IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特許7134552リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池
<>
  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池 図1
  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池 図2
  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220905BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220905BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220905BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021517179
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 KR2019007400
(87)【国際公開番号】W WO2019245284
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0071054
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ナ・リ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ジュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ホ・バン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・オム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・フイ・ベク
(72)【発明者】
【氏名】キ・チョル・シン
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/095152(WO,A1)
【文献】特表2015-536558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜及び電解質を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は、正極活物質として層状構造を有し、全遷移金属のうちニッケル含有量が50atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物の粉末を含み、
前記正極活物質は、完全充電状態で層状構造がスピネル構造に変化する相転移温度が300℃以上であり、
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li[NiCoMn]O
前記化学式1において、前記Mは、Ti、Cr、V、Fe、Zn、Cu及びMgからなる群から選択される1種以上の第1ドーピング元素と、Nb、Ta、W及びMoからなる群から選択される1種以上の第2ドーピング元素とを含み、0.98≦x≦1.2、0.85≦a≦0.95、0≦b<0.15、0<c<0.15、0<d<0.15であり、
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、その表面にAl、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、Si、及びSからなる群から選択された1種以上の元素を含むコーティング層を含む 、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質は、完全充電状態で350℃まで昇温させながらc軸長さを測定したとき、c軸長さの最大値が現われる温度が280℃から320℃である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記第1ドーピング元素は、酸化数が+2であるとき有効イオン半径が70Åから90Åであり、前記リチウム複合遷移金属酸化物にドーピングされたとき+1.5から+2.5の酸化数を有する、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記第1ドーピング元素は、前記リチウム複合遷移金属酸化物の全重量を基準に500から4000ppmで含まれる、請求項3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記第2ドーピング元素は、酸化数が+4であるとき有効イオン半径が50Åから70Åであり、前記リチウム複合遷移金属酸化物にドーピングされたとき+3.5から+4.5の酸化数を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記第2ドーピング元素は、前記リチウム複合遷移金属酸化物の全重量を基準に800から6000ppmで含まれる、請求項5に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、ドーピング元素としてTi及びWを含む、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
層状構造を有し、全遷移金属のうちニッケル含有量が50atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物粉末を含むリチウム二次電池用の正極活物質であって、
前記正極活物質は、完全充電状態で層状構造がスピネル構造に変化する相転移温度が300℃以上であり、
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li[NiCoMn]O
前記化学式1において、前記Mは、Ti、Cr、V、Fe、Zn、Cu及びMgからなる群から選択される1種以上の第1ドーピング元素と、Nb、Ta、W及びMoからなる群から選択される1種以上の第2ドーピング元素とを含み、0.98≦x≦1.2、0.85≦a≦0.95、0≦b<0.15、0<c<0.15、0<d<0.15であり、
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、その表面にAl、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、Si、及びSからなる群から選択された1種以上の元素を含むコーティング層を含む、 正極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年6月20日に出願された韓国特許出願第10-2018-0071054号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池に関し、より詳しくは、容量特性及び熱的安定性に優れたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、環境問題が台頭するにつれ、原子力発電、化石燃料を代替し得る新再生エネルギーに対する関心が高まるに伴い、新再生エネルギーのうち充放電が可能であり、繰り返し的に使用可能な半永久的な特性を有する二次電池に対する需要が急増している。
【0004】
リチウム二次電池は、優れたサイクル寿命特性及び高いエネルギー密度によって最も注目されている二次電池である。このようなリチウム二次電池の正極活物質として、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、Li(NiCoMn)O(ここで、a、b、cは遷移金属の原子比率であって、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1である、以下、NCM系リチウム酸化物と記す)などの多様なリチウム遷移金属酸化物が開発された。一方、最近は、電気自動車用電池などのような高容量電池に適用するため、エネルギー密度が高いニッケルの含有量を増加させた高Ni系列のNCM系リチウム酸化物の開発が活発に行われている。
【0005】
しかし、ニッケル含量が50atm%以上である高Ni系列のNCM系リチウム酸化物の場合、容量具現の側面では優れるという効果があるが、ニッケル含量の増加により活物質の構造的安定性と化学的安定性が落ちるため、繰り返し的な充放電により活物質の表面構造が劣化し、急激な構造崩壊を伴う発熱反応が発生して電池安定性が低下するか、構造変性により寿命特性が急激に低下するという問題点がある。このような現象は高温条件で深化される。また、ニッケル含有量が全遷移金属の80atm%以上である正極活物質の場合、ニッケル含量が少ない正極活物質と比較するとき、高温で陽イオンの混合や非可逆的相転移などが加速化され、寿命特性がさらに劣化されるという問題点がある。
【0006】
前記のような問題点を解決するため、金属元素をドーピングして正極活物質の構造安全性を改善する技術が試みられている。しかし、現在まで提案された正極活物質等の場合、熱的構造安定性の改善効果が十分でないだけでなく、ドーピング元素により容量が減少し、高温寿命抵抗が増加するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、高容量特性を有し、熱的構造安定性に優れた正極活物質を適用し、容量の減少が少なく、高温で優れた電気化学的特性を示すリチウム二次電池の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面において、本発明は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜及び電解質を含むリチウム二次電池であって、前記正極が、正極活物質として層状構造(layered structure)を有し、全遷移金属のうちニッケル含有量が50atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物粉末を含み、前記正極活物質は、完全充電状態で層状構造(layered structure)がスピネル構造(spinel structure)に変化する相転移温度が300℃以上であるリチウム二次電池を提供する。
【0009】
また、前記正極活物質は、完全充電状態で350℃まで昇温させながらc軸長さを測定するとき、c軸長さの最大値が現われる温度が280℃から320℃であってよい。
【0010】
好ましくは、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、酸化数が+2であるとき、有効イオン半径が70Åから90Åであり、前記リチウム複合遷移金属酸化物にドーピングされたとき、+1.5から+2.5の酸化数を有する第1ドーピング元素を含んでよい。また、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、酸化数が+4であるとき、有効イオン半径が50Åから70Åであり、前記リチウム複合遷移金属酸化物にドーピングされたとき、+3.5から+4.5の酸化数を有する第2ドーピング元素をさらに含んでよい。ここで、前記リチウム複合遷移金属酸化物の全重量を基準に、前記第1ドーピング元素は500から4000ppmで含まれてよく、前記第2ドーピング元素は800から6000ppmで含まれてよい。
【0011】
さらに好ましくは、前記リチウム複合遷移金属酸化物はドーピング元素としてTi及びWを含んでよい。
【0012】
具体的には、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されるものであってよい。
【0013】
[化学式1]
Li[NiCoMn]O
【0014】
前記化学式1において、前記Mは、Ti、Cr、V、Fe、Zn、Cu及びMgからなる群から選択される1種以上の元素とNb、Ta、W及びMoからなる群から選択される1種以上の元素を含み、0.98≦x≦1.2、0.50≦a≦0.99、0≦b<0.40、0<c<0.40、0<d<0.20である。
【0015】
また、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、その表面にAl、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、Si、及びSからなる群から選択された1種以上の元素からなる群から選択された1種以上の元素を含むコーティング層を含んでよい。
【0016】
他の側面において、本発明は、層状構造(layered structure)を有し且つ全遷移金属のうちニッケル含有量が50atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物粉末を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供し、ここで、前記正極活物質は、完全充電状態で層状構造(layered structure)がスピネル構造(spinel structure)に変化する相転移温度が300℃以上であってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るリチウム二次電池は、全遷移金属のうちニッケル含有量が50atm%以上で高いため容量特性に優れ、完全充電状態で結晶構造の相転移温度が高い正極活物質を用いることにより、放電容量の低下が最小化され、高温で抵抗増加が少ないので、優れた電気化学特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1及び比較例1~3により製造された正極活物質の完全充電状態での温度による結晶構造の変化を示すグラフである。
図2】実施例1及び比較例1~3により製造された正極活物質の完全充電状態での温度によるc軸長さの変化を示すグラフである。
図3】実施例1及び比較例1~3により製造されたリチウム二次電池の初期充電容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0021】
本明細書において、粒径Dnは、粒径による粒子個数の累積分布のn%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は、粒径による粒子個数の累積分布の50%地点での粒径であり、D90は、粒径による粒子個数の累積分布の90%地点での粒径を、D10は、粒径による粒子個数の累積分布の10%地点での粒径である。前記Dnは、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的に、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して粒子等がレーザビームを通過するとき、粒子大きさによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数の累積分布の10%、50%及び90%となる地点での粒子径を算出することにより、D10、D50及びD90を測定することができる。
【0022】
本発明者らは、放電容量の減少及び高温抵抗の増加を最小化しながら優れた高温特性を有するリチウム二次電池を開発するために研究を繰り返した結果、層状構造(layered structure)を有し、全遷移金属のうちニッケル含有量が50atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含み、完全充電状態で層状構造(layered structure)がスピネル構造(spinel structure)に変化する相転移温度が300℃以上である正極活物質を用いることにより、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0023】
従来には、X線回折法を介して正極活物質の結晶を分析することが一般的であった。しかし、充電状態の正極活物質は、リチウムが抜け出された状態で非常に不安定であるため、従来の方法では充電状態で正極活物質の結晶構造の変化を正確に測定することができなかった。
【0024】
よって、本発明者らは、シンクロトロン放射(Synchroton Radiation)を用いて、高分解能粉末回折(high resolution powder diffraction、以下、HRPD)データを測定し、充電された正極活物質の温度による結晶構造の変化を測定しており、これを介して、完全充電された正極活物質の結晶構造が相転移される温度に応じてリチウム二次電池の容量特性及び高温抵抗特性が変化することを見出した。
【0025】
層状結晶構造を有するリチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム層と遷移金属層が交互に積層された形態からなり、充電時にリチウム層でリチウムが脱離されながら抜け出されることにより結晶構造が不安定になる。このように不安定な状態で高温に露出される場合、結晶構造の相転移が発生することになり、結晶構造の相転移が発生する場合、リチウムイオンが移動される通路が塞がれるため、リチウム移動性が低下し、容量及び抵抗特性のような電気化学的特性が劣化するようになる。このような結晶構造の変化は非可逆的であるため、回復が不可能である。
【0026】
したがって、本発明では、完全充電状態で正極活物質の層状構造(layered structure)がスピネル構造(spinel structure)に変化する相転移温度が300℃以上である正極活物質を用いることにより、リチウム二次電池の高温性能を改善した。
【0027】
一方、本発明者らの研究によれば、類似の組成を有する正極活物質でも、ドーピング元素の種類、粒子大きさや粒度分布などによって完全充電時に結晶構造が変形される温度が異なるもの現われた。すなわち、完全充電された正極活物質の結晶構造の相転移温度は、リチウム複合遷移金属酸化物の組成、ドーピング元素、コーティング元素の種類、粒子大きさ、粒度分布などが複合的に作用して決定されるものであり、いずれか一つの要因だけで決定されるものではない。
【0028】
完全充電状態での正極活物質の結晶構造の相転移温度は、例えば、下記のような方法を介して測定することができる。
【0029】
先ず、測定しようとする正極活物質を含む正極とリチウム金属負極との間に分離膜を介在してコイン型半電池を製造する。前記のように製造されたコイン型半電池を完全充電させる。その後、前記コイン型半電池を分解して正極を分離する。分離された正極から正極活物質層を削り取って完全充電された状態の正極活物質試料を得る。その後、前記試料をシンクロトロン放射を用いたIn‐Situ高温XRD(X‐Ray Diffraction)測定装置に入れて温度によるXRDデータを得、このデータを解析することにより、温度による正極活物質の結晶構造を測定する。
【0030】
より具体的に、本発明に係るリチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜及び電解液を含み、ここで、前記正極は、正極活物質として層状構造(layered structure)を有し、全遷移金属のうちニッケル含有量が80atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物粉末を含み、前記正極活物質は、完全充電状態で層状構造(layered structure)がスピネル構造(spinel structure)に変化する相転移温度が300℃以上であることをその特徴とする。
【0031】
以下、本発明の各構成に対して詳しく説明する。
【0032】
(1)正極
本発明に係る正極は、正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質として層状構造を有し、全遷移金属のうちニッケルの含有量が50atm%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物粉末を含む。
【0033】
ここで、前記リチウム複合遷移金属酸化物粉末は、1種以上のドーピング元素を含むことが好ましい。
【0034】
具体的には、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、酸化数が+2であるとき、有効イオン半径が70Åから90Åであり、リチウム複合遷移金属酸化物にドーピングされたとき、+1.5から+2.5の酸化数を有する第1ドーピング元素を含んでよい。前記のような有効イオン半径及び酸化数を有するドーピング元素を含む場合、前記ドーピング元素が遷移金属サイトに置換されてa軸とc軸の距離を適宜維持できるようにし、これにより充放電時に正極活物質の構造を安定的に維持できるようにする。前記第1ドーピング元素としては、例えば、Ti、Cr、V、Fe、Zn、Cu、Mgなどを挙げることができ、好ましくはTiであってよい。
【0035】
一方、前記第1ドーピング元素は、リチウム複合遷移金属酸化物の全重量を基準に500から4000ppm、好ましくは1000から3000ppmの含量で含まれてよい。第1ドーピング元素の含量が前記範囲を満たすとき、第1ドーピング元素により層状構造の骨格が充分に支持され得、これによって繰り返し的な充放電過程で結晶構造が変形されることを抑制することができる。その結果、結晶構造の相転移が発生することを最大限遅らせることができるので、正極活物質の熱的、物理的構造安定性が改善される効果を得ることができる。
【0036】
一方、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、酸化数が+4であるとき、有効イオン半径が50Åから70Åであり、前記リチウム複合遷移金属酸化物にドーピングされたとき、+3.5から+4.5の酸化数を有する第2ドーピング元素をさらに含んでよい。前記第2ドーピング元素は、例えば、Nb、Ta、W、Moなどを挙げることができ、好ましくはWであってよい。
【0037】
前記第2ドーピング元素は、リチウム複合遷移金属酸化物の全重量を基準に800から6000ppm、好ましくは1000から5000ppmの含量で含まれてよい。第2ドーピング元素の含量が前記範囲を満たす場合、正極活物質の1次粒子成長を制御できるので、生産効率及び正極活物質の密度などが増加し、高容量且つ高合剤の正極活物質の開発にこれを適用して電気化学特性だけでなく、優れた物性まで確保することができる。
【0038】
好ましくは、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、前記第1ドーピング元素と第2ドーピング元素を共に含んでよい。リチウム複合遷移金属酸化物が前記第1ドーピング元素と第2ドーピング元素を共に含む場合、ドーピング元素による放電容量の低下が減少し、高温寿命特性が向上するものと現われた。
【0039】
最も好ましくは、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、ドーピング元素としてTi及びWを含んでよい。ドーピング元素として前記の組み合わせを用いるとき、高温構造の安定性向上の効果及び容量減少防止の効果が最も優れる。
【0040】
より具体的には、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されるものであってよい。
【0041】
[化学式1]
Li[NiCoMn]O
【0042】
前記化学式1において、前記Mは、遷移金属サイトに置換されたドーピング元素であって、例えば、前記Mは、Ti、Cr、V、Fe、Zn、Cu及びMgからなる群から選択される1種以上の元素と、Nb、Ta、W及びMoからなる群から選択される1種以上の元素を含んでよい。好ましくは、前記Mは、Ti及びWを含むものであってよい。
【0043】
前記xは、リチウム複合遷移金属酸化物内でのリチウムの原子分率を意味し、0.98≦x≦1.2、好ましくは1.0≦x≦1.2、さらに好ましくは1.02≦x≦1.08であってよい。
【0044】
前記aは、リチウム複合遷移金属酸化物内でのニッケルの原子比率を意味し、0.50≦a≦0.99、好ましくは0.60≦a≦0.95、さらに好ましくは0.80≦a≦0.95、よりさらに好ましくは0.85≦a≦0.95であってよい。前記のようにニッケルを高い含量で含む場合、優れた容量特性を得ることができる。
【0045】
前記bは、リチウム複合遷移金属酸化物内でのコバルトの原子比率を意味し、0≦b<0.40、好ましくは0≦b≦0.30、さらに好ましくは0≦b≦0.20、よりさらに好ましくは0≦b≦0.15であってよい。
【0046】
前記cは、リチウム複合遷移金属酸化物内でのマンガンの原子比率を意味し、0<c<0.40、好ましくは0<c≦0.30、さらに好ましくは0<c≦0.20、よりさらに好ましくは0<c≦0.15であってよい。
【0047】
前記dは、リチウム複合遷移金属酸化物内でのドーピング元素Mの原子比率を意味し、0<d<0.20、好ましくは0<d≦0.15であってよい。
【0048】
一方、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、その表面にAl、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、Si、及びSからなる群から選択された1種以上の元素からなる群から選択された1種以上の元素を含むコーティング層を含んでよい。前記のようなコーティング層が含まれる場合、リチウム複合遷移金属酸化物内の遷移金属と電解質の接触が抑制され、電解質との反応によりリチウム複合遷移金属酸化物の構造安定性が低下することを防止し得る。好ましくは、前記コーティング層は、B、Al、W、及びCoからなる群から選択された1種以上を含んでよく、最も好ましくはBを含んでよい。
【0049】
一方、前記リチウム複合遷移金属酸化物内で遷移金属元素等の含量は、位置に関係なく一定であってよく、粒子内部の位置に応じて一つ以上の遷移金属元素の含量が変化するものであってよい。例えば、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Ni、Mn、Coのうち少なくとも一つ以上の成分が漸進的に変化する濃度勾配を有してよい。ここで、前記「漸進的に変化する濃度勾配」は、前記成分の濃度が粒子全体または特定の領域で連続して段階的に変化する濃度分布として存在することを意味する。
【0050】
前記のようなリチウム複合遷移金属酸化物を含む本発明の正極活物質は、従来の正極活物質に比べて高温で高い構造安定性を示す。
【0051】
一般的に、高Ni系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、完全充電時に270℃~290℃付近で層状構造がスピネル構造に相転移するのに比べて、本発明に係る正極活物質は、完全充電状態で層状構造がスピネル構造に変化する相転移温度が300℃以上で高い。このように本発明に係る正極活物質は、層状構造が高い温度まで安定的に維持されるため、リチウム二次電池に適用されたとき、高温でも安定的な寿命特性及び電気化学特性を現す。
【0052】
また、本発明の正極活物質は、完全充電された正極活物質を350℃まで昇温させながらc軸長さを測定するとき、c軸長さの最大値が現われる温度が280℃から320℃程度に高く現われる。従来の高Ni系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、一般的に完全充電状態で温度が150℃以上に増加すると、正極活物質内部のc軸長さが急激に増加することになり、250℃から280℃温度範囲でc軸長さが最大になるが、また急速にc軸長さが減少する構造変形が発生する。前記のような急速な構造変形は、リチウム層及び遷移金属層の移動を発生させることになり、これによってリチウム移動通路(lithium path)が塞がれてリチウム二次電池の性能低下をもたらす。これに比べて、本発明に係る正極活物質は、完全充電状態でも約200℃付近までc軸長さが比較的一定に維持され、c軸長さの最大値が現われる温度も280℃から320℃程度に高い。したがって、本発明の正極活物質をリチウム二次電池に適用する場合、高温で安定的な寿命特性及び電気化学特性が現れる。
【0053】
一方、完全充電された正極活物質の温度によるc軸長さは、前述した相転移温度の測定方法と同一の方法で測定してよい。すなわち、測定しようとする正極活物質を含む正極とリチウム金属負極との間に分離膜を介在してコイン型半電池を製造する。前記のように製造されたコイン型半電池を完全充電させる。その後、前記コイン型半電池を分解して正極を分離する。分離された正極から正極活物質層を削り取って完全充電された状態の正極活物質試料を得る。その後、前記試料をシンクロトロン放射を用いたIn‐Situ高温XRD(X‐Ray Diffraction)測定装置に入れて温度によるXRDデータを得、このデータを解析することにより、温度による正極活物質のc軸長さを測定することができる。
【0054】
前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80から99重量%、より具体的には85から98.5重量%の量で含まれてよい。正極活物質が前記範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができる。
【0055】
一方、本発明の正極は、正極活物質層に前記正極活物質以外に導電材及び/又はバインダをさらに含んでよい。
【0056】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1から15重量%で含まれてよい。
【0057】
前記バインダは、正極活物質の粒子等間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。前記バインダの具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記バインダは、正極活物質層の総重量に対して0.1から15重量%で含まれてよい。
【0058】
前記のような正極は、通常の正極の製造方法によって製造されてよく、例えば、正極活物質、バインダ及び/又は導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造してよい。
【0059】
前記溶媒は、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記溶媒の使用量は、正極合材の塗布厚さ、製造歩留まり、作業性などを考慮して正極合材が適切な粘度を有するように調節され得る程度であればよく、特別に限定されない。
【0060】
一方、前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極材の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0061】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極合材を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0062】
(2)負極
負極は、通常、リチウム二次電池で用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、例えば、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含むものであってよい。
【0063】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0064】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダ及び導電材を含む。
【0065】
前記負極活物質としては、当該技術分野で用いられる多様な負極活物質が使用されてよく、特別に制限されない。負極活物質の具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOy(0<y<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されてもよい。
【0066】
一方、前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80重量%から99重量%で含まれてよい。
【0067】
前記バインダは、導電材、活物質及び集電体の間の結合に助ける成分であって、通常、負極活物質層の全重量を基準に0.1重量%から10重量%で添加される。このようなバインダの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ニトリル‐ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などを挙げることができる。
【0068】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全重量を基準に10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されてよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されてよい。
【0069】
前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造されてよい。
【0070】
(3)分離膜
前記分離膜は、負極と正極との間に介在し、正極及び負極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池で分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミックス成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が用いられてもよく、選択的に単層または多層構造で用いられてよい。
【0071】
(4)電解質
前記電解質としては、リチウム二次電池に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが用いられてよく、特に限定されない。
【0072】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0073】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を担うことができるものであれば、特に制限なく用いられてよい。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;Ra‐CN(Raは、炭素数2から20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが用いられてよい。
【0074】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものなどが制限なく用いられてよく、例えば、前記リチウム塩の陽イオンとしてLiを含み、陰イオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、AlO 、AlCl 、 PF 、SbF 、AsF 、BF 、BC 、PF 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN及び(CFCFSOからなる群から選択された少なくともいずれか一つを挙げることができる。具体的に、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiAlO、及びLiCHSOからなる群から選択された単一物または2種以上の混合物を含んでよく、これらの他にもリチウム二次電池の電解液に通常用いられるLiBETI(lithium bisperfluoroethanesulfonimide、LiN(SO)、LiFSI(lithium fluorosulfonyl imide、LiN(SOF))、及びLiTFSI(lithium(bis)trifluoromethanesulfonimide、LiN(SOCF)で表れるリチウムイミド塩のような電解質塩を制限なく用いることができる。具体的に、電解質塩は、LiPF、LiBF、LiCHCO、LiCFCO、LiCHSO、LiFSI、LiTFSI及びLiN(CSOからなる群から選択された単一物または2種以上の混合物を含んでよい。
【0075】
前記リチウム塩は、通常使用可能な範囲内で適宜変更することができるが、具体的に、電解液内に0.8Mから3M、具体的に0.1Mから2.5Mで含まれてよい。
【0076】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、多様な添加剤が用いられてよい。
【0077】
前記添加剤としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどのようなイミド系塩;リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiOdFB)、トリス(トリメチルシリル)ボレート(TMSB)などのようなボレート系塩;ジフルオロホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェートのようなホスフェート系塩;ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物;またはピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどが含まれてよく、前記添加剤は単独または混合して用いられてよい。ここで、前記添加剤は、電解質の総重量に対してそれぞれ0.1重量%から10重量%で含まれてよい。
【0078】
前記のような本発明に係るリチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用に用いられ得る。
【0079】
本発明のリチウム二次電池の外形は特別な制限がないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などからなってよい。
【0080】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用され得るだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いられ得る。
【0081】
以下、具体的な実施例を介して本発明をさらに詳しく説明する。
【0082】
実施例1
Ni0.90Co0.08Mn0.02(OH)とLiOH、TiO、及びWOを乾式混合し、760℃で12時間の間焼成し、Ti及びWがドーピングされたリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。ここで、TiO、及びWOは、Ti及びWがリチウム複合遷移金属酸化物全体に対してそれぞれ2000ppm、4000ppmとなるようにする量で混合した。
【0083】
前記のように製造されたリチウム複合遷移金属酸化物とHBOを混合した後、350℃で3時間の間熱処理し、Bを含むコーティング層が形成されたリチウム複合遷移金属酸化物(A)を製造した。
【0084】
前記のように製造されたリチウム複合遷移金属酸化物(A)、カーボンブラック導電材及びPVdFバインダをN‐メチルピロリドン溶媒中で重量比として96.5:1.5:2.0の比率で混合して正極合材を製造し、これをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥後、圧延して正極を製造した。
【0085】
前記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池(コイン型半電池)を製造した。
【0086】
ここで、負極としてはリチウム金属を用い、電解液はエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネートを3:4:3の体積比で混合した有機溶媒に1Mのリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiFP)を溶解させた電解液を用いた。
【0087】
比較例1
Ni0.90Co0.08Mn0.02(OH)とLiOH、ZrO、及びAl(OH)を乾式混合し、760℃で12時間の間焼成し、Al及びZrがドーピングされたリチウム複合遷移金属酸化物粉末を製造した。ここで、ZrO、及びAl(OH)は、Zr及びAlがリチウム複合遷移金属酸化物全体に対してそれぞれ2000ppm、2800ppmとなるようにする量で混合した。
【0088】
前記のように製造されたリチウム複合遷移金属酸化物とHBOを混合した後、350℃で3時間の間熱処理し、表面にBを含むコーティング層が形成されたリチウム複合遷移金属酸化物(B)を製造した。
【0089】
リチウム複合遷移金属酸化物(A)の代わりに、前記で製造されたリチウム複合遷移金属酸化物(B)を使用した点を除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池(コイン型半電池)を製造した。
【0090】
比較例2
Ni0.88Co0.09Mn0.03(OH)とLiOH、ZrO、WO、及びAl(OH)を乾式混合し、740℃で12時間の間焼成し、Al、Zr及びWがドーピングされたリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。ここで、ZrO、WO及びAl(OH)は、Zr、W及びAlがリチウム複合遷移金属酸化物全体に対してそれぞれ2000ppm、2000ppm、1400ppmとなるようにする量で混合した。
【0091】
前記のように製造されたリチウム複合遷移金属酸化物とHBOを混合した後、350℃で3時間の間熱処理し、表面にBを含むコーティング層が形成されたリチウム複合遷移金属酸化物(C)を製造した。
【0092】
リチウム複合遷移金属酸化物(A)の代わりに前記で製造されたリチウム複合遷移金属酸化物(C)を使用した点を除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池(コイン型半電池)を製造した。
【0093】
比較例3
Ni0.90Co0.08Mn0.02(OH)とLiOH及びZrO、WO、Al(OH)を乾式混合し、760℃で12時間の間焼成し、Al、Zr及びWがドーピングされたリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。ここで、ZrO、WO及びAl(OH)は、Zr、W及びAlがリチウム複合遷移金属酸化物全体に対してそれぞれ2000ppm、2000ppm、1400ppmとなるようにする量で混合した。
【0094】
前記のように製造されたリチウム複合遷移金属酸化物とHBOを混合した後、350℃で3時間の間熱処理し、表面にBを含むコーティング層が形成されたリチウム複合遷移金属酸化物(D)を製造した。
【0095】
リチウム複合遷移金属酸化物(A)の代わりに前記で製造されたリチウム複合遷移金属酸化物(D)を使用した点を除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池(コイン型半電池)を製造した。
【0096】
実験例1:結晶構造の測定
前記実施例1及び比較例1~3のリチウム二次電池それぞれを常温(25℃)で0.2C定電流で4.25Vまで0.005C Cut offで完全充電させた。その後、リチウム二次電池から正極を分離させた後、正極活物質層を削り取って正極活物質試料を採取した。採取された試料を高温in‐situ XRD装置が設けられた放射線加速器に投入してXRD分析を行い、測定されたデータを介して温度による各試料の結晶構造の変化及びc軸長さを確認した。
【0097】
測定結果は図1及び図2に示した。図1は、温度による各試料の結晶構造の変化を示すグラフであり、図2は、温度による各試料のc軸長さを示すグラフである。
【0098】
図1に示すように、実施例1の正極活物質は、完全充電状態で層状構造がスピネル構造に相転移する温度が308℃と現れ、比較例1~3の正極活物質は、それぞれ274℃、279℃及び288℃で相転移が発生した。
【0099】
また、図2に示すように、実施例1の正極活物質は、220℃以上の温度でc軸長さ変化が急激に発生し、300℃付近でc軸長さの最大値が現われたのに反し、比較例1~3の正極活物質は、実施例より低い温度である200℃以上の温度でc軸長さ変化が急激に発生し、220~250℃付近でc軸長さの最大値が現われた。
【0100】
実験例2:初期容量特性の評価
実施例1及び比較例1~3のリチウム二次電池の初期容量特性を次のような方法で測定した。
【0101】
リチウム二次電池それぞれに対して常温(25℃)で0.2C定電流で4.25Vまで0.005C Cut offで充電を行い、20分間維持した後、充電容量を測定した。測定結果は下記図3及び下記表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
前記表1及び図3に記載されたように、実施例1の場合、比較例1~3よりさらに高い含量のドーピング元素を含む正極活物質を使用したにもかかわらず、比較例1~3に比べて優れた容量特性を示すことが確認できる。
【0104】
実験例3:高温特性の評価
実施例1及び比較例1~3のリチウム二次電池の高温寿命特性を次のような方法で測定した。
【0105】
高温(45℃)でCC‐CVモードで0.3C、4.25Vになるまで充電し、0.3Cの定電流で2.5Vになるまで放電して30回充放電サイクルを行った後、容量維持率及び抵抗増加率を測定した。ここで、前記容量維持率は、(30サイクル後の放電容量/1サイクル後の放電容量)×100で計算された値であり、前記抵抗増加率は、30サイクル目の放電時の電流印加後の初期60秒間測定された電圧変化率を印加された電流で割った値を初期抵抗と比較した値である。測定結果は下記表2に示した。
【0106】
【表2】
【0107】
前記表2に示すように、完全充電状態で相転移温度が300℃以上である正極活物質を適用した実施例1のリチウム二次電池が、比較例1~3の二次電池に比べて高温容量維持率が高く、抵抗増加率が顕著に小さく現れた。
図1
図2
図3