(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】マスク検査装置及びマスク検査方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20220906BHJP
【FI】
G03F1/84
(21)【出願番号】P 2018173891
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】清水 幸毅
(72)【発明者】
【氏名】西村 理恵子
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-039012(JP,A)
【文献】特開2015-169564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0002874(US,A1)
【文献】特開2013-045372(JP,A)
【文献】特開2007-317960(JP,A)
【文献】国際公開第2007/102192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00
H01L 21/027
H01J 37/30
G01N 21/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象のマスクパターンを測定した画像である元画像を取得する画像取得部と、
前記元画像に対してフィルタ処理を行い、参照画像を生成するフィルタ処理部と、
前記元画像と前記参照画像との相関値を計算する相関値計算部と、
を備え、
前記相関値に基づいて前記マスクパターンを評価し
、
前記フィルタ処理部は二値化処理を行い、前記参照画像を生成することを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
前記画像取得部は、異なる描画条件で描画した複数のマスクパターンの元画像を取得し、
前記フィルタ処理部は、複数の元画像のそれぞれについて参照画像を生成し、
前記相関値計算部は、前記複数の元画像のそれぞれについて、対応する参照画像との相関値を計算することを特徴とする請求項
1に記載のマスク検査装置。
【請求項3】
異なる描画条件で描画した複数のマスクパターンを測定した第1画像のそれぞれに対し、複数のフィルタ条件でフィルタ処理を行い、フィルタ条件毎の第1参照画像を生成する工程と、
前記第1画像と前記第1参照画像との第1相関値を計算する工程と、
前記複数のマスクパターンのリニアリティの評価結果と、フィルタ条件毎の第1相関値とを比較し、前記リニアリティの評価結果と同じ傾向を持つ第1相関値が得られるフィルタ条件を決定する工程と、
異なる描画条件で描画した複数のマスクパターンの第2画像のそれぞれに対し、前記決定したフィルタ条件でフィルタ処理を行い、第2参照画像を生成する工程と、
前記第2画像と前記第2参照画像との第2相関値を計算する工程と、
前記第2相関値に基づいて描画条件を決定する工程と、
を備えるマスク検査方法。
【請求項4】
前記第1参照画像及び前記第2参照画像は二値画像であることを特徴とする請求項
3に記載のマスク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク検査装置及びマスク検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するために、縮小投影型露光装置を用いて、マスクに形成されたパターンをウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。マスクパターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、高い精度が求められている。そのため、様々な描画条件でパターンを描画し、描画結果を評価して、最適な描画条件を決定している。
【0003】
描画結果の評価として、例えばリニアリティの測定が行われている。従来、リニアリティを測定するパターンの座標調整を手動で行っているため、手間がかかっていた。また、マスクパターンの寸法をSEM(走査型電子顕微鏡)で測定する際に、パターン寸法によりチャージが発生し、リニアリティの測定結果に影響を及ぼすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-260163号公報
【文献】特開2014-81220号公報
【文献】特開2010-224114号公報
【文献】特開2007-317960号公報
【文献】特表2016-117104号公報
【文献】特開平10-19536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、描画したマスクパターンを定量的かつ自動的に評価できるマスク検査装置及びマスク検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によるマスク検査装置は、評価対象のマスクパターンを測定した画像である元画像を取得する画像取得部と、前記元画像に対してフィルタ処理を行い、参照画像を生成するフィルタ処理部と、前記元画像と前記参照画像との相関値を計算する相関値計算部と、を備え、前記相関値に基づいて前記マスクパターンを評価するものである。
【0007】
本発明の一態様によるマスク検査装置において、前記フィルタ処理部は二値化処理を行い、参照画像を生成する。
【0008】
本発明の一態様によるマスク検査装置において、前記画像取得部は、異なる描画条件で描画した複数のマスクパターンの元画像を取得し、前記フィルタ処理部は、複数の元画像のそれぞれについて参照画像を生成し、前記相関値計算部は、前記複数の元画像のそれぞれについて、対応する参照画像との相関値を計算する。
【0009】
本発明の一態様によるマスク検査方法は、異なる描画条件で描画した複数のマスクパターンを測定した第1画像のそれぞれに対し、複数のフィルタ条件でフィルタ処理を行い、フィルタ条件毎の第1参照画像を生成する工程と、前記第1画像と前記第1参照画像との第1相関値を計算する工程と、前記複数のマスクパターンのリニアリティの評価結果と、フィルタ条件毎の第1相関値とを比較し、前記リニアリティの評価結果と同じ傾向を持つ第1相関値が得られるフィルタ条件を決定する工程と、異なる描画条件で描画した複数のマスクパターンの第2画像のそれぞれに対し、前記決定したフィルタ条件でフィルタ処理を行い、第2参照画像を生成する工程と、前記第2画像と前記第2参照画像との第2相関値を計算する工程と、前記第2相関値に基づいて描画条件を決定する工程と、を備えるものである。
【0010】
本発明の一態様によるマスク検査方法において、前記第1参照画像及び前記第2参照画像は二値画像である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、描画したマスクパターンを定量的かつ自動的に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るマスク検査装置の概略図である。
【
図2】同実施形態に係るマスク検査方法を説明するフローチャートである。
【
図3】同実施形態に係るマスク検査方法を説明するフローチャートである。
【
図4】測定画像及び二値化した参照画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るマスク検査装置の概略図である。マスク検査装置は、演算部1及び記憶部2を備え、電子ビーム描画装置によって描画条件を変えて描画したパターンの測定画像が入力され、測定画像を評価し、好適な描画条件を決定するものである。
【0014】
記憶部2は例えばハードディスク装置であり、事前に描画条件を変えてパターンを描画したマスクをSEMで測定した複数の画像と、各画像のリニアリティの測定結果とを格納する。
【0015】
演算部1は、フィルタ選択部11、二値化処理部12、相関値計算部13、二値化方法決定部14、画像取得部15及び描画条件決定部16を有する。演算部1の各機能は、ソフトウェアで構成されてもよいし、ハードウェアで構成されてもよい。なお、画像取得部15は必ずしも検査装置内に備える必要はなく、別途検査装置外で画像を取得してもよい。
【0016】
演算部1の各部の処理を
図2、
図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0017】
フィルタ選択部11が、画像の二値化処理で使用されるフィルタを選択する(ステップS101)。例えば、フィルタ選択部11は、メディアンフィルタ、移動平均フィルタ及びガウシアンフィルタから、ノイズフィルタの種類を選択する。移動平均フィルタの場合は移動平均の範囲を選択し、ガウシアンフィルタの場合は幅を選択する。
【0018】
フィルタ選択部11は、膨張処理、縮小処理の回数、処理の順番、近傍計算で着目する画素数(例えば周辺4画素又は8画素)等を選択する。また、フィルタ選択部11は、例えば判別分析法で二値化の閾値を自動的に決定する。閾値は明示的な指定を行ってもよい。
【0019】
二値化処理部12(フィルタ処理部)が、ステップS101で選択されたフィルタを使用し、記憶部2に格納されている複数の画像の各々に対し、二値化処理を行う(ステップS102)。相関値計算部13は、
図4に示すように、二値化処理前の元画像G1と、ステップS102で二値化処理を行った参照画像(二値画像)G2との相関値を計算する(ステップS103)。相関値(相関係数)は画像毎に算出される。
【0020】
ここでは一例として相関を求める際にZero-mean Normalized Cross-Correlationと呼ばれる方法を使うが、他の方法を使って求めてもよい。
【0021】
画像の二値化処理及び相関値の計算を、複数のフィルタ条件で行う(ステップS101~S104)。例えば、
図5に示すように、ノイズフィルタの種類や、膨張処理、縮小処理の回数、順番、画素数等を変えて、それぞれのフィルタ条件で各画像の相関値を算出する。
【0022】
二値化方法決定部14は、記憶部2に格納されている各画像のリニアリティの測定結果と、ステップS103で算出した相関値とを比較し、リニアリティ測定結果に合う相関値が得られるフィルタ条件を検出し、このフィルタ条件を二値化方法として決定する(ステップS105)。
【0023】
図6は、描画条件を変えて描画した5個のマスクパターンの画像について、異なるフィルタ条件で二値化処理を行い、元画像と二値化した参照画像との相関値を計算した例を示す。画像は、リニアリティの測定結果の順に記載しており、“00006.JPG”が最もリニアリティが高く、“00042.JPG”が最もリニアリティが低い。
【0024】
相関(r=0、m=242)は、移動平均処理なし、8近傍膨張処理2回+8近傍縮小処理4回+8近傍膨張処理2回で二値化処理した場合の相関値を示す。“8近傍”とは、ある画素に対してその画素そのものと、その周辺8画素の画素値を利用することを示す。
【0025】
相関(r=0、m=2)は、移動平均処理なし、8近傍縮小処理2回+8近傍膨張処理2回で二値化処理した場合の相関値を示す。
【0026】
相関(r=5、m=0)は、半径5の移動平均処理で二値化処理した場合の相関値を示す。
【0027】
相関(r=5、m=2)は、半径5の移動平均処理、8近傍縮小処理2回+8近傍膨張処理2回で二値化処理した場合の相関値を示す。
【0028】
図6の例では、表の上側ほどリニアリティが高い。相関(r=0、m=242)と相関(r=0、m=2)が表の上側ほど相関値が高く、リニアリティと同様の傾向を持つ。そのため、二値化方法決定部14は、相関(r=0、m=242)のフィルタ条件、又は相関(r=0、m=2)のフィルタ条件を二値化方法として決定する。相関(r=0、m=2)の方が相関(r=0、m=242)よりも簡易なフィルタ処理であるため、相関(r=0、m=2)のフィルタ条件を二値化方法として決定することが好ましい。
【0029】
画像取得部15が、評価対象の画像をSEM3から取得する(ステップS201)。評価対象の画像は、描画条件を変えて描画した複数のマスクパターンの画像である。
【0030】
二値化処理部12が、ステップS105で決定した二値化方法を用いて、取得した複数の画像の各々に対し、二値化処理を行う(ステップS202)。例えば、移動平均処理なし、8近傍縮小処理2回+8近傍膨張処理2回で二値化処理を行う。相関値計算部13が、各画像について、二値化処理前の元画像と、ステップS202で二値化処理を行った参照画像との相関値を計算する(ステップS203)。
【0031】
ステップS105で決定した二値化方法で二値化した画像と元画像との相関値は、リニアリティと同じ傾向を持つ。そのため、ステップS203で算出された相関値が高いものほど、リニアリティが高いものとなると期待される。描画条件決定部16は、ステップS203で算出された相関値が最も高い画像に対応する描画条件を、マスクパターンの描画に好適な条件として決定する(ステップS204)。
【0032】
このように、本実施形態によれば、描画したマスクパターンの元画像と、元画像を二値化した参照画像との相関値を用いて、描画パターンを定量的かつ自動的に評価できる。
【0033】
元画像と、元画像を二値化した参照画像との相関値を計算するため、設計画像等からの参照画像の作成が不要である。設計画像から参照画像を作成する場合、相関値を算出するにあたり、評価画像との位置合わせに手間がかかるが、本実施形態では元画像を二値化した画像を参照画像とするため、位置合わせの手間がかからず、太さが変わっても相関値に影響しない。また、画像にコンタミネーション等が写っている場合でも、パターン評価への影響はほとんどない。
【0034】
上記実施形態では二値化処理を行う例について説明したが、二値化方法はこれらの例に限定されるものではない。また、二値化に限定されるものではなく、多値化処理でもよい。例えば、非描画部分、描画部分の内部、描画部分の外周部分(外周部分が明るく測定されることがあるため)の三値で処理してもよい。
【0035】
最小解像力の評価、最適ドーズ条件出し評価など、リニアリティ以外の条件の評価に用いることも可能である。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 演算部
2 記憶部
3 SEM
11 フィルタ選択部
12 二値化処理部
13 相関値計算部
14 二値化方法決定部
15 画像取得部
16 描画条件決定部