで4 mm厚に薄切し、シランコーティングスライドグラス (松浪硝子工業社) に貼付、乾燥させた後、キシレンアルコールで脱パラフィン処理を行った。クエン酸緩衝液 {クエン酸0.37 g、クエン酸3ナトリウム2水和物2.4 g、蒸留水1,000 ml} に浸漬しながらマイクロウェーブにて10分間抗原賦活化処理を行い、ニチレイ自動免疫染色装置により染色を行った。前処理として、0.3%過酸化水素を含むメタノール溶液にて室温で15分間浸漬した後、PBSで洗浄し、抗PGE2ポリクローナル抗体 (Abcam社)、抗EP2モノクローナル抗体 (EPR8030(B); Abcam社) あるいは、ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体 (6C11-3A11; Rat IgG2a; 出願番号2017-61389 今内 覚、大橋和彦、村田史郎、岡川朋弘、西森朝美、前川直也、高木哲、賀川由美子、鈴木定彦、中島千絵. PD‐L1検出用抗PD‐L1抗体.) を添加して室温で30分間反応させた。PBSで洗浄後、ヒストファインシンプルステインMAX-PO (ニチレイバイオサイエンス社)を添加し、室温で30分間反応させた後、3, 3’-diaminobenzidine tetrahydrocholrideで発色し、光学顕微鏡を用いて観察した。
【0119】
実験結果を図29に示す。Ziehl-Neelsen染色によってヨーネ菌が確認された回腸病変部 (野外発症牛#1および実験感染牛#65) において、PGE2、EP2およびPD-L1が強く発現していた (図29a-d)。一方、非感染牛 (C#6) の回腸においては、EP2の発現は確認されたが、PGE2およびPD-L1はほとんど発現していなかった (図29a-d)。これらの結果より、ヨーネ病の病変部においてPGE2の産生およびPD-L1の発現が亢進している可能性が示された。
【0120】
2.6. COX-2阻害剤によるヨーネ菌特異的免疫応答の活性化効果の検討
COX-2阻害剤がヨーネ菌抗原特異的な免疫応答に対する活性化効果を有していることを確認するために、メロキシカムおよびヨーネ抗原を添加して培養し、ヨーネ菌実験感染牛由来PBMCの増殖能およびサイトカイン産生能を評価した。ヨーネ菌実験感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、1 μg/mlのJ-PPDおよび1,000 nMのメロキシカム (Signa-Aldrich社) 存在下で5日間刺激培養した。培養後、前述の方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0121】
実験結果を図30に示す。ヨーネ菌実験感染牛では、メロキシカムの添加によりCD8陽性細胞の増殖率 (図30a)、IFN-γの産生量 (図30b) およびTNF-αの産生量 (図30c) の有意な増加が観察された。以上の結果より、COX-2阻害剤がヨーネ抗原特異的なT細胞応答に対する活性化効果を有していることが示された。
【0122】
2.7. ヨーネ菌感染牛におけるラット抗ウシPD-L1抗体の免疫活性化効果の検討
ラット抗ウシPD-L1抗体が、ヨーネ菌感染牛においても免疫活性化効果を有していることを確認するために、ラット抗ウシPD-L1抗体存在下でPBMC刺激培養試験を行い、ヨーネ菌特異的なT細胞応答を評価した。ヨーネ菌実験感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、1 μg/mlのJ-PPD存在下で5日間刺激培養した。刺激培養時に、ブロック抗体として1 μg/mlのラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) もしくは陰性対照抗体として同量のラット血清由来IgG (Sigma-Aldrich社) を加えた。培養後、前述の方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0123】
実験結果を図31に示す。ヨーネ菌実験感染牛では、ラット抗ウシPD-L1抗体の添加によりCD8陽性細胞の増殖率 (図30a)、IFN-γの産生量 (図30b) およびTNF-αの産生量 (図30c) の有意な増加が観察された。以上の結果より、PD-1/PD-L1阻害がヨーネ抗原特異的なT細胞応答に対する活性化効果を有していることが示された。
【0124】
2.8. COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用による免疫活性化効果の検討
次に、ヨーネ菌実験感染牛においてCOX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用による免疫活性化効果を検討した。ヨーネ菌実験感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、ヨーネ抗原あるいは陰性対照抗原存在下で5日間培養した。陰性対照抗原としてMycobacterium bovis BCG株由来精製タンパク (B-PPD) を用いた。培地には1,000 nMのメロキシカム (Sigma-Aldrich社) および1 μg/mlのラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) を加え、計200 μlとした。メロキシカムの陰性対照としてDMSOを、陰性対照抗体としてラット血清由来IgG (Sigma-Aldrich社) を用いた。培養後、前述の方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0125】
実験結果を図32に示す。陰性対照群と比較して、メロキシカムとラット抗ウシPD-L1抗体を加えた群においてCD8陽性細胞の増殖率が有意に増加していた (図32a)。陰性対照抗原刺激を加えた場合では同様の変化が観察されなかったことから、COX-2阻害剤と抗ウシPD-L1モノクローナル抗体の併用によって、ヨーネ抗原特異的なCD8陽性細胞応答が活性化されている可能性が示された (図32a) 。IFN-γ産生量に関しては、ヨーネ抗原刺激を加えた場合、陰性対照抗原刺激を加えた場合ともに有意な変化は確認されなかった (図32b)。以上の結果より、ヨーネ菌感染牛において、COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用によって、それぞれを単剤で用いるときよりも大きな免疫活性化効果を示す可能性が示された。
【0126】
2.9. COX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体の併用による免疫活性化効果の検討
最後に、ヨーネ菌実験感染牛においてCOX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体の併用による免疫活性化効果を検討した。ヨーネ菌実験感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、ヨーネ抗原あるいは陰性対照抗原存在下で5日間培養した。陰性対照抗原としてMycobacterium bovis BCG株由来精製タンパク (B-PPD) を用いた。培地には1,000 nMのメロキシカムおよび1 μg/mlのラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体 (ch4G12; 出願番号2016-159089 今内 覚、大橋和彦、村田史郎、岡川朋弘、西森朝美、前川直也、鈴木定彦、中島千絵. ウシ用抗PD‐L1抗体.) を加え、計200 μlとした。メロキシカムの陰性対照としてDMSOを、陰性対照抗体としてウシ血清由来IgG (Sigma-Aldrich社) を用いた。培養後、前述の方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0127】
実験結果を図33に示す。ヨーネ菌感染牛において併用効果を評価した結果、ラット抗ウシPD-L1抗体を用いた場合と同様に、COX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体の併用によって、ヨーネ抗原特異的なCD8陽性細胞応答が活性化されている可能性が示された (図33a)。IFN-γ産生量に関しては、ヨーネ抗原刺激を加えた場合、陰性対照抗原刺激を加えた場合ともに有意な変化は確認されなかった (図33b)。以上の結果より、ヨーネ菌感染牛において、COX-2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤の併用による免疫活性化効果がラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体を用いた場合でも示された。
【0128】
〔実施例3〕
牛白血病ウイルス感染牛における抗ウシPD-L1抗体とCOX-2阻害薬との併用効果の検討
1.序論
PD-1とPD-L1の相互作用は病原体が免疫応答を回避する主要な分子機構の一つであり、これらの分子に特異的に結合する抗体を用いて相互作用を阻害することで抗病原体効果が得られることが報告されている。本実施例では、牛白血病ウイルス(BLV)感染症に対する新規制御法の確立をめざして、COX-2阻害薬による免疫活性化効果と、抗ウシPD-L1抗体との併用による効果の増強をin vitro試験にて確認した。
【0129】
2.材料および方法、実験結果
2.1. BLV感染牛におけるPGE2の動態解析
ウシの慢性ウイルス感染症であるBLV感染症の病態進行におけるPGE2の関連を明らかにするため、BLV感染牛におけるPGE2の動態解析を行った。
【0130】
(1) 血漿PGE2量の測定および他指標との相関解析
まず、BLV感染牛の血漿中に含まれるPGE2量をProstaglandin E2 Express ELISA Kit (Cayman Chemical社) によって定量した。測定にはマイクロプレートリーダー MTP-900 (コロナ電気社) を用いて450 nmの吸光度を測定した。さらに、血漿PGE2量と末梢血のリンパ球数あるいはIgM陽性細胞におけるPD-L1の発現率との相関を調べた。BLV感染牛から分離したPBMCについてフローサイトメトリー解析を行い、IgM陽性細胞上のPD-L1発現を測定した。まず、抗体の非特異反応を阻害するためにPBMCに10%非働化ヤギ血清 (Thermo Fisher Scientific社) 加PBSを各ウェル100 μl加え、室温で15分静置した。洗浄後、ラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Rat IgG2a; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) あるいはラットIgG2aアイソタイプコントロール(BD Bioscience社)を添加し、室温で20分反応させた。洗浄を2回行った後、PE/Cy7標識抗IgMモノクローナル抗体 (IL-A30; Bio-Rad社) およびAPC標識抗ラットIg抗体 (Southern Biotech社) を加え、室温で20分反応させた。抗IgMモノクローナル抗体 (IL-A30) は、Lightning-Link Conjugation Kitを用いてPE/Cy7を標識した。反応後、2回洗浄を行い、FACS Verse (BD Biosciences社) およびFCS Express 4 (De Novo Software社) を用いて解析した。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には1%ウシ血清アルブミン (Sigma-Aldrich社) 加PBSを使用した。
【0131】
(1)の実験結果を図34に示す。BLV感染症の病態進行(AL: aluekemic, 無症候; PL: persistent lymphocytosis, リンパ球増多症)に伴い、血漿中のPGE2量が有意に増加していた (図34a)。BLV感染症の病態進行の指標である末梢血中のリンパ球数と血漿PGE2量の相関を検討した結果、正の相関が認められた (図34b)。また、PGE2量とIgM陽性細胞におけるPD-L1の発現率の相関を検討した結果、正の相関があることが示された (図34c)。これらの結果より、BLV感染症の病態進行や、それに伴う免疫抑制にPGE2が関与していることが示唆された。
【0132】
(2) BLV感染牛におけるCOX2およびEP4の発現解析
さらに詳細な解析を行うために、血漿PGE2量に加えて、PGE2の合成に関与するCOX2遺伝子および免疫抑制シグナルを送るPGE2受容体であるEP4の遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法により定量した。BLV感染牛および非感染牛由来PBMC、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞、CD14陽性細胞およびCD21陽性細胞より、実施例2 2.1.(3)にて前述した方法で全細胞RNAを抽出し、cDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型とし、COX2(実施例2 2.3.(3)にて前述)およびEP4特異的プライマーを用いて実施例2にて記述した方法に従いリアルタイムPCRを行った。
プライマー(boEP4 F):GTG ACC ATC GCC ACC TAC TT(配列番号141)
プライマー(boEP4 R):CTC ATC GCA CSG ATG ATG CT(配列番号142)
【0133】
(2)の実験結果を図35に示す。病態が進行したPL牛においてEP4の遺伝子発現量が上昇していることが確認された (図35a)。COX2遺伝子発現量に関しても同様で、PL牛において上昇していることが示された (図35b) 。PGE2の産生細胞を検討するため、CD4、CD8、CD21およびCD14陽性細胞におけるCOX2遺伝子発現量を定量したところ、PL牛のCD4、CD8およびCD21陽性細胞において、COX2遺伝子発現量が増加していることが明らかとなった (図35c-e) 。CD14陽性細胞に関しては、PL牛の試料を用いた評価はできていないが、非感染牛と比較してAL牛でCOX2遺伝子発現量に増加傾向が認められた (図35f) 。これらの結果より、BLV感染症の病態進行に伴って、様々な細胞群でCOX-2の発現が上昇していることが示された。
【0134】
(3) BLV抗原刺激によるPGE2産生量の変化
BLV感染症においては、抗原刺激によってCOX2の発現量が増加すると報告されている (Pyeon D, Diaz FJ, Splitter GA. J Virol. 74:5740-5745, 2000.)。このことから、抗原刺激によってBLV感染牛由来PBMCからのPGE2産生も促進されると予想される。この仮説を検証するために、BLV感染牛および非感染牛由来PBMCをBLV抗原とともに培養し、培養上清中のPGE2量をELISA法により定量した。BLV感染牛および非感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、BLV抗原 (終濃度 2%) 存在下で6日間培養した。BLV抗原として、BLV持続感染ヒツジ胎子腎臓細胞 (FLK-BLV) の培養上清を65°Cで熱処理したものを用いた。また、抗原刺激によるPGE2産生がCOX-2阻害剤によって抑制されることを確認するため、培地にBLV抗原および1,000 nMのメロキシカム (Signa-Aldrich社) を加えた条件も用意した。6日後、培養上清を回収して、培養上清中に含まれるPGE2量をProstaglandin E2 Express ELISA Kit (Cayman Chemical社) によって定量した。
【0135】
(3)の実験結果を図36に示す。BLV感染牛 (AL: 図36b, PL: 図36c) において、BLV抗原を加えることでPBMCからのPGE2産生が有意に促進されることが示された (図36b,c)。非感染牛においては有意な差が認められず (図36a)、BLV抗原によるBLV感染牛由来PBMCからのPGE2産生の促進は、BLVに対する特異的な応答であることが明らかとなった。また、その条件下にCOX-2阻害剤を添加して培養することによって、PGE2の産生が有意に抑制されることが確認された (図36b,c)。
【0136】
(4) PGE2がBLVプロウイルス量に与える影響
様々な慢性感染症において、PGE2がウイルスの複製を助長している可能性が示されている (Pyeon D, Diaz FJ, Splitter GA. J Virol. 74:5740-5745, 2000; Waris D, Siddiqui A. J Virol. 79:9725-9734, 2005.)。そこで、BLV感染症においてPGE2がウイルスの複製に与える影響を評価するために、BLV感染牛由来PBMCをPGE2と培養し、BLVのプロウイルス量をリアルタイムPCR法によって定量した。BLV感染牛由来PBMCを96穴プレートに1×106個ずつ播種し、2,500 nM PGE2もしくはDMSO存在下で3日間培養した。培養後、回収したPBMCからWizard DNA Purification kit(Promega社)を用いてDNAを抽出した。抽出したDNAの濃度は、Nanodrop 8000 Spectrophotometer(Thermo Fisher Scientific社)を用いて測定した吸光度(260 nm)を基準として定量した。PBMC中のBLVプロウイルス量を測定するため、Cycleave PCR Reaction Mix SP(TaKaRa社)およびウシ白血病ウイルス検出用 Probe/Primer/Positive control(TaKaRa社)を用いてリアルタイムPCRを行った。測定にはLightCycler480 System II(Roche Diagnosis社)を用いた。
【0137】
(4)の実験結果を図37に示す。PGE2を添加した群においてプロウイルス量が有意に増加することが示され (図37)、PGE2がBLVの複製を促進させる可能性が示唆された。
【0138】
2.2. BLV抗原刺激によるPD-L1発現量の変化
BLV感染牛において、BLV抗原刺激がPD-L1発現量に与える影響を評価した。BLV感染牛および非感染牛由来PBMCを96穴プレートに1×106個ずつ播種し、BLV抗原 (終濃度 2%) 存在下で24時間培養した。培養後、PBMCを回収し、実施例2 2.4.にて前述した方法と同様にフローサイトメトリー法によりリンパ球、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、IgM陽性細胞およびCD14陽性細胞上のPD-L1発現を解析した。
【0139】
2.2の実験結果を図38に示す。BLV感染牛のPBMCにBLV抗原刺激を加えると、リンパ球においてPD-L1の発現率が有意に上昇することが示された (図38a)。さらに、細胞群 (CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、IgM陽性細胞およびCD14陽性細胞) ごとにPD-L1発現量の変化を解析したところ、CD4陽性細胞およびCD8陽性細胞においてBLV抗原刺激によってPD-L1の発現率が増加することが明らかとなった (図38b-e)。
【0140】
2.3. COX-2阻害剤によるBLV特異的免疫応答の活性化効果の検討
COX-2阻害剤がBLV抗原特異的な免疫応答に対する活性化効果を有していることを確認するために、メロキシカムおよびBLV抗原の存在下で培養したBLV感染牛由来PBMCの増殖能およびサイトカイン産生能を評価した。BLV感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、BLV抗原 (終濃度 2%) および1,000 nMのメロキシカム (Signa-Aldrich社) 存在下で6日間刺激培養した。培養後、実施例2にて前述した方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0141】
実験結果を図39に示す。BLV実験感染牛では、メロキシカムの添加によりCD4陽性細胞の増殖率 (図39a)、CD8陽性細胞の増殖率 (図39b)、IFN-γの産生量 (図39c) およびTNF-αの産生量 (図39d) の有意な増加が観察された。以上の結果より、COX-2阻害剤がBLV抗原特異的なT細胞応答に対する活性化効果を有していることが示された。
【0142】
2.3. BLV感染牛におけるCOX-2阻害剤の抗ウイルス作用の検討
COX-2阻害剤の生体内における抗ウイルス効果を検討するために、BLV感染牛を用いて臨床応用試験を行った。試験にはホルスタイン種のPL牛 2頭 (#1および#2) を用いた。試験開始時の体重と年齢は、#1が736 kg、8歳1ヶ月齢、#2が749 kg、3歳7ヶ月齢であった。COX-2阻害剤としてメタカム 2%注射液 (以下、メタカム; 共立製薬社) を0.5 mg/kgで皮下に接種した。接種は初回に加え、#1は初回接種7、14、21、28、35、42、49、56日後に、#2は初回接種7、14、20、27、34、41、48、55日後に実施した (図40a,b)。採血は、#1で各接種日および初回接種後1日目、84日目に、#2で各接種日、各接種の翌日、初回接種後3日目、84日目に行った (図40a,b)。接種日の採血はメタカム接種前に行った。採取した血液を用いて、BLVプロウイルス量、血清中のPGE2濃度およびIFN-γ濃度を定量した。プロウイルス量は、前述2.1.(4)と同様の方法で定量した。血清中のPGE2濃度およびIFN-γ濃度はそれぞれProstaglandin E2 Express ELISA Kit (Cayman Chemical社) あるいはELISA for Bovine IFN-γ (MABTECH社) を用いて測定した。
【0143】
実験結果を図40に示す。メタカムの投与によって#1および#2ともに、BLVのプロウイルス量が有意に減少した (図40c,d)。また、血清中のPGE2濃度はメタカム投与の翌日に減少し、プロウイルス量もメタカム投与の翌日に減少していた (図40c,d)。さらに、#2においては血清中のIFN-γ濃度がメタカム投与の翌日に上昇した (図40e)。なお、#1においては血清中のIFN-γ濃度はELISAの測定限界以下であった。以上の結果より、COX-2阻害剤がBLV感染牛の生体内において抗ウイルス効果を有していることが示しめされた。
【0144】
2.4. COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用による免疫活性化効果の検討
COX-2阻害剤の投与によってBLV感染牛のプロウイルス量が減少したが (図40c,d)、より強い抗ウイルス効果を得るために、BLV感染牛においてCOX-2阻害剤と抗ウシPD-L1抗体の併用による免疫活性化効果を検討した。BLV感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、BLV抗原あるいは陰性対照抗原存在下で6日間培養した。陰性対照抗原としてBLV非感染ヒツジ胎子腎臓細胞 (FLK) の培養上清を65°Cで熱処理したものを用いた。培地には1,000 nMのメロキシカム (Sigma-Aldrich社) および1 μg/mlのラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) を加え、計200 μlとした。メロキシカムの陰性対照としてDMSOを、陰性対照抗体としてラット血清由来IgG (Sigma-Aldrich社) を用いた。培養後、前述の方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0145】
実験結果を図41に示す。BLV抗原で刺激した場合、陰性対照群、メロキシカム単剤群、ラット抗ウシPD-L1抗体単剤群と比較して、メロキシカムとラット抗ウシPD-L1抗体を加えた群においてCD4陽性細胞の増殖率 (図41a)、CD8陽性細胞の増殖率 (図41b) およびIFN-γ産生量 (図41c) が有意に増加した。陰性対照抗原刺激を加えた場合では同様の変化が観察されなかったことから、COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用によって、BLV抗原特異的なT細胞応答が活性化されていることが示唆された (図41a-c)。以上の結果より、BLV感染牛において、COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用によって、それぞれを単剤で用いるときよりも大きな免疫活性化効果が得られる可能性が示された。
【0146】
2.5. COX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体の併用による免疫活性化効果の検討
最後に、BLV感染牛においてCOX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体の併用による免疫活性化効果を検討した。BLV感染牛由来PBMCを96穴プレートに4×105個ずつ播種し、BLV抗原あるいは陰性対照抗原存在下で6日間培養した。陰性対照抗原としてBLV非感染ヒツジ胎子腎臓細胞 (FLK) の培養上清を65°Cで熱処理したものを用いた。培地には1,000 nMのメロキシカムおよび1 μg/mlのラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体 (ch4G12; 出願番号2016-159089 今内 覚、大橋和彦、村田史郎、岡川朋弘、西森朝美、前川直也、鈴木定彦、中島千絵. ウシ用抗PD‐L1抗体.) を加え、計200 μlとした。メロキシカムの陰性対照としてDMSOを、陰性対照抗体としてウシ血清由来IgG (Sigma-Aldrich社) を用いた。培養後、前述の方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0147】
実験結果を図42に示す。BLV感染牛において、ラット抗ウシPD-L1抗体を用いた場合と同様に、COX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体の併用によって、BLV抗原特異的なCD4陽性細胞応答、CD8陽性細胞応答およびIFN-γ産生が活性化された (図42a-c)。以上の結果より、BLV感染牛において、COX-2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤の併用による免疫活性化効果がラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体を用いた場合でも示された。
【0148】
2.6. COX-2阻害剤とラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体の併用による生体内での抗ウイルス効果の検討
生体内におけるCOX-2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤の併用による抗ウイルス効果を検討するために、BLV感染牛を用いて臨床応用試験を行った。試験には、BLVプロウイルス量の多いBLV感染牛 2頭 (#1719および#2702、ホルスタイン種) を用いた。試験開始時の体重と年齢は、#1719が799 kg、7歳4ヶ月齢、#2702が799 kg、4歳3ヶ月齢であった。COX-2阻害剤としてメタカム 2%注射液 (以下、メタカム; 共立製薬社) を0.5 mg/kgで皮下に接種した。また、PD-1/PD-L1阻害剤として、ラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体 (ch4G12; WO2018/034225 今内 覚、大橋和彦、村田史郎、岡川朋弘、西森朝美、前川直也、鈴木定彦、中島千絵. ウシ用抗PD‐L1抗体.) を1.0 mg/kgで静脈内に投与した。メタカム接種は初回に加え、初回接種7、14日後に実施した。採血は、抗体接種日7日前 (-7日目)、抗体接種日、抗体接種後1日目、3日目、7日目、抗体接種後14日目から58日目までは1週間に1回に実施した。抗体・メタカム接種日 (0日目) およびメタカム接種日 (7日目、14日目) の採血は抗体およびメタカム接種前に実施した。採取した血液を用いて、BLVプロウイルス量を定量した。プロウイルス量は、前述2.1.(4)と同様の方法で定量した。
【0149】
実験結果を図43に示す。抗体接種日(抗体接種直前)のBLVプロウイルス量は、#1719が3,662 copies/50 ng DNAであり、#2702が3,846 copies/50 ng DNAであった。ラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体を単独で投与した#1719では、BLVプロウイルス量の減少は認められなかったが (図43a)、メタカムとラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体を併用した#2702では、投与後3日目から49日目にかけて有意なBLVプロウイルス量の減少が認められた (図43b)。以上の結果から、COX-2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤を併用することによって、生体内での抗ウイルス効果が増強されることが示された。この併用効果は、BLVプロウイルス量が3,846 copies/50ng DNA程度又はそれ以下で得られるであろう。ただしこの値は、2.1.(4)で前述した方法に従って測定したBLVプロウイルス量を基準とした。
【0150】
〔実施例4〕
Mycoplasma bovis感染牛における抗ウシPD-L1抗体とCOX-2阻害薬との併用効果の検討
1.序論
PD-1とPD-L1の相互作用は病原体が免疫応答を回避する主要な分子機構の一つであり、これらの分子に特異的に結合する抗体を用いて相互作用を阻害することで抗病原体効果が得られることが報告されている。本実施例では、Mycoplasma bovisに起因するウシのマイコプラズマ感染症に対する新規制御法の確立をめざして、COX-2阻害薬による免疫活性化効果と、抗ウシPD-L1抗体との併用による効果の増強をin vitro試験にて確認した。
【0151】
2.材料および方法、実験結果
2.1. M. bovis感染牛における血清PGE2量の解析
M. bovisに起因するウシのマイコプラズマ感染症の病態進行におけるPGE2の関連を明らかにするため、M. bovis感染牛におけるPGE2の動態解析を行った。M. bovis感染牛およびM. bovis非感染牛 (以下、非感染牛) の血清中に含まれるPGE2量をProstaglandin E2 Express ELISA Kit (Cayman Chemical社) によって定量した。測定にはマイクロプレートリーダー MTP-900 (コロナ電気社) を用いて450 nmの吸光度を測定した。
【0152】
実験結果を図44に示す。M. bovis感染牛において、非感染牛と比べて血清PGE2量が有意に高かった (図44a)。また、M. bovis感染牛を臨床症状ごとに分けて血清PGE2量を比較すると、M. bovisに起因する乳房炎、肺炎を呈した個体で非感染牛と比べて血清PGE2量が有意に高かった (図44b)。これらの結果より、ウシのマイコプラズマ感染症の病態進行にPGE2が関与している可能性が示唆された。
【0153】
2.2. M. bovis感染牛における血漿PGE2量と免疫応答の指標の相関解析
次に、M. bovis感染牛の血漿PGE2量とM. bovis特異的なIFN-γ応答またはCD14陽性細胞におけるPD-L1の発現率との相関を調べた。まず、M. bovis感染牛の血液から血漿を分離し、血漿中に含まれるPGE2量を2.1において前述した方法を用いて測定した。次に、M. bovis感染牛の血液から分離した末梢血単核球 (PBMC) を10% 非働化牛胎仔血清 (Thermo Fisher Scientific社)、抗生物質 (ストレプトマイシン100 μg/ml、ペニシリン100 U/ml) (Thermo Fisher Scientific社)、2 mM L-グルタミン (Thermo Fisher Scientific社) を添加したRPMI 1640培地 (Sigma-Aldrich社) に懸濁し、4×105個ずつ96穴プレート (Corning社) に播種した後、1.5 μg/mlのM. bovis抗原を加え、37°C、5% CO2存在下で5日間刺激培養した。M. bovis抗原として、M. bovis PG45株 (ATCC 25523; 酪農学園大学 樋口 豪紀 教授より分与) を熱処理したものを用いた。5日後、培養上清を回収し、IFN-γの産生量はELISA for Bovine IFN-γ (MABTECH社) を用いて測定した。測定にはマイクロプレートリーダー MTP-900 (コロナ電気社) を用いて450 nmの吸光度を測定した。
【0154】
また、M. bovis感染牛由来PBMCについてフローサイトメトリー解析を行い、CD14陽性細胞上のPD-L1発現を測定した。まず、抗体の非特異反応を阻害するためにPBMCに10%非働化ヤギ血清 (Thermo Fisher Scientific社) 加PBSを各ウェル100 μl加え、室温で15分静置した。洗浄後、ラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Rat IgG2a; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) あるいはラットIgG2aアイソタイプコントロール(BD Bioscience社)を添加し、室温で20分反応させた。洗浄を2回行った後、PerCp/Cy5.5標識抗CD14モノクローナル抗体 (CAM36A; Washington State University Monoclonal Antibody Center) およびAPC標識抗ラットIg抗体 (Southern Biotech社) と細胞を反応させた。抗CD14モノクローナル抗体 (CAM36A) は、Lightning-Link Conjugation Kitを用いてPerCp/Cy5.5を標識した。反応後、2回洗浄を行い、FACS Verse (BD Biosciences社) およびFCS Express 4 (De Novo Software社) を用いて解析した。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には1%ウシ血清アルブミン (Sigma-Aldrich社) 加PBSを使用した。
【0155】
実験結果を図45に示す。M. bovis感染牛において、血漿中のPGE2量とM. bovis特異的なIFN-γ応答に負の相関が認められた (図45a)。また、PGE2量とCD14陽性細胞におけるPD-L1の発現率には、正の相関が認められた (図45b)。これらの結果より、ウシのマイコプラズマ感染症に伴う免疫抑制にPGE2が関与していることが示唆された。
【0156】
2.3. M. bovis感染牛におけるCOX2およびEP4の発現解析
さらに詳細な解析を行うために、PGE2の合成に関与するCOX2遺伝子および免疫抑制シグナルを促すPGE2受容体であるEP4の遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法により定量した。M. bovis感染牛および非感染牛由来PBMCより、実施例2 2.1.(3)にて前述した方法で全細胞RNAを抽出し、cDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型とし、COX2(実施例2 2.3.(3)にて前述)およびEP4特異的プライマー(実施例3 2.1.(2)にて前述)を用いて実施例2にて記述した方法に従いリアルタイムPCRを行った。
【0157】
実験結果を図46に示す。M. bovis感染牛のPBMCでは非感染牛と比較して、COX2遺伝子発現量には有意な違いは認められなかったものの (図46a)、EP4遺伝子発現量が有意に上昇していた (図46b)。
【0158】
2.4. M. bovis感染牛におけるCOX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用による免疫活性化効果の検討
最後に、M. bovis感染牛においてCOX-2阻害剤と抗ウシPD-L1抗体の併用による免疫活性化効果を検討した。M. bovis感染牛由来PBMCを96穴プレート (Corning社) に4×105個ずつ播種し、抗原特異的刺激としてM. bovis抗原 1.5 μg/ml、あるいはT細胞刺激として抗CD3モノクローナル抗体 (MM1A; Washington State University Monoclonal Antibody Center) および抗CD28モノクローナル抗体 (CC220; Bio-Rad社) 各2 μg/ml存在下で5日間培養した。培地には10 μMのメロキシカム (Sigma-Aldrich社) および10 μg/mlのラット抗ウシPD-L1抗体 (4G12; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) を加えた。メロキシカムの陰性対照としてDMSOを、陰性対照抗体としてラット血清由来IgG (Sigma-Aldrich社) を用いた。培養後、前述の方法と同様に細胞増殖能とサイトカイン産生量を評価した。
【0159】
実験結果を図47に示す。M. bovis抗原で刺激した場合、陰性対照群、メロキシカム単剤群と比較して、ラット抗ウシPD-L1抗体単剤、またはメロキシカムとラット抗ウシPD-L1抗体を加えた群においてIFN-γ産生量が増加傾向にあった (図47)。また、抗CD3抗体および抗CD28抗体で刺激した場合、陰性対照群、メロキシカム単剤群と比較して、ラット抗ウシPD-L1抗体単剤を加えた群においてIFN-γ産生量が増加傾向にあり、メロキシカムとラット抗ウシPD-L1抗体を併用すると、有意差は認められなかったもののIFN-γ産生量がさらに増強された (図47)。この結果より、M. bovis感染牛において、COX-2阻害剤とラット抗ウシPD-L1抗体の併用によって、免疫活性化効果がより強く誘導されることが示唆された。
【0160】
〔参考例2〕
ラット-ウシキメラ抗PD-L1抗体
1. 序論
免疫抑制受容体Programmed death 1 (PD-1) とそのリガンドであるProgrammed death ligand 1 (PD-L1)は過剰な免疫応答を抑制し、免疫寛容に深く関連している因子として京都大学、本庶 佑氏らによって同定された分子である。腫瘍における免疫抑制に関与していることも近年明らかにされている。本参考例では、ウシの感染症に対する新規治療法の樹立を目的にウシPD-1およびPD-L1の結合を阻害可能なラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体 (4G12; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561.) の可変領域遺伝子と、ウシ免疫グロブリン(IgG1、ただし、 ADCC活性を抑制するために、CH2ドメインのFcγ受容体予想結合部位に変異を加えた。図48参照。アミノ酸番号及び変異: 250 E→P, 251 L→V, 252 P→A, 253 G→deletion, 347 A→S, 348 P→S; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug; 142(4):551-561.)の定常領域遺伝子を組み合わせたキメラ抗体遺伝子を導入したチャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovary cell:CHO細胞)を培養増殖させて得たラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12を作製し、in vitro及びin vivoの効果を確認した。
【0161】
2. 材料および方法
2.1. ウシPD-1およびPD-L1発現細胞の構築
ウシPD-1遺伝子 (GenBank accession number AB510901; Ikebuchi R, Konnai S, Sunden Y, Onuma M, Ohashi K. Microbiol. Immunol. 2010 May; 54(5):291-298.)、ウシPD-L1遺伝子(GenBank accession number AB510902; Ikebuchi R, Konnai S, Shirai T, Sunden Y, Murata S, Onuma M, Ohashi K. Vet. Res. 2011 Sep. 26; 42:103.)についてcDNA全長の塩基配列を決定し、その遺伝子情報よりウシPD-1またはPD-L1膜発現細胞を作製した。まず、ウシPD-1またはPD-L1発現プラスミドを作製するため、合成したウシPBMC 由来cDNA を鋳型として、5´末端側に制限酵素NotIおよびHindIII(ウシPD-1)、NheIおよびXhoI(ウシPD-L1)認識部位を付加したプライマー(boPD-1-myc FおよびR、boPD-L1-EGFP FおよびR)を用いてPCR を行った。得られたPCR 産物をNotI(Takara社)およびHindIII(Takara社; ウシPD-1)、NheI(Takara社)およびXhoI(Takara社; ウシPD-L1)により処理した後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit(NIPPON Genetics 社)を用いて精製し、同様の制限酵素処理を行ったpCMV-Tag1 vector(Agilent Technologies社; ウシPD-1)またはpEGFP-N2 vector(Clontech社; ウシPD-L1)へ導入し、クローニングを行った。得られた目的の発現プラスミドはQIAGEN Plasmid Midi kit(Qiagen 社)用いて抽出し、実験に供するまで-30℃で保存した。以降、作製した発現プラスミドをpCMV-Tag1-boPD-1またはと表記する。
プライマー(boPD-1-myc F): ATATGCGGCCGCATGGGGACCCCGCGGGCGCT(配列番号143)
プライマー(boPD-1-myc R): GCGCAAGCTTTCAGAGGGGCCAGGAGCAGT(配列番号144)
プライマー(boPD-L1-EGFP F):CTAGCTAGCACCATGAGGATATATAGTGTCTTAAC(配列番号145)
プライマー(boPD-L1-EGFP R): CAATCTCGAGTTACAGACAGAAGATGACTGC(配列番号146)
【0162】
以下の手順に従い、ウシPD-1膜発現細胞を作製した。まず、4×106 個のCHO-DG44 細胞に2.5 μg のpCMV-Tag1-boPD-1をLipofectamine LTX(Invitrogen社)を用いて導入した。48 時間後、G418(Enzo Life Science社)800 μg/ml、GlutaMAX supplement(Life technologies 社) 20 ml/l、10% Pluronic F-68(Life technologies 社)18 ml/l を含むCD DG44 培地(Life technologies 社)へ培地交換し、セレクションを行った。得られた発現細胞をラット抗ウシPD-1抗体5D2 と室温で反応させ、洗浄後、抗ラットIgGマイクロビーズ標識抗体(Miltenyi Biotec社)と室温でさらに反応させた。Auto MACS(Miltenyi Biotec社)を用いてウシPD-1を高発現する細胞を分離し、さらに純度を高めるため同様の手順で再分離を行った。作製した発現細胞について限界希釈法によりクローニングを行い、ウシPD-1高発現CHO DG44細胞を得た(ウシPD-1発現細胞)。
【0163】
以下の手順に従い、ウシPD-L1膜発現細胞を作製した。まず、4×106 個のCHO-DG44 細胞に2.5 μg のpEGFP-N2-boPD-L1あるいは陰性対照としてpEGFP-N2をLipofectamine LTX(Invitrogen社)を用いて導入した。48 時間後、G418(Enzo Life Science社)800 μg/ml、GlutaMAX supplement(Life technologies 社)20 ml/l、10% Pluronic F-68(Life technologies 社)18 ml/l を含むCD DG44 培地(Life technologies 社)へ培地交換し、セレクションを行うと同時に限界希釈法によりクローニングを行った(ウシPD-L1発現細胞)。作製した発現細胞におけるウシPD-L1 の発現を確かめるために、倒立型共焦点レーザー顕微鏡LSM700(ZEISS 社)により、EGFPの細胞内局在を可視化した。
【0164】
2.2. 可溶性ウシPD-1およびPD-L1の構築
以下の手順に従い、ウシPD-1-Ig発現プラスミドを構築した。ウシPD-1(GenBank accession number AB510901)のシグナルペプチドおよび細胞外領域を既知のウシIgG1(GenBank accession number X62916)の定常領域Fc部分と結合させた遺伝子配列を作成し、CHO細胞にコドンの最適化を行った後、制限酵素(NotI)認識配列、KOZAK配列、ウシPD-1シグナルペプチド配列、ウシPD-1遺伝子細胞外領域配列、ウシIgG1 Fc領域配列、制限酵素(XbaI)認識配列を上記の順で配置するように遺伝子合成を行った。なお、ウシIgG1はADCC活性を抑制するために、CH2ドメインのFcγ受容体予想結合部位に変異を加えた(変異挿入箇所: 185 E→P, 186 L→V, 187 P→A, 189 G→deletion, 281 A→S, 282 P→S; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug; 142(4):551-561. この論文のFigure 2にPD-1-Igのアミノ酸配列、変異挿入箇所が掲載されている)。合成した遺伝子鎖をNotI(Takara社)およびXbaI(Takara社)によって処理した後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit(NIPPON Genetics 社)を用いて精製し、同様の制限酵素処理を行った発現用ベクターpDN11(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 鈴木 定彦 教授より分与)のクローニングサイト(PCMV下流、INRBGとPABGHの間にあるNotIおよびXbaI制限酵素認識配列)へ組み込み、ウシPD-1-Ig発現ベクターを構築した。発現プラスミドはQIAGEN Plasmid Midi kit(Qiagen 社)によって精製し、実験に供するまで-30°Cにて保存した。以降、作製した発現プラスミドをpDN11-boPD-1-Igと表記する。
【0165】
以下の手順に従い、ウシPD-L1-Ig発現プラスミドを構築した。ウシPD-L1(GenBank accession number AB510902)のシグナルペプチドおよび細胞外領域を増幅するように、5´末端側に制限酵素NheIおよびEcoRV認識部位を付加したプライマー(boPD-L1-Ig FおよびR)を設計した。合成したウシPBMC由来cDNAを鋳型にPCRを行い、PCR産物をNheI (Takara社) およびEcoRV (Takara社) によって処理した後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit(NIPPON Genetics社)を用いて精製し、同様の制限酵素処理を行ったpCXN2.1-Rabbit IgG1 Fc vector(Niwa et al., 1991; Zettlmeissl et al., 1990; 順天堂大学大学院医学研究科教授 横溝 岳彦 教授より分与されたものを改変 )に導入し、クローニングを行った。発現プラスミドはQIAGEN Plasmid Midi kit(Qiagen 社)またはFastGene Xpress Plasmid PLUS Kit(NIPPON Genetics社)によって精製し、実験に供するまで-30°Cにて保存した。以降、作製した発現プラスミドをpCXN2.1-boPD-L1-Igと表記する。
プライマー(boPD-L1-Ig F):GCTAGCATGAGGATATATAGTGTCTTAAC(配列番号147)
プライマー(boPD-L1-Ig R): GATATCATTCCTCTTTTTTGCTGGAT(配列番号148)
【0166】
以下の手順に従い、可溶性ウシPD-1-Ig発現細胞を作製した。4×106 個のCHO-DG44 細胞に2.5 μg のpDN11-boPD-1-IgをLipofectamine LTX(Invitrogen社)を用いて導入した。48 時間後、G418(Enzo Life Science社)800 μg/ml、GlutaMAX supplement(Life technologies 社)20 ml/lを含むOptiCHO AGT培地(Life technologies 社)へ培地交換し、3週間培養してセレクションを行った。得られた細胞株の培養上清中のFc 融合組換えタンパク質の濃度は抗ウシIgG F(c) ウサギポリクローナル抗体(Rockland社)を用いたELISA法を用いて測定し、Fc 融合組換えタンパク質を高発現する細胞株の選別を行った。得られた高発現細胞株はG418 を含まない培地に移し、14日間振盪培養を行って培養上清を回収した。Fc 融合組換えタンパク質を含む培養上清は、Centricon Plus-70(Millipore 社)を用いて限外濾過した後に、Ab-Capcher Extra(ProteNova 社)を用いてFc 融合組換えタンパク質を精製した。精製後、PD-10 Desalting Column(GE Healthcare 社)によりバッファーをリン酸緩衝生理食塩水(PBS; pH 7.4)に置換し、実験に供するまで-30°C にて保存した(ウシPD-1-Ig)。精製後のウシPD-1-Ig の濃度は抗ウシIgG F(c) ウサギポリクローナル抗体(Rockland社)を用いたELISA法により測定した。ELISA の各洗浄操作にはAuto Plate Washer BIO WASHER 50(DS Pharma Biomedical 社)を使用し、吸光度の測定にはMicroplate Reader MTP-650FA(コロナ電気社)を使用した。
【0167】
以下の手順に従い、可溶性ウシPD-L1-Ig発現細胞を作製した。7.5×107 個のExpi293F 細胞(Life Technologies 社)に30 μg のpCXN2.1-boPD-L1-IgをExpifectamine(Life Technologies社)を用いて導入し、7 日間振盪培養を行って培養上清を回収した。培養上清からAb-Capcher Extra(ProteNova 社; ウシPD-L1-Ig)を用いて組換えタンパク質を精製した。精製後、PD MiniTrap G-25(GE Healthcare 社)によりバッファーをPBS(pH 7.4)に置換し、実験に供するまで-30°C にて保存した(ウシPD-L1-Ig)。精製後のウシPD-L1-Igの濃度はRabbit IgG ELISA Quantitation Set(Bethyl 社)を用いて測定した。ELISA の各洗浄操作にはAuto Plate Washer BIO WASHER 50(DS Pharma Biomedical社)を使用し、吸光度の測定にはMicroplate Reader MTP-650FA(コロナ電気社)を使用した。
【0168】
2.3. ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体産生細胞の作製
ウシPD-L1-Ig(Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561. この論文に記載した方法でウシPD-L1-Igを作製し、免疫に使用した)をラットの足蹠に免疫し、腸骨リンパ節法を用いてハイブリドーマを樹立して、ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ 4G12株を得た。ラット抗ウシPD-L1モノクローナル抗体の樹立法については、以下の非特許文献にその詳細が記載されている(Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Vet. Res. 2013 Jul. 22; 44:59; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug.; 142(4):551-561)。
【0169】
2.4. ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体発現ベクターの作製
ラット抗ウシPD-L1抗体4G12を抗体可変領域としてウシIgG1およびウシIgλの抗体定常領域を融合させた、ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12を樹立した。
【0170】
まず、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12を産生するハイブリドーマより可変領域(重鎖および軽鎖)の遺伝子をそれぞれ同定した。次に、当該ラット抗体それぞれの重鎖および軽鎖可変領域配列を既知のウシIgG1(重鎖; GenBank Accession number X62916を改変)およびウシIgλ(軽鎖; GenBank Accession number X62917)の定常領域と結合させた遺伝子配列を作成し、コドン最適化を行った(ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体ch4G12:配列番号115および116(アミノ酸配列)、配列番号117および118(コドン最適化後ヌクレオチド配列))。なお、ウシIgG1にはADCC活性を抑制するために、CH2ドメインのFcγ受容体予想結合部位に変異を加えた(図48参照。アミノ酸番号及び変異: 250 E→P, 251 L→V, 252 P→A, 253 G→deletion, 347 A→S, 348 P→S; Ikebuchi R, Konnai S, Okagawa T, Yokoyama K, Nakajima C, Suzuki Y, Murata S, Ohashi K. Immunology 2014 Aug; 142(4):551-561.)。そして、NotI制限酵素認識配列、KOZAK配列、キメラ抗体軽鎖配列、ポリA付加シグナル配列(PABGH)、プロモーター配列(PCMV)、SacI制限酵素認識配列、イントロン配列(INRBG)、KOZAK配列、キメラ抗体重鎖配列、XbaI制限酵素認識配列を上記の順で配置するように遺伝子を人工的に合成した。合成した遺伝子鎖をNotI(Takara社)およびXbaI(Takara社)によって処理した後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit(NIPPON Genetics 社)を用いて精製し、同様の制限酵素処理を行った発現プラスミドpDC6(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター鈴木定彦教授より分与)のクローニングサイト(PCMV下流、INRBGとPABGHの間にあるNotIおよびXbaI制限酵素認識配列)へ導入し、クローニングを行った(図49)。得られた目的の発現プラスミドはQIAGEN Plasmid Midi kit(Qiagen 社)用いて抽出し、実験に供するまで-30℃で保存した。以降、作製した発現プラスミドをpDC6-boPD-L1ch4G12と表記する。
【0171】
2.5. ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の発現
pDC6-boPD-L1ch4G12を、ジヒドロ葉酸還元酵素欠損細胞であるCHO-DG44 細胞(CHO-DG44 (dfhr-/-))へ導入した。48 時間後、GlutaMAX supplement(Life technologies 社)20 ml/lを含むOptiCHO AGT培地(Life technologies 社)へ培地交換し、3週間培養して発現細胞のセレクションおよび限界希釈法によるクローニングを行った。次に、抗ウシIgG F(c) ウサギポリクローナル抗体(Rockland社)を用いたドットブロット法およびELISA法により培養上清に含まれるキメラ抗体の濃度を測定し、高発現クローンを選抜した。さらに、選抜したラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体高発現クローンに対して、60 nM のメトトレキサート(Mtx)を含む培地で負荷をかけることにより遺伝子増幅処理を行った。以上のようにして樹立したラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体安定発現細胞を、Mtx を含まないOpti-CHO AGT 培地へ移し、14 日間の振盪培養を行った(125 rpm, 37℃, 5% CO2)。抗ウシIgG F(c) ウサギポリクローナル抗体(Rockland社)を用いたELISA法を用いて、培養上清中のキメラ抗体産生量を定量した。ELISA の各洗浄操作にはAuto Plate Washer BIO WASHER 50(DS Pharma Biomedical 社)を使用し、吸光度の測定にはMicroplate Reader MTP-650FA(コロナ電気社)を使用した。14 日目の培養上清を10,000 g で10 分間遠心して細胞を除いた後、遠心上清をSteritop-GP 0.22 μmフィルター(Millipore社)に通して滅菌し、精製に供するまで4°C にて保存した。
【0172】
2.6. ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の精製
上記の方法により準備した培養上清から、Ab Capcher Extra(ProteNova社)を用いてキメラ抗体を精製した。レジンへの結合はオープンカラム法を用い、平衡化バッファーおよび洗浄バッファーとしてPBS(pH 7.4)を使用した。溶出バッファーにはIgG Elution Buffer(Thermo Fisher Scientific社)を、中和バッファーには1M Tris(pH 9.0)を使用した。精製した抗体は、PD-10 Desalting Column(GE Healthcare 社)およびAmicon Ultra-15(50 kDa、Millipore社)を用いて、PBS(pH 7.4)へのバッファー置換および濃縮を行った。精製したキメラ抗体は、0.22 μm シリンジフィルター(Millipore社)を通して滅菌し、実験に供するまで4°C にて保存した。
【0173】
2.7. ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の精製純度の確認
精製したラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の純度を確かめるため、SDS-PAGE およびCBB 染色により抗体タンパク質の検出を行った。10% アクリルアミドゲルを用いて、精製したラット-ウシキメラ抗体を還元条件下(2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich社)により還元)および非還元条件下にて電気泳動した。Quick-CBB kit(和光純薬工業社)により染色を行った後、蒸留水中で脱色を行った。結果を図50に示す。還元条件では25kDaおよび50kDa、非還元条件では150kDaの想定される位置にバンドが確認された。
【0174】
2.8. ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体の結合特異性
ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体がウシPD-L1発現細胞(前述)に特異的に結合することをフローサイトメトリー法により確認した。まず、ウシPD-L1発現細胞に対してラット抗ウシPD-L1抗体4G12またはラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体ch4G12を室温で30分間反応させた。洗浄後、APC標識抗ラットIgヤギ抗体(SouthernBiotech社)またはAlexa Fluor 647標識抗ウシIgG(H+L)ヤギF(ab')2(Jackson ImmunoResearch社)を室温で30分間反応させた。陰性対照抗体として、ラットIgG2a(κ) アイソタイプコントロール(BD Biosciences社)またはウシIgG1抗体(Bethyl社)を使用した。洗浄後、細胞表面に結合した各ラット抗体またはラット-ウシキメラ抗体をFACS Verse(BD Biosciences社)により検出した。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には、1% ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich社)を加えたPBSを使用した。
【0175】
実験結果を図51に示す。ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12と同様にウシPD-L1発現細胞に結合することが示された。
【0176】
2.9. ラット-ウシキメラ抗PD-L1 抗体のウシPD-1/PD-L1 結合阻害活性
(1) ウシPD-L1発現細胞と可溶性ウシPD-1 の結合阻害試験
ウシPD-L1発現細胞(前述)およびウシPD-1-Ig(前述)を用いて、抗ウシPD-L1 抗体によるウシPD-1/PD-L1 結合阻害試験を行った。まず、2×105個のウシPD-L1 発現細胞を各濃度(0, 0.32, 0.63, 1.25, 2.5, 5, 10 μg/ml)のラット抗ウシPD-L1抗体4G12 またはラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体ch4G12と室温で30分間反応させた。陰性対照抗体として、ラットIgG2a(κ) アイソタイプコントロール(BD Biosciences社)またはウシIgG1抗体(Bethyl社)を使用した。洗浄後、Lightning-Link Type A Biotin Labeling Kit(Innova Biosciences社)を用いてビオチン標識したウシPD-1-Ig を終濃度2 μg/ml となるよう添加し、室温でさらに30分間反応させた。さらに洗浄後、APC標識ストレプトアビジン(BioLegend社)により細胞表面に結合したウシPD-1-Ig を検出した。解析にはFACS Verse(BD Biosciences社)を用いた。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には、1% ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich社)を加えたPBSを使用した。抗体非添加時のウシPD-1-Ig結合細胞の割合を100%とし、各抗体濃度におけるウシPD-1-Ig結合細胞の割合を相対値として表した。
【0177】
実験結果を図52に示す。ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12と同様にウシPD-1/PD-L1の結合を濃度依存的に阻害できることが示された。
【0178】
(2) ウシPD-1発現細胞と可溶性ウシPD-L1 の結合阻害試験
ウシPD-1発現細胞(前述)およびウシPD-L1-Ig(前述)を用いて、抗ウシPD-L1 抗体によるウシPD-1/PD-L1 結合阻害試験を行った。まず、96穴プレートに終濃度(0, 0.32, 0.63, 1.25, 2.5, 5, 10 μg/ml)のラット抗ウシPD-L1抗体4G12 またはラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体ch4G12と、終濃度1 μg/mlのウシPD-L1-Igを添加し、室温で30分間反応させた。この混合液を2×105個のウシPD-1 発現細胞と室温で30分間反応させた。陰性対照抗体として、ラットIgG2a(κ) アイソタイプコントロール(BD Biosciences社)またはウシIgG1抗体(Bethyl社)を使用した。洗浄後、Alexa Fluor 647 標識抗ウサギIgG (H+L) ヤギF(ab')2(Life Technologies社)を室温で30分間反応させ、細胞表面に結合したウシPD-L1-Ig を検出した。解析にはFACS Verse(BD Biosciences社)を用いた。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には、1% ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich社)を加えたPBSを使用した。抗体非添加時のウシPD-L1-Ig結合細胞の割合を100%とし、各抗体濃度におけるウシPD-L1-Ig結合細胞の割合を相対値として表した。
【0179】
実験結果を図53に示す。ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12と同様にウシPD-1/PD-L1の結合を濃度依存的に阻害できることが示された。
【0180】
2.10. ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体を用いた生物活性試験
(1) 細胞増殖への影響
ラット-ウシキメラ抗PD-L1 抗体によるウシPD-1/PD-L1 結合阻害がリンパ球を活性化することを確かめるため、細胞増殖を指標として生物活性試験を行った。健常牛の末梢血から分離したウシPBMCを10×106個/mlとなるようにPBSに懸濁し、Carboxyfluorescein succinimidyl ester(CFSE)を用いて室温で20分間反応させた。10% 非働化ウシ胎仔血清(Cell Culture Technologies社)、抗生物質(ストレプトマイシン200 μg/ml、ペニシリン200 U/ml)(Life Technologies社)、0.01% L-グルタミン(Life Technologies社)を含むRPMI 1640培地(Sigma-Aldrich社)で2回洗浄した後、抗ウシCD3マウス抗体(WSU Monoclonal Antibody Center社)と4℃で30分間反応させた。洗浄後、抗マウスIgG1マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)と4℃で15分間反応させ、autoMACS(登録商標) Pro(Miltenyi Biotec)を用いてCD3陽性T細胞を分離した。分離したCD3陽性T細胞に、抗ウシCD3マウス抗体(WSU Monoclonal Antibody Center社)および抗ウシCD28マウス抗体(Bio-Rad社)を添加し、10 μg/mlのラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体ch4G12存在下または非存在下で、ウシPD-L1発現細胞と共培養した(CD3陽性T細胞:ウシPD-L1発現細胞=10:1)。抗体のコントロールには、血清由来ウシIgG(Sigma-Aldrich社)を使用し、PD-L1発現細胞のコントロールには、pEGFP-N2を導入したEGFP発現細胞を用いた。6日後、細胞を回収し、抗ウシCD4マウス抗体および抗ウシCD8マウス抗体(Bio-Rad社)と室温で30分間反応させた。抗体の標識にはZenon Mouse IgG1 Labeling Kits(Life Technologies社)またはLightning-Link Kit(Innova Biosciences社)を用いた。解析にはFACS Verse(BD Biosciences社)を用いた。培養後の洗浄操作および抗体の希釈には、1% ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich社)を加えたPBSを使用した。
【0181】
実験結果を図54に示す。ウシPD-L1発現細胞との共培養により、CD4陽性およびCD8陽性T細胞の増殖が有意に抑制された。ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12は、CD4陽性T細胞において、この抑制を阻害することが示された。
【0182】
(2) IFN-γ産生量への影響
ラット-ウシキメラ抗PD-L1 抗体によるウシPD-1/PD-L1 結合阻害がリンパ球を活性化することを確かめるため、IFN-γ産生量を指標として生物活性試験を行った。BLV感染牛の末梢血から分離したウシPBMCを4×106個/mlとなるように10% 非働化ウシ胎仔血清(Cell Culture Technologies社)、抗生物質(ストレプトマイシン200 μg/ml、ペニシリン200U/ml)(Life Technologies社)、0.01% L-グルタミン(Life Technologies社)を含むRPMI 1640培地(Sigma-Aldrich社)に懸濁した。PBMCに10 μg/mlのラット抗ウシPD-L1抗体4G12 またはラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体ch4G12、2% BLV感染ヒツジ胎仔腎細胞(FLK-BLV)培養上清を添加し、37℃, 5% CO2条件下で6日間培養した。コントロール抗体には、血清由来ラットIgG(Sigma-Aldrich社)および血清由来ウシIgG(Sigma-Aldrich社)を用いた。6日後、培養上清を回収し、Bovine IFN-γ ELISA Kit(BETYL社)を用いてIFN-γ産生量を定量した。ELISA の各洗浄操作にはAuto Plate Washer BIO WASHER 50(DS Pharma Biomedical社)を使用し、吸光度の測定にはMicroplate Reader MTP-650FA(コロナ電気社)を使用した。
【0183】
実験結果を図55に示す。ラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1抗体ch4G12は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12と同様にBLV抗原に対するウシPBMCのIFN-γ応答を上昇させることが示された(n = 10)。
【0184】
2.11. 牛への接種試験
BLV実験感染牛(ホルスタイン種、雄、7ヶ月齢、体重267 kg)に樹立したラット-ウシキメラ抗ウシPD-L1 抗体ch4G12約260 mg(1 mg/kg)を点滴静注した。感染牛から経時的に採血を行い、密度勾配遠心法によりPBMCを分離した。
(1) BLV抗原に対するT細胞の細胞増殖応答
ウシPBMCをPBSに懸濁し、CFSEを用いて室温で20分間反応させた。10% 非働化ウシ胎仔血清(Cell Culture Technologies社)、抗生物質(ストレプトマイシン200 μg/ml、ペニシリン200 U/ml)(Life Technologies社)、0.01% L-グルタミン(Life Technologies社)を含むRPMI 1640培地(Sigma-Aldrich社)で2回洗浄した後、同培地で4×106個/mlに調整した。PBMCに2% BLV感染ヒツジ胎仔腎細胞(FLK-BLV)培養上清を添加し、37℃, 5% CO2条件下で6日間培養した。コントロールには、2% BLV非感染ヒツジ胎仔腎細胞(FLK)培養上清を用いた。6日後、PBMCを回収し、抗ウシCD4マウス抗体、抗ウシCD8マウス抗体および抗ウシIgMマウス抗体(Bio-Rad社)と4℃で20分間反応させた。抗体の標識にはZenon Mouse IgG1 Labeling Kits(Life Technologies社)またはLightning-Link Kit(Innova Biosciences社)を用いた。解析にはFACS Verse(BD Biosciences社)を用いた。なお、すべての洗浄操作および抗体の希釈には、1% ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich社)を加えたPBSを使用した。
【0185】
実験結果を図56に示す。抗体投与により、CD4陽性T細胞のBLV特異的な細胞増殖応答が投与前に比べ増加した。
【0186】
(2) BLVプロウイルス量の変化
分離したウシPBMCからWizard DNA Purification kit(Promega社)を用いてDNAを抽出した。抽出したDNAの濃度は、Nanodrop 8000 Spectrophotometer(Thermo Fisher Scientific社)を用いて測定した吸光度(260 nm)を基準として定量した。PBMC中のBLVプロウイルス量を測定するため、Cycleave PCR Reaction Mix SP(TaKaRa社)およびウシ白血病ウイルス検出用 Probe/Primer/Positive control(TaKaRa社)を用いてリアルタイムPCRを行った。測定にはLightCycler480 System II(Roche Diagnosis社)を用いた。
【0187】
実験結果を図57に示す。BLVプロウイルス量は、試験期間終了まで投与前に比べて有意に減少した。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の医薬組成物は、がん及び/又は感染症の予防及び/又は治療に利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0189】
<配列番号1>
配列番号1は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
MESQTHVLISLLLSVSGTYGDIAITQSPSSVAVSVGETVTLSCKSSQSLLYSENQKDYLGWYQQKPGQTPKPLIYWATNRHTGVPDRFTGSGSGTDFTLIISSVQAEDLADYYCGQYLVYPFTFGPGTKLELK

<配列番号2>
配列番号2は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
MGWSQIILFLVAAATCVHSQVQLQQSGAELVKPGSSVKISCKASGYTFTSNFMHWVKQQPGNGLEWIGWIYPEYGNTKYNQKFDGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCASEEAVISLVYWGQGTLVTVSS

<配列番号3>
配列番号3は、イヌ抗体のL鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
QPKASPSVTLFPPSSEELGANKATLVCLISDFYPSGVTVAWKASGSPVTQGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPDKWKSHSSFSCLVTHEGSTVEKKVAPAECS

<配列番号4>
配列番号4は、イヌ抗体のH鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
ASTTAPSVFPLAPSCGSTSGSTVALACLVSGYFPEPVTVSWNSGSLTSGVHTFPSVLQSSGLYSLSSTVTVPSSRWPSETFTCNVVHPASNTKVDKPVPKESTCKCISPCPVPESLGGPSVFIFPPKPKDILRITRTPEITCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQPREQQFNSTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIGLPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSPKELSSSDTVTLTCLIKDFFPPEIDVEWQSNGQPEPESKYHTTAPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDTFTCAVMHEALQNHYTDLSLSHSPGK

<配列番号5>
配列番号5は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域のヌクレオチド配列を示す。
ATGGAATCACAGACGCATGTCCTCATTTCCCTTCTGCTCTCGGTATCTGGTACCTATGGGGACATTGCGATAACCCAGTCTCCATCCTCTGTGGCTGTGTCAGTAGGAGAGACGGTCACTCTGAGCTGCAAGTCCAGTCAGAGTCTTTTATACAGTGAAAACCAAAAGGACTATTTGGGCTGGTACCAGCAGAAACCAGGGCAGACTCCTAAACCCCTTATCTACTGGGCAACCAACCGGCACACTGGGGTCCCTGATCGCTTCACAGGTAGTGGATCCGGGACAGACTTCACTCTGATCATCAGCAGTGTGCAGGCTGAAGACCTGGCTGATTATTACTGTGGGCAGTACCTTGTCTATCCGTTCACGTTTGGACCTGGGACCAAGCTGGAACTGAAA

配列番号5のヌクレオチド配列のコドン最適化後ヌクレオチド配列を<配列番号15>に示す。
ATGGAATCTCAAACTCATGTTTTGATTTCATTACTTCTGAGTGTTTCCGGAACCTACGGTGATATCGCTATCACTCAATCTCCCTCCTCTGTTGCTGTGTCTGTGGGCGAAACCGTTACCCTGTCCTGCAAGTCCAGTCAGTCTCTTCTCTACTCCGAGAATCAAAAGGACTACCTGGGCTGGTACCAACAGAAGCCCGGCCAGACCCCAAAGCCACTGATATACTGGGCAACCAACAGGCACACCGGAGTGCCCGACAGGTTCACAGGCAGTGGATCTGGCACCGACTTTACCTTGATCATTTCAAGCGTGCAGGCTGAAGATCTGGCCGACTACTACTGTGGTCAGTATCTGGTGTATCCTTTCACTTTCGGGCCAGGGACAAAATTGGAATTGAAG

配列番号5のヌクレオチド配列のコドン最適化後ヌクレオチド配列を<配列番号112>に示す。
ATGGAATCTCAAACTCATGTTTTGATTTCATTACTTCTGAGTGTTTCCGGAACCTACGGTGATATCGCTATCACTCAATCTCCCTCCTCTGTTGCTGTGTCTGTGGGCGAAACCGTTACCCTGTCCTGCAAGTCCAGTCAGTCTCTTCTCTACTCCGAGAATCAAAAGGACTACCTGGGCTGGTACCAACAGAAGCCCGGCCAGACCCCAAAGCCACTGATATACTGGGCAACCAACAGGCACACCGGAGTGCCCGACAGGTTCACAGGCAGTGGATCTGGCACCGACTTTACCTTGATCATTTCAAGCGTGCAGGCTGAAGATCTGGCCGACTACTACTGTGGTCAGTATCTGGTGTATCCTTTCACTTTCGGGCCAGGGACAAAACTCGAGCTCAAA


<配列番号6>
配列番号6は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域のヌクレオチド配列を示す。
ATGGGATGGAGCCAGATCATCCTCTTTCTGGTGGCAGCAGCTACATGTGTTCACTCCCAGGTACAGCTGCAGCAATCTGGGGCTGAATTAGTGAAGCCTGGGTCCTCAGTGAAAATTTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACCAGTAACTTTATGCACTGGGTAAAGCAGCAGCCTGGAAATGGCCTTGAGTGGATTGGGTGGATTTATCCTGAATATGGTAATACTAAGTACAATCAAAAGTTCGATGGGAAGGCAACACTCACTGCAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTATATGCAGCTCAGCAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCAGTCTATTTCTGTGCAAGTGAGGAGGCAGTTATATCCCTTGTTTACTGGGGCCAAGGCACTCTGGTCACTGTCTCTTCA

配列番号6のヌクレオチド配列のコドン最適化後ヌクレオチド配列を<配列番号16>に示す。
ATGGGTTGGTCTCAAATTATCTTGTTTTTGGTTGCTGCAGCCACTTGTGTTCATTCTCAGGTGCAGCTGCAACAAAGCGGCGCAGAACTGGTGAAACCTGGCAGCAGCGTGAAAATATCTTGTAAGGCCAGCGGATATACTTTCACCTCCAATTTCATGCATTGGGTCAAACAGCAGCCCGGCAACGGACTCGAGTGGATCGGCTGGATCTACCCCGAGTATGGCAACACAAAATATAACCAAAAATTTGATGGAAAGGCTACCCTGACTGCCGATAAGTCCTCCAGCACCGCATACATGCAACTCTCCTCCCTGACCTCCGAGGATAGCGCTGTCTACTTCTGTGCTTCCGAAGAGGCTGTCATATCCTTGGTCTATTGGGGCCAAGGAACTCTGGTGACCGTCTCATCT

配列番号6のヌクレオチド配列のコドン最適化後ヌクレオチド配列を<配列番号113>に示す。
ATGGGGTGGTCCCAGATTATATTGTTCCTCGTCGCCGCCGCCACTTGCGTACACAGCCAAGTGCAACTTCAACAAAGCGGTGCAGAACTGGTAAAGCCCGGTAGCTCTGTGAAAATATCCTGTAAAGCCAGTGGCTACACATTTACCAGCAACTTTATGCACTGGGTGAAGCAACAGCCCGGAAATGGCTTGGAGTGGATTGGCTGGATCTATCCCGAATATGGTAACACCAAGTATAATCAGAAGTTCGACGGTAAGGCCACCCTCACCGCCGATAAGTCATCCTCCACCGCCTATATGCAGCTCAGCAGCCTGACCAGCGAGGATTCCGCTGTGTACTTCTGTGCCAGCGAAGAGGCTGTGATCTCATTGGTGTATTGGGGACAGGGCACCCTCGTCACCGTGTCCAGC

<配列番号7>
配列番号7は、イヌ抗体のL鎖定常領域のヌクレオチド配列を示す。
CAGCCCAAGGCCTCCCCCTCGGTCACACTCTTCCCGCCCTCCTCTGAGGAGCTCGGCGCCAACAAGGCCACCCTGGTGTGCCTCATCAGCGACTTCTACCCCAGCGGCGTGACGGTGGCCTGGAAGGCAAGCGGCAGCCCCGTCACCCAGGGCGTGGAGACCACCAAGCCCTCCAAGCAGAGCAACAACAAGTACGCGGCCAGCAGCTACCTGAGCCTGACGCCTGACAAGTGGAAATCTCACAGCAGCTTCAGCTGCCTGGTCACGCACGAGGGGAGCACCGTGGAGAAGAAGGTGGCCCCCGCAGAGTGCTCTTAG

配列番号7のヌクレオチド配列のコドン最適化後ヌクレオチド配列を<配列番号17>に示す。
CAGCCCAAAGCCTCTCCCAGCGTCACCCTCTTCCCACCTTCCAGTGAGGAGCTGGGGGCAAACAAAGCCACTTTGGTGTGTCTCATCTCCGATTTTTACCCCTCCGGGGTCACAGTCGCATGGAAGGCCTCCGGATCCCCTGTGACACAGGGAGTGGAGACAACAAAACCTAGCAAGCAGAGTAACAATAAGTATGCCGCCTCAAGCTATCTCAGCCTTACTCCTGATAAGTGGAAGTCACATAGCAGTTTTAGTTGCCTCGTAACACATGAGGGTTCAACTGTGGAGAAAAAAGTAGCTCCAGCTGAGTGCTCATGA

<配列番号8>
配列番号8は、イヌ抗体のH鎖定常領域のヌクレオチド配列を示す。
GCCTCCACCACGGCCCCCTCGGTTTTCCCACTGGCCCCCAGCTGCGGGTCCACTTCCGGCTCCACGGTGGCCCTGGCCTGCCTGGTGTCAGGCTACTTCCCCGAGCCTGTAACTGTGTCCTGGAATTCCGGCTCCTTGACCAGCGGTGTGCACACCTTCCCGTCCGTCCTGCAGTCCTCAGGGCTCTACTCCCTCAGCAGCACGGTGACAGTGCCCTCCAGCAGGTGGCCCAGCGAGACCTTCACCTGCAACGTGGTCCACCCGGCCAGCAACACTAAAGTAGACAAGCCAGTGCCCAAAGAGTCCACCTGCAAGTGTATATCCCCATGCCCAGTCCCTGAATCACTGGGAGGGCCTTCGGTCTTCATCTTTCCCCCGAAACCCAAGGACATCCTCAGGATTACCCGAACACCCGAGATCACCTGTGTGGTGTTAGATCTGGGCCGTGAGGACCCTGAGGTGCAGATCAGCTGGTTCGTGGATGGTAAGGAGGTGCACACAGCCAAGACGCAGCCTCGTGAGCAGCAGTTCAACAGCACCTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCCCCATTGAGCACCAGGACTGGCTCACCGGAAAGGAGTTCAAGTGCAGAGTCAACCACATAGGCCTCCCGTCCCCCATCGAGAGGACTATCTCCAAAGCCAGAGGGCAAGCCCATCAGCCCAGTGTGTATGTCCTGCCACCATCCCCAAAGGAGTTGTCATCCAGTGACACGGTCACCCTGACCTGCCTGATCAAAGACTTCTTCCCACCTGAGATTGATGTGGAGTGGCAGAGCAATGGACAGCCGGAGCCCGAGAGCAAGTACCACACGACTGCGCCCCAGCTGGACGAGGACGGGTCCTACTTCCTGTACAGCAAGCTCTCTGTGGACAAGAGCCGCTGGCAGCAGGGAGACACCTTCACATGTGCGGTGATGCATGAAGCTCTACAGAACCACTACACAGATCTATCCCTCTCCCATTCTCCGGGTAAATGA

配列番号8のヌクレオチド配列のコドン最適化後ヌクレオチド配列を<配列番号18>に示す。
GCTAGCACAACCGCTCCCTCCGTTTTTCCCCTCGCCCCATCCTGCGGGTCAACCAGCGGATCCACCGTCGCTCTGGCTTGTCTGGTGTCAGGATACTTCCCCGAGCCTGTCACCGTTTCTTGGAATAGCGGCAGCCTTACTTCCGGCGTGCATACCTTCCCTAGCGTGCTTCAGTCCTCCGGTCTGTATTCCCTCAGCTCCACCGTAACTGTCCCAAGCTCAAGGTGGCCCTCTGAGACATTTACCTGCAATGTGGTCCATCCTGCTTCAAATACCAAAGTGGACAAGCCCGTCCCAAAAGAGTCTACCTGCAAATGTATCAGTCCTTGTCCCGTGCCCGAGTCTCTGGGCGGACCCTCAGTCTTTATCTTCCCACCCAAGCCAAAGGACATATTGCGCATTACACGGACACCCGAAATCACCTGTGTTGTGTTGGATCTCGGCCGGGAAGATCCTGAGGTGCAGATTAGTTGGTTTGTTGATGGCAAGGAGGTGCACACAGCAAAAACACAGCCCAGAGAACAGCAGTTCAACAGTACTTATAGAGTAGTGAGTGTGTTGCCTATAGAGCATCAGGACTGGCTGACAGGCAAAGAATTCAAATGTAGGGTTAACCACATTGGCCTCCCTAGTCCAATCGAGAGGACAATCTCTAAAGCCCGAGGCCAGGCTCATCAGCCTTCTGTGTACGTTCTGCCTCCTAGTCCTAAGGAACTGTCTTCTTCAGACACAGTAACACTCACTTGCCTGATTAAGGACTTTTTTCCTCCAGAGATTGATGTGGAATGGCAGTCTAACGGGCAGCCAGAGCCAGAATCTAAGTACCACACTACTGCACCACAGCTGGATGAGGATGGGTCTTACTTCCTGTACAGTAAGCTGAGTGTGGACAAGTCTCGATGGCAGCAGGGGGATACTTTTACTTGCGCAGTAATGCACGAAGCATTGCAGAACCACTACACTGACCTGTCACTTAGTCACTCACCAGGGAAGTAA

<配列番号9>
配列番号9は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域とイヌ抗体のL鎖定常領域とからなるキメラL鎖のアミノ酸配列を示す。
MESQTHVLISLLLSVSGTYGDIAITQSPSSVAVSVGETVTLSCKSSQSLLYSENQKDYLGWYQQKPGQTPKPLIYWATNRHTGVPDRFTGSGSGTDFTLIISSVQAEDLADYYCGQYLVYPFTFGPGTKLELKQPKASPSVTLFPPSSEELGANKATLVCLISDFYPSGVTVAWKASGSPVTQGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPDKWKSHSSFSCLVTHEGSTVEKKVAPAECS

<配列番号10>
配列番号10は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とイヌ抗体のH鎖定常領域とからなるキメラH鎖のアミノ酸配列を示す。
MGWSQIILFLVAAATCVHSQVQLQQSGAELVKPGSSVKISCKASGYTFTSNFMHWVKQQPGNGLEWIGWIYPEYGNTKYNQKFDGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCASEEAVISLVYWGQGTLVTVSSASTTAPSVFPLAPSCGSTSGSTVALACLVSGYFPEPVTVSWNSGSLTSGVHTFPSVLQSSGLYSLSSTVTVPSSRWPSETFTCNVVHPASNTKVDKPVPKESTCKCISPCPVPESLGGPSVFIFPPKPKDILRITRTPEITCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQPREQQFNSTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIGLPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSPKELSSSDTVTLTCLIKDFFPPEIDVEWQSNGQPEPESKYHTTAPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDTFTCAVMHEALQNHYTDLSLSHSPGK

<配列番号19>
配列番号19は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域とイヌ抗体のL鎖定常領域とからなるキメラL鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後ヌクレオチド配列)を示す。
ATGGAATCTCAAACTCATGTTTTGATTTCATTACTTCTGAGTGTTTCCGGAACCTACGGTGATATCGCTATCACTCAATCTCCCTCCTCTGTTGCTGTGTCTGTGGGCGAAACCGTTACCCTGTCCTGCAAGTCCAGTCAGTCTCTTCTCTACTCCGAGAATCAAAAGGACTACCTGGGCTGGTACCAACAGAAGCCCGGCCAGACCCCAAAGCCACTGATATACTGGGCAACCAACAGGCACACCGGAGTGCCCGACAGGTTCACAGGCAGTGGATCTGGCACCGACTTTACCTTGATCATTTCAAGCGTGCAGGCTGAAGATCTGGCCGACTACTACTGTGGTCAGTATCTGGTGTATCCTTTCACTTTCGGGCCAGGGACAAAATTGGAATTGAAGCAGCCCAAAGCCTCTCCCAGCGTCACCCTCTTCCCACCTTCCAGTGAGGAGCTGGGGGCAAACAAAGCCACTTTGGTGTGTCTCATCTCCGATTTTTACCCCTCCGGGGTCACAGTCGCATGGAAGGCCTCCGGATCCCCTGTGACACAGGGAGTGGAGACAACAAAACCTAGCAAGCAGAGTAACAATAAGTATGCCGCCTCAAGCTATCTCAGCCTTACTCCTGATAAGTGGAAGTCACATAGCAGTTTTAGTTGCCTCGTAACACATGAGGGTTCAACTGTGGAGAAAAAAGTAGCTCCAGCTGAGTGCTCATGA

<配列番号20>
配列番号20は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とイヌ抗体のH鎖定常領域とからなるキメラH鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後ヌクレオチド配列)を示す。
ATGGGTTGGTCTCAAATTATCTTGTTTTTGGTTGCTGCAGCCACTTGTGTTCATTCTCAGGTGCAGCTGCAACAAAGCGGCGCAGAACTGGTGAAACCTGGCAGCAGCGTGAAAATATCTTGTAAGGCCAGCGGATATACTTTCACCTCCAATTTCATGCATTGGGTCAAACAGCAGCCCGGCAACGGACTCGAGTGGATCGGCTGGATCTACCCCGAGTATGGCAACACAAAATATAACCAAAAATTTGATGGAAAGGCTACCCTGACTGCCGATAAGTCCTCCAGCACCGCATACATGCAACTCTCCTCCCTGACCTCCGAGGATAGCGCTGTCTACTTCTGTGCTTCCGAAGAGGCTGTCATATCCTTGGTCTATTGGGGCCAAGGAACTCTGGTGACCGTCTCATCTGCTAGCACAACCGCTCCCTCCGTTTTTCCCCTCGCCCCATCCTGCGGGTCAACCAGCGGATCCACCGTCGCTCTGGCTTGTCTGGTGTCAGGATACTTCCCCGAGCCTGTCACCGTTTCTTGGAATAGCGGCAGCCTTACTTCCGGCGTGCATACCTTCCCTAGCGTGCTTCAGTCCTCCGGTCTGTATTCCCTCAGCTCCACCGTAACTGTCCCAAGCTCAAGGTGGCCCTCTGAGACATTTACCTGCAATGTGGTCCATCCTGCTTCAAATACCAAAGTGGACAAGCCCGTCCCAAAAGAGTCTACCTGCAAATGTATCAGTCCTTGTCCCGTGCCCGAGTCTCTGGGCGGACCCTCAGTCTTTATCTTCCCACCCAAGCCAAAGGACATATTGCGCATTACACGGACACCCGAAATCACCTGTGTTGTGTTGGATCTCGGCCGGGAAGATCCTGAGGTGCAGATTAGTTGGTTTGTTGATGGCAAGGAGGTGCACACAGCAAAAACACAGCCCAGAGAACAGCAGTTCAACAGTACTTATAGAGTAGTGAGTGTGTTGCCTATAGAGCATCAGGACTGGCTGACAGGCAAAGAATTCAAATGTAGGGTTAACCACATTGGCCTCCCTAGTCCAATCGAGAGGACAATCTCTAAAGCCCGAGGCCAGGCTCATCAGCCTTCTGTGTACGTTCTGCCTCCTAGTCCTAAGGAACTGTCTTCTTCAGACACAGTAACACTCACTTGCCTGATTAAGGACTTTTTTCCTCCAGAGATTGATGTGGAATGGCAGTCTAACGGGCAGCCAGAGCCAGAATCTAAGTACCACACTACTGCACCACAGCTGGATGAGGATGGGTCTTACTTCCTGTACAGTAAGCTGAGTGTGGACAAGTCTCGATGGCAGCAGGGGGATACTTTTACTTGCGCAGTAATGCACGAAGCATTGCAGAACCACTACACTGACCTGTCACTTAGTCACTCACCAGGGAAGTAA

<配列番号11>
配列番号11は、ヒト抗体のL鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC

<配列番号12>
配列番号12は、ヒト抗体(IgG4 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
STKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK

<配列番号13>
配列番号13は、ヒト抗体のL鎖定常領域のヌクレオチド配列を示す。
ACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTAG

<配列番号14>
配列番号14は、ヒト抗体(IgG4 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
TCCACCAAGGGCCCATCCGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCATCATGCCCAGCACCTGAGTTCCTGGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTAAATGA

<配列番号21~36>
配列番号21~36は、順に、プライマーcPD-1 inner F、cPD-1 inner R、cPD-L1 inner F、cPD-L1 inner R、cPD-1 5´GSP、cPD-1 3´GSP、cPD-L1 5´GSP、cPD-L1 3´GSP、cPD-1-EGFP F、cPD-1-EGFP R、cPD-L1-EGFP F、cPD-L1-EGFP R、cPD-1-Ig 、cPD-1-Ig R、cPD-L1-Ig F及びcPD-L1-Ig Rのヌクレオチド配列を示す。

<配列番号37>
配列番号37は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のL鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列(QSLLYSENQKDY)を示す。
<配列番号38>
配列番号38は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のL鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列(GQYLVYPFT)を示す。
<配列番号39>
配列番号39は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のH鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列(GYTFTSNF)を示す。
<配列番号40>
配列番号40は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のH鎖可変領域のCDR2のアミノ酸配列(IYPEYGNT)を示す。
<配列番号41>
配列番号41は、ラット抗ウシPD-L1抗体4G12のH鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列(ASEEAVISLVY)を示す。
<配列番号42>
配列番号42は、ヒツジ抗体(IgG1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号43>
配列番号43は、ヒツジ抗体(IgG1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号44>
配列番号44は、ヒツジ抗体(IgG2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号45>
配列番号45は、ヒツジ抗体(IgG2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号46>
配列番号46は、ヒツジ抗体のL鎖(Ig kappa(CK))定常領域のアミノ酸配列を示す。
<配列番号47>
配列番号47は、ヒツジ抗体のL鎖(Ig kappa(CK))定常領域のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号48>
配列番号48は、ヒツジ抗体のL鎖(Ig lambda(CL))定常領域のアミノ酸配列を示す。
<配列番号49>
配列番号49は、ヒツジ抗体のL鎖(Ig lambda(CL))定常領域のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号50>
配列番号50は、ブタ抗体(IgG1a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号51>
配列番号51は、ブタ抗体(IgG1a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号52>
配列番号52は、ブタ抗体(IgG1b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号53>
配列番号53は、ブタ抗体(IgG1b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号54>
配列番号54は、ブタ抗体(IgG2a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号55>
配列番号55は、ブタ抗体(IgG2a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号56>
配列番号56は、ブタ抗体(IgG2b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号57>
配列番号57は、ブタ抗体(IgG2b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号58>
配列番号58は、ブタ抗体(IgG3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号59>
配列番号59は、ブタ抗体(IgG3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号60>
配列番号60は、ブタ抗体(IgG4a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号61>
配列番号61は、ブタ抗体(IgG4a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号62>
配列番号62は、ブタ抗体(IgG4b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号63>
配列番号63は、ブタ抗体(IgG4b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号64>
配列番号64は、ブタ抗体(IgG5a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号65>
配列番号65は、ブタ抗体(IgG5a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号66>
配列番号66は、ブタ抗体(IgG5b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号67>
配列番号67は、ブタ抗体(IgG5b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号68>
配列番号68は、ブタ抗体(IgG6a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号69>
配列番号69は、ブタ抗体(IgG6a)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号70>
配列番号70は、ブタ抗体(IgG6b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号71>
配列番号71は、ブタ抗体(IgG6b)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号72>
配列番号72は、スイギュウ抗体(IgG1と推定される)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号73>
配列番号73は、スイギュウ抗体(IgG1と推定される)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号74>
配列番号74は、スイギュウ抗体(IgG2と推定される)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号75>
配列番号75は、スイギュウ抗体(IgG2と推定される)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号76>
配列番号76は、スイギュウ抗体(IgG3と推定される)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号77>
配列番号77は、スイギュウ抗体(IgG3と推定される)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号78>
配列番号78は、スイギュウ抗体のL鎖(Ig lambdaと推定される)定常領域(CL)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号79>
配列番号79は、スイギュウ抗体のL鎖(Ig lambdaと推定される)定常領域(CL)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号80>
配列番号80は、ヒト抗体(IgG4 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号81>
配列番号81は、ヒト抗体(IgG4 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号82>
配列番号82は、ヒト抗体(IgG4 variant 3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号83>
配列番号83は、ヒト抗体(IgG4 variant 3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号84>
配列番号84は、ウシ抗体(IgG1 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号85>
配列番号85は、ウシ抗体(IgG1 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号86>
配列番号86は、ウシ抗体(IgG1 variant 3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号87>
配列番号87は、ウシ抗体(IgG2 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号88>
配列番号88は、ウシ抗体(IgG2 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号89>
配列番号89は、ウシ抗体(IgG2 variant 3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号90>
配列番号90は、ウシ抗体(IgG3 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号91>
配列番号91は、ウシ抗体(IgG3 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号92>
配列番号92は、ウシ抗体(IgG1 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号93>
配列番号93は、ウシ抗体(IgG1 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号94>
配列番号94は、ウシ抗体(IgG1 variant 3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号95>
配列番号95は、ウシ抗体(IgG2 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号96>
配列番号96は、ウシ抗体(IgG2 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号97>
配列番号97は、ウシ抗体(IgG2 variant 3)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号98>
配列番号98は、ウシ抗体(IgG3 variant 1)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号99>
配列番号99は、ウシ抗体(IgG3 variant 2)のH鎖定常領域(CH1~CH3)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号100>
配列番号100は、ウシ抗体のL鎖定常領域(ウシIg lambda, GenBank: X62917)のアミノ酸配列を示す。
QPKSPPSVTLFPPSTEELNGNKATLVCLISDFYPGSVTVVWKADGSTITRNVETTRASKQSNSKYAASSYLSLTSSDWKSKGSYSCEVTHEGSTVTKTVKPSECS
<配列番号101>
配列番号101は、ウシ抗体のL鎖定常領域(ウシIg lambda, GenBank: X62917)のヌクレオチド配列を示す。
CAGCCCAAGTCCCCACCCTCGGTCACCCTGTTCCCGCCCTCCACGGAGGAGCTCAACGGCAACAAGGCCACCCTGGTGTGTCTCATCAGCGACTTCTACCCGGGTAGCGTGACCGTGGTCTGGAAGGCAGACGGCAGCACCATCACCCGCAACGTGGAGACCACCCGGGCCTCCAAACAGAGCAACAGCAAGTACGCGGCCAGCAGCTACCTGAGCCTGACGAGCAGCGACTGGAAATCGAAAGGCAGTTACAGCTGCGAGGTCACGCACGAGGGGAGCACCGTGACGAAGACAGTGAAGCCCTCAGAGTGTTCTTAG
<配列番号102>
配列番号102は、ウシ抗体のH鎖定常領域(ウシIgG1, GenBank: X62916を改変)のアミノ酸配列を示す。変異箇所に下線を引いた。アミノ酸番号および変異:113E→P, 114L→V, 115P→A, 116G→deletion, 209A→S, 210P→S
ASTTAPKVYPLSSCCGDKSSSTVTLGCLVSSYMPEPVTVTWNSGALKSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSMVTVPGSTSGQTFTCNVAHPASSTKVDKAVDPTCKPSPCDCCPPPPVAGPSVFIFPPKPKDTLTISGTPEVTCVVVDVGHDDPEVKFSWFVDDVEVNTATTKPREEQFNSTYRVVSALRIQHQDWTGGKEFKCKVHNEGLPSSIVRTISRTKGPAREPQVYVLAPPQEELSKSTVSLTCMVTSFYPDYIAVEWQRNGQPESEDKYGTTPPQLDADSSYFLYSKLRVDRNSWQEGDTYTCVVMHEALHNHYTQKSTSKSAGK
<配列番号103>
配列番号103は、ウシ抗体のH鎖定常領域(ウシIgG1, GenBank: X62916を改変)のヌクレオチド配列(コドン最適化後)を示す。
GCTAGCACAACTGCTCCTAAGGTGTACCCCCTGAGCTCTTGCTGCGGCGACAAGTCTAGCAGCACCGTGACCCTCGGATGCCTCGTCAGCAGCTATATGCCTGAGCCAGTTACAGTGACATGGAATTCTGGTGCCCTTAAGTCCGGCGTCCATACCTTCCCTGCTGTGCTGCAGTCCTCTGGCCTGTACAGTTTGTCCTCTATGGTGACAGTACCCGGTTCCACCTCCGGACAGACCTTTACCTGTAATGTGGCTCATCCCGCCTCCTCCACAAAGGTGGATAAGGCTGTTGACCCTACCTGTAAACCCAGTCCATGCGACTGCTGTCCCCCCCCTCCAGTTGCCGGACCCTCAGTCTTTATTTTCCCACCCAAACCCAAAGACACCCTGACAATCTCTGGAACACCAGAAGTCACCTGCGTCGTCGTGGATGTGGGCCACGACGATCCTGAGGTAAAATTCTCATGGTTCGTCGACGATGTGGAAGTGAATACAGCTACTACAAAACCTCGCGAAGAGCAGTTTAACTCTACCTATCGAGTGGTTTCTGCTTTGCGGATTCAGCATCAGGATTGGACAGGCGGCAAAGAGTTTAAATGTAAAGTCCATAACGAGGGACTTCCTTCTAGTATCGTGCGCACTATCAGTAGAACTAAAGGGCCTGCTCGGGAACCTCAGGTGTACGTCCTGGCACCTCCACAGGAAGAGCTGAGTAAGTCTACAGTTTCTCTGACTTGTATGGTAACATCTTTTTATCCAGATTACATCGCAGTTGAATGGCAGAGGAACGGGCAGCCAGAGAGTGAGGATAAGTACGGGACTACTCCACCACAGCTGGACGCAGACTCAAGTTACTTCCTGTACTCAAAGCTGAGGGTTGACAGAAACTCATGGCAGGAGGGGGACACTTACACTTGCGTAGTTATGCACGAGGCACTTCACAACCACTACACTCAGAAGAGTACTTCAAAGAGTGCAGGGAAGTAA
<配列番号104~107>
配列番号104~107は、順に、プライマーcCD80-Ig F、cCD80-Ig R、cPD-L1-His F及びcPD-L1-His Rのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号108~111>
配列番号108~111は、順に、プライマーcanine COX2 rt F、canine COX2 rt R、canine HPRT1 rt F及びcanine HPRT1 rt Rのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号114>
配列番号114は、ウシ抗体のL鎖定常領域(ウシIg lambda, GenBank: X62917)のヌクレオチド配列(コドン最適化後)を示す。
CAGCCTAAGAGTCCTCCTTCTGTAACACTCTTTCCCCCCTCTACCGAGGAACTCAACGGCAATAAAGCTACCTTGGTTTGCCTTATTTCTGATTTCTACCCCGGGTCTGTGACCGTGGTGTGGAAAGCTGATGGGTCCACCATTACTCGGAATGTGGAAACCACCCGGGCTTCTAAGCAGTCCAACTCTAAATACGCAGCATCCTCCTATTTGAGTCTTACTAGTAGTGACTGGAAGTCAAAGGGTAGTTACAGTTGCGAAGTCACACATGAAGGTTCAACAGTGACAAAGACAGTCAAGCCCTCAGAGTGCTCATAG
<配列番号115>
配列番号115は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域と抗体のL鎖定常領域とからなるキメラL鎖のアミノ酸配列を示す。
MESQTHVLISLLLSVSGTYGDIAITQSPSSVAVSVGETVTLSCKSSQSLLYSENQKDYLGWYQQKPGQTPKPLIYWATNRHTGVPDRFTGSGSGTDFTLIISSVQAEDLADYYCGQYLVYPFTFGPGTKLELKQPKSPPSVTLFPPSTEELNGNKATLVCLISDFYPGSVTVVWKADGSTITRNVETTRASKQSNSKYAASSYLSLTSSDWKSKGSYSCEVTHEGSTVTKTVKPSECS
<配列番号116>
配列番号116は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とウシ抗体のH鎖定常領域とからなるキメラH鎖のアミノ酸配列を示す。
MGWSQIILFLVAAATCVHSQVQLQQSGAELVKPGSSVKISCKASGYTFTSNFMHWVKQQPGNGLEWIGWIYPEYGNTKYNQKFDGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCASEEAVISLVYWGQGTLVTVSSASTTAPKVYPLSSCCGDKSSSTVTLGCLVSSYMPEPVTVTWNSGALKSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSMVTVPGSTSGQTFTCNVAHPASSTKVDKAVDPTCKPSPCDCCPPPPVAGPSVFIFPPKPKDTLTISGTPEVTCVVVDVGHDDPEVKFSWFVDDVEVNTATTKPREEQFNSTYRVVSALRIQHQDWTGGKEFKCKVHNEGLPSSIVRTISRTKGPAREPQVYVLAPPQEELSKSTVSLTCMVTSFYPDYIAVEWQRNGQPESEDKYGTTPPQLDADSSYFLYSKLRVDRNSWQEGDTYTCVVMHEALHNHYTQKSTSKSAGK
<配列番号117>
配列番号117は、ラット抗ウシPD-L1抗体のL鎖可変領域とイヌ抗体のL鎖定常領域とからなるキメラL鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後ヌクレオチド配列)を示す。
ATGGAATCTCAAACTCATGTTTTGATTTCATTACTTCTGAGTGTTTCCGGAACCTACGGTGATATCGCTATCACTCAATCTCCCTCCTCTGTTGCTGTGTCTGTGGGCGAAACCGTTACCCTGTCCTGCAAGTCCAGTCAGTCTCTTCTCTACTCCGAGAATCAAAAGGACTACCTGGGCTGGTACCAACAGAAGCCCGGCCAGACCCCAAAGCCACTGATATACTGGGCAACCAACAGGCACACCGGAGTGCCCGACAGGTTCACAGGCAGTGGATCTGGCACCGACTTTACCTTGATCATTTCAAGCGTGCAGGCTGAAGATCTGGCCGACTACTACTGTGGTCAGTATCTGGTGTATCCTTTCACTTTCGGGCCAGGGACAAAACTCGAGCTCAAACAGCCTAAGAGTCCTCCTTCTGTAACACTCTTTCCCCCCTCTACCGAGGAACTCAACGGCAATAAAGCTACCTTGGTTTGCCTTATTTCTGATTTCTACCCCGGGTCTGTGACCGTGGTGTGGAAAGCTGATGGGTCCACCATTACTCGGAATGTGGAAACCACCCGGGCTTCTAAGCAGTCCAACTCTAAATACGCAGCATCCTCCTATTTGAGTCTTACTAGTAGTGACTGGAAGTCAAAGGGTAGTTACAGTTGCGAAGTCACACATGAAGGTTCAACAGTGACAAAGACAGTCAAGCCCTCAGAGTGCTCATAG
<配列番号118>
配列番号118は、ラット抗ウシPD-L1抗体のH鎖可変領域とイヌ抗体のH鎖定常領域とからなるキメラH鎖のヌクレオチド配列(コドン最適化後ヌクレオチド配列)を示す。
ATGGGGTGGTCCCAGATTATATTGTTCCTCGTCGCCGCCGCCACTTGCGTACACAGCCAAGTGCAACTTCAACAAAGCGGTGCAGAACTGGTAAAGCCCGGTAGCTCTGTGAAAATATCCTGTAAAGCCAGTGGCTACACATTTACCAGCAACTTTATGCACTGGGTGAAGCAACAGCCCGGAAATGGCTTGGAGTGGATTGGCTGGATCTATCCCGAATATGGTAACACCAAGTATAATCAGAAGTTCGACGGTAAGGCCACCCTCACCGCCGATAAGTCATCCTCCACCGCCTATATGCAGCTCAGCAGCCTGACCAGCGAGGATTCCGCTGTGTACTTCTGTGCCAGCGAAGAGGCTGTGATCTCATTGGTGTATTGGGGACAGGGCACCCTCGTCACCGTGTCCAGCGCTAGCACAACTGCTCCTAAGGTGTACCCCCTGAGCTCTTGCTGCGGCGACAAGTCTAGCAGCACCGTGACCCTCGGATGCCTCGTCAGCAGCTATATGCCTGAGCCAGTTACAGTGACATGGAATTCTGGTGCCCTTAAGTCCGGCGTCCATACCTTCCCTGCTGTGCTGCAGTCCTCTGGCCTGTACAGTTTGTCCTCTATGGTGACAGTACCCGGTTCCACCTCCGGACAGACCTTTACCTGTAATGTGGCTCATCCCGCCTCCTCCACAAAGGTGGATAAGGCTGTTGACCCTACCTGTAAACCCAGTCCATGCGACTGCTGTCCCCCCCCTCCAGTTGCCGGACCCTCAGTCTTTATTTTCCCACCCAAACCCAAAGACACCCTGACAATCTCTGGAACACCAGAAGTCACCTGCGTCGTCGTGGATGTGGGCCACGACGATCCTGAGGTAAAATTCTCATGGTTCGTCGACGATGTGGAAGTGAATACAGCTACTACAAAACCTCGCGAAGAGCAGTTTAACTCTACCTATCGAGTGGTTTCTGCTTTGCGGATTCAGCATCAGGATTGGACAGGCGGCAAAGAGTTTAAATGTAAAGTCCATAACGAGGGACTTCCTTCTAGTATCGTGCGCACTATCAGTAGAACTAAAGGGCCTGCTCGGGAACCTCAGGTGTACGTCCTGGCACCTCCACAGGAAGAGCTGAGTAAGTCTACAGTTTCTCTGACTTGTATGGTAACATCTTTTTATCCAGATTACATCGCAGTTGAATGGCAGAGGAACGGGCAGCCAGAGAGTGAGGATAAGTACGGGACTACTCCACCACAGCTGGACGCAGACTCAAGTTACTTCCTGTACTCAAAGCTGAGGGTTGACAGAAACTCATGGCAGGAGGGGGACACTTACACTTGCGTAGTTATGCACGAGGCACTTCACAACCACTACACTCAGAAGAGTACTTCAAAGAGTGCAGGGAAGTAA
<配列番号119~148>
配列番号119~148は、順に、プライマーboIL2 F、boIL2 R、boIL10 F、boIL10 R、boIFNγ F、boIFNγ R、boTNFα F、boTNFα R、boTGFβ1 F、boTGFβ1 R、boFoxp3 F、boFoxp3 R、boSTAT3 F、boSTAT3 R、boACTB F、boACTB R、boGAPDH F、boGAPDH R、boPDL1 F、boPDL1 R、boCOX2 F、boCOX2 R、boEP4 F、boEP4 R、boPD-1-myc F、boPD-1-myc R、boPD-L1-EGFP F、boPD-L1-EGFP R、boPD-L1-Ig F及びboPD-L1-Ig Rのヌクレオチド配列を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図50
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【配列表】
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