(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】温度応答性共重合体の精製法
(51)【国際特許分類】
C08F 6/06 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
C08F6/06
(21)【出願番号】P 2018171731
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】今富 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博之
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-035528(JP,A)
【文献】特開2013-089454(JP,A)
【文献】特開2008-136895(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029882(WO,A1)
【文献】特開2006-280206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2、6-246、251-289
C12M1-3、C08J3
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対する下限臨界溶液温度(LCST)を有する温度応答性繰返し単位を10~90mol%含む温度応答性共重合体溶液を、下記工程(A)および(B)を含む方法で精製する方法。
(A)LCSTよりも低温の水に温度応答性共重合体溶液を滴下する工程
(B)(A)の水をLCSTよりも高温に温める工程
【請求項2】
請求項1記載の温度応答性共重合体溶液の溶媒が、水との相溶性を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
請求項1記載の温度応答性共重合体に、HLB値(グリフィン法)が0以上9以下の範囲にある疎水性繰返し単位を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1記載の温度応答性共重合体がブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1~3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載の温度応答性共重合体の数平均分子量(Mn)が1,000~1,000,000であることを特徴とする、請求項1~4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1記載の温度応答性共重合体が、(A)工程で水を含有するゲルとして析出することを特徴とする、請求項1~5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の温度応答性共重合体が、(B)工程で水に浮遊することを特徴とする、請求項1~6いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項7記載の(B)工程で水に浮遊した温度応答性共重合体を掬い取り回収することを特徴とする、請求項1~7いずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度応答性共重合体の回収を容易にする精製法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度応答性重合体は、ある温度を境に水に対する溶解性が変化する重合体である。温度変化は光、圧力、磁場などの外部環境に比べ、簡便に適用できるため注目されており、例えば温度応答性高分子であるN-イソプロピルアクリルアミド重合体は、細胞培養基材やドラッグデリバリーシステムの材料などに用いられている。N-イソプロピルアクリルアミド重合体は、高温域では疎水性であるが、下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature:LCST)である32℃よりも低温域において水和することで親水化する。
【0003】
上記現象の応用例として、温度応答性繰返し単位としてN-イソプロピルアクリルアミドを含む温度応答性共重合体を基材表面に被覆した細胞培養基材が特許文献1に開示されている。このような基材によれば、周囲環境の温度降下で被膜表面が親水化し、細胞を剥離させ回収することができる。
【0004】
上記温度応答性共重合体製造において、反応液からの精製では、反応に用いた未反応の単量体と溶媒を除くことを目的とする。一般的に温度応答性の単量体が水に可溶であるため、水を貧溶媒として用いた凝集沈殿法で精製することができる。しかしながら、水を用いた精製は、温度応答性共重合体が水和によりゲル状になり、温度応答性共重合体の回収が困難になることで収率が低下する問題や、未反応の単量体を含有してしまい純度が上がらない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、温度応答性共重合体の回収を容易にする精製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以上の点を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、水に対する下限臨界溶液温度(LCST)を有する温度応答性繰返し単位を含む温度応答性共重合体溶液を、LCSTよりも低温の水に滴下する工程と、水をLCSTよりも高温に温める工程を含む方法で、温度応答性共重合体の回収を容易にできることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は以下の態様を包含する。
【0008】
<1> 水に対する下限臨界溶液温度(LCST)を有する温度応答性繰返し単位を10~90mol%含む温度応答性共重合体溶液を、下記工程(A)および(B)を含む方法で精製する方法。
(A)LCSTよりも低温の水に温度応答性共重合体溶液を滴下する工程
(B)(A)の後、水をLCSTよりも高温に温める工程
<2> <1>記載の温度応答性共重合体溶液の溶媒が、水との相溶性を有することを特徴とする、<1>記載の方法。
<3> <1>記載の温度応答性共重合体に、HLB値(グリフィン法)が0以上9以下の範囲にある疎水性繰返し単位を含むことを特徴とする、<1>または<2>に記載の方法。
<4> <1>記載の温度応答性共重合体がブロック共重合体であることを特徴とする、<1>~<3>いずれかに記載の方法。
<5> <1>記載の温度応答性共重合体の数平均分子量(Mn)が1,000~1,000,000であることを特徴とする、<1>~<4>いずれかに記載の方法。
<6> <1>記載の温度応答性共重合体が、(A)工程で水を含有するゲルとして析出することを特徴とする、<1>~<5>いずれかに記載の方法。
<7> <1>記載の温度応答性共重合体が、(B)工程で水に浮遊することを特徴とする、<1>~<6>いずれかに記載の方法。
<8> <7>記載の(B)工程で水に浮遊した温度応答性共重合体を掬い取り回収することを特徴とする、<1>~<7>いずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
水に対する下限臨界溶液温度(LCST)を有する温度応答性繰返し単位を含む温度応答性共重合体溶液を、LCSTよりも低温の水に滴下する工程と、水をLCSTよりも高温に温める工程を含む方法で、温度応答性共重合体の回収を容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水に対する下限臨界溶液温度(LCST)を有する温度応答性繰返し単位は、例えば、N-エチルアクリルアミド(LCST=72℃)、N-シクロプロピルアクリルアミド(LCST=46℃)、N-イソプロピルアクリルアミド(LCST=32℃)、N-n-プロピルメタクリルアミド(LCST=22℃)、N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(LCST=28℃)、N-エトキシエチルアクリルアミド(LCST=35℃)、N,N-ジエチルアクリルアミド(LCST=32℃)、N-シクロプロピルメタクリルアミド(LCST=59℃)、N-イソプロピルメタクリルアミド(LCST=44℃)、N-n-プロピルメタクリルアミド(LCST=28℃)、N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(LCST=35℃)、N-メチル-N-エチルアクリルアミド(LCST=56℃)、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド(LCST=23℃)、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド(LCST=20℃)、またはN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(LCST=47℃)等からなる繰返し単位の重合体が例示できる。本発明における温度応答性共重合体は、前記温度応答性繰り返し単位を1種類のみ用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また水に対するLCSTを有するのであれば、前記温度応答性繰返し単位の他に、異なる繰返し単位を含んでもよい。温度応答性重合体の合成方法は特に限定はないが、株式会社エヌ・ティー・エス発行、“ラジカル重合ハンドブック”、p.161~225(2010)に記載の重合技術を用いて重合できる。尚、温度応答性以外の機能発現のため、温度応答性単量体からなる繰返し単位の他に、任意の単量体の繰返し単位を含んでもよい。共重合体の場合はランダム共重合体であっても、交互共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、グラフト共重合体であっても、またはタンパク質やDNAのように繰返し単位がある定まった配列をしていてもよい。
【0011】
本発明に用いる温度応答性共重合体の全繰返し単位における温度応答性繰返し単位の組成比は、10%以上90%以下の範囲にあり、より好ましくは20%以上80%以下である。10%未満の場合は温度応答の発現が低く、水をLCSTよりも高温に温めても、温度応答性共重合体が浮遊しないことがある。90%を超える場合はLCSTよりも低温でも高温でも温度応答性共重合体が析出しないことがある。
【0012】
本発明に用いる温度応答性共重合体には、特に限定はないが、温度応答性繰返し単位に加えて、HLB値(グリフィン法)が0以上9以下の範囲にある疎水性繰り返し単位、および/またはHLB値(グリフィン法)が9を超える親水性繰り返し単位を含んでいてもよい。LCSTよりも高温に温めた水中で温度応答性共重合体が析出する必要があることから、HLB値(グリフィン法)が0以上9以下の範囲にある疎水性繰り返し単位を含むことが好ましい。例示すれば、N―イソプロピルアクリルアミド(LCST=32℃)の温度応答性繰返し単位、n-ブチルアクリレート(HLB値=6.9)の疎水性繰返し単位、2-メトキシエチルアクリレート(HLB値=13.5)の親水性繰返し単位から成る温度応答性共重合体が挙げられるが、これに限定されない。
【0013】
本発明に用いる温度応答性共重合体の数平均分子量(Mn)は特に限定はないが、1,000以上1,000,000以下の範囲にあり、より好ましくは10,000以上1,000,000以下である。1,000未満の場合は水に析出しないことがある。
【0014】
本発明の温度応答性共重合体を含む溶液をLCSTよりも低温の水に滴下する工程で用いる水の温度は、温度応答性共重合体のLCSTよりも低ければよいが、2℃以上低いことが好ましく、5℃以上低いことがより好ましい。水の冷却方法は特に限定はなく、例えば、LCSTが室温を超える場合は室温で行い、LCSTが室温以下である場合は冷媒を用いて冷却してもよい。また水の量は特に限定はないが、単量体除去に影響することから、好ましくは温度応答性共重合体を含む溶液の3~50倍量であり、より好ましくは5~20倍量である。温度応答性共重合体を含む溶液を滴下する速度は特に限定はないが、単量体除去に影響することから、好ましくは1mL/min~10L/minであり、より好ましくは1mL/min~100mL/minである。
【0015】
本発明の水をLCSTよりも高温に温める工程で用いる水の温度は、温度応答性共重合体のLCSTよりも高ければよいが、2℃以上高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましい。水を高温に温める方法は特に限定はないが、例えば、LCSTが室温以下である場合は室温で行い、LCSTが室温を超える場合は熱媒を用いて温めてよい。
【0016】
本発明の水と相溶性を有する溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、2-メトキシエタノール、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。尚、本発明に用いる温度応答性共重合体およびその単量体は、水と相溶性を有する溶媒に溶解している必要がある。
【0017】
本発明のHLB値(HLB;Hydrophile-Lipophile Balance)とは、W.C.Griffin, Journal of the Society of Cosmetic Chemists, 1, 311(1949).に記載の、水と油への親和性の程度を表す値であり、0から20までの値を取り、0に近いほど疎水性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。計算によって決定する方法として、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法があるが、本発明においてはグリフィン法で計算した値を使用し、繰り返し単位中の親水部の式量と繰り返し単位の総式量を元に、下記の計算式で求めた。
HLB値=20×(親水部の式量)÷(総式量)
繰り返し単位中の親水部の定義として、スルホン部(-SO3-)、ホスホノ基部(-PO3-)、カルボキシル基部(-COOH)、エステル部(-COO-)、アミド部(-CONH-)、イミド部(-CON-)、アルデヒド基部(-CHO)、カルボニル基部(-CO-)、ヒドロキシル基部(-OH)、アミノ基部(-NH2)、アセチル基部(-COCH3)、エチレンアミン部(-CH2CH2N-)、エチレンオキシ部(-CH2CH2O-)、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ハロゲン化物イオン、酢酸イオンを例示することができる。
【0018】
繰り返し単位中の親水部の算出では、親水部を構成する原子が、他の親水部を構成する原子として重複してはならない。繰り返し単位中のHLB値の算出例を以下に記載した。例えば、2-メトキシエチルアクリレート(分子量:130.14)の場合、親水部は、エステル部が1部およびエチレンオキシ部が1部であり、親水部の分子量は88.03であるから、HLB値は13.5である。n-ブチルアクリレート(分子量:128.17)の場合、親水部は、エステル部が1部であり、親水部の分子量は44.01であるから、HLB値は6.9である。
【0019】
さらに、本発明の共重合体を構成する各ブロックが、異なる単量体(単量体1、単量体2・・・)からなる共重合体である場合は、それぞれの単量体が重合して生成する繰り返し単位の共重合体中の比率(mol%)を分析し、下記の計算式で算出することができる。
【0020】
HLB値=HLB値1×比率1+HLB値2×比率2+・・・・
ここで、HLB値1は単量体1が重合して生成する重合体のHLB値であり、組成1は単量体1が重合して生成する繰り返し単位の共重合体中の比率(mol%)であり、HLB値2は単量体2が重合して生成する重合体のHLB値であり、組成2は単量体2が重合して生成する繰り返し単位の共重合体中の比率(mol%)である。
【0021】
HLB値の取扱いは、小数点以下第2位を四捨五入して表示される小数点以下第1位までの数字から9以下であるかを判断する。
【0022】
HLB値(グリフィン法)が0以上9以下の範囲にある疎水性繰返し単位は、例えば、スチレン(HLB値=0.0)やその誘導体、メチルメタクリレート(HLB値=8.8)、エチルアクリレート(HLB値=8.8)、エチルメタクリレート(HLB値=7.7)、n-プロピルアクリレート(HLB値=7.7)、n-プロピルメタクリレート(HLB値=6.9)、n-ブチルアクリレート(HLB値=6.9)、n-ブチルメタクリレート(HLB値=6.2)等のアルキル(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0023】
本発明のLCSTよりも低温の水に滴下する工程では、温度応答性共重合体が水を含有するゲルとして析出する。ゲルとして析出しない場合は、水よりも比重の小さい溶媒か空気を含有しており、純度低下を招くため好ましくない。
【0024】
本発明の水をLCSTよりも高温に温める工程では、温度応答性共重合体がLCST以上で脱水和することで比重が小さくなり、水に浮遊する。水に浮遊しないものは温度応答性を発現する程度の低いものであり、回収は好ましくない。
【0025】
本発明の水をLCSTよりも高温に温める工程で浮遊した温度応答性共重合体は、掬い取り回収することができる。ろ紙やろ布を用いたろ過で温度応答性共重合体を回収することもできるが、水に水可溶性重合体や単量体が含まれることでろ紙が詰まり、ろ過に長時間を要すため好ましくない。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、断りのない限り、試薬は市販品を用いた。
【0027】
<共重合体の組成、未反応単量体含有率>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM-ECZ400S/LI)を用いたプロトン核磁気共鳴分光(1H-NMR)スペクトル分析より求めた。
【0028】
<共重合体の分子量、分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置は東ソー(株)製 HLC-8320GPCを用い、カラムは東ソー(株)製 TSKgel SuperAWM-Hを2本用い、カラム温度を40℃に設定し、溶離液は10mMトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む2,2,2-トリフルオロエタノールを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mLで調製して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリメタクリル酸メチル(Sigma-Aldrich社製)を用いた。
【0029】
<温度応答性共重合体反応液Iの調製>
100mL2口フラスコに2-メトキシエチルアクリレート(MEA)0.650g(5mmol)を加え、さらに4-シアノ-4-[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを31.8mg(100μmol)とアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン10mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で24時間加熱撹拌した。
【0030】
1回目の加熱撹拌後、上記にn-ブチルアクリレート(BA,HLB値=6.9)3.845g(30mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン5mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0031】
2回目の加熱撹拌後、上記にN-イソプロピルアクリルアミド(IPAAm,LCST=32℃)7.355g(65mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン35mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
温度応答性共重合体反応液Iの重合物の組成比はMEA/BA/IPAAm(mol%)=5/30/65、未反応単量体は4%であった。
【0032】
<温度応答性共重合体反応液IIの調製>
300mL2口フラスコに2-メトキシエチルアクリレート(MEA)3.900g(30mmol)を加え、さらに4-シアノ-4-[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを63.6mg(200μmol)とアゾビスイソブチロニトリル3.2mg(20μmol)と1,4-ジオキサン20mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で24時間加熱撹拌した。
【0033】
1回目の加熱撹拌後、上記にn-ブチルアクリレート(BA,HLB値=6.9)7.690g(60mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル3.2mg(20μmol)と1,4-ジオキサン10mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0034】
2回目の加熱撹拌後、上記にN-イソプロピルアクリルアミド(IPAAm,LCST=32℃)12.448g(110mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル3.2mg(20μmol)と1,4-ジオキサン70mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0035】
温度応答性共重合体反応液IIの重合物の組成比はMEA/BA/IPAAm(mol%)=15/30/55、未反応単量体は3%であった。
【0036】
<温度応答性共重合体反応液IIIの調製>
100mL2口フラスコにN-イソプロピルアクリルアミド(IPAAm,LCST=32℃)7.355g(65mmol)を加え、さらに4-シアノ-4-[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを31.8mg(100μmol)とアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン10mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
1回目の加熱撹拌後、上記にn-ブチルアクリレート(BA,HLB値=6.9)0.256g(2mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル3.2mg(20μmol)と1,4-ジオキサン2mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で8時間加熱撹拌した。
【0037】
温度応答性共重合体反応液IIIの重合物の組成比はBA/IPAAm(mol%)=3/97、未反応単量体は1%であった。
[実施例1]
200mLビーカーに、20℃の純水100mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液I 10mLをパスツールピペットを用いて滴下し、ゲル状の沈殿物を得た。水温を40℃に加温したところ、ゲル状の沈殿物が浮遊した。浮遊物はスパチュラを用いて500mLナス型フラスコに回収した。エバポレーターにより回収物の水分を除去し、温度応答性共重合体を得た。未反応単量体は未検出であり、MEA/BA/IPAAm(mol%)=5/29/66、Mn=7.2万、Mw/Mn=2.0、収率83%で回収できた。
[比較例1]
200mLビーカーに、20℃の純水100mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液I 10mLをパスツールピペットを用いて滴下し、ゲル状の沈殿物を得た。ゲル状の沈殿物をろ紙(定量分析用5種A)を用い減圧ろ過した。ろ紙上のゲル状粘性物を500mLナス型フラスコに回収した。エバポレーターにより回収物の水分を除去し、温度応答性共重合体を得た。未反応単量体は未検出であり、MEA/BA/IPAAm(mol%)=5/28/67、Mn=7.2万、Mw/Mn=2.0であったが、収率9%であり収率が大きく低下した。
[比較例2]
200mLビーカーに、20℃の純水100mLを加え、40℃に加温した。マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液I 10mLをパスツールピペットを用いて滴下し、浮遊物を得た。浮遊物はスパチュラを用いて500mLナス型フラスコに回収した。エバポレーターにより回収物の水分を除去し、温度応答性共重合体を得た。MEA/BA/IPAAm(mol%)=5/32/63、Mn=6.8万、Mw/Mn=2.2、収率81%であったが、未反応単量体は2%であり、精製が十分に行えなかった。
[実施例2]
1Lビーカーに、20℃の純水600mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液II 30mLをパスツールピペットを用いて滴下し、ゲル状の沈殿物を得た。水温を40℃に加温したところ、ゲル状の沈殿物が浮遊した。浮遊物をスパチュラを用いて500mLナス型フラスコに回収した。回収物を入れ、エバポレーターにより水分を除去し、温度応答性共重合体を得た。未反応単量体は未検出であり、MEA/BA/IPAAm(mol%)=19/42/40、Mn=6.7万、Mw/Mn=2.0、収率79%で回収できた。
[比較例3]
1Lビーカーに、20℃の純水600mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液II 30mLをパスツールピペットを用いて滴下し、ゲル状の沈殿物を得た。ゲル状の沈殿物をろ紙(定量分析用5種A)を用い減圧ろ過した。ろ紙上のゲル状粘性物を500mLナス型フラスコに回収した。エバポレーターにより回収物の水分を除去し、温度応答性共重合体を得た。未反応単量体は未検出であり、MEA/BA/IPAAm(mol%)=19/43/38、Mn=6.8万、Mw/Mn=2.0であったが、収率12%であり収率が大きく低下した。
[比較例4]
1Lビーカーに、20℃の純水600mLを加え、40℃に加温した。マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液II 30mLをパスツールピペットを用いて滴下し、浮遊物を得た。浮遊物はスパチュラを用いて500mLナス型フラスコに回収した。エバポレーターにより回収物の水分を除去し、温度応答性共重合体を得た。MEA/BA/IPAAm(mol%)=19/34/47、Mn=6.6万、Mw/Mn=2.0、収率88%であったが、未反応単量体は1%であり、精製が十分に行えなかった。
[比較例5]
200mLビーカーに、20℃の純水100mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液III 10mLをパスツールピペットを用いて滴下したが、沈殿物は得られなかった。水温を40℃に加熱しても沈殿物あるいは浮遊物は得られず、ろ過を行ったが、収率は0%であった。
[比較例6]
200mLビーカーに、20℃の純水100mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液III 10mLをパスツールピペットを用いて滴下したが、沈殿物は得られず、ろ過を行ったが、収率は0%であった。
[比較例7]
200mLビーカーに、20℃の純水100mLを加え、40℃に加温した。マグネチックスターラーで撹拌しながら温度応答性共重合体反応液III 10mLをパスツールピペットを用いて滴下したが、沈殿物あるいは浮遊物は得られず、ろ過を行ったが、収率は0%であった。
【0038】