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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】接離機構、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220906BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20220906BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G21/16 147
G03G21/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018223764
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020086287
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】南野 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 公浩
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】富田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 理
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103447(JP,A)
【文献】特開2018-072792(JP,A)
【文献】特開2018-123951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで相手部材に対して接離部材を接近離間させるカム部材と、
前記カム部材と一緒に回転する検知対象部材と、
検知部における前記検知対象部材の有無を検知する検知手段と、
を備え、
前記検知対象部材の特定範囲が前記検知部を通過してから所定の時間経過後に前記カム部材の回転停止指示がなされる接離機構であって、
前記相手部材に対する前記接離部材の接近動作又は離間動作を行う際に、前記検知対象部材の特定範囲が前記検知部を通過してから前記カム部材の回転停止指示がなされるまでの前記所定の時間は、そのときの前記接近動作又は前記離間動作の際に前記検知対象部材の特定範囲が前記検知部を通過する時間に基づいて設定されることを特徴とする接離機構。
【請求項2】
前記相手部材に対して前記接離部材が接近する際と離間する際の一方における前記カム部材の回転停止指示のタイミングを、タイマーによる時間計測のタイミングに基づいて決定し、他方における前記カム部材の回転停止指示のタイミングを、前記検知手段による前記検知対象部材の検知タイミングに基づいて決定する請求項1に記載の接離機構。
【請求項3】
前記検知手段を1つだけ備える請求項2に記載の接離機構。
【請求項4】
前記カム部材を回転駆動させる駆動源として、DCモータを備える請求項1から3のいずれか1項に記載の接離機構。
【請求項5】
前記カム部材へ駆動力を減速して伝達する遊星歯車減速機構を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の接離機構。
【請求項6】
定着回転体と、
定着回転体に対して加圧される加圧回転体と、
前記定着回転体及び前記加圧回転体の少なくとも一方を他方に対して接近離間させる接離機構と、
を備える定着装置において、
前記接離機構として、請求項1から5のいずれか1項に記載の接離機構を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
画像を形成する画像形成部と、
請求項1から5のいずれか1項に記載の接離機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カム部材を回転させることで相手部材に対して接離部材を接近離間させる接離機構、これを備える定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に搭載される定着装置や転写装置などにおいては、互いに対向するローラ同士などを接近離間させる接離機構を備えるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2007-164106号公報)には、トナー画像を中間転写ベルトに転写させるための一次転写ローラを、これに対向する感光体ドラムに接離させる接離制御装置が開示されている。
【0004】
この接離制御装置においては、接離手段を駆動させる駆動手段の個体差や経年変化などに起因する接離位置のばらつきを抑制するために、接離手段が所定の変化をするまでの時間を測定し、その測定結果に基づいて駆動手段を停止させるまでの駆動時間を設定するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の接離制御装置においては、駆動時間を設定するための制御を、印刷準備動作(イニシャライズ処理)中に行い、次の印刷準備動作が行われるまで、保存された設定値に基づいて駆動手段の制御を行うようにしている。しかしながら、接離動作のばらつきは、駆動手段の個体差や経年変化だけに限らず、例えば、装置の設置環境の変化や、ユニット装置の交換など、種々の要因によって生じ得る。このため、印刷準備動作を終えてから次の印刷準備動作が行われるまでに、装置の設置環境などが変化すると、接離動作のばらつきが発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、回転することで相手部材に対して接離部材を接近離間させるカム部材と、前記カム部材と一緒に回転する検知対象部材と、検知部における前記検知対象部材の有無を検知する検知手段と、を備え、前記検知対象部材の特定範囲が前記検知部を通過してから所定の時間経過後に前記カム部材の回転停止指示がなされる接離機構であって、前記相手部材に対する前記接離部材の接近動作又は離間動作を行う際に、前記検知対象部材の特定範囲が前記検知部を通過してから前記カム部材の回転停止指示がなされるまでの前記所定の時間は、そのときの前記接近動作又は前記離間動作の際に前記検知対象部材の特定範囲が前記検知部を通過する時間に基づいて設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検知対象部材の特定範囲が検知部を通過してからカム部材の回転停止指示がなされるまでの所定の時間が、その直前に検知対象部材の特定範囲が検知部を通過する時間に基づいて設定されることで、カム部材の回転停止指示がなされる直前にカム部材の回転速度が変化したとしても、その変化に伴う停止位置のばらつきを抑制することができ、カム部材の回転停止位置の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の斜視図である。
図3】定着装置の側面図である。
図4】定着装置が備える接離機構の側面図である。
図5】接離機構の駆動系の概略構成図である。
図6】接離機構の制御系のブロック図である。
図7】脱圧動作を示す図である。
図8】脱圧動作のフローチャートである。
図9】加圧動作を示す図である。
図10】加圧動作のフローチャートである。
図11】第1イニシャライズ動作を示す図である。
図12】第1イニシャライズ動作を示す図である。
図13】第1イニシャライズ動作のフローチャートである。
図14】第2イニシャライズ動作を示す図である。
図15】第2イニシャライズ動作を示す図である。
図16】第2イニシャライズ動作のフローチャートである。
図17】別の駆動系の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。まず、図1を参照して、画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0011】
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式のモノクロレーザプリンタである。なお、本発明は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいは、これらのいずれか2つ又は3つの機能を備える複合機であってもよい。また、モノクロ画像形成装置に限らず、カラー画像形成装置であってもよい。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置1には、画像を形成する画像形成部2と、記録媒体としての用紙Pを供給する記録媒体供給部3と、供給された用紙Pに画像を転写する転写部4と、用紙Pに転写された画像を定着する定着装置5と、画像が定着された用紙Pを装置外に排出する排出部6と、が設けられている。
【0013】
画像形成部2は、ドラム状の感光体7と、感光体7の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ8と、感光体7の表面を露光して潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置9と、感光体7の表面にトナー(現像剤)を供給して潜像を可視画像化する現像手段としての現像ローラ10と、感光体7の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード11と、を備えている。
【0014】
印刷動作開始の指示があると、画像形成部2において、感光体7が回転を開始し、帯電ローラ8によって感光体7の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置9が感光体7の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像ローラ10からトナーが供給され、感光体7上にトナー画像が形成される。
【0015】
感光体7上に形成されたトナー画像は、転写部4に配置された転写ローラ15と感光体7との間の転写ニップにおいて用紙Pに転写される。この用紙Pは、記録媒体供給部3から供給されたものである。記録媒体供給部3では、給紙カセット12に収容されている用紙Pが給紙ローラ13によって1枚ずつ送り出される。送り出された用紙Pは、タイミングローラ対14によって感光体7上のトナー画像とタイミングを合わせて転写ニップへ搬送される。そして、転写ニップにおいて、感光体7上のトナー画像が用紙Pに転写される。また、トナー画像の転写が行われた後、感光体7上に残留するトナーは、クリーニングブレード11によって除去される。
【0016】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置5へ搬送される。そして、定着装置5において、用紙Pが定着ローラ21と加圧ローラ22との間を通過する際に加熱及び加圧されることで、トナー画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、排出部6に搬送され、排紙ローラ対16によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0017】
次に、図2図6に基づき、定着装置5の構成について説明する。
【0018】
図2は、定着装置5の斜視図、図3は、定着装置5の側面図である。また、図4は、定着装置5が備える接離機構26の側面図、図5は、接離機構26の駆動系の概略構成図、図6は、接離機構26の制御系のブロック図である。
【0019】
図2及び図3に示すように、定着装置5は、用紙に画像を定着する定着回転体としての定着ローラ21と、定着ローラ21に加圧される加圧回転体としての加圧ローラ22と、定着ローラ21を加熱する加熱部材としてのハロゲンヒータ23と、各ローラ21,22を支持する支持部材としての一対の側板24と、定着ローラ21に対して加圧ローラ22を加圧する加圧機構25と、定着ローラ21に対して加圧ローラ22を接離させる接離機構26と、を主な構成要素としている。
【0020】
加圧機構25は、定着ローラ21に対して加圧ローラ22を加圧する加圧部材としての加圧レバー27と、加圧レバー27を加圧方向に付勢する付勢部材としての加圧バネ28と、を備えている。加圧レバー27及び加圧バネ28は、加圧ローラ22の両端部側にそれぞれ1つずつ設けられている。加圧レバー27は、その一端部が側板24の下部に設けられた支軸29に取り付けられ、支軸29を中心に図3の矢印E方向に揺動可能に構成されている。加圧バネ28は、支軸29側とは反対側の加圧レバー27の端部と側板24の上部との間に取り付けられており、加圧バネ28によって加圧レバー27が図3の上方へ付勢されている。このように、加圧レバー27が加圧バネ28によって付勢されていることで、加圧ローラ22は定着ローラ21に対して圧接され、各ローラ21,22の間にニップ部Nが形成される。
【0021】
加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって図2又は図3中の矢印Bで示す方向に回転駆動するように構成されている。一方、定着ローラ21は、加圧ローラ22が回転駆動することにより、これに伴って図2又は図3中の矢印A方向に従動回転する。定着ローラ21がハロゲンヒータ23によって所定の温度(定着温度)に加熱され、定着ローラ21と加圧ローラ22とが回転した状態で、未定着画像を担持する用紙が図3中の矢印C1方向に搬送されると、用紙がニップ部Nに進入し、ニップ部Nにおいて用紙が加熱及び加圧される。これにより、用紙上の未定着画像が用紙に定着される。その後、用紙は、回転する定着ローラ21と加圧ローラ22とによってニップ部Nから図3中の矢印C2方向へ排出される。
【0022】
また、本実施形態に係る定着装置5においては、ニップ部Nに用紙が詰まった場合にその用紙を取り除きやすくするため、あるいは、定着ローラ21と加圧ローラ22とが長時間停止した状態で圧接されることに伴う劣化(クリープ変形)を防止するためなどに、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して離間し、ローラ間の加圧力を低減できるようにしている。具体的には、図3に示すように、加圧ローラ22の両端部を回転可能に支持する軸受30が、側板24に設けられた軸受ガイド部24bに沿って案内されることで、加圧ローラ22は定着ローラ21に対して図の矢印D方向に接近離間する。一方、定着ローラ21の両端部を回転可能に支持する軸受31は、側板24に設けられた軸受嵌合部24aに嵌め込まれており、定着ローラ21はその軸方向に対して直交する方向に移動しないように固定されている。
【0023】
加圧ローラ22は、接離機構26によって定着ローラ21に対して接近離間するように駆動される。接離機構26は、加圧レバー27を押し動かすカム部材41と、カム部材41と一緒に回転する検知対象部材としてのフィラー52と、検知部L(図4参照)におけるフィラー52の有無を検知する検知手段としての光学センサ51と、を備えている。
【0024】
図2に示すように、カム部材41は、両側板24によって回転可能に支持される回転軸42の両端部に1つずつ設けられている。また、回転軸42の一端部には、フィラー52が固定されている。このため、回転軸42が回転すると、各カム部材41及びフィラー52が一緒に(同期して)回転する。
【0025】
図3に示すように、カム部材41は、その回転中心からの距離が回転方向に向かって変化するカム面41aを有する。カム面41aには、加圧レバー27のカム受け部32が接触した状態で保持されている。カム部材41が回転すると、カム面41aによって加圧レバー27が図3の下方へ押し動かされたり、反対に図3の上方へ戻されたりすることで、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して接離する。なお、加圧ローラ22の接離動作の詳しい制御については後述する。
【0026】
本実施形態では、カム面41aが回転方向に長い範囲に渡って設けられている。具体的には、図4に示すように、カム面41aは、その回転中心に対して最も距離が近い最下点e1から、回転中心に対して最も距離の遠い最上点e2まで、約270°の範囲に渡って設けられている。このように、カム面41aが長い範囲に渡って設けられていることで、カム面41aが短い場合に比べて、最下点e1から最上点e2に至るまでのカム面41aの勾配を緩やかにすることができ、カム面41aによって加圧レバー27を押し動かすときのトルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制できるようになる。
【0027】
光学センサ51は、光を照射する投光部と、投光部から照射された光を受ける受光部と、が配置された検知部Lを有する透過型の光学センサである。光学センサ51は、フィラー52が回転すると、フィラー52によって検知部Lにおける照射光が遮断された遮光状態と、照射光が遮断されない透光状態と、に切り換えられる。
【0028】
図4に示すように、フィラー52は、検知部Lで照射光を遮断する2つの遮光部52a,52bと、検知部Lで照射光を遮断しない(透過させる)2つの透光部52j,52kと、を有している。遮光部52a,52bの一方は、回転方向に長い(長さX1の)長遮光部52aであり、他方は、長遮光部52aよりも回転方向に短い(長さX2の)短遮光部52bである。また、透光部51j,52kの一方は、回転方向に長い(長さY1の)長透光部52kであり、他方は、長透光部52kよりも回転方向に短い(長さY2の)短透光部(孔部)52jである。
【0029】
図5に示すように、接離機構26は、駆動系として、駆動源としてのモータ43と、モータ43からの駆動力を回転軸42に伝達するギア列44と、を備えている。本実施形態では、モータ43として、小型で安価なDCブラシモータを用いている。ギア列44は、モータ43の出力軸に取り付けられた第1ウォームギア45と、第1ウォームギア45と噛み合う第2ウォームギア46と、第2ウォームギア46と一体に設けられた駆動伝達部材としての第1平歯車47と、第1平歯車47と噛み合う(係合する)と共にフィラー52と一体に設けられた駆動伝達部材としての第2平歯車48と、で構成されている。モータ43の出力軸が回転すると、各ウォームギア45,46と各平歯車47,48が回転し、第2平歯車48とフィラー52が一体的に回転することで、回転軸42を介して各カム部材41が回転する。
【0030】
また、図6に示すように、接離機構26は、制御系として、上記光学センサ51と、カム部材41の回転を制御する制御部60と、カム部材41の回転時間を計測するタイマー70と、を備えている。制御部60は、例えば、画像形成装置本体に設けられたCPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される。制御部60は、光学センサ51によって検知された信号やタイマー70によって計測された時間に基づいてモータ43の駆動を制御してカム部材41の回転を制御する。また、制御部60は、タイマー70の制御も行う。
【0031】
以下、加圧ローラ22の接離動作について説明する。
【0032】
[脱圧動作]
図7は、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して通常の加圧力で加圧されている加圧状態(接近状態)から、通常よりも加圧力が小さくなった脱圧状態(離間状態)となるまでの脱圧動作を示す図、図8は、脱圧動作のフローチャートである。なお、脱圧状態は、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して完全に離間して非接触となる状態であってもよいし、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して接触しているが、相対的な軸間距離が大きくなって加圧力が小さくなる状態であってもよい。図7において、上段の(a)~(d)は、フィラー52の回転動作を示し、中段の(a)~(d)は、カム部材41の回転動作を示し、下段の(a)~(d)は、光学センサ51の透光及び遮光のタイミングチャートを示す。図7における上段、中段、下段のそれぞれの(a)~(d)は互いに対応している。
【0033】
図7の(a)に示す加圧状態では、加圧レバー27(カム受け部32)がカム面41aに対して最下点e1側で接触し、定着ローラ21に対して加圧ローラ22が接近した状態となっている。また、このとき、フィラー52は、光学センサ51の検知部Lを遮光しておらず透光状態となっている。
【0034】
この状態から、カム部材41を図7の反時計回り(正方向)に回転させると(図8のS1)、図7の(b)に示すように、フィラー52の長遮光部52aが検知部Lに到達することで、光学センサ51が遮光状態に切り換えられる(図8のS2)。
【0035】
その後、カム部材41の回転が継続され、図7の(c)に示すように、フィラー52の長遮光部52aが検知部Lを通過することで(短透光部52jが検知部Lに到達することで)、光学センサ51が遮光状態から透光状態に切り換えられる(図8のS3)。
【0036】
その後、フィラー52の短透光部52jが検知部Lを通過することで、図7の(d)に示すように、短遮光部52bが検知部Lに到達し、再び光学センサ51が透光状態から遮光状態に切り換えられる(図8のS4)。この遮光状態への切換のタイミングで、制御部60からカム部材41を停止させる指示が発せられる。これにより、カム部材41の回転が完全に停止されて、脱圧状態となる(図8のS5)。脱圧状態では、加圧レバー27がカム面41aに対して最上点e2側で接触し、定着ローラ21に対して加圧ローラ22が離間した状態で保持される。
【0037】
[加圧動作]
続いて、図9及び図10に基づき、脱圧状態から加圧状態になるまでの加圧動作について説明する。
【0038】
図9においても、図7と同様、上段に、フィラー52の回転動作を示し、中段に、カム部材41の回転動作を示し、下段に、光学センサ51の透光及び遮光のタイミングチャートを示す。なお、上段、中段、下段のそれぞれの(a)~(e)は互いに対応している。
【0039】
図9の(a)に示す脱圧状態では、フィラー52の短遮光部52bが光学センサ51の検知部Lに重なっており、光学センサ51は遮光状態となっている。この脱圧状態から加圧状態にする場合は、上述の加圧状態から脱圧状態にする場合とは反対方向にカム部材41を回転させる(図10のS1)。
【0040】
カム部材41を図8の反時計回り(逆方向)に回転させると、図9の(b)に示すように、フィラー52の短遮光部52bが検知部Lを通過することで(短透光部52jが検知部Lに到達することで)、光学センサ51が遮光状態から透光状態に切り換えられる(図10のS2)。
【0041】
また、光学センサ51が透光状態に切り換えられたタイミングで、上記タイマー70による時間計測が開始される(図10のS3)。このタイマー70による時間計測は、光学センサ51の透光状態が続く限り行われ、タイマー70による目標時間Tの計測(カウント)が完了した時点で、制御部60からカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる。しかしながら、図9の(b)に示す透光状態となってから、その後、図9の(c)に示す遮光状態に切り換えられるまでの透光時間(短透光部52jの通過時間)t1は、タイマー70が計測する目標時間Tよりも短くなるように設定されている。従って、ここでは、タイマー70による目標時間Tの計測が完了よりも前に遮光状態に切り換えられるため、タイマー70による時間計測は途中でキャンセルされる(図10のS4)。これにより、カム部材41の回転は停止されることなく継続される。
【0042】
その後、図9の(c)に示す遮光状態となってから(図10のS5)、図9の(d)に示すように、長遮光部52aが検知部Lを通過することで(長透光部52kが検知部Lに到達することで)、光学センサ51は再び遮光状態から透光状態に切り換えられる(図10のS6)。そして、この透光状態に切り換えられたタイミングで、タイマー70による時間計測が再び開始される(図10のS7)。この場合も、タイマー70による時間計測は、光学センサ51の透光状態が続く限り行われる。ここで、長透光部52kが検知部Lを通過する間の透光時間は、上述の短透光部52jにおける透光時間に比べてはるかに長いので、タイマー70が目標時間Tの計測を完了するまで透光時間は継続される。
【0043】
その結果、図9の(e)に示すように、タイマー70による時間計測は途中でキャンセルされることなく完了する(図10のS8)。そして、その目標時間Tの計測が完了したタイミングで、カム部材41を停止させる指示が発せられる。そして、この停止指示を受けてモータが駆動を停止し、カム部材41の回転が完全に停止されて、加圧状態となる(図10のS9)。
【0044】
[イニシャライズ動作]
また、本実施形態に係る定着装置においては、画像形成装置の電源がONになるたびに、加圧ローラ22が加圧状態となるように、カム部材41の回転位相を所定の回転位相に戻すイニシャライズ動作を行うようにしている。
【0045】
例えば、画像形成装置が異常により強制的に停止した場合など、定着装置が通常の終了動作を経て停止しなかった場合は、カム部材41の回転が加圧状態と脱圧状態の間で停止することも考えられる。その後、画像形成装置の電源がONになったときに、光学センサ51が透光状態となっているか遮光状態となっているかが確認されるが、透光状態又は遮光状態の確認だけではカム部材41の回転位相を正確に把握できない。そのため、本実施形態に係る定着装置においては、画像形成装置の電源がONになったとき、カム部材41の回転位相を所定の回転位相に戻すため、イニシャライズ動作が行われる。
【0046】
以下、イニシャライズ動作について説明する。
【0047】
イニシャライズ動作には、画像形成装置の電源がONになったときに、光学センサ51が透光状態となっている場合に開始される第1イニシャライズ動作と、反対に、光学センサ51が遮光状態となっている場合に開始される第2イニシャライズ動作と、がある。画像形成装置の電源がONとなったときに、光学センサ51が透光状態であった場合は、まず、第1イニシャライズ動作が行われることにより、光学センサ51を透光状態から一旦遮光状態となるように移行させた後、次いで、第2イニシャライズ動作が行われる。これに対して、画像形成装置の電源がONとなったときに、光学センサ51が遮光状態であった場合は、第1イニシャライズ動作は行われず、第2イニシャライズ動作のみ行われる。いずれの場合も、必ず第2イニシャライズ動作が行われることで、光学センサ51を遮光状態から特定の透光状態に移行させることにより、カム部材41を所定の回転位相に戻す。
【0048】
まず、第1イニシャライズ動作について説明する。
【0049】
第1イニシャライズ動作が行われるのは、画像形成装置の電源ON時に光学センサ51が透光状態となっている場合である。本実施形態において、透光状態と言えば、11の(a)に示すフィラー52の短透光部52jが検知部Lに重なっている場合と、図12の(a)に示す長透光部52kが検知部Lに重なっている場合とがある。いずれの場合も、図13に示す同じフローで第1イニシャライズ動作を行う。
【0050】
図11及び図12において、上段の(a)~(c)は、フィラー52の回転動作を示し、下段の(a)~(c)は、光学センサ51の透光及び遮光のタイミングチャートを示す。なお、図11及び図12において、上段、下段のそれぞれの(a)~(c)は互いに対応している。
【0051】
図11に示す場合と、図12に示す場合とでは、いずれの場合も画像形成装置の電源ON時に光学センサ51が透光状態であることが確認されるが、互いにフィラー52の回転位相が異なっているため、それぞれのイニシャライズ動作開始点(a)の位置が異なっている。しかし、いずれの場合に関わらず、まず、カム部材41を脱圧状態へ移行する方向(正方向)に回転させる(図13のS1)。
【0052】
カム部材41を脱圧状態へ移行する方向に回転させると、図11及び図12のいずれの場合においても、各図の(b)に示すように、光学センサ51が遮光状態に切り換えられる(図13のS2)。そして、その時点(b)から所定時間t2が経過すると(図13のS3)、カム部材41の回転を停止させる指示を発せられ、カム部材41の回転が停止される(図13のS4)。なお、この所定時間t2は、特に図11に示す場合において、光学センサ51が遮光状態に切り換わった時点(b)からカム部材41が脱圧状態の位置を越えない時間に設定されている。その結果、それぞれの場合において、光学センサ51が遮光状態となり、第1イニシャライズ動作が完了する。
【0053】
次に、第2イニシャライズ動作について説明する。
【0054】
図14及び図15の上段、下段に、第2イニシャライズ動作を行う際のフィラー52の回転動作、及び、光学センサ51の透光及び遮光のタイミングチャートを示す。図14は、図11に示す第1イニシャライズ動作の続きの動作を示し、図15は、図12に示す第1イニシャライズ動作の続きの動作を示す。なお、図14における上段、下段の(a)~(e)、及び、図15における上段、下段の(a)~(c)は、互いに対応している。図14及び図15のいずれの場合も、図16に示す同じフローで第2イニシャライズ動作を行う。
【0055】
第2イニシャライズ動作では、光学センサ51が遮光状態であることが確認されると、図14及び図15のいずれの場合においても、まず、カム部材41を加圧状態へ移行する方向(逆方向)に回転させる(図16のS1)。カム部材41を加圧状態へ移行する方向に回転させると、図14及び図15のいずれの場合においても、各図の(b)に示すように、光学センサ51が透光状態に切り換えられる(図16のS2)。そして、その時点から、タイマー70による時間計測が開始される(図16のS3)。
【0056】
このタイマー70による時間計測は、光学センサ51の透光状態が続く限り行われる(図16のS4)。ただし、このときタイマー70が計測する目標時間Uは、短透光部52jが検知部Lを通過する時間t1よりも長く設定されている(図14参照)。従って、図14の場合は、タイマー70による目標時間Uの計測が完了よりも前に、図14の(c)に示す遮光状態に切り換えられるため、タイマー70による時間計測は途中でキャンセルされる(図16のS5)。一方、図15の場合は、短透光部52jよりも長い長透光部52kが検知部Lを通過するので、タイマー70による目標時間Uの計測は途中でキャンセルされることなく完了する。そして、図15の場合は、タイマー70による目標時間Uの計測が完了したタイミングで、カム部材41を停止させる指示が発せられ、カム部材41の回転が停止される(図16のS9)。その結果、カム部材41の回転位相が所定の回転位相となり、加圧ローラ22が加圧状態となって、第2イニシャライズ動作が完了する。
【0057】
一方、図14の場合は、上記タイマー70による目標時間Uの計測がキャンセルされた後、長遮光部52aが検知部Lを通過することで(長透光部52kが検知部Lに到達することで)、図14の(d)に示すように、光学センサ51が再び透光状態に切り換えられる(図16のS6)。そして、その時点から、タイマー70による目標時間Uの計測が再び開始される(図16のS7)。この場合は、短透光部52jよりも長い長透光部52kが検知部Lを通過するので、タイマー70による目標時間Uの計測は途中でキャンセルされることなく完了する(図16のS8)。そして、その目標時間Tの計測が完了したタイミングでカム部材41を停止させる指示が発せられ、カム部材41の回転が停止される(図16のS9)。その結果、図14の場合も、カム部材41の回転位相が所定の回転位相となり、加圧ローラ22が加圧状態となって、第2イニシャライズ動作が完了する。
【0058】
以上のように、電源ON時に光学センサ51が透光状態となっている場合は、第1イニシャライズ動作を行った後、第2イニシャライズ動作を行うことで、カム部材41が任意の回転位相で停止している場合であっても、カム部材41の回転位相を所定の回転位相に戻し、加圧ローラ22を加圧状態にすることができる。
【0059】
また、電源ON時に光学センサ51が遮光状態となっている場合は、第1イニシャライズ動作は行わず、第2イニシャライズ動作だけ行えばよい。この場合の第2イニシャライズ動作の手順は、上述の第2イニシャライズ動作の手順と同様である。これにより、カム部材41の回転位相を所定の回転位相に戻し、加圧ローラ22を加圧状態にすることができる。
【0060】
ところで、カム部材41を回転駆動させる駆動源として、例えば小型で安価なDCモータ(DCブラシモータ又はDCブラシレスモータ)を用いることができる。しかしながら、DCモータはトルク(負荷)の大きさに応じて回転数(回転速度)が変化する特性がある。従って、カム部材41の駆動源としてDCモータを用いた場合、カム部材41の停止タイミングをDCモータの回転数(時間)に基づいて管理すると、トルクの大きさに応じてDCモータの回転数が変化することで、カム部材41の回転停止位置にばらつきが生じる虞がある。そして、カム部材41の回転停止位置にばらつきが生じた場合は、所望の加圧状態又は脱圧状態が得られなくなり、定着品質を良好に維持することができなくなる虞がある。また、このような回転停止位置のばらつきの要因には、モータに生じるトルクのほか、製造時のモータ固有の事情、部品の経年劣化、装置の設置環境の変化、ユニット装置の交換など、種々の要因がある。なお、斯かる課題は、カムの駆動源としてDCモータを用いた場合に限らず、回転速度が諸事情で変化する他の駆動源を用いた場合も同様に発生し得る。
【0061】
そのため、本実施形態に係る定着装置においては、上記のようなカム部材41の回転停止位置のばらつきを抑制するため、カム部材41を回転させるモータ駆動時間の補正を行うようにしている。
【0062】
[モータ駆動時間の補正]
モータ駆動時間の補正は、図6に示す制御部60によって行われる。制御部60は、フィラー52の特定範囲が光学センサ51の検知部Lを通過する時間に基づいて、モータ43の駆動時間を補正する。モータ43の回転数のばらつきによってカム部材41の回転速度が変化すると、カム部材41と一緒に回転するフィラー52の回転速度も変化する。このため、フィラー52の特定範囲が光学センサ51の検知部Lを通過する時間を測定することで、カム部材41が所定の回転速度よりも速い速度で回転しているか、遅い速度で回転しているかを判別することが可能である。そこで、本実施形態においては、フィラー52の通過時間に基づいてモータ駆動時間を変更することで、カム部材41の回転速度の変化に応じてその駆動時間を調整するようにしている。例えば、フィラー52の通過時間が基準値よりも短い場合は、カム部材41が所定の回転速度よりも速い回転速度で回転しているので、カム部材41を停止させるまでのモータ駆動時間を短くすることで、カム部材41を適正な位置に停止させることができる。反対に、フィラー52の通過時間が基準値よりも長い場合は、カム部材41が所定の回転速度よりも遅い回転速度で回転しているので、カム部材41を停止させるまでのモータ駆動時間を長くすればよい。
【0063】
本実施形態においては、モータ駆動時間の補正を、図9に示す加圧動作時と、図14に示す第2イニシャライズ動作時と、で行うようにしている。
【0064】
まず、加圧動作時に行うモータ駆動時間の補正について説明する。
【0065】
加圧動作時に行われるモータ駆動時間の補正制御においては、図9の(c)に示す遮光状態になってから、図9の(d)に示す透光状態となるまでの、フィラー52の長遮光部aが光学センサ51の検知部Lを通過する時間αが、制御部60によって計測される。そして、制御部60は、計測された長遮光部52a通過時間と予め設定された基準値と比較し、その結果に基づいて、図9の(d)に示す透光状態となってから、図9の(e)に示す回転停止指示がなされるまでの、タイマー70が計測する目標時間Tを補正する。例えば、計測された長遮光部52aの通過時間が基準値よりも短い場合は、目標時間Tを短くし、反対に、長遮光部52aの通過時間が基準値よりも長い場合は、目標時間Tを長くする。
【0066】
このように、計測された長遮光部52aの通過時間に基づいて目標時間Tを補正し、その補正された目標時間Tに基づいてカム部材41の回転停止指示を発することで、カム部材41の回転速度の変化があったとしても、これに起因する回転停止位置のばらつきを抑制することができるようになる。
【0067】
次に、第2イニシャライズ動作時に行うモータ駆動時間の補正について説明する。
【0068】
第2イニシャライズ動作時に行われるモータ駆動時間の補正制御においては、図14の(c)に示す遮光状態になってから、図14の(d)に示す透光状態となるまでの、フィラー52の長遮光部aが光学センサ51の検知部Lを通過する時間βが、制御部60によって計測される。そして、制御部60は、計測された長遮光部52a通過時間と予め設定された基準値と比較し、その結果に基づいて、図14の(d)に示す透光状態となってから、図14の(e)に示す回転停止指示がなされるまでの、タイマー70が計測する目標時間Uを補正する。この場合も、計測された長遮光部52aの通過時間が基準値よりも短い場合は、目標時間Uを短くし、反対に、長遮光部52aの通過時間が基準値よりも長い場合は、目標時間Uを長くする。
【0069】
このように、第2イニシャライズ動作時においても、加圧動作時と同様に、計測された長遮光部52aの通過時間に基づいて目標時間Uを補正し、その補正された目標時間Uに基づいてカム部材41の回転停止指示を発することで、カム部材41の回転速度の変化があったとしても、これに起因する回転停止位置のばらつきを抑制することができるようになる。
【0070】
以上のように、本実施形態においては、加圧動作時と第2イニシャライズ動作時において、カム部材41の回転停止指示を発するためのタイマー70の目標時間T,Uを、長遮光部52aが検知部Lを通過した時間に基づいて設定(補正)することで、カム部材41の回転速度の変化に起因する回転停止位置のばらつきを抑制することができ、カム部材41を適正な位置で停止させることができるようになる。また、このような目標時間T,Uの設定(補正)を、その直前に長遮光部52aが検知部Lを通過する時間に基づいて行うことで、カム部材41の回転停止位置の精度を向上させることが可能となる。すなわち、目標時間T,Uの設定を、これらの時間の計測が開始される直前の長遮光部52aの通過時に毎回行うことで、カム部材41の回転停止指示がなされる直前にカム部材41の回転速度が変化したとしても、これに対応して目標時間T,Uを設定することができる。このため、モータ固有の回転数などの予め決まったばらつきに限らず、装置の設置環境の変化やユニット装置の交換などの逐次変化するばらつきにも対応したカム部材41の回転制御を実現できるようになる。また、カム部材41の回転停止位置精度の向上を図れることで、カム部材41の駆動源として、安価なDCモータ(DCブラシモータ又はDCブラシレスモータ)を用いることができるようになり、低コスト化を図れるようになる。
【0071】
なお、本実施形態において、脱圧動作時では、加圧動作時や第2イニシャライズ動作時と同様に、長遮光部52aが検知部Lを通過するが{図7の(b)から(c)への移行時}、このときの長遮光部52aの通過時間は計測していない。これは、脱圧動作時におけるカム部材41の回転停止の指示が、加圧動作時や第2イニシャライズ動作時とは異なり、タイマー70による時間計測のタイミングに基づいて決定しているのではなく、光学センサ51によるフィラー52の検知タイミングに基づいて決定しているからである。すなわち、光学センサ51によるフィラー52の検知タイミングは、カム部材41の回転速度が変化したとしても、その影響を受けない。このため、脱圧動作時においては、長遮光部52aの通過時間を計測することは不要であり、長遮光部52aの通過時間を計測しなくても、カム部材41を適正な回転停止位置(脱圧位置)で停止させることが可能である。
【0072】
これに対して、加圧動作時や第2イニシャライズ動作時は、モータの回転速度の変化の影響を受けやすいタイマー70による時間計測のタイミングに基づいてカム部材41の回転停止位置を管理しているので、上述の長遮光部52aの通過時間に基づくタイマー目標時間の設定を行うことで、カム部材41の回転停止位置のばらつきを抑制することが可能である。
【0073】
ここで、本実施形態とは異なり、加圧動作時や第2イニシャライズ動作時におけるカム部材41の回転停止位置の制御を、タイマー70に代えて、モータの回転速度の影響を受けない光学センサ51によるフィラー52の検知タイミングに基づいて行うことも可能である。しかしながら、その場合、脱圧動作時のカム部材の回転位置を検知するための光学センサと、加圧動作時のカム部材の回転位置を検知するための光学センサを、別々に途設ける必要があるため、光学センサの数が増え、高コスト化したり、装置が大型化したりするといった新たな問題が発生する。
【0074】
これに対して、本実施形態では、脱圧動作時のカム部材41の回転停止を、光学センサ51によるフィラー52の検知タイミングに基づいて行い、加圧動作時のカム部材41の回転停止を、タイマー70による時間計測のタイミングに基づいて行うことで、光学センサの片方を省略することができ、光学センサを2つ設ける構成に比べて低コスト化や小型化を図れるようになる。
【0075】
このように、本発明に係る接離機構によれば、低コスト化及び小型化を図るために、加圧動作時と脱圧動作時の一方の制御をタイマーによる時間計測によって行い、光学センサの片方を省略した定着装置において、加圧動作時及び脱圧動作時のカム部材41の回転停止位置のばらつきを少なくし、その位置精度の向上を実現することが可能となる。
【0076】
上述の実施形態では、脱圧動作時におけるカム部材41の回転停止の指示のタイミング{図7の(d)}を、光学センサ51によるフィラー52の検知タイミングに基づいて決定しているが、光学センサ51によってフィラー52のエッジ(透光部又は遮光部)を検知した後、さらにタイマー70による時間計測を経て、カム部材41の回転停止指示を発するようにしてもよい。ただし、その場合は、タイマー70によって計測される時間(目標時間)を、加圧動作時にタイマー70が計測する目標時間Tよりも短くすることが望ましい。タイマー計測時間は、長くなるほどばらつきが大きくなる傾向にあるので、脱圧動作時におけるタイマー計測時間を加圧動作時におけるタイマー計測時間よりも短くすることで、脱圧動作時におけるタイマー計測時間のばらつきを抑制し、上述のようなフィラー52の通過時間に基づく目標時間の補正を行わなくてもカム部材41をある程度正確に停止させることができるようになる。
【0077】
また、上述の実施形態では、脱圧動作時のカム部材41の回転停止を、光学センサ51によるフィラー52の検知タイミングに基づいて行い、加圧動作時のカム部材41の回転停止を、タイマー70による時間計測のタイミングに基づいて行っているが、脱圧動作と加圧動作とで制御を入れ換えてもよい。すなわち、上述の長遮光部52aの通過時間に基づくタイマー目標時間の設定を、加圧動作時ではなく、脱圧動作時に行ってもよい。また、タイマー目標時間の設定を行うために計測されるフィラー52の特定範囲は、長遮光部52aでなくてもよい。フィラー52の特定範囲は、カム部材41の回転停止指示を発するためのタイマー70による時間計測の直前に検知部Lを通過する範囲であれば、任意に設定することが可能である。また、フィラー52の特定範囲は、光学センサ51の光を遮光する遮光部ではなく、光を透過させる透光部であってもよい。
【0078】
また、本発明に係る接離機構は、上記実施形態のような一対のローラ(定着ローラ及び加圧ローラ)を備える定着装置に限らない。例えば、定着ローラに代えて、無端状の定着ベルトを備える定着装置であってもよい。さらに、本発明に係る接離機構は、上記実施形態のような加圧ローラが定着ローラに対して接近離間する定着装置に限らず、反対に定着ローラが加圧ローラに対して接近離間する定着装置にも適用可能である。
【0079】
また、本発明に係る接離機構は、定着装置だけでなく、相手部材に対して接離部材を接近離間させるその他の接離機構にも適用可能である。例えば、図1に示すような直接転写方式の画像形成装置において、転写ローラ15を感光体7に対して接近離間させる接離部材や、間接転写方式の画像形成装置において、中間転写ベルトに対して二次転写ローラを接近離間させる接離機構などにも本発明を適用可能である。
【0080】
図17に、上述の実施形態とは別の駆動系の分解図を示す。
【0081】
図17に示す接離機構の駆動系は、モータ43からカム部材41への駆動力を減速して伝達する減速機構80を備えている。減速機構80は、太陽歯車81と、複数の遊星歯車82と、遊星歯車82を保持する遊星キャリア83と、内歯車84が形成されたハウジング85と、を備える遊星歯車減速機構である。太陽歯車81は、モータ43の回転軸に設けられたウォームギア90に対して、これと噛み合うウォームホイール91、さらにウォームホイール91に組み付けられたトルクリミッタ92及びトルクリミッタギア93を介して連結されている。モータ43の駆動によって、その駆動力がウォームギア90から、ウォームホイール91、トルクリミッタ92、トルクリミッタギア93を介して太陽歯車81に伝達されると、太陽歯車81が回転する。これにより、太陽歯車81と噛み合う複数の遊星歯車82が自転すると共に内歯車84に沿って公転する。この公転運動が遊星キャリア83の自転運動として出力されることで、モータ43の回転運動が減速されて伝達される。そして、遊星キャリア83から出力された駆動力は、第1伝達ギア94及び第2伝達ギア95を介してカム部材41に伝達される。
【0082】
このような減速機構80を介してモータ43の駆動力をカム部材41に伝達することで、出力の比較的小さなモータ43であっても、その駆動力を増大してカム部材41に伝達することができ、相手部材に対して接離部材を確実に接近離間させることが可能である。また、減速機構80として、遊星歯車減速機構を採用することで、装置の小型化を図れるようになり、部品レイアウトの自由度も向上する。また、図17に示す例のように、駆動系にトルクリミッタ92が設けられていることで、モータ43へ作用する負荷が所定値を超えた場合は、トルクリミッタ92によってトルク伝達が遮断され、モータ43やギアなどの破損を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置
2 画像形成部
5 定着装置
21 定着ローラ(定着回転体)
22 加圧ローラ(加圧回転体)
26 接離機構
41 カム部材
43 モータ(駆動源)
51 光学センサ(検知手段)
52 フィラー(検知対象部材)
52a 長遮光部(特定範囲)
80 減速機構
L 検知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【文献】特開2007-164106号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17