(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】アクチュエータ、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、及び、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220906BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20220906BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220906BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/16 305
B41J2/14 611
B41J2/14 613
H01L41/09
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2018244624
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018051173
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】黒田 隆彦
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-353868(JP,A)
【文献】特開2012-196829(JP,A)
【文献】特開2017-114032(JP,A)
【文献】特開2004-034417(JP,A)
【文献】米国特許第05604521(US,A)
【文献】特開2004-090471(JP,A)
【文献】特開2001-162809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
H01L 41/09
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板内に形成された空間の一つの内壁面を構成する板状部分を有するアクチュエータにおいて、
前記板状部分は特定波長の光を通さない材料と特定波長の光を透過する材料とを含んでおり、
この板状部分における前記空間の周縁のうちの少なくとも二箇所に対応する部分は前記特定波長の光を透過する材料で構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1のアクチュエータにおいて、
ノズルと、該ノズルに連通する前記空間としての加圧液室と、該加圧液室の内壁面の一部を構成する前記板状部分としての振動板と、該振動板の前記加圧液室側とは反対側に設けられた電気機械変換素子とを有し、前記電気機械変換素子における前記二箇所に対応する箇所には前記電気機械変換素子の電極が設けられていないことを特徴するアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2のアクチュエータにおいて、
前記振動板はSi層とSiO
2層とを有し、
前記二箇所に対応する箇所はSiO
2層で構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項3のアクチュエータにおいて、
前記二箇所に対応する箇所を構成しているSiO
2層には、前記特定波長の光を透過する引張応力膜を具備することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4のアクチュエータにおいて、
前記引張応力膜は、Al
2O
3、Si
3N
5、および、ZrO
2の何れかからなる膜、あるいは、それぞれ何れかからなる膜が二層以上積層された膜であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータが形成された基板上には、前記板状部分の変形を許容する空隙部が形成された空隙部形成基板が接合されており、前記空隙部形成基板における前記二箇所に対応する箇所にはそれぞれ貫通孔が形成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
ノズルから吐出する液体が供給される加圧液室が形成された基板と、該加圧液室の一つの内壁面を構成する振動板とを有するアクチュエータにおいて、
前記基板には、前記液体が供給されないダミー室が形成されており、該ダミー室の幅は前記加圧液室の幅と同じ寸法であり、
前記ダミー室には、少なくとも幅方向における周縁の二箇所には壁面が無いことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアクチュエータにより液体を吐出させることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構のうちの少なくとも1つと、前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項11】
請求項8に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項9若しくは10に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、及び、液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板内に形成された空間の一つの内壁面を構成する板状部分を有するアクチュエータが知られている。例えば、インクジェット記録装置の液体吐出ヘッドは、基板内に形成された空間である加圧液室を有するアクチュエータを備えている。この加圧液室内の液体を吐出するためのノズル孔が形成されたノズル板と、これに液室内を挟んで反対側の内壁面を形成する板状部分である振動板とを備えている。この振動板の加圧液室とは反対側の面に、電気機械変換素子が設けられている。そして、この加圧液室内の寸法を測長するのに適した構造のものも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可視光に対して不透明な振動板を備え、加圧液室の端部に加圧液室に類似した形状の空間を測定用に形成し、その空間を振動板に相当する箇所に可視光に対して透明な仕切り板を設けた液体吐出ヘットが記載されている。この仕切り板を介して可視光により加圧液室内の振動板の幅を測長できるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の液体吐出ヘッドでは、板状部分である振動板が不透明の場合には、本来の加圧液室そのものの測長ができないという課題が残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、基板内に形成された空間を有するアクチュエータにおいて、前記空間の一つの内壁面を形成する板状部分の大部分を特定波長の光を通さない材質で形成し、この板状部分における前記空間の周縁のうちの少なくとも二箇所に対応する部分を前記特定波長の光を透過する材質で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、板状部分が不透明の場合にも、アクチュエータが有する空間そのものの測長ができできるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における液体吐出ヘッドの内部構成を示す部分破断した斜視図。
【
図7】加圧液室のエッジを検出する具体的な方法の一例の説明図。
【
図8】加圧液室が圧電素子部側よりも底部側の幅が狭くなるように壁面が傾斜している順テーパー形状の場合の説明図。
【
図9】加圧液室が底部側よりも圧電素子部側の幅が狭くなるように壁面が傾斜している逆テーパー形状の場合の説明図。
【
図10】測定可能な構造として透孔を形成した例の説明図。
【
図11】他の実施形態における液体吐出ヘッドの断面図。
【
図12】更に他の実施形態における液体吐出ヘッドの断面図。
【
図16】更に他の実施形態に係る液体吐出ヘッドの斜視図。
【
図17】実施形態におけるインクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【
図18】
図17のインクジェット記録装置の機構部の一例を示す側面図である。
【
図19】液体吐出ユニットの一例を示す要部平面説明図である。
【
図20】液体吐出ユニットの他の例を示す要部平面説明図である。
【
図21】液体吐出ユニットの更に他の例を示す正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本発明を、液体を吐出する装置である画像形成装置としてのインクジェット記録装置の液体吐出ヘッドに適用した一実施形態について説明する。
【0009】
図1は、この発明の有するサブフレーム基板を具備し圧電型アクチュエータを有する液体吐出ヘッド部の斜視図、
図2は、圧電型アクチュエータの2つ分を表わした底面図、
図3は、
図2のA-A’断面図、そして
図4は、
図2のB-B’断面図である。
【0010】
図に示すように、液体吐出ヘッド部1は、基板面部に設けたノズル孔6から液滴を吐出させるサイドシュータータイプのものであり、アクチュエータ基板100、サブフレーム基板200及びノズル基板300を備える。
【0011】
アクチュエータ基板100は、液体吐出エネルギーを発生する圧電体素子2、振動板3を備えている。また、加圧液室隔壁4、加圧液室5、流体抵抗部7、及び共通液室8が形成されている。各加圧液室5は加圧液室隔壁4で仕切られている。また、引き出し配線層を保護する目的でパッシベーション膜50が形成されている(
図3,
図4参照)。
【0012】
サブフレーム基板200は、アクチュエータ基板100上に設けられる。外部から液体を供給する液体供給口66と共通液体供給路9、および振動板3が撓むことができるように空隙部67(ザグリ)が形成されている(
図3,
図4参照)。なお、サブフレーム基板200は、空隙部形成基板を構成している。また、空隙部67は圧電体素子2を覆うため、サブフレーム基板200は保護基板とも称される。
【0013】
ノズル基板300は、個々の加圧液室5に対応した位置にノズル孔6が形成されている。これらアクチュエータ基板100、サブフレーム基板200、およびノズル基板300を接合することにより、液体吐出ヘッド部1が形成されている。
【0014】
ここでは、本発明の特徴であるアクチュエータ部68を適用している。本発明の特徴であるアクチュエータ部68は、駆動させないダミービットであってもよい。
アクチュエータ基板100は、
図1、2、3,4に示すように、加圧液室5の一部壁面を形成する振動板3と振動板3を介して加圧液室5と対向する側に圧電体素子2が形成されている。この圧電体素子2は、共通電極10と個別電極11と圧電体12とから形成されている。また、振動板3は、加圧液室に連なる流体抵抗部7の一部壁面も形成している。そして、共通液室8に対応する箇所は貫通孔が形成され、サブフレーム基板200の共通液体供給路9を介して外部からの液体であるインクを共通液室8に供給できるようになっている。
【0015】
このように形成された液体吐出ヘッド部1においては、各加圧液室5内に液体、例えば記録液(インク)が満たされた状態で、制御部から画像データに基づいて、記録液の吐出を行いたいノズル孔6に対応する個別電極11に対してパルス電圧を印加する。たとえば、発振回路により、引き出し配線、層間絶縁膜45に形成された接続孔を介して20Vのパルス電圧を印加する。この電圧パルスを印加で、電歪効果により圧電体12そのものが振動板3と平行方向に縮み、振動板3が加圧液室5方向に撓む。これにより、加圧液室5内の圧力が急激に上昇して、加圧液室5に連通するノズル孔6から記録液が吐出する。次に、パルス電圧印加後は、縮んだ圧電体12が元に戻ることから撓んだ振動板3が元の位置に戻り、加圧液室5内が共通液室8内に比べて負圧となる。この負圧で、外部から液体供給口66を介して供給されているインクが共通液体供給路9、共通液室8から流体抵抗部7を介して加圧液室5に供給される。これを繰り返すことにより、液滴を連続的に吐出でき、液体吐出ヘッドに対向して配置した被記録媒体(用紙)に画像を形成する。
【0016】
そして、本実施形態では、
図2に破線で示す可視光透過領域を形成するための可視光透過用加工領域15(図示の例では一つの加圧液室5につき6箇所)を設けている。この可視光透過用加工領域15は、
図4に示すように、他の加圧液室の箇所(
図3参照)では、振動板3を構成していた振動版可視光不透過膜21(後述する活性層Si 16)や共通電極10が存在しないようにし、可視光透過膜20(後述するBox層SiO
2 17)のみとしている。この可視光透過用加工領域15のうち加圧液室5と重なる範囲では、アクチュエータ基板100の加圧液室内から圧電素子側へ、また、アクチュエータ基板100の圧電素子側から加圧液室内へ可視光で透過できる。しかも、特に加圧液室5の幅方向での振動板3における隔壁4の加圧液室内面位置(加圧液室の幅方向にかける境界位置)を含むように可視光透過用加工領域15が設定されている。図示の例では四隅の可視光透過用加工領域15は長手方向における境界位置も含むようになっている。これにより、可視光透過用加工領域15のうち加圧液室5と重なる、図中ハッチングを付した領域が可視光透過領域15´になる。
【0017】
図5は製造工程の説明図である。実際には、ウェハ上に複数のチップに相当するパターンを形成するが、ここでは、本発明を含むアクチュエータ基板100のアクチュエータ部68の2ビット分について記述する。
(a)アクチュエータ基板100として面方位(110)のSOI基板(例えば板厚400μm)用い、活性層Si 16とBox層SiO
2 17とを後の振動板3として用いる。活性層Siは、可視光を透過しないため、加圧液室の幅寸法を可視光の透過光でエッジ検出して測定できるよう、可視光透過用加工領域15の活性層Si 16をリソエッチ法により除去する。この時のSiエッチは、例えばボッシュ法を用いたICPエッチャーでエッチングすることにより、下地のBox層SiO
2 17を殆どエッチングすることなく、可視光透過用加工領域15の活性層Siを除去することができる。
【0018】
ここで、活性層Si 16の膜厚は、液滴を最適に吐出できるように振動板3の剛性を得るための機能を有し、1μm~20μmの範囲で任意に設定する。SOI基板の活性層Si 16を振動板に用いるのは、その厚みに関わらず、膜厚交差を±0.2μm程度にでき、振動板剛性のバラツキに関し、他の振動板形成方法、例えばCVD法の積層膜に比べて優位である。よって、ビット間でバラツキの小さい高精度のアクチュエータを得ることができる。また、Box層SiO2 17の膜厚は、後に形成する加圧液室5形成のエッチング時のストッピング層としての機能が必要であるので、70nmから1μmの膜厚を任意に設定すればよい。ここでは、振動板3をSOIウェハの活性層Si 16としたが、可視光を透過しない振動板材料、例えばポリシリコン膜を用いた場合も、加圧液室幅寸法を可視光の透過光で測定するためには、可視光透過用加工領域15を開口すればよい。
【0019】
(b)次に、共通電極10との密着性を得るために活性層Si 16上に熱酸化膜51としてSiO2を70nmから1μmの範囲で成膜する。
(c)次に、共通電極10として、例えば密着層としてのTiO2と電極としてのPtをスパッタ法で各々50nmと120nmの膜厚を成膜する。TiO2膜は、Tiをスパッタ法で成膜した後に酸素雰囲気でのRTA法でTiを酸化し、TiO2としてもよい。
【0020】
次に、圧電体12としてPZTを例えばスピンコート法で複数回に分けて成膜し、最終的に2μm厚成膜する。次に、Ptの個別電極11をスパッタ法で例えば70nm成膜する。ここで、圧電体12の成膜方法は、スピンコート法に限らず、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法、エアーゾル法、ゾルゲル法、あるいはインクジェット法等などで成膜してもよい。
【0021】
そして、リソエッチ法により、後に形成する加圧液室5に対応する位置に圧電体素子2を形成するため、個別電極11と圧電体12、及び共通電極10をパターニングする。その後、共通電極10をリソエッチ法でパターニングする。このとき、後に共通液室8となる箇所の共通電極10層もパターニングする。
【0022】
(d)次に、共通電極10、圧電体12と後に形成する引き出し配線とを絶縁するために層間絶縁膜45を成膜する。層間絶縁膜45は、例えばプラズマCVD法でSiO2膜を成膜する。層間絶縁膜45は、圧電体12や電極材料に影響を及ぼさず、絶縁性を有する膜であれば、プラズマCVD法のSiO2以外の膜でもよい。
【0023】
次に、個別電極11と引き出し配線とを接続する接続孔をリソエッチ法で形成する。共通電極10も引き出し配線と接続する場合は、同様に接続孔を形成する。
【0024】
次に、引出配線として、例えばTiN/Alを各々膜厚30nm/1μmをスパッタ法で成膜する。TiNは、接続孔底部で、個別電極11、あるいは共通電極10の材料であるPtと、引き出し配線の材料であるAlとが直接接するのを避けるバリア層として適用している。直接接した場合、後の工程による熱履歴で合金化し、体積変化によるストレスで膜剥がれ等が生じるのを防止するためである。
【0025】
次に、パッシベーション膜50として、例えばプラズマCVD法でシリコン窒化膜を700nm厚成膜する。その後、リソエッチ法で、引き出し配線の引き出し配線パッド部とアクチュエータ部68、及び共通液体供給路9部の開口も行う。
次に、リソエッチ法により、共通液室流路9部、後の共通液室8部になる箇所の振動板3を除去する。
【0026】
(e)次に、液体供給口66、アクチュエータ部68の位置に対応した空隙部67を備えたサブフレーム基板200をアクチュエータ基板100に接合部48を介して接着剤で接合する。接着剤は、一般的な薄膜転写装置により、サブフレーム基板200側に厚さ1~4μm程度塗布している。
【0027】
次に、その後の加圧液室5、共通液室8、流体抵抗部7を形成するためにアクチュエータ基板100を所望の厚さt(例えば厚さ80μm)になるように、公知の技術で研磨する。研磨法以外にもエッチングなどでもよい。
【0028】
次に、リソ法により、加圧液室5、共通液室8、流体抵抗部7以外の隔壁部をレジストで被覆する。その後、アルカリ溶液(KOH溶液、あるいはTMHA溶液)で異方性ウェットエッチをおこない加圧液室5、共通液室8、流体抵抗部7を形成する。アルカリ溶液による異方エッチ以外にICPエッチャーを用いたドライエッチで加圧液室5、共通液室8、流体抵抗部7を形成してもよい。
次に、別に形成した各加圧液室5に対応した位置にノズル孔6を開口したノズル基板300を接合する。以上により、液体吐出ヘッド部1が完成する。
【0029】
加圧液室の加工寸法精度が重要であるため、液室底部(圧電素子側)と上部寸法を光学式の測定装置で測長する。底部側の寸法測定は、上部側(加圧液室側)から透過光を照射し、底部側(圧電素子部側)から可視光を透過する振動板越しに測長する。しかし、可視光を透過しない材料(例えば単結晶Si)越しに下層のパターンエッジ(ここでは加圧液室底部)を検出することは、困難である。赤外光を透過する材料であれば、赤外光で透過させ、下地のエッジを検出して加圧液室5の幅寸法の測定は可能である。しかし、赤外光は可視光に比べて波長が大きいため、解像度が可視光に比べて低く、1μm以下の解像度を得ることができず、微細加工の寸法測定には適さない。また、可視光も赤外光も透過しない材料ならば、寸法の測定はまったく不可能である。
【0030】
そこで、本実施例では、必要最小限の可視光透過領域15´を設けることにより、加圧液室の幅寸法を測定精度の高い可視光の透過光で測定できることを特徴としている。つまり、アクチュエータ部68に必要最小限の可視光透過領域15´を形成することにより、可視光が透過し、加圧液室5のエッジが視認できるため、加圧液室5の幅が測定可能となる。
【0031】
図6(b)に示すように、可視光透過領域15´がない箇所では、共通電極10層のPtと振動板3構成膜の活性層Si 16が可視光を透過せない。加圧液室5のエッジが圧電体素子部側とは反対側から入射した可視光を共通電極10層の表面で反射し、加圧液室5のエッジが視認できない。一方、
図6(a)に示すように、可視光透過領域の箇所では、振動板3のBox層SiO
2 17のみとなっているため、可視光が透過し、加圧液室5のエッジが確認できる。このように可視光透過領域15´を設けることで、加圧液室隔壁4の断面形状(テーパー、逆テーパー)に関わらず加圧液室5底部のアクチュエータ特性に大きく影響する幅寸法が測定可能となる。また、アクチュエータ機能を持たさなくても良い場合、例えば、寸法測定用パターンとしてなら、圧電体素子2がない構成でもよい。
【0032】
図7は、加圧液室のエッジを検出する具体的な方法の一例の説明図であ。
図7(a)にXで示す2つの可視光透過領域15´を含む範囲を顕微鏡で視認すると、
図7(b)に示すように、2つの可視光透過領域15´に対応する画像Iが検出される。2つの画像Iのそれぞれの外側のエッジE1,E2は液室のエッジに対応するので、画像のエッジE1,E2間距離を測定することで液室幅Wを測定することができる。
【0033】
なお、
図6(a)で示す矢印は、加圧液室の圧電素子部側とは反対側の底部から可視光を照射し、圧電素子部側から透過された光を検出することで、加圧液室の圧電素子部側の底部の幅寸法を測長する場合を示している。逆に加圧液室の圧電素子部側とは反対側の底部の幅寸法を測定する場合には、加圧液室の圧電素子部側とは反対側の液室底部から可視光を照射し、同じ側から測長する。このように、加圧液室の圧電素子部側とは反対側の底部から透過光を照射するため、測長はノズル基板300を接合する前に行う。
【0034】
また、加圧液室断面のテーパー角が90°以外であれば、可視光入射側と測長側を次のようにすることが望ましい。
図8は、加圧液室が圧電素子部側よりも底部側の幅が狭くなるように壁面が傾斜している順テーパー形状の場合の説明図である。
図8(a)に示すように、圧電素子部側の加圧液室幅W1の測長を行う場合、加圧液室の圧電素子部側から可視光を照射して同じ側から観察することが好ましい。また、
図8(b)に示すように、加圧液室の底部側の幅W2の測長を行う場合、加圧液室の底部側から可視光を照射して同じ側から観察することが好ましい。
【0035】
図9は、加圧液室が底部側よりも圧電素子部側の幅が狭くなるように壁面が傾斜している逆テーパー形状の場合の説明図である。
図9(a)に示すように、圧電素子部側の加圧液室幅W1の測長を行う場合、圧電素子部側、底部側からどちらからも可視光照射及び観察は可能であるが、底部側から可視光を照射して圧電素子部側から観察することが好ましい。
図9(b)に示すように、加圧液室の底部側の幅W2の測長においては、底部側から可視光を照射して同じ側から観察することが好ましい。
【0036】
図5を用いて説明した製造方法の例では、加圧液室5が形成された時点ではサブフレーム基板200が接合されている。よって、サブフレーム基板200の上記可視光透過領域15´に対応する箇所は寸法測定可能に形成していおく。
図10は、測定可能な構造として透孔201を形成した例の説明図である。このように測定可能な構造として透孔を形成する場合はサブフレーム基板200上に更に接合する共通液室を形成するプレートによってこれを塞ぐ。
図5を用いて説明した製造方法とは異なり、サブフレーム基板200を接合する前に、加圧液室5を形成する場合(例えば、サブフレーム基板200の接合はノズル基板300の接合の前後で行う場合)には、サブフレーム基板200に寸法測定可能にするための特別の構造を要しない。
【0037】
〔実施形態2〕
図11は他の実施形態に係る液体吐出ヘッドの断面図である。この実施形態に係る液体吐出ヘッドは可視光透過領域15´の材質が異なる以外は実施形態1と同じである。すなわち、実施形態1では、可視光透過領域15´が、薄いBox層SiO
2単層のみであり、SiO
2膜自体が圧縮応力を有するため、可視光透過領域15´は、その開口寸法によっては座屈することがある。可視光透過領域15´が座屈してしまうと最悪、可視光透過領域15´の膜が破れていしま不具合が発生し、アクチュエータ、及び液体吐出ヘッドの品質が著しく低下する。そこで、実施形態2では、このような座屈を起こさないように、可視光を透過する引張応力膜を付与することにより、座屈が生じないようし、アクチュエータの信頼性を向上させることを目的とする。
【0038】
実施形態2では、層間絶縁膜45を成膜する前に可視光透過引張応力膜44を成膜することにより、可視光透過領域15´の圧縮応力膜であるBox層SiO2 17上に可視光透過引張応力膜44が積層される。具体的に可視光透過引張応力膜44は、Al2O3、Si3N5、ZrO2などの引張応力を有し、且つ可視光を透過する材料を成膜する。これらの膜は、例えばスパッタ法、あるいはALD成膜法による成膜される。このように、実施形態2では、実施形態1と異なり、可視光透過領域15´が座屈する虞がすくなく、可視光透過領域が形成されるので、実施形態1の構成より更に精度よく寸法の測定が可能となる。
【0039】
〔実施形態3〕
図12は更に他の実施形態(実施形態3)に係る液体吐出ヘッドの断面図である。
この実施形態3は、可視光透過領域15´の構成膜を全て取り除いた構成とした。その他の点は前述の実施形態1や2と同一の構成である。これにより、加圧液室隔壁4のエッジが可視光透過領域15´に膜材料が存在せず、透過膜の影響を全く受けないため、加圧液室隔壁4の端部視認性が、実施形態1、2に比べて、最も精度良く寸法の測定が可能となる。
【0040】
但し、可視光透過領域に構成膜たないため、寸法測定だけの専用パターン(ダミーパターン)が前提となる。ダミーパターンには液体を供給しないので、液室の一部に膜材料が存在せずとも、液体漏れは生じない。実際には、液体吐出ヘッドとして、機能的に影響の無い領域に、この専用パターンを配置する必要がある。
また、実施形態1、2、3の何れにおいても、可視光透過用加工領域15は、
図13に示すように(A)の他、(B)、(C)又は(D)に示すような箇所に設けてもよい。何れも少なくとも幅方向に関して加圧液室隔壁エッジが視認できるように設定されている。
図13(A)と(D)は、加圧液室5の縦、横の寸法が測定できる構成である。また、ダミーパターンの場合は、圧電体素子2があってもなくてもよい。
【0041】
図14はダミーパターンの形成箇所の例を示す底面図である。
本来の加圧液室5の列の端部にダミーの液室5Aを形成し、この液室5Aに実施形態1と同様の可視光透過用加工領域15を形成した。
【0042】
図15は他のダミーパターンの形成箇所の例を示す底面図である
本来の加圧液室5の列の端部にダミーの液室5Aを形成するとともに、そのこから共通液室8が形成される長手方向の位置まで、加圧液室の幅を維持しながら室を延在させた。そして、この延在させた箇所に可視光透過用加工領域15を形成した。
【0043】
以上の各実施形態は、測長に可視光を使用する例であったが、これに限らない。要求する解像度によっては、例えば測定用に赤外光など使用することもでき、そのときは、可視光透過用加工領域は使用する測定用の光を透過できるように形成する。
【0044】
〔実施形態4〕
図16は実施形態1~4に係る液体吐出ヘッド部1を一体に備え、液体としてのインクを収容したインクカートリッジ105の斜視図である。このインクカートリッジ105は、ノズル6等を有する液体吐出ヘッド部1と、この液体吐出ヘッド部1に対してインクを供給するインクタンク105aとを一体化したものである。このようにインクタンク105aが一体型の液体吐出ヘッド1部の場合、アクチュエータ部を高精度化、高密度化、および高信頼化することで、インクカートリッジ105の歩留まりや信頼性を向上することができ、インクカートリッジ105の低コスト化を図ることができる。
【0045】
〔実施形態5〕
次に、本実施形態1~4に係る液体吐出ヘッド部1を備えた液体を吐出する装置であるインクジェット記録装置の一例について説明する。
図17は、実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す斜視図であり、
図18は、
図17のインクジェット記録装置の機構部の一例を示す側面図である。
本実施形態のインクジェット記録装置は、記録装置本体91の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した上記液体吐出ヘッド部1を有する液体吐出ヘッド(記録ヘッド)104、液体吐出ヘッド104へインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部92等を収納している。
【0046】
記録装置本体91の下方部には前方側から多数枚の用紙93を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)94を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙93を手差しで給紙するための手差しトレイ95を開倒することができる。そして、給紙カセット94或いは手差しトレイ95から給送される用紙93を取り込み、印字機構部92によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ96に排紙する。
【0047】
印字機構部92は、左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド101と従ガイドロッド102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ103にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッド(記録ヘッド)104を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列している。そして、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ103には液体吐出ヘッド104に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ105を交換可能に装着している。
【0048】
インクカートリッジ105は、上方に大気と連通する大気口、下方には液体吐出ヘッド104へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有している。そして、多孔質体の毛管力により液体吐出ヘッド104へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液体吐出ヘッドとしてここでは各色の液体吐出ヘッド104を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液体吐出ヘッドでもよい。
【0049】
ここで、キャリッジ103は、後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド101に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド102に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ103を主走査方向に移動走査するため、主走査モーター107で回転駆動される駆動プーリ108と従動プーリ109との間にタイミングベルト110を張装している。このタイミングベルト110をキャリッジ103に固定しており、主走査モーター107の正逆回転によりキャリッジ103が往復駆動される。
【0050】
次に、給紙カセット94にセットした用紙93を液体吐出ヘッド104の下方側に搬送する機構について説明する。まず、給紙カセット94から用紙93を分離給装する給紙ローラ111及びフリクションパッド112と、用紙93を案内するガイド部材113と、給紙された用紙93を反転させて搬送する搬送ローラ114を有している。そして、この搬送ローラ114の周面に押し付けられる搬送コロ115及び搬送ローラ114からの用紙93の送り出し角度を規定する先端コロ116と、を設けている。搬送ローラ114は、副走査モーター117によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0051】
キャリッジ103の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ114から送り出された用紙93を液体吐出ヘッド104の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材119を設けている。この印写受け部材119の用紙搬送方向下流側には、用紙93を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ121、拍車122を設けている。さらに用紙93を排紙トレイ96に送り出す排紙ローラ123及び拍車124と、排紙経路を形成するガイド部材125、126とを配設している。
【0052】
記録時には、キャリッジ103を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド104を駆動することにより、停止している用紙93にインクを吐出して1行分を記録し、用紙93を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙93の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙93を排紙する。
【0053】
また、キャリッジ103の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液体吐出ヘッド104の吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127は、キャップング手段と吸引手段とクリーニング手段とを有している。キャリッジ103は印字待機中には、この回復装置127側に移動されてキャッピング手段で液体吐出ヘッド104をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0054】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液体吐出ヘッド104の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。これにより、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0055】
本実施形態のインクジェット記録装置においては、前述の実施形態1~3の何れかの液体吐出ヘッド部1を有する液体吐出ヘッド104を備えている。このため、液体吐出ヘッド104の電気機械変換素子はインク吐出特性を良好に保持でき、安定したインク吐出を行うことが可能になる。
【0056】
本明細書において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0057】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0058】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。パターニング加工にあたってパターニング用の液体レジストを吐出する装置もある。
【0059】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0060】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0061】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0062】
また、「液体」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。具体的には、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0063】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0064】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0065】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0066】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0067】
例えば、液体吐出ユニットとして、
図19に示すように、液体吐出ヘッド104とヘッドタンク441が一体化されている液体吐出ユニット440がある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッド104とヘッドタンク441が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンク441と液体吐出ヘッド104との間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0068】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0069】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、
図20で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッド104とキャリッジ103と主走査移動機構107~109が一体化されているものがある。
【0070】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0071】
また、液体吐出ユニットとして、
図21で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド104にチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0072】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0073】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0074】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
基板内に形成された加圧液室5等の空間の一つの内壁面を構成する振動板3等の板状部分を有するアクチュエータ基板100等のアクチュエータにおいて、前記板状部分は特定波長の光を通さない材料と特定波長の光を透過する材料とを含んでおり、この板状部分における前記空間の周縁のうちの少なくとも二箇所に対応する部分は、例えば幅方向の両端部に前記特定波長の光を透過する材料で構成されていることを特徴とする。これによれば、上記実施形態について説明したように、測長したい空間端部の透過領域を透過し得る特定波長の光を用いて、上記二箇所に位置する前記空間の周縁の位置を確認して、上記二箇所に位置する周縁間の距離を正確に測長できる。
【0075】
(態様2)
上記態様1において、ノズル6と、該ノズルに連通する前記空間としての加圧液室5と、該加圧液室の内壁面の一部を構成する前記板状部分としての振動板3と、該振動板の前記加圧液室側とは反対側に設けられた圧電体素子2等の電気機械変換素子とを有し、前記電気機械変換素子における前記二箇所に対応する箇所には前記電気機械変換素子の電極が設けられていない。これによれば、加圧液室の加工寸法を精度良く測長できるので良好な液吐出性能を保証できる。
【0076】
(態様3)
上記態様2のアクチュエータにおいて、前記振動板はSi層とSiO2層とを有し、前記二箇所に対応する箇所はSiO2層で構成されている。よって、加圧液室内の液体が透過することがなく、液体吐出機能を良好に発揮できる。
【0077】
(態様4)
前記二箇所に対応する箇所を構成しているSiO2層には、前記特定波長の光を透過する引張応力膜を具備する。これによれば、この領域が座屈せず、信頼性の高いアクチュエータを得ることができる。
【0078】
(態様5)
態様4のアクチュエータにおいて、前記引張応力膜は、Al2O3、Si3N5、および、ZrO2の何れかからなる膜、あるいは、それぞれ何れかからなる膜が二層以上積層された膜である。これによれば、比較的安価な材料を適用することにより、コストを押さえつつ、信頼性の高いアクチュエータを実現できる。
【0079】
(態様6)
態様1乃至5のいずれか一に記載のアクチュエータにおいて、前記アクチュエータが形成された基板上には、前記板状部分の変形を許容する空隙部が形成された空隙部形成基板が接合されており、前記空隙部形成基板における前記二箇所に対応する箇所にはそれぞれ貫通孔が形成されている。
【0080】
(態様7)
ノズルから吐出する液体が供給される加圧液室が形成された基板と、該加圧液室の一つの内壁面を構成する振動板とを有するアクチュエータにおいて、
前記基板には、前記液体が供給されないダミー室が形成されており、該ダミー室の幅は前記加圧液室の幅と同じ寸法であり、前記ダミー室には、少なくとも幅方向における周縁の二箇所には壁面が無いことを特徴とする。
【0081】
(態様8)
態様1乃至7のいずれか一に記載のアクチュエータにより液体を吐出させる液体吐出ヘッドである。これによれば、吐出の性能を安定させることができる。
【0082】
(態様9)
態様8に記載の液体吐出ヘッドを備えている液体吐出ユニットである。これによれば、吐出の性能を安定させることができる。
【0083】
(態様10)
態様9に記載の液体吐出ユニットにおいて、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構のうちの少なくとも1つと、前記液体吐出ヘッドとを一体化した。これによれば、吐出の性能を安定させることができる。
【0084】
(態様11)
態様8に記載の液体吐出ヘッド、又は、態様9若しくは10に記載の液体吐出ユニットを備えている液体を吐出する装置である。これによれば、吐出の性能を安定させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 :液体吐出ヘッド
2 :圧電体素子
3 :振動板
4 :加圧液室隔壁
5 :加圧液室
6 :ノズル孔
7 :流体抵抗部
8 :共通液室
9 :共通液体供給路
10 :共通電極
11 :個別電極
12 :圧電体
15 :可視光透過用加工領域
15´ :可視光透過領域
44 :可視光透過引張応力膜
45 :層間絶縁膜
48 :接合部
50 :パッシベーション膜
66 :液体供給口
67 :空隙部
68 :アクチュエータ部
70 :アクチュエータ基板
80 :サブフレーム基板
90 :ノズル基板
91 :記録装置本体
92 :印字機構部
93 :用紙
94 :給紙カセット
95 :手差しトレイ
96 :排紙トレイ
100 :アクチュエータ基板
101 :主ガイドロッド
102 :従ガイドロッド
103 :キャリッジ
104 :液体吐出ヘッド(記録ヘッド)
105 :インクカートリッジ
107 :主走査モーター(主走査移動機構)
108 :駆動プーリ(主走査移動機構)
109 :従動プーリ(主走査移動機構)
110 :タイミングベルト
111 :給紙ローラ
112 :フリクションパッド
113 :ガイド部材
114 :搬送ローラ
115 :搬送コロ
116 :先端コロ
117 :副走査モーター
119 :印写受け部材
121 :搬送コロ
122 :拍車
123 :排紙ローラ
124 :拍車
125 :ガイド部材
126 :ガイド部材
127 :回復装置
200 :サブフレーム基板
300 :ノズル基板
440 :液体吐出ユニット
441 :ヘッドタンク
444 :流路部品
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】