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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】入力装置、プログラムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
G06F3/01 510
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018176886
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020047162
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智幸
【審査官】三吉 翔子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/051606(WO,A1)
【文献】特開2015-130167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置の操作を行う入力装置であって、
機械的な振動を発生する複数の振動手段と、
前記入力装置の動きを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記入力装置の動きを検出した場合に、前記入力装置の電池の情報を取得して、前記電池の残量を判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した前記電池の残量に応じた、前記複数の振動手段において前記入力装置の長さ方向の一端から他端へ振動が移行する時間を設定して、前記複数の振動手段を制御する制御手段と
を含む、入力装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段が検出した動きに応じた振動パターンによって前記振動手段の動作を制御する、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記振動手段の振動量を制御する、請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記入力装置は、ペン型形状であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項5】
機械的な振動を発生する複数の振動手段を備え、情報処理装置の操作を行う入力装置が実行するプログラムであって、前記入力装置を、
前記入力装置の動きを検出する検出手段、
前記検出手段が前記入力装置の動きを検出した場合に、前記入力装置の電池の情報を取得して、前記電池の残量を判定する判定手段、
前記判定手段が判定した前記電池の残量に応じた、前記複数の振動手段において前記入力装置の長さ方向の一端から他端へ振動が移行する時間を設定して、前記複数の振動手段を制御する制御手段
として機能させるプログラム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出手段が検出した動きに応じた振動パターンによって前記振動手段の動作を制御する、請求項に記載のプログラム。
【請求項7】
機械的な振動を発生する複数の振動手段を備え、情報処理装置の操作を行う入力装置の動作を制御する方法であって、
前記入力装置の動きを検出するステップと、
前記検出するステップにおいて前記入力装置の動きを検出した場合に、前記入力装置の電池の情報を取得して、前記電池の残量を判定するステップと、
前記判定するステップにおいて判定した前記電池の残量に応じた、前記複数の振動手段において前記入力装置の長さ方向の一端から他端へ振動が移行する時間を設定して、前記複数の振動手段を制御するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
前記制御するステップは、前記検出するステップにおいて検出した動きに応じた振動パターンによって前記振動手段の動作を制御する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、プログラムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン端末などに表示される画面を大型ディスプレイに表示し、当該ディスプレイを操作することで手書き文字の入力や、端末の操作を行うシステムが開発されている。このようなシステムは、電子黒板やIWB(Interactive White Board)などとも呼ばれる。
【0003】
上記のシステムでは、電子ペンやスタイラスペンなどとして参照される、ディスプレイ上での操作の用に供するペン型形状の入力装置を備えることが一般的である。このような入力装置には、種々の回路とともに、バッテリなどの電源が備えられている。
【0004】
ところで、各種の装置においてバッテリの残量を通知する方法としては、装置にインジケータを設けることで使用者に通知する方法がよく知られている。一方で、上述したような入力装置は、手に持って操作することから、小型であることが好ましいが、インジケータを設けると装置が大きくなり、また、外観を損なう虞がある。
【0005】
この点につき、特許第6256097号公報(特許文献1)では、ペン装置から送信される電磁波に基づく受信信号の振幅または周波数の変化率を判定する電子端末装置が開示されている。特許文献1によれば、電子端末装置が、受信信号の振幅または周波数の変化率が所定の値よりも大きいか否かを判定することで、ペン装置の電池の残量が低下している旨を音声または画面表示によって通知することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、電子端末装置が通知を行うことから、ペン装置単体を起動して電池残量を知りたい場合には、不便が生じる。また、受信信号の振幅などの変化を契機にして音声や画面表示にて通知することから、プレゼンテーションや会議などの進行を妨げる恐れがある。
【0007】
そのため、使用者の操作を契機として、直感的な理解がしやすい電池残量通知をする技術が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、電池の残量を容易に把握することを可能とする入力装置、プログラムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、情報処理装置の操作を行う入力装置であって、
機械的な振動を発生する複数の振動手段と、
前記入力装置の動きを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記入力装置の動きを検出した場合に、前記入力装置の電池の情報を取得して、前記電池の残量を判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した前記電池の残量に応じた振動パターンによって前記振動手段を制御する制御手段と
を含む、入力装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明によれば、電池の残量を容易に把握することを可能とする入力装置、プログラムおよび方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一般的な電子黒板システムのハードウェア構成の概略図。
図2】本実施形態の入力装置に含まれるハードウェア構成を示す図。
図3】本実施形態の入力装置に含まれるソフトウェアブロック図。
図4】本実施形態において電池残量の通知を要求する動作の例を示す図。
図5】入力装置の姿勢に応じた仮想的なインクの動きの例を示す図。
図6】本実施形態における仮想インクの動きと振動子の動作の対応との例を示す図。
図7】本実施形態の入力装置が電池残量を通知する処理を示すフローチャート。
図8】本実施形態における入力装置の電池残量に対応する振動子の動作パラメータの例を示すテーブル。
図9】本実施形態における各振動子が振動するタイミングチャート。
図10】他の好ましい実施形態における各振動子が振動するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜その説明を省略するものとする。
【0013】
図1は、一般的な電子黒板システムのハードウェア構成の概略図である。図1に示す電子黒板システムは、電子黒板15として参照される情報処理装置と、入力装置10とを含んで構成される。本実施形態の電子黒板システムでは、電子黒板15の画面上に種々の画像を表示し、入力装置10を用いることで、入力、描画、選択などの操作を画面上で行うことができる。なお、電子黒板15は、パソコン端末などの他の情報処理装置と接続される構成であってもよく、また、入力装置10は、パソコン端末などを操作する構成であってもよい。
【0014】
入力装置10は、スタイラスペンや電子ペンなどと呼ばれる、電子黒板15の操作を行う装置である。本実施形態の入力装置10は、電子黒板15の画面に入力装置10の先端部を接触させることで、当該画面上の位置を指示する入力操作を行うことができる。また、入力装置10は、先端部をペン先に見立てて、画面に押圧する力に基づいて、描画する線の太さを制御する構成とすることができる。さらに、入力装置10は、マウスなどのポインティングデバイスと同様に、ボタンを備えて構成されてもよく、これによってクリックなどに相当する操作を行うことが可能な構成であってもよい。
【0015】
入力装置10は、電子黒板15と通信可能に構成され、上記の種々の操作を電子黒板15に送信することで、電子黒板15の動作や画面の表示を制御することができる。一般的な入力装置10は、利便性の観点から、電子黒板15との通信を無線によって行う。以下に説明する本実施形態の入力装置10も、電子黒板15と無線通信をするものとして説明を行う。
【0016】
また以下では、入力装置10は、説明の便宜のために、図1に示すようなペン型形状であることを想定する。また、入力装置10の長さ方向の端部の一方を便宜上「ペン先部」とし、ペン先部の反対側の端部を「ペン尻部」としてそれぞれ参照する。
【0017】
次に、入力装置10のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態の入力装置10に含まれるハードウェア構成を示す図である。入力装置10は、制御部201と、電池202と、センサ203と、振動子204と、通信I/F205と、操作I/F206とを含んで構成され、各ハードウェアはバスを介して接続されている。
【0018】
制御部201は、入力装置10の動作を制御するプログラムを実行し、所定の処理を行う装置である。制御部201は、例えば入力装置10のボタン操作などを処理し、電子黒板15に操作信号を送信する処理を行うことができる。また、制御部201は、後述するように、電池202の残量を判定する処理や、当該判定結果を使用者に通知する処理などを行うことができる。
【0019】
電池202は、入力装置10を構成する各種ハードウェアに対して電力を供給する電源である。好ましい実施形態においては、電池202は、入力装置10に備えられる充電式の電池であって、充電することで繰り返し利用できるものを採用することができる。但し、電池202の種類は特に制限されるものではなく、乾電池などのように取り外して交換が可能なものであってもよい。
【0020】
センサ203は、入力装置10の傾き、姿勢、動きなどを検出するためのセンサであり、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサまたはこれらの組み合わせで構成される。3軸の加速度センサは、3軸の加速度成分を検出することができる。また、3軸のジャイロセンサは、3軸の角速度を検出することができる。センサ203が検出する入力装置10の姿勢の時間的な変化を求めることで、入力装置10の揺動運動や往復直線運動などを検出することができる。
【0021】
振動子204は、電気エネルギーや電気信号を機械的な運動に変換することで、振動を発生する装置であり、本実施形態の振動手段を構成する。振動子204は、例えば、振動モータ、バイブレータ、リニア振動アクチュエータなどとして参照される。振動子204が振動する大きさは、入力される電圧の大きさや電気信号の周波数などによって制御することができる。本実施形態における入力装置10は、複数の振動子204を含んで構成される。
【0022】
通信I/F205は、赤外線通信やBluetooth(登録商標)などによって、電子黒板15と通信するためのインターフェースである。入力装置10は、通信I/F205を介して、ペン先部の接触、押圧に関する情報信号や、ボタン操作などを電子黒板15に送信する。
【0023】
操作I/F206は、入力装置10の操作を受け付けるインターフェースである。入力装置10に対して行われる操作の例としては、入力装置10が備えるボタンの押下や、入力装置10のペン先部を電子黒板15の画面に接触させ、押圧する操作などが挙げられる。
【0024】
以上、本実施形態の入力装置10に含まれるハードウェア構成について説明した。次に、本実施形態における各ハードウェアによって実行される機能手段について、図3を以て説明する。図3は、本実施形態の入力装置10に含まれるソフトウェアブロック図である。
【0025】
入力装置10は、装置姿勢検出部301、電池残量判定部302、振動制御部303、操作受付部304、信号送信部305、振動パターン格納部306の各機能手段を含む。以下に、各機能手段の詳細について説明する。
【0026】
装置姿勢検出部301は、センサ203が検出する加速度や角速度に基づいて、入力装置10の傾きなどの3次元的な姿勢を検出し、本実施形態の検出手段を構成する。また、装置姿勢検出部301は、入力装置10の姿勢の時間的な変化に基づいて、入力装置10が振られたり、揺らされたりしたなどの運動状態を検出することもできる。
【0027】
電池残量判定部302は、電池202の残量を検出し、その残量を段階的に評価して判定し、本実施形態の判定手段を構成する。例えば、電池残量判定部302は、電池202の残量が70%以上である場合には、電池残量レベルが「高」であると判定し、電池202の残量が20%~69%である場合には、電池残量レベルが「中」であると判定し、電池202の残量が20%未満である場合には、電池残量レベルが「低」であると判定する構成とすることができる。なお、上述した電池残量判定部302が判定する電池残量レベルは、実施形態を限定するものではなく、上述したような区分に限らず、任意に設定することができる。
【0028】
振動制御部303は、振動子204を所定の振動パターンで振動するように制御し、本実施形態の制御手段を構成する。なお、振動制御部303は、入力装置10が備える複数の振動子204について、それぞれ独立に振動を制御することができ、これによって、入力装置10のステータスを使用者に通知することができる。
【0029】
操作受付部304は、操作I/F206を介して入力される操作を受け付け、本実施形態の受付手段を構成する。操作受付部304は、受け付けた操作を信号処理し、信号送信部305に転送する。信号送信部305は、通信I/F205を制御し、操作受付部304が出力する種々の操作信号を電子黒板15などに送信し、本実施形態の送信手段を構成する。
【0030】
振動パターン格納部306は、電池残量レベルと、振動子204が振動するパターンとを対応付けて格納し、本実施形態の記憶手段を構成する。振動パターン格納部306には、振動子204の動作パラメータを格納することができ、振動制御部303が各パラメータを読み出すことで振動子204を適切に動作させることができる。
【0031】
なお、上述したソフトウェアブロックは、制御部201が本実施形態のプログラムを実行することで、各ハードウェアを機能させることにより、実現される機能手段に相当する。また、各実施形態に示した機能手段は、全部がソフトウェア的に実現されても良いし、その一部または全部を同等の機能を提供するハードウェアとして実装することもできる。
【0032】
本実施形態の入力装置10においては、当該装置の使用者の要求に応じて、所定の振動で以て電池残量を通知する。使用者による要求の形態は種々のものがあるが、例えば入力装置10に所定の動きを与えることを契機として、電池残量を通知する構成とすることができる。図4は、本実施形態において電池残量の通知を要求する動作(以下、「残量通知要求動作」として参照する)の例を示す図である。
【0033】
図4(a)、(b)は、それぞれ残量通知要求動作の第1の例と第2の例である。図4(a)では、把持部を回転軸として、ペン先部とペン尻部を円周方向に往復する動作を示している。また、図4(b)では、入力装置10を長さ方向に往復させる動作を示している。図4に示す動作は、液体の内容量を確認するための動作として一般に行われ得る動作と同様の動作であり、例えば筆記具のインクの残量を確認する場合などにも行われることがある。
【0034】
本実施形態の入力装置10は、電池残量に対応する量の仮想的なインクが含まれているものと想定する。そして図4に示す動作を行うことによって、あたかも入力装置10内でインクが揺れているかの如く当該入力装置を振動させる。これによって、入力装置10の使用者は、入力装置10の電池残量を直感的に把握することができる。また、アナログ的な動作によって電池残量を通知できるという、興趣性に富んだ通知方法を提供することが可能となる。
【0035】
図5は、入力装置10の姿勢に応じた仮想的なインク(以下、「仮想インク11」として参照する)の動きの例を示す図である。図5(a)は入力装置10のペン先を下にして傾けた図を、図5(b)は入力装置10をほぼ水平にした図を、図5(c)は入力装置10のペン尻部を下にして傾けた図をそれぞれ例示している。なお、以下の説明で述べる仮想インク11は、実際の入力装置10に含まれる実体的ものではなく、説明の便宜のために仮定したものである。
【0036】
図5(a)に示すように、入力装置10のペン先部を下にして傾けた場合、仮想インク11は重力によってペン先側に集まるものと見做すことができる。また、図5(b)に示すように、入力装置10をほぼ水平にした場合には、仮想インク11は、入力装置10の下側に集まるものと見做すことができる。さらに、図5(c)に示すように、入力装置10のペン尻側を下にして傾けた場合には、仮想インク11は重力によってペン尻側に集まるものと見做すことができる。
【0037】
ここで、図4のように入力装置10を振るような動作を行うと、仮想インク11は入力装置10の内部を連続的に動くものと見做すことができる。したがって、入力装置10は残量通知要求動作を受けて、電池残量を判定して電池残量に対応した仮想インク量を設定し、当該仮想インク11が入力装置10の内部を揺れ動くように振動を制御することで、電池残量を通知することができる。図6は、本実施形態における仮想インク11の動きと振動子204の動作の対応との例を示す図である。
【0038】
図6では、入力装置10には4つの振動子204a~dが含まれ、長さ方向に配置されている例を示している。また、図6では、入力装置10の姿勢を、図5(b)の水平状態から、図5(c)のペン尻部を下に傾ける状態に移行した例を示しており、図6(a)から(d)にしたがって時間が経過する様子を例示している。なお、本実施形態における入力装置10に含まれる振動子204の数や配置は、図6に示すものに限定されない。振動子204の配置の他の例としては、振動子204を入力装置10の中心軸に対して円周方向にずらした配置などとしてもよい。
【0039】
図6(a)は、水平状態にあった入力装置10のペン尻部を下側に傾けた直後の仮想インク11の状態を例示している。入力装置10が水平状態であった場合には、仮想インク11の仮想的な液面はほぼ水平であったと見做すことができることから、図6(a)の状態に移行すると、ペン先部側の仮想インク11が重力によってペン尻部側に移動すると見做される。したがって、図6(a)のように、ペン先部側の振動子204aが振動する。
【0040】
その後、時間の経過とともに図6(a)の状態からさらに仮想インク11がペン尻部側に移動する。図6(b)では、仮想インク11の移動量が大きい領域にある振動子204bが振動する。さらに時間が経過すると同様にして、図6(c)、(d)のように、振動する振動子204がペン尻部側に移動していく。そして、図6(d)の状態になると、振動子204dが所定時間動作した後、振動を停止する。
【0041】
このようにして、入力装置10の内部にあると見なされる仮想インク11の動きに合わせて、入力装置10が振動することで、入力装置10の使用者に電池202の残量を通知することができる。なお、各振動子204a~dが振動する強さや振動を継続する時間などは、適宜設定することができる。また、上述した例では、各振動子が1つずつ別個に振動する例を示したが、複数の振動子が同時に振動することで、より実際の液体の動きに近い状態を表現する構成であってもよい。さらに、残量通知要求動作を行うことによる慣性によって仮想インク11が波うつように振動を制御する構成や、重力の影響を考慮して振動を制御する構成などとすることもでき、これらによって、現実感のある液体の動きを表現することができる。
【0042】
図7は、本実施形態の入力装置10が電池残量を通知する処理を示すフローチャートである。入力装置10は、ステップS700から処理を開始する。なお、入力装置10は、通常の態様で使用されており、図7に示す処理とは別に電子黒板15の操作を行う処理を行っているものとする。
【0043】
ステップS701では、装置姿勢検出部301は、入力装置10に対して残量通知要求動作があったか否かを判定して処理を分岐する。装置姿勢検出部301は、センサ203が検出する入力装置10に姿勢に基づいて、入力装置10になされた動作が残量通知要求動作であるか否かを判定することができる。ステップS701において、残量通知要求動作が行われていないと判定した場合には(NO)、ステップS701の処理を繰り返し、残量通知要求動作を待機する、ステップS701において、残量通知要求動作が行われたと判定した場合には(YES)、ステップS702に進む。
【0044】
電池残量判定部302は、ステップS702において、電池202の残量を取得し、続くステップS703において、電池残量のレベルを判定する。電池残量判定部302は、電池残量のレベルを、一例として「高」、「中」、「低」の3段階で判定することができる。上述の電池残量レベルは実施形態を限定するものではなく、3段階で判定されなくてもよい。したがって、3段階以外の数の段階で以て判定することとしてもよい。
【0045】
ステップS703において、電池残量レベルが「高」と判定された場合には、ステップS704に進む。ステップS704では、振動制御部303は、電池残量レベル「高」に対応するパラメータを振動パターン格納部306から読み出して、振動パターンを設定する。その後、ステップS707に進む。
【0046】
ステップS703において、電池残量レベルが「中」と判定された場合には、ステップS705に進む。ステップS705では、振動制御部303は、電池残量レベル「中」に対応するパラメータを振動パターン格納部306から読み出して、振動パターンを設定する。その後、ステップS707に進む。
【0047】
ステップS703において、電池残量レベルが「低」と判定された場合には、ステップS706に進む。ステップS706では、振動制御部303は、電池残量レベル「低」に対応するパラメータを振動パターン格納部306から読み出して、振動パターンを設定する。その後、ステップS707に進む。
【0048】
ステップS707では、振動制御部303が、ステップS704~S706で設定した振動パターンによって各振動子204を振動させる。ステップS707のあと、入力装置10は、ステップS708において、電池残量を通知する処理を終了する。
【0049】
図7に示した処理によって、入力装置10を把持する使用者は、振動のパターンによって表現される仮想インク11の動きに基づいて、当該仮想インク11の量を判断することができる。これによって、入力装置10の使用者は、電池残量を知ることができる。
【0050】
次に、振動子204の動作を制御するパラメータについて、図8を以て説明する。図8は、本実施形態における入力装置10の電池残量に対応する、振動子204の動作パラメータの例を示すテーブルである。図8には、図7と同様に、電池残量を3段階のレベルに分け、各レベルに対応する振動パターンを設定するテーブルを示す。図8に示すテーブルは、振動パターン格納部306に記憶され、振動制御部303によって適宜読み出される。
【0051】
例えば、電池残量が70%以上であれば、電池残量レベルを「高」とし、電池残量が20%~69%であれば、電池残量レベルを「中」とし、電池残量が20%未満であれば、電池残量レベルを「低」とする。このような場合において、仮想インク11の量は、電池残量レベルが高いほど多くなり、電池残量レベルが低いほど少ないものとして設定される。また、仮想インク11が移動する速度は、液体の粘性を表現するために、電池残量レベルが高いほど遅くなり、電池残量レベルが低いほど速いものとして設定される。
【0052】
上述のような仮想インク11の量や動きを表現するために、各振動子204は、電池残量レベルに応じたパラメータで動作が制御される。図8に示す振動子204の振動量フィールドには、各振動子が振動する強度のパラメータが格納される。また、図8に示す振動子204の切替待機時間フィールドには、各振動子の動作が切り替わる時間のパラメータが格納される。本実施形態では、各電池残量レベルに対して、以下のような振動パラメータが設定されている。
【0053】
すなわち、電池残量レベルが「高」の場合には、「振動量」が「大きい」、「切替待機時間」が「長い」として設定されている。また、電池残量レベルが「中」の場合には、「振動量」と「切替待機時間」が「中程度」として設定されている。さらに、電池残量レベルが「低」の場合には、「振動量」が「小さい」、「切替待機時間」が「短い」として設定されている。このようにして、仮想インク11の量や移動速度を設定して振動子204を振動させることで、使用者に対して、仮想インク11を電池残量に対応した重さで知覚させることができる。
【0054】
上記のような振動パターンが設定されている場合の各振動子204の動作について、図9を以て説明する。図9は、本実施形態における各振動子204が振動するタイミングチャートである。なお、図9における入力装置10は、図6と同様の構成であるものとし、仮想インク11がペン尻部側に移動する場合の振動パターンを例示している。以下の説明では、図6を適宜参照しながら説明する。
【0055】
まず、図9(a)について説明する。図9(a)は、電池残量レベルが高い場合、すなわち、仮想インク11の量が多く、移動速度が遅い場合の振動パターンの例を示している。
【0056】
入力装置10が、水平状態からペン尻部が下がった状態に移行すると、図6(a)~(d)のように、振動する振動子204は、ペン先部側からペン尻部側に向かって順次移行する。振動子204aは、一定時間振動した後、振動が停止し、振動子204bが振動を開始する。このとき、仮想インク11の量が多いことから、振動量が大きくなるように制御される。また、仮想インク11の移動速度は遅いことから、振動子204aが停止してから、切替待機時間Tabが経過した後に、振動子204bが振動を開始する。そして、振動子204bが一定時間振動した後に、振動が停止すると、同様にして切替待機時間Tbcが経過した後に、振動子204cが振動を開始する。以降、同様の処理を繰り返しながら、振動する振動子204が順次ペン尻部側に移行する。
【0057】
このような振動の動作とすることで、使用者に対してインク量が多いペンを持っているような知覚を与えることができる。これによって、使用者は、入力装置10の電池残量レベルが高いことを把握できる。
【0058】
次に図9(b)について説明する。図9(b)は、電池残量レベルが中の場合、すなわち、仮想インク11の量が中程度で、移動速度も中程度である場合の振動パターンの例を示している。
【0059】
入力装置10が、水平状態からペン尻部が下がった状態に移行すると、図9(a)と同様に、振動する振動子204が、ペン先部側からペン尻部側に向かって順次移行する。このとき、仮想インク11の量は中程度であることから、振動量が中程度となるように制御される。また、仮想インク11の移動速度も中程度であることから、次の振動子204に振動が移行するまでの切替待機時間Tabは、図9(a)に示したものよりも短くなるように制御される。以降、同様の制御によって、振動する振動子204を順次ペン尻側に移行する。
【0060】
このような振動の動作とすることで、使用者に対してインク量が中程度のペンを持っているような知覚を与えることができる。これによって、使用者は、入力装置10の電池残量レベルが中であることを把握できる。
【0061】
次に図9(c)について説明する。図9(c)は、電池残量レベルが低い場合、すなわち、仮想インク11の量が少なく、移動速度が速い場合の振動パターンの例を示している。
【0062】
入力装置10が、水平状態からペン尻部が下がった状態に移行すると、図9(a)、(b)と同様に、振動する振動子204が、ペン先部側からペン尻部側に向かって順次移行する。このとき、仮想インク11の量が少ないことから、振動量が小さくなるように制御される。また、仮想インク11の移動速度が速いことから、次の振動子204に振動が移行するまでの切替待機時間Tabは、図9(b)に示したものよりもさらに短くなるように制御される。以降、同様の制御によって、振動する振動子204を順次ペン尻側に移行する。
【0063】
このような振動の動作とすることで、使用者に対してインク量が少ないペンを持っているような知覚を与えることができる。これによって、使用者は、入力装置10の電池残量レベルが低いことを把握できる。なお、電池残量がなくなった場合には、振動子204を振動させる電力を供給することもできなくなるので、残量通知要求動作をしても振動子204が振動せず、使用者は電池残量がないことを認識できる。
【0064】
図9では、本実施形態における典型的な動作の例を説明した。しかしながら、図9の動作は一例であって、実施形態を限定するものではなく、入力装置10は、図9に示す以外の振動パターンで制御されてもよい。図10は、他の好ましい実施形態における各振動子204が振動するタイミングチャートである。
【0065】
図10(a)には、図9における切替待機時間に相当する時間に、隣接する振動子204を同時に動作させる例を示している。このような動作において、Tabにおける振動子204aと振動子204bとを、通常よりも振動量を小さくして、同時に動作させる。また、他の振動子204も同様に動作させることで、仮想インク11の移動がより滑らかなものとして表現することができる。
【0066】
また、図10(b)には、振動子204を振動させる周波数によって振動量の大きさを制御する例を示している。すなわち、各振動子204が個別に動作する時間には、高い周波数で動作し、図9における切替待機時間に相当する時間(Tabなど)には、隣接する振動子204を低い周波数で同時に動作させる制御を行う。図10(b)のように動作させることで、図10(a)の場合と同様に、仮想インク11の移動がより滑らかなものとして表現することができる。
【0067】
さらに、図10(c)には、各振動子の振動量の大きさを、振動子ごとに制御する例を示している。例えば、図10(c)に示すように、時間の経過とともに振動子204a,204b,204c,204dの順で振動が移行する場合に、徐々に振動量を大きくする制御とすることができる。このような動作によって、重力によって加速する仮想インク11を表現することができ、より現実感のある液体の動きを表現できる。
【0068】
ここまで、本実施形態の入力装置10の振動パターンの制御について図9図10を以て詳細に説明した。しかしながら上述したものは一例であって実施形態を限定するものではなく、すなわち、入力装置10の動作が、実際の液体により近い動きとなるように制御されてもよい。例えば、ペン先部側が下になるような残量通知要求動作であれば、振動子204は、図9などとは逆の順序で動作する。また、図4のように、残量通知要求動作が入力装置10を往復するような動作である場合には、振動する各振動子204が往復するような動作としてもよい。さらに、複数の振動子204について振動量を調整しながら同時に動作するように制御してもよい。このように、各振動子204を種々のパターンで振動させることで、使用者により現実的な液体の動きを知覚させることができ、電池残量を興趣がある効果によって通知することができる。
【0069】
以上、説明した本発明の実施形態によれば、電池の残量を容易に把握することを可能とする入力装置、プログラムおよび方法を提供することができる。
【0070】
上述した本発明の実施形態の各機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)等で記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD-ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROM等の装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0071】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10…入力装置、11…仮想インク、15…電子黒板、201…制御部、202…電池、203…センサ、204…振動子、205…通信I/F、206…操作I/F、301…装置姿勢検出部、302…電池残量判定部、303…振動制御部、304…操作受付部、305…信号送信部、306…振動パターン格納部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【文献】特許第6256097号公報
図1
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図9
図10