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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】光変調器、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20220906BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02F1/035
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018067002
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179086
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134131(JP,A)
【文献】特開2003-258363(JP,A)
【文献】特開2017-134241(JP,A)
【文献】特開2003-279907(JP,A)
【文献】特開平09-275245(JP,A)
【文献】実開平07-036468(JP,U)
【文献】特開2017-187518(JP,A)
【文献】特開2014-199302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42-6/43
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
H01L 23/00-23/473
31/02-31/024
H01S 5/02-5/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路と当該光導波路を伝搬する光波を制御する高周波電極とを備える光変調素子と、
前記高周波電極に電気的に接続された終端抵抗と、
前記終端抵抗が配された終端抵抗基板と、
前記光変調素子及び前記終端抵抗基板を収容する筐体と、
を有する光変調器であって、
前記筐体は金属であり、
前記筐体の一の外部表面には、前記筐体の前記金属が延在した複数の凸部が形成され、
少なくとも1つの前記凸部は、前記終端抵抗基板が配置された前記筐体内の位置に対し前記筐体を挟んで対向する当該筐体の外部表面の位置に形成され、
少なくとも1つの他の前記凸部は、当該凸部の上面に前記高周波電極への電気信号を入力する信号入力端子を備え、
前記少なくとも1つの前記凸部と、前記少なくとも1つの他の前記凸部とは、前記外部表面から同じ高さで構成されている、
光変調器。
【請求項2】
少なくとも一つの前記凸部は、前記筐体内の前記終端抵抗基板上に配された前記終端抵抗の位置に対し前記終端抵抗基板及び前記筐体を挟んで対向する、当該筐体の外部表面の位置に形成されている、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記一の外部表面に隣接する前記筐体の他の外部表面は、凸部又は凹部を有する、
請求項1または2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記少なくとも一つの前記凸部には、ネジ穴が設けられている、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の光変調器を備える光送信装置。
【請求項6】
前記光変調器は、前記少なくとも一つの前記凸部のいずれかが、電子部品が搭載された基板上に形成された導体パターンと接するように実装される、請求項に記載の光送信装置。
【請求項7】
請求項に記載の光変調器を備える光送信装置であって、
前記光変調器は、前記ネジ穴に接続されたネジのいずれかが、電子部品が搭載された基板の裏面に形成された導体パターンと接するように実装される、
光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、及び光変調器を用いた光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長距離光通信において適用が開始されたデジタルコヒーレント伝送技術は、通信需要の更なる高まりから中距離、短距離などメトロ用光通信にも適用されつつある。このようなデジタルコヒーレント伝送においては、光変調器として、代表的にはLiNbO3(以下、LNという)基板を用いたDP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)変調器が用いられる。以下、LiNbO3基板を用いた光変調器を、LN変調器という。
【0003】
このような光変調器は、例えば、当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力するドライバ素子(または駆動回路)が接続され、光送信装置として用いられる。また一般的に当該光変調器やドライバ素子は回路基板上に配置される。
【0004】
特に、メトロ用光通信など短距離用途の光送信装置に関しては光変調器やドライバ回路等の設置空間の抑制に対する要請が高く、変調器等の小型化が望まれている。光変調器を小型化するため、LN光変調素子の小型化(例えば、LN基板上における光導波路配置面積の縮小)、LN基板上の光導波路からの出力光を出力光ファイバへ光結合するための空間光学系の小型化、LN変調器の高周波(RF)信号入力インタフェースの小型化(例えば、同軸コネクタからフレキシブルプリント板への変更)等の取り組みが従来から行われている。
【0005】
また、上記のような光変調器単体の小型化に加えて、光変調器筐体の底面の限られた部分に突出部を設け、当該突出部により確保される空間にドライバ素子等の電子部品を配する構成が提案されている(特許文献1、2、3)。
【0006】
しかしながら、このような光変調器においては、当該光変調器の筐体が小型化し、光送信装置内における空間利用率(従って光変調器を含むデバイス等の空間占有率)や集積化が高まれば、光変調器内部からの発熱を効果的に放熱することが難しくなっていく。例えば、進行波型電極を備えるLN変調器では、進行波型電極に接続された終端抵抗における発熱を、変調器筐体の外部へ放熱する必要がある。しかしながら、変調器筐体の小型化に伴って当該筐体の熱容量が減少すれば、当該発熱により筐体に無視し得ない温度上昇が発生し得る。
【0007】
その結果、光変調器において終端抵抗の特性が変化したり信頼性が低下する等の事象が発生し、光送信装置にも、伝送特性や信頼性の面で大きな影響が及ぶことが懸念される。
【0008】
特に複数の高周波信号が入力されて動作し、発熱体となる終端抵抗を複数有するDP-QPSKなどの変調器では、上記のような小型化や、光送信装置内における空間利用率や集積化の高まり、及び光送信装置内において発熱体である高周波ドライバが近接して配置されることによる動作温度の上昇は顕著となり得る。
殊に、複数の高周波信号が入力されて動作し、発熱体となる終端抵抗を複数有するDP-QPSK変調器では、上記のような小型化や、光送信装置内において高周波ドライバが隣接して配置されることによる動作温度の上昇は顕著となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特願2018-003442号
【文献】特願2018-003443号
【文献】特願2018-034768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記背景より、光変調器内部からの発熱を効果的に放熱し得る光変調器を実現することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の態様は、光導波路と当該光導波路を伝搬する光波を制御する高周波電極と
を備える光変調素子と、前記高周波電極に電気的に接続された終端抵抗と、前記終端抵抗
が配された終端抵抗基板と、前記光変調素子及び前記終端抵抗基板を収容する筐体と、を
有する光変調器であって、前記筐体は金属であり、前記筐体の一の外部表面には、前記筐
体の前記金属が延在した複数の凸部が形成され、少なくとも1つの前記凸部は、前記終端
抵抗基板が配置された前記筐体内の位置に対し前記筐体を挟んで対向する当該筐体の外部
表面の位置に形成され、少なくとも1つの他の前記凸部は、当該凸部の上面に前記高周波
電極への電気信号を入力する信号入力端子を備え、前記少なくとも1つの前記凸部と、前
記少なくとも1つの他の前記凸部とは、前記外部表面から同じ高さで構成されている。
本発明の他の態様によると、少なくとも一つの前記凸部は、前記筐体内の前記終端抵抗
基板上に配された前記終端抵抗の位置に対し前記終端抵抗基板及び前記筐体を挟んで対向
する、当該筐体の外部表面の位置に形成されている
本発明の他の態様によると、前記一の外部表面に隣接する前記筐体の他の外部表面は、
凸部又は凹部を有する。
本発明の他の態様によると、前記少なくとも一つの前記凸部には、ネジ穴が設けられて
いる。
本発明の他の態様は、前記いずれかの光変調器を備える光送信装置である。
本発明の他の態様によると、前記光送信装置において、前記光変調器は、前記少なくと
も一つの前記凸部のいずれかが、電子部品が搭載された基板上に形成された導体パターン
と接するように実装される。
本発明の更に他の態様は、前記ネジ穴が設けられた前記光変調器を備える光送信装置で
あって、前記光変調器は、前記ネジ穴に接続されたネジのいずれかが、電子部品が搭載さ
れた基板の裏面に形成された導体パターンと接するように実装されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光変調器内部からの発熱を効果的に放熱し得る光変調器を実現することできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の平面図である。
図2図1に示す光変調器の側面図である。
図3図1に示す光変調器の底面図である。
図4図1に示す光変調器の、回路基板へ実装例を示す図である。
図5】第1の変形例に係る光変調器の底面図である。
図6】第1の変形例に係る光変調器の、回路基板への実装例を示す図である。
図7】第2の変形例に係る光変調器の平面図である。
図8】第2の変形例に係る光変調器の側面図である。
図9】第2の変形例に係る光変調器の底面図である。
図10】第2の変形例に係る光変調器の、回路基板への実装例を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す平面図、図2は、光変調器100の側面図、図3は、光変調器100の底面図である。この光変調器100は、例えば、光変調器100に変調を行わせるための電気回路が構成された外部の回路基板(例えば、後述の図4に示す回路基板400)上に実装され、当該電気回路と電気的に接続されて使用される。
【0015】
光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する筐体104と、光変調素子102に光を入射するための光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を筐体104の外部へ導く光ファイバ110と、を備える。
【0016】
光変調素子102は、例えばLN基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つのRF電極(高周波電極)150、152、154、156と、を備えたDP―QPSK光変調器である。光変調素子102から出力される2つの光は、例えばレンズ光学系(不図示)により偏波合成され、光ファイバ110を介して筐体104の外部へ導かれる。
【0017】
筐体104は、光変調素子102が固定されるケース114aとカバー114bとで構成されている。なお、筐体104内部における構成の理解を容易するため、図1においては、カバー114bの一部のみを図示左方に示しているが、実際には、カバー114bは、箱状のケース114aの全体を覆うように配されて筐体104の内部を気密封止する。
【0018】
ケース114aには、高周波信号入力用の信号入力端子である4つのリードピン120、122、124、126が設けられている。これらのリードピン120、122、124、126は、筐体104の底面(図3に示す面)から外部へ延在する。
【0019】
また、ケース114aは、導電性素材(例えばステンレス等の金属や、金等の金属薄膜がコートされた素材)で構成されている。そして、例えば光変調器100を回路基板等の外部構造物に実装する際に、ケース114aと外部構造物とが接触することにより、ケース114aがグランド(接地)ラインに接続される。
【0020】
本実施形態では、信号入力端子である4つのリードピン120、122、124、126は、例えば光変調素子102を挟んで相対向する側に配されている。4つのリードピン120、122、124、126は、中継基板130、132上の導体パターン140、142、144、146を介して、それぞれ、RF電極150、152、154、156の一端と電気的に接続されている。導体パターン140、142、144、146とRF電極150、152、154、156との間は、それぞれ、例えば金(Au)のワイヤにより電気的に接続されている。
【0021】
RF電極150、152、154、156は、それぞれ、動作周波数範囲において特性インピーダンスが所定の値となるように設計されている。また、RF電極150、152、154、156の他端は、それぞれ、上記特性インピーダンスと同じ値のインピーダンスを持つ終端抵抗160、162、164、166により電気的に接続されて終端されている。
【0022】
これらの終端抵抗160、162、164、166は、セラミック等で構成された基板である終端抵抗基板170上に実装されている。また、終端抵抗基板170は、筐体104のケース114aの内面に固定されている。なお、終端抵抗基板170への終端抵抗160、162、164、166の実装、終端抵抗基板170のケース114aへの固定は、例えばハンダや導電性ペースト等の熱良導性材料を用いて行うことができる。
【0023】
筐体104の底面、すなわちケース114aの底面(図3に示す面)の四隅には、当該底面から互いに同じ高さを有する凸部300、302、304、306が設けられている。当該凸部300、302、304、306のそれぞれの底面は平坦であり、当該底面のそれぞれに、筐体104を外部構造物に固定するためのネジ穴310、312、314、316が設けられている。また、凸部300、302、304、306は、筐体104の加工時の歪発生を低減する観点から、例えば筐体104の底面の幅方向に対する中心線350に関して略対称な位置に配されている。
【0024】
また、リードピン120、122は、ケース114aの底面から凸部300等と同じ高さを有する凸部320に設けられており、リードピン124、126は、ケース114aの底面から凸部300等と同じ高さを有する凸部322に設けられている。
【0025】
特に、本実施形態に係る光変調器100では、凸部330は終端抵抗基板170が配置された筐体104内の位置に対し、筐体104の底面を挟んで対向するように配置されている。この凸部330は、他の凸部300等及び320等と同じ高さを有し、筐体104が回路基板に固定されたときに、終端抵抗基板170を介して伝達された終端抵抗160、162、164、166からの発熱を、回路基板に伝達して放熱する。また、凸部330により筐体104の表面積が増加し、筐体104からの放熱も促進される。
【0026】
尚、本発明における「凸部330は終端抵抗基板170が配置された筐体104内の位置に対し、筐体104の底面を挟んで対向するように配置されている。」とは、図1における筐体104の上面側から透明視(紙面上方向から透明視)した場合、終端抵抗基板170の全てが凸部330と重なった配置はもちろんのこと、終端抵抗基板170と凸部330の少なくとも一部が重なっている配置も含むことを意味する。
【0027】
これにより、光変調器100では、当該光変調器100内部に実装される発熱体である終端抵抗160、162、164、166からの発熱を、筐体104の外部へ効率的に放熱することができる。なお、凸部330は、例えばステンレスで構成される筐体104から削り出して形成されるものすることができる。あるいは、凸部330は、光変調器の筐体よりも低い熱抵抗値を有する材料(例えば、銅タングステン合金(CuW)やアルミニウムAl)で構成された別部材をロウ付け等により筐体104に固定して設けるものとしても良い。特に、終端抵抗160等における発熱量が大きくなるほど、当該終端抵抗160等の下部(図1における紙面奥方向を下とする)に設ける凸部330は、より熱抵抗値の低い(熱伝導率の高い)部材で構成されることが好ましい。これにより、凸部330以外の筐体104の部分へ終端抵抗160等の熱が発散するのを防止して、それらの熱を速やかに筐体104外部へ導くことができる。また凸部330の外側の面は凹凸を有してもよく、それにより更に効率的に放熱することができる。
【0028】
図4は、回路基板への光変調器100の実装例を示す図である。図示において、光変調器100は、筐体104の4つのネジ穴310、312等を用いて4本のネジ410、412等(他の2本のネジは不図示)により回路基板400に締結されて固定されている。
【0029】
筐体104の凸部330が接触する回路基板400上の位置には、導体パターン420が形成されている。光変調器100内の終端抵抗160、162、164、166からの発熱は、終端抵抗基板170及び凸部330を介して回路基板400上の導体パターン420へ効率的に放熱される。また、凸部330と回路基板400上の導体パターン420が接触することにより、発熱体である終端抵抗160等の下部又は終端抵抗基板170の下部にあたる回路基板400上の位置には、高周波ドライバ等の発熱電子部品は配置できなくなる。このため、終端抵抗160等と、高周波ドライバ等の発熱電子部品とは、実装空間内において分散して配置されることとなり、これら発熱部品の偏在を抑制して放熱性を向上することができる。
【0030】
なお、凸部330と回路基板400との間は、熱良導体(例えば熱伝導性シリコンゴム接着剤や熱伝導性エポキシ接着剤等)を挿入し熱的な接触効率を高めて、熱伝導率を高めるものとすることができる。
【0031】
また、導体パターン420は、例えばグランドパターンや、電気回路を構成しない放熱のための独立した放熱用導体パターンであるものとすることができる。また、凸部330が接触する導体パターン420は、例えば回路基板400を装置(不図示)の内部に固定するためのネジ(不図示)などを介して、当該装置の筐体に熱的に接続されていることが望ましい。これにより当該装置も放熱部として機能するため放熱の効率をより高めることができる。
【0032】
なお、上述した光変調器100では、終端抵抗基板170が配置された筐体104内の位置に対し、筐体104の底部を挟んで対向する当該筐体104の底面の位置に、一つの凸部330を設けるものとしたが、これには限られない。例えば、図3のうち凸部330が形成されている領域に、凸部330に代えて複数の凸部が設けられているものとしてもよい。すなわち、放熱を行うための凸部は、終端抵抗基板が配置された筐体内の位置に対し、筐体(の底部)を挟んで対向する当該筐体の底面の位置に、少なくとも一つ設けられているものとすることができる。
【0033】
また、例えば、凸部は、筐体内の終端抵抗基板170上に配された複数の終端抵抗160等のそれぞれの位置に対し、終端抵抗基板170及び筐体104を挟んで対向する当該筐体104の外部表面(例えば底面)の位置にそれぞれ配された複数の凸部で構成されているものとすることができる。
【0034】
このような、上記複数の凸部は、上述の凸部300と同様に、光変調器の筐体よりも低い熱抵抗値を有する材料(例えば、CuWやAl)で構成されるものとすることができる。尚、本発明における「筐体内の終端抵抗基板170上に配された複数の終端抵抗160等のそれぞれの位置に対し、終端抵抗基板170及び筐体104を挟んで対向する」とは、図1における筐体104の上面側から透明視(紙面上方向から透明視)した場合、複数の終端抵抗160等の全てが凸部330と重なった配置はもちろんのこと、複数の終端抵抗160等の少なくとも一部が重なっている配置も含むことを意味する。
【0035】
次に、光変調器100の変形例について説明する。
<第1変形例>
第1の変形例である光変調器100-1は、光変調器100と同様の構成を有するが、筐体の底面の構成が異なる。図5は、光変調器100-1の底面の構成を示す図であり、図3に示す光変調器100の底面図に相当する図である。なお、図5において図3に示す構成要素と同じ構成要素については、図3における符号と同じ符号を用いて示す。また、図5において図3と異なる符号を用いて示された構成要素を除く他の構成要素については、上述した図1図2、及び図3についての説明を援用するものとする。
【0036】
光変調器100-1は、光変調器100とほぼ同様の構成を有するが、ケース114aとカバー114bとで構成される筐体104に代えて、ケース114a-1とカバー114bとで構成される筐体104-1を備える。ケース114a-1は、ケース114aと同様の構成を有するが、凸部330に代えて、ネジ穴500、502、504、506、508、510、512、514を有する凸部330-1を備える点が異なる。
【0037】
これにより、光変調器100-1では、ネジ穴500、502、504、506、508、510、512、514に嵌合するネジにより、凸部330-1を、凸部330に比べて密着性良く外部の回路基板に接触させて、凸部330-1から回路基板への熱伝導性を高めることができる。また、筐体104-1の内部から凸部330-1に伝達された熱を、ネジ穴500、502、504、506、508、510、512、514に締結されるネジを介して、外部の回路基板のウラ面(すなわち、光変調器100-1が実装された面に対向する面)まで熱を伝達して放熱することができる。
【0038】
図6は、回路基板への光変調器100-1の実装例を示す図である。図6において、光変調器100-1は、筐体104-1の4つのネジ穴310、312等のほか、凸部330-1に設けられた8個のネジ穴500等を用いて、12本のネジ610、612、614、616、618、620、622等(他の2本のネジは不図示)により回路基板600の図示上側の面(オモテ面)に締結されている。
【0039】
凸部330-1に設けられたネジ穴500等によりネジ締結されることにより、凸部330-1と回路基板600のオモテ面に形成された導体パターン630との密着性が高まり、凸部330-1から導体パターン630への放熱性が高まる。また、凸部330-1の熱は、ネジ穴500等に締結されたネジ614等を介して、回路基板600のウラ面に形成された導体パターン632へも放熱されるので、放熱効果がより高まる。尚、回路基板600のウラ面に導体パターン632が形成されていなくても、回路基板600のオモテ面に形成された導体パターン630との密着性が高まることで一定の放熱の効果を得ることができる。
【0040】
なお、凸部330-1に設けられたネジ穴500等に締結されるネジ614等は、光変調器100-1の固定を主目的としてもよいが、凸部330-1と導体パターン630との密着性が高めることと、凸部330-1の熱を導体パターン632へ導くことを主目的としてもよい。この場合、凸部330-1に設けられるネジ穴500等の数や径の大きさは、上記の目的に沿って、8本より多くても良いし、より径の太いネジに嵌合する寸法であるものとしてもよい。
【0041】
なお、本変形例では、ネジ穴500等が設けられた一つの凸部330-1により、終端抵抗160等の発熱が放熱されるものとしたが、これには限られない。上述したように、凸部330-1を、複数の凸部(例えば、終端抵抗160等ごとに筐体104-1を挟んで対向する位置に設けた複数の凸部)により構成するものとしてもよい。この場合には、凸部330-1を構成する少なくとも一つの凸部に、ネジ穴を設けるものとすることができる。
【0042】
<第2変形例>
第2の変形例である光変調器100-2は、光変調器100と同様の構成を有するが、筐体のケースの構成が異なる。図7図8図9は、それぞれ、光変調器100-2の平面図、側面図、底面図であり、図1図2図3に示す光変調器100の平面図、側面図、底面図に相当する図である。なお、図7図8、及図9において、図1図2、及び図3に示す構成要素と同じ構成要素については、図1図2、及び図3における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図1図2、及び図3についての説明を援用するものとする。
【0043】
光変調器100-2は、光変調器100とほぼ同様の構成を有するが、ケース114aとカバー114bとで構成される筐体104に代えて、ケース114a-2とカバー114bとで構成される筐体104-2を備える。ケース114a-2は、ケース114aとほぼ同様の構成を有するが、図3においてケース114aの図示右側の2つの角部に配された、ネジ穴312及び316を備える凸部302及び306に代えて、図9においてケース114a-2の図示中央部分の図示上辺及び下辺に配された、ネジ穴912及び916を備える凸部902及び906を備える。
【0044】
また、ケース114a-2は、図9に示すケース114a-2の底面に、凸部330の図示左側に、凸部330の図示左辺に沿って3つの凸部920、922、924を備え、凸部330の図示右側に、凸部330の図示右辺に沿って3つの凸部926、928、930を備える。
【0045】
また、ケース114a-2は、図8に示す側面のうち凸部330の周辺に、6つの凸部800、802、804、806、808、810を備える。また、ケース114a-2は、図8に示す側面に対向する側面(不図示)にも、6つの凸部800、802、804、806、808、810にそれぞれ対向する位置に、6つの凸部820、822、824、826、828、830を備える。
【0046】
光変調器100-2では、筐体104-2の底面に設けられた凸部920等が、凸部330に加えて、筐体104-2内の発熱を外部へ伝達するための追加の熱伝導体として機能すると共に、筐体104-2の表面積を増加させて筐体104-2から空気への放熱を増加させる。また、筐体104-2に設けられた凸部820等は放熱フィンとして作用し、筐体104-2の全体を放熱器として機能させる。このため、筐体104-2内の終端抵抗166等からの発熱をより効率的に放熱することができる。
【0047】
図10は、回路基板への光変調器100-2の実装例を示す図である。図示において、光変調器100-2は、筐体104-2の4つのネジ穴310、912等を用いて、4本のネジ1010、1012等(他の2本のネジは不図示)により回路基板1000に固定されている。
【0048】
図示の例では、光変調器100-2内の終端抵抗160等からの発熱は、凸部330に追加して凸部920等からも、回路基板1000上に形成された導体パターン1020へ効率的に放熱されると共に、周囲の空気に対して放熱される。
【0049】
なお、本変形例では、筐体104-2に設けられた凸部820等が放熱フィンとして作用するものとしたが、これには限られない。例えば、上記凸部820等に代えて又はこれに加えて、筐体104-2に凹部や溝その他の、筐体104-2の表面積を増大させる構造を設けて、当該凹部、溝その他の構造物及び又は上記凸部820等が放熱フィンとして作用するものとしてもよい。
【0050】
また、放熱フィンとして作用する凸部820等や、上記凹部又は溝等の構造物は、筐体104-2のうち、終端抵抗160等又は終端抵抗基板170を放熱する凸部330が設けられた筐体104-2の底面以外の、他の少なくとも一つの面に設けるものとすることができる。また、これらの構造物(凸部820等を含む)は、図7図8図9に示す位置に限らず、発熱電子部品が隣接して配されることが予想される筐体104-2の任意の部分に集中して配置したり、又は筐体104-2の全面に設けるものとすることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100、上述した第1及び第2の変形例に係る光変調器100-1及び100-2のいずれかの光変調器を搭載した光送信装置である。
【0052】
図11は、本実施形態に係る光送信装置1100の構成を示す図である。光送信装置1100は、光変調器1102と、光変調器1102に光を入射する光源1104と、変調信号生成部1106と、変調データ生成部1108と、を有する。
【0053】
光変調器1102は、上述した第1の実施形態、上述した第1の変形例、及び第2の変形例に係る光変調器100、100-1、及び100-2のいずれかであるものとすることができる。ただし、以下の説明においては、冗長な記載を避けて理解を容易にするため、光変調器1102として第1の実施形態に係る光変調器100が用いられているものとする。
【0054】
変調データ生成部1108は、外部から与えられる送信データを受信して、当該送信データを送信するための変調データ(例えば、送信データを所定のデータフォーマットに変換又は加工したデータ)を生成し、当該生成した変調データを変調信号生成部1106へ出力する。
【0055】
変調信号生成部1106は、光変調器1102に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路(例えば、高周波ドライバを含む)であり、変調データ生成部1108が出力した変調データに基づき、光変調器1102に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、光変調器1102に入力する。当該変調信号は、光変調器1102である光変調器100が備える光変調素子102の4つのRF電極150、152、154、156に対応する4つのRF信号から成る。
【0056】
当該4つのRF信号は、光変調器1102である光変調器100の4つのリードピン120、122、124、126にそれぞれ入力され、中継基板130、132上の導体パターン140、142、144、146を介してRF電極150、152、154、156にそれぞれ印加される。
【0057】
これにより、光源1104から出力された光は、光変調器1102により変調され、変調光となって光送信装置1100から出力される。
【0058】
特に、光送信装置1100では、光変調器1102として、第1の実施形態、上述した第1の変形例、及び第2の変形例に係る光変調器100、100-1、及び100-2のいずれかの光変調器を用いるので、当該光変調器内の終端抵抗160等の発熱を効率的に放熱して、安定且つ信頼性の高い、良好な光変調特性を確保することができる。その結果、光送信装置1100では、安定且つ信頼性の高い、良好な伝送特性を実現することができる。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る光変調器100は、光導波路と当該光導波路を伝搬する光波を制御する高周波電極150等とを備える光変調素子102を備える。また、光変調器100は、高周波電極150等に電気的に接続された終端抵抗160等と、終端抵抗160等が配された終端抵抗基板170と、光変調素子及び前記終端抵抗基板を収容する筐体104と、を有する。そして、筐体104の一の外部表面である例えば底面には複数の凸部が形成され、少なくとも1つの凸部300は、終端抵抗基板170が配置された筐体104内の位置に対し筐体104を挟んで対向する当該筐体104の外部表面の位置に形成されている。
【0060】
この構成によれば、光変調器100の内部に実装された終端抵抗160等による、光変調器100内部からの発熱を効果的に放熱することができる。
【0061】
また、光変調器100の凸部300は、筐体104内の終端抵抗基板170上に配された終端抵抗160等のそれぞれの位置に対し終端抵抗基板170及び筐体104を挟んで対向する当該筐体104の外部表面(例えば底面)の位置に形成された一つ又は複数の凸部で構成されるものとすることができる。
【0062】
この構成によれば、筐体104内における個々の終端抵抗の配置に合わせて一つ又は複数の凸部が設けられるので、放熱をより効果的に行うことができる。
【0063】
また、光変調器100では、凸部300は筐体104よりも低い熱抵抗値を有する材料で構成されるものとすることができる。この構成によれば、終端抵抗160等から発した熱を発散させることなく凸部300へ即座に導いて、筐体104外部へ放熱することができる。
【0064】
また、光変調器100の変形例として、光変調器100-2では、凸部300が設けられた一の外部表面である底面に隣接する筐体104-2の他の外部表面に、凸部800等が形成されている。また、当該凸部800は、凹部で代替することができる。この構成によれば、凸部800等は放熱フィンとして作用し、筐体104-2は放熱器として機能する。
【0065】
また、光変調器100の第1の変形例である光変調器100-1では、少なくとも一つの凸部である凸部300には、ネジ穴500等が設けられている。この構成によれば、凸部300から筐体104-1の外部へ放出する熱を、当該ネジ穴500等に挿入されるネジを介して、例えば回路基板のウラ面(光変調器100-1が実装される面に対向する面)の導体パターンまで伝達させることができる。これにより、熱伝達経路の設計自由度を向上して、より効果的な放熱を行うことができる。
【0066】
また、本発明は、光変調器100等を備える光送信装置1100である。この構成によれば、終端抵抗160の発熱を効率的に放熱して、安定且つ信頼性の高い、良好な光変調特性を確保して、良好な伝送特性を実現することができる。
【0067】
また、本発明は、光変調器100等を備える光送信装置1100であって、光変調器100等は、凸部330及び凸部920、924、926、928、930のいずれかが、電子部品が搭載された回路基板1000上に形成された導体パターン1020と接するように実装される。この構成によれば、終端抵抗160の発熱を更に効率的に放熱することができる。
【0068】
また、本発明は、光変調器100-1を備える光送信装置1100であって、光変調器100-1は、ネジ穴500、502、504、506、508、510、512、514に接続されたネジ614等のいずれかが、電子部品が搭載された回路基板600の裏面に形成された導体パターン632と接するように実装される。この構成によれば、終端抵抗160の発熱を更に効率的に放熱することができる。
【符号の説明】
【0069】
100、100-1、100-2、1102…光変調器、102…光変調素子、104、104-1、104-2…筐体、108、110…光ファイバ、114a、114a-1、114a-2…ケース、114b…カバー、120、122、124、126…リードピン、130、132…中継基板、140、142、144、146、420、630、632、1020、1320…導体パターン、150、152、154、156…RF電極(高周波電極)、160、162、164、166…終端抵抗、170…終端抵抗基板、300、302、304、306、320、322、330、330-1、800、802、804、806、808、810、820、822、824、826、828、830、902、906、920、922、924、926、928、930…凸部、310、312、314、316、500、502、504、506、508、510、512、514、912、916…ネジ穴、350…中心線、400、600、1000…回路基板、410、412、610、612、614、616、618、620、622、1010、1012…ネジ、1030…高周波ドライバ、1100…光送信装置、1104…光源、1106…変調信号生成部、1108…変調データ生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11