(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】布地保持部材、布地に印刷する装置、布地を加熱する装置、布地に画像を付与する方法
(51)【国際特許分類】
D06B 23/04 20060101AFI20220906BHJP
B41J 11/02 20060101ALI20220906BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
D06B23/04 102
B41J11/02
D06B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2017204326
(22)【出願日】2017-10-23
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2016245427
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】小林 壯行
(72)【発明者】
【氏名】内野 義識
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186893(JP,A)
【文献】特開2015-183331(JP,A)
【文献】特開2016-196173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
11/00-11/70
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
D06P1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷される布地を保持する布地保持部材であって、
ベース部材と、
前記布地の前記印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材と、
前記
プラテン部材の周縁部との間で前記布地を挟む外周カバー部材と、を備え、
前記外周カバー部材の一端部側と、前記プラテン部材の前記周縁部の一端部側とで前記布地を挟み、
前記外周カバー部材の他端部側と、前記プラテン部材の前記周縁部の他端部側とで前記布地を挟み、
前記外周カバー部材
の前記一端部側が前記ベース部材に回転可能に支持されて、前記ベース部材に対して開閉可能であり、
前記プラテン部材は、前記外周カバー部材を開いているときには、前記
プラテン部材の前記一端部側が
前記プラテン部材の前記他端部側に対して低くなる状態で傾斜し、
前記プラテン部材は、前記外周カバー部材を開いているときに前記ベース部材に対して傾斜した状態になり、
前記外周カバー部材を閉じるとき、前記外周カバー部材の前記一端部側は、前記
プラテン部材の前記一端部側が前記
プラテン部材の前記他端部側に対して低くなる状態で傾斜した前記プラテン部材
の前記周縁部の前記一端部側との間で前記布地を挟む
ことを特徴とする布地保持部材。
【請求項2】
前記プラテン部材は、前記外周カバー部材を閉じたときに前記ベース部材に対して平行な状態になる
ことを特徴とする請求項1に記載の布地保持部材。
【請求項3】
前記外周カバー部材には、閉じるときに、前記プラテン部材と前記ベース部材との間に入り込む押し込み部材を有している
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の布地保持部材。
【請求項4】
前記押し込み部材は、前記外周カバー部材に対して変位可能に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の布地保持部材。
【請求項5】
前記押し込み部材の先端部分にはローラ部材が回転可能に設けられている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の布地保持部材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の布地保持部材と、
装置本体内に、前記布地保持部材を着脱自在に装着する受け部材と、を備えている
ことを特徴とする布地に印刷する装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の布地保持部材と、
装置本体内に、前記布地保持部材を着脱自在に装着する受け部材と、を備えている
ことを特徴とする布地を加熱する装置。
【請求項8】
画像が付与される布地を前記請求項1ないし5のいずれか記載の布地保持部材に保持する工程と、
前記布地保持部材を、請求項6に記載の布地に印刷する装置に装着して、前記布地に印刷する印刷工程と、
前記印刷工程完了後、前記布地保持部材を、前記布地に印刷する装置から取り出し、請求項7に記載の布地を加熱する装置に移して、前記布地保持部材に保持したまま前記布地を加熱する工程と、を行う
ことを特徴とする布地に画像を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布地保持部材、布地に印刷する装置、布地を加熱する装置、布地に画像を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の胴部を有する被捺染材の胴部内に入って該被捺染材を保持する保持部材と、保持部材が被捺染材を保持した状態で嵌まる基体部と、保持部材と基体部の少なくとも一方に設けられ、保持部材が基体部に嵌まった状態でインクが吐出される印捺面を形成するための印捺面形成部と、を備える被捺染材の支持装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている支持装置にあっては、胴部を有する布地でなければ使用できない。また、保持部材の一端部を基体部に回転可能に取り付けているので、胴部を保持部材に被せて保持部材を基体部に嵌め込むときに、皺が発生しやすい。そのため、布地のセット作業のやり直しが多くなり、布地のセット作業性が悪いという課題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、布地のセット作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る布地保持部材は、
印刷される布地を保持する布地保持部材であって、
ベース部材と、
前記布地の前記印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材と、
前記プラテン部材の周縁部との間で前記布地を挟む外周カバー部材と、を備え、
前記外周カバー部材の一端部側と、前記プラテン部材の前記周縁部の一端部側とで前記布地を挟み、
前記外周カバー部材の他端部側と、前記プラテン部材の前記周縁部の他端部側とで前記布地を挟み、
前記外周カバー部材の前記一端部側が前記ベース部材に回転可能に支持されて、前記ベース部材に対して開閉可能であり、
前記プラテン部材は、前記外周カバー部材を開いているときには、前記プラテン部材の前記一端部側が前記プラテン部材の前記他端部側に対して低くなる状態で傾斜し、
前記プラテン部材は、前記外周カバー部材を開いているときに前記ベース部材に対して傾斜した状態になり、
前記外周カバー部材を閉じるとき、前記外周カバー部材の前記一端部側は、前記プラテン部材の前記一端部側が前記プラテン部材の前記他端部側に対して低くなる状態で傾斜した前記プラテン部材の前記周縁部の前記一端部側との間で前記布地を挟む
構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、布地のセット作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る布地に印刷する装置(印刷装置)からカセットを取り外した状態の外観斜視説明図である。
【
図2】同印刷装置にカセットを装着した状態の外観斜視説明図である。
【
図3】同印刷装置の機構部の全体構成を説明する斜視説明図である。
【
図4】同じく
図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
【
図5】カセットの概要の説明に供する斜視説明図である。
【
図6】同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図である。
【
図7】同じくカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図8】比較例のカセットのプラテン外周カバーを開いた状態の長手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図9】同比較例のカセットに布地をセットするときの状態の説明に供する要部断面説明図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図11】同実施形態のカセットに布地をセットするときの状態の説明に供する要部断面説明図である。
【
図12】同じく作用説明に供するカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図13】本発明の第2実施形態の説明に供する要部断面説明図である。
【
図14】本発明の第3実施形態の説明に供する要部断面説明図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係るカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図16】同カセットに布地をセットするときの説明に供する要部断面説明図である。
【
図17】本発明の第5実施形態に係るカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図18】本発明に係る布地を加熱する装置(加熱装置)の一例の外観斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る布地に印刷する装置(以下、「印刷装置」という。)について
図1ないし
図4を参照して説明する。
図1は同印刷装置から布地保持部材であるカセットを取り外した状態の外観斜視説明図、
図2は同印刷装置にカセットを装着した状態の外観斜視説明図、
図3は同印刷装置の機構部の全体構成を説明する斜視説明図、
図4は同じく
図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
【0010】
印刷装置1は、装置本体100内に、布地400を保持する本発明に係る布地保持部材であるカセット(トレイ)200を着脱可能に保持して進退移動する受け部材であるステージ111と、ステージ111で保持されたカセット200に保持されている布地400に印刷する印刷手段112とを備えている。
【0011】
ここで、布地400としては、ハンカチ、タオルなどの一枚の布地で形成されるものだけではなく、Tシャツ、トレーナーなどの衣服として加工された布地、トートバック等の製品の一部となっている布地にも用いることができる。
【0012】
ステージ111は、装置本体100に対して矢印Y方向(送り方向)に移動可能に保持された搬送構造体113上に設けられている。ここでは、装置本体100の底部筐体部114に矢印Y方向に沿って搬送ガイド部材115が配置され、搬送構造体113のスライダ部116が搬送ガイド部材115によって移動可能に保持されている。また、ステージ111は、搬送構造体113にロッド117で昇降可能に配置され、印刷手段112のヘッド122との間のギャップを調整可能とする。
【0013】
印刷手段112は、ステージ111に対して矢印X方向(主走査方向)に移動するキャリッジ121と、キャリッジ121に搭載されたヘッド122とを備えている。キャリッジ121は、矢印X方向に沿って配置されたガイド部材123で移動可能に保持され、駆動モータ124によってタイミングベルト125などの走査機構部を介して矢印X方向に往復移動される。ヘッド122は液体吐出ヘッドを用いて、インクを布地表面に吐出して画像の形成を行っているが、これに限るものではない。
【0014】
この印刷装置1においては、カセット200のプラテン部材300に布地400をセットした状態で、装置本体100内のステージ111にカセット200を装着して保持する。そして、ステージ111の矢印Y方向への移動とヘッド122の矢印X方向への往復移動を繰り返すことで、布地400に所要の画像を印刷する。
【0015】
次に、カセットの概要について
図5ないし
図7も参照して説明する。
図5は同カセットの斜視説明図、
図6は同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図、
図7は同じく
図6の面S1における断面に相当するカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【0016】
カセット200は、ベース部材であるカセットベース201と、布地400の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材300とを有している。
【0017】
プラテン部材300は、プラテン構造体302と、布地400を平坦な状態で保持する面を構成する断熱部材301とで構成されている。断熱部材301は、加熱装置による加熱に対して耐熱性を有する。
【0018】
そして、カセットベース201には、外周カバー部材であるプラテン外周カバー202一端部がヒンジ203で回転可能に取り付けられ、プラテン外周カバー202はカセットベース201に対して矢印方向に開閉可能に設けられている。
【0019】
プラテン外周カバー202は、プラテン部材300に対応する部分に開口部202aを有する枠部202bを備え、枠部202bとプラテン部材300の外周部分のフランジ部300aとの間で布地400を押さえる。
【0020】
プラテン部材300はカセットベース201に対して支持部311で支持して、プラテン部材300とカセットベース201との間には布地400の余剰部分400aを収容できる収容空間312を形成している。余剰部分400aは、例えばTシャツの前面に印刷を行う場合においては、両袖や襟口、すそ等が該当する。
【0021】
ここで、プラテン部材300はカセットベース201から着脱可能であり交換可能に形成されている。これによりプラテン部材300を複数用意し、印刷動作中に別のプラテン部材300に衣類を巻き付けておくことができ、印刷、定着終了後にプラテン部材300を交換するだけで速やかに次の布地の印刷を開始することができる。
【0022】
このカセット200に布地400をセットするときには、布地400をセットするユーザーは、
図6に示すように、プラテン外周カバー202を開いて、プラテン部材300上に布地400をセット(保持)する。このとき、布地400の余分な部分(余剰部分)400aを
図7に示すように、収容空間312内に収容した状態で、布地400をセットするユーザーは、
図5に示すように、プラテン外周カバー202を閉じる。
【0023】
そして、布地400に印刷するときには、カセット200をセットするユーザーは、布地400をセットしたカセット200を印刷装置1の装置本体100のステージ111上に装着する(セットする)。
【0024】
このように、カセット200は装置本体100から全体を取り出した状態にして印刷対象である布地400をプラテン部材300上にセットすることができるので、プラテン部材300への布地400のセット作業が容易になる。
【0025】
このようなカセット200は印刷装置1で印刷が完了した後、布地400を保持したまま、加熱装置にセットし(移して)、画像が印刷された布地400を加熱して定着する。
【0026】
また、このカセット200において、プラテン部材300を支持する支持部311は、カセットベース201側の中空支柱部231と、中空支柱部231に移動可能に嵌め合わされたプラテン部材300側の中空支柱部331と、中空支柱部231と中空支柱部331との間に配置した圧縮スプリング313とを備えている。
【0027】
これにより、プラテン部材300はベース部材であるカセットベース201に対して変位可能に支持される。
【0028】
また、プラテン外周カバー202にロック爪部材204aを備えている。ロック爪部材204aは、プラテン外周カバー202のヒンジ203でカセットベース201に対して開閉可能に保持された側と反対側に配置されている。
【0029】
一方、カセットベース201にはロック爪部材204aを保持し、あるいは、ロック爪部材204aの保持を解除するロック爪保持部材204bを備えている。
【0030】
これらのロック爪部材204aとロック爪保持部材204bでプラテン部材300の周縁部を覆うプラテン外周カバー202のカセットベース201に対する高さを規制するロック手段204を構成している。
【0031】
このように構成したので、布地400の厚みが変化したときにプラテン部材300がスプリング313の復元力に抗して下降してカセットベース201との間隔が変化し、異なる厚みの布地400にも対応することができる。
【0032】
そして、プラテン部材300は常にプラテン外周カバー202に一定の力で押し付けられることになるので、カセット200を持ち運びしたときでも布地400のずれが起き難い。
【0033】
また、布地400の厚みが変わった場合でも、プラテン部材300が下がることで、プラテン部材300とプラテン外周カバー202の隙間を確保するため、布地400の厚みを変えてもプラテン外周カバー202のカセットベース201に対する高さは変わらない。
【0034】
つまり、プラテン部材300に保持される布地400の表面高さはプラテン外周カバー202のカセットベース201に対する高さが基準となる。
【0035】
これにより、ロック手段204によるプラテン外周カバー202のカセットベース201に対するロック位置を固定化することができ、カセット200自体の構成を簡易にすることができる。また、ロック位置が変わらないことで、使用者の操作が容易になる。
【0036】
また、ヘッド122として液体吐出ヘッドを使用する場合、ヘッド122と液体を付与する対象表面との距離が狭いほど精度のよい画質が得られる。
【0037】
この場合、プラテン部材300を変位可能として、プラテン部材300の周縁部をプラテン外周カバー202に押し当てることで、布地400の厚みが変化してもプラテン外周カバー202によって布地400の表面高さを規定するので、画質を向上できる。
【0038】
また、プラテン部材300を変位可能とする場合、ヘッド122の移動面に対してプラテン部材300の表面の平行度を確保するためには、支持部311をプラテン部材300の周縁部側で保持することが好ましい。しかしながら、このようにすると、支持部311が布地400の余剰部分400aの収容の妨げになる。
【0039】
これに対して、プラテン外周カバー202の高さでプラテン部材300に保持される布地400の表面高さを規定することで、支持部311をプラテン部材300の内側に配置することができ、支持部311の数も減らすことができる。これにより、布地400の余剰部分400aを容易に収容できるようにすることができる。
【0040】
次に、比較例について
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は同比較例のカセットのプラテン外周カバーを開いた状態の長手方向に沿う概略断面説明図、
図9は同比較例のカセットに布地をセットするときの状態の説明に供する要部断面説明図である。なお、上記カセット200と対応する部分には同じ符号を付している。また、ヒンジについては簡略化して図示する。
【0041】
この比較例のカセットは、プラテン外周カバー202を開いたときに、プラテン部材300とカセットベース201とが平行な状態に保たれる構成としている。つまりプラテン部材300とカセットベース201の一端部側の間隔H1と他端部側の間隔H2がほぼ同じになるようにしている。なお、プラテン部材300の厚みはほぼ一定とする。
【0042】
このように、プラテン外周カバー202の一端部をカセットベース201に回転自在に支持する構成にあっては、回動支点(回転支点)となるヒンジ203が、プラテン部材300の表面高さ位置よりもできる限り低い位置にあることが好ましい。
【0043】
ヒンジ203がプラテン部材300の表面高さ位置に近いと、面積が大きい布地400をセットする場合、ヒンジ203とプラテン部材300との間の隙間が小さくなり、布地400をプラテン部材300の下方の収容空間312に収容するときの操作性ないし作業性が悪くなる。
【0044】
ところが、回動支点のヒンジ203がプラテン部材300よりも低い位置にあると、布地400をプラテン部材300上にセットするときに皺が発生し易くなる。
【0045】
つまり、布地400のセット作業では、
図9(a)に示すように、プラテン部材300の上に布地400を載せ置き、プラテン部材300上からはみ出た布地400の余剰部分400aをプラテン部材300の下の収容空間312に収める。布地400の余剰部分400aを収容空間312に収めやすくするため、プラテン外周カバー202とプラテン部材300との間の隙間が広がるように、ヒンジ203はプラテン部材300よりも低い位置に配置している。
【0046】
この状態から、
図9(b)に示すように、プラテン外周カバー202を閉じて布地400をセットする。このとき、回転支点(ヒンジ203)よりも高い位置にあるプラテン外周カバー202の枠部202bのうちのヒンジ203側の枠部分202b1が布地400を抑える直前には、プラテン部材300と平行の略水平方向に移動(矢印B方向)して、プラテン部材300の布地400を内方向に押し込むことになる。そのため、布地400に膨らみ部400bが生じることがある。
【0047】
そして、
図9(c)に示すように、プラテン外周カバー202を完全に閉じたときには、プラテン部材300上の布地400に膨らみ部400bがそのまま皺として残ることがある。
【0048】
プラテン部材300上の布地400に皺が発生すると、印刷面に凹凸ができ、印刷品質が低下したり、ヘッドに接触することで、布地が汚れたり、ヘッドが故障したりすることになる。
【0049】
次に、本発明の第1実施形態について
図10を参照して説明する。
図10は同実施形態に係るカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【0050】
本実施形態では、プラテン外周カバー202を開いているときの支持部311Aと支持部311Bに高低差を設けている。したがって、プラテン外周カバー202を開いているときには、プラテン部材300はカセットベース201に対して傾斜した状態になる(H2>H1)。
【0051】
また、プラテン外周カバー202を閉じたときには、
図7に示すように、プラテン部材300はカセットベース201に対して平行な状態になる(略H2=H1)。
【0052】
ここで、プラテン部材300は、プラテン外周カバー202を開いているときには、プラテン外周カバー202の他端部側(回転支点側と反対側)が高くなる状態、言い換えると、プラテン外周カバー202の一端部側が低くなる状態で傾斜する。
【0053】
次に、本実施形態のカセットに布地をセットするときの状態について
図11を参照して説明する。
図11は同説明に供する要部断面説明図である。
【0054】
まず、
図11(a)に示すように、プラテン外周カバー202を開いた状態にして、プラテン部材300上に布地400を載せ置き、プラテン部材300上からはみ出た余剰部分400aをプラテン部材300の下方の収容空間312に収容する。このときには、前述したようにプラテン部材300は、ヒンジ203と反対側の他端部が高くなるように傾斜している。
【0055】
そして、
図11(b)に示すように、プラテン外周カバー202を倒して閉じるとき、プラテン外周カバー202の枠部分202b1は、前述した比較例(
図9(b))と異なり、プラテン部材300に略平行方向にスライドする方向で移動せず、矢印Cで示すように、プラテン部材300に対して斜め上方向から余剰部分400aに被さるように移動する。
【0056】
これにより、プラテン部材300上にある布地400がプラテン部材300の中央側へ押されることがなくなる。したがって、プラテン外周カバー202を完全に閉じたのときに、
図11(c)のように、プラテン部材300上の布地400に皺が発生することなく、凹凸のない良好な印刷平面を形成することができる。
【0057】
このように、カセット200に布地400をセットするとき、布地400の皺の発生が低減し、セット作業のやり直しが少なくなるので、セット作業の作業性ないし作業効率が向上する。
【0058】
また、本実施形態では、
図12に示すように、プラテン部材300を傾斜させるために支持部311A、211Bの高さを異ならせ、ヒンジ203とは反対側のロック手段204側の支持部311Bを高くしている。
【0059】
ヒンジ203側とは反対側にプラテン外周カバー202の閉状態を保持するためにプラテン外周カバー202とカセットベース201を連結保持させるロック手段204を有する。
【0060】
この場合、プラテン外周カバー202を閉状態から開状態にしたとき、ロック手段204側の方が高く上がるため、ロック解除が目視で認識しやすくなり、また、手でプラテン外周カバー202を更に開くときにアクセスしやすくなる。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態について
図13を参照して説明する。
図13は同実施形態の説明に供する要部断面説明図であり、カセットに布地をセットするときの状態で示している。
【0062】
本実施形態では、プラテン外周カバー202の内側に、プラテン外周カバー202を閉じるときに、プラテン部材300とカセットベース201との間に入り込む押し込み部材241を有している。
【0063】
このように構成したので、
図13(a)に示すように、プラテン外周カバー202を開いた状態にして、プラテン部材300上に布地400を載せ置き、プラテン部材300上からはみ出た余剰部分400aをプラテン部材300の下方の収容空間312に収容する。
【0064】
その後、
図13(b)に示すように、プラテン外周カバー202を閉じるために倒すと、押し込み部材241がプラテン部材300とカセットベース201との間に入り込み、布地400の余剰部分400aを収容空間312側に押し込む。
【0065】
ここで、プラテン外周カバー202を閉じるために倒したときには、押し込み部材241の先端部とプラテン部材300との間に布地400を押し込む程度の空間ができるよう押し込み部材241が設けられている。
【0066】
これにより、プラテン部材300上の布地400が矢印D方向に方向引っ張られるので、皺の発生が抑えられる。
【0067】
そして、
図13(c)に示すように、プラテン外周カバー202を完全に閉じたときには、プラテン部材300上の布地400には皺が無く、凸凹の無い平面を形成することができる。
【0068】
つまり、押し込み部材241を設けるだけでも、布地400の余剰部分400aを収容空間312に向けて押し込むときに、プラテン部材300上の布地400が引っ張られるので、皺の発生が抑えられる。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について
図14を参照して説明する。
図14は同実施形態の説明に供する要部断面説明図であり、カセットに布地をセットするときの状態で示している。
【0070】
本実施形態では、押し込み部材241は、プラテン外周カバー202の内側に支軸242にて揺動可能(変位可能)に支持し、先端部(先端部分)にはローラ部材243を回転可能に保持している。この押し込み部材241とプラテン外周カバー202の内壁面との間には、圧縮スプリングなどの弾性部材244が配置されている。
【0071】
このように構成したので、
図14(a)に示すように、プラテン外周カバー202を開いた状態にして、プラテン部材300上に布地400を載せ置き、プラテン部材300上からはみ出た余剰部分400aをプラテン部材300の下方の収容空間312に収容する。
【0072】
その後、
図14(b)に示すように、プラテン外周カバー202を閉じるために倒すと、押し込み部材241の先端部のローラ部材243がプラテン部材300とカセットベース201との間に入り込み、布地400の余剰部分400aを収容空間312側に押し込む。これにより、プラテン部材300上の布地400が収容空間312側に引っ張られるので、皺の発生が抑えられる。
【0073】
ここでも、プラテン外周カバー202を閉じるために倒したときには、押し込み部材241の先端部のローラ部材243とプラテン部材300との間に布地400を押し込む程度の空間ができるよう押し込み部材241及びローラ部材243が設けられている。
【0074】
そして、
図14(c)に示すように、プラテン外周カバー202を完全に閉じたときには、プラテン部材300上の布地400には皺が無く、凸凹の無い平面を形成することができる。
【0075】
ここで、押し込み部材241はプラテン外周カバー202に対して変位可能に設け、弾性部材244で変位方向にばね性を付与している。これにより、押し込み部材241が布地400に接触して余剰部分400aをプラテン部材300の中央側(収容空間312)に押し込むとき、布地400が厚く、反力の大きい素材であったとしても、押し込み部材241はプラテン外周カバー202の内壁方向に変位して逃げることができる。
【0076】
このように、布地400が厚く、布地400を押し込むときに押し込み部材241に大きな負荷が作用した場合には、押し込み部材241が変位できるので、押し込み部材241が損傷することを防止できる。
【0077】
なお、ここでは、押し込み部材241に弾性部材244にてバネ性を付与しているが、押し込み部材241自体を例えば板バネ材で形成してバネ性を持たせてもよい。
【0078】
また、プラテン外周カバー202を閉じるときに、押し込み部材241の先端が布地400に接触した後に更に押し込むため、ローラ部材243を備えることで、布地400が傷つくことを防止している。
【0079】
また、ローラ部材243を回転可能に保持していることで、布地400に接触したときにはローラ部材243が回転し、布地400に引っ掛かることなく、ローラ部材243の幅に対して均等に二の布地400を押圧することができ、皺を抑制することができる。
【0080】
なお、ローラ部材243に代えて、曲率を帯びた形状、例えば先端Rや曲げR部が布地に接触する形状とすることもできる。
【0081】
次に、本発明の第4実施形態について
図15及び
図16を参照して説明する。
図15は同実施形態に係るカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
図16は同カセットに布地をセットするときの説明に供する要部断面説明図である。
【0082】
本実施形態では、プラテン外周カバー202を開いているときの支持部311Aと支持部311Bは同じ高さになるようにしている。したがって、プラテン外周カバー202を開いているとき、プラテン外周カバー202を閉じているときのいずれの場合にも、プラテン部材300はカセットベース201に対して平行な状態になる。
【0083】
そして、プラテン外周カバー202の内側には、前記第2実施形態と同様に、プラテン外周カバー202を閉じるときに、プラテン部材300とカセットベース201との間に入り込む押し込み部材241を有している。
【0084】
これにより、
図16に示すように、押し込み部材241は、前記第2実施形態と同様に作用し、布地400を皺なく、凸凹の無い平面で、プラテン部材300上にセットできる。
【0085】
また、プラテン外周カバー202を開いているときにプラテン部材300がカセットベース201に対して平行な状態になる構成であるので、プラテン部材300の支持部311Aと311Bとを同じ構成にすることができ、第2実施形態よりもカセット200の構成が簡単になる。
【0086】
次に、本発明の第5実施形態について
図17を参照して説明する。
図17は同実施形態に係るカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【0087】
本実施形態では、プラテン外周カバー202を開いているときの支持部311Aと支持部311Bは同じ高さになるようにしている。したがって、プラテン外周カバー202を開いているとき、プラテン外周カバー202を閉じているときのいずれの場合にも、プラテン部材300はカセットベース201に対して平行な状態になる。
【0088】
そして、プラテン外周カバー202の内側には、前記第3実施形態と同様な構成の押し込み部材241を有している。つまり、押し込み部材241は、プラテン外周カバー202の内側に支軸242にて揺動可能(変位可能)に支持し、先端部(先端部分)にはローラ部材243を回転可能に保持している。この押し込み部材241とプラテン外周カバー202の内壁面との間には、圧縮スプリングなどの弾性部材244が配置されている。
【0089】
これにより、前記第3実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0090】
また、プラテン外周カバー202を開いているときにプラテン部材300がカセットベース201に対して平行な状態になる構成であるので、プラテン部材300の支持部311Aと311Bとを同じ構成にすることができ、第3実施形態よりもカセット200の構成が簡単になる。
【0091】
次に、本発明に係る布地を加熱する装置(加熱装置)の一例について
図18を参照して説明する。
図18は同加熱装置の外観斜視説明図である。
【0092】
この加熱装置500は、装置本体501内に、布地400を保持するカセット200を着脱自在に装着する受け部材503と、布地400を加熱する加熱手段504とを備えている。
【0093】
受け部材503は、前述した印刷装置1のステージ111と同じ構成であり、印刷が完了した布地400をカセット200に保持したままで装着することができる。
【0094】
このように構成したので、前述した印刷装置1によって印刷が完了した布地400を保持するカセット200を印刷装置1から取り出し、布地400を保持したままカセット200を加熱装置500内の受け部材503にセットし、扉502を閉じた状態で、加熱手段504に給電して発熱させることで、カセット200の布地400が加熱して定着することができる。
【0095】
つまり、画像が付与される布地400をカセット200に保持する工程と、カセット200を印刷装置1に装着して布地400に印刷する印刷工程と、印刷工程完了後、カセット200を印刷装置1から取り出し、布地400を保持したままカセット200を加熱装置500に装着して、布地400を加熱する後工程とを行って、布地400に画像を付与することができる。
【0096】
カセット200に布地400を保持したまま印刷及び加熱を行うことができるので、布地400に画像を付与するときの作業性が向上する。
【0097】
なお、本発明における「布地保持部材」とは、印刷装置、加熱装置に着脱できる構成を備えていれば形状等は上記実施形態のカセットのような箱状の形態に限られるものではない。具体的には、印刷装置、加熱装置に挿入可能に形成された一枚の板状のプラテン部材であってもよい。
【0098】
また、より作業性を向上するために、このような布地保持部材に対し、印刷時に作業者が毎回布地(Tシャツ等)を布地保持部材にセットする工程をなくすために、布地(Tシャツ等)をセット済みの布地保持部材を利用することもできる。この場合、使用後の布地保持部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
【0099】
さらに、同様の効果を奏するために、布地保持部材に着脱可能に形成されたプラテン部材に布地(Tシャツ等)をセットした布地セット済みのプラテン部材を利用することもできる。使用する場合は、この布地セット済みのプラテン部材をそのまま布地保持部材に装着し、印刷、定着が完了したあとに、布地保持部材からプラテン部材を取り外し、次の布地セット済みのプラテン部材を布地保持部材に装着し、印刷、定着が行われる。この場合、使用後のプラテン部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
【0100】
このようにすることで、作業者が毎回布地(Tシャツ等)をセットする必要がなく、複数枚の連続処理が容易になり、複数枚の連続処理を自動化することも可能となる。
【0101】
また、上記実施形態では、布地がTシャツなどである場合について説明しているが、例えば布地を含めて、印刷対象、加熱対象を媒体(メディア)とする場合にも本発明を同様に適用することができる。この場合には、前記実施形態における「布地」が媒体となる。
【符号の説明】
【0102】
1 印刷装置
100 印刷装置の装置本体
111 ステージ(受け部材)
122 ヘッド
200 カセット(布地保持部材、トレイ)
201 カセットベース
202 プラテン外周カバー
204 ロック部材
300 プラテン部材
400 布地
500 加熱装置
501 装置本体
503 受け部材
504 加熱手段