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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】防眩フィルムおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20220905BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220905BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220905BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20220905BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220905BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220905BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220905BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220905BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
G02B5/02 C
B32B7/023
B32B27/18 Z
G02B1/14
G02B5/02 B
G02F1/1335
G09F9/00 313
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020542401
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2019004093
(87)【国際公開番号】W WO2019216552
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0054363
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・イ
(72)【発明者】
【氏名】クワンソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054804(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0072859(KR,A)
【文献】国際公開第2017/141903(WO,A1)
【文献】特開2013-178533(JP,A)
【文献】特開2017-227900(JP,A)
【文献】特表2018-533067(JP,A)
【文献】特開2011-221420(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035656(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/099931(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0024211(KR,A)
【文献】特開2015-172641(JP,A)
【文献】特開2007-017842(JP,A)
【文献】特開2015-206837(JP,A)
【文献】特開2014-149504(JP,A)
【文献】特表2018-517183(JP,A)
【文献】特開2010-102186(JP,A)
【文献】特開2012-98425(JP,A)
【文献】特開2008-299007(JP,A)
【文献】特開2013-105160(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065865(WO,A1)
【文献】特表2021-507319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材;およびバインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した有機微粒子と無機微粒子を含むハードコート層;を含み、
前記有機微粒子全体のうち、前記ハードコート層の一面を基準として厚さ方向に対して約0.5μm以上の距離の差があり、前記ハードコート層に対して光学顕微鏡で撮影した透過イメージが重なる、2以上の有機微粒子の比率が5%以下であり、9.2%~9.8%の外部ヘイズを有し、11.5%~13.6%の内部ヘイズ値を有し、
外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が1.3~1.5であり、
前記光透過性基材は、400nm~800nmのいずれかの波長で測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が3,000nm以上である光透過性基材を含む、防眩フィルム。
【請求項2】
前記互いに凝集する2以上の有機微粒子のうち互いに隣り合う2個の有機微粒子は、前記ハードコート層の一面を基準として厚さ方向に対して相異する位置でそれぞれの光学顕微鏡像の焦点を有する、請求項1に記載の防眩フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層は、1μm~10μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の防眩フィルム。
【請求項4】
前記有機微粒子は、0.5μm~6μmの直径を有し、550nmの波長基準1.500~1.600の屈折率を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項5】
前記無機微粒子は、0.01μm~5μmの直径を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項6】
前記バインダ樹脂は、ビニル系単量体または(メタ)アクリレート系単量体の重合体または共重合体を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子5~25重量部を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に規定の防眩フィルムを含む、ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記ディスプレイ装置はノートブック用ディスプレイ装置であり、
前記防眩フィルムは前記ノートブック用ディスプレイ装置の最外郭面に位置する、請求項に記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2018年5月11日付韓国特許出願第10-2018-0054363号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、防眩フィルムおよびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
平板ディスプレイ技術が大面積化高解像度の方に発展するにつれ、適用製品がTV、モニタ、モバイルなど家庭用およびオフィス用から屋外広告板、電光板など大面積ディスプレイに発展している。LCDやPDP、OLED、背面投影(Rear-projection)TVなどの平板ディスプレイ(FPD;Flat Panel Display)は、自然光などの外部光に露出する場合、表面反射光によって利用者の目に疲労感を与えたり頭痛を誘発したり、ディスプレイの内部で作られるイメージが鮮明な像として認識されない問題を抱えている。このような短所を解決するためにディスプレイ表面に凹凸を形成して外部の光を表面で散乱させたり、コーティング膜を形成する樹脂と微粒子との間の屈折率を用いて内部散乱を誘導するための防眩フィルム(Anti-Glare Film)を適用する。
【0004】
このような目的で表示装置などの表面に適用される防眩フィルムは、防眩効果だけでなく、高鮮明性と高コントラスト比も求められる。しかし、一般的にヘイズ値が高いほど外部光の拡散程度が大きくなり、防眩効果が良いが、表面の散乱によるイメージの歪曲現象と内部散乱による白化現象によりコントラスト比(contrast ratio)が劣る問題が現れる。このように、鮮明度およびコントラスト比を高める場合、防眩特性が劣り、防眩特性を高める場合、像鮮明度およびコントラスト比が劣る問題があるため、このような特性をどのように制御するかは高解像度ディスプレイ用防眩フィルムの製造において重要な技術であるといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高いコントラスト比および優れた像鮮明度を示しながらもスパークリング(sparkling)不良を防止できる防眩フィルムを提供する。
【0006】
また、本発明は、前記防眩フィルムを含み、高いコントラスト比および優れた像鮮明度を示しながらもスパークリング不良が防止されたディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、光透過性基材;およびバインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した有機微粒子と無機微粒子を含むハードコート層;を含み、前記有機微粒子全体のうち互いに凝集する2以上の有機微粒子の比率が5%以下であり、外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が2.5以下である、防眩フィルムを提供することができる。
【0008】
また、本明細書では、前記防眩フィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【0009】
以下、発明の具体的な実施形態による防眩フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0010】
本明細書において、(メタ)アクリレート[(Meth)acrylate]は、アクリレート(acrylate)およびメタクリレート(Methacrylate)の両方を含む意味である。
【0011】
また、光硬化性樹脂は光の照射によって、例えば可視光線または紫外線の照射によって重合された高分子樹脂を通称する。
【0012】
発明の一実施形態によれば、光透過性基材;およびバインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した有機微粒子と無機微粒子を含むハードコート層;を含み、前記有機微粒子全体のうち互いに凝集する2以上の有機微粒子の比率が5%以下であり、外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が2.5以下である、防眩フィルムを提供することができる。
【0013】
ノートブック用ディスプレイの最表面には、表面反射を減らし、映像の視認性を高めるための防眩コーティング層を形成するが、このような防眩コーティング層に含まれる有機または無機粒子の凝集によって表面凹凸が形成されて光の乱反射が誘導される。しかし、前記有機または無機粒子によって形成された凝集の大きな部分で反射した光が増幅して視認性が不良となる問題があるが、これをスパークリング(sparkling)不良、あるいはギラツキ不良という。
【0014】
ノートブックのように使用者との距離が近いディスプレイであるほどスパークリング不良に対する視認性低下が大きく現れる。そのため高いコントラスト比および優れた像鮮明度を示しながらもスパークリング(sparkling)不良を防止できるフィルムの開発が求められる実情である。
【0015】
本発明者らは、前記ハードコート層に含まれる有機微粒子および無機微粒子を介して光の散乱効果を誘導しながらも、前記有機微粒子がハードコート層内でより均一に分布するようにし、高いコントラスト比および優れた像鮮明度を示しながらもスパークリング(sparkling)不良を防止できる防眩フィルムを製造した。
【0016】
具体的には、前記ハードコート層に含まれる前記有機微粒子全体のうち互いに凝集する2以上の有機微粒子の比率が5%以下でありうる。前記「凝集」は、前記2以上の有機微粒子が接したりまたは粒子の部分が重なる場合などをすべて含む。
【0017】
前記実施形態の防眩フィルムにおいて、前記2以上の有機微粒子が凝集する場合、前記互いに凝集する2以上の有機微粒子からなる1個のグループで少なくとも2個の有機微粒子は前記ハードコート層の一面からの距離が相違する位置に存在し得る。
【0018】
より具体的には、前記実施形態の防眩フィルムにおいて、前記互いに凝集する2以上の有機微粒子のうち互いに隣り合う2個の有機微粒子は、前記ハードコート層の一面からの距離が相違する位置に存在するが、このように前記ハードコート層の厚さ方向に距離が相異する位置で凝集して存在する2個以上の有機微粒子の比率を5%以下、または4.5%以下、または4%以下、または3.5%以下に調整してスパークリング(sparkling)不良の発生を防止し、像鮮明度を大きく向上させることができる。
【0019】
前記「互いに凝集する2以上の有機微粒子のうち互いに隣り合う2個の有機微粒子」は、前記互いに凝集する2以上の有機微粒からなる1個のグループで凝集したり直接接する2個の有機微粒子を意味する。
【0020】
前記ハードコート層の一面から有機微粒子までの距離は、前記ハードコート層の一面から有機微粒子の外部の一点までの最小距離を意味し、例えば前記ハードコート層の一面から有機微粒子表面までの最小距離である。
【0021】
前記有機微粒子が凝集したか否かまたは互いに隣り合う2個の有機微粒子は前記ハードコート層の一面からの相異する距離に位置するか否かは、前記防眩フィルムを視覚的に確認したり光学装置を用いて確認することができる。
【0022】
例えば、前記実施形態の防眩フィルムにおいて、前記互いに凝集する2以上の有機微粒子のうち互いに隣り合う2個の有機微粒子は、前記ハードコート層の一面を基準として厚さ方向に対して距離が相異する位置でそれぞれの光学顕微鏡像の焦点を有することができる。すなわち、前記互いに凝集する2以上の有機微粒子のうち互いに隣り合う2個の有機微粒子は、前記ハードコート層の一面を基準として厚さ方向に対して距離が相異する位置に存在し、光学顕微鏡を用いて前記ハードコート層の厚さ方向に焦点を移動しながら観察するとき互いに隣り合う2個の有機微粒子それぞれが確認される焦点、すなわち個別の有機微粒子が存在する位置を確認することができる。
【0023】
前述したように、前記互いに凝集する2以上の有機微粒子のうち互いに隣り合う2個の有機微粒子は、前記ハードコート層の一面からの距離が相違する位置に存在することができ、例えば前記互いに凝集する2以上の有機微粒子のうち互いに隣り合う2個の有機微粒子は、前記ハードコート層の一面から0.1μm以上、または0.2μm以上、または0.5μm以上、または1μm以上、または2μm以上の距離の差を有して位置することができる。
【0024】
一方、一般的にヘイズ値が高いほど外部光の拡散程度が大きくなり、防眩効果が卓越する反面、表面の散乱によるイメージの歪曲現象と内部散乱による白化現象によりコントラスト比が劣る問題が現れる。これに反し、前記実施形態の防眩フィルムはそれほど高くないヘイズ値を有しながらも高いコントラスト比および優れた像鮮明度を示すことができ、さらにスパークリング(sparkling)不良を防止することができる。
【0025】
より具体的には、前記防眩フィルムが有する外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が2.5以下、または0.5~2、または0.8~1.8でありうる。
【0026】
前記防眩フィルムが有する外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率は、前記ハードコート層に含まれるバインダ樹脂と有機微粒子または無機微粒子の屈折率差、有機微粒子または無機微粒子がハードコート層内で占める体積分率、有機微粒子または無機微粒子や二つの種類以上の微粒子の凝集した形態と凝集大きさなどに起因したものであり得る。
【0027】
前記防眩フィルムが有する外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が2.5以下、または0.5~2、または0.8~1.8であることによって、前記防眩フィルムは像鮮明度に優れ、高いコントラスト比を実現して鮮明なイメージを実現することができ、それほど高くないヘイズを有し、かつ粒子の分布が均一であるためスパークリング不良の発生を防止することができる。
【0028】
前記防眩フィルムが有する外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が過度に低い場合、外部太陽光の反射が足りずイメージの視認性が低くなり、イメージが鮮明に見られない。また、前記防眩フィルムが有する外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が過度に高い場合、映像を実現する光散乱が増加してイメージが鮮明に見られないこともある。
【0029】
具体的には、前記実施形態の防眩フィルムは、上述した外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率を満足する範囲で2%~20%、または3%~15%の外部ヘイズを有することができ、3%~30%、または5%~20%の内部ヘイズ値を有することができる。
【0030】
一方、前記防眩フィルムは、前記ハードコート層の製造時、前記有機微粒子がより均一に分散および分布できるようにすることによって提供することができる。例えば、所定の混合溶媒を使用し、前記ハードコート層のバインダ樹脂を形成する単量体、有機微粒子および無機微粒子を所定の攪拌条件で混合して形成されたコーティング組成物を使用することによって、前記ハードコート層および防眩フィルムを提供することができる。
【0031】
前記ハードコート層および防眩フィルムの提供に使用される有機溶媒の具体的な組み合わせは限定されるものではないが、ケトン類溶媒とアセテート類溶媒を混合して使用することができ、例えば6:1~1:1、または4:1~1.5:1の重量比で混合して使用することができる。
【0032】
前記アセテート類は、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、またはセロソルブアセテートが使用され得、前記ケトン類はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、またはアセトンが使用されるが、上述した例に限定されるものではない。
【0033】
前記アセテート類溶媒およびケトン類溶媒以外に追加的な溶媒の使用も可能であり、例えば、炭素数1~6の低級アルコール類、セロソルブ類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる1種または1種以上の混合物を使用することができる。この時、前記低級アルコール類は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、またはジアセトンアルコールなどを例に挙げることができる。
【0034】
前記ハードコート層は、前記防眩フィルムの具体的な用途に応じて適宜の厚さを有し得るが、例えば1μm~10μm、または2μm~8μmの厚さを有することができる。具体的には、前記防眩フィルムが前記ノートブック、屋外電光板、TVディスプレイ装置の最外郭面に位置する用途に用いられる場合、前記ハードコート層は、3μm~8μmの厚さを有することができる。
【0035】
前記有機微粒子の具体的な種類や大きさは限定されるものではないが、具体的な例として前記有機微粒子は、550nmの波長基準1.500~1.600の屈折率を有することができる。
【0036】
前記有機微粒子の具体的な例は限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリレート-co-スチレン、ポリメチルアクリレート-co-スチレン、ポリメチルメタクリレート-co-スチレン、ポリカーボネート、ポリビニルクロライド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルベンゼン-co-スチレン、ポリジビニルベンゼン-co-アクリレート、ポリジアリルフタレートおよびトリアリルイソシアヌルレートポリマーの中から選ばれた一つの単一物またはこれらの2以上のコポリマー(copolymer)であるものを使用することができる。
【0037】
前記無機微粒子の具体的な種類は限定されるものではないが、例えば、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる無機微粒子でありうる。
【0038】
前記防眩フィルムで光の散乱効果を最適化するために前記有機または無機微粒子は、粒径が1~10μm、好ましくは1~8μm、さらに好ましくは有機微粒子は0.5μm~6μmの直径を有する粒子で、無機微粒子は0.01μm~5μmの直径を有する粒子でありうる。
【0039】
前記有機または無機微粒子の粒径は、光の散乱効果を最適化する側面から1μm以上であり得、ヘイズまたはコーティング厚さの側面から10μm以下でありうる。例えば、有機または無機微粒子の直径が10μmを超えて過度に大きくなる場合に適正ヘイズ(haze)を合わせるためにコーティングの厚さを増大させねばならない。その場合は、フィルムの耐クラック性が低下する問題が発生し得る。
【0040】
前記ハードコート層において、前記有機微粒子全体のうち互いに凝集する2以上の有機微粒子の比率を5%以下に調整するために、前記有機微粒子の直径も所定の範囲であることが好ましく、具体的には前記有機微粒子は、0.5μm~6μmの直径を有することができる。
【0041】
一方、前記ハードコート層は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子5~25重量部を含み得る。また、前記ハードコート層は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子および無機微粒子3~40重量部を含み得る。
【0042】
前記有機微粒子および無機微粒子は、グレア現象を防止するために、光の散乱効果を誘導するために添加される成分であるため、前記ハードコート層は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子および無機微粒子3~40重量部、または5~30重量部で含まれ得る。この時、前記ハードコート層は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子5~25重量部、または7~20重量部で含み得る。
【0043】
前記ハードコート層のうち前記有機微粒子および無機微粒子の含有量が過度に低い場合、内部散乱によるヘイズ値が十分に具現されず、前記ハードコート層のうち前記有機微粒子および無機微粒子の含有量が過度に高い場合、前記ハードコート層を形成するコーティング組成物の粘度が高まってコーティング性が不良になり、内部散乱によるヘイズ値が過度に大きくなってコントラスト比が低下し得る。
【0044】
特に、前記ハードコート層は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子5~25重量部、または7~20重量部で含み得るが、前記有機微粒子の含有量が過度に低いと、内部散乱によるヘイズ値が十分に具現されず、反射イメージの結像が増加し得、前記有機微粒子の含有量が過度に高いとヘイズ値が過度に高いため像鮮明度が低下したりコントラスト比が低下し得る。
【0045】
一方、前記バインダ樹脂は、ビニル系単量体または(メタ)アクリレート系単量体の重合体または共重合体を含み得る。
【0046】
前記ビニル系単量体または(メタ)アクリレート系単量体は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を1以上、または2以上、または3以上含む単量体またはオリゴマーを含み得る。
【0047】
前記(メタ)アクリレートを含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートまたはこれらの2種以上の混合物や、またはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー、デンドリックアクリレートオリゴマー、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。この時、前記オリゴマーの分子量は、1,000~10,000であることが好ましい。
【0048】
前記ビニル基を含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ジビニルベンゼン、スチレンまたはパラメチルスチレンが挙げられる。
【0049】
また、前記バインダ樹脂に含まれる重合体または共重合体は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシレイテッドグリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシレイテッドグリセロトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体群より選ばれる1種以上の単量体から由来した部分をさらに含み得る。
【0050】
一方、前記ハードコート層を形成する段階では、光重合性コーティング組成物の塗布に通常用いられる方法および装置を格別な制限なしで用いることができ、例えば、Meyer barなどのバーコート法、グラビアコーティング法、2 roll reverseコート法、vacuum slot dieコート法、2 rollコート法などを用いることができる。
【0051】
前記ハードコート層を形成する段階では200~400nm波長の紫外線または可視光線を照射し得、照射時の露光量は100~4,000mJ/cmが好ましい。露光時間も特に限定されるのではなく、用いられる露光装置、照射光線の波長または露光量に応じて適宜変化させることができる。また、前記ハードコート層を形成する段階では窒素雰囲気条件を適用するために窒素パージなどをすることができる。
【0052】
一方、前記光透過性基材は、光透過度が90%以上で、ヘイズ1%以下である透明フィルムでありうる。また、前記基材の素材はトリアセチルセルロース、シクロオレフィン重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどでありうる。また、前記基材フィルムの厚さは生産性などを考慮して10~300μmであり得るが、これに限定するものではない。
【0053】
より具体的には、前記光透過性基材が有する波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が3,000nm以上、または5,000nm以上、または5,000nm~20,000nmでありうる。
【0054】
このような光透過性基材の具体的な例としては一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0055】
前記防眩フィルムが前記波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が、3,000nm以上、または5,000nm以上、または5,000nm~20,000nmである光透過性基材を含む場合、1000~3000nm以下のレターデーションを用いる場合に比べて可視光線の干渉によるレインボー現象が緩和される。
【0056】
厚さ方向のレターデーション(Rth)は、通常知られている測定方法および測定装置により確認することができる。例えば、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定装置としてはAXOMETRICS社製の商品名AxoScanなどが挙げられる。
【0057】
例えば、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定条件としては前記光透過性基材フィルムに対して、屈折率(589nm)値を前記測定装置に入力した後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用いて、光透過性基材フィルムの厚さ方向のレターデーションを測定し、求めた厚さ方向のレターデーション測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚さ10μm当たりレターデーション値に換算することによって求めることができる。また、測定試料の光透過性基材のサイズは、測定機のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければ良く、特に制限されないが、縦76mm,横52mm、厚さ13μmの大きさであってよい。
【0058】
また、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定に用いる「前記光透過性基材の屈折率(589nm)」の値は、レターデーションの測定対象になるフィルムを形成する光透過性基材と同じ種類の樹脂フィルムを含む未延伸フィルムを形成した後、このような未延伸フィルムを測定試料として使用し(また、測定対象になるフィルムが未延伸フィルムである場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として使用できる)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR-1T SOLID」)を用いて、589nmの光源を使用し、23℃の温度条件で、測定試料の面内方向(厚さ方向とは垂直である方向)の589nmの光に対する屈折率を測定して求めることができる。
【0059】
発明のまた他の実施形態によれば、上述した防眩フィルムを含むディスプレイ装置を提供することができる。
【0060】
前記ディスプレイ装置の具体的な例は限定されるものではなく、例えば液晶表示装置(Liquid Crystal Display])、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード装置(Organic Light Emitting Diodes)等の装置でありうる。
【0061】
前記ディスプレイ装置で前記防眩フィルムはディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外郭表面に備えられる。
【0062】
より具体的には、前記ディスプレイ装置は、ノートブック用ディスプレイ装置、TV用ディスプレイ装置、広告用大面積ディスプレイ装置であり得、前記防眩フィルムは、前記ノートブック用ディスプレイ装置、TV用ディスプレイ装置、広告用大面積ディスプレイ装置の最外郭面に位置することができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、高いコントラスト比および優れた像鮮明度を示しながらもスパークリング(sparkling)不良を防止できる防眩フィルムと前記防眩フィルムを含んで高いコントラスト比および優れた像鮮明度を示しながらもスパークリング不良が防止されるディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】実施例1で得られたハードコート層の平面を光学顕微鏡で確認した写真を示す図である。
図2】比較例3で得られたハードコート層の平面を光学顕微鏡で確認した写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0066】
<実施例および比較例:防眩フィルムの製造>
(1)ハードコート層形成用組成物の製造
下記表1に記載されたバインダ樹脂形成用単量体および高分子および溶媒を均一に混合して第1コート液を製造し、有機微粒子および無機微粒子を粒子希釈溶媒に混合して第2コート液をそれぞれ製造する。各コート液が均一に混合されるように十分に攪拌した後、二つのコート液を混合してハードコート組成物を製造した。
【0067】
(2)防眩フィルムの製造
このように得られたハードコート組成物を下記表2の基材に#10 mayer barでコートして90℃で1分乾燥した。このような建造物に150mJ/cmの紫外線を照射してハードコート層を形成して防眩フィルムを製造した。
【0068】
【表1】
【0069】
PETA:Pentaerythritol triacrylate,SK Entis製品
MA-ST:体積平均粒径が12nmで、屈折率が1.43である球形のシリカ微粒子(Nissan Chemical社の製品)が30%の濃度でmethanolに分散している分散溶液
MIBK:メチルイソブチルケトン
Ethanol:エタノール
n-BA:ノルマルブチルアセテート
EB-1290:光硬化型Aliphatic Urethane Hexaacrylate/SK Entis/固形分100%
I184:光硬化用開始剤(Irgacure 184,BASF社の製品)
T270:固形分100%であるレベリング用添加剤(Tego-Glide 270,Tego Evonik社の製品)
F477:固形分100%であるフッ素系レベリング用添加剤(F477,DIC Chemical社の製品)
68BQ(XX-68BQ,Sekisui Plastic社の製品):屈折率1.555、平均粒径3.5μmであるPolystyrene-Polymethylmethacrylate架橋共重合体微粒子
67BQ(XX-67BQ,Sekisui Plastic社の製品):屈折率1.555、平均粒径2.0μmであるPolystyrene-Polymethylmethacrylate架橋共重合体微粒子
90BQ(XX-90BQ,Sekisui Plastic社の製品):屈折率1.595、平均粒径3.5μmであるPolystyrene-Polymethylmethacrylate架橋共重合体微粒子
112BQ(XX-112BQ,Sekisui Plastic社の製品):屈折率1.595、平均粒径2μmであるPolystyrene-Polymethylmethacrylate架橋共重合体微粒子
【0070】
【表2】
SRF PET:スーパーレターデーションPETフィルム(Super Retarder Film PolyEthylene Terephthalate)
【0071】
[実験例]
1.ハードコート層で凝集する有機微粒子の比率確認
前記実施例および比較例それぞれで得られたハードコート層に対して光学顕微鏡(Olympus社のBX51光学顕微鏡)で透過イメージを撮影して凝集する有機微粒子の比率を確認した。具体的にフィルムはハードコート層が対物レンズ側に向かうように置いて、対眼レンズ10倍、対物レンズ10倍あるいは20倍に設定して透過イメージを観察した。
【0072】
前記ハードコート層の一面を基準として厚さ方向に対して約0.5μm以上の距離の差がある場合を有機微粒子が互いに凝集したと判断した。重なった粒子部位を観察する場合、下側に位置する粒子の断面に焦点を合わせて、上側に位置する粒子の重なることを確認した。この際、上側の粒子が厚さ方向に重ならなかった場合、二つの粒子が重なる部分が確認されてはならない。一方、二つの粒子が厚さ方向に重なった場合、焦点が合う下側の粒子が鮮明な球形に見られず、上側粒子によって一部が隠れた形状で観察される。このような方法で重なった粒子の個数を確認した後、同一測定面にある全体粒子の個数で除して重なった粒子の比率を計算した。
【0073】
2.透光度および全体/内部/外部ヘイズの評価
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルムから4cmx4cmの試験片を準備してヘイズ測定機(HM-150,A光源、村上社)で3回測定して平均値を計算し、これを全体ヘイズ値として算出した。測定時、透光度とヘイズは同時に測定され、透光度はJIS K 7361規格、ヘイズはJIS K 7105規格によって測定した。内部ヘイズ測定時には、測定対象光学フィルムのコーティング面に全体ヘイズが0である粘着フィルムを貼って表面の凹凸を平坦にさせた後、上の全体ヘイズと同一方法で内部ヘイズを測定した。
【0074】
外部ヘイズは、全体ヘイズと、内部ヘイズの測定値差を計算した値の平均値で算出した。
【0075】
3.レインボー発生の確認
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルムから10cmx10cmの試験片を準備し、ラミネーション工程を用いてハードコート層の反対面に黒フィルム(UTS-30BAFフィルム、Nitto社)を貼る。フィルムのハードコート面に三波長ランプ光が反射するようにした後、反射したイメージのレインボー発生の有無を確認した。
【0076】
<測定基準>
X:レインボーが視認されない
中:レインボーが弱く視認される。緑-青、青-紫などレインボーを形成する色相間の平均波長差が80nm以下である
強:レインボーが強く視認される。赤-緑、オレンジ-青などレインボーを形成する色が互いに補色関係であるか、平均波長差が100nm以上である。
【0077】
4.sparkling発生の確認
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルムに対して12cmx12cm大きさでサンプルを準備した後、150PPIパネル上にハードコート面が上に向くようにサンプルを載せる。この際、フィルムが浮きかないように四面にテープを貼ってもよい。その後白色画面が見えるようにパネルを駆動した後サンプル10cmx10cm以内の領域でスパークリング発生の有無を確認した。
【0078】
<測定基準>
良好:スパークリング発生
不良:スパークリング未発生
【0079】
5.像鮮明度(%)の測定
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルムに対してスガ試験機株式会社(Suga Test Instrument Co.,LTD.)のICM-1Tを用いて像鮮明度を測定した。像鮮明度はスリット幅0.125mm、0.5mm、1mm、2mmで測定して総和で表示する。
【0080】
【表3】
【0081】
前記表3で確認されるように、有機微粒子全体のうち凝集する有機微粒子の比率が5%以下であり、外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が2.5以下である実施例の防眩フィルムは、レインボー現象およびスパークリング現象が発生せず、優れた像鮮明度を実現できることが確認された。これに対し、有機微粒子全体のうち凝集する有機微粒子の比率が5%超過である比較例1、2、4の防眩フィルムはスパークリング現象が過度に発生してレインボー現象が発生したり像鮮明度が低く示されることが確認され、有機微粒子全体のうち凝集する有機微粒子の比率が1.6%であるが、外部ヘイズに対する内部ヘイズの比率が3.4である比較例2の防眩フィルムはスパークリング現象が発生して低い像鮮明度を示した。

図1
図2