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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220906BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20220906BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20220906BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G21/14
G03G21/16 147
G03G15/00 303
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018144114
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020949
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】山田 正明
(72)【発明者】
【氏名】正路 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ谷 康功
(72)【発明者】
【氏名】服部 良雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 創
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138531(JP,A)
【文献】特開平05-006124(JP,A)
【文献】特開2014-219651(JP,A)
【文献】特開2010-145620(JP,A)
【文献】特開2004-205620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/14
G03G 21/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と、前記定着部材に被記録媒体を押圧して定着ニップを形成する加圧部材と、前記定着ニップよりも被記録媒体搬送方向下流側に配設された排出ローラ対と、前記排出ローラ対の作動を制御する制御手段とを備え、
前記排出ローラ対は、前記被記録媒体のトナー像が形成された面である表面側に配置された回転自在な第1搬送部材と、前記被記録媒体の裏面側に前記第1搬送部材と接触して配置された回転自在な第2搬送部材とを有し、
前記制御手段は、前記被記録媒体の搬送時において互いに同じ線速となるように前記第1搬送部材と前記第2搬送部材とを動作制御し、前記被記録媒体が所定の位置を占めたとき、前記第1搬送部材または前記第2搬送部材の何れか一方の線速が何れか他方の線速を上回るように前記第1搬送部材と前記第2搬送部材とを動作制御する画像形成装置
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記第1搬送部材または前記第2搬送部材の何れか一方を回転駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の駆動力を前記第1搬送部材または前記第2搬送部材の何れか他方に伝達する伝達状態または遮断する遮断状態を選択的に取り得る駆動力伝達手段とを有し、
前記制御手段は前記所定の位置で前記駆動力伝達手段を前記伝達状態から前記遮断状態に切り替えることを特徴とする画像形成装置
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記被記録媒体が袋体であり、前記所定の位置は前記袋体の開口部に対応した位置であることを特徴とする画像形成装置
【請求項4】
定着部材と、前記定着部材に被記録媒体を押圧して定着ニップを形成する加圧部材と、前記定着ニップよりも被記録媒体搬送方向下流側に配設された排出ローラ対と、を備え、
前記排出ローラ対は、前記被記録媒体のトナー像が形成された面である表面側に配置された回転自在な第1搬送部材と、前記被記録媒体の裏面側に前記第1搬送部材と接触して配置された回転自在な第2搬送部材とを有し、
前記被記録媒体の搬送時において互いに同じ線速となるように前記第1搬送部材と前記第2搬送部材とを駆動し、前記被記録媒体が前記定着ニップを通過中の所定の位置を占めたとき、前記第1搬送部材または前記第2搬送部材の何れか一方の線速が何れか他方の線速を上回るように前記第1搬送部材と前記第2搬送部材とを動作させることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包袋や封筒等の、部材を二枚以上貼り合わせて作成した被記録媒体に対して、トナー像を熱や圧力によって定着する技術が知られている。このような定着技術において、様々な被記録媒体の種類に応じて被記録媒体の表裏面の各線速を制御することは、トナー像を被記録媒体に対して的確に定着する上で有効であることも知られている。被記録媒体の表裏面の各線速をそれぞれ制御することは、定着ニップを構成するローラ対それぞれの線速を制御することにより達成される。
【0003】
しかし、このような構成の定着装置では、封筒のような二枚以上の部材が接合された被記録媒体を通紙する際には、ローラ対を構成する各ローラの線速が変わるために不送りや画像乱れ、搬送しわが発生するという問題点があった。
上述の問題点を解決すべく、通紙時における前記ローラ対を構成する定着部材及び加圧部材の各線速を適切に設定することにより、定着部材及び加圧部材の寿命を劣化させることなく複数種類の被記録媒体に対応する定着装置が提案されている(例えば「特許文献1」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の技術を含めた今までの熱及び圧力をかけてトナー像を被記録媒体に対して定着する技術では、包袋や封筒等の二枚以上の部材が接合された被記録媒体を通紙する際に包袋や封筒の開口部分が熱や圧力によって貼り付いてしまい、画像形成が成された被記録媒体に対して他の部材を封入する際に開口部分を開くために時間がかかってしまうという問題点がある。
本発明は上述の問題点を解決し、包袋や封筒等の二枚以上の部材が接合された被記録媒体において、定着動作時における開口部分の貼り付きを防止することが可能な画像形成装置及び画像形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、定着部材と、前記定着部材に被記録媒体を押圧して定着ニップを形成する加圧部材と、前記定着ニップよりも被記録媒体搬送方向下流側に配設された排出ローラ対と、前記排出ローラ対の作動を制御する制御手段とを備え、前記排出ローラ対は、前記被記録媒体のトナー像が形成された面である表面側に配置された回転自在な第1搬送部材と、前記被記録媒体の裏面側に前記第1搬送部材と接触して配置された回転自在な第2搬送部材とを有し、前記制御手段は、前記被記録媒体の搬送時において互いに同じ線速となるように前記第1搬送部材と前記第2搬送部材とを動作制御し、前記被記録媒体が所定の位置を占めたとき、前記第1搬送部材または前記第2搬送部材の何れか一方の線速が何れか他方の線速を上回るように前記第1搬送部材と前記第2搬送部材とを動作制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被記録媒体の搬送時において制御手段は第1搬送部材と第2搬送部材とを互いに同じ線速となるように動作制御し、被記録媒体が定着ニップを通過中に所定の位置を占めたとき、第1搬送部材または第2搬送部材の何れか一方の線速が何れか他方の線速を上回るように第1搬送部材と第2搬送部材とを動作制御するので、被記録媒体にしわが発生することを防止しつつ、被記録媒体として封筒が用いられた場合に開口部を容易に開放可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に用いられる定着装置の概略図である。
図3】本発明の一実施形態における定着ニップでの封筒の挙動を説明する概略図である。
図4】封筒に生じるしわを説明する概略図である。
図5】本発明の一実施形態における定着装置の駆動機構を説明する概略図である。
図6】本発明の一実施形態における定着装置の動作制御を説明する概略図である。
図7】本発明の一実施形態に用いられる制御手段のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタを示している。同図においてカラープリンタ1は、装置本体2の下部に被記録媒体である用紙Pが収納される複数の給紙トレイ4,5を有する給紙部3を有しており、給紙部3の上方に画像形成を行う画像形成部6を有している。
画像形成部6には、像担持体でありイエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に対応した複数の感光体ドラム7Y,7C,7M,7Kを有する作像ユニット8Y,8C,8M,8K、複数のローラ9,10,11に巻き掛けられた可撓性を有する中間転写体である中間転写ベルト12を有する中間転写ユニット13、各感光体ドラム7の外周面に静電潜像を形成する光書込ユニット14、用紙Pに未定着トナー画像T(図2参照)を定着させる定着装置15等が配設されている。給紙部3から定着装置15までの間には、用紙Pを搬送する複数の搬送ローラ対等を備えた用紙搬送路16が形成されている。
【0009】
作像ユニット8Y,8C,8M,8Kは、感光体ドラム7Y,7C,7M,7K、各感光体ドラム7の周囲にそれぞれ配設された帯電装置、現像装置、感光体クリーニング装置、除電装置等を有しており、それぞれが装置本体2に対して個別に着脱可能に構成されている。図示しない各現像装置には、それぞれイエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの各色トナーが収納されており、各現像装置内の各色トナーが減ると図示しないトナーボトルから補給用トナーがそれぞれ供給される。
【0010】
中間転写ベルト12は各感光体ドラム7に対向配置されており、図示しない駆動モータによって各ローラ9,10,11の何れかが駆動されることにより、図1において反時計回り方向に走行駆動される。中間転写ベルト12の内側であって各感光体ドラム7と対向する位置には、一次転写用の転写バイアスが印加される一次転写手段としての一次転写ローラ17Y,17C,17M,17Kがそれぞれ配設されている。
ローラ9と対向する位置には、中間転写ベルト12の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置18が配設されている。中間転写ベルト12、各ローラ9,10,11、各一次転写ローラ17、及びベルトクリーニング装置18はユニットとして一体構成されており、装置本体2に対して着脱可能に構成されている。
【0011】
中間転写ベルト12を介してローラ11と対向する位置には、二次転写バイアスが印加される二次転写手段としての二次転写ローラ19が中間転写ベルト12に接触する態様で配設されている。
光書込ユニット14は、光変調されたレーザ光を各感光体ドラム7の表面に照射して各感光体ドラム7の表面にそれぞれ対応する色毎の静電潜像を形成する。本実施形態において、光書込ユニット14は各作像ユニット8の下方に配置されており、装置下方から装置上方に向けてレーザ照射が行われるように構成されている。
【0012】
次に、カラープリンタ1の動作について説明する。
画像形成動作が開始されると、各感光体ドラム7が図示しない駆動手段の作動によりそれぞれ時計回り方向に回転駆動され、各感光体ドラム7の外周面が図示しない各帯電装置によってそれぞれ所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体ドラム7の外周面は光書込ユニット14からのレーザ光によってそれぞれ照射され、各感光体ドラム7の外周面に各色毎の静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム7に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの各色情報に色分解した単色の画像情報である。このように形成された静電潜像は、各感光体ドラム7と各現像装置との間を通過する際に、各現像装置内の各色トナーによってトナー画像としてそれぞれ可視像化される。
【0013】
中間転写ベルト12が図示しない駆動手段からの駆動力によって反時計回り方向に走行すると、各作像ユニット8のうち最上流位置を占める作像ユニット8Yにおいて感光体ドラム7Yの外周面上に形成されたイエロトナー画像が一次転写ローラ17Yの作用によって中間転写ベルト12上に一次転写される。この一次転写されたイエロトナー画像には、他の作像ユニット8C,8M,8Kにおいて形成されたシアントナー画像、マゼンタトナー画像、ブラックトナー画像が重畳転写され、これにより中間転写ベルト12上にはフルカラーのトナー像が担持される。
トナー画像が転写された後、各感光体ドラム7の外周面上に付着した残留トナーは、各感光体クリーニング装置によって各感光体ドラム7の外周面上から除去される。クリーニングがなされた各感光体ドラム7は、除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0014】
一方、給紙部3からは給紙ローラ20または給紙ローラ21の回転により給紙トレイ4または給紙トレイ5から用紙Pが給送され、給送された用紙Pは用紙搬送路16に送り込まれる。送り込まれた用紙Pは、二次転写ローラ19の用紙搬送方向上流側に配置されたレジストローラ対22において一時停止され、所定のタイミングでローラ11と二次転写ローラ19との対向部である二次転写ニップ部に送られる。このとき二次転写ローラ19には中間転写ベルト12上に担持されたトナー画像のトナー帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加され、これにより中間転写ベルト12上のフルカラートナー像が用紙P上に一括して二次転写される。
【0015】
フルカラートナー像転写された用紙Pは定着装置15へと搬送され、定着装置15を通過する際に加えられる熱と圧力とによって用紙P上のフルカラートナー像が溶融されて用紙P上に定着される。フルカラートナー像が定着された用紙Pは、用紙搬送路16の終端に配置された排出ローラ対23に向けて搬送され、排出ローラ対23によって機外へと排出されて装置本体2の上部に配設された排紙トレイ24上に排出積載される。
フルカラートナー像を用紙Pに転写した後の中間転写ベルト12は、ベルトクリーニング装置18によって残留トナーをクリーニングされて次の画像形成に備えられる。
【0016】
次に、定着装置15について説明する。図1及び図2に示すように定着装置15は、定着ローラ25及び加熱ローラ26及びテンションローラ27に巻き掛けられて走行駆動される耐熱性を備えた無端状の定着ベルト28と、定着ベルト28を介して定着ローラ25に圧接配置された加圧ローラ29とを有している。この定着ベルト28と加圧ローラ29とで用紙P上の未定着トナー画像Tを用紙Pに対して定着させる定着ニップNが形成され、定着ニップを通過した用紙Pの表面には定着トナー画像T1が形成される。定着装置15は、装置本体2に対して着脱可能に構成されている。
【0017】
定着ローラ25及び加熱ローラ26は、それぞれの回転中心位置が固定となるようにそれぞれの支軸を定着装置15のケーシング35に回転自在に支持されており、各軸間の間隔を一定に保たれている。テンションローラ27は、定着ベルト28の内側の空間内にその周面が定着ベルト28の内周面に接する態様で配置されている。テンションローラ27には、圧縮ばね30により定着ベルト28を内側から外側に向けて押圧する向きの付勢力が付与されている。
【0018】
定着ローラ25はゴム等の弾性体で構成されており、加熱ローラ26は中空の金属ローラで構成されている。加熱ローラ26の内部には、加熱ローラ26の軸線方向に延在する一対の発熱体31a,31bからなる加熱源としてのヒータユニット31が配設されている。発熱体としては、ハロゲンヒータあるいはこれ以外のヒータ等が用いられる。なお、ヒータユニット31を構成するヒータは2個に限定されず、1個でも3個以上であってもよい。また、加熱源として加熱ローラ26の内部ではなく外部に配設されて加熱ローラ26を加熱する構成であってもよい。定着ローラ25はモータ32によって回転駆動され、定着ローラ25の回転に伴い定着ベルト28が図2において反時計回り方向に走行駆動されると共に、定着ベルト28に圧接している加圧ローラ29が図2において時計回り方向に従動回転する。
【0019】
次に、上述した定着装置15に被記録媒体として用紙Pに代えて封筒33を通紙する場合を説明する。封筒33は、図3に示すように、片面画像形成時において画像面側である表面側用紙33aと非画像面側である裏面側用紙33bとの2枚の用紙を重ねて構成されており、定着ローラ25の軸線方向における両端部及び用紙搬送方向先端部が共に糊付けされ用紙搬送方向後端部のみに開放された開口部を有している。
封筒33が定着ニップNを移動する際に、定着ベルト28の表面28aと加圧ローラ29の表面29aの線速度v1,v2の線速差Δvはほぼ0であり、未定着トナー画像Tを担持している表面側用紙33aの線速度vf1に対して、裏面側用紙33bの線速度vf2が線速差Δvf≒0として通紙される。
【0020】
仮に線速差Δvが存在すると、定着ニップNに封筒33のような二枚以上の部材を重ねて端面が接合された被記録媒体が到達すると、封筒33の前記軸線方向の中央部にのみ表面側用紙33aと裏面側用紙33bとに位置ずれが蓄積し、結果として図4に示すように封筒33の表面に肋骨状のしわ34が発生してしまう。
線速差Δvがほぼ0で定着ニップNを通過する封筒33ではしわ34は生じないものの、表面側用紙33aと裏面側用紙33bとの二枚の用紙に位置ずれが生じないため、定着装置15における加熱と加圧とによって開口部33cが密着してしまう。封筒33は画像形成装置から排出された後すぐに中身を挿入する場合が多いため、開口部33cが密着して貼り付くと迅速に封入作業を行うことができない。
そこで、開口部33c付近で任意に線速差Δvを生じさせ、二枚の用紙が密着しないよう位置ずれが生じれば、開口部33cの貼り付きを抑制することができる。以下に、本発明の構成及び動作を説明する。
【0021】
図5は、定着装置15の駆動機構を示している。定着ローラ25の支軸25aには入力ギヤ36が取り付けられており、入力ギヤ36には駆動ギヤ37及び従動ギヤ38がそれぞれ噛合している。駆動ギヤ37には駆動手段としてのモータ32が接続されており、モータ32からの回転駆動力を受けて駆動ギヤ37が回転し、これに噛合した入力ギヤ36が回転することによって定着ローラ25が回転駆動され、結果として定着ベルト28が走行駆動される。
従動ギヤ38は加圧ローラ29の支軸29bに取り付けられており、支軸29bと従動ギヤ38との間には一方向電磁クラッチ39が介装されている。一方向電磁クラッチ39は、支軸29bに内輪部位が一体結合され外輪部位は従動ギヤ38に固定されている。一方向電磁クラッチ39は電気信号に基づいてオンオフされ、オンの場合には入力ギヤ36から従動ギヤ38への回転力の伝達を許容し、従動ギヤ38から入力ギヤ36への回転力の伝達を遮断する。これにより定着ローラ25に対して加圧ローラ29が滑ることを防止し、各ローラ25,29を同期して回転することができる。
【0022】
上述の構成により、定着ローラ25と加圧ローラ29とが同期して回転するので、定着ベルト28や定着ローラ25が加圧ローラ29と摩擦することによって痛むことを防止でき、これ等部材の耐久性を向上することができる。また、一方向電磁クラッチ39を有することにより定着ベルト28と加圧ローラ29との周速差を吸収することができ、搬送される封筒33にしわ34が生じることを防止することができる。
一方、一方向電磁クラッチ39がオフの場合には入力ギヤ36から従動ギヤ38への駆動伝達が行われず、定着ローラ25のみが回転駆動される。この結果、加圧ローラ29は駆動されずに定着ローラ25とは同期回転しなくなるため、定着ローラ25と加圧ローラ29との間で周速差が生じることとなる。
【0023】
上述した構成の定着装置15の本発明における動作を説明する。この動作の説明に先立ち、定着装置15の動作を制御する制御手段について説明する。
図6に示すように定着装置15の内部には、搬送されてくる封筒33の先端部を検知するセンサ40が配設されている。センサ40は封筒33の先端を検知すると、その検知信号を後述する制御手段41に向けて送信する。
図7は、本発明の一実施形態に用いられる制御手段41の制御ブロック図である。周知のマクロコンピュータからなり、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する制御手段41は、モータ32の駆動制御を行うと共にセンサ40から検知信号を受けて一方向電磁クラッチ39のオンオフ制御を行う。
【0024】
カラープリンタ1が起動されて図示しないプリントスイッチがオンされると、制御手段41からの指令によりモータ32が駆動されると共に一方向電磁クラッチ39がオンされる。これにより入力ギヤ36から従動ギヤ38へと回転力が伝達され、定着ベルト28が図6において反時計回り方向に走行駆動されると共に加圧ローラ29が定着ベルト28の移動速度と同期して回転駆動される。この構成により、定着ベルト28と加圧ローラ29とが同期して回転するので、定着ベルト28や定着ローラ25が加圧ローラ29と摩擦することによって痛むことを防止でき、これ等部材の耐久性を向上することができる。
【0025】
次に、被記録媒体として封筒33が用いられる場合を説明する。図2に示すように、未定着トナー画像Tが転写された封筒33は、定着装置15のケーシング35内に送り込まれ、ケーシング35内に設けられたガイド部材42によって定着ニップNへと案内される。制御手段41は予め封筒33の搬送方向長さL1(図6参照)を認識しており、さらに封筒33の先端がセンサ40によって検知されたタイミングから、封筒33が定着装置15内のどの位置を搬送されているかを認識している。そして制御手段41は、封筒33の後端である開口部33cから所定長さL2(図6参照)の位置までは、一方向電磁クラッチ39をオンさせた状態で定着ニップNに対して封筒33を通過させる。
【0026】
このとき一方向電磁クラッチ39がオンされていることから定着ベルト28と加圧ローラ29とが同期して回転しており、定着ベルト28と加圧ローラ29との周速差が生じないことから封筒33へのしわ34の発生を効果的に防止することができる。
そして封筒33の後端からL2の位置までが定着ニップNを通過したことを制御手段41が認識すると、制御手段41は指令を送り一方向電磁クラッチ39をオフさせる。これにより入力ギヤ36からの回転駆動力が従動ギヤ38に伝達されなくなり、定着ローラ25のみが回転駆動されて加圧ローラ29は走行する定着ベルト28の移動に伴い従動回転するため、定着ローラ25と加圧ローラ29との間には周速差が生じることとなる。
【0027】
上述のように封筒33の開口部33cの近傍において定着ローラ25と加圧ローラ29との間に周速差が生じると、封筒33の開口部33cを構成する表面側用紙33aと裏面側用紙33bとの間で位置ずれが生じ、開口部33cにおける両用紙33a,33bの密着が抑制される。この構成中、定着ローラ25が第1搬送部材として、加圧ローラ29が第2搬送部材として、一方向電磁クラッチ39が駆動力伝達手段としてそれぞれ機能している。
【0028】
上述の構成より本発明によれば、封筒33の搬送時において制御手段41は定着ローラ25と加圧ローラ29とを互いに同じ線速となるように動作制御し、封筒33が定着ニップNを通過中に所定の位置を占めたとき、定着ローラ25の線速が加圧ローラ29の線速を上回るように定着ローラ25と加圧ローラ29とを動作制御するので、封筒33にしわが発生することを防止しつつ封筒33の開口部33cを容易に開放可能とすることができる。
上記実施形態では、駆動ギヤ37からの駆動力を、入力ギヤ36を介して定着ローラ25に伝達させ、さらに従動ギヤ38を介して加圧ローラ29に伝達させる構成を示したが、入力ギヤ36を介して加圧ローラ29に伝達させ、さらに従動ギヤ38を介して定着ローラ25に伝達させる構成としてもよい。
【0029】
上記実施形態では、制御手段41によって動作制御される制御対象物として、第1搬送部材である定着ローラ25と第2搬送部材である加圧ローラ29とを示した。しかし本発明が適用可能な制御手段41によって動作制御される制御対象物はこれに限られず、図1に示した排出ローラ対23であってもよい。この場合、排出ローラ対23のうちの何れか一方のローラを定着ローラ25と同様に、何れか他方のローラを加圧ローラ29と同様にそれぞれ動作制御することにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
上記実施形態及び各変形例では、液体吐出装置としてカラープリンタを用いた例を示したが、液体吐出装置としてはこれに限られず、プリンタ、ファクシミリ、複合機等にも本発明は適用可能である。また本実施形態及び変形例では、画像が形成される被記録媒体として封筒33を用いる構成を示したが、被記録媒体は封筒や包袋には限定されず、厚紙、ハガキ、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、OHPフィルム、樹脂フィルム等も含まれ、シート状を呈し画像形成可能な物質であればどのようなものを用いてもよい。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 画像形成装置
15 定着装置
23 排出ローラ対
25 第1搬送部材(定着ローラ)
29 第2搬送部材(加圧ローラ)
32 駆動手段(モータ)
33 被記録媒体(封筒)
33c 開口部
39 駆動力伝達手段(一方向電磁クラッチ)
41 制御手段
N 定着ニップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【文献】特開2011-191570号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7