(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ニトリル共重合ゴム組成物、架橋性ニトリル共重合ゴム組成物、及びニトリル共重合ゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
C08L 13/00 20060101AFI20220906BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20220906BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220906BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220906BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C08L13/00
C08L9/02
C08L77/00
C08K5/14
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2019507494
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2018008086
(87)【国際公開番号】W WO2018173699
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2017059957
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】福峯 義雄
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-118549(JP,A)
【文献】特開2015-017150(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133618(WO,A1)
【文献】特開2013-203945(JP,A)
【文献】特開2012-057111(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104056(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/122617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 5/14
C08J 3/24
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)1重量%以上60重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)35重量%以上65重量%以下とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と、
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)36重量%以上65重量%以下と
、共役ジエン単量体単位(b4)20重量%以上54重量%以下とを含有し、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量が0.9重量%以下であり、ヨウ素価が120以下であるニトリル共重合ゴム(B)と、
ポリアミド樹脂と
を含有してなり、
前記共役ジエン単量体単位(b4)の重量に対する、前記α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の重量の比の値が、0.88以上1.2以下である、ニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)の重量と前記ニトリル共重合ゴム(B)の重量との比が2:98~98:2である、請求項1に記載のニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂の融点が、100~300℃である、請求項1又は2に記載のニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)が、マレイン酸のモノアルキルエステル単位である、請求項1から3のいずれか一項に記載のニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)が
、共役ジエン単量体単位(a4)
20重量%以上47重量%以下をさらに含有し、
前記α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)を1重量%以上20重量%以下で含有し、
前記共役ジエン単量体単位(a4)の重量に対する前記α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の重量の比の値が、0.68以上1.2以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項6】
前記α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)の重量に対する前記α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の重量の比の値が、7.0以上15以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)中の前記α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)の含有量が5重量%以上15重量%未満であり、前記ニトリル共重合ゴム(B)中の前記α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)の含有量が5重量%以上15重量%未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載のニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のニトリル共重合ゴム組成物に、架橋剤を配合してなる、架橋性ニトリル共重合ゴム組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を架橋してなる、ニトリル共重合ゴム架橋物。
【請求項10】
シール材として用いられる、請求項9に記載のニトリル共重合ゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリル共重合ゴム組成物、架橋性ニトリル共重合ゴム組成物、及びニトリル共重合ゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素化ニトリルゴム等のヨウ素価の比較的低いニトリルゴムは、耐油性、耐摩耗性、耐熱性に優れたゴムとして知られている。さらに、このようなニトリルゴムの特性を維持しつつ、機械的物性をさらに向上させるために、ニトリルゴムに樹脂等の微粒子を配合したゴム組成物が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水素添加NBRエラストマーマトリックス中にナイロンよりなる微粒子が分散して存在し、官能基含有エチレン系共重合体を含有するゴム組成物が開示されている。特許文献1には、上記構成により、水素添加NBR本来の耐熱性、耐摩耗性を維持しながら、機械的物性(常態物性)に優れたゴム組成物を提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のゴム組成物は、耐寒性、発熱性に関して十分とは言えなかった。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一形態は、耐寒性に優れ、且つ発熱性が低いニトリル共重合ゴム組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一形態は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)1重量%以上60重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)35重量%以上65重量%以下とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と、
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)36重量%以上65重量%以下と、共役ジエン単量体単位(b4)20重量%以上54重量%以下とを含有し、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量が0.9重量%以下であり、ヨウ素価が120以下であるニトリル共重合ゴム(B)と、ポリアミド樹脂とを含有してなり、前記共役ジエン単量体単位(b4)の重量に対する、前記α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の重量の比の値が、0.88以上1.2以下である、ニトリル共重合ゴム組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態によれば、耐寒性に優れ、且つ発熱性が低いニトリル共重合ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
<ニトリル共重合ゴム組成物>
本実施形態のニトリル共重合ゴム組成物は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)1重量%以上60重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)10重量%65重量%以下とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)10重量%以上65重量%以下とを含有し、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量が0.9重量%以下であり、ヨウ素価が120以下であるニトリル共重合ゴム(B)と、ポリアミド樹脂とを含有してなる。
【0011】
<カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)>
本実施形態で用いられるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)1重量%以上60重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)10重量%65重量%以下とを含有し、ヨウ素価が120以下である。本実施形態で用いられるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体、及び必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得られる。
【0012】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)を形成するα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、例えば、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリル等のα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル等のα-アルキルアクリロニトリル;等が挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0013】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)の含有量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、5重量%以上であり、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、そして、20重量%以下、好ましくは18重量%以下、より好ましくは15重量%未満である。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)を5重量%以上とすることで、得られるゴム架橋物の耐油性を向上させることができ、また20重量%以下とすることで、耐寒性、耐発熱性を向上させることができる。
【0014】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)を形成するα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn-ブチル等のマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチル等のマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシル等のマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn-ブチル等のフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチル等のフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシル等のフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn-ブチル等のシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチル等のシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシル等のシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn-ブチル等のイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチル等のイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシル等のイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;等が挙げられる。これらのなかでも、マレイン酸モノアルキルエステルが好ましく、アルキルの炭素数が2~6のマレイン酸モノアルキルエステルがより好ましく、マレイン酸モノn-ブチルが特に好ましい。α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体(a2)は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0015】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)の含有量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、そして、60重量%以下であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)の含有量を1重量%以上とすることで、得られるゴム架橋物の引張強度を向上させることができ、また60重量%以下とすることで、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性及び耐熱性を向上させることができる。
【0016】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)を形成するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)を形成するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(「メタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルキルエステル」の略記。以下同様。);(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸i-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸i-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル等の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;アクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸シアノブチル等の炭素数2~12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シアノアルキルエステル;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等の炭素数1~12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル等の炭素数1~12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル;等が挙げられるが、本発明の効果がより一層顕著になることから炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましくがより好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸メトキシエチルが特に好ましい。これらは一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0017】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の含有量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%超、さらに好ましくは35重量%以上、特に好ましくは37重量%以上であり、そして、好ましくは65重量%以下、より好ましくは55重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の含有量を上記範囲とすることで、常態物性、耐油性、耐圧縮永久歪み性を十分に有しつつ、耐寒性を向上させ、また発熱性を低下させる(耐発熱性を向上させる)という本発明の効果が一層顕著になる。
【0018】
また、本実施形態で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)は、得られるゴム架橋物が十分なゴム弾性を有するように、共役ジエン単量体単位(a4)を含有することが好ましい。
【0019】
共役ジエン単量体単位(a4)を形成する共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、クロロプレン等の炭素数4~6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0020】
共役ジエン単量体単位(a4)(水素添加等により飽和化されている部分も含む)の含有量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上、特に好ましくは41重量%以上であり、そして、好ましくは84重量%以下、より好ましくは61重量%以下、さらに好ましくは47重量%以下である。共役ジエン単量体単位(a4)の含有量を20重量%以上とすることで、得られるゴム架橋物のゴム弾性を向上させることができ、また84重量%以下とすることで、良好な耐熱性や耐化学的安定性を維持することができる。
【0021】
共役ジエン単量体単位(a4)に対する、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の含有量の比の値((a3)の重量/(a4)の重量)は、好ましくは0.68以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。また、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)において、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の含有量が、共役ジエン単量体単位(a4)より大きいと、好ましい。共役ジエン単量体単位(a4)に対する、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の含有量の比の値を上記範囲とすることにより、常態物性、耐油性、耐圧縮永久歪み性を十分に有しつつ、耐寒性を向上させ、また発熱性を低下させるという効果が一層顕著となる。
【0022】
また、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)に対する、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の含有量の比の値((a3)の重量/(a2)の重量)は、好ましくは6.7以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.8以上、特に好ましくは8.5以上であり、そして、好ましくは15以下であり、さらに好ましくは13以下であり、より好ましくは11以下である。
【0023】
本実施形態で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体を共重合したものであってもよい。
【0024】
このようなカルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;フマル酸やマレイン酸等のブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸等が挙げられる。また、α,β-不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のα,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;等が挙げられる。
【0025】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(a2)及びα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)以外のカルボキシル基含有単量体単位の含有量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0026】
また、本実施形態で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体(a1)、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体(a2)、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体(a3)、及び共役ジエン単量体(a4)とともに、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、エチレン、α-オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤等が例示される。
【0027】
α-オレフィン単量体としては、炭素数が3以上12以下のものが好ましく、例えば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。
【0028】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0029】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。
【0030】
フッ素含有ビニル単量体としては、例えば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0031】
共重合性老化防止剤としては、例えば、N-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンナムアミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、 N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリン等が挙げられる。
【0032】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0033】
本実施形態で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のヨウ素価は、好ましくは120以下であり、より好ましくは60以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは15以下である。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)として、ヨウ素価120以下のニトリル共重合ゴム(高飽和ニトリル共重合ゴムという場合がある)を用いることにより、得られるゴム架橋物の耐熱性を向上させることができる。
【0034】
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは110以下である。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のポリマームーニー粘度が10以上であることによって、得られるゴム架橋物の機械特性を向上させることができ、また200以下とすることで、ゴム組成物の加工性を向上させることができる。
【0035】
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは0.006ephr以上、より好ましくは0.012ephr以上、さらに好ましくは0.023ephrであり、そして、好ましくは0.116ephr以下、より好ましくは0.087ephr、さらに好ましくは0.058ephrである。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のカルボキシル基含有量が少なすぎると、ロール加工性が低下する傾向がある。一方、多すぎると耐圧縮永久歪み性及び耐熱性が低下する可能性がある。
【0036】
本実施形態で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)の製造方法は、特に限定されないが、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合して共重合体ゴムのラテックスを調製し、これを水素化することにより製造することが好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0037】
乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸及びリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β-不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β-不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;等が挙げられる。乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上10重量部以下である。
【0038】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機又は有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上2重量部以下である。
【0039】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α-メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t-ドデシルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上0.8重量部以下である。
【0040】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80重量部以上500重量部以下である。
【0041】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0042】
なお、共重合して得られた共重合体のヨウ素価が120より高い場合には、ヨウ素価を120以下とするために、共重合体の水素化(水素添加反応)を行ってもよい。この場合における、水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0043】
<ニトリル共重合ゴム(B)>
本実施形態で用いるニトリル共重合ゴム(B)は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)5重量%以上20重量%以下と、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)10重量%以上65重量%以下とを含有し、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量が0.9重量%以下であり、ヨウ素価が120以下である。本実施形態で用いるニトリル共重合ゴム(B)は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体、及び必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得られる。
【0044】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)を形成するα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と同様のものを用いることができる。ニトリル共重合ゴム(B)中における、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)の含有量は、ニトリル共重合ゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、そして、好ましくは20重量%以下、より好ましくは19重量%未満、さらに好ましくは17重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、特に好ましくは15重量未満である。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)を5重量%以上とすることで、得られるゴム架橋物の耐油性を向上させることができ、また20重量%以下とすることで、耐寒性を向上させることができる。
【0045】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)を形成するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と同様のものを用いることができるが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の炭素数1以上18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;が好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。これらは一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0046】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の含有量は、ニトリル共重合ゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは36重量%以上、さらに好ましくは41重量%以上、特に好ましくは43重量%以上であり、そして、好ましくは65重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは55重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の含有量を上記範囲とすることで、常態物性、耐油性、耐圧縮永久歪み性を十分に有しつつ、耐寒性を向上させ、また発熱性を低下させるという効果が一層顕著になる。
【0047】
本実施形態で用いるニトリル共重合ゴム(B)は、得られるゴム架橋物がゴム弾性を有するものとするために、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合する単量体として、共役ジエン単量体を用いることが好ましい。共役ジエン単量体としては、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と同様のものを用いることができる。ニトリル共重合ゴム(B)中における、共役ジエン単量体単位(水素添加等により飽和化されている部分も含む)(b4)の含有量は、ニトリル共重合ゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、特に好ましくは41重量%以上であり、そして、好ましくは85重量%以下、より好ましくは77重量%以下、さらに好ましくは54重量%以下である。共役ジエン単量体単位(b4)の含有量を20重量%以上とすることで、得られるゴム架橋物のゴム弾性を向上させることができ、また85重量%以下とすることで、良好な耐熱性や耐化学的安定性を維持することができる。
【0048】
本実施形態で用いるニトリル共重合ゴム(B)は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、及びα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体とともに、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と同様に、エチレン、α-オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤等が挙げられる。
【0049】
本実施形態で用いるニトリル共重合ゴム(B)は、共重合可能なその他の単量体として、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体を用いてもよいが、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量は、ニトリル共重合ゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、0.9重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下であり、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量が0重量%であることが特に好ましい。α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量を上記範囲とすることで、耐圧縮永久歪み性、及び耐熱性を向上させることができる。なお、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と同様のものを挙げることができる。
【0050】
共役ジエン単量体単位(b4)の含有量に対する、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の含有量の比の値((b3)の重量/(b4)の重量)は、好ましくは0.79以上、より好ましくは0.88以上、さらに好ましくは0.93以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。また、ニトリル共重合ゴム(B)において、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の含有量が、共役ジエン単量体単位(b4)より大きいと、好ましい。共役ジエン単量体単位(b4)に対する、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の含有量の比の値を上記範囲とすることにより、耐寒性、耐発熱性を向上させながらも、常態物性、耐油性及び耐圧縮永久歪み性を維持することが可能となる。
【0051】
本実施形態で用いるニトリル共重合ゴム(B)には、本発明の効果を損なわない範囲において、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体を共重合したものであってもよい。但し、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体単位の含有量は、ニトリル共重合ゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下であり、カルボキシル基含有単量体単位の含有量が0重量%であることが特に好ましい。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が多すぎると、耐圧縮永久歪み性及び耐熱性が悪化するおそれがある。また、カルボキシル基含有単量体としては、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と同様のものを挙げることができる。
【0052】
本実施形態で用いるニトリル共重合ゴム(B)のヨウ素価は、好ましくは120以下であり、より好ましくは60以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。ヨウ素価を120以下とすることにより、得られるゴム架橋物の耐熱性を向上させることができる。
【0053】
ニトリル共重合ゴム(B)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは110以下である。ニトリル共重合ゴム(B)のポリマームーニー粘度を10以上とすることで、得られるゴム架橋物の機械特性を向上させることができ、また200以下とすることで、ゴム組成物の加工性を向上させることができる。
【0054】
ニトリル共重合ゴム(B)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、ニトリル共重合ゴム(B)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは0.005ephr以下、より好ましくは0.003ephr以下であり、0ephrであることが特に好ましい。ニトリル共重合ゴム(B)のカルボキシル基含有量を上記範囲とすることで、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性及び耐熱性を向上させることができる。
【0055】
ニトリル共重合ゴム組成物中における、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との含有割合は、「カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A):ニトリル共重合ゴム(B)」の重量比で、2:98~98:2の範囲が好ましく、3:97~50:50の範囲がより好ましく、5:95~40:60の範囲が特に好ましい。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との含有割合を上記範囲とすることで、良好な常態物性及び耐圧縮永久歪み性が得られる。
【0056】
本発明で用いるニトリル共重合ゴム(B)の製造方法は、特に限定されないが、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と同様とすることができる。
【0057】
<ポリアミド樹脂>
本実施形態のニトリル共重合ゴム組成物は、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)、及びニトリル共重合ゴム(B)に加えて、ポリアミド樹脂を含有する。本実施形態においては、ニトリル共重合ゴムとして、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(a1)、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)、及びα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(a3)の含有量が所定範囲にあるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)と、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(b1)、及びα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位(b3)の含有量が所定範囲にあり、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位(b2)の含有量が所定量以下であるニトリル共重合ゴム(B)との2種類のゴムを併用し、これに、ポリアミド樹脂を配合することにより、得られるニトリル共重合ゴム架橋物の常態物性、耐油性、及び耐圧縮永久歪み性を維持しつつ、耐寒性、耐発熱性を向上させることができる。
【0058】
ニトリル共重合ゴムの耐油性等を改善するためにニトリル共重合ゴムにポリアミド樹脂を混合することが有効であるが、単に、ニトリル共重合ゴムに、ポリアミド樹脂を混合した場合には、得られるゴム架橋物の引張強度等が低下し、硬さが高くなりすぎてしまう可能性がある。これに対し、上述のカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)とを併用し、これらに、ポリアミド樹脂を配合することにより、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)が相溶化剤として作用する。そのため、ロール加工性を向上させることができるとともに、ゴム架橋物とした際における耐油性、及び常態物性を向上させることができ、また硬さが高くなりすぎることを抑制でき、さらには耐圧縮永久歪み性、耐寒性、及び耐発熱性に優れたものとすることができる。
【0059】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、酸アミド結合(-CONH-)を有する重合体であれば限定されないが、例えば、ジアミンと二塩基酸との重縮合により得られる重合体、ジホルミル等のジアミン誘導体と二塩基酸との重縮合により得られる重合体、ジメチルエステル等の二塩基酸誘導体とジアミンとの重縮合により得られる重合体、ジニトリル又はジアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られる重合体、ジイソシアナートと二塩基酸との重付加により得られる重合体、アミノ酸又はその誘導体の自己縮合により得られる重合体、ラクタムの開環重合により得られる重合体等が挙げられる。また、これらのポリアミド樹脂は、ポリエーテルブロックを含有していてもよい。
【0060】
ポリアミド樹脂の具体例としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、のような脂肪族ポリアミド樹脂;ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、キシレン含有ポリアミドのような芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。これらのなかでも、本発明の効果がより一層顕著になることから、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11及びナイロン12がより好ましく、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン12がさらに好ましく、ナイロン66及びナイロン12が特に好ましい。
【0061】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、融点が、100~300℃であることが好ましく、より好ましくは120~280℃、さらに好ましくは150~280℃である。融点が100℃以上であるものを用いることで、得られるゴム架橋物の耐熱性を向上させることができ、また融点が300℃以下であるものを用いることで、ロール等による加工の際の加工性を向上させることができる。なお、ポリアミド樹脂の融点は、JIS K7121にて定義される示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融解ピーク温度である。
【0062】
本実施形態のニトリル共重合ゴム組成物中における、ポリアミド樹脂の含有割合は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との合計(以下、「ニトリル共重合ゴムの合計量」とする。)に対して、「ニトリル共重合ゴムの合計量:ポリアミド樹脂の含有量」の重量比で、好ましくは95:5~50:50の範囲、より好ましくは90:10~60:40の範囲である。重量比を95:5以上とすることで、耐油性、耐燃料油性を向上させることができ、重量比を50:50以下とすることで、ニトリル共重合ゴム組成物を加工に適した硬さにすることができる。
【0063】
<架橋性ニトリル共重合ゴム組成物>
本実施形態の架橋性ニトリル共重合ゴム組成物は、上述したニトリル共重合ゴム組成物と、架橋剤とを含有してなるものである。
【0064】
架橋剤としては、有機過酸化物架橋剤、硫黄架橋剤又はポリアミン架橋剤(ヘキサメチレンジアミンカーバメートや2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等)等が挙げられるが、これらのなかでも、本発明の効果がより一層顕著になることから、有機過酸化物架橋剤が好ましい。
【0065】
有機過酸化物架橋剤としては、従来公知のものを用いることができ、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ビス-(t-ブチル-ペルオキシ)-n-ブチルバレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン-3、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、p-クロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられる。これらのなかでも、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。これらは一種単独で又は複数種併せて用いることができる。
【0066】
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物中における、架橋剤の配合量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との合計100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上であり、そして、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。架橋剤の配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐疲労性が悪化する可能性がある。
【0067】
本実施形態の架橋性ニトリル共重合ゴム組成物には、本発明の効果がより一層顕著になることから、可塑剤、シリカ及び/又はシランカップリング剤を配合することが好ましい。
【0068】
可塑剤としては特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸ジ(メトキシテトラエチレングリコール)、アジピン酸ジ(メトキシペンタエチレングリコール)、アジピン酸(メトキシテトラエチレングリコール)(メトキシペンタエチレングリコール)等のアジピン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;アゼライン酸ジブトキシエチル、アゼライン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)等のアゼライン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;セバシン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)等のセバシン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;フタル酸ジブトキシエチル、フタル酸ジ(ブトキシエトキシエチル)等のフタル酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;イソフタル酸ジブトキシエチル、イソフタル酸ジ(ブトキシエトキシエチル)等のイソフタル酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジブチル等のアジピン酸ジアルキルエステル化合物;アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジn-ヘキシル等のアゼライン酸ジアルキルエステル化合物;セバシン酸ジn-ブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)等のセバシン酸ジアルキルエステル化合物;フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジn-オクチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸ジアルキルエステル化合物;フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸ジシクロアルキルエステル化合物;フタル酸ジフェニル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アリールエステル化合物;イソフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、イソフタル酸ジイソオクチル等のイソフタル酸ジアルキルエステル化合物;テトラヒドロフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、テトラヒドロフタル酸ジn-オクチル、テトラヒドロフタル酸ジイソデシル等のテトラヒドロフタル酸ジアルキルエステル化合物;トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリn-オクチル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリn-ヘキシル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸誘導体;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系可塑剤;トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;等が挙げられる。これらは一種単独で又は複数種併せて用いることができる。
【0069】
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物中における、可塑剤の配合量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との合計100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、そして、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0070】
シリカとしては、特に限定されないが、組成式中に(SiO2)を含む化合物であればよい。具体的には、石英粉末、珪石粉末等の天然シリカ;無水珪酸(シリカゲル、アエロジル等)、含水珪酸等の合成シリカ;珪酸金属塩;等が挙げられる。なお、上記の天然シリカ及び合成シリカは、(SiO2)又は(SiO2・nH2O)の組成式を有する(nは正の整数)。また、合成シリカは、所謂、白色補強材(ホワイトカーボン)として合成ゴムの補強材として一般的に用いられているものが使用することができる。これらは一種単独で又は複数種併せて用いることができる。また、シリカは、後述するカーボンブラック、炭酸カルシウム、クレイ、タルク等の充填剤と併用することもできる。
【0071】
本実施形態の架橋性ニトリル共重合ゴム組成物中における、シリカの配合量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との合計100重量部に対して、好ましくは0重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは5重量部以上、そして、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下、さらに好ましくは100重量部以下である。
【0072】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、γ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル系シランカップリング剤;γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;等が挙げられる。これらは一種単独で又は複数種併せて用いることができる。
【0073】
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物中における、シランカップリング剤の配合量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との合計100重量部に対して、好ましくは0重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、そして、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0074】
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物には、上記以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、短繊維等の補強剤、炭酸カルシウム、クレイ、タルク等の充填材、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミン等のスコーチ防止剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本実施形態の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0075】
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)、ニトリル共重合ゴム(B)及びポリアミド樹脂以外のその他の重合体を配合してもよい。その他の重合体としては、アクリルゴム、エチレン-アクリル酸共重合体ゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、天然ゴム及びポリイソプレンゴム等を挙げることができる。その他の重合体を配合する場合における、架橋性ニトリル共重合ゴム組成物中の配合量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)とニトリル共重合ゴム(B)との合計100重量部に対して、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0076】
<ニトリル共重合ゴム組成物の製造>
本実施形態のニトリル共重合ゴム組成物の製造方法は、上述したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)、ニトリル共重合ゴム(B)、及びポリアミド樹脂を、好ましくは200℃以上の温度で混練する。
【0077】
これらを混練する方法としては、特に限定されないが、一軸押出機、二軸押出機等の押出機;ニーダー、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターナルミキサ、ニーダー等の密閉型混練機;ロール混練機;等の混練機で混合する方法等が挙げられる。これらのなかでも、特に、生産効率及び分散効率が高いという理由より、二軸押出機で混練する方法が好ましい。
【0078】
また、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)、ニトリル共重合ゴム(B)及びポリアミド樹脂を混練する際の混練温度は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは270℃以上である。また、混練温度の上限は、好ましくは400℃以下、特に好ましくは350℃以下である。混練温度を上記範囲とすることにより、溶融状態のポリアミド樹脂と、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)、及びニトリル共重合ゴム(B)とを、十分に微分散させることができる。そして、これにより、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0079】
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)、ニトリル共重合ゴム(B)及びポリアミド樹脂を混練する際には、老化防止剤等の各種配合剤や、その他のゴムを同時に混合してもよい。
【0080】
<架橋性ニトリル共重合ゴム組成物の調整>
本実施形態の架橋性ニトリル共重合ゴム組成物の調製方法は、特に限定されないが、上記のようにして得られる本発明のニトリル共重合ゴム組成物に、架橋剤及び熱に不安定な成分を除いた各成分を、好ましくは、10℃以上200℃以下、より好ましくは20℃以上170℃以下で、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターミキサ、ニーダ等の混合機で混練し、ロール等に移して架橋剤や熱に不安定な架橋助剤等を加えて、好ましくは10℃以上80℃以下の条件で、二次混練することにより調製できる。
【0081】
<ゴム架橋物>
本実施形態のゴム架橋物は、上述した架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を架橋してなるものである。ゴム架橋物は、本実施形態の架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を用い、例えば、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロール等により成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10℃以上200℃以下、好ましくは25℃以上120℃以下である。架橋温度は、通常、100℃以上200℃以下、好ましくは130℃以上190℃以下であり、架橋時間は、通常、1分以上24時間以下、好ましくは2分以上6時間以下である。
【0082】
また、ゴム架橋物の形状、大きさ等によっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0083】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱等のゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0084】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本実施形態の架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を架橋して得られるものであるため、耐寒性、耐発熱性に優れ、且つ常態物性、耐油性及び耐圧縮永久歪み性も十分なものである。
【0085】
このため、本実施形態のゴム架橋物は、O-リング、パッキン、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素又は二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素又は亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置及びボールねじ等)用のシール、インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケット等の各種ガスケット等の各種シール材;として好適に用いることができ、-10℃以下の環境下(寒冷地)でも使用できる耐寒シール材として特に好適に用いることができる。また、耐発熱性に優れるので、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、転動装置用のシールとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態についてより具体的に説明する。特に説明がない限り、「部」、「%」は重量基準である。物性及び特性の試験、評価は以下のようにして行った。
【0087】
<ゴム組成>
各ニトリル共重合ゴムを構成する各単量体単位の含有割合は、以下の方法により測定した。すなわち、マレイン酸モノn-ブチル単位の含有割合は、2mm角のニトリル共重合ゴム0.2gに、2-ブタノン100mlを加えて16時間攪拌した後、エタノール20ml及び水10mlを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ニトリル共重合ゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn-ブチル単位の量に換算することにより算出した。
【0088】
1,3-ブタジエン単位及び飽和化ブタジエン単位の含有割合は、ニトリル共重合ゴムを用いて、水素添加反応前と水素添加反応後のヨウ素価(JIS K 6235による)を測定することにより算出した。また、アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6384に従い、ケルダール法により、ニトリル共重合ゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。アクリル酸n-ブチル単位の含有割合は、上記各単量体単位に対する残り成分として算出した。
【0089】
<ヨウ素価>
ニトリル共重合ゴムのヨウ素価は、JIS K 6235に準じて測定した。
【0090】
<ムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)>
ニトリル共重合ゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)は、JIS K6300-1に従って測定した(単位は〔ML1+4、100℃〕)。
【0091】
<常態物性(引張強度、伸び、100%引張応力)>
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。得られたシート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強度、伸び、及び100%引張応力を測定した。
【0092】
<耐油性試験(浸漬試験)>
上記常態物性の評価と同様にして、シート状のゴム架橋物を得た後、JIS K6258に従い、該ゴム架橋物を、温度150℃、168時間の条件で、試験用潤滑油No.3油(商品名「IRM903」、日本サン石油社製)中に浸漬することにより耐油性試験を行った。そして、試験油に浸漬前後のゴム架橋物の体積を測定し、浸漬後の体積変化率△V(単位:%)を「体積変化率△V=([浸漬後の体積-浸漬前の体積]/浸漬前の体積)×100」にしたがって算出することで、耐油性の評価を行った。体積変化率△Vの値が小さいほど、潤滑油による膨潤の度合いが小さく、耐油性に優れると判断できる。
【0093】
<耐圧縮永久歪み性>
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を、直径29mm、深さ12.5mmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら、170℃で25分間プレス成形して、円柱状のゴム架橋物を得た。そして、得られたゴム架橋物を用いて、JIS K6262に従い、ゴム架橋物を25%圧縮させた状態で、150℃の環境下に168時間置いた後、圧縮永久歪みを測定した。この値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0094】
<耐寒性試験(ゲーマンねじり試験)>
上述した常態物性の評価と同様にして、シート状のゴム架橋物を得て、得られたシート状のゴム架橋物から打ち抜いて、長さ40mm、幅3mm、厚さ2mmの試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6261に従い、比モジュラスが10になる温度(ゲーマンT10)を求めた。ゲーマンT10の値が低い方が、耐寒性に優れる。
【0095】
<発熱試験>
架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を、直径17.8mm、深さ25mmの金型に入れ、熱プレスで170℃、25分間保持することで、円柱状のゴム架橋物を得た。そして、得られたゴム架橋物を用いて、JIS K6265に従って、圧縮型のフレクソメータにて、試験温度100℃、試験時間25分間、静的応力1MPa、ストローク4.45mmの条件で、温度上昇(℃)を測定した。この温度上昇が小さい程、耐発熱性に優れる(発熱性が低い)。
【0096】
<合成例1:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)の製造>
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル11部、マレイン酸モノn-ブチル6部、アクリル酸n-ブチル44部、t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.75部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3-ブタジエン39部を仕込んだ。金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応した。その後、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止し、引き続いて、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸n-ブチル-マレイン酸モノn-ブチル共重合体ゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
【0097】
次に、該ラテックスに含有されるゴム重量に対してパラジウム含有量が2000ppmになるようにオートクレーブにパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)のラテックスを得た。
【0098】
そして、得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)のラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、60℃で12時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)の組成は、アクリロニトリル単位11.0重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位4.5重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)41.2重量%、アクリル酸n-ブチル単位43.3重量%であり、ヨウ素価が9、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は42であった。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)の組成及び特性を、表1に示す。
【0099】
<合成例2:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-2)の製造>
アクリロニトリルの配合量を16部、アクリル酸n-ブチルの配合量を36部、1,3-ブタジエンの配合量を42部に、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-2)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-2)の組成は、アクリロニトリル単位15.6重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位4.5重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)43.3重量%、アクリル酸n-ブチル単位36.6重量%であり、ヨウ素価が9、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は42であった。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-2)の組成及び特性を、表1に示す。
【0100】
<合成例3:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-3)の製造>
アクリロニトリルの配合量を19部、アクリル酸n-ブチルの配合量を33部、1,3-ブタジエンの配合量を42部に、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-3)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-3)の組成は、アクリロニトリル単位18.2重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位4.5重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)43.1重量%、アクリル酸n-ブチル単位34.2重量%であり、ヨウ素価が9、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は42であった。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-3)の組成及び特性を、表1に示す。
【0101】
<合成例4:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-4)の製造>
アクリロニトリルの配合量を21部、アクリル酸n-ブチルの配合量を42部、1,3-ブタジエンの配合量を31部に、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-4)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-4)の組成は、アクリロニトリル単位20.9重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)40.4重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位4.5重量%、アクリル酸n-ブチル単位34.2重量%であり、ヨウ素価が9、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は42であった。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-4)の組成及び特性を、表1に示す。
【0102】
<合成例5:ニトリル共重合ゴム(B-1)の製造>
反応器内に、イオン交換水200部、脂肪酸カリウム石鹸(脂肪酸のカリウム塩)2.25部を添加して石鹸水溶液を調製した。そして、この石鹸水溶液に、アクリロニトリル11部、アクリル酸n-ブチル46部及びt-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部をこの順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3-ブタジエン42部を仕込んだ。次いで、反応器内を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、攪拌しながら16時間重合反応を行なった。次いで、濃度10%のハイドロキノン(重合停止剤)水溶液0.1部を加えて重合反応を停止し、水温60℃のロータリーエバポレ-タを用いて残留単量体を除去して、ニトリル共重合ゴム(B-1)のラテックス(固形分濃度約25重量%)を得た。
【0103】
次いで、上記にて得られたラテックスを、そのニトリル共重合ゴム分に対して3重量%となる量の硫酸アルミニウムの水溶液に加えて撹拌してラテックスを凝固し、水で洗浄しつつ濾別した後、60℃で12時間真空乾燥してニトリル共重合ゴムを得た。そして、得られたニトリル共重合ゴムを、濃度12%となるようにアセトンに溶解し、これをオートクレーブに入れ、パラジウム・シリカ触媒をニトリル共重合ゴムに対して500重量ppm加え、水素圧3MPa、温度50℃で水素添加反応を行なった。
【0104】
水素添加反応終了後、大量の水中に注いで凝固させ、濾別及び乾燥を行なってニトリル基含有共重合体ゴム(B-1)を得た。得られたニトリル基含有共重合体ゴム(A2-1)の組成は、アクリロニトリル単位10.8重量%、1,3-ブタジエン単位(水素化された部分を含む)43.6重量%、アクリル酸n-ブチル単位45.6重量%であり、ヨウ素価は9、ポリマー・ムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕は65であった。ニトリル共重合ゴム(B-1)の組成及び特性を表2に示す。
【0105】
<合成例6:ニトリル共重合ゴム(B-2)の製造>
アクリロニトリルの配合量を15部、アクリル酸n-ブチルの配合量を42部、1,3-ブタジエンの配合量を31部に、それぞれ変更した以外は、製造例5と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(B-2)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(B-2)の組成は、アクリロニトリル単位15.4重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)43.0重量%、アクリル酸n-ブチル単位41.6重量%であり、ヨウ素価が9、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は68であった。ニトリル共重合ゴム(B-2)の組成及び特性を表2に示す。
【0106】
<合成例7:ニトリル共重合ゴム(B-3)の製造>
アクリロニトリルの配合量を18部、アクリル酸n-ブチルの配合量を42部、1,3-ブタジエンの配合量を40部に、それぞれ変更した以外は、製造例5と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(B-3)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(B-3)の組成は、アクリロニトリル単位17.8重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)42.8重量%、アクリル酸n-ブチル単位39.4重量%であり、ヨウ素価が9、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は70であった。ニトリル共重合ゴム(B-3)の組成及び特性を表2に示す。
【0107】
<合成例8:ニトリル共重合ゴム(B-4)の製造>
アクリロニトリルの配合量を24部、アクリル酸n-ブチルの配合量を37部、1,3-ブタジエンの配合量を39部に、それぞれ変更した以外は、製造例5と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(B-4)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(B-4)の組成は、アクリロニトリル単位23.6重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)40.8重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.6重量%であり、ヨウ素価が10、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は71であった。ニトリル共重合ゴム(B-4)の組成及び特性を表2に示す。
【0108】
<実施例1>
合成例1で得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部、合成例5で得られたニトリル共重合ゴム(B-1)50部を粉砕機にて粉砕し、ヘンシェルミキサーで混合した後、重量フィーダーにて二軸押出機に35kg/hで投入した。同じ投入口から、ポリアミド樹脂としてナイロン66(商品名「アミラン(登録商標)CM3006」、東レ社製、融点265℃(ポリアミド樹脂の融点は、JIS K7121にて定義される示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融解ピーク温度である。))を、重量フィーダーにて二軸押出機に15kg/hで投入し、混練することで、ニトリル共重合ゴム組成物を得た。二軸押出機としては、スクリュー直径Dに対するスクリュー長さLの比の値(L/D)が45であり、投入ブロック部及び第1から第10の各ブロック部を有し、第5のブロック及び第9のブロックにベント口を有するものを用いた。スクリュー構成は、第5のブロックのベント口の直前に第1の混合部を有し、第5のブロックのベント口と第9のブロックのベント口との間に第2の混練部及び第3の混練部を有するものとした。ブロック部の温度は全て290℃、スクリュー回転数は毎分120回転という条件で混練を行った。
【0109】
バンバリーミキサを用いて、上記にて得られたニトリル共重合ゴム組成物100部に、カーボンブラックFEF(商品名「シースト(登録商標)SO」、東海カーボン社製、カーボンブラック)20部、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル「商品名「アデカサイザー(登録商標)C-8」ADEKA社製、可塑剤)5部、ステアリン酸(加工助剤)0.5部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名「フォスファノール(登録商標)RL210」、東邦化学工業株式会社製、加工助剤)0.5部、メルカプトベンズイミダゾール(商品名「ノクラック(登録商標)MB」、大内新興化学社製、老化防止剤)1部、4,4’-ジ-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラック(登録商標)CD」、大内新興化学社製、老化防止剤)1部を添加して混練し、次いで、混合物をロールに移して、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン40%品(商品名「VulCup(登録商標)40KE」、アルケマ社製、有機過酸化物架橋剤)7部を添加して混練することで、架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を得た。
【0110】
そして、上述した方法により、常態物性、耐油性、耐圧縮永久歪み性、耐寒性、発熱性について各評価・試験を行った。結果を表3に示す。
【0111】
<実施例2>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部に代えてカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-2)20部を用い、ニトリル共重合ゴム(B-1)50部に代えてニトリル共重合ゴム(B-2)50部を使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0112】
<実施例3>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部に代えてカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-3)20部を用い、ニトリル共重合ゴム(B-1)50部に代えてニトリル共重合ゴム(B-3)50部を使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0113】
<実施例4>
カーボンブラックFEF(商品名「シースト(登録商標)SO」、東海カーボン社製、カーボンブラック)20部に代えて、カーボンブラックFEF(商品名「シースト(登録商標)SO」、東海カーボン社製、カーボンブラック)15部及び合成シリカ(商品名「ニプシル(登録商標)ER」、東ソー・シリカ社製、シリカ)15部を使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作成し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0114】
<実施例5>
カーボンブラックFEF(商品名「シースト(登録商標)SO」、東海カーボン社製、カーボンブラック)20部に代えて、表面処理シリカ(商品名「アエロジル(登録商標)R972V」、エボニックデグッサ社製、表面処理シリカ)25部、及びシランカップリング剤(商品名「ダイナシラン(登録商標)MEMO」、エボニック社製、シランカップリング剤)を使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作成し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0115】
<実施例6>
メタクリル酸亜鉛(商品名「サンエステル(登録商標)SK-30」、三新化学社製、架橋助剤)10部をさらに添加したこと以外は、実施例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作成し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0116】
<比較例1>
バンバリーミキサを用いて、合成例1で得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部、ニトリル共重合ゴム(B-1)80部、カーボンブラックFEF(商品名「シースト(登録商標)SO」、東海カーボン社製、カーボンブラック)60部、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル「商品名「アデカサイザー(登録商標)C-8」ADEKA社製、可塑剤)5部、ステアリン酸(加工助剤)0.5部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名「フォスファノール(登録商標)RL210」、東邦化学工業株式会社製、加工助剤)0.5部、メルカプトベンズイミダゾール(「ノクラック(登録商標)MB」、大内新興化学社製、老化防止剤)1部、4,4’-ジ-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラック(登録商標)CD」、大内新興化学社製、老化防止剤)1部を添加して混練し、次いで、混合物をロールに移して、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン40%品(商品名「VulCup(登録商標)40KE」、アルケマ社製、有機過酸化物架橋剤)7部を添加して混練することで、架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を得た。
【0117】
そして、上述した方法により、常態物性、耐燃料油試験、耐圧縮永久歪み性、耐寒性試験の各評価・試験を行った。結果を表4に示す。
【0118】
<比較例2>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部に代えてカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-2)20部を用い、ニトリル共重合ゴム(B-1)80部に代えてニトリル共重合ゴム(B-2)80部を使用した以外は、比較例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0119】
<比較例3>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部に代えてカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-3)20部を用い、ニトリル共重合ゴム(B-1)80部に代えてニトリル共重合ゴム(B-3)80部を使用した以外は、比較例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0120】
<比較例4>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部に代えてカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-4)20部を用い、ニトリル共重合ゴム(B-1)50部に代えてニトリル共重合ゴム(B-4)50部を使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0121】
<比較例5>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)20部及びニトリル共重合ゴム(B-1)50部に代えて、ニトリル共重合ゴム(B-1)70部を使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ニトリル共重合ゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表3、4より明らかなように、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A-1)、(A-2)又は(A-3)と、ニトリル共重合ゴム(B-1)、(B-2)又は(B-4)と、ポリアミド樹脂とをそれぞれ所定量で配合したゴム組成物を用いた場合(実施例1~6)には、得られるゴム架橋物は、優れた耐寒性及び耐発熱性を有し、また常態物性、耐油性、及び耐圧縮永久歪み性も十分であった。
【0127】
以上、本発明の実施形態について実施例を挙げて説明したが、本発明は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0128】
本出願は、2017年3月24日に日本国特許庁に出願された特願2017-059957号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は参照をもってここに援用される。