(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 301
(21)【出願番号】P 2018051794
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】津田 直明
(72)【発明者】
【氏名】田代 亮
(72)【発明者】
【氏名】松本 博好
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-218169(JP,A)
【文献】特許第6235180(JP,B1)
【文献】特開2011-183727(JP,A)
【文献】特開2005-178202(JP,A)
【文献】特開2009-074010(JP,A)
【文献】特開2007-223146(JP,A)
【文献】特開2013-181163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0367652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01ー2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データをもとに対象物に対して加熱温度が高いほどドット径が大きくなる成分を含む液体を吐出して液体塗布面を形成するノズルを、前記対象物の搬送方向に複数配列したノズル列を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの下方であって前記液体塗布面の背面に配置された、前記液体塗布面を加熱する複数の加熱機構のうち、前記対象物の搬送方向に対して上流側に配置される第1の加熱機構と、
前記液体吐出ヘッドの下方であって前記液体塗布面の背面に配置された、前記液体塗布面を加熱する複数の加熱機構のうち、前記対象物の搬送方向に対して下流側に配置される第2の加熱機構と、
前記液体塗布面のドット径の温度依存性をもとに、前記第1の加熱機構及び前記第2の加熱機構の加熱温度の設定を制御する温度制御部と
を有
し、
前記温度制御部は、前記入力データより前記液体塗布面の濃度が所定値未満である箇所を前記ドット径が所定径未満となるように前記加熱温度の設定を制御し、前記入力データより前記液体塗布面の濃度が所定値以上である箇所を前記ドット径が所定径以上となるように前記加熱温度の設定を制御する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドは、
前記第1の加熱機構の上方に配置される第1の液体吐出ヘッドと、
前記第2の加熱機構の上方に配置される第2の液体吐出ヘッドと
を有する
ことを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1の液体吐出ヘッドと前記第2の液体吐出ヘッドとに対して、異なる波形構成により駆動を制御する駆動制御部
を有する
ことを特徴とする請求項
2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1の液体吐出ヘッドのノズル径と、前記第2の液体吐出ヘッドのノズル径とは異なる
ことを特徴とする請求項
2又は
3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1の液体吐出ヘッド及び前記第2の液体吐出ヘッドによって吐出される前記液体の滴サイズは少なくとも一部が重複する
ことを特徴とする請求項
3又は
4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1の液体吐出ヘッド及び前記第2の液体吐出ヘッドによって吐出される前記液体の滴サイズは重複させずに、滴サイズの種類を削減させている
ことを特徴とする請求項
3又は
4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記駆動制御部は、前記ドット径が所定径未満となる液滴を吐出させる波形構成により前記第1の液体吐出ヘッドの駆動を制御し、前記ドット径が所定径以上となる液滴を吐出させる波形構成により前記第2の液体吐出ヘッドの駆動を制御する
ことを特徴とする請求項
3に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1の液体吐出ヘッドは、前記ドット径が所定径未満となる液滴を吐出する前記ノズルを有し、
前記第2の液体吐出ヘッドは、前記ドット径が所定径以上となる液滴を吐出する前記ノズルを有する
ことを特徴とする請求項
4に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記温度制御部は、前記第1の加熱機構の前記加熱温度の設定を、前記第2の加熱機構の前記加熱温度の設定よりも低温となるように制御する
ことを特徴とする請求項
7又は
8に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタには、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドが往復運動する、所謂シリアル型のプリンタが知られている。かかるプリンタの印刷幅は、葉書から壁紙、反物まであらゆるものを対象としているため様々である。メートル単位での往復のスキャンとなると当然時間がかかるため、より少ないスキャン数で画像形成を完成させるためには、ヘッド数を多くして画像を埋めるか、ヘッド数を多くせずに低い解像度でより大きな液滴を使用して画像を埋める、といった方法がある。一方で、階調性や粒状性を良くするためには、薄色のインクを使用したり画像処理で最適化したりするといった技術がある。
【0003】
特許文献1(特開2015-186919号公報)では、プリヒータ、プリントヒータ、ポストヒータの3つのヒータや温風ファンを用いて、メディア上のインクの乾燥・定着を実現する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、高生産性を維持しつつ、高濃度と粒状性の良さとを両立することが困難であるという問題がある。従来技術は、揮発しにくいシリコーン系界面活性剤を含むインクを使用するために、複数のヒータ等を用いてメディア上のインクの乾燥・定着をはかっている。階調性を維持しつつ、スキャン数を減らすために、サイズの異なる液滴を混在させて吐出する場合には、何れかの液滴が隣接する液滴に吸収されるドットの合一が発生することがある。従来技術は、シリコーン系界面活性剤を含むインクを使用するため、ドットの合一が発生しやすい。この結果、従来技術は、ドットの合一が発生することでドット径が大きくなり、粒状性が好ましくなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高生産性を維持しつつ、高濃度と粒状性の良さとを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る液体吐出装置は、入力データをもとに対象物に対して加熱温度が高いほどドット径が大きくなる成分を含む液体を吐出して液体塗布面を形成するノズルを、前記対象物の搬送方向に複数配列したノズル列を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの下方であって前記液体塗布面の背面に配置された、前記液体塗布面を加熱する複数の加熱機構のうち、前記対象物の搬送方向に対して上流側に配置される第1の加熱機構と、前記液体吐出ヘッドの下方であって前記液体塗布面の背面に配置された、前記液体塗布面を加熱する複数の加熱機構のうち、前記対象物の搬送方向に対して下流側に配置される第2の加熱機構と、前記液体塗布面のドット径の温度依存性をもとに、前記第1の加熱機構及び前記第2の加熱機構の加熱温度の設定を制御する温度制御部とを有し、前記温度制御部は、前記入力データより前記液体塗布面の濃度が所定値未満である箇所を前記ドット径が所定径未満となるように前記加熱温度の設定を制御し、前記入力データより前記液体塗布面の濃度が所定値以上である箇所を前記ドット径が所定径以上となるように前記加熱温度の設定を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高生産性を維持しつつ、高濃度と粒状性の良さとを両立することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るヒータそれぞれについて説明する図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係るキャリッジを上面から見た図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る液体吐出装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係るヒータの温度とドット径との関係の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る液体吐出装置の実施の形態を説明する。以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態1)
図1を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置100は、制御部101を備える。また、液体吐出装置100は、装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)102を備える。液体吐出装置100は、CPU102に対して、ROM(Read Only Memory)103と、RAM(Random Access Memory)104と、不揮発性メモリ(NVRAM:Non‐Volatile RAM)105と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)106とを接続する。
【0012】
ROM103は、CPU102が実行するプログラムや、その他の固定データ等を格納する。RAM104は、画像データ等を一時格納する。不揮発性メモリ105は、液体吐出装置100の電源が遮断されている間もデータを保持する。ASIC106は、各種信号処理や並び替え等を行なう画像処理、その他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0013】
また、制御部101は、I/F107と、印刷制御部108と、主走査モータ駆動部109と、副走査モータ駆動部110と、ファン制御部111と、ヒータ制御部112と、I/O113とを備える。また、制御部101は、操作パネル114と、環境センサ115とを接続する。
【0014】
I/F107は、ホスト側との間でデータや信号を送受するインタフェースである。具体的には、I/F107は、情報処理装置、画像読取装置、撮像装置等のホストのプリンタドライバが生成した印刷データ等を、ケーブルやネットワーク等を介して受信する。つまり、制御部101に対する印刷データの生成出力は、ホスト側のプリンタドライバによって行なわれても良い。CPU102は、I/F107に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析する。そして、ASIC106にて画像処理やデータの並び替え処理等が行なわれ、画像データが印刷制御部108やヘッドドライバ116に転送される。
【0015】
印刷制御部108は、液体吐出ヘッド122を駆動するための駆動波形を生成するとともに、液体吐出ヘッド122がノズルから液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を選択駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データを、ヘッドドライバ116に出力する。
【0016】
印刷制御部108は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ構成となっていても良い。印刷制御部108は、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行することによって所望の機能を発揮する。
【0017】
印刷制御部108のCPUが実行するプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
【0018】
さらに、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供するように構成しても良い。また、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
【0019】
主走査モータ駆動部109は、主走査モータ117を駆動する。主走査モータ117は、駆動により、液体吐出ヘッド122を備えたキャリッジ121を主走査方向に移動させる。副走査モータ駆動部110は、副走査モータ118を駆動する。副走査モータ118は、駆動により、液体吐出ヘッド122による液体の吐出対象となる対象物を搬送する搬送ローラ123を動作させる。ファン制御部111は、所定の温度及び風量の送風が行なわれるように、ファン119の出力を制御する。
【0020】
ヒータ制御部112は、設定された温度となるようにヒータ120の制御を行なう。本実施の形態において、ヒータ120は、プリヒータ120a、プリントヒータ120b、プリントヒータ120c、ポストヒータ120d、乾燥ヒータ120eに対応する。なお、ヒータ120それぞれについては後述する。
【0021】
I/O113は、環境センサ115からの情報を取得し、液体吐出装置100の各部の制御に要する情報を抽出する。例えば、環境センサ115は、環境温度や環境湿度等を検出する。なお、I/O113は、環境センサ115以外の各種センサからの検知信号も入力する。操作パネル114は、各種情報の入力や表示を行なう。
【0022】
ここで、液体吐出装置100における印刷制御処理の概略について説明する。
【0023】
液体吐出装置100のCPU102は、I/F107の受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC106にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行なって印刷制御部108に転送する。
【0024】
印刷制御部108は、所要のタイミングでヘッドドライバ116に画像データや駆動波形を出力する。詳細には、印刷制御部108は、ROM103に格納されてCPU102で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換して増幅することにより、1つの駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を生成する。
【0025】
なお、画像出力するための画像データ(例えば、ドットパターンデータ)の生成は、例えばROM103にフォントデータを格納して行なっても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップに展開して液体吐出装置100に転送するようにしても良い。
【0026】
ヘッドドライバ116は、入力される画像データ(例えば、ドットパターンデータ)に基づいて、印刷制御部108から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを、選択的に液体吐出ヘッド122の圧力発生手段に対して印加することにより、液体吐出ヘッド122を駆動する。
【0027】
次に、
図2を用いて、実施の形態1に係るヒータ120を説明する。
図2は、実施の形態1に係るヒータ120それぞれについて説明する図である。
【0028】
図2に示すように、液体吐出装置100には、ファン119と、プリヒータ120aと、プリントヒータ120bと、プリントヒータ120cと、ポストヒータ120dと、乾燥ヒータ120eとが備えられる。また、媒体Pは、副走査モータ118から駆動力を付与された搬送ローラ123a、搬送ローラ123b等によって矢印B方向に搬送され、液体吐出ヘッド122からの液体の吐出によって液体塗布面が形成される。
【0029】
媒体Pは、プリヒータ120a側にセットされている。例えば、媒体Pとしては、ロールタイプの用紙以外にも、軟包装メディアと呼ばれるPETやPVC、OPP、シート状のメディア等を使用することができる。プリヒータ120a側から送られてきた媒体Pは、まず、プリヒータ120aによって液体塗布面の形成に適した温度に予熱される。例えば、プリヒータ120a(上位マージン+2℃、下位マージン0℃)は、アルミ箔コードヒータで、搬送ガイド板の裏面に貼られ、搬送ガイド板自体を暖めることで媒体Pを暖める。予熱された媒体Pは、搬送ローラ123a及び搬送ローラ123bによって液体吐出ヘッド122が配置された画像形成部へと送られる。
【0030】
画像形成部では、媒体Pをプリントヒータ120b、プリントヒータ120cによって保温しつつ、そこに液体吐出ヘッド122からインク等の液体が吐出されて液体塗布面が形成される。例えば、プリントヒータ120bやプリントヒータ120c(上位マージン+0.5℃、下位マージン-0.5℃)は、アルミ材であるプラテンの中にコードヒータを埋め込み、プラテン自体を暖めることで媒体Pを暖める。暖められた空気は蒸気とともに上昇するが、その滞留によって液体吐出装置100の上部が過剰に温度上昇することを防ぐために、ファン119によって空気の対流を促す。
【0031】
液体塗布面が形成された媒体Pは、さらに下流へと送られ、ポストヒータ120d及び熱風を送る乾燥ヒータ120eによって、インク等の液体を乾燥させ定着させる。例えば、ポストヒータ120d(上位マージン+2℃、下位マージン0℃)は、アルミ箔コードヒータで、搬送ガイド板の裏面に貼られ、搬送ガイド自体を暖めることで媒体Pを暖める。また、乾燥ヒータ120e(上位マージン+0.5℃、下位マージン-0.5℃)は、IRヒータで、媒体Pの液体塗布面にIRを輻射して乾燥させる。乾燥及び定着が済んだ媒体Pは、さらに、下流においてロール状に巻き取られていく。
【0032】
これらの各ヒータには、温度制御のためのサーミスタが設けられている。各ヒータは、スリープモードから覚めると点灯し、媒体Pやモードに応じた設定温度に制御される。液体吐出装置100は、各ヒータが立ち上がれば、液体塗布面の形成が可能な状態になり、液体塗布面の形成のための初期動作を開始する。乾燥ヒータ120eは、液体塗布面の形成が開始されると点灯を開始する。なお、液体塗布面が形成された媒体Pが乾燥ヒータ120eの場所まで搬送されるのに数十秒かかる。
【0033】
乾燥ヒータ120eは、液体塗布面が形成された媒体Pが到着するまでに、フィラメント温度を目的の温度になるように(出力する電磁波の波長になるように)予備加熱を行なう。その後、乾燥ヒータ120eは、液体塗布面が形成された媒体Pが到着したら、副走査の停止タイミングと同期して点灯する。点灯タイミングは、媒体Pの種類やモードにより変更可能となっている。なお、乾燥ヒータ120eをスリープモードの解除と同時に点灯させない理由は、不要に輻射加熱することによる媒体Pの劣化を防止するためである。
【0034】
PETやPVC(媒体Pの一例)を以下のように実験機にて評価した。具体的には、プリヒータ120a、プリントヒータ120b、プリントヒータ120c、ポストヒータ120dを各々50℃~80℃に設定し、テスト中のインクを用いて印刷を試みた。テスト中のインクは、例えば熱収縮しやすい樹脂を含む。この結果、定着性に優れ、熱収縮しやすい樹脂の効果でドット径が小さくなり、高画質のサンプルを得ることができた。
【0035】
ここで、
図2に示すように、液体吐出ヘッド122は、媒体Pの搬送方向に対して上流側に配置された液体吐出ヘッド122aと、媒体Pの搬送方向に対して下流側に配置された液体吐出ヘッド122bとが存在する。また、プリントヒータ120bは液体吐出ヘッド122aの下方に配置され、プリントヒータ120cは液体吐出ヘッド122bの下方に配置される。液体吐出ヘッド122aは「第1の液体吐出ヘッド」に対応し、液体吐出ヘッド122bは「第2の液体吐出ヘッド」に対応する。
【0036】
図3は、実施の形態1に係るキャリッジ121を上面から見た図である。
図3に示すように、キャリッジ121には、液体吐出ヘッド122aと、液体吐出ヘッド122bとが搭載される。
【0037】
例えば、液体吐出ヘッド122aは、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の媒体Pに液体塗布面を形成するインクを吐出するノズルを、副走査方向(媒体Pの搬送方向)に複数配列したノズル列を有する。また、液体吐出ヘッド122aは、媒体Pの搬送方向に対して、液体吐出ヘッド122bよりも上流側に配置される。液体吐出ヘッド122aの下方(媒体Pの背面)には、媒体Pの液体塗布面を加熱するプリントヒータ120bが配置される。つまり、プリントヒータ120bは、媒体Pの搬送方向に対して、プリントヒータ120cよりも上流側に配置される。なお、プリントヒータ120bは、「第1の加熱機構」に対応する。
【0038】
例えば、液体吐出ヘッド122bは、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の媒体Pに液体塗布面を形成するインクを吐出するノズルを、副走査方向(媒体Pの搬送方向)に複数配列したノズル列を有する。また、液体吐出ヘッド122bは、媒体Pの搬送方向に対して、液体吐出ヘッド122aよりも下流側に配置される。液体吐出ヘッド122bの下方(媒体Pの背面)には、媒体Pの液体塗布面を加熱するプリントヒータ120cが配置される。つまり、プリントヒータ120cは、媒体Pの搬送方向に対して、プリントヒータ120bよりも下流側に配置される。なお、プリントヒータ120cは、「第2の加熱機構」に対応する。
【0039】
図4は、実施の形態1に係る液体吐出装置100の機能構成例を示すブロック図である。
【0040】
図4に示すように、液体吐出装置100は、温度制御部11と、駆動制御部12とを有する。温度制御部11は、上述したヒータ制御部112の機能の一つである。また、駆動制御部12は、上述した印刷制御部108やヘッドドライバ116の機能の一つである。
【0041】
温度制御部11は、プリントヒータ120b及びプリントヒータ120cの加熱温度の設定を制御する。より具体的には、温度制御部11は、媒体Pに形成されたインクのドット径の温度依存性をもとに、プリントヒータ120b及びプリントヒータ120cの加熱温度の設定を制御する。
【0042】
図5は、実施の形態1に係るヒータの温度とドット径との関係の例を説明する図である。本実施の形態で使用するインクは、加熱によってドット径が大きくなる樹脂を含有している。このため、
図5に示すように、ヒータの加熱温度が高いほど、ドット径が大きくなる。換言すると、ヒータの加熱温度が低いほど、ドット径を小さくすることができる。
【0043】
一般に、媒体上等に形成される液体塗布面は、ドット径が小さいほど粒状度は下がる傾向にある。つまり、ドット径が小さいほど、より高精度の画像を得られることになる。但し、ベタ画像は、小さいドットによって形成することは非効率であり、大きいドットによって形成することが望ましい。大きいドットを形成するためには、大きいドットを媒体に形成するためのノズルをヘッドに設けたり、ヘッドのノズルから吐出した複数の液滴を空気中で合体させたりする方法がある。
【0044】
これらから、液体吐出ヘッド122aや液体吐出ヘッド122bから吐出されるインクは、ドット径の温度依存性があり、ヒータによる加熱でより高温に設定される箇所でドット径が大きくなるように調合されている。例えば、温度制御部11は、プリントヒータ120bの加熱温度の設定を、プリントヒータ120cの加熱温度の設定よりも低くする制御を行なう。つまり、温度制御部11は、画像濃度が所定値未満である箇所をドット径が所定径未満となるようにプリントヒータ120bの加熱温度を(低温に)制御する。同様に、温度制御部11は、画像濃度が所定値以上である箇所をドット径が所定径以上となるようにプリントヒータ120cの加熱温度を(高温に)制御する。
【0045】
低温に設定されるプリントヒータ120bの上方に配置された液体吐出ヘッド122aは、より小さいドットを媒体Pに形成するための吐出を行ない、主に、画像濃度の低い部分を対応させる。また、高温に設定されるプリントヒータ120cの上方に配置された液体吐出ヘッド122bは、より大きいドット(合一させて高濃度のベタ部)を媒体Pに形成するための吐出を行ない、主に、画像濃度の高い部分を対応させる。なお、液体吐出ヘッド122が単数である(液体吐出ヘッド122aと液体吐出ヘッド122bとに分かれていない)場合は、液体吐出ヘッド122の上流側と下流側とで、それぞれの下方に配置されたプリントヒータ120b、プリントヒータ120cの温度制御が異なっていれば良い。
【0046】
駆動制御部12は、液体吐出ヘッド122a及び液体吐出ヘッド122bの駆動を制御する。より具体的には、駆動制御部12は、画像濃度が所定値未満である(低い)部分には所定径未満となる液滴(より小さな滴)を吐出させる波形構成により、液体吐出ヘッド122aの駆動を制御する。また、駆動制御部12は、画像濃度が所定値以上である(高い)部分には所定径以上となる液滴(より大きな滴)を吐出させる波形構成により、液体吐出ヘッド122bの駆動を制御する。このとき、液体吐出ヘッド122a及び液体吐出ヘッド122bは、多値の吐出滴を形成でき、例えば大滴、中滴、小滴、無しの4値の吐出滴を形成できるものとする。
【0047】
また、液体吐出ヘッド122a及び液体吐出ヘッド122bが多値の吐出滴を形成できる場合は、滴サイズについて少なくとも一部が重複するようにする。例えば、液体吐出ヘッド122aは、5pL、10pL、15pL等の滴サイズにより吐出滴を形成できる。また、液体吐出ヘッド122bは、7pL、14pL、21pL等の滴サイズにより吐出滴を形成できる。これらにより、画像濃度が低い部分であっても高い部分であっても、均等に2つのヘッドから吐出されることになるため、ノズル面の乾燥による吐出曲りや不吐出の発生を抑制することができる。このとき、プリントヒータ120bとプリントヒータ120cとは、同温、又は、プリントヒータ120cをやや高い温度で制御すると良い。
【0048】
また、波形構成により液体吐出ヘッド122a及び液体吐出ヘッド122bの駆動を制御するだけではなく、ノズル径の異なるヘッドを併用しても良い。つまり、液体吐出ヘッド122aのノズル径は所定径未満となる液滴(より小さな滴)を吐出する大きさで構成し、液体吐出ヘッド122bのノズル径は所定径以上となる液滴(より大きな滴)を吐出する大きさで構成しても良い。
【0049】
また、液体吐出ヘッド122a及び液体吐出ヘッド122bのそれぞれの駆動波形は、上述した4値よりも少なくしても良い。例えば、液体吐出ヘッド122aは、無し、5pL、10pL等の滴サイズにより吐出滴を形成できるようにしても良い。また、液体吐出ヘッド122bは、14pL、21pL等の滴サイズにより吐出滴を形成できるようにしても良い。つまり、液体吐出ヘッド122aと液体吐出ヘッド122bとで吐出される液体の滴サイズは重複させずに、滴サイズの種類を4値よりも削減している。これらにより、液体吐出装置100は、駆動波形の波形長を短くすることが可能となるため、スキャン速度を上げ、生産性を向上させることができる。
【0050】
また、上記では、熱収縮しやすい樹脂を含むインクを使用する場合を例に挙げたが、これに限られるものではない。例えば、熱収縮しやすい樹脂を含むインクを液体吐出ヘッド122aで使用し、熱収縮しにくい樹脂を含むインクを液体吐出ヘッド122bで使用するように構成しても良い。つまり、液体吐出ヘッド122aには小さいドットを形成する役割を担わせ、液体吐出ヘッド122bには大きいドットを形成する役割を担わせることで、より高画質化を実現することができる。
【0051】
上述したように、液体吐出装置100は、媒体Pの搬送方向の上流側において液体吐出ヘッド122aの下方に配置したプリントヒータ120bと、媒体Pの搬送方向の下流側において液体吐出ヘッド122bの下方に配置したプリントヒータ120cとを有し、ドット径の温度依存性をもとに各ヒータの加熱温度の設定を制御する。この結果、液体吐出装置100は、高生産性を維持しつつ、高濃度と粒状性の良さとを両立することができる。換言すると、液体吐出装置100は、濃度を高くしたい箇所はドット径が大きくなるように、粒状度を下げたい箇所はドット径が小さくなるように、温度依存性を有するインクの液体塗布面のドットの大きさを各ヒータの温度により調整するので、高生産性を維持しつつ、高濃度と粒状性の良さとを両立することができる。
【0052】
また、上記文書中や図面中等で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータ等を含む情報は、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、図示した装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、装置の分散又は統合の具体的形態は、図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負担や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に、分散又は統合することができる。
【0053】
また、上記実施の形態で説明した液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけではなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0054】
このような液体吐出装置100は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙にかかわる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
【0055】
例えば、液体吐出装置100として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、紛体を層状に形成した紛体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0056】
また、液体吐出装置100は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0057】
上記の「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、紛体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
【0058】
上記の「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的にでも付着可能であれば良い。
【0059】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであれば良く、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0060】
また、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0061】
また、液体吐出装置100としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。
【符号の説明】
【0062】
11 温度制御部
12 駆動制御部
100 液体吐出装置
120b プリントヒータ
120c プリントヒータ
122 液体吐出ヘッド
122a 液体吐出ヘッド
122b 液体吐出ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】