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特許7135222樹脂組成物の製造方法、および成形品の製造方法
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  • 特許-樹脂組成物の製造方法、および成形品の製造方法 図1
  • 特許-樹脂組成物の製造方法、および成形品の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法、および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/48 20060101AFI20220905BHJP
   B29B 7/72 20060101ALI20220905BHJP
   B29C 48/405 20190101ALI20220905BHJP
   B29C 48/57 20190101ALI20220905BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20220905BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220905BHJP
   C08K 5/527 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B29B7/48
B29B7/72
B29C48/405
B29C48/57
B29C48/92
C08K3/013
C08K5/527
C08L21/00
C08L23/00
C08L101/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021573069
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000530
(87)【国際公開番号】W WO2021149524
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020006644
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】横山 亮
(72)【発明者】
【氏名】西 浩輝
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-152787(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021002(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/209133(WO,A1)
【文献】特開2001-187405(JP,A)
【文献】特開2019-199577(JP,A)
【文献】特開2020-040356(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175485(WO,A1)
【文献】特開2018-193501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00- 7/94
B29C 48/00- 48/96
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの内部にニーディングディスクを有するスクリュを備える二軸押出機を用いて、体積基準の粒子径分布における累積50%粒子径(D50)が0.1μm以上300μm以下である粒状核剤、および熱可塑性樹脂を含む混合物を加熱溶融混練することにより、樹脂組成物を得る工程を含む樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂組成物を得る工程は、
下記の式(I)で表される体積基準吐出量をX(10-6・kg・h-1・mm-3)とし、
下記の式(II)で表される歪み速度をY(min-1)としたとき、
X、Yが、6.0×10≦Y≦7.0×10の範囲内において、4.0≦Xを満たす混練条件で、前記二軸押出機中に供給された前記混合物を吐出方向へ押し出す、押出工程を含む、
樹脂組成物の製造方法。
[式(I)]
体積基準吐出量=二軸押出機の吐出量(kg/h)/シリンダの内部容量(10・mm
[式(II)]
歪み速度=スクリュの回転速度(min-1)×スクリュの半径(mm)/シリンダ内部の狭隘部の幅(mm)
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記押出工程中の前記混練条件が、2.7×10≦Y/X≦1.3×10をさらに満たす、樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記押出工程中の前記混練条件が、X≦500をさらに満たす、樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記シリンダの内半径をD1(mm)、軸心方向の前記スクリュの長さをL2、軸心方向の前記ニーディングディスクの長さの合計値をL3としたとき、
前記二軸押出機中、D1、L2、L3が、0.02≦(L3/D1)/(L2/D1)≦1.0を満たす、樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記粒状核剤が、下記一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル金属塩を含む、樹脂組成物の製造方法。
【化1】
(上記一般式(1)中、R~Rは各々独立して、水素原子、直鎖又は分岐を有する炭素原子数1~9のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、Mは、水素原子、Al(OH)又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、Mは、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。)
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記粒状核剤が、Mがナトリウム、mが1である上記一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル金属塩を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂組成物を得る工程中、前記加熱溶融混練における加熱温度が、150℃以上300℃以下である、樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂が結晶性高分子を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記結晶性高分子がポリオレフィン系高分子を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記混合物が充填剤を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記混合物が熱可塑性エラストマーを含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記混合物中の前記粒状核剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.001重量部以上10重量部以下である、樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂組成物を得る工程において、ペレット状の前記樹脂組成物を得る、樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法で得られた樹脂組成物を成形することにより成形品を得る工程を含む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法、および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで粒状核剤と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の製造方法について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、結晶性熱可塑性樹脂に造核剤を配合した組成物を押出機で混練する製造方法が記載されている(特許文献1の請求項1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-072335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の樹脂組成物の製造方法において、製造安定性、透明性、機械的強度の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、粒状核剤の粒径分布を適切に調整した上で、二軸押出機を用いた混練条件を適切に設定することで、製造安定性を高められるだけでなく、得られた樹脂組成物の特性を向上できることを見出した。そして、混練条件として、二軸押出機の体積基準吐出量と歪み速度との2つの指標を採用とすることで、安定的に評価できることが判明した。
【0006】
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、所定の範囲内の歪み速度とした上で、体積基準吐出量を所定値以上とする混練条件に基づいて、所定の粒径分布を有する粒状核剤および熱可塑性樹脂を含む混合物を混練押出することによって、二軸押出機による製造安定性を高めつつも、得られた樹脂組成物について、透明性の低下を抑制しつつ、機械的強度を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、
シリンダの内部にニーディングディスクを有するスクリュを備える二軸押出機を用いて、体積基準の粒子径分布における累積50%粒子径(D50)が0.1μm以上300μm以下である粒状核剤、および熱可塑性樹脂を含む混合物を加熱溶融混練することにより、樹脂組成物を得る工程を含む樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂組成物を得る工程は、
下記の式(I)で表される体積基準吐出量をX(10-6・kg・h-1・mm-3)とし、
下記の式(II)で表される歪み速度をY(min-1)としたとき、
X、Yが、6.0×10≦Y≦7.0×10の範囲内において、4.0≦Xを満たす混練条件で、前記二軸押出機中に供給された前記混合物を吐出方向へ押し出す、押出工程を含む樹脂組成物の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、
上記樹脂組成物の製造方法で得られた樹脂組成物を成形することにより成形品を得る工程を含む、成形品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造安定性に優れており、透明性および機械的強度に優れた樹脂組成物を実現する製造方法、およびその製法方法で得られた樹脂組成物を用いる成形品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】二軸押出機の構造を模式的に示す図である。
図2】二軸押出機中のシリンダの断面を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、二軸押出機を用いて、D50が0.1μm以上、300μm下である粒状核剤および熱可塑性樹脂を含む混合物を加熱溶融混練することにより、樹脂組成物を得る工程を含むものである。
【0012】
上記の樹脂組成物を得る工程は、下記の式(I)で表される体積基準吐出量をX(10-6・kg・h-1・mm-3)とし、下記の式(II)で表される歪み速度をY(min-1)としたとき、X、Yが、6.0×10≦Y≦7.0×10の範囲内において、4.0≦Xを満たす混練条件で、二軸押出機中に供給された混合物を吐出方向へ押し出す、押出工程を含む。
【0013】
上記二軸押出機は、シリンダの内部にニーディングディスクを有するスクリュを備える。
体積基準吐出量=二軸押出機の吐出量(kg/h)/シリンダの内部容量(10・mm)・・・式(I)
歪み速度=スクリュの回転速度(min-1)×スクリュの半径(mm)/シリンダ内部の狭隘部の幅(mm)・・・式(II)
【0014】
本発明者の知見によれば、粒状核剤の粒径分布を適切に調整した上で、二軸押出機を用いた混練条件を適切に設定することで、製造安定性を高められるだけでなく、得られた樹脂組成物の特性を向上できること、そして、混練条件として、二軸押出機の体積基準吐出量と歪み速度との2つの指標を採用とすることで、製造安定性や樹脂組成物の特性について安定的に評価できることが判明した。
【0015】
以下、図1図2を用いて具体的に説明する。
図1は、二軸押出機100の構造を模式的に示す図である。図2は、二軸押出機100中のシリンダ10の断面を模式的に表した図である。
なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0016】
図1の二軸押出機100の一例は、シリンダ10と、シリンダ10の内部に設置された、2本のスクリュ50と、を備える。
シリンダ10は、供給部20、放出部30、及び開口部40を備える。シリンダ10の内部温度は、不図示のヒーターなどによって適切に制御される。
混練部のスクリュ50には、複数のニーディングディスク60が設置されており、輸送部70のスクリュ50には、スクリュに螺旋状の羽根(フライト)が形成されている。スクリュ50の先端にスクリュキャップ35が設けられている。スクリュキャップ35によりスクリュ全体を固定している。
2本のスクリュ50は、モーター80(駆動部)によって、同じ方向に回転する。
【0017】
粒状核剤および熱可塑性樹脂などの樹脂組成物の各成分を含む混合物は、二軸押出機100中の供給部20から投入され、輸送部70によって吐出方向に移動し、混練部のニーディングディスク60によって二軸混練され、放出部30から押し出される。このような加熱溶融混練によって、樹脂組成物が得られる。
【0018】
二軸押出機100に基づく混練条件のうち、発明者が着眼したものは、体積基準吐出量と歪み速度の2つである。
【0019】
(体積基準吐出量)
体積基準吐出量は、下記の式(I)に基づいて算出する。
体積基準吐出量=二軸押出機100の吐出量(kg/h)/シリンダ10の内部容量(10・mm)・・・式(I)
式(I)中、二軸押出機100の吐出量には、フィーダーから供給部20へのフィード量(kg/h)を使用した。シリンダ10の内部容量には、下記のシリンダ実容量(10・mm)の値を用いる。
【0020】
・シリンダ実容量
シリンダ実容量(10・mm)は、図2に示すシリンダ10の内部の断面の断面積Fに、図1のシリンダ10の内部の長さとしてスクリュ50の長さL2を積算した値を使用する。
図2は、スクリュ50の軸心方向に対して垂直方向となる面で、ニーディングディスク60の部分を切断しときの、シリンダ10の断面図を模式的に表した図である。
具体的な算出方法は、以下の通りである。
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の高さ:A=P12/2
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の底角:α=arcsin(A/D1)
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の底辺:B=cosα×D1×2
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の面積:C=A×B/2
・扇形(P1-P3-P4)の中心角:β=π-2×α
・扇形(P1-P3-P4)の面積:E=D1×D1×π×β/2π
・シリンダの底面積(断面積):F=2×D1×D1×π-2×(E-C)
・シリンダ実容積:G=F×L2
【0021】
(歪み速度)
歪み速度は、下記の式(II)に基づいて算出する。
歪み速度=スクリュの回転速度(min-1)×スクリュの半径(mm)/シリンダの内部の狭隘部の幅(mm)・・・式(II)
【0022】
・スクリュの回転速度
図1中の、二軸押出機100のモーター80(駆動部)によって、スクリュ50の回転速度を制御する。
・スクリュの半径
図2は、スクリュ50の軸心方向に対して垂直方向となる面で、ニーディングディスク60の部分を切断したときの、シリンダ10の断面を模式的に表した図である。
スクリュの半径には、図2に示す円C1の半径r1を使用する。
この円C1は、スクリュ50の軸芯方向が垂直方向となる断面において、スクリュ50が回転すると、ニーディングディスク60の端部が描く軌道のうち最大の円を意味する。
なお、円C1の内側にある、図2中の点線で示された円は、スクリュ50が回転すると、輸送部70におけるスクリュ50に設けたフライトが描く軌道のうち最小の円を意味する。
・狭隘部の幅(Dmin
シリンダ10内部の最も狭い部分(狭隘部)について、図2を用いて、発明者は、次のように検討した。
まず、スクリュ50の軸芯方向が垂直方向となる断面(図2)において、2つのニーディングディスク60を互いに回転させつつ、それらの間における間隙幅を測定した。
続いて、同じ断面において、ニーディングディスク60とシリンダ10の内壁との間隙幅とを測定した。
その結果、ニーディングディスク60の長径方向の端部とシリンダ10の内壁との間隙が最も狭い狭隘部であることが判明した。断面において、ニーディングディスク60の長径側の端部が描く円軌道は、円C1に対応する。このようにして求められた狭隘部の幅Dmin(mm)を、上記シリンダの内部の狭隘部の幅に用いた。
【0023】
このような2つの体積基準吐出量と歪み速度に基づいて、鋭意研究した結果、次のような知見が得られた。
体積基準吐出量をX(10-6・kg・h-1・mm-3)とし、歪み速度をY(min-1)としたとき、Yを上記の範囲内とした上で、X上記下限値以上とする混練条件を採用することにより、二軸押出機100による製造安定性を高めつつも、得られた樹脂組成物について、透明性の低下を抑制しつつも、機械的強度を向上できることが判明した。
【0024】
詳細なメカニズムは定かではないが、歪み速度と体積基準吐出量とを適切に制御することによって、ニーディングディスク60による混練度合いが適切となるため、二軸押出機100の製造安定性だけでなく、得られた樹脂組成物の特性も向上すると考えられる。
すなわち、歪み速度と体積基準吐出量との2つの指標を混練条件に含め、かかる混練条件を適切に制御することによって、溶融した熱可塑性樹脂中への粒状核剤の分散や分配度合いが適当となるために、得られる樹脂組成物について、粒状核剤の核剤としての効果が十分に発揮され、その透明性等の色味の低下を抑制しつつも、曲げ弾性率等の機械的強度を高められると考えられる。
【0025】
樹脂組成物を得る工程は、X、Yが、6.0×10≦Y≦7.0×10の範囲内において、4.0≦Xを満たす混練条件を有する。このとき、X、Yは、それぞれ有効数字2桁で表す。
【0026】
樹脂組成物を得る工程中、Yの下限は、6.0×10以上、好ましくは7.0×10以上、より好ましくは8.0×10以上である。これにより、ベントアップ等が抑制され、樹脂組成物の製造安定性を向上できる。一方、Yの上限は、7.0×10以下、好ましくは6.9×10以下、より好ましくは6.8×10以下である。これにより、実用の際、二軸押出機100において安定的に混練条件を維持できる。また、安定的に樹脂組成物を押出可能となる。
【0027】
樹脂組成物を得る工程中、上記上限と下限との範囲内となるYとしつつも、Xの下限は、4.0以上、好ましくは4.5以上、より好ましくは5.0以上である。これにより、ダイリップに目ヤニが発生すること等を抑制できる。このため、ペレット状の樹脂組成物を安定的に生産できる。また、透明性が要求される樹脂組成物において透明性を高めつつも、曲げ弾性を向上させることができる。また、樹脂組成物中における透明性や曲げ弾性率のバラツキを小さくすることもできる。
【0028】
本実施形態によれば、押出工程中の混練条件において、6.0×10≦Y≦7.0×10の範囲内で、4.0≦Xを満たした上で、Xを増加させることで、製造安定性を向上させつつも、得られる樹脂組成物について、HAZEを小さくしつつも、曲げ弾性率を高めることが可能になる。
【0029】
また、押出工程中の混練条件が、X≦500をさらに満たしてもよい。すなわち、Xの上限は、特に限定されないが、例えば、500以下、好ましくは450以下、より好ましくは400以下としてもよい。これにより、ベントアップ等が抑制され、樹脂組成物の製造安定性を向上できる。
【0030】
また、押出工程中の混練条件は、2.7×10≦Y/X≦1.3×10をさらに満たしてもよい。
歪み速度と体積基準吐出量と組み合わせた指標Y/Xを使用することで、さらに安定的に樹脂組成物の特性について評価が可能になる。
【0031】
Y/Xの下限は、例えば、2.7×10以上、好ましくは3.0×10以上、より好ましくは3.5×10以上である。一方、Y/Xの上限は、例えば、1.3×10以下、好ましくは1.2×10以下、より好ましくは1.0×10以下である。Y/Xを上記範囲内とすることによって、すなわち、体積基準吐出量と歪み速度との比を示す傾きY/Xが所定の範囲内となるように混練条件を設定することで、製造安定性を向上させつつも、得られる樹脂組成物について、HAZEを小さくしつつも、曲げ弾性率を高めることが可能になる。また、樹脂組成物中における透明性や曲げ弾性率のバラツキを小さくすることもできる。
【0032】
樹脂組成物を得る工程中、加熱溶融混練における加熱温度は、熱可塑性樹脂等に応じて適切に選択すればよく、例えば、150℃~300℃としてもよい。この加熱温度の下限は、例えば、150℃以上、好ましくは180℃以上としてもよい。加熱温度の上限は、例えば、300℃以下、好ましくは280℃以下としてもよい。
【0033】
体積基準吐出量は、二軸押出機100の吐出量を、シリンダ10の内部容量で除することで求められる。これによって、二軸押出機100がスケールアップまたはスケールダウンしたときにも、この体積基準吐出量を指標として活用できる。このため、各種サイズの内部容量を有する二軸押出機を使用できる。
【0034】
二軸押出機100としては、公知のものが使用できるが、日本製鋼所社製TEXシリーズ(TEX28V、TEX44αIII、TEX54αII等)、東芝機械社製TEMシリーズ、Coperion社製ZSKシリーズなどの二軸混練押出機を使用してもよい。
【0035】
二軸押出機100のスクリュ径(φ)は、特に限定されないが、例えば、10mm~500mmとしてもよい。スクリュ径(φ)の下限は、例えば、10mm以上、20mm以上でもよい。スクリュ径(φ)の上限は、例えば、500mm以下、300mm以下、100mm以下でもよい。スクリュ径(φ)に応じて、二軸押出機の内部容量のサイズを適切に選択する。
【0036】
また、シリンダ10の内部容量の算出において、シリンダ10の内部の長さとして、図1中のL2を採用する。
図1中、吐出方向の向きに沿って、シリンダ10の上流部、下流部がこの順で位置する。シリンダ10の上流部は、スクリュ50がなく、溶融樹脂が充填されないので混練に関係がなく、シリンダ10の下流部のスクリュキャップ35以降は狭隘部がなく混練に関連がないと考え、発明者は、シリンダ10の内部の長さとして、図1中の、L1ではなく、L2を採用した。すなわち、図1のL2は、軸心方向における輸送部70とニーディングディスク60との合計長さとする。
【0037】
二軸押出機100中、スクリュ50の回転速度は一定でも、ニーディングディスク60の歪み速度は、ディスク周りの場所や2つのディスクの回転位置によって様々に異なる。発明者は、複数の歪み速度のうち、狭隘部における歪み速度を指標とすることで、樹脂組成物の特性について安定的に評価できることを見出した。
【0038】
スクリュ50は、ニーディングディスク60が設置された部分(混練部)と、ニーディングディスク60が設置されていない部分(輸送部70)を含むように構成されてもよい。
【0039】
ニーディングディスク60は、公知のニーディングディスクを使用してもよく、例えば、ディスクの先端がスクリュ50の軸に対して平行な形状を有するニーディングディスク(KD)、ディスクの先端にリードを持たせたツイストニーディングディスク(TKD)等を使用してもよい。
また、ニーディングディスク60は、順送り、逆送り、直交のいずれのタイプでもよい。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
スクリュ50は、ニーディングディスク60の他に、公知で使用されるエレメントを有してもよい。他のエレメントとしては、例えば、逆ねじ1条切欠きスクリュ(BMK:Back Mixing Single flight screw)、その他の切欠きスクリュ、ギアニーディング等が挙げられる。
【0041】
ニーディングディスク60は、複数枚のディスク(チップ)を組み合わせてなるエレメントを、一または二以上で構成されてもよい。スクリュ50中、各エレメントは、互いに離間または連続して、任意の位置に配置され得る。
【0042】
ここで、L3は、ニーディングディスク60中の各ディスクの幅の合計値(mm)、Nは、ディングディスク60中のディスク枚数、D1は、シリンダ10の内半径(mm)、L2は、軸心方向のスクリュ50の長さ(mm)とする。
【0043】
1枚のディスク幅((L3/D1)/N)は、特に限定されないが、平均値で、例えば、0.05~0.6、好ましくは0.08~0.5でもよい。
【0044】
ニーディングディスク60のずらし角度は、平均値で、例えば、15度~90度でもよく、20度~80度でもよい。
ニーディングディスク60のずらし角度の最小と最大の組み合わせは、例えば、15度と90度でもよく、30度と90度でもよい。
【0045】
二軸押出機100は、D1、L2、L3が、例えば、0.02≦(L3/D1)/(L2/D1)≦1.0、好ましくは0.04≦(L3/D1)/(L2/D1)≦0.9を満たすように構成されてもよい。上記範囲内とすることによって、製造安定性を向上させつつも、得られる樹脂組成物について、HAZEを小さくしつつも、曲げ弾性率を高めることが可能になる。
【0046】
以下、樹脂組成物中の成分について詳述する。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、粒状核剤と熱可塑性樹脂とを含むものである。
【0048】
粒状核剤は、粒状の核剤であって、高分子材料の改質剤の一つである。通常、結晶核剤、結晶化促進剤、透明化剤等の様々な呼称があるが、本明細書では、これらを総称して「核剤」という。
【0049】
レーザー回折式粒度分布測定法を用いて、粒状核剤の粒子径分布を乾式測定し、その粒状核剤の平均粒子径(体積基準の粒子径分布における累積50%粒子径)をD50とする。
【0050】
粒状核剤の平均粒子径D50の上限は、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下でもよく、75μm以下、50μm以下としてもよい。これにより、粒状核剤の透明性を向上できる。一方、粒状核剤のD50の下限は、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上としてもよく、1.0μm以上としてもよい。これにより、諸物性のバランスを図ることができる。また、粒状核剤の粒径分布についてこのような範囲内とすることによって、詳細なメカニズムは定かではないが、上記の混練条件を用いた樹脂組成物の製造方法で得られる効果を安定的に発揮させることができる。
【0051】
本実施形態では、たとえば粒状核剤中に含まれる各成分の種類や配合量、粒状核剤の調製方法等を適切に選択することにより、上記粒状核剤の平均粒子径を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、粉砕方法や粉砕時間等の粉砕条件や、粗大粒子のカット等の分級条件などを適切に選択すること等が、上記粒状核剤の平均粒子径を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0052】
粒状核剤は、芳香族リン酸エステル金属塩として、下記一般式(1)によって表される化合物を含むことが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
【化1】
【0054】
上記一般式(1)中、R~Rは各々独立して、水素原子、直鎖又は分岐を有する炭素原子数1~9のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、Mは、水素原子、Al(OH)又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、Mは、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。
【0055】
上記一般式(1)中の、R、R、R及びRで表される、炭素原子数1~9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、tert-ヘプチル基が挙げられる。
【0056】
上記一般式(1)中、Mで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)等が挙げられる。
【0057】
上記一般式(1)中のMで表される第二族元素としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、これらの中でも、マグネシウム、カルシウムであるものが、核剤成分の核剤効果が顕著であるので好ましい。
【0058】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、mが1である化合物が好ましい。粒状核剤は、Mがナトリウムであり、mが1である上記一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル金属塩を含むことが好ましい。
【0059】
また、上記一般式(1)中、R、R、R及びRが、メチル基、エチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基からなる群から選択される一種である化合物が好ましく、R、R、R及びRが、メチル基およびtert-ブチル基からなる群から選択される一種である化合物がより好ましく、R、R、R及びRが、tert-ブチル基である化合物がさらに好ましい。また、Rが水素原子またはメチル基である化合物が好ましく、Rが水素原子である化合物が特に好ましい。
【0060】
上記一般式(1)で表される化合物としては、下記の化学式(2)から化学式(15)のいずれかで表される化合物を一または二以上含むことが好ましい。この中でも、樹脂の物性向上の観点から、化学式(2)から化学式(6)のいずれかで表される化合物が好ましく、化学式(5)で表される化合物が特に好ましい。透明性向上の観点から、化学式(7)から化学式(15)のいずれかで表される化合物が好ましく、化学式(7)、化学式(10)および化学式(12)のいずれかで表される化合物がより好ましい。
【0061】
【化2】
【0062】
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、例えば、三塩化燐(またはオキシ塩化燐)と2,2'-アルキリデンフェノールとを反応させた後、必要に応じて加水分解して環状酸性リン酸エステルとする。次いで、環状酸性リン酸エステルと、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物とを反応させ、得られた反応物を、適宜精製(ろ過等)し、乾燥することにより、上記化合物(芳香族リン酸エステル金属塩)が得られる。また、従来公知の方法で芳香族リン酸エステル金属塩を合成し、上記化合物として使用してもよい。
また得られた化合物を、溶剤に溶解し、水酸化リチウム等の他の金属水酸化物と反応させ、またはアルミニウム・マグネシウム・第二族元素のいずれかの塩と反応させ、得られた反応物を精製、乾燥することにより、別の上記化合物が得られる。
【0063】
また、粒状核剤は、上記一般式(1)で表される化合物以外の他の核剤成分として、例えば、安息香酸ナトリウム、4-tert-ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウムおよび2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシレート、カルシウムシクロヘキサン1,2-ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、およびビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-O-ビス(4-プロピルベンジリデン)ノニトール等のポリオール誘導体、N,N',N"-トリス[2-メチルシクロヘキシル]-1,2,3-プロパントリカルボキサミド、N,N',N"-トリシクロヘキシル-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N,N'-ジシクロヘキシルナフタレンジカルボキサミド、1,3,5-トリ(ジメチルイソプロポイルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物等が用いられるが、以上に限定されるわけではない。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本実施形態の粒状核剤は、必要に応じて、得られた化合物を適切な粉砕手段で粉砕することにより得られる。粒状核剤において、所定メッシュサイズの篩いで篩い分けして粗大粒子を除外してもよい。また上記粒状核剤は、1種または2種以上の粉末状の化合物を含むことができる。例えば、粒子径分布が異なる2種以上の化合物や、分級された2種以上の化合物を適当な比率で組み合わせてブレンドし、上記粒状核剤を得てもよい。
【0065】
上記の粉砕手段としては、例えば、乳鉢、ボールミル、ロッドミル、チューブミル、コニカルミル、振動ボールミル、ハイスイングボールミル、ローラーミル、ピンミル、ハンマーミル、アトリションミル、ジェットミル、ジェットマイザー、マイクロナイザー、ナノマイザー、マジャックミル、マイクロアトマイザー、コロイドミル、プレミアコロイドミル、ミクロンミル、シャロッテコロイドミル、ロータリーカッター、乾式媒体撹拌ミル等が挙げられる。これらの粉砕機は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、粉砕する原料粉末の種類、粉砕時間等によって適宜選択される。
【0066】
本実施形態の粒状核剤は、上記一般式(1)で表される化合物のみで構成されていてもよく、本発明の目的を達成する範囲内で、上記で例示した他の核剤成分や他の成分を含有してもよい。
【0067】
上記他の成分としては、上記一般式(1)で表される化合物以外の他の芳香族リン酸エステル金属塩、脂肪酸金属塩、珪酸系無機添加剤成分、ハイドロタルサイト類等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記脂肪酸金属塩としては、例えば、下記一般式(16)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0069】
【化3】
【0070】
上記一般式(16)中、Rは直鎖または分岐を有する炭素原子数9~30の脂肪族基を表し、Mは金属原子を表し、nは1~4の整数であって、Mの金属原子の価数と対応する整数を表す。
【0071】
上記一般式(16)において、Rは直鎖または分岐を有する炭素原子数9~30の脂肪族基としては、炭素原子数9~30のアルキル基およびアルケニル基が挙げられ、これらはヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0072】
上記脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、2-エチルヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸、4-デセン酸、4-ドデセン酸、パルミトレイン酸、α-リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の直鎖不飽和脂肪酸等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩は、Rで表される脂肪族基が、炭素原子数10~21であるものが好ましく、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸の金属塩が好ましい。
【0073】
上記Mで表される金属原子としては、例えば、アルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、バリウムまたはハフニウム等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましく、特に、ナトリウムおよびリチウムが、結晶化温度が高くなるので好ましく用いられる。
【0074】
上記珪酸系無機添加剤成分としては、例えば、フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト等が挙げられ、中でも、粒子構造が層状構造であるもの、珪素含有量が15質量%以上のものが好ましい。これらの好ましい無機添加剤としては、セリサイト、カオリナイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライトが挙げられ、タルク、マイカがより好ましい。
【0075】
上記ハイドロタルサイト類としては、例えば、天然物でも合成品でもよく、表面処理の有無や結晶水の有無によらず用いることができる。例えば、下記一般式で表される塩基性炭酸塩が挙げられる。
MgAlCO(OH)xp+2y+3z-2・nH
(上記一般式中、Mはアルカリ金属または亜鉛を表し、Xは0~6の数を表し、yは0~6の数を表し、zは0.1~4の数を表し、pはMの価数を表し、nは0~100の結晶水の数を表す)
【0076】
上記他の成分を含有する粒状核剤は、上記一般式(1)で表される化合物を含有する粒状核剤組成物であり、他の芳香族リン酸エステル金属塩、脂肪酸金属塩、珪酸系無機添加剤成分およびハイドロタルサイト類からなる群から選択される一種以上、好ましくは脂肪酸金属塩、タルク、マイカおよびハイドロタルサイト類からなる群から選択される一種以上を含有するように構成され得る。
このような粒状核剤のとしては、例えば、上記一般式(1)で表される化合物および他の成分の共存下、上記の粉砕手段を適切に組み合わせることにより粉砕処理することにより得られる。また、上述の粉砕手段、篩い分け、ブレンド方法などを用いることもできる。
【0077】
本実施形態の粒状核剤は、結晶性高分子等の熱可塑性樹脂の成形加工時に添加される造核剤・透明化剤として機能する。結晶性高分子において、結晶化温度、熱変性温度、曲げ弾性率、硬度、透明性などの向上(改質効果)を実現できる。また、成形サイクル性を高め、生産性を向上させることができる。
【0078】
上記粒状核剤を、上記熱可塑性樹脂に添加する方法は特に制限を受けず、一般に用いられる方法をそのまま適用することができる。例えば、熱可塑性樹脂の粉末物あるいはペレットと、上記粒状核剤の粉末物とをドライブレンドする方法を用いることができる。
【0079】
上記樹脂組成物の製造方法で得られた樹脂組成物は、各種形態で使用することができるが、たとえば、ペレット状、顆粒状、粉末状のいずれでもよい。取り扱い性の観点から、ペレット状が好ましい。
【0080】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、含ハロゲン樹脂等が挙げられる。この中でも、結晶性高分子を用いることが好ましい。
【0081】
さらに上記熱可塑性樹脂の例を挙げると、例えば、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルフォン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂およびこれらのブレンド物を用いることができる。
【0082】
上記結晶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン-1、ポリ3-メチルペンテン、ポリ4-メチルペンテン、エチレン/プロピレンブロックまたはランダム共重合体などのα-オレフィン重合体等のポリオレフィン系高分子;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の熱可塑性直鎖ポリエステル系高分子;ポリフェニレンスルフィド等のポリスルフィド系高分子;ポリカプロラクトン等のポリ乳酸系高分子;ポリヘキサメチレンアジパミド等の直鎖ポリアミド系高分子;シンジオタクチックポリスチレン等の結晶性のポリスチレン系高分子等が挙げられる。
【0083】
この中でも、粒状核剤の使用効果が顕著に奏されるポリオレフィン系高分子が好ましく、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン以外のα-オレフィン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、これらのプロピレン系重合体と他のα-オレフィン重合体との混合物等のポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0084】
上記結晶性高分子として、結晶性α-オレフィン重合体、とりわけポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体およびこれらのプロピレン重合体と他のα-オレフィン重合体との混合物などのポリプロピレン系樹脂を用いた場合に有用である。これらのポリプロピレン系樹脂は、その極限粘度、アイソメタクチックペンタッド分率、密度、分子量分布、メルトフローレート、剛性等に拘わらず使用することができ、例えば、特開昭63-37148号公報、同63-37152号公報、同63-90552号公報、同63-210152号公報、同63-213547号公報、同63-243150号公報、同63-243152号公報、同63-260943号公報、同63-260944号公報、同63-264650号公報、特開平1-178541号公報、同2-49047号公報、同2-102242号公報、同2-251548号公報、同2-279746号公報、特開平3-195751号公報などに記載されたようなポリプロピレン系樹脂も好適に使用することができる。
【0085】
また、上記熱可塑性樹脂は、ゴムとして、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1-オクテンランダム共重合体、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ナイロン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの熱可塑性エラストマーとして、ホモポリマーや共重合体のいずれを用いてもよい。
【0086】
上記粒状核剤の含有量は、熱可塑性樹脂(例えば、結晶性高分子)100重量部に対して、通常、0.001~10重量部であり、好ましくは0.005~8重量部であり、より好ましくは0.01~5重量部の範囲内とすることができる。これにより、熱可塑性樹脂、とくに結晶性高分子の改質効果を十分に得ることができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0087】
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、抗酸化剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、充填剤、有機錫化合物、可塑剤、エポキシ化合物、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、重金属不活性剤、ハイドロタルサイト類、有機カルボン酸、着色剤、珪酸系添加剤、加工助剤、中和剤等の添加剤を含有させることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
上記抗酸化剤として、リン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、チオエーテル系抗酸化剤等が挙げられる。
上記帯電防止剤として、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
上記難燃剤として、ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、ポリリン酸のメラミン塩化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物等が挙げられる。
上記滑剤として、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系、金属石けん系等が挙げられる。
上記充填剤として、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、チタン酸カリウム、ホウ酸カリウムなどの無機物等が挙げられる。充填剤は、粒状物でも、繊維状物でもよく、必要に応じて表面処理したものを用いることが好ましい。
上記中和剤として、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸金属塩、または、エチレンビス(ステアロアミド)、エチレンビス(12-ヒドロキシステアロアミド)、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド化合物等があげられる。
【0089】
上記樹脂組成物における添加剤の含有量は、結晶性高分子100重量部に対して、たとえば、0.001~10重量部が好ましい。このような数値範囲とすることにより、添加剤の効果の向上が得られる。
【0090】
上記樹脂組成物は、射出成形品、繊維、フラットヤーン、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルム、シート、熱成形品、押出ブロー成形品、射出ブロー成形品、射出延伸ブロー成形品、異形押出成形品、回転成形品等の成形品に使用することができる。この中でも、成形品として、射出成形品、フィルム、シート、熱成形品が好ましい。
【0091】
本実施形態の成形品の製造方法は、各種の成形方法に基づいて、上記の樹脂組成物の製造方法で得られた樹脂組成物を成形する工程を含み、これにより、上記の成形品を得ることができる。
【0092】
成形方法としては、特に限定されるものではなく、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、回転成形、真空成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、スラッシュ成形法、ディップ成形法、発泡成形法等が挙げられる。この中でも、射出成形法、押出成形法、ブロー成型法が好ましい。
【0093】
上記樹脂組成物は、特に限定されないが、建築資材、農業用資材、自動車、列車、船、航空機など乗り物用部品、包装用資材、雑貨、玩具、家電製品、医療品など種々の用途に用いることができる。具体的には、バンパー、ダッシュボード、インスツルメントパネル、バッテリーケース、ラゲッジケース、ドアパネル、ドアトリム、フェンダーライナー等の自動車部品;冷蔵庫、洗濯機、掃除機等の家電製品用樹脂部品;食器、ボトルキャップ、バケツ、入浴用品等の家庭用品;コネクター等の接続用樹脂部品;玩具、収納容器、合成紙等の雑貨品;医療用パック、注射器、カテーテル、医療用チューブ、シリンジ製剤、輸液バッグ、試薬容器、飲み薬容器、飲み薬個包装等の医療用成形品;壁材、床材、窓枠、壁紙、窓等の建材;電線被覆材;ハウス、トンネル、フラットヤーンメッシュバッグ等の農業用資材;パレット、ペール缶、バックグラインドテープ、液晶プロテクト用テープ、パイプ、シーリング材用変性シリコーンポリマー等の工業用資材;ラップ、トレイ、カップ、フィルム、ボトル、キャップ、保存容器等の食品包装材、その他3Dプリンター材料、電池用セパレータ膜等が挙げられる。さらに各種の後処理を施される場合の用途、例えば、医療用途、食品包装用途などの放射線による滅菌を施される用途、あるいは塗装性などの表面特性の改善のために、成形後、低温プラズマ処理などが施される用途などに用いることができる。この中でも、自動車部品、家庭用品、食品包装材に用いることが好ましい。
【0094】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例
【0095】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0096】
(化合物No.1の合成)
2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート486g(1モル)、水酸化ナトリウム42g(1.05モル)と水100gの溶液およびメタノール97gをニーダー中に仕込み、室温で一時間混練した。減圧下に乾燥して421gの白色粉末の化合物No.1を得た。
【化4】
【0097】
(試験例1)
得られた化合物No.1に対して、ボールミルで30分間粉砕し、メッシュサイズ:355μmの篩で篩別して粒状核剤1(平均粒子径(D50):4μm)を得た。
【0098】
(試験例2)
得られた化合物No.1を、粉砕処理せずに、粒状核剤2(平均粒子径(D50):35μm)として使用した。
なお、粒状核剤の平均粒子径(体積基準の粒子径分布における累積50%粒子径:D50)は、レーザー回折式粒度分布測定法を用いて、乾式測定した。
【0099】
以下、表1中の原料成分の情報を示す。
(熱可塑性樹脂)
・樹脂1:ポリプロピレンホモポリマー(プライムポリマー社製、J-108P)
・樹脂2:ポリプロピレンブロックコポリマー(プライムポリマー社製、J-707G)
【0100】
(粒状核剤)
・粒状核剤1:上記の試験例1で得られた粒状核剤1
・粒状核剤2:上記の試験例2で得られた粒状核剤2
【0101】
(添加剤)
・フィラー1:タルク(珪酸塩鉱物、松村産業社製、クラウンタルクPP)
・ゴム1:エチレン-オクテンランダム共重合体(Dow Chemical社製、engage8200)
・酸化防止剤1:Pentaerythritol tetrakis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate](ADEKA社製、AO-60、フェノール系酸化防止剤)
・酸化防止剤2:Tris(2,4-ditert-butylphenyl) phosphite(ADEKA社製、アデカスタブ2112、リン系酸化防止剤)
・中和剤1:ステアリン酸カルシウム(日油社製、CaSt、触媒失活剤)
【0102】
<樹脂組成物の製造>
(実施例1~18、比較例1,2)
各実施例・比較例において、熱可塑性樹脂、粒状核剤、および必要に応じて添加剤について、表1に示す配合比率で、ヘンシェルミキサーで1分間混合して混合物を得た。
得られた混合物を、表1に示す混練条件(体積基準吐出量、歪み速度、及び押出温度)で、表1に示す二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX28V)を用いて、押出加工を行った。
【0103】
上記の混練条件について、図1の二軸押出機100を用いて説明をする。
図1は、上記<樹脂組成物の製造>で使用した二軸押出機100の構造を模式的に示す図である。
二軸押出機100は、供給部20、放出部30、及び開口部40を備えるシリンダ10と、シリンダ10の内部に設置されており、複数のニーディングディスク60(混練部)及び輸送部70を有するスクリュ50と、を備える。二軸押出機100は、モーター80(駆動部)で同じ方向に回転する2本のスクリュ50を備える。
スクリュ50の輸送部70には、螺旋状の羽根(フライト)が設けられている一般的なスクリュAを使用した。
ニーディングディスク60には、各ディスクの先端がスクリュ50の軸に対して平行な形状を有するニーディングディスクを使用した。
【0104】
(体積基準吐出量)
体積基準吐出量(10-6・kg・h-1・mm-3)は、下記の式(I)に基づいて算出した。
体積基準吐出量=二軸押出機100の吐出量(kg/h)/シリンダ10の内部容量(10・mm)・・・式(I)
上記式(I)中、二軸押出機100の吐出量には、フィーダーから供給部20へのフィード量(kg/h)を使用した。シリンダ10の内部容量には、下記のシリンダ実容量(10・mm)の値を用いた。
【0105】
・シリンダ実容量
シリンダ実容量(10・mm)は、図2に示すシリンダ10の内部の断面における断面積Fに、図1のシリンダ10の内部の長さとしてスクリュ50の長さL2を積算した値を使用した。L2は、スクリュ50の軸真方向における、スクリュキャップ35を除いた輸送部70及びニーディングディスク60の合計長さとした。
図2は、スクリュ50の軸心方向に対して垂直方向となる面で、ニーディングディスク60の部分を切断しときの、シリンダ10の断面図を模式的に表した図である。
具体的な算出方法は、以下の通りである。
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の高さ:A=P12/2
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の底角:α=arcsin(A/D1)
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の底辺:B=cosα×D1×2
・二等辺三角形(P1-P3-P4)の面積:C=A×B/2
・扇形(P1-P3-P4)の中心角:β=π-2×α
・扇形(P1-P3-P4)の面積:E=D1×D1×π×β/2π
・シリンダの底面積(断面積):F=2×D1×D1×π-2×(E-C)
・シリンダ実容積:G=F×L2
【0106】
(歪み速度)
歪み速度は、下記の式(II)に基づいて算出した。
歪み速度=スクリュの回転速度(min-1)×スクリュの半径(mm)/シリンダの内部の狭隘部の幅(mm)・・・式(II)
【0107】
・スクリュの回転速度
図1中の、二軸押出機100のモーター80(駆動部)によって、スクリュ50の回転速度を制御した。
・スクリュの半径
図2は、スクリュ50の軸心方向に対して垂直方向となる面で、ニーディングディスク60の部分を切断したときの、シリンダ10の断面を模式的に表した図である。
スクリュの半径には、図2に示す円C1の半径r1を使用した。
この円C1は、スクリュ50の軸芯方向が垂直方向となる断面において、スクリュ50が回転すると、ニーディングディスク60の端部が描く軌道のうち最大の円を意味する。
【0108】
・狭隘部の幅(Dmin
シリンダ10内部の最も狭い部分(狭隘部)について、図2を用いて、次のように検討した。
まず、スクリュ50の軸芯方向が垂直方向となる断面(図2)において、2つのニーディングディスク60を互いに回転させつつ、それらの間における間隙幅を測定した。
続いて、同じ断面において、ニーディングディスク60とシリンダ10の内壁との間隙幅とを測定した。
その結果、ニーディングディスク60の長径方向の端部とシリンダ10の内壁との間隙が最も狭い狭隘部であることが判明した。断面において、ニーディングディスク60の長径側の端部が描く円軌道は、円C1に対応する。このようにして求められた狭隘部の幅Dmin(mm)を、上記シリンダの内部の狭隘部の幅に用いた。
【0109】
・L2/D1
図1に示すように、吐出方向において、スクリュ50の長さL2(mm)、シリンダ10の内半径D1(mm)を測定した。測定したL2,D1を用いて、L2/D1を算出した。二軸押出機100のL2/D1の値は37.86であった。
【0110】
・L3/D1
図1に示すように、吐出方向において、ニーディングディスク60の各ディスクの幅l(mm)を測定した。複数のニーディングディスク60の長さの合計値を、ディスク幅lの合計値から算出し、L3とした。測定したL3,D1を用いて、L3/D1を算出した。
二軸押出機100のL3/D1の値は5であり、(L3/D1)/(L2/D1)は、0.132であった。
また、ニーディングディスク60のディスク枚数をNとしたとき、(L3/D1)/Nは、0.143であった。ニーディングディスク60のずらし角度は、平均値:57.8度、最大値:90度、最小値:45度あった。
【0111】
図2に示すように、各ニーディングディスク60の長径、短径を測定し、それぞれの平均値をD3(mm)、d3(mm)とした。このとき、D3/d3は16.3であった。
【0112】
なお、二軸押出機100中の各構成の寸法については、ノギスを用いて測定を行った。
表1中、上記で求められた体積基準吐出量をX(10-6・kg・h-1・mm-3)とし、上記で求められた歪み速度をY(min-1)とした。
表1中、X、Yは、それぞれ有効数字2桁で表す
【0113】
【表1】
【0114】
各実施例、比較例の樹脂組成物の製造方法、得られた樹脂組成物について、以下の評価項目に基づいて評価を行った。
【0115】
<製造安定性>
比較例1の樹脂組成物の製造過程において、空気抜き孔(開口部40)から樹脂が漏れ出るベントアップが発生したため、加工ができなかった。
比較例2の樹脂組成物の製造過程において、ダイリップ(放出部30の先端)に目ヤニが発生したため、安定的にペレットが得られなかった。
これに対して、実施例1~18の樹脂組成物の製造方法は、ベントアップや目ヤニの発生がなく、押出加工によってペレット(樹脂組成物)を安定的に製造できたため、比較例1、2と比べて製造安定性に優れる結果を示した。
【0116】
得られたペレットについて、以下の評価項目について評価を行った。
【0117】
<HAZE:透明化性>
得られたペレットを、射出成型機(EC100-2A;東芝機械株式会社製)にて、200℃の射出温度、50℃の金型温度の条件で射出成形し、寸法60mm×60mm×1mmの試験片を作成した。
成形後直ちに、試験片を23℃の恒温機に入れ、48時間静置した。恒温機から取り出した試験片について、JIS K7136:2008に準拠してHAZE(%)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0118】
<曲げ弾性率>
得られたペレットを、射出成型機(EC100-2A;東芝機械株式会社製)にて、200℃の射出温度、50℃の金型温度の条件で射出成形し、寸法80mm×10mm×4mmの試験片を作成した。
成形後直ちに、試験片を23℃の恒温機に入れ、48時間静置した。恒温機から取り出した試験片について、JIS K7171:2016に準拠しての曲げ弾性率(MPa)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0119】
実施例1~3、4~6、7~10、11~13、14~16、17~18のHAZE、曲げ弾性率の結果から、混練条件について、所定の歪み速度の範囲内で、体積基準吐出量を高めることにより、樹脂組成物のHAZEを低減させつつも、曲げ弾性率を高めることができることが示された。
【0120】
(実施例19、20)
実施例19では、樹脂として、樹脂1(ポリプロピレンホモポリマー)100重量部を、樹脂2(ポリプロピレンブロックコポリマー)70重量部に変更し、フィラー1(タルク)10重量部、及びゴム1(エチレン-オクテンランダム共重合体)20重量部を追加した以外は、実施例4の混合物を用い、実施例4と同様の混練条件を採用して、上記の<樹脂組成物の製造>を行い、樹脂組成物を得た。
実施例20では、実施例6と同様の混練条件を採用した以外は、実施例19と同様にして樹脂組成物を得た。
その結果、実施例19、20において、押出加工によってペレット(樹脂組成物)を安定的に製造できた。また、所定の歪み速度の範囲内で、体積基準吐出量を高めることにより、得られた樹脂組成物について、樹脂がブロックコポリマーであり、ゴムやフィラーを多く含む理由から透明性(HAZE)には変動が見られなかったが、曲げ弾性率を高められることが分かった。
【0121】
以上より、実施例1~20の樹脂組成物の製造方法は、比較例1,2と比べて製造安定性に優れており、かつ透明性の低下を抑制しつつも、機械的強度を向上できる樹脂組成物を実現できる。
【0122】
この出願は、2020年1月20日に出願された日本出願特願2020-006644号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0123】
10 シリンダ
20 供給部(ホッパー)
30 放出部
35 スクリュキャップ
40 開口部
50 スクリュ
60 ニーディングディスク(混練部)
70 輸送部
80 モーター
100 二軸押出機
図1
図2