(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220906BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 501
B41J2/21
B41J2/01 123
(21)【出願番号】P 2018055610
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】保坂 茂利
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073668(JP,A)
【文献】特開2013-215917(JP,A)
【文献】特開2011-224796(JP,A)
【文献】特開平10-287035(JP,A)
【文献】特開2012-131102(JP,A)
【文献】特開2016-204808(JP,A)
【文献】特開平09-262993(JP,A)
【文献】特開2011-152737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に所定の色である第一の液滴および第二の液滴を浸透性記録媒体に対し吐出する液体吐出ヘッドと、
前記第一の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、互いに接触しない複数の第一の付着物からなる第一のパターンを前記浸透性記録媒体上で第一の方向および前記第一の方向と直交する第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして形成した後、前記第二の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、前記第一のパターンを形成するいずれかの前記第一の付着物に接触する第二の付着物からなる第二のパターンを
、前記浸透性記録媒体上で前記第一の方向および前記第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして、前記第一の付着物の間に前記第二の付着物が位置するように、形成する吐出制御手段と、
を有
し、
前記吐出制御手段は、前記第一の付着物のサイズよりも前記第二の付着物のサイズが大きくなるように、かつ前記第二の付着物が前記第一の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部および前記第二の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部に重なるように、前記第一の液滴及び前記第二の液滴を吐出させる液体吐出装置。
【請求項2】
前記吐出制御手段は、前記第一の液滴より液量の多い前記第二の液滴を吐出させる請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第一の液滴を形成する第一の液体の表面張力は、前記第二の液滴を形成する第二の液体の表面張力より高い請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第一の液滴及び前記第二の液滴は、白色無機顔料を含む請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第一の液滴及び前記第二の液滴は、グリコールエーテル類又は1,2-アルキルジオールを含む請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記浸透性記録媒体は、布帛である請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記浸透性記録媒体は、前記第一の液滴および前記第二の液滴に含まれる成分を凝集させる前処理液が付与されている請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記浸透性記録媒体は、前記第一のパターン及び第二のパターンから背景画像を形成する請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
共に所定の色である第一の液滴および第二の液滴を浸透性記録媒体に対し吐出する液体吐出ヘッド、を有する液体吐出装置に、
前記第一の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、互いに接触しない複数の第一の付着物からなる第一のパターンを前記浸透性記録媒体上で第一の方向および前記第一の方向と直交する第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして形成した後、前記第二の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、前記第一のパターンを形成するいずれかの前記第一の付着物に接触する第二の付着物からなる第二のパターンを
、前記浸透性記録媒体上で前記第一の方向および前記第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして、前記第一の付着物の間に前記第二の付着物が位置するように形成する吐出制御処理を実行させ
、
前記吐出制御処理において、前記第一の付着物のサイズよりも前記第二の付着物のサイズが大きくなるように、かつ前記第二の付着物が前記第一の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部および前記第二の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部に重なるように、前記第一の液滴及び前記第二の液滴を吐出させる液体吐出方法。
【請求項10】
共に所定の色である第一の液滴および第二の液滴を浸透性記録媒体に対し吐出する液体吐出ヘッド、を有する液体吐出装置に、
前記第一の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、互いに接触しない複数の第一の付着物からなる第一のパターンを前記浸透性記録媒体上で第一の方向および前記第一の方向と直交する第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして形成した後、前記第二の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、前記第一のパターンを形成するいずれかの前記第一の付着物に接触する第二の付着物からなる第二のパターンを
、前記浸透性記録媒体上で前記第一の方向および前記第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして、前記第一の付着物の間に前記第二の付着物が位置するように形成する吐出制御処理を実行させ、
前記吐出制御処理において、前記第一の付着物のサイズよりも前記第二の付着物のサイズが大きくなるように、かつ前記第二の付着物が前記第一の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部および前記第二の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部に重なるように、前記第一の液滴及び前記第二の液滴を吐出させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを吐出してTシャツなどの布帛に対し画像を形成するインクジェット方式の液体吐出装置が知られている。このようなインクを黒色などの色の濃い布帛に対して吐出し画像を形成する場合、発色性に劣ることがある。そこで、色の濃い布帛を用いる場合、白色などのベタ画像を背景画像として形成し、その後、背景画像の上に前景用インクを吐出することで発色性に優れる前景画像を形成している。
【0003】
特許文献1には、布帛に対して前処理液を付着させた後、布帛を覆う程度に第1インク組成物を吐出し、更に第1インク組成物を吐出する際におけるノズル抜けやバンディング(飛行曲がりによりインクが付与されない部分のスジ)を補完することを目的として、第1インク組成物と同色の第2インク組成物を吐出しベタ画像を形成するインクジェット捺染方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、布帛などの浸透性記録媒体において、背景画像のようなインク付着量が多い画像形成を行う場合、インクの裏抜けが生じる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、共に所定の色である第一の液滴および第二の液滴を浸透性記録媒体に対し吐出する液体吐出ヘッドと、前記第一の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、互いに接触しない複数の第一の付着物からなる第一のパターンを前記浸透性記録媒体上で第一の方向および前記第一の方向と直交する第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして形成した後、前記第二の液滴を前記浸透性記録媒体に吐出させて、前記第一のパターンを形成するいずれかの前記第一の付着物に接触する第二の付着物からなる第二のパターンを、前記浸透性記録媒体上で前記第一の方向および前記第二の方向のそれぞれに沿って互い違いのパターンとして、前記第一の付着物の間に前記第二の付着物が位置するように形成する吐出制御手段と、を有し、前記吐出制御手段は、前記第一の付着物のサイズよりも前記第二の付着物のサイズが大きくなるように、かつ前記第二の付着物が前記第一の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部および前記第二の方向の両側に隣接する前記第一の付着物の一部に重なるように、前記第一の液滴及び前記第二の液滴を吐出させる液体吐出装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、布帛などの浸透性記録媒体において、背景画像のようなインク付着量が多い画像形成を行う場合であっても、インクの裏抜けを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略上面図である。
【
図3】液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
【
図4】液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
【
図5】一実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成図である。
【
図6】一実施形態に係る液体吐出装置の機能ブロック図である。
【
図7】背景画像を形成する液滴の吐出を制御する処理の一例を示すフロー図である。
【
図8】ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)によって布帛に形成される第一のパターンの一例を表す模式図である。
【
図9】ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)及びホワイト(w
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)によって布帛に形成される第一のパターンおよび第二のパターンの一例を表す模式図である。
【
図10】ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)によって布帛に形成される第一のパターンの一例を表す模式図である。
【
図11】ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)及びホワイト(w
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)によって布帛に形成される第一のパターンおよび第二のパターンの一例を表す模式図である。
【
図12】ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)によって布帛に形成される第一のパターンの一例を表す模式図である。
【
図13】ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)及びホワイト(w
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)によって布帛に形成される第一のパターンおよび第二のパターンの一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、以下の説明において、好適な手段、処理等が記載されているが、本発明は、以下の説明によって限定されるものではない。また、実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成ではない。
【0009】
<<液体吐出装置>>
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を液滴として吐出させる装置である。この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排出に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0010】
また、「液体吐出装置」は、吐出された複数の液滴によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0011】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。また、本願において、「液体が付着可能なもの」は、液体が浸透する記録媒体(以降、浸透性記録媒体)であり、例えば、絹、綿、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の天然繊維又は合成繊維などの布帛が挙げられる。
また、本願における浸透性記録媒体は、液体吐出ヘッドから吐出される液滴に含まれる成分を凝集させる前処理液が付与されていることが好ましい。浸透性記録媒体に前処理液を付与する方法としては特に限定されないが、例えば、液体吐出装置に前処理装置を設けて前処理液を塗布する方法、液体吐出装置とは別に前処理装置を用意して前処理液を塗布する方法、及び手動で前処理液を塗布する方法などが挙げられる。
また、浸透性記録媒体に前処理液を付与する処理に代えて、浸透性記録媒体にコロナ放電をかける処理を行うことで液体吐出ヘッドから吐出される液滴に含まれる成分を凝集させてもよい。なお、前処理液が付与された浸透性記録媒体に対しコロナ放電をかけてもよい。
【0012】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0013】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれ、シリアル型装置であることが好ましい。
【0014】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0015】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0016】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0017】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0018】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0019】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略側面図である。
図1に示す液体吐出装置1Aは、フルライン型のインクジェット記録装置である。液体吐出装置1Aは、搬送ローラ2と、搬送ガイド部材4と、拍車5と、液体吐出ヘッド6w
1,6w
2,6m,6c,6k,6yと、排出ローラ10と、を有する。以下、液体吐出ヘッド6w
1,6w
2,6m,6c,6k,6yのうち任意のものを、液体吐出ヘッド6と表す。
【0021】
搬送ローラ2は、回転駆動することにより、液体吐出装置1Aに供給された布帛F(浸透性記録媒体の一例)を、液体吐出装置1A内の搬送経路に沿って搬送する。
図1に示す例では、布帛Fは搬送方向(
図1中の矢印B方向)に連続している布帛である。また、布帛Fは前処理液を付与されている布帛である。
【0022】
搬送ガイド部材4は、布帛Fを、搬送経路に沿って搬送されるようにガイドする。搬送ガイド部材4の表面は、布帛Fの搬送時の摩擦低下を防止するため、撥水処理が施されている。拍車5は、布帛Fの波打ち(コックリング)を防ぐため、搬送される布帛Fと接触可能に、搬送ガイド部材4に対向する位置に配置される。
【0023】
液体吐出ヘッド6は、複数のノズルが配列された複数のノズル列を有しており、ノズルからの液体の吐出方向が、布帛Fの搬送経路に向くように設けられている。これにより、液体吐出ヘッド6w1,6w2,6m,6c,6k,6yは、布帛Fに、ホワイト(W1)、ホワイト(W2)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、及びイエロー(Y)の各色の液体を順に吐出する。
なお、ホワイト(W1)の液体、及びホワイト(W2)の液体は、共に所定の色の液体である。本願において「共に所定の色」とは、ホワイト、ブラック、グレー、シルバー、ゴールド、及びカラーなどに分類される色の範囲内において、比較される対象同士、すなわち第一の液滴、及び第二の液滴が同じ色に分類されることを意味する。カラーには、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、及びバイオレットなどが含まれる。なお、淡シアンとシアン、淡マゼンタとマゼンタ、淡イエローとイエロー、淡グレーとグレーなど、濃淡がある場合であっても同じ色に分類されるものとする。なお、「所定の色」には、例えば、クリアインクのような透明または無色の場合も含まれる。
【0024】
液体吐出ヘッド6は、圧力発生手段によって発生させた圧力により液体を吐出してもよい。液体吐出ヘッド6において液体を吐出させる手段としては、特に限定されないが、例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどが例示される。
【0025】
液体吐出ヘッド6による液体吐出量としては、例えば、3pL以上40pL以下であり、その吐出噴射の速さは、例えば、5m/s以上20m/s以下であり、その駆動周波数は、例えば、1kHz以上であり、その解像度は、例えば、300dpi以上である。
【0026】
排出ローラ10は、画像形成後の布帛Fを、液体吐出装置1Aから排出する。
【0027】
図2は、本発明の他の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略上面図である。
図2に示す液体吐出装置1Bは、シリアル型のインクジェット記録装置である。
【0028】
液体吐出装置1Bは、エンコーダセンサ51と、キャリッジ52と、タイミングベルト53と、駆動プーリ54と、従動プーリ55と、主走査モータ56と、プラテン57と、エンコーダシート58と、主ガイドロッド59と、液体吐出ヘッド60と、を有する。
【0029】
主ガイドロッド59は、キャリッジ52を、主走査方向(
図2中の矢印A方向)に往復移動可能に支持する。駆動プーリ54と従動プーリ55は、主走査方向に所定の間隔で液体吐出装置1Bに設けられている。タイミングベルト53は、無端ベルト状であり、駆動プーリ54と従動プーリ55との間に張り渡されている。
【0030】
キャリッジ52の移動範囲において、タイミングベルト53に対して平行にエンコーダシート58が配設されている。キャリッジ52には、エンコーダシート58を読み取るエンコーダセンサ51が設けられている。主走査モータ56は、エンコーダセンサ51によるエンコーダシート58の読み取り結果に基づいて、駆動プーリ54の回転駆動を制御される。これにより、タイミングベルト53は回転移動する。キャリッジ52は、タイミングベルト53に連結しており、タイミングベルト53が回転移動することで、主走査方向に往復移動する。
【0031】
布帛Fは、プラテン57上を主走査方向と直交する副走査方向(
図2中の矢印B方向)に間欠的に搬送される。液体吐出ヘッド60は、液体を吐出するための複数のノズルを有しており、その吐出面(ノズル面)が、布帛F側を向くようにキャリッジに搭載されている。液体吐出ヘッド60は、主走査方向に移動しながら、副走査方向(矢印B方向)に間欠的に搬送される布帛Fにインクを吐出することで、布帛Fの所定位置にインクを吐出して画像を形成する。また、布帛Fは前処理液を付与されている布帛である。
【0032】
図3は、液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
図4は、液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
図3及び
図4の(A)乃至(H)に示すように、液体吐出装置1Bには、それぞれ、3つ以上の液体吐出ヘッド60が配置されている。1つの液体吐出ヘッド60は、それぞれ、副走査方向に複数のノズルが並んだ4つのノズル列を有している。
【0033】
液体吐出ヘッド60において、1つのノズル列の各ノズルから吐出される液体は同色である。例えば、ノズル列60k,60c,60m,60y,60w1、60w2のノズル列は、それぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W1)、ホワイト(W2)のインクを吐出する。なお、液体吐出ヘッド60の配置は、(A)乃至(H)の例に限られない。液体吐出ヘッド60は、例えば、主走査方向に並んでいてもよい。また、液体吐出装置1Bは、例えば、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット、グレー、シルバー、ゴールド、などの特色インクを吐出する他の液体吐出ヘッド60を有してもよい。
【0034】
<<ハードウェア構成>>
図5は、一実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成図である。
図5の(A)は、液体吐出装置1Aのハードウェア構成を示し、
図5の(B)は、液体吐出装置1Bのハードウェア構成を示す。以下、液体吐出装置1A,1Bのうち任意のものを液体吐出装置1と表す。
【0035】
液体吐出装置1Aは、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104、液体吐出ヘッドドライバ106、副走査ドライバ107、外部接続I/F(Interface)108、及び布帛搬送部109を備えている。液体吐出装置1Bは、さらにキャリッジ52の主走査方向への移動を制御する主走査ドライバ105を備えている。
【0036】
CPU101は、液体吐出装置1の全体を制御するための処理装置である。ROM102は、液体吐出装置1のプログラム及び背景画像等の形成に必要なデータ等を記憶する。RAM103は、揮発性のメモリであって、ROM102に記憶されたプログラムが展開されて、CPU101のワークエリアとして用いられる。不揮発性メモリ104は、例えば、HD(Hard Disk)、SSD(Solid State Drive)であって、電源遮断後もデータを保持する。液体吐出ヘッドドライバ106は、液体吐出ヘッド6,60の駆動を制御するためのドライバである。外部接続I/F108は、外部の情報処理装置との間で情報を送受信するためのI/Fである。布帛搬送部109は、例えば、ローラ、及びローラを駆動するモータであって、液体吐出装置1内の搬送経路に沿って布帛Fを搬送する。副走査ドライバ107は、布帛Fの搬送を制御するためのドライバである。液体吐出装置1Bの主走査ドライバ105は、キャリッジ52の主走査方向への移動を制御するためのドライバである。なお、主走査ドライバ105、液体吐出ヘッドドライバ106、及び副走査ドライバ107は、それぞれプログラムに従ったCPU101の命令によって実現する機能であってもよい。
【0037】
<<機能構成>>
図6は、一実施形態に係る液体吐出装置の機能ブロック図である。液体吐出装置1は、吐出制御部701を有している。これは、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって動作することで実現される機能である。
【0038】
また、液体吐出装置1は、ROM102、RAM103、または不揮発性メモリ104によって構築される記憶部1000を有している。記憶部1000には、背景画像の形成に必要な背景画像情報1001が記憶されている。本願において、「背景画像」は、少なくとも浸透性記録媒体上の視認される画像(以降、背景画像と区別するために「前景画像」と称する場合もある)が形成される領域に設けられる。また、浸透性記録媒体上に、背景画像、前景画像の順に重なっており、背景画像と前景画像の間に他の画像が存在していてもよい。なお、背景画像は、前景画像が形成される領域の全面に対して形成される画像(本願では、「ベタ画像」とも称する)であることが好ましい。
【0039】
吐出制御部701は、CPU101からの命令により実現され、背景画像を形成する液滴の吐出を制御する。
【0040】
<<インク>>
続いて、液体吐出装置1により液滴として吐出される液体の一例であるインクについて説明する。インクは、例えば、有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤などを含有する。
【0041】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0042】
また、本発明に使用することができる有機溶剤としては、吐出された液体が浸透性記録媒体に浸透することを促進する有機溶剤を含んでもよく、例えば、グリコールエーテル類、及び1、2-アルキルジオールが挙げられる。グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。また、1、2-アルキルジオールとしては、特に限定されないが、例えば、1、2-ペンタンジオール及び1、2-ヘキサンジオールが挙げられる。これらの他に、1、3-プロパンジオール、1、4-ブタンジオール、1、5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、1、7-ヘプタンジオール、及び1、8-オクタンジオール等の直鎖炭化水素のジオール類も挙げることができる。
本願は、後述する液滴の吐出制御を行うため、浸透性記録媒体に対して浸透性を促進する上記の有機溶剤を含むインク用いたとしても、液体が浸透性記録媒体に対して浸透する速度を抑制することができ、インクの裏抜けを抑制することができる。また、浸透性記録媒体が布帛である場合、インクの浸透性が高いため、特にインクの裏抜けの課題が発生しやすい。そのため、インク開発の要請上、上記の有機溶剤を含むインクを用いなければならない場合であっても、後述する液滴の吐出制御を行うことで、液体が浸透性記録媒体に対して浸透する速度を抑制することができ、インクの裏抜けを抑制することができるため特に好ましい。また、前処理液を付与した浸透性記録媒体に対して上記の有機溶剤を含むインクを付与する場合、後述する液滴の吐出制御を行うことで浸透性記録媒体表面近傍に存在する前処理液とインクが反応して凝集する時間を十分に確保することができ、浸透性記録媒体表面近傍において色材が留まることができる。そのため、画像濃度が向上し、特にインクを背景画像形成用で用いる場合において浸透性記録媒体の色に対する隠蔽性を高めることができる。
【0043】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0044】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0045】
インクが背景画像を形成する背景用インクである場合、インクに含有される色材としては、前景画像の発色性を高める観点から白色顔料であることが好ましい。白色顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等の白色無機顔料が挙げられる。また、白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
白色顔料のカラーインデックス(C.I.)としては、特に限定されないが、例えば、C.I.Pigment White 1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン)、6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム)、19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)が挙げられる。
白色顔料は、上記の通り前景画像の発色性を高めることができるが、酸化チタンなどの白色無機顔料を用いた場合、顔料の比重が大きいため、他の色材を用いた場合に比べて浸透性記録媒体に対する色材の浸透性が促進される。しかし、本願は、後述する液滴の吐出制御を行うため、浸透性記録媒体に対して浸透性を促進する上記の白色無機顔料を含むインク用いたとしても、液体が浸透性記録媒体に対して浸透する速度を抑制することができ、インクの裏抜けを抑制することができる。また、浸透性記録媒体が布帛である場合、インクの浸透性が高いため、特にインクの裏抜けの課題が発生しやすい。そのため、インクの用途上、上記の白色無機顔料を含むインクを用いなければならない場合であっても、後述する液滴の吐出制御を行うことで、液体が浸透性記録媒体に対して浸透する速度を抑制することができ、インクの裏抜けを抑制することができるため特に好ましい。また、前処理液を付与した浸透性記録媒体に対して上記の白色無機顔料を含むインクを付与する場合、後述する液滴の吐出制御を行うことで浸透性記録媒体表面近傍に存在する前処理液とインクが反応して凝集する時間を十分に確保することができ、浸透性記録媒体表面近傍において色材が留まることができる。そのため、画像濃度が向上し、特にインクを背景画像形成用で用いる場合において浸透性記録媒体の色に対する隠蔽性を高めることができる。
【0046】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0048】
<<前処理液>>
次に、浸透性記録媒体に付与される液体である前処理液について説明する。前処理液は、例えば、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
前処理液の浸透性記録媒体に対する付着量は、0.1mg/cm2以上30.0mg/cm2以下であることが好ましく、0.4mg/cm2以上10mg/cm2以下であることがより好ましい。
【0049】
<<浸透性記録媒体>>
次に、液体が付与される浸透性記録媒体について説明する。浸透性記録媒体としては、布帛等が好ましい。布帛としては、例えば、絹、綿、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の天然繊維又は合成繊維が挙げられ、1種類の繊維からなる布帛、2種類以上の繊維の混紡からなる布帛であってもよい。また、布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。
【0050】
<<処理>>
図7は、背景画像を形成する液滴の吐出を制御する処理の一例を示すフロー図である。以下、液体吐出装置1Bにおいて背景画像を形成する液滴の吐出を制御する処理について説明するが、液体吐出装置1Aにおいても同様の処理により、背景画像を形成する液滴の吐出を制御することができる。以下、背景画像を形成する背景用インクの液滴として、色が同一であるホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)、及びホワイト(w
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)を用いてブラックの浸透性記録媒体に背景画像を形成する処理について説明する。なお、本実施形態の方法によると、上記の液滴の組み合わせに限らず、背景画像を形成可能な共に所定の色である第一の液滴および第二の液滴を用いることができる。例えば、シアン(c
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)、及びシアン(c
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)を用いる場合、マゼンタ(m
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)、及びマゼンタ(m
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)を用いる場合、イエロー(y
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)、及びイエロー(y
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)を用いる場合、ブラック(b
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)、及びブラック(b
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)を用いる場合などが挙げられる。なお、第一の液滴として用いる液体の組成が、第二の液滴として用いる液体の組成と同一であっても異なってもよい。第一の液滴、及び第二の液滴として用いる液体の組成が同一である場合、これらの液滴は、同一の液体吐出ヘッドから吐出されても異なる液体吐出ヘッドから吐出されてもよく、同一の液体吐出ヘッドに設けられた同一のノズルから吐出されてもよい。第一の液滴、及び第二の液滴として用いる液体の組成が異なる場合、これらの液滴は、同一の液体吐出ヘッドから吐出されても異なる液体吐出ヘッドから吐出されてもよい。
【0051】
吐出制御部701は、
図7に示すように、記憶部1000に記憶されている背景画像情報1001を読み出す(ステップS101)。本実施形態において、記憶部1000に記憶されている背景画像情報1001は、主走査方向における走査毎に、液滴が吐出される位置に関連する位置関連情報と、液滴が吐出される各位置における液滴の液量に関連する液量関連情報と、が関連付けられている。「走査」は、ホワイト(w
1)インクの液滴を吐出する第一の走査と、ホワイト(w
2)インクの液滴を吐出する第二の走査を含む。第一の走査に関連付けられている「位置関連情報」は、ホワイト(w
1)インクの液滴が吐出される位置に関連する情報を示す。第一の走査に関連付けられている「液量関連情報」は、ホワイト(w
1)インクの液滴が位置関連情報に基づいて浸透性記録媒体に形成する第一の付着物において、第一の付着物同士が互いに接触しないように設定されたホワイト(w
1)インクの液滴の液量に関連する情報を示す。また、第二の走査に関連付けられている「位置関連情報」は、ホワイト(w
2)インクの液滴が吐出される位置に関連する情報を示す。第二の走査に関連付けられている「液量関連情報」は、ホワイト(w
2)インクの液滴が位置関連情報に基づいて浸透性記録媒体に形成する第二の付着物において、第一の付着物と接触するように設定されたホワイト(w
2)インクの液滴の液量に関連する情報を示す。
また、第一の走査、及び第二の走査のそれぞれに関連付けられている位置関連情報は、浸透性記録媒体上における位置を示す情報などが挙げられるが、これに限られない。
また、第一の走査、及び第二の走査のそれぞれに関連付けられている液量関連情報は、液量を示す情報、ノズルサイズが異なることにより吐出可能な液量が異なる液体吐出ヘッドを複数有する液体吐出装置において特定のノズルから液滴を吐出することを示す情報などが挙げられるが、これらに限られない。なお、液量関連情報が液量を示す情報である場合、吐出制御部701は、液量に対応する駆動波形の駆動信号を生成し、液体吐出ヘッド60に供給する。
また、第一の走査、及び第二の走査のそれぞれに関連付けられている位置関連情報、及び液量関連情報は、浸透性記録媒体に第一の液滴、第二の液滴を吐出した際の試験データに基づいて設定されている。また、これら位置関連情報、及び液量関連情報は、浸透性記録媒体の種類ごとに設定されていてもよい。
【0052】
次に、吐出制御部701は、
図7に示すように、読み出した背景画像情報1001に基づき、液体吐出ヘッド60にホワイト(w
1)インクの液滴を吐出させる制御を行う(ステップS102)。このステップにより、浸透性記録媒体に、ホワイト(w
1)インクの付着物からなる第一のパターンが形成される。
図8は、ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)によって浸透性記録媒体に形成される第一のパターンの一例を表す模式図である。
図8に示すように、第一の走査により、二以上の第一の付着物1021が互いに接触しない位置にホワイト(w
1)インクの液滴は吐出される。例えば、画像の解像度が600×600dpiであり、
図8に示すように横方向に連続して第一の付着物を形成する場合、第一の付着物の直径は42μm以下に制限される。
【0053】
本発明者らは、ホワイト(w1)インクを浸透性記録媒体上で第一の付着物同士が互いに接触する位置に吐出した場合(液滴が合一する位置に吐出した場合)、ホワイト(w1)インクが浸透性記録媒体内部に浸透してしまい、ホワイト(w1)インクの裏抜けが生じる課題、及び背景画像の浸透性記録媒体の色に対する隠蔽性が劣る課題を見出した。また、前処理液が付与されている浸透性記録媒体を用いた場合であっても、前処理液とホワイト(w1)インクとの反応に時間を要するため、浸透性記録媒体の表面近傍における反応が十分に進む前にホワイト(w1)インクが浸透性記録媒体内部に浸透してしまい、上記の課題が同様に生じることを見出した。そこで、ステップ102において、二以上の第一の付着物1021が互いに接触しない位置にホワイト(w1)インクの液滴を吐出する。
【0054】
次に、吐出制御部701は、
図7に示すように、読み出した背景画像情報に基づき、液体吐出ヘッド60にホワイト(w
2)インクの液滴を吐出させる制御を行う(ステップS103)。このステップにより、前処理液が付与された浸透性記録媒体に、ホワイト(w
2)インクの付着物からなる第二のパターンが形成される。
図9は、ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)及びホワイト(w
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)によって浸透性記録媒体に形成される第一のパターンおよび第二のパターンの一例を表す模式図である。
図9に示すように、第二の走査により、第二の付着物1031が第一の付着物1021と接触する位置にホワイト(w
2)インクの液滴は吐出される。なお、本実施形態では、第一のパターン及び第二のパターンから背景画像が形成される。
【0055】
本発明者らは、ホワイト(w2)インクを第二の付着物1031が第一の付着物1021と接触する位置に吐出することで、ホワイト(w2)インクが第一の付着物に含まれる液体と引き付け合い、ホワイト(w2)インクの浸透性記録媒体中への浸透速度が遅くなることを見出した。ホワイト(w2)インクの浸透性記録媒体中への浸透速度が遅くなることにより、ホワイト(w1)インクの裏抜けを抑制することができる。また、前処理液が付与されている浸透性記録媒体を用いた場合、浸透性記録媒体表面近傍に存在する前処理液とホワイト(w2)インクが反応して凝集する時間を十分に確保することができ、浸透性記録媒体表面近傍において色材が留まることができるため、浸透性記録媒体の色に対する隠蔽性を高めることができる。そのため、ステップ103において、第二の付着物が第一の付着物と接触する位置にホワイト(w2)インクの液滴を吐出する。
【0056】
上記実施形態によると、ホワイトインクが浸透性記録媒体内部に過度に浸透して生じるインクの裏抜けを抑制することができる。
【0057】
なお、本実施形態は、
図9に示すように、ホワイト(w
2)インクの液滴の液量が、ホワイト(w
1)インクの液滴の液量に比べて多くなるように液量関連情報が設定され、背景画像情報1001として記憶部1000に記憶されている。本実施形態の液滴の吐出制御を行うことで、上記のようにホワイト(w
2)インクの浸透性記録媒体中への浸透速度を遅くすることができるため、液量の多い液滴(大滴)としてホワイト(w
2)インクを付与したとしても、インクの裏抜けを抑制することができる。また、それにより浸透性記録媒体の色に対する隠蔽性が優れた背景画像を得られる。
【0058】
なお、本実施形態は、
図9に示すように、第二の付着物1031が、2以上の第一の付着物1021と接触する位置に配置されている。これにより、第二の付着物1031が、第一の付着物1021と1つのみ接触する位置に配置される場合に比べ、ホワイト(w
2)インクが第一の付着物に含まれる液体と引き付け合う力が増し、よりホワイト(w
2)インクの浸透性記録媒体中への浸透速度を遅らせることができ、インクの裏抜けを抑制することができる。
【0059】
なお、ホワイト(w1)インクの表面張力がホワイト(w2)インクの表面張力より高いと、ホワイト(w2)インクが第一の付着物に含まれる液体と引き付け合う力が増すので好ましい。
【0060】
<<変形例A>>
続いて、実施形態の変形例Aについて、上記の実施形態と異なる点を説明する。変形例Aにおいて、吐出制御部701は、
図7に示すように、読み出した背景画像情報に基づき、液体吐出ヘッド60にホワイト(w
1)インクの液滴を吐出させる制御を行う(ステップS102)。このステップにより、前処理液が付与された浸透性記録媒体に、ホワイト(w
1)インクの付着物からなる第一のパターンが形成される。
図10は、ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)によって浸透性記録媒体に形成される第一のパターンの一例を表す模式図である。
図10に示すように、第一の走査により、二以上の第一の付着物1022が互いに接触しない位置にホワイト(w
1)インクの液滴は吐出される。例えば、画像の解像度が600×600dpiであり、
図10に示すような互い違いのパターン(市松模様)で第一の付着物を形成する場合、第一の付着物の直径は63μm以下に制限される。
【0061】
次に、吐出制御部701は、
図7に示すように、読み出した背景画像情報に基づき、液体吐出ヘッド60にホワイト(w
2)インクの液滴を吐出させる制御を行う(ステップS103)。このステップにより、前処理液が付与された浸透性記録媒体に、ホワイト(w
2)インクの付着物からなる第二のパターンが形成される。
図11は、ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)及びホワイト(w
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)によって浸透性記録媒体に形成される第一のパターンおよび第二のパターンの一例を表す模式図である。
図11に示すように、第二の走査により、第二の付着物1032が第一の付着物1022と接触する位置に配置されるようにホワイト(w
2)インクの液滴は吐出される。
【0062】
変形例Aにおける処理は、形成される第一のパターンおよび第二のパターンの種類を置き換える点を除いて実施形態における処理と同様である。
【0063】
上記変形例Aによると、上記実施形態に比べて、第二の付着物1032が、2以上の第一の付着物1022とより接触しやすい位置に配置されている。これにより、ホワイト(w2)インクが第一の付着物に含まれる液体と引き付け合う力が増し、よりホワイト(w2)インクの浸透性記録媒体中への浸透速度を遅らせることができ、インクの裏抜けを抑制することができる。また、それにより浸透性記録媒体の色に対する隠蔽性が優れた背景画像を得られる。
【0064】
<<変形例B>>
続いて、実施形態の変形例Bについて、上記の実施形態と異なる点を説明する。変形例Bにおいて、記憶部1000に記憶されている背景画像情報1001は、主走査方向における走査毎に、液滴が吐出される位置に関連する位置関連情報と、付着物のサイズに関連するサイズ関連情報と、が関連付けられている。「走査」は、ホワイト(w1)インクの液滴を吐出する第一の走査と、ホワイト(w2)インクの液滴を吐出する第二の走査を含む。第一の走査に関連付けられている「位置関連情報」は、ホワイト(w1)インクの液滴が吐出される位置に関連する情報を示す。第一の走査に関連付けられている「サイズ関連情報」は、ホワイト(w1)インクの液滴が位置関連情報に基づいて浸透性記録媒体に形成する第一の付着物において、第一の付着物同士が互いに接触しないように設定された第一の付着物のサイズに関連する情報を示す。また、第二の走査に関連付けられている「位置関連情報」は、ホワイト(w2)インクの液滴が吐出される位置に関連する情報を示す。第二の走査に関連付けられている「サイズ関連情報」は、ホワイト(w2)インクの液滴が位置関連情報に基づいて浸透性記録媒体に形成する第二の付着物において、第一の付着物と接触するように設定された第二の付着物のサイズに関連する情報を示す。
また、第一の走査、及び第二の走査のそれぞれに関連付けられているサイズ関連情報は、付着物のサイズを示す情報、ノズルサイズが異なることにより形成される付着物のサイズが異なる液体吐出ヘッドを複数有する液体吐出装置において特定のノズルから液滴を吐出することを示す情報などが挙げられるが、これらに限られない。なお、サイズ関連情報が付着物のサイズを示す情報である場合、吐出制御部は、付着物のサイズに対応する駆動波形の駆動信号を生成し、液体吐出ヘッド60に供給する。なお、付着物のサイズを示す情報は、液滴を複数吐出して浸透性記録媒体に付着する前に合体させることで付着物のサイズを調整する情報であってもよい。
また、第一の走査、及び第二の走査のそれぞれに関連付けられているサイズ関連情報は、浸透性記録媒体に第一の液滴、第二の液滴を吐出した際の試験データに基づいて設定されている。また、これらサイズ関連情報は、浸透性記録媒体の種類ごとに設定されていてもよい。
【0065】
変形例Bにおける処理は、液量関連情報をサイズ関連情報に置き換える点を除いて実施形態における処理と同様である。
【0066】
上記実施形態によると、浸透性記録媒体の色に対する隠蔽性が優れる画像を形成することができる。
【0067】
なお、変形例Bは、ホワイト(w2)インクの付着物のサイズが、ホワイト(w1)インクの付着物のサイズに比べて大きくなるようにサイズ関連情報が設定され、背景画像情報1001として記憶部1000に記憶されている。変形例Bの液滴の吐出制御を行うことで、上記実施形態と同様にホワイト(w2)インクの浸透性記録媒体中への浸透速度を遅くすることができるため、インクの裏抜けを抑制することができる。
【0068】
<<変形例C>>
続いて、実施形態の変形例Cについて、上記の実施形態と異なる点を説明する。変形例Cにおいて、吐出制御部701は、
図7に示すように、記憶部1000に記憶されている背景画像情報1001を読み出す(ステップS101)。本実施形態において、記憶部1000に記憶されている背景画像情報1001は、主走査方向における走査毎に、液滴が吐出される位置に関連する位置関連情報と、液滴の液量に関連する液量関連情報と、背景画像の解像度に関連する解像度関連情報と、が関連付けられている。「走査」は、ホワイト(w
1)インクの液滴を吐出する第一の走査と、ホワイト(w
2)インクの液滴を吐出する第二の走査を含む。第一の走査に関連付けられている「位置関連情報」は、ホワイト(w
1)インクの液滴が吐出される位置に関連する情報を示す。第一の走査に関連付けられている「液量関連情報」は、ホワイト(w
1)インクの液滴が位置関連情報に基づいて浸透性記録媒体に形成する第一の付着物において、第一の付着物同士が互いに接触しないように設定されたホワイト(w
1)インクの液滴の液量に関連する情報を示す。第一の走査に関連付けられている「解像度関連情報」は、ホワイト(w
1)インクの液滴により形成される背景画像(第一のパターン)の解像度に関連する情報を示す。また、第二の走査に関連付けられている「位置関連情報」は、ホワイト(w
2)インクの液滴が吐出される位置に関連する情報を示す。第二の走査に関連付けられている「液量関連情報」は、ホワイト(w
2)インクの液滴が位置関連情報に基づいて浸透性記録媒体に形成する第二の付着物において、第一の付着物と接触するように設定されたホワイト(w
2)インクの液滴の液量に関連する情報を示す。第二の走査に関連付けられている「解像度関連情報」は、ホワイト(w
2)インクの液滴により形成される背景画像(第二のパターン)の解像度に関連する情報を示す。
【0069】
次に、吐出制御部701は、
図7に示すように、読み出した背景画像情報に基づき、液体吐出ヘッド60にホワイト(w
1)インクの液滴を吐出させる制御を行う(ステップS102)。このステップにより、前処理液が付与された浸透性記録媒体に、ホワイト(w
1)インクの付着物からなる第一のパターンが形成される。
図12は、ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)によって浸透性記録媒体に形成される第一のパターンの一例を表す模式図である。
図12に示すように、第一の走査により、二以上の第一の付着物1023が互いに接触しない位置にホワイト(w
1)インクの液滴は吐出される。
【0070】
次に、吐出制御部701は、
図7に示すように、読み出した背景画像情報に基づき、液体吐出ヘッド60にホワイト(w
2)インクの液滴を吐出させる制御を行う(ステップS103)。このステップにより、前処理液が付与された浸透性記録媒体に、ホワイト(w
2)インクの付着物からなる第二のパターンが形成される。
図13は、ホワイト(w
1)インクの液滴(第一の液滴の一例)及びホワイト(w
2)インクの液滴(第二の液滴の一例)によって浸透性記録媒体に形成される第一のパターンおよび第二のパターンの一例を表す模式図である。
図13に示すように、第二の走査により、第二の付着物1033が第一の付着物1023と接触する位置にホワイト(w
2)インクの液滴は吐出される。
【0071】
また、本実施形態は、
図13に示すように、ホワイト(w
2)インクの液滴の液量が、ホワイト(w
1)インクの液滴の液量に比べて多くなるように液量関連情報が設定され、且つホワイト(w
2)インクの液滴により形成される背景画像の解像度が、ホワイト(w
1)インクの液滴により形成される背景画像の解像度に比べて低くなるように解像度関連情報が設定され、背景画像情報1001として記憶部1000に記憶されている。これにより、第一の付着物は液量の少ない液滴(小滴)を付与することで形成されるため、インクの裏抜けを抑制することができる。また、第二の付着物は液量の多い液滴(大滴)を付与することで形成されるが、本実施形態の液滴の吐出制御を行うことで、上記のようにホワイト(w
2)インクの浸透性記録媒体中への浸透速度を遅くすることができるため、インクの裏抜けを抑制することができる。
【0072】
<<実施形態の補足>>
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路を含むプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0073】
1A,1B 液体吐出装置
6,60 液体吐出ヘッド
701 吐出制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】