(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ペレット型ポリプロピレン樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 110/06 20060101AFI20220905BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220905BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20220905BHJP
D01F 6/06 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C08F110/06
C08F4/6592
C08L23/12
D01F6/06 Z
(21)【出願番号】P 2020538566
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2019014828
(87)【国際公開番号】W WO2020096306
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0135451
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0138937
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒクワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・キュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ナ・パク
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソプ・ノ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンスプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ミン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ヨン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】サンジン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ファン・キム
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-525375(JP,A)
【文献】国際公開第2016/096690(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/136451(WO,A1)
【文献】特開2004-003091(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0119007(KR,A)
【文献】特表2010-538175(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104558819(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44,
C08F2/00-2/60,
C08F4/00-4/58;4/72-4/82
C08F6/00-246/00;301/00,
C08K3/00-13/08,
C08L1/00-101/14,
D01F6/06,
D04H3/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンホモ重合体を含み、下記条件を充足するペレット型ポリプロピレン樹脂:
ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定した溶融指数:500g/10min超
融点:155℃以上
キシレン可溶分:1重量%以下、
ディスカバリーハイブリッドレオメータを用いて温度170℃および延伸速度10mm/sで測定した延伸直径:0.3mm以下、
結晶化温度(Trc):115℃以上、
分子量分布:2.0~2.4、
重量平均分子量:60,000g/mol以下、
数平均分子量:16,000~25,000g/mol。
【請求項2】
ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定した溶融指数が500g/10min超1500g/10min以下であり、融点が155℃以上170℃以下である、請求項1に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂。
【請求項3】
樹脂の総重量に対して酸化防止剤として有機金属系化合物0.01~1重量%;およびフェノール系酸化防止剤0.01~1重量%をさらに含み、
前記有機金属系化合物とフェノール系酸化防止剤の混合重量比が1:10~1:2である、請求項1
または2に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂。
【請求項4】
前記有機金属系化合物は、ステアリン酸カルシウム、パラ-ターシャリーブチル安息香酸アルミニウム、安息香酸ナトリウム、および安息香酸カルシウムからなる群より選択される1種以上の化合物を含み、
前記フェノール系酸化防止剤は、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリネート)、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゼン)およびペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)からなる群より選択される1種以上の化合物を含む、請求項
3に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂。
【請求項5】
下記化学式1で表される遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、プロピレン単量体を重合してプロピレンホモ重合体を製造する段階;および
前記プロピレンホモ重合体を含む組成物製造後、ペレットダイ温度150~190℃の温度で押出する段階を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法:
【化1】
上記化学式1中、
X
1およびX
2は、それぞれ独立してハロゲンであり、
R
1およびR
5は、それぞれ独立してC
1~20アルキルで置換されたC
6~20アリールであり、
R
2~R
4およびR
6~R
8は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~20アルキル、C
2~20アルケニル、C
1~20アルキルシリル、C
1~20シリルアルキル、C
1~20アルコキシシリル、C
1~20エーテル、C
1~20シリルエーテル、C
1~20アルコキシ、C
6~20アリール、C
7~20アルキルアリール、またはC
7~20アリールアルキルであり、
Aは、炭素、ケイ素またはゲルマニウムである。
【請求項6】
前記Aは、ケイ素であり、
前記R
1およびR
5は、それぞれ独立してC
3-6分枝鎖アルキル基で置換されたフェニル基である、請求項
5に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記化学式1の化合物は、下記化学式1aで表される化合物である、請求項
5に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【化2】
【請求項8】
前記触媒組成物は、シリカ担体;および助触媒をさらに含み、
前記助触媒は、下記化学式2で表される化合物、化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物、またはこれらの混合物を含む、請求項
5から
7のいずれか一項に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法:
[化学式2]
-[Al(R
11)-O]
m-
上記化学式2中、R
11は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲン;C
1~20の炭化水素;またはハロゲンで置換されたC
1~20の炭化水素であり;
mは、2以上の整数であり;
[化学式3]
J(R
12)
3
上記化学式3中、R
12は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲン;C
1~20の炭化水素;またはハロゲンで置換されたC
1~20の炭化水素であり;
Jは、アルミニウムまたはホウ素であり;
[化学式4]
[E-H]
+[ZD
4]
-または[E]
+[ZD
4]
-
上記前記化学式4中、Eは、中性または陽イオン性ルイス塩基であり;
Hは、水素原子であり;
Zは、13族元素であり;
Dは、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して1以上の水素原子がハロゲン、C
1~20の炭化水素、アルコキシまたはフェノキシで置換されるかまたは非置換された、C
6~20のアリール基またはC
1~20のアルキル基である。
【請求項9】
前記重合は、プロピレン単量体総重量に対して水素ガスを500~2500ppmの量で投入しながら行われる、請求項
5から
8のいずれか一項に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項10】
ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定した、前記押出前および押出後組成物の溶融指数がそれぞれ500g/10min超であり、2000g/10min以下であり、前記押出前組成物の溶融指数が、押出後組成物の溶融指数より大きいかまたは同一である、請求項
5から
9のいずれか一項に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記プロピレンホモ重合体を含む組成物の製造時、有機金属系化合物とフェノール系酸化防止剤を含む酸化防止剤がさらに投入される、請求項
5から
10のいずれか一項に記載のペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項1から
4のいずれか一項によるペレット型ポリプロピレン樹脂を用いて製造した繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年11月6日付韓国特許出願第10-2018-0135451号および2019年11月1日付韓国特許出願第10-2019-0138937号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、環境にやさしく、優れた作業性を示し、細繊化の可能なペレット型ポリプロピレン樹脂およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリプロピレンは、低い比重と高い耐熱性、そして優れた加工性と耐化学性によって従来多様な分野に汎用樹脂として使用されてきた。
【0004】
メルトブロー繊維用として高流動ホモポリプロピレンが広く使用されるが、繊維業界では細繊化を増大させて最終製品の主要用途であるフィルターやマスクでろ過効率を改善させ、作業性を改善するために微粉が発生しないペレット型素材に対する要求が持続的に拡大している。
【0005】
汎用チーグラー・ナッタ触媒を用いた高流動ホモポリプロピレンは、低い水素反応性によって低いMI素材を押出工程で過酸化物(Peroxide)系分解促進剤を使用してビスブレーキング(vis-breaking)またはコントロールレオロジー(Controlled Rheology;CR)工程を用いて高流動製品を生産している。しかし、多重活性点を有する触媒の限界によって分子量分布が3を超過して広いため、繊維用途に適用時、細繊化を増大させる点からは限界がある。
【0006】
よって、メルトブロー繊維用に要求される環境にやさしい特性、細繊化度、作業性を全て満足する樹脂の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、環境にやさしく、優れた作業性を示し、細繊化の可能なペレット型ポリプロピレン樹脂およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、プロピレンホモ重合体を含み、下記条件を充足するペレット型ポリプロピレン樹脂が提供される:
溶融指数(MI;ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定):500g/10min超
融点(Tm):155℃以上
キシレン可溶分:1重量%以下、
ディスカバリーハイブリッドレオメータを用いて温度170℃および延伸速度10mm/sで測定した延伸直径:0.3mm以下。
【0009】
本発明のまた他の一実施形態によれば、下記化学式1で表される遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、プロピレン単量体を重合してプロピレンホモ重合体を製造する段階;および前記プロピレンホモ重合体を含む組成物製造後、ペレットダイ温度150~190℃で押出する段階を含む、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂の製造方法を提供する:
【0010】
【0011】
上記化学式1中、
X1およびX2は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲンであり、
R1およびR5は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してC1~20アルキルで置換されたC6~20アリールであり、
R2~R4およびR6~R8は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C1~20アルキルシリル、C1~20シリルアルキル、C1~20アルコキシシリル、C1~20エーテル、C1~20シリルエーテル、C1~20アルコキシ、C6~20アリール、C7~20アルキルアリール、またはC7~20アリールアルキルであり、
Aは、炭素、ケイ素またはゲルマニウムである。
【0012】
また、本発明の他の一実施形態によれば、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂を用いて製造された繊維、延いては不織布を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるペレット型ポリプロピレン樹脂は、高い水素反応性を有するメタロセン系触媒を用いて重合製造された高流動性のプロピレンホモ重合体を含むことによって、環境にやさしく、微粉発生が減少して優れた作業性を示し、繊維製造に適用時、分解促進剤を使用しなくても細繊化が可能である。これにより、フィルターやマスクなど優れたろ過効率が要求される繊維製造分野に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で製造したポリプロピレン樹脂の形状を観察した写真である。
【
図2】実施例2で製造したポリプロピレン樹脂の形状を観察した写真である。
【
図3】比較例1で製造したポリプロピレン樹脂の形状を観察した写真である。
【
図4】比較例2で製造したポリプロピレン樹脂の形状を観察した写真である。
【
図5】比較例3で製造したポリプロピレン樹脂の形状を観察した写真である。
【
図6】比較例4で製造したポリプロピレン樹脂の形状を観察した写真である。
【
図7】実施例1で製造したポリプロピレン樹脂に対する延伸直径測定時、延伸された樹脂を観察した写真である。
【
図8】実施例2で製造したポリプロピレン樹脂に対する延伸直径測定時、延伸された樹脂を観察した写真である。
【
図9】比較例1で製造したポリプロピレン樹脂に対する延伸直径測定時、延伸された樹脂を観察した写真である。
【
図10】比較例2で製造したポリプロピレン樹脂に対する延伸直径測定時、延伸された樹脂を観察した写真である。
【
図11】比較例3で製造したポリプロピレン樹脂に対する延伸直径測定時、延伸された樹脂を観察した写真である。
【
図12】比較例4で製造したポリプロピレン樹脂に対する延伸直径測定時、延伸された樹脂を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0016】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定実施例を例示し、下記で詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態によるペレット型ポリプロピレン樹脂およびその製造方法などについて説明する。
【0018】
本発明では、ポリプロピレン樹脂の製造時、高い水素反応性を示す前記化学式1のメタロセン系化合物を用いて製造された高流動性のプロピレンホモ重合体を使用し、また制御されたペレットダイ温度範囲で押出してペレット化することによって、分解促進剤の使用などによるビスブレーキングがなくても優れた繊維加工性を示すことによって細繊化が可能である。
【0019】
具体的に、本発明の一実施形態によるペレット型ポリプロピレン樹脂は、プロピレンホモ重合体を含み、下記(i)~(vi)の条件を充足するものである:
(i)溶融指数(MI;ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定):500g/10min超
(ii)融点(Tm):155℃以上
(iii)キシレン可溶分:1重量%以下、
(iv)ディスカバリーハイブリッドレオメータ(DHR)を用いて温度170℃および延伸速度10mm/sで測定した延伸直径:0.3mm以下。
【0020】
本発明において、ペレット(pellet)またはペレット型(pellet-type)とは、原料物質の押出によって形成される小さい粒子または小片であって、円形、平板形、鱗片形、多角形、棒状など当該技術分野でペレットに分類される形態を全て含む。その大きさは、用途および形態によって適切に決定されるものであって、特に限定されないが、通常1mm水準の小さい平均直径を有する粉末と区分できるように、本発明におけるペレットは、平均直径が2mm以上であるものと定義する。具体的には、本発明におけるペレットは、平均直径が2mm以上、または3mm以上であり、200mm以下、または100mm以下、または50mm以下、または10mm以下、または5mm以下であるものであってもよい。この時、「直径」は、ペレット状の外周面の任意の直線距離の中の最長距離であり、映像顕微鏡などを用いて測定することができる。
【0021】
より具体的に、本発明の一実施形態によるペレット型ポリプロピレン樹脂は、高流動性のプロピレンホモ重合体を含むことによって、500g/10min超の高い溶融指数(MI)値を示す。具体的には、米国材料試験学会(ASTM、American society for testing and materials)規格ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重下で測定した溶融指数(MI、melt index)が500g/10min超、または550g/10min以上、または700g/10min以上、または750g/10min以上であり、1500g/10min以下、または1450g/10min以下、または1350g/10min以下である。
【0022】
通常、溶融指数は、重合工程時、投入される水素量の制御によって調節可能であり、従来チーグラー・ナッタ触媒を使用する場合、重合段階で高い含量の水素が投入されなければならない。しかし、本発明では、高い水素反応性を有するため、水素投入量の減少でも優れた触媒活性を示し、リガンドに結合された置換基、具体的にはイソプロピル基による立体障害によって低分子量の重合体を製造できる前記化学式1のメタロセン系化合物の使用で、高流動性を有するプロピレンホモ重合体を製造、含むことによって、高い溶融指数を示し、その結果、優れた繊維加工性を示すことができる。
【0023】
本発明において、繊維加工性とは、加工時、延伸工程を行う時、均一な分子量分布によって高配率で延伸を可能にすることによって、より細繊化された、そして高い強度の繊維を製造することを意味する。
【0024】
MIが500g/10min以下であれば、加工圧力が上昇して加工性が低下する恐れがあるが、本発明による前記ペレット型ポリプロピレン樹脂は、500g/10min超の溶融指数を有することによって、細繊化された、そして高い強度の繊維製造が可能である。
【0025】
また、本発明の一実施形態による前記ペレット型ポリプロピレン樹脂は、前記のように高いMIと共に155℃以上の高い融点(Tm)を有する。このように高い融点を有することによって、結晶化温度が上昇し、高い立体規則性を有することができ、その結果、優れた耐熱性を示すことができる。融点が155℃未満である場合、耐熱性が低下し、高温で繊維加工時、熱による分解の恐れがある。より具体的に、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂の融点は155℃以上、または156℃以上であり、また、射出成形および繊維加工に要求される十分な加工性と共に優れた熱安定性を考慮する時、前記融点が170℃以下、または160℃以下であってもよい。
【0026】
一方、本発明において、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂の融点は、樹脂の温度を200℃まで増加させた後、5分間その温度で維持し、その後、30℃まで下げた後、再び温度を増加させてDSC(示差走査熱量計、Differential Scanning Calorimeter、TA社製造)曲線の頂上を融点にして測定することができる。この時、温度の上昇と下降の速度はそれぞれ10℃/minであり、融点は2番目の温度が上昇する区間で測定した結果である。
【0027】
また、本発明の一実施形態による前記ペレット型ポリプロピレン樹脂は、キシレン可溶分(xylene solubles;Xs)が1.0重量%以下であって、高い立体規則度(tacticity)を示す。
【0028】
本発明において、キシレン可溶分は、ポリプロピレン樹脂をキシレン中に溶解させた後に冷却し、結果の冷却溶液から不溶性部分を結晶化して、結晶化された冷却キシレン中の可溶性である重合体の含量(重量%)を測定したものであって、キシレン可溶分は低い立体規則性の重合体鎖を含む。これにより、キシレン可溶分が低いほど、重合体が高い立体規則度を有することが分かる。本発明の一実施形態によるポリプロピレン樹脂は、1.0重量%以下の低いキシレン可溶分を示すことによって、高い立体規則度を有し、その結果として優れた剛性および曲げ弾性率を示すことができる。キシレン可溶分は、製造時に使用される触媒の種類、共単量体含量などの調節によって制御することができ、キシレン可溶分の制御による剛性および曲げ弾性率改善効果が優れるのを考慮する時、前記ポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分は、より具体的には、0.1重量%以上、または0.5重量%以上であり、0.8重量%以下、または0.7重量%以下であってもよい。
【0029】
一方、本発明において、ペレット型ポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分は、具体的に、ポリプロピレン樹脂のサンプルにキシレンを入れて135℃で1時間加熱し、30分間冷却して前処理した後、OminiSec(Viscotek社 FIPA)装備で1mL/minの流速(flow rate)で4時間キシレンを流してRI、DP、IPのベースライン(base line)を安定化させ、その後、前処理したサンプルの濃度、インジェクション量を記入して測定後、ピーク面積を計算することによって測定することができる。
【0030】
前記MI、Tmおよびキシレン可溶分条件と共に、本発明の一実施形態による前記ペレット型ポリプロピレン樹脂は、その特徴的な製造方法によって3以下の狭い分子量分布(MWD)を示すことができる。このように、3以下の狭い分子量分布を有することによって優れた繊維加工性を示して細繊化が可能である。より具体的には、MWDが2.8以下、または2.4以下、または2.3以下であり、2.0以上、または2.1以上、または2.2以上であってもよい。
【0031】
また、前記MWDを充足する条件下に、本発明の一実施形態による前記ポリプロピレン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が60,000g/mol以下、または50,000g/mol以下、または45,000g/mol以下、であり、30,000g/mol以上、または35,000g/mol以上、または38,000g/mol以上であってもよく、数平均分子量(Mn)が16,000g/mol以上、または17,000g/mol以上であり、25,000g/mol以下、または22,500g/mol以下であってもよい。前記のように、従来繊維製造に使用されるポリプロピレン樹脂と比較して同等水準のMwを有しながらも、相対的に高いMnを有することによって、均一な高分子構造の形成および狭い分子量分布を示すことができ、その結果、細繊化が可能であり、優れた繊維加工性を示すことができる。
【0032】
一方、本発明において、分子量分布(MWD)および重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ測定した後、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)を計算することによって分子量分布を決定することができる。具体的に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)装置としてはWaters PL-GPC220機器を用いて、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mmの長さのカラムを使用して測定することができる。この時、測定温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minにする。また、重合体のサンプルは、それぞれ10mg/10mLの濃度で調製した後、200μLの量で供給する。ポリスチレン標準試片を用いて形成された検定曲線を用いてMwおよびMnの値を誘導することができる。この時、ポリスチレン標準試片としては、重量平均分子量が2,000g/mol/10,000g/mol/30,000g/mol/70,000g/mol/200,000g/mol/700,000g/mol/2,000,000g/mol/4,000,000g/mol/10,000,000g/molである9種を使用した。
【0033】
延いては、本発明の一実施形態による前記ペレット型ポリプロピレン樹脂は、115℃以上の高い結晶化温度(Trc)を有するものであってもよい。このように高い結晶化温度を有することによって、押出工程時、急速に結晶化されることによってペレット型樹脂の製造が可能である。より具体的には、結晶化温度が115℃以上、または120℃以上であり、140℃以下、または130℃以下であってもよい。
【0034】
本発明において、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂の結晶化温度(Trc)はDSC(Differential Scanning Calorimeter、TA社製造)を用いて測定することができ、具体的には、樹脂の温度を200℃まで増加させた後、5分間その温度で維持し、その後、30℃まで下げ、再び温度を200℃まで10℃/minで増加させた後、再び10℃/minで下げる区間でのDSC曲線の頂上を結晶化温度とする。
【0035】
本発明の一実施形態による前記ペレット型ポリプロピレン樹脂は、前記のように、高い溶融指数と融点、そして低いキシレン可溶分を示すことによって、高配率延伸が可能であって細繊化され、高い強度を有する繊維を製造することができる。延いては、狭い分子量分布および高い結晶化温度を有することによって、前記効果がさらに増大できる。
【0036】
具体的に、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂は、ディスカバリーハイブリッドレオメータ(DHR)を用いて温度170℃および延伸速度10mm/sで測定時、延伸直径が0.3mm以下、より具体的には0.295mm以下、または0.285mm以下であってもよく、0.2mm以上、または0.25mm以上であってもよい。前記範囲内である時、細繊化と共に優れた強度特性を有する不織布の製造が可能である。
【0037】
このような物性的特徴を有する本発明の一実施形態によるペレット型ポリプロピレン樹脂は、触媒活性成分として下記化学式1の遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、プロピレン単量体を重合してプロピレンホモ重合体を製造する段階;および前記プロピレンホモ重合体を含む組成物製造後、ペレットダイ温度150~190℃で押出する段階を含む製造方法によって製造することができる。これにより、本発明の他の一実施形態によれば、前述のようなペレット型ポリプロピレン樹脂を製造する方法が提供される:
【0038】
【0039】
上記化学式1中、
X1およびX2は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲンであり、
R1およびR5は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してC1~20アルキルで置換されたC6~20アリールであり、
R2~R4およびR6~R8は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C1~20アルキルシリル、C1~20シリルアルキル、C1~20アルコキシシリル、C1~20エーテル、C1~20シリルエーテル、C1~20アルコキシ、C6~20アリール、C7~20アルキルアリール、またはC7~20アリールアルキルであり、
Aは、炭素、ケイ素またはゲルマニウムである。
【0040】
一方、本明細書において、特別な制限がない限り、次の用語は下記のように定義される。
【0041】
ハロゲン(halogen)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であってもよい。
【0042】
C1~20アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であってもよい。具体的に、C1~20アルキル基は、C1~15直鎖アルキル基;C1~10直鎖アルキル基;C1~5直鎖アルキル基;C3~20分枝鎖または環状アルキル基;C3~15分枝鎖または環状アルキル基;またはC3~10分枝鎖または環状アルキル基であってもよい。より具体的に、C1~20のアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基またはシクロヘキシル基などであってもよい。
【0043】
C2~20アルケニル基は、直鎖、分枝鎖または環状アルケニル基であってもよい。具体的に、C2~20アルケニル基は、C2~20直鎖アルケニル基、C2~10直鎖アルケニル基、C2~5直鎖アルケニル基、C3~20分枝鎖アルケニル基、C3~15分枝鎖アルケニル基、C3~10分枝鎖アルケニル基、C5~20の環状アルケニル基、またはC5~10の環状アルケニル基であってもよい。より具体的に、C2~20のアルケニル基は、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基またはシクロヘキセニル基などであってもよい。
【0044】
C6~30アリールは、単環、二環、または三環芳香族炭化水素を意味することができる。具体的に、C6~30アリールは、フェニル基、ナフチル基またはアントラセニル基などであってもよい。
【0045】
C7~30アルキルアリールは、アリールの1以上の水素がアルキルによって置換された置換基を意味することができる。具体的に、C7~30アルキルアリールは、メチルフェニル、エチルフェニル、n-プロピルフェニル、iso-プロピルフェニル、n-ブチルフェニル、iso-ブチルフェニル、tert-ブチルフェニルまたはシクロヘキシルフェニルなどであってもよい。
【0046】
C7~30アリールアルキルは、アルキルの1以上の水素がアリールによって置換された置換基を意味することができる。具体的に、C7~30アリールアルキルは、ベンジル基、フェニルプロピル、またはフェニルヘキシルなどであってもよい。
【0047】
前記製造方法において、触媒組成物は、前記化学式1の化合物を単一触媒として含む。これにより、従来2種以上の触媒を混合して使用する場合に比べて、製造されるプロピレンホモ重合体の分子量分布が顕著に狭くなり得る。
【0048】
さらに、前記化学式1の化合物は、インデニル基を含む二つのリガンドを連結する架橋基(ブリッジグループ)として、エチル基で2置換された2価の官能基Aを含むことによって、既存の炭素ブリッジに比べて原子サイズが大きくなることによって可溶角度が増えることにより、モノマーの接近が容易であって、より優れた触媒活性を示すことができる。また、前記Aに結合された二つのエチル基は溶解度を増大させて担持効率性を改善することができ、従来ブリッジの置換基としてメチル基を含む場合、担持触媒調製時、溶解度が良くなくて担持反応性が低下する問題を解決することができる。
【0049】
また、リガンドである二つのインデニル基の2番位置がそれぞれメチル基およびイソプロピル基で置換されることによって、適切な立体障害によって低分子量の重合体製造が可能であり、また、二つのインデニルリガンドの全て4番位置(R1およびR5)がアルキル置換されたアリール基を含むことによって十分な電子を供給できる誘導効果(Inductive effect)によって、より優れた触媒活性を示すことができる。その結果、ホモポリプロピレンの構造中に長鎖分枝構造(LCB)を適切な比率/分布で形成させることによって、高流動性のホモポリプロピレンが製造できる。
【0050】
また、前記化学式1の化合物は、中心金属としてジルコニウム(Zr)を含むことによって、Hfなどのような他の14族元素を含む時と比較して、電子を収容できる軌道をさらに多く有していて、より高い親和力でモノマーと容易に結合することができ、その結果、より優れた触媒活性改善効果を示すことができる。
【0051】
より具体的に、前記化学式1中、R1およびR5はそれぞれ独立してC1~10アルキルで置換されたC6~12アリール基であってもよく、よりさらに具体的には、tert-ブチルフェニルのようなC3~6分枝鎖アルキル基で置換されたフェニル基であってもよい。また、前記フェニル基に対するアルキル基の置換位置は、インデニル基に結合したR1またはR5位置とパラ(para)位に該当する4番位置であってもよい。
【0052】
また、前記化学式1中、R2~R4およびR6~R8はそれぞれ独立して水素であってもよく、X1およびX2はそれぞれ独立してクロロであってもよく、Aはケイ素であってもよい。
【0053】
前記化学式1で表される化合物の代表的な例は、次の通りである:
【0054】
【0055】
前記化学式1の化合物は、公知の反応を応用して合成でき、より詳細な合成方法は後述の製造例を参考にすることができる。
【0056】
一方、前記化学式1の化合物は、単一成分で使用することもでき、担体に担持された担持触媒の状態で使用することもできる。
【0057】
担持触媒状態で用いる時、製造される重合体の粒子形態およびバルク密度が優れ、従来のスラリー重合またはバルク重合、気相重合工程に適するように使用可能である。
【0058】
前記担体としては、表面にヒドロキシ基またはシロキサン基を含む担体を使用することができ、好ましくは、高温で乾燥して表面に水分が除去され、反応性の高いヒドロキシ基とシロキサン基を含む担体を使用することができる。前記担体の具体的な例としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシアなどが挙げられ、これらは通常、Na2O、K2CO3、BaSO4、およびMg(NO3)2などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分をさらに含むことができる。この中でもシリカの場合、シリカ担体と前記メタロセン化合物の官能基が化学的に結合して担持されるため、プロピレン重合工程で担体表面から遊離されて出る触媒が殆どなく、その結果、スラリーまたは気相重合でポリプロピレンを製造する時、反応器壁面や重合体粒子同士が絡みつくファウリングを最少化することができる。
【0059】
前記化学式1の化合物が担体に担持される場合、例えば、前記担体がシリカである場合、前記化学式1の化合物は、シリカ1gを基準にして、40μmol以上、または80μmol以上であり、240μmol以下、または160μmol以下の含有量範囲で担持されてもよい。前記含量範囲で担持される時、適切な担持触媒活性を示して触媒の活性維持および経済性の側面から有利であり得る。
【0060】
また、前記触媒組成物は、高い活性と工程安定性を向上させる側面から、助触媒を追加的に含むことができる。
【0061】
前記助触媒は、下記化学式2で表される化合物、化学式3で表示される化合物、および化学式4で表される化合物のうちから選択される1種以上を含むことができる:
【0062】
[化学式2]
-[Al(R11)-O]m-
【0063】
上記化学式2中、
R11は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲン;C1~20の炭化水素;またはハロゲンで置換されたC1~20の炭化水素であり;
mは、2以上の整数であり;
【0064】
[化学式3]
J(R12)3
【0065】
上記化学式3中、
R12は、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲン;C1~20の炭化水素;またはハロゲンで置換されたC1~20の炭化水素であり;
Jは、アルミニウムまたはホウ素であり;
【0066】
[化学式4]
[E-H]+[ZD4]-または[E]+[ZD4]-
【0067】
上記前記化学式4中、
Eは、中性または陽イオン性ルイス塩基であり;
Hは、水素原子であり;
Zは、13族元素であり;
Dは、互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して1以上の水素原子がハロゲン、C1~20の炭化水素、アルコキシまたはフェノキシで置換されるかまたは非置換された、C6~20のアリール基またはC1~20のアルキル基である。
【0068】
前記化学式2で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンまたはブチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサン系化合物が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。
【0069】
また、前記化学式3で表示される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、またはトリブチルボロンなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。
【0070】
また、前記化学式4で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、またはトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。
【0071】
前記化合物の中でも、前記助触媒は、より具体的には、メチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサン系助触媒であってもよい。
【0072】
前記アルキルアルミノキサン系助触媒は、前記化学式1の遷移金属化合物を安定化させ、また、ルイス酸として作用して、前記化学式1の遷移金属化合物の架橋基(bridge group)に導入された官能基とルイス酸-塩基相互作用による結合を形成することができる金属元素を含むことによって、触媒活性をさらに増進させることができる。
【0073】
また、前記助触媒の使用含量は、目的とする触媒と樹脂組成物の物性または効果によって適切に調節することができる。例えば、前記担体としてシリカを使用する場合、前記助触媒は、担体重量当り、例えば、シリカ1gを基準にして8mmol以上、または10mmol以上であり、25mmol以下、または20mmol以下の含量で担持できる。
【0074】
前記構成を有する触媒組成物は、担体に助触媒化合物を担持させる段階、および前記担体に前記化学式1で表される遷移金属化合物を担持させる段階を含む製造方法によって製造することができ、この時、助触媒と化学式1で表される遷移金属化合物の担持順序は必要によって異にすることができる。担持順序によって決定された構造の担持触媒の効果を考慮する時、この中でも担体に対する助触媒担持後に遷移金属化合物を担持することが、製造された担持触媒がポリプロピレンの製造工程で高い触媒活性と共に、より優れた工程安定性を実現することができる。
【0075】
一方、前記プロピレンホモ重合体は、前記化学式1の遷移金属化合物を含む触媒組成物と、プロピレン単量体を水素ガスの存在または不在下で接触させる重合工程によって製造することができる。
【0076】
この時、前記水素ガスは、メタロセン触媒の不活性サイトを活性化させ、連鎖移動反応(chain transfer reaction)を起こして分子量を調節する役割を果たす。本発明のメタロセン化合物は、水素反応性に優れ、したがって、重合工程時、前記水素ガス使用量の調節によって、所望の水準の分子量と溶融指数を有するポリプロピレンを効果的に得ることができる。
【0077】
前記水素ガスは、プロピレン単量体の総重量に対して、300ppm以上、または500ppm以上、または700ppm以上であり、2500ppm以下、または1000ppm以下、または900ppm以下の量で投入できる。このような使用量で水素ガスを供給しながら重合を行うことによって、狭い分子量分布および高流動性を有するプロピレンホモ重合体を製造することができる。
【0078】
また、前記プロピレンホモ重合体の重合反応は、連続式重合工程で行うことができ、例えば、溶液重合工程、スラリー重合工程、懸濁重合工程、または乳化重合工程などオレフィン単量体の重合反応と知られた多様な重合工程を採用することができる。特に、製造されるプロピレンホモ重合体において狭い分子量分布および高流動性を実現し、また、製品の商業的生産を考慮する時、触媒、プロピレン単量体および選択的に水素ガスが連続的に投入される、連続式バルクスラリー重合工程を採用することができる。
【0079】
また、前記重合反応は、40℃以上、または60℃以上、または70℃以上であり、110℃以下、または100℃以下の温度と、1kgf/cm2以上、または5kgf/cm2以上であり、100kgf/cm2以下、または50kgf/cm2以下の圧力下で行うことができる。このような温度および圧力下で重合が行われて、目的とする高流動性のホモポリプロピレンを収率高く製造することができる。
【0080】
また、前記重合反応時、前記プロピレン単量体の総重量に対して0.01重量%以上、または0.05重量%以上、または0.1重量%以上であり、1重量%以下、または0.5重量%以下の含量でトリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムを選択的にさらに投入することができる。重合反応器内に水分や不純物が存在すれば、触媒の一部が分解(decomposition)されることになり、前記トリアルキルアルミニウムは、反応器内に存在する水分や不純物を事前に捕捉する捕捉剤(scavenger)の役割を果たすため、製造に使用される触媒の活性を極大化することができ、その結果として、前記物性的要件を充足するホモポリプロピレンをより効率良く製造することができる。
【0081】
また、前記重合反応で、前記触媒組成物は、オイルおよびグリースの混合物に混合したマッド触媒の形態で使用できる。この場合、従来プロピレン重合時、触媒組成物を炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体とトルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどの塩素原子で置換された炭化水素溶媒などに溶解するか希釈した状態で用いる場合と比較して、製造された樹脂に含まれている揮発性有機化合物の量が顕著に減少するため、これに起因する臭いも減少できる。
【0082】
前述のような重合工程によって製造されたプロピレンホモ重合体は、水素反応性に優れたメタロセン系化合物の使用で狭い分子量分布および高流動性を示す。これにより、ペレット型ポリプロピレン樹脂の製造時、分解促進剤を使用したビスブレーキング工程がなくても、優れた繊維加工性を示すことができ、また、ビスブレーキング工程で使用される分子量調節剤を使用しないことにより、製造した樹脂から分子量調節剤に起因する臭いの発生の恐れがない。
【0083】
その次に、前記で製造したプロピレンホモ重合体を用いてペレット型ポリプロピレン樹脂形成用組成物を製造した後、これを押出することによって、ペレット型ポリプロピレン樹脂を製造する。
【0084】
前記ペレット型ポリプロピレン樹脂形成用組成物は、前記プロピレンホモ重合体を含み、選択的に酸化防止剤をさらに含むことができる。
【0085】
前記酸化防止剤としては、具体的に、ステアリン酸カルシウム、パラ-ターシャリーブチル安息香酸アルミニウム、安息香酸ナトリウム、または安息香酸カルシウムなどの有機金属系化合物;またはテトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリネート)、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゼン)、またはペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Irganox 1010(登録商標)、BASF社製)などのフェノール系酸化防止剤が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。
【0086】
通常の酸化防止剤の中でも、前記有機金属系化合物は、優れた酸化防止特性を有して、前記高流動性のプロピレンホモ重合体と組み合わせて使用時、空気中酸素や熱による分解を効率良く防止して繊維加工性をさらに改善させることができる。
【0087】
また、前記フェノール系酸化防止剤は、リン系酸化防止剤など通常の酸化防止剤に比べて、熱による分解防止特性に優れる。また、従来のペレット型でないパウダー形態の樹脂組成物では、パウダー状のポリプロピレンに酸化防止剤を添加することによって酸化防止剤分布の均一性が低下するだけでなく、パウダー内部には分布しにくくて効果が低下したが、本発明では、前記フェノール系酸化防止剤を前記高流動性のプロピレンホモ重合体と組み合わせて使用することによって、ペレット型樹脂組成物で酸化防止剤が均一分散することによってより優れた熱分解防止効果を示し、繊維加工性を増進させることができる。
【0088】
より具体的に、前記酸化防止剤としては、前記有機金属系化合物とフェノール系酸化防止剤を混合使用することによって、繊維加工性をさらに増進させることができる。
【0089】
この場合、前記有機金属系化合物は、前記ポリプロピレン樹脂総重量に対して0.01~1重量%で使用することができ、より具体的には、ポリプロピレン樹脂総重量に対して0.01~0.1重量%で使用することができる。
【0090】
また、前記フェノール系酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂総重量に対して0.01~1重量%で使用することができ、より具体的には、0.1~0.5重量%で使用することができる。
【0091】
また、前記有機金属系化合物とフェノール系酸化防止剤は、前記それぞれの含量範囲を充足する条件下で、1:10~1:2の重量比で使用することができる。
【0092】
このような含量範囲、および延いては混合重量比で使用時、ペレット型ポリプロピレン樹脂の繊維加工性をさらに増進させることができる。
【0093】
また、前記組成物は、プロピレンホモ重合体、有機金属系化合物およびフェノール系酸化防止剤の外にも、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、UV安定剤、帯電防止剤などの添加剤を1種以上さらに含むことができる。前記添加剤の含量は特に限定されず、一例として、それぞれプロピレンホモ重合体総重量に対して500ppm以上、または700ppm以上であり、2500ppm以下、または1500ppm以下の含量で使用することができる。
【0094】
前記構成を有する組成物は、高流動性のプロピレンホモ重合体を含むことによって、500g/10min超、より具体的には、500g/10min超2000g/10min以下の高い溶融指数(MI)を示す。
【0095】
本発明において、前記組成物の溶融指数は、先に説明したように、ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定することができ、10分間溶融して重合体の重量(g)で示す。
【0096】
その次に、前記組成物に対する押出工程を行ってペレット型のポリプロピレン樹脂を製造する。
【0097】
前記押出工程は、ペレットダイ温度を150~190℃の温度範囲に制御することを除いては、通常の方法によって行うことができる。
【0098】
具体的に、押出工程は、通常の押出機を使用して行うことができ、この時、押出機バレルの温度および速度は特に限定されないが、一例として、50~250℃および100~1000rpm条件で行うことができる。
【0099】
また、前記押出時ペレットダイ温度は、溶融状態の樹脂温度を下げることによって粘度を上昇させてペレット化を可能にするが、ペレットダイ温度が150℃未満であればプロピレンホモ重合体が十分に溶融しなくてペレット化が十分になされないか、または固化されてダイ内部を塞ぐことによって生産性を低下させる恐れがある。また、ペレットダイ温度が190℃を超過する場合、粘度が過度に低くなって流体のように流れるため、ペレット形態へのカッティング(cutting)が不可能であるなど、ペレット製造が難しいことがある。より具体的には、ペレットダイ温度は、155℃以上、または160℃以上であり、180℃以下、または170℃以下の温度で行うことができる。
【0100】
また、前記ペレットダイ温度と共に圧力をさらに制御する場合、ペレットダイ圧力は20bar以上、または30bar以上であり、50bar以下、または35bar以下であってもよい。このような範囲内に圧力制御時、ペレット型ポリプロピレン樹脂の形状および物性をより容易に実現することができる。
【0101】
従来チーグラー・ナッタ系触媒を使用して製造したプロピレンホモ重合体を含む組成物の場合、押出前の溶融指数(MI)が200g/10min以下で低いが、分解促進剤の投入によるビス-ブレーキングによって押出後のMIは500g/10min以上に大きく増加する。しかし、本発明によるプロピレンホモ重合体を含む組成物は、ビス-ブレーキングの遂行なくても押出前の500g/10min超の高いMIを押出後にも維持することができる。具体的に、本発明による製造方法において、前記樹脂組成物は、押出後のMIが500g/10min超、または550g/10min以上、または700g/10min以上であり、2000g/10min以下、または1500g/10min以下であり、押出前の組成物のMIが押出後の組成物のMIより高いか同一である(押出前の組成物のMI≧押出後の組成物のMI)。
【0102】
この時、押出前/後の組成物のMIは、先に説明したように、ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定することができ、10分間溶融して重合体の重量(g)で示す。
【0103】
前記方法で製造されたペレット型ポリプロピレン樹脂は、プロピレンホモ重合体と共に酸化防止剤を含み、前述のような物性的特徴を示すことによって、従来の繊維製造時に使用される過酸化物系分解促進剤の使用なくても、優れた繊維加工性を有して、細繊化が可能である。これにより、フィルターやマスクなど優れたろ過効率が要求される繊維製造分野に特に有用である。
【0104】
これにより、本発明の他の一実施形態によれば、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂を用いて製造した繊維、延いては不織布を提供する。
【0105】
一方、前記ペレット型ポリプロピレン樹脂内のプロピレンホモ重合体および酸化防止剤の種類および含量は、先に製造方法で説明した通りである。
【0106】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0107】
製造例1:触媒の製造
シリカ3gをシュレンクフラスコに予め秤量した後、メチルアルミノキサン(MAO)52mmolを入れて、90℃で24時間反応させた。沈殿後、上層部は除去し、トルエンで2回にわたって洗浄した。下記構造の遷移金属化合物(1a)240μmolをトルエンに溶解させて反応器に添加した後、70℃で5時間反応させた。反応終了後、沈殿が終わると、上層部溶液は除去し、残った反応生成物をトルエンで洗浄した後、ヘキサンで再び洗浄し真空乾燥して固体粒子形態のシリカ担持メタロセン触媒5gを得た。
【0108】
【0109】
比較製造例1:触媒の製造
前記製造例1で、化学式1aの化合物の代わりに下記構造の化合物(I)を使用することを除いては、前記製造例1と同様な方法で行ってシリカ担持メタロセン触媒を製造した。
【0110】
【0111】
実施例1
段階1:プロピレンホモ重合体の製造
前記製造例1で製造したシリカ担持メタロセン触媒の存在下で、連続的な2器のループ反応器を用いてプロピレンのバルク-スラリー重合を行った。この時、トリエチルアルミニウム(TEAL)および水素ガスはそれぞれポンプを用いて投入し、前記で製造した担持触媒は16重量%でオイルおよびグリースに混合したマッド触媒形態で使用した。反応器の温度は70℃、時間当り生産量は40kgに維持しながらプロピレンホモ重合体を製造した。
【0112】
段階2:ペレット型ポリプロピレン樹脂の製造
下記表1に記載された配合で、前記で製造したプロピレンホモ重合体、有機金属系化合物としてステアリン酸カルシウム、そしてフェノール系酸化防止剤としてIrganox 1010(登録商標)(BASF社製)を混合して組成物を製造した後、二軸押出機を使用して下記条件で押出してペレット型ポリプロピレン樹脂のペレットを製造した。
【0113】
<押出条件>
スクリュー速度:150rpm
供給速度(feed rate):20kg/hr
押出機バレル温度:50℃→100℃→150℃→250℃→200℃→150℃に順次調整
ペレットダイ温度:160℃
ペレットダイ圧力:30bar
【0114】
実施例2
前記実施例1の段階1で、プロピレンホモ重合体の製造条件を下記表1に記載された条件に変更することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってポリプロピレン樹脂を製造した。
【0115】
実施例3~5
前記実施例1の段階1でプロピレンホモ重合体の製造条件、または段階2での押出条件を下記表1に記載された条件に変更することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってポリプロピレン樹脂を製造した。
【0116】
比較例1
プロピレンホモ重合体としてチーグラー・ナッタ(Z/N)触媒を使用して製造したH7900(登録商標)(LG化学社製)を使用し、組成物の製造時に分解促進剤Trigonox-101(登録商標)(Akzonobel社製)がさらに投入されることを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってポリプロピレン樹脂のペレットを製造した。
【0117】
比較例2
プロピレンホモ重合体としてチーグラー・ナッタ(Z/N)触媒を使用して製造したH7912(登録商標)(LG化学社製)を使用し、組成物の製造時に分解促進剤Trigonox-101(登録商標)(Akzonobel社製)がさらに投入されることを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってポリプロピレン樹脂のペレットを製造した。
【0118】
比較例3
プロピレンホモ重合体としてチーグラー・ナッタ(Z/N)触媒を使用して製造したH7914(登録商標)(LG化学社製)を使用し、組成物の製造時に分解促進剤Trigonox-101(登録商標)(Akzonobel社製)がさらに投入されることを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってポリプロピレン樹脂のペレットを製造した。
【0119】
比較例4
前記実施例1の段階1で、製造例1で製造したシリカ担持メタロセン触媒の代わりに比較製造例1で製造したシリカ担持メタロセン触媒を使用することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってポリプロピレン樹脂を製造した。
【0120】
比較例5および6
前記実施例1の段階1で製造したプロピレンホモ重合体を使用するが、ペレット化時の条件を下記表1に記載された条件に変更することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってポリプロピレン樹脂を製造した。
【0121】
実施例1~5、および比較例1~6によるプロピレンホモ重合体および樹脂組成物を製造する工程において、具体的なプロピレンの含量、1-ブテンの含量、重合条件などを下記表1に示した。
【0122】
【0123】
上記表1において、重量%は、ポリプロピレン樹脂の総重量を基準にした値である。また、押出前/後の組成物の溶融指数(MI)は、ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定し、10分間溶融して重合体の重量(g)で示した。
【0124】
また、NDは、押出後に正常的なペレットが製造されず、MIを測定できなかったことを意味する。そして、NAは、樹脂が正常に溶融しなくて押出が行われていないことを意味する。
【0125】
前記表1に示されているように、本発明による実施例1~5のポリプロピレン樹脂の場合、押出後の組成物でのMIが減少はしたが、押出前/後の組成物のMIが500g/10min超で高流動性を示した。
【0126】
反面、従来チーグラー・ナッタ系触媒を使用して製造したプロピレンホモ重合体を含み、押出時に分解促進剤を使用したビスブレーキング工程が行われた比較例1~3の場合、押出前は200g/10min以下の低い流動性を示し、押出後にMIが大きく増加した。
【0127】
また、本発明と類似するように、メタロセン系触媒を使用して製造したプロピレンホモ重合体を含む比較例4の場合、押出前の組成物が高流動性を示したが、押出後に正常的なペレットが製造されず、MIを測定できなかった。
【0128】
また、本発明と同様に製造したプロピレンホモ重合体を含む比較例5の場合、高温のペレットダイ温度によって押出後に正常的なペレットが製造されなく、また比較例6の場合、低いペレットダイ温度によって樹脂が正常に溶融しなくて押出が行われなかった。
【0129】
試験例1:ペレット型ポリプロピレン樹脂の物性評価
実施例および比較例で製造したポリプロピレン樹脂に対して次のような方法で物性評価を行った。その結果を下記表2に示した。
【0130】
(1)溶融指数(MI、2.16kg):ASTM D1238によって230℃で2.16kg荷重で測定し、10分間溶融して出た重合体の重量(g)で示した。
【0131】
(2)融点(Tm):ポリプロピレン樹脂の温度を200℃まで増加させた後、5分間その温度で維持し、その後、30℃まで下げ、再び温度を増加させてDSC(Differential Scanning Calorimeter、TA社製造)曲線の頂上を融点とした。この時、温度の上昇と下降の速度は10℃/minであり、融点は2番目に温度が上昇する区間で測定した結果を使用した。
【0132】
(3)結晶化温度(Trc):ポリプロピレン樹脂の温度を200℃まで増加させた後、5分間その温度で維持し、その後、30℃まで下げ、再び温度を200℃まで10℃/minで増加させた後、再び10℃/minで下げる区間でのDSC(Differential Scanning Calorimeter、TA社製造)曲線の頂上を結晶化温度とした。
【0133】
(4)キシレン可溶分(Xylene Soluble、重量%):前記実施例および比較例によって製造したポリプロピレン樹脂それぞれのサンプルにキシレンを入れて135℃で1時間加熱し、30分間冷却して前処理した。OminiSec(Viscotek社 FIPA)装備で1mL/minの流速で4時間キシレンを流してRI、DP、IPのベースライン(base line)が安定化されると、前処理したサンプルの濃度、インジェクション量を記入して測定後、ピーク面積を計算した。
【0134】
(5)色(Yellow Index):ASTM評価法D1925によって測定した。
【0135】
(6)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(MWD、polydispersity index):ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、測定した重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布(MDW、即ち、Mw/Mn)を計算した。
【0136】
具体的に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)装置としてはWaters PL-GPC220機器を使用し、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを使用した。この時、測定温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minにした。実施例および比較例によるポリプロピレン樹脂のサンプルは、それぞれ10mg/10mLの濃度で調製した後、200μLの量で供給した。ポリスチレン標準試片を用いて形成された検定曲線を用いて、MwおよびMnの値を誘導した。ポリスチレン標準試片の重量平均分子量は、2,000g/mol/10,000g/mol/30,000g/mol/70,000g/mol/200,000g/mol/700,000g/mol/2,000、000g/mol/4,000,000g/mol/10,000,000g/molの9種を使用した。
【0137】
【0138】
上記表2において、NDは、測定されないことを意味する。
【0139】
試験例2
前記実施例および比較例で製造したポリプロピレン樹脂の形状を観察し、観察写真を
図1~6に示した。
【0140】
また、前記観察写真から確認された10個のポリプロピレン樹脂の直径、即ち、外周面の任意の直線距離のうちの最長距離を測定し、平均値を求めた。平均直径2mmを基準にして、2mm以上はペレットに、2mm未満は粉末に区分した。
【0141】
また、下記のような方法で延伸直径を測定し、その結果を下記表3および
図7~12に示した。
【0142】
正確な延伸直径測定のために、流体の流動物性測定に使用される、TA社のDHR(Discovery Hybrid Rheometer)を用いた。前記実施例および比較例で準備したポリプロピレン樹脂を溶かして、前記DHRの上板および下板の間にローディングした(温度:170℃、上板および下板の間にローディングされたポリプロピレン樹脂の初期直径:8mm、初期厚さ:1.5mmの条件)。
【0143】
DHRの上板を延伸速度10mm/sで上に上昇させながら、上板および下板の間にローディングされた溶融ポリプロピレン樹脂が延伸され、これを超高速カメラ(Crashcam 1520(登録商標)、IDT社製)で撮影し、イメージ分析によって(分析ツール:ImageJ)、延伸されるポリプロピレン樹脂の直径を測定した。
【0144】
【0145】
実験結果、本発明による実施例1~5のペレット型ポリプロピレン樹脂は、低い延伸直径を示して細繊化が可能であるのを確認することができる。反面、比較例1~3のポリプロピレン樹脂は、ペレット型を有したが、延伸直径が0.4mm超であって、実施例に比べて繊維加工性が低下することが分かる。また、比較例4~6の場合、比較例1~3に比べては減少した延伸直径を示したが、粉末状に製造されることによって実際に製品に適用できない。