(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ウェーハ移載装置、気相成長装置、ウェーハ移載方法およびエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220906BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20220906BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/68 A
C23C16/458
(21)【出願番号】P 2018241365
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】楢原 和宏
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅之
(72)【発明者】
【氏名】胡盛 珀
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/004550(WO,A1)
【文献】特開2014-003259(JP,A)
【文献】特開2000-188317(JP,A)
【文献】特開2014-187314(JP,A)
【文献】特開2010-109369(JP,A)
【文献】特開2006-344675(JP,A)
【文献】特開2011-249657(JP,A)
【文献】特開2018-206992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/677
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長装置のサセプタに、前記シリコンウェーハを移載するウェーハ移載装置であって、
前記シリコンウェーハを保持して前記サセプタ上に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段で搬送された前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置する載置手段とを備え、
前記載置手段は、前記サセプタを貫通する複数の貫通孔のそれぞれに昇降可能に挿通され
、前記貫通孔との間にクリアランスが設けられて前記貫通孔に対して傾くことができるように構成された複数のリフトピンと、
前記複数のリフトピンと前記サセプタとを相対移動させる相対移動手段とを備え、
前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることによって、前記複数のリフトピンで前記シリコンウェーハの下面を支持するとともに、前記搬送手段による前記シリコンウェーハの保持が解除された後に、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して下降させることによって、前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置し、
前記載置手
段は、前記複数のリフトピンで前記シリコンウェーハを支持するときに、特定のリフトピンが最初に前記シリコンウェーハの下面に接触するように構成されていることを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウェーハ移載装置において、
前記相対移動手段は、前記リフトピンの下端に固定されることなく前記リフトピンを下方から支持する当接部を有することを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のウェーハ移載装置において、
前記リフトピンは、頭部と前記頭部から延び、前記貫通孔に挿通される軸部とを備え、
前記頭部が前記サセプタで支持されていることを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項4】
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ移載装置において、
前記相対移動手段は、前記特定のリフトピンの上端が他のリフトピンの上端よりも高い位置に位置する状態で、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のウェーハ移載装置において、
前記相対移動手段は、前記特定のリフトピンの上端が他のリフトピンの上端よりも0.5mm以上5mm以下だけ高い位置に位置する状態で、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項6】
請求項
4または請求項
5に記載のウェーハ移載装置において、
前記複数のリフトピンは、同じ長さを有し、
前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンの下端にそれぞれ当接する複数の当接部を有し、前記サセプタに対して相対移動するリフトピン支持部材を備え、
前記特定のリフトピンに当接する前記当接部の上端は、他の前記当接部の上端よりも高い位置に設けられていることを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項7】
請求項
4または請求項
5に記載のウェーハ移載装置において、
前記特定のリフトピンは、他のリフトピンよりも長く形成され、
前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンの下端にそれぞれ当接する複数の当接部を有し、前記サセプタに対して相対移動するリフトピン支持部材を備え、
前記複数の当接部の上端は、同じ高さ位置に設けられていることを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のウェーハ移載装置において、
前記搬送手段は、長手状の支持部材を備え、前記シリコンウェーハが載置された前記支
持部材をその長手方向に移動させることで、前記シリコンウェーハを前記サセプタ上に搬送し、
前記支持部材は、互いに離れた位置から当該支持部材の長手方向に延びる一対の延出部を備え、
前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンのうち、前記一対の延出部の間に位置するリフトピンを、前記特定のリフトピンとして前記シリコンウェーハの下面に接触させることを特徴とするウェーハ移載装置。
【請求項9】
シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長装置であって、
前記シリコンウェーハが載置されるサセプタと、
前記サセプタに前記シリコンウェーハを移載する請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載のウェーハ移載装置とを備えていることを特徴とする気相成長装置。
【請求項10】
シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長装置のサセプタに、前記シリコンウェーハを移載するウェーハ移載方法であって、
前記シリコンウェーハを保持して前記サセプタ上に搬送する搬送工程と、
前記搬送工程で搬送された前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置する載置工程とを備え、
前記載置工程は、前記サセプタを貫通する複数の貫通孔のそれぞれに昇降可能に挿通され
、前記貫通孔との間にクリアランスが設けられて前記貫通孔に対して傾くことができるように構成された複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることで前記サセプタ上の前記シリコンウェーハの下面を支持するとともに、前記搬送工程による前記シリコンウェーハの保持が解除された後に、複数のリフトピンを前記サセプタに対して下降させることで、前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置する相対移動工程を備え、
前記載置工
程は、前記複数のリフトピンで前記シリコンウェーハを支持するときに、特定のリフトピンを最初に前記シリコンウェーハの下面に接触させ
て行われることを特徴とするウェーハ移載方法。
【請求項11】
請求項
10に記載のウェーハの移載方法において、
長手状の支持部材であって、互いに離れた位置から前記支持部材の長手方向に延びる一対の延出部を備える支持部材を用い、
前記搬送工程は、p-型の前記シリコンウェーハが載置された前記支持部材をその長手方向に移動させることで、前記p-型のシリコンウェーハを前記サセプタ上に搬送し、
前記相対移動工程は、前記複数のリフトピンのうち、前記一対の延出部の間に位置するリフトピンを、前記特定のリフトピンとして前記シリコンウェーハの下面に接触させることを特徴とするウェーハ移載方法。
【請求項12】
シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成するエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、
サセプタに前記シリコンウェーハを移載する請求項
10または請求項
11に記載のウェーハ移載方法を行う工程と、
前記サセプタに移載された前記シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長工程とを備えていることを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ移載装置、気相成長装置、ウェーハ移載方法およびエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気相成長装置において、サセプタにウェーハを載置する際には、まず、搬送ブレードで下面が支持されたウェーハがサセプタの上方に搬送されると、リフトピンを上昇させ、その上端でウェーハの下面を支持するとともに、ウェーハを搬送ブレードから離間させる。その後、気相成長装置は、リフトピンを下降させ、ウェーハをサセプタに載置する。
【0003】
サセプタには、リフトピンが挿通する貫通孔が設けられている。この貫通孔は、リフトピンの昇降をスムーズに行うために、リフトピンとの間にクリアランスが設けられるように形成されている。このため、リフトピンがウェーハに接触したときにリフトピンが傾き、この傾いた状態でウェーハを搬送ブレードから受け取ってサセプタに載置すると、ウェーハの載置位置が所望の位置からずれてしまうおそれがある。
そこで、このような載置位置のずれを抑制するための検討がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の気相成長装置は、3本のリフトピンの下端側の部分を保持し、これらのリフトピンのぐらつきを抑制するサポートリングを備えている。サポートリングは、リング部と、長手方向の一端部がリング部の内周面に接続され、他端部側がリング部側に付勢された板状部材と備え、板状部材とリング部との間でリフトピンを挟んで保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような構成では、例えば、温度昇降に伴いリフトピンやサポートリングが膨張や収縮したときに、リフトピンとサポートリングとの間で摩擦が発生するおそれがある。摩擦が発生すると、リフトピンやサポートリングからの塵が発生し、エピタキシャルシリコンウェーハ上のパーティクルが増えてしまう。
【0007】
本発明の目的は、エピタキシャルシリコンウェーハの品質が低下しないように、シリコンウェーハをサセプタ上の所望の位置に載置できるウェーハ移載装置、気相成長装置、ウェーハ移載方法およびエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウェーハ移載装置は、シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長装置のサセプタに、前記シリコンウェーハを移載するウェーハ移載装置であって、前記シリコンウェーハを保持して前記サセプタ上に搬送する搬送手段と、前記搬送手段で搬送された前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置する載置手段とを備え、前記載置手段は、前記サセプタを貫通する複数の貫通孔のそれぞれに昇降可能に挿通された複数のリフトピンと、前記複数のリフトピンと前記サセプタとを相対移動させる相対移動手段とを備え、前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることによって、前記複数のリフトピンで前記シリコンウェーハの下面を支持するとともに、前記搬送手段による前記シリコンウェーハの保持が解除された後に、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して下降させることによって、前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置し、前記搬送手段と前記載置手段とのうち少なくとも一方の構成は、前記複数のリフトピンで前記シリコンウェーハを支持するときに、特定のリフトピンが最初に前記シリコンウェーハの下面に接触するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
複数のリフトピンでシリコンウェーハを支持するときに、任意のリフトピンのみが最初に当接すると、サセプタの貫通孔とリフトピンとの間のクリアランスの影響によって、当該任意のリフトピンは、サセプタの中央から当該任意のリフトピンが挿通された貫通孔に向かう特定の方向に、その上端が移動するように傾く。この状態から、複数のリフトピンの全てをサセプタに対して上昇させて、シリコンウェーハを搬送手段から受け取った後、複数のリフトピンをサセプタに対して下降させることによって、シリコンウェーハをサセプタ上に載置すると、その載置位置は、搬送手段によるシリコンウェーハの搬送停止位置の真下よりも、上記特定の方向にずれる。
本発明によれば、複数のリフトピンのうち特定のリフトピンをシリコンウェーハに最初に当接させるため、シリコンウェーハのサセプタ上の載置位置は、搬送手段によるシリコンウェーハの搬送停止位置の真下よりも上記特定の方向にずれる。したがって、この特定方向へのずれ量を予め把握しておき、搬送手段によるシリコンウェーハの搬送停止位置を、上記把握したずれ量だけ、上記特定の方向の反対方向側に移動した位置に設定しておくことにより、シリコンウェーハを所望の位置に載置できる。また、上記特許文献1のサポートリングのような特殊な部材を用いないため、塵が発生することを抑制でき、エピタキシャルシリコンウェーハの品質低下を抑制できる。
【0010】
本発明のウェーハ移載装置において、前記相対移動手段は、前記特定のリフトピンの上端が他のリフトピンの上端よりも高い位置に位置する状態で、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、リフトピンの高さ位置を調整するだけの簡単な方法で、シリコンウェーハを所望の位置に載置できる。
【0012】
本発明のウェーハ移載装置において、前記相対移動手段は、前記特定のリフトピンの上端が他のリフトピンの上端よりも0.5mm以上5mm以下だけ高い位置に位置する状態で、前記複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることが好ましい。
【0013】
リフトピンの高さの差が0.5mm未満の場合、シリコンウェーハの熱による反りの大きさによっては、特定のリフトピンを最初にシリコンウェーハに接触させることができず、シリコンウェーハを所望の位置に載置できないおそれがある。また、5mmを超えると、特定のリフトピン以外のリフトピンがシリコンウェーハに接触するまでの間にシリコンウェーハの傾きが大きくなり、搬送手段上でシリコンウェーハの位置が大きくずれてしま、シリコンウェーハを所望の位置に載置できないおそれがある。
本発明では、リフトピンの高さの差を0.5mm以上5mm以下にしているため、上述のような不都合を抑制できる。
【0014】
本発明のウェーハ移載装置において、前記複数のリフトピンは、同じ長さを有し、前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンの下端にそれぞれ当接する複数の当接部を有し、前記サセプタに対して相対移動するリフトピン支持部材を備え、前記特定のリフトピンに当接する前記当接部の上端は、他の前記当接部の上端よりも高い位置に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、特定の当接部の上端を他の当接部の上端よりも高くするだけの簡単な方法で、シリコンウェーハを所望の位置に載置できる。
【0016】
本発明のウェーハ移載装置において、前記特定のリフトピンは、他のリフトピンよりも長く形成され、前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンの下端にそれぞれ当接する複数の当接部を有し、前記サセプタに対して相対移動するリフトピン支持部材を備え、前記複数の当接部の上端は、同じ高さ位置に設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、特定のリフトピンを他のリフトピンよりも長くするだけの簡単な方法で、シリコンウェーハを所望の位置に載置できる。
【0018】
本発明のウェーハ移載装置において、前記搬送手段は、前記サセプタ上において、前記シリコンウェーハにおける前記特定のリフトピンで支持される部分が他の部分よりも下側に位置するように、前記シリコンウェーハを搬送することが好ましい。
【0019】
本発明によれば、搬送手段で搬送されたシリコンウェーハのサセプタ上での姿勢を設定するだけの簡単な方法で、シリコンウェーハを所望の位置に載置できる。
【0020】
本発明のウェーハ移載装置において、前記搬送手段は、長手状の支持部材を備え、前記シリコンウェーハが載置された前記支持部材をその長手方向に移動させることで、前記シリコンウェーハを前記サセプタ上に搬送し、前記支持部材は、互いに離れた位置から当該支持部材の長手方向に延びる一対の延出部を備え、前記相対移動手段は、前記複数のリフトピンのうち、前記一対の延出部の間に位置するリフトピンを、前記特定のリフトピンとして前記シリコンウェーハの下面に接触させることが好ましい。
【0021】
シリコンウェーハがサセプタ上に搬送されると、サセプタを収容するチャンバ内の熱によって、シリコンウェーハは、下面が下側に突出するように反ったり、上面が上側に突出するように反ったりする場合がある。
本発明によれば、反り状態が安定しないシリコンウェーハであっても、目標載置位置に載置できる。
【0022】
本発明の気相成長装置は、シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長装置であって、前記シリコンウェーハが載置されるサセプタと、前記サセプタに前記シリコンウェーハを移載する上述のウェーハ移載装置とを備えていることを特徴とする。
【0023】
本発明のウェーハ移載方法は、シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長装置のサセプタに、前記シリコンウェーハを移載するウェーハ移載方法であって、前記シリコンウェーハを保持して前記サセプタ上に搬送する搬送工程と、前記搬送工程で搬送された前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置する載置工程とを備え、前記載置工程は、前記サセプタを貫通する複数の貫通孔のそれぞれに昇降可能に挿通された複数のリフトピンを前記サセプタに対して上昇させることで前記サセプタ上の前記シリコンウェーハの下面を支持するとともに、前記搬送工程による前記シリコンウェーハの保持が解除された後に、複数のリフトピンを前記サセプタに対して下降させることで、前記シリコンウェーハを前記サセプタに載置する相対移動工程を備え、前記搬送工程と前記載置工程とのうち少なくとも一方の工程は、前記複数のリフトピンで前記シリコンウェーハを支持するときに、特定のリフトピンを最初に前記シリコンウェーハの下面に接触させる行われることを特徴とする。
【0024】
本発明のウェーハの移載方法において、長手状の支持部材であって、互いに離れた位置から前記支持部材の長手方向に延びる一対の延出部を備える支持部材を用い、前記搬送工程は、p-型の前記シリコンウェーハが載置された前記支持部材をその長手方向に移動させることで、前記p-型のシリコンウェーハを前記サセプタ上に搬送し、前記相対移動工程は、前記複数のリフトピンのうち、前記一対の延出部の間に位置するリフトピンを、前記特定のリフトピンとして前記シリコンウェーハの下面に接触させることが好ましい。
【0025】
本発明のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法は、シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成するエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、サセプタに前記シリコンウェーハを移載する上述のウェーハ移載方法を行う工程と、前記サセプタに移載された前記シリコンウェーハにエピタキシャル膜を形成する気相成長工程とを備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る気相成長装置の一方向から見たときの模式図。
【
図2】前記気相成長装置の前記一方向と直交する方向から見たときの模式図。
【
図3】前記気相成長装置のサセプタおよびサセプタ支持部材の斜視図。
【
図5】前記気相成長装置のリフトピン支持部材におけるリフトピンの支持状態を示す模式図。
【
図6】前記気相成長装置を用いたエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法の説明図であり、(A)はサセプタ上方にシリコンウェーハが搬送されたときの平面図、(B)はシリコンウェーハがリフトピンに接触したときの側面図、(C)はサセプタにシリコンウェーハが載置されたときの平面図。
【
図7】前記エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法の説明図であり、(A)は反りが生じたp++型またはp-型のシリコンウェーハがリフトピンに接触したときの側面図、(B)は反りが生じたp-型のシリコンウェーハがリフトピンに接触したときの側面図。
【
図8】(A)は本発明の変形例に係るシリコンウェーハがリフトピンに接触したときの側面図、(B)は他の変形例に係るシリコンウェーハがリフトピンに接触したときの側面図。
【
図9】本発明の実施例におけるシリコンウェーハの目標載置位置に対する載置位置の分布を示し、(A)は比較例の分布、(B)は実施例1の分布、(C)は実施例2の分布を表す。
【
図10】
図9の結果に基づきシリコンウェーハの搬送停止位置を調整した場合のシリコンウェーハの目標載置位置に対する載置位置の分布を示し、(A)は実施例1の分布、(B)は実施例2の分布を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について説明する。
〔気相成長装置の構成〕
図1に示すように、気相成長装置1は、チャンバ2と、サセプタ3と、加熱部4と、ウェーハ移載装置5とを備えている。
【0028】
チャンバ2は、上ドーム21と、下ドーム22と、各ドーム21,22の外縁同士を固定するドーム固定体23とを備え、これらによってエピタキシャル膜形成室20が区画されている。
上ドーム21および下ドーム22は、石英によって形成されている。
下ドーム22の中央には、下方に延びて、後述するリフトピン支持部材76の主柱761が挿通される筒部221が設けられている。
ドーム固定体23は、シリコンウェーハWをエピタキシャル膜形成室20に搬入出するためのウェーハ搬入出口24を備えている。ドーム固定体23は、
図2に示すように、エピタキシャル膜形成室20内にガスを供給するためのガス供給口25と、エピタキシャル膜形成室20からガスを排出するためのガス排出口26とを備えている。
【0029】
サセプタ3は、シリコンカーバイドで被覆されたカーボンによって円板状に形成されている。
サセプタ3の一方の主面には、シリコンウェーハWが収容される円形状のザグリ部31が形成されている。ザグリ部31の直径は、シリコンウェーハWの直径よりも大きくなっている。
サセプタ3の他方の主面の外縁近傍には、
図3にも示すように、後述する支持ピン753が嵌め込まれる3個の嵌合溝32が設けられている。嵌合溝32は、サセプタ3の周方向に120°間隔で設けられている。
また、サセプタ3には、両主面を貫通する第1,第2,第3の貫通孔33,34,35が設けられている。
各貫通孔33,34,35は、ザグリ部31内において、サセプタ3の周方向に120°間隔で設けられている。各貫通孔33,34,35は、
図4に示すように、シリコンウェーハWが載置されるザグリ部31の載置面31Aからサセプタ3の厚さ方向中心に向かうにしたがって内径が小さくなる円錐状のテーパ部33A,34A,35Aと、サセプタ3の厚さ方向で内径が等しい軸孔部33B,34B,35Bとを備えている。
【0030】
加熱部4は、
図1に示すように、チャンバ2の上側に設けられた上ヒータ41と、下側に設けられた下ヒータ42とを備えている。上ヒータ41および下ヒータ42は、赤外ランプやハロゲンランプによって構成されている。
【0031】
ウェーハ移載装置5は、サセプタ3にシリコンウェーハWを移載する。ウェーハ移載装置5は、搬送手段6と、載置手段7とを備えている。
【0032】
搬送手段6は、シリコンウェーハWを保持してサセプタ3上に搬送する。搬送手段6は、長手状の支持部材61(
図6(A)参照)と、搬送ロボット62とを備えている。
支持部材61は、例えば、石英によって細長い長方形板状に形成されている。支持部材61は、細長い長方形板状の本体部61Aと、この本体部61Aの先端の幅方向両端から延びる一対の延出部61Bと備えている。
搬送ロボット62は、支持部材61の長手方向の一端側を保持する。搬送ロボット62は、支持部材61をその長手方向に移動させることで、支持部材61に載置されたシリコンウェーハWをチャンバ2内に搬送し、サセプタ3のザグリ部31にシリコンウェーハWが載置されたら支持部材61を元の位置まで移動させる。搬送ロボット62は、必要に応じて、シリコンウェーハWをチャンバ2内に搬送する前に、支持部材61をその長手方向と直交する方向に移動させ、サセプタ3におけるシリコンウェーハWの載置位置を調整する。
【0033】
載置手段7は、搬送手段6で搬送されたシリコンウェーハWをサセプタ3に載置する。載置手段7は、
図1,2,3,5に示すように、第1,第2,第3のリフトピン71,72,73と、相対移動手段74とを備えている。
【0034】
各リフトピン71,72,73は、例えばシリコンカーバイドで被覆されたカーボンによって同じ形の棒状に形成されている。各リフトピン71,72,73は、
図4に示すように、円錐台状の頭部71A,72A,73Aと、当該頭部71A,72A,73Aにおける直径が小さい方の端部から円柱状に延びる軸部71B,72B,73Bとを備えている。
各リフトピン71,72,73は、軸部71B,72B,73Bが各貫通孔33,34,35の軸孔部33B,34B,35Bに挿通され、その自重によって頭部71A,72A,73Aがテーパ部33A,34A,35Aに当接することによって、サセプタ3で支持される。頭部71A,72A,73Aは、各リフトピン71,72,73がサセプタ3で支持されているときに、その上端がザグリ部31の載置面31Aよりも下方に位置するように形成されていることが好ましい。軸部71B,72B,73Bは、その中心軸が各貫通孔33,34,35の軸孔部33B,34B,35Bの中心軸と一致するように配置されたときに、軸孔部33B,34B,35Bとの間に、クリアランスCが設けられる太さに形成されている。
【0035】
相対移動手段74は、各リフトピン71,72,73とサセプタ3とを相対移動させることによって、搬送手段6で搬送されたシリコンウェーハWをサセプタ3に載置する。相対移動手段74は、サセプタ支持部材75と、リフトピン支持部材76と、駆動手段77とを備えている。
【0036】
サセプタ支持部材75は、石英で形成されている。サセプタ支持部材75は、円柱状の主柱751と、当該主柱751の先端から放射状に延びる3本のアーム752と、各アーム752の先端に設けられた支持ピン753とを備えている。
アーム752は、主柱751の周方向に120°間隔で斜め上方に延びるように設けられている。アーム752の長手方向の中央には、当該アーム752を貫通する貫通孔752Aが設けられている。
各支持ピン753は、無垢のSiCで形成されており、サセプタ3の各嵌合溝32にそれぞれ嵌め込まれることで、当該サセプタ3を支持する。
【0037】
リフトピン支持部材76は、石英で形成されている。リフトピン支持部材76は、円筒状の主柱761と、当該主柱761の先端から放射状に延びる第1,第2,第3のアーム762,763,764と、各アーム762,763,764の先端に設けられた第1,第2,第3の当接部765,766,767とを備えている。
各アーム762,763,764は、主柱761の周方向に120°間隔で斜め上方に延びるように設けられている。
各当接部765,766,767は、それぞれの上端面765A,766A,767Aにて各リフトピン71,72,73を下方から支持する。第1の当接部765は、第2,第3の当接部766,767よりも高く形成されている。上端面765Aと、上端面766A,767Aとの高さの差ΔHは、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、2mm以上3mm以下であることがより好ましい。
【0038】
主柱761は、各アーム762,763,764がエピタキシャル膜形成室20内に位置する状態で、下ドーム22の筒部221に挿通されている。主柱761の内部には、各アーム762,763,764がサセプタ支持部材75の各アーム752の下方に位置する状態で、かつ、サセプタ3で支持された各リフトピン71,72,73の下端が各当接部765,766,767の上端面765A,766A,767Aに当接可能な状態で、主柱751が挿通されている。
【0039】
駆動手段77は、サセプタ支持部材75およびリフトピン支持部材76を回転させたり、リフトピン支持部材76を昇降させたりする。
【0040】
〔エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法〕
次に、気相成長装置1を用いたエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法について説明する。
まず、p型またはn型のシリコンウェーハWを準備する。シリコンウェーハWがp型の場合、ボロンが添加されており、n型の場合、リン、砒素、アンチモンが添加されている。シリコンウェーハWの直径は、200mm、300mm、450mmなど、いずれの大きさであってもよい。
次に、窒素雰囲気の図示しないロボット室内に配置された搬送手段6の支持部材61は、シリコンウェーハWをその主面が水平面と平行になるように支持する。その後、ロボット室とチャンバ2との間に配置された図示しないゲートバルブが開かれると、搬送手段6の搬送ロボット62は、主面が水平面と平行になる状態を維持したまま、ウェーハ搬入出口24を介して、シリコンウェーハWを加熱部4で加熱されたエピタキシャル膜形成室20内に搬入し、サセプタ3のザグリ部31上で停止させる。
このとき、
図6(A)に示すように、サセプタ3は、第1貫通孔33が一対の延出部61Bの間の中心位置かつシリコンウェーハWの中心W
Cよりも搬入方向側に位置し、第2,第3の貫通孔34,35が本体部61Aの外側かつ中心W
Cよりも搬出方向側(ロボット室側)に位置するように、回転方向の位置が調整されている。
【0041】
次に、ウェーハ移載装置5の駆動手段77は、リフトピン支持部材76を上昇させ、サセプタ3で支持されている各リフトピン71,72,73を上昇させる。このとき、第1の当接部765の上端面765Aが、第2,第3の当接部766,767の上端面766A,767Aよりも上方に位置しているため、各リフトピン71,72,73は、第1のリフトピン71の頭部71Aが第2,第3のリフトピン72,73の頭部72A,73Aよりも上方に位置した状態を維持したまま、上昇する。したがって、第1のリフトピン71が最初にシリコンウェーハWの下面に接触し、その後、第2,第3のリフトピン72,73が接触する。
【0042】
ここで、仮に、リフトピン支持部材76の当接部765,766,767を同じ高さに形成した場合、各リフトピン71,72,73の頭部71A,72A,73Aが同じ高さに位置した状態を維持したまま、上昇する。シリコンウェーハWは、エピタキシャル膜形成室20内において加熱部4で加熱されるため、当該シリコンウェーハWの両主面の温度差や熱吸収の差によって反りが生じる。この場合、シリコンウェーハWの反りの状態によって、シリコンウェーハWに最初に接触するリフトピンが第1のリフトピン71であったり、第2のリフトピン72であったりして安定しない。
【0043】
サセプタ3の各貫通孔33,34,35の軸孔部33B,34B,35Bは、各リフトピン71,72,73の軸部71B,72B,73Bとの間に、クリアランスCが設けられるように形成されている。このため、例えば、
図6(B)に二点鎖線で示すシリコンウェーハWに、第1のリフトピン71が最初に接触してさらに上昇すると、シリコンウェーハWの重量が第1のリフトピン71のみに作用し、かつ、第1のリフトピン71の下端が第1の当接部765に固定されていないため、クリアランスCの存在によって、第1のリフトピン71が傾いてしまう。具体的には、第1のリフトピン71は、サセプタ3の中心から第1の貫通孔33に向かう第1の方向D
1側に、頭部71Aが移動するように傾く。この第1のリフトピン71の傾きによって、
図6(B)に実線で示すように、シリコンウェーハWは、搬送手段6によるサセプタ3上の停止位置よりも第1の方向D
1側にずれる。
【0044】
この状態で、さらにリフトピン支持部材76を上昇させると、各リフトピン71,72,73の全てがシリコンウェーハWに接触して、当該シリコンウェーハWが支持部材61から持ち上げられるが、この持ち上げられたときのシリコンウェーハWの位置は、サセプタ3上の停止位置よりも第1の方向D
1側にずれる。
搬送手段6が支持部材61をチャンバ2の外部に移動させ、ゲートバルブが閉じられると、駆動手段77がリフトピン支持部材76を下降させ、シリコンウェーハWがサセプタ3のザグリ部31内に載置されるが、シリコンウェーハWの載置位置は、
図6(C)に示すように、サセプタ3上の目標載置位置Pよりも第1の方向D
1側にずれた状態が維持される。
【0045】
このようなシリコンウェーハWの載置位置のずれは、第2のリフトピン72や第3のリフトピン73が最初にシリコンウェーハWに接触した場合にも同様に発生する。そのずれる方向は、第2のリフトピン72が最初に接触した場合には、
図6(A)に示すように、サセプタ3の中心から第2の貫通孔34に向かう第2の方向D
2となり、第3のリフトピン73が最初に接触した場合には、サセプタ3の中心から第3の貫通孔35に向かう第3の方向D
3となる。
このように、各リフトピン71,72,73の頭部71A,72A,73Aが同じ高さに位置した状態を維持したまま、これらを上昇させる場合には、シリコンウェーハWのサセプタ3上の載置位置がどの方向にずれるかわからない。
【0046】
これに対し、本実施形態では、第1のリフトピン71を最初にシリコンウェーハWの下面に接触させるため、各リフトピン71,72,73の全てがシリコンウェーハWに接触したときのシリコンウェーハWのずれる方向は、第1の方向D1のみとなる。
搬送手段6の搬入によるシリコンウェーハWの停止位置は、一般的には、サセプタ3上におけるシリコンウェーハWの目標載置位置Pの真上になるが、本実施形態では、高い確率でシリコンウェーハWの載置位置が当該停止位置から第1の方向D1にずれることが分かっている。このため、このずれ量ΔDを予め把握しておき、目標載置位置Pの真上からΔDだけ第1の方向D1の反対方向側に戻った位置に、搬送手段6によるシリコンウェーハWの停止位置を設定しておくことにより、シリコンウェーハWをサセプタ3上の目標載置位置Pに載置できる。
【0047】
また、支持部材61によってシリコンウェーハWがサセプタ3上で支持されている状態では、サセプタ3からの輻射熱によって、シリコンウェーハWの下面側の温度が上面側の温度よりも高くなっている。
シリコンウェーハWがp++型の場合、シリコンウェーハWの熱吸収率が高いために、上記輻射熱の影響によるシリコンウェーハWの上下面の温度差がつきやすい。このため、シリコンウェーハWは、サセプタ3上に搬入されると、短時間で、
図7(A)に示すように、下面が下側に突出するように反る。つまり、シリコンウェーハWは、支持部材61の一対の延出部61Bの間に存在する部分が、本体部61Aの外側に存在する部分よりも低くなるように反る。したがって、
図7(A)に二点鎖線で示すように一対の延出部61Bの間に存在する第1のリフトピン71が、最初にシリコンウェーハWに接触しやすくなる。
【0048】
一方、シリコンウェーハWがp-型の場合、シリコンウェーハWの熱吸収率がp++型と比べて低いために、輻射熱の影響によるシリコンウェーハWの上下面の温度差がつきにくい。このため、シリコンウェーハWは、サセプタ3上に搬入されると、
図7(A)に示すように、下面が下側に突出するように反ったり、
図7(B)に示すように、上面が上側に突出するように反ったりする。つまり、シリコンウェーハWは、一対の延出部61Bの間に存在する部分が、本体部61Aの外側に存在する部分よりも低くなったり、高くなったりするように反る。
【0049】
シリコンウェーハWが
図7(A)に示すように反る場合、p++型の場合と同様に、第1のリフトピン71が最初にシリコンウェーハWに接触しやすくなる。
一方、シリコンウェーハWが
図7(B)に示すように反る場合、各リフトピン71,72,73の高さ位置を同じにすると、本体部61Aの外側に存在する第2のリフトピン72または第3のリフトピン73に最初に接触しやすくなり、載置位置がどの方向にずれるかを予め把握しにくくなる。その結果、シリコンウェーハWを目標載置位置Pに載置できない場合が生じる。しかし、本実施形態では、第1のリフトピン71の高さ位置を第2,第3のリフトピン72,73よりも高くしているため、第1のリフトピン71と第2,第3のリフトピン72,73との高さの差をシリコンウェーハWの反り量よりも大きくすることで、
図7(B)に二点鎖線で示すように第1のリフトピン71を最初にシリコンウェーハWに接触させやすくなり、載置位置がどの方向にずれるかを予め把握できる。その結果、反り状態が安定しないp-型のシリコンウェーハWであっても、シリコンウェーハWを目標載置位置Pに載置できる。
なお、シリコンウェーハWの反り量(シリコンウェーハWの外縁と中央との差)は、シリコンウェーハWの厚さやエピタキシャル膜形成室20内の温度にもよるが、1mm程度である。
【0050】
シリコンウェーハWがサセプタ3に載置された後、ガス供給口25からキャリアガスとしての水素ガスを連続的に導入しつつ、ガス排出口26から排出することで、エピタキシャル膜形成室20内を水素雰囲気にする。その後、エピタキシャル膜形成室20内の温度を上昇させ、キャリアガスとともに、原料ガス、ドーピングガスをエピタキシャル膜形成室20内に導入するとともに、駆動手段77がサセプタ支持部材75およびリフトピン支持部材76を回転させることによって、シリコンウェーハWにエピタキシャル膜を形成する。
なお、原料ガスとしては、例えばSiH4(モノシラン)、SiH2Cl2(ジクロールシラン)、SiHCl3(トリクロロシラン)、SiCl4(四塩化シリコン)などが使用される。ドーピングガスとしては、エピタキシャル膜がP型の場合には、B2H6(ジボラン)、BCl3(トリクロロボラン)などのボロン化合物が使用され、N型の場合には、PH3(フォスフィン)、AsH3(アルシン)などが使用される。
【0051】
エピタキシャル膜の形成後、駆動手段77は、リフトピン支持部材76を上昇させて、各リフトピン71,72,73でシリコンウェーハWをサセプタ3から持ち上げる。その後、ゲートバルブが開くと、搬送ロボット62は、支持部材61をエピタキシャル膜形成室20内部に移動させて、シリコンウェーハWの下方で停止させる。そして、駆動手段77がリフトピン支持部材76を下降させてシリコンウェーハWを支持部材61に受け渡すと、搬送ロボット62が支持部材61をシリコンウェーハWとともにエピタキシャル膜形成室20の外部に搬出し、1枚のエピタキシャルシリコンウェーハの製造処理が終了する。
【0052】
〔実施形態の作用効果〕
上述の実施形態によれば、各リフトピン71,72,73のうち第1のリフトピン71をシリコンウェーハWに最初に当接させるため、予め第1の方向D1へのシリコンウェーハWの載置位置のずれ量を把握し、搬送手段6によるシリコンウェーハWの停止位置を設定しておくことにより、シリコンウェーハWを所望の位置に載置できる。
【0053】
第1の当接部765を第2,第3の当接部766,767よりも高く形成しているため、同じ形の各リフトピン71,72,73を用いても、シリコンウェーハWを所望の位置に載置できる。
【0054】
各リフトピン71,72,73のうち、一対の延出部61Bの間に位置する第1のリフトピン71を、特定のリフトピンとしてシリコンウェーハWの下面に最初に接触させている。このため、反り状態が安定しないp-型のシリコンウェーハWであっても、シリコンウェーハWを目標載置位置Pに載置できる。
【0055】
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
【0056】
例えば、
図8(A)に示すように、各当接部765,766,767の高さを同じにして、第1のリフトピン71の長さを第2,第3のリフトピン72,73よりも長くすることで、その主面が水平面と平行になるように搬入されたシリコンウェーハWに、第1のリフトピン71を最初に当接させるようにしてもよい。
図8(B)に示すように、各当接部765,766,767の高さを同じにするとともに、各リフトピン71,72,73の長さを同じにして、搬送手段6の支持部材61でその主面が水平面に対して傾斜するようにシリコンウェーハWを搬入することで、第1のリフトピン71をシリコンウェーハWに最初に当接させるようにしてもよい。
【0057】
上記実施形態や
図8(A),(B)に示す変形例では、第1のリフトピン71をシリコンウェーハWに最初に当接させたが、第2のリフトピン72や第3のリフトピン73を最初に当接させてもよい。第2のリフトピン72や第3のリフトピン73を最初に当接させる場合、第2の方向D
2や第3の方向D
3にシリコンウェーハWの載置位置がずれることになるが、シリコンウェーハWをエピタキシャル膜形成室20に搬入する前に、ずれる方向に応じて、支持部材61をシリコンウェーハWの搬入方向と直交する方向に移動させることによって、シリコンウェーハWを所望の位置に載置できる。
【0058】
また、各リフトピン71,72,73をサセプタ3の周方向180°回転させた状態で配置してもよい。リフトピンの本数は、4本以上であってもよい。
各リフトピン71,72,73の全てでシリコンウェーハWを搬送手段6から受け取った後に、各リフトピン71,72,73を停止させて、または、下降させつつ、サセプタ3を上昇させてシリコンウェーハWをサセプタ3に載置してもよい。
【実施例】
【0059】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0060】
〔比較例〕
まず、上記実施形態と同様の気相成長装置と、直径が300mmかつ厚さが775μmのp-型のシリコンウェーハWとを準備した。各リフトピン71,72,73として、軸部71B,72B,73Bと、各貫通孔33,34,35の軸孔部33B,34B,35BとのクリアランスCが0.25mmのものを準備した。
そして、各リフトピン71,72,73の高さ位置を同じにして、エピタキシャル膜形成室20内を700℃に加熱して、シリコンウェーハWのサセプタ3への載置処理を行った。サセプタ3に載置されたシリコンウェーハWの中心と、目標載置位置Pの中心とのずれを、測定装置(Epicrew社製 Edge Zoom)を用いてサセプタ上方から測定した。100枚のシリコンウェーハWに対して同様の実験を行った。
【0061】
〔実施例1〕
第1のリフトピン71の高さ位置を、第2,第3のリフトピン72,73の高さ位置よりも1mm高くしたこと以外は、比較例1と同様の実験を行った。
【0062】
〔実施例2〕
第1のリフトピン71の高さ位置を、第2,第3のリフトピン72,73の高さ位置よりも2mm高くしたこと以外は、比較例1と同様の実験を行った。
【0063】
〔評価〕
比較例、実施例1,2のそれぞれの測定結果を、
図9(A),(B),(C)に示す。
なお、
図9(A),(B),(C)において、縦軸Yおよび横軸Xの値は、
図1、
図2、
図6(A)~(C)、
図7(A),(B)のXYZ軸を基準とした値である。すなわち、縦軸Yの正の値は、シリコンウェーハWの搬出方向へのずれを示し、負の値は、シリコンウェーハWの搬入方向(第1の方向D
1)へのずれを示す。また、横軸Xの正の値は、搬入方向と直交する一方の方向(第3の方向D
3側)へのずれを示し、負の値は、搬入方向と直交する他方の方向(第2の方向D
2側)へのずれを示す。
また、横軸および縦軸の位置がともに0mmの場合、シリコンウェーハWの載置位置が目標載置位置Pからずれていないことを表す。
【0064】
比較例では、
図9(A)に示すように、載置位置が目標載置位置Pからサセプタ3の周方向の各位置にずれており、ずれ位置のばらつきが大きかった。
これは、上述したように、p-型のシリコンウェーハWの反りが
図7(A)または
図7(B)のいずれかの状態で発生するため、シリコンウェーハWに最初に接触するリフトピンが特定されなかったためと考えられる。
【0065】
これに対し、実施例1では、
図9(B)に示すように、載置位置が目標載置位置Pからずれた特定の2箇所に集中しており、比較例よりもずれ位置のばらつきが小さかった。
さらに、実施例2では、
図9(C)に示すように、載置位置が目標載置位置Pからずれた特定の1箇所に集中しており、比較例および実施例1よりもずれ位置のばらつきが小さかった。
これは、反りの方向が安定しないp-型のシリコンウェーハWであっても、第1のリフトピン71の高さ位置を第2,第3のリフトピン72,73よりも高くすることで、第1のリフトピン71がシリコンウェーハWに最初に接触する確率が高くなり、高さ位置の差が大きくなるほどその確率が高くなったためと考えられる。
【0066】
また、第1のリフトピン71の高さ位置と、第2,第3のリフトピン72,73の高さ位置との差を、2mmよりも大きくすれば、さらに目標載置位置Pから載置位置のずれのばらつきが小さくなると推定できる。
【0067】
以上のことから、第1のリフトピン71の高さ位置を、第2,第3のリフトピン72,73よりも高くすることによって、シリコンウェーハW載置位置の目標載置位置Pからのずれのばらつきを抑制できることが確認できた。
特に、第1のリフトピン71の高さ位置と、第2,第3のリフトピン72,73の高さ位置との差を2mm以上にすれば、シリコンウェーハWの載置位置を特定の1箇所に集中させることができ、ずれのばらつきがより小さくなることが確認できた。
【0068】
このような結果に基づいて、各リフトピン71,72,73の高さ位置の設定条件に応じた、シリコンウェーハWの載置位置のずれ量およびずれ方向を予め把握しておき、例えば、実施例1の条件では
図10(A)に示すような位置に、実施例2の条件では
図10(B)に示すような位置に、シリコンウェーハWが載置されるように、搬送手段6によるシリコンウェーハWの搬送停止位置をずらしておけば、シリコンウェーハWを所望の位置に載置できる。
【符号の説明】
【0069】
1…気相成長装置、3…サセプタ、5…ウェーハ移載装置、6…搬送手段、7…載置手段、33,34,35…貫通孔、61…支持部材、71,72,73…リフトピン、74…相対移動手段、76…リフトピン支持部材、765,766,767…当接部、W…シリコンウェーハ。