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特許7136096化学強化ガラス、その製造方法および化学強化用ガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】化学強化ガラス、その製造方法および化学強化用ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20220906BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20220906BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20220906BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20220906BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20220906BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019526886
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2018024006
(87)【国際公開番号】W WO2019004124
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017126357
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017207310
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今北 健二
(72)【発明者】
【氏名】村山 優
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0158556(US,A1)
【文献】特表2013-536155(JP,A)
【文献】国際公開第2016/191676(WO,A1)
【文献】特表2015-511573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス表面に圧縮応力層を有する、板状の化学強化ガラスであって、
ガラス表面の圧縮応力値(CS)が500MPa以上であり、
板厚(t)が400μm以上であり、
圧縮応力層深さ(DOL)が(t×0.15)μm以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/4の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/2の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
以下の式で表されるmが-1.5MPa/μm以上であり、mが0MPa/μm以下であり、かつ前記mが前記mより小さく、
ガラス表面からの深さが2.5μmの点における圧縮応力値(CS )に対し、以下の式で表されるm が120MPa/μm以上である化学強化ガラス。
=(CS-CS)/(DOL/4-DOL/2)
=CS/(DOL/2-DOL)
=(CS -CS )/2.5
【請求項2】
ガラス表面に圧縮応力層を有する、板状の化学強化ガラスであって、
ガラス表面の圧縮応力値(CS)が500MPa以上であり、
圧縮応力層深さ(DOL)が100μm以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/4の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/2の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
以下の式で表されるmが-1.5MPa/μm以上であり、mが0MPa/μm以下であり、かつ前記mが前記mより小さい化学強化ガラス。
=(CS-CS)/(DOL/4-DOL/2)
=CS/(DOL/2-DOL)
【請求項3】
圧縮応力値が50MPa以上である最大の深さが前記DOLに対して(0.55×DOL)μm以上である請求項1または2に記載の化学強化ガラス。
【請求項4】
前記m及び前記mの比(m/m)が0.9より小さい請求項1~3のいずれか一項に記載の化学強化ガラス。
【請求項5】
前記mが0.5MPa/μm以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の化学強化ガラス。
【請求項6】
内部引張応力値が100MPaより小さい請求項1~5のいずれか一項に記載の化学強化ガラス。
【請求項7】
化学強化ガラスの母組成が、酸化物基準の質量百分率表示で
SiO 55~80%、
Al 15~28%、
0~10%、
LiO 2~10%、
NaO 0.5~10%、
O 0~10%、
(MgO+CaO+SrO+BaO) 0~10%、及び
(ZrO+TiO) 0~5%、
を含む請求項1~のいずれか一項に記載の化学強化ガラス。
【請求項8】
LiOを含有する化学強化用ガラスを、Naイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換し、
次に、Liイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換し、
次に、Kイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換する工程を含み、
前記Liイオンを含む金属塩におけるNa/Liモル比は0.3~60である、化学強化ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記化学強化用ガラスが酸化物基準の質量百分率表示で、
SiO 55~80%、
Al 15~28%、
0~10%、
LiO 2~10%、
NaO 0.5~10%、
O 0~10%、
(MgO+CaO+SrO+BaO) 0~10%、及び
(ZrO+TiO) 0~5%、
を含む請求項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末のカバーガラス等に化学強化ガラスが用いられている。
化学強化ガラスは、アルカリ金属イオン等の金属イオンを含む溶融塩にガラスを接触させて、ガラス中の金属イオンと、溶融塩中の金属イオンとの間でイオン交換を生じさせることで、ガラス表面に圧縮応力層を形成したガラスである。化学強化ガラスの強度は、ガラス表面からの深さを変数とする圧縮応力値で表される応力プロファイルに強く依存する。
【0003】
携帯端末等のカバーガラスは、外力によって撓んだ際に割れることがある。この場合の割れの起点はガラスの表面にあり、ガラス表面の微小クラックが広がることで破壊に至る。そこで、ガラス表面における圧縮応力値を大きくすることで、微小クラックが広がることを抑制し、割れにくくできると考えられている。
【0004】
携帯端末等のカバーガラスは、アスファルトや砂の上に落下した際に突起物によって割れることがある。この場合の割れの起点は、ガラス表面より深い所にある。そこで、圧縮応力層深さを大きくしてガラスのより深い部分にまで圧縮応力層を形成することで、割れにくくできると考えられている。
【0005】
一方、ガラスの表面に圧縮応力層を形成すると、必然的に、ガラス内部に引張応力層が形成される。内部引張応力の値が大きいと、化学強化ガラスが破壊する際に激しく破砕して破片が飛散しやすい。そのため、内部引張応力値を抑制しながら表面圧縮応力と圧縮応力深さを大きくする方法が検討されている。
【0006】
特許文献1には、1回または2回のイオン交換処理によって圧縮応力層深さが90μm以上ある化学強化ガラスが得られることが記載されている。また、イオン交換処理を2回行った場合の典型的な応力プロファイルが図示されている。そのプロファイルは、ガラス表面から一定の深さにある点Xまでの応力プロファイルを表す直線と、点Xから応力がゼロになる点までの応力プロファイルを表す直線と、の2つの直線成分で構成されている(特許文献1、FIG.8)。そのような応力プロファイルを用いれば、表面の圧縮応力を大きくし、圧縮応力深さを大きくしながら、かつ内部引張応力値を抑制できるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/127483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されたガラスでも、砂やアスファルト上に落下した際の強度(以下、「アスファルト落下強度」ということがある)が不足する場合があった。
本発明は、アスファルト落下強度が高く、かつ破壊した時に破片が飛散しにくい化学強化ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、以下の考察および実験から、アスファルト落下強度を高くするためには、圧縮応力深さDOLが大きいことよりも、50MPaの圧縮応力値が得られる最大深さが大きいことが重要であると考えた。
ガラス板がアスファルト上に落下した際には、アスファルト表面の突起物によってガラス板内部に微小なクラックが生成する。生成した微小クラックが伝搬して大きくなると、ガラス板が破壊する。微小クラックの伝搬は、50MPa程度の圧縮応力によって抑制され得る。したがって、50MPaの圧縮応力値が得られる最大深さが大きければ、比較的大きい突起物によってガラス内部に微小クラックが生じても、破壊が生じにくいと考えた。
【0010】
表1は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを60.7%、Alを16.8%、NaOを15.6%、KOを1.2%、MgOを5.3%、及びZrOを0.4%含有するフロートガラス板を化学強化して、後述のアスファルト落下強度試験を行った結果である。この実験では、50MPaの圧縮応力値が得られる最大深さが大きい程、高い位置からの落下に耐えられる傾向が見られた。
【0011】
【表1】
【0012】
そこで本発明者等は、アスファルト落下強度を高めるためには、圧縮応力深さDOLが大きいことよりも、50MPaの圧縮応力値が得られる最大深さが大きいことが重要であると考えた。また、特許文献1に記載されたような2つ以下の直線成分からなる応力プロファイルでは、内部引張応力値CTを抑制し、かつ50MPaの圧縮応力値が得られる最大深さを大きくすることは難しいと考えて検討した結果、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、下記<1>~<12>に関するものである。
<1> ガラス表面に圧縮応力層を有する、板状の化学強化ガラスであって、
ガラス表面の圧縮応力値(CS)が500MPa以上であり、
板厚(t)が400μm以上であり、
圧縮応力層深さ(DOL)が(t×0.15)μm以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/4の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/2の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
以下の式で表されるmが-1.5MPa/μm以上であり、mが0MPa/μm以下であり、かつ前記mが前記mより小さい化学強化ガラス。
=(CS-CS)/(DOL/4-DOL/2)
=CS/(DOL/2-DOL)
<2> ガラス表面に圧縮応力層を有する、板状の化学強化ガラスであって、
ガラス表面の圧縮応力値(CS)が500MPa以上であり、
圧縮応力層深さ(DOL)が100μm以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/4の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
ガラス表面からの深さが前記DOLの1/2の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上であり、
以下の式で表されるmが-1.5MPa/μm以上であり、mが0MPa/μm以下であり、かつ前記mが前記mより小さい化学強化ガラス。
=(CS-CS)/(DOL/4-DOL/2)
=CS/(DOL/2-DOL)
<3> 圧縮応力値が50MPa以上である最大の深さが前記DOLに対して(0.55×DOL)μm以上である前記<1>または<2>に記載の化学強化ガラス。
<4> 前記m及び前記mの比(m/m)が0.9より小さい前記<1>~<3>のいずれか一に記載の化学強化ガラス。
<5> 前記mが0.5MPa/μm以下である前記<1>~<4>のいずれか一に記載の化学強化ガラス。
<6> 内部引張応力値が100MPaより小さい前記<1>~<5>のいずれか一に記載の化学強化ガラス。
<7> ガラス表面からの深さが2.5μmの点における圧縮応力値(CS)に対し、以下の式で表されるmが120MPa/μm以上である前記<1>~<6>のいずれか一に記載の化学強化ガラス。
=(CS-CS)/2.5
<8> 化学強化ガラスの母組成が、酸化物基準の質量百分率表示で
SiO 55~80%、
Al 15~28%、
0~10%、
LiO 2~10%、
NaO 0.5~10%、
O 0~10%、
(MgO+CaO+SrO+BaO) 0~10%、及び
(ZrO+TiO) 0~5%、
を含む前記<1>~<7>のいずれか一に記載の化学強化ガラス。
【0014】
<9> LiOを含有する化学強化用ガラスを、Naイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換し、
次に、Liイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換し、
次に、Kイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換する工程を含む、化学強化ガラスの製造方法。
<10> LiOを含有する化学強化用ガラスを、Naイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換し、
次に金属塩に接触させずに熱処理し、
次にKイオンを含む金属塩に接触させてイオン交換する工程を含む、化学強化ガラスの製造方法。
<11> 前記化学強化用ガラスが酸化物基準の質量百分率表示で、SiO 55~80%、Al 15~28%、B 0~10%、LiO 2~10%、NaO 0.5~10%、KO 0~10%、(MgO+CaO+SrO+BaO) 0~10%、及び(ZrO+TiO) 0~5%、を含む前記<9>または<10>に記載の化学強化ガラスの製造方法。
<12> 酸化物基準の質量百分率表示でSiO 55~75%、Al 15~25%、B 0~10%、LiO 2~10%、NaO 1~10%、KO 0.5~10%、(MgO+CaO+SrO+BaO) 0~10%、及び(ZrO+TiO) 0~5%、を含む化学強化用ガラス。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アスファルト落下強度が高く、かつ破壊した時に破片の飛散が抑制された化学強化ガラスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、化学強化ガラス1の応力プロファイルの一部を示す図である。
図2図2は、化学強化ガラス3の応力プロファイルの一部を示す図である。
図3図3は、化学強化ガラス5の応力プロファイルの一部を示す図である。
図4図4は、化学強化ガラス7の応力プロファイルの一部を示す図である。
図5図5は、化学強化ガラス12の応力プロファイルの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「~」は、同様の意味で使用される。
【0018】
本明細書において「応力プロファイル」はガラス表面からの深さを変数として圧縮応力値を表したものをいう。また、「圧縮応力層深さDOL」は、圧縮応力値CSがゼロとなる深さである。たとえば、図1に示す応力プロファイルにおいて、矢印Cで表される点の深さがDOLである。
応力プロファイルは、例えば、ガラスの断面を薄片化したものを用いて、複屈折イメージングシステムで解析することで得られる。複屈折イメージングシステムとしては、例えば、株式会社東京インスツルメンツ製複屈折イメージングシステムAbrio-IMがある。また、散乱光光弾性を利用しても測定できる。この方法では、ガラスの表面から光を入射し、その散乱光の偏光を解析する。
「内部引張応力CT」は、ガラスの板厚tの1/2の深さにおける引張応力値をいう。
【0019】
本明細書において、「化学強化ガラス」は、化学強化処理を施した後のガラスを指し、「化学強化用ガラス」は、化学強化処理を施す前のガラスを指す。
本明細書において、「化学強化ガラスの母組成」とは、化学強化用ガラスのガラス組成であり、極端なイオン交換処理がされた場合を除いて、化学強化ガラスのDOLより深い部分のガラス組成は化学強化ガラスの母組成である。
【0020】
本明細書において、ガラス組成は、特に断らない限り酸化物基準の質量百分率表示で表し、質量%を単に「%」と表記する。
また、本明細書において「実質的に含有しない」とは、原材料等に含まれる不純物レベル以下である、つまり意図的に含有させたものではないことをいう。具体的には、たとえば0.1%未満である。
【0021】
<化学強化ガラス>
本発明の化学強化ガラス(以下、「本強化ガラス」ということがある。)は板状であり、通常は平坦な板状であるが、曲面状でもよい。
【0022】
本強化ガラスは、ガラス表面に圧縮応力層を有し、板厚(t)が400μm以上かつ圧縮応力層深さ(DOL)が(t×0.15)μm以上であるか、または、圧縮応力層深さ(DOL)が100μm以上である。板厚(t)が400μm以上であって、圧縮応力層深さ(DOL)が(t×0.15)μm以上かつ100μm以上であってもよい。
本強化ガラスの板厚(t)は、400μm以上が好ましく、600μm以上がより好ましく、700μm以上がさらに好ましい。これはガラスの強度が高くなるからである。強度を高くするためには、板厚(t)は大きいほどよいが、tが大きすぎると重量が大きくなるので、2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましい。
【0023】
本強化ガラスは、DOLが大きいので、化学強化ガラスが落下する等して傷が生じた場合にも割れにくく好ましい。本強化ガラスのDOLは、(t×0.15)μm以上が好ましく、より好ましくは(t×0.18)μm以上、さらに好ましくは(t×0.19)μm以上、特に好ましくは(t×0.2)μm以上である。
一方、DOLは(t×0.3)μm以下が好ましく、(t×0.25)μm以下がより好ましく、(t×0.22)μm以下がさらに好ましい。これは内部引張応力(CT)が抑制されるからである。
【0024】
本強化ガラスのDOLは100μm以上が好ましく、120μm以上がより好ましく、140μm以上がさらに好ましい。
なお、CTは110MPa以下であると、化学強化ガラスが破壊した時に破片が飛散しにくいので好ましい。CTは、より好ましくは100MPa以下、さらに好ましくは90MPa以下である。
【0025】
本強化ガラスは、ガラス表面における圧縮応力値CSが500MPa以上なので、化学強化ガラスが衝撃により変形した場合等にも割れにくく好ましい。CSは好ましくは、600MPa以上、さらに好ましくは700MPa以上、さらに好ましくは800MPa以上である。一方、CTを抑制するために好ましくは1500MPa以下であり、より好ましくは1300MPa以下、さらに好ましくは1100MPa以下、特に好ましくは900MPa以下である。
【0026】
本強化ガラスは、ガラス表面からの深さがDOL/4の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上なので砂やアスファルト上に落下した際に割れにくい。アスファルト落下強度を大きくするためにCSは、60MPa以上が好ましく、70MPa以上がより好ましい。CSが大きすぎるとCTが大きくなってガラスが破壊した時に破片が飛散しやすくなる。そのためCSは、120MPa以下が好ましく、100MPa以下がより好ましく、80MPa以下がさらに好ましい。
本強化ガラスは、ガラス表面からの深さがDOL/2の点における圧縮応力値(CS)が50MPa以上なので砂やアスファルト上に落下した際に傷が生じても割れにくい。アスファルト落下強度を大きくするためにCSは、60MPa以上が好ましく、70MPa以上がより好ましい。CSは、大きすぎるとガラスが破壊した時に破片が飛散する恐れが大きくなる。これはCTが大きくなるからである。そのためCSは、120MPa以下が好ましく、100MPa以下がより好ましく、80MPa以下がさらに好ましい。
【0027】
また本強化ガラスは、以下の式で表されるmが-1.5MPa/μm以上なので、CTが抑制され、激しい破壊が生じにくい。mは、-1.0MPa/μm以上が好ましく、-0.8MPa/μm以上がより好ましい。
=(CS-CS)/(DOL/4-DOL/2)
【0028】
一方で、mが大きすぎると化学強化ガラスの端面にクラックが発生しやすい。化学強化ガラスはガラス表面に圧縮応力を形成したガラスであるから、全体としてはガラスの外側の圧縮応力値がガラスの内側の圧縮応力値より大きい。したがって外側の圧縮応力値であるCSは内側の圧縮応力値であるCSより大きいのが普通であり、mは、負の値になるのが普通である。応力プロファイルの調整によってmを正の値にすることも可能であるが、その場合は、ガラス板内部に局所的に外側の圧縮応力値が内側の圧縮応力値より小さい部分が生じることで、その部分に歪が生じやすい。それによって、端面にクラックが発生しやすくなる。
は0.5MPa/μm以下が好ましく、0.3MPa/μm以下がより好ましく、0MPa/μm以下がさらに好ましく、-0.2MPa/μm以下が特に好ましい。これは端面にクラックが発生することを抑制できるからである。
【0029】
また、以下の式で表すmが0MPa/μm以下であり、かつmより小さい。すなわち、mとmの比(m/m)は1未満である。
=CS/(DOL/2-DOL)
【0030】
/mは0.9以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましく、0.75以下がよりさらに好ましく、0.7以下が特に好ましい。m/mが小さいことでCTが抑制される。
【0031】
一方、m/mは、-0.2以上が好ましく、0以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.25以上が特に好ましい。これはガラスの端面にクラックが生じにくくなるからである。
【0032】
本強化ガラスは、深さ2.5μmにおける圧縮応力値をCSとした際に、以下の式で表されるmが120MPa/μm以上であることが好ましい。それによって、CSを大きくしてもCTを小さくできる。
=(CS-CS)/2.5
【0033】
は、150MPa/μm以上がより好ましく、180MPa/μm以上がさらに好ましく、200MPa/μm以上がさらに好ましく、220MPa/μm以上が特に好ましい。一方、mが大きすぎるとガラス表面の微小な傷によって強度が低下しやすくなる。そのためmは500MPa/μm以下が好ましく、400MPa/μm以下がより好ましく、300MPa/μm以下がさらに好ましい。
【0034】
本強化ガラスは、圧縮応力値が50MPa以上である最大の深さ(D50M)が(0.55×DOL)μm以上が好ましく、(0.6×DOL)μm以上がより好ましく、(0.65×DOL)μm以上がさらに好ましい。それによってアスファルト落下強度が高くなる。
【0035】
<化学強化用ガラス>
本発明の化学強化用ガラス(以下、本強化用ガラスということがある。)は、450℃の硝酸ナトリウム(NaNO)溶融塩に1時間浸漬した際のガラス表面の圧縮応力値(CS)が200MPa以上となることが好ましい。また、その際のDOLは40μm以上が好ましい。
450℃の硝酸ナトリウム溶融塩に1時間浸漬した際のCSは、より好ましくは250MPa以上、さらに好ましくは300MPa以上、特に好ましくは350MPa以上、最も好ましくは400MPa以上である。そのようなガラスは、化学強化によって容易に高いCSが得られる。
【0036】
また、450℃の硝酸ナトリウム溶融塩に1時間浸漬した際のDOLは、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは60μm以上、特に好ましくは70μm以上である。そのような化学強化用ガラスであると、強化処理時間を短くできる。
【0037】
一般にCSが高すぎると、DOLが浅くなり、DOLが深くすぎるとCSが小さくなる。両者のバランスの観点から、450℃の硝酸ナトリウム溶融塩に1時間浸漬した際のCSは700MPa以下が好ましく、より好ましくは600MPa以下、さらに好ましく500MPa以下である。DOLは170μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、130μm以下がさらに好ましい。
【0038】
本強化用ガラスは、450℃の硝酸カリウム(KNO)溶融塩に1時間浸漬した際のCSが500MPa以上となることが好ましい。またその際のDOLが3μm以上となることが好ましい。
450℃の硝酸カリウム溶融塩に1時間浸漬した際のCSは、より好ましくは600MPa以上、さらに好ましくは700MPa以上、さらに好ましくは800MPa以上である。そのような化学強化用ガラスは、容易に高いCSが得られるので、高強度の化学強化ガラスが得られやすい。
【0039】
450℃の硝酸カリウム溶融塩に1時間浸漬した際のDOLは、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは6μm以上である。そのような強化用ガラスは、強化処理時間を短くできる。
【0040】
一般にCSが高すぎると、DOLが浅くなり、DOLが深すぎるとCSが小さくなる。両者のバランスの観点から、450℃の硝酸カリウム溶融塩に1時間浸漬した際のCSは1400MPa以下が好ましい。より好ましくは1300MPa以下、さらに好ましく1100MPa以下、特に好ましくは900MPa以下である。450℃の硝酸カリウム溶融塩に1時間浸漬した際のDOLは20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
【0041】
本強化用ガラスは、450℃の硝酸ナトリウム(NaNO)溶融塩に1時間浸漬した際のDOLが40μm以上であり、かつ450℃の硝酸カリウム(KNO)溶融塩に1時間浸漬した際のCSが500MPa以上であることがより好ましい。
そのような強化用ガラスであれば、ナトリウム塩とカリウム塩とを用いた化学強化処理によって、CSが大きく、DOLが大きく、かつCTが抑制された化学強化ガラスを得やすいからである。
【0042】
本強化用ガラスのガラス転移温度(Tg)は、化学強化時の応力緩和を抑制するために480℃以上が好ましい。Tgは、応力緩和を抑制して大きな圧縮応力が得られるために、500℃以上がより好ましく、520℃以上がさらに好ましい。
またTgは、化学強化時にイオン拡散速度が速くなるために、700℃以下が好ましい。深いDOLを得やすいために、Tgは650℃以下がより好ましく、600℃以下がさらに好ましい。
【0043】
本強化用ガラスのヤング率は、70GPa以上が好ましい。ヤング率が高いほど、強化ガラスが破壊した時に破片が飛散しにくくなる傾向がある。そのためヤング率は75GPa以上がより好ましく、80GPa以上がさらに好ましい。一方、ヤング率が高すぎると、化学強化時にイオンの拡散が遅く、深いDOLを得ることが困難になる傾向がある。そこでヤング率は110GPa以下が好ましく、100GPa以下がより好ましく、90GPa以下がさらに好ましい。
【0044】
本強化用ガラスのビッカース硬度は575以上が好ましい。化学強化用ガラスのビッカース硬度が大きいほど化学強化後のビッカース硬度が大きくなりやすく、化学強化ガラスが落下したときにも傷がつきにくい。そこで化学強化用ガラスのビッカース硬度は、好ましくは600以上、より好ましくは625以上である。
なお、化学強化後のビッカース硬度は600以上が好ましく、625以上がより好ましく、650以上がさらに好ましい。
【0045】
ビッカース硬度は大きいほど傷つきにくくなるので好ましいが、通常は本強化用ガラスのビッカース硬度は850以下である。ビッカース硬度が大きすぎるガラスでは十分なイオン交換性を得るのが難しい傾向がある。そのため、ビッカース硬度は800以下が好ましく、750以下がより好ましい。
【0046】
本強化用ガラスの破壊靱性値は0.7MPa・m1/2以上が好ましい。破壊靱性値が大きいほど、化学強化ガラスの破壊時に破片の飛散が抑制される傾向がある。破壊靱性値は、より好ましくは0.75MPa・m1/2以上、さらに好ましくは0.8MPa・m1/2以上である。
破壊靱性値は、通常は1MPa・m1/2以下である。
【0047】
本強化用ガラスの50℃から350℃における平均熱膨張係数(α)は、100×10-7/℃以下が好ましい。平均膨張係数(α)が小さいと、ガラスの成型時や化学強化後の冷却時にガラスが反りにくい。平均膨張係数(α)は95×10-7/℃以下がより好ましく、90×10-7/℃以下がさらに好ましい。
化学強化ガラスの反りを抑制するためには、平均熱膨張係数(α)は小さい程好ましいが、通常は60×10-7/℃以上である。
【0048】
本強化用ガラスにおいて、粘性が10dPa・sとなる温度(T)は、1750℃以下が好ましく、1700℃以下がより好ましく、1680℃以下がさらに好ましい。Tは通常は1400℃以上である。
【0049】
本強化用ガラスにおいて、粘性が10dPa・sとなる温度(T)は、1350℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましく、1250℃以下がさらに好ましい。Tは通常は1000℃以上である。
【0050】
化学強化用ガラスの液相温度は、(T+50)℃以下が好ましい。そのようなガラスは、フロート法で製造しやすいからである。液相温度は(T+25)℃以下がより好ましく、T℃以下がさらに好ましい。
【0051】
本強化用ガラスは、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを50~80%、Alを15~25%、Bを0~10%、LiOを2~10%、NaOを0~10%、KOを0~10%、を含有し、MgO、CaO、SrO、BaOの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO)が0~10%、ZrOとTiOの含有量の合計(ZrO+TiO)が0~5%であることが好ましい。
酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを55~80%、Alを15~28%、Bを0~10%、LiOを2~10%、NaOを0.5~10%及びKOを0~10%を含有し、MgO、CaO、SrO、BaOの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO)が0~10%かつZrOとTiOの含有量の合計(ZrO+TiO)が0~5%であることがより好ましい。
酸化物基準の質量百分率表示でSiOが55~75%、Alが15~25%、Bが0~10%、LiOが2~10%、NaOが1~10%、KOが0.5~10%、(MgO+CaO+SrO+BaO)が0~10%及び(ZrO+TiO)が0~5%であるとさらに好ましい。
そのようなガラスは、化学強化処理によって好ましい応力プロファイルを形成しやすい。以下、この好ましいガラス組成について説明する。
【0052】
SiOはガラスの骨格を構成する成分である。また、化学的耐久性を上げる成分であり、ガラス表面に傷がついた時のクラックの発生を低減させる成分である。SiOの含有量は50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、58%以上がさらに好ましい。
また、ガラスの溶融性を高くするためにSiOの含有量は80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
【0053】
Alは化学強化の際のイオン交換性を向上させ、強化後の表面圧縮応力を大きくするために有効な成分であり、ガラス転移温度(Tg)を高くし、ヤング率を高くする成分でもあり、13%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。
また、Alの含有量は、溶融性を高くするために好ましくは28%以下、より好ましくは26%以下、さらに好ましくは25%以下である。
【0054】
は、必須ではないが、ガラス製造時の溶融性を向上させる等のために加えることができる。Bを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。
また、Bの含有量は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下である。それによって、溶融時に脈理が発生し化学強化用ガラスの品質が低下するのを防ぐことができる。なお、耐酸性を高くするためにはBを実質的に含有しないことが好ましい。
【0055】
LiOは、イオン交換により表面圧縮応力を形成させる成分である。LiOの含有量は、圧縮応力層深さDOLを大きくするために、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上、である。
また、ガラスの化学的耐久性を高くするためにLiOの含有量は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、7%以下がさらに好ましい。
【0056】
NaOはカリウムを含有する溶融塩を利用したイオン交換により表面圧縮応力層を形成する成分であり、またガラスの溶融性を向上させる成分である。NaOの含有量は0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましい。
また、NaOの含有量は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。
【0057】
Oは必須ではないが、ガラスの溶融性を向上し、失透を抑制するために含有してもよい。KOの含有量は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である。
また、KOの含有量はイオン交換による圧縮応力値を大きくするために、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは8%以下である。
【0058】
LiO、NaOおよびKO等のアルカリ金属酸化物は、いずれもガラスの溶解温度を低下させる成分であり、合計で5%以上含有することが好ましい。LiO、NaO、KOの含有量の合計(LiO+NaO+KO)は、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましく、8%以上がさらに好ましい。
(LiO+NaO+KO)は、ガラスの強度を維持するために20%以下が好ましく、18%以下がより好ましい。
【0059】
MgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物は、いずれもガラスの溶融性を高める成分であるが、イオン交換性能を低下させる傾向がある。
MgO、CaO、SrO、BaOの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO)は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0060】
MgO、CaO、SrO、BaOのいずれかを含有する場合は、化学強化ガラスの強度を高くするためにMgOを含有することが好ましい。
MgOを含有する場合の含有量は0.1%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましい。
またイオン交換性能を高くするために10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0061】
CaOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。イオン交換性能を高くするためには5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0062】
SrOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。イオン交換性能を高くするためには5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0063】
BaOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。イオン交換性能を高くするためには5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0064】
ZnOはガラスの溶融性を向上させる成分であり、含有させてもよい。ZnOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは0.5%以上である。ガラスの耐候性を高くするために、ZnOの含有量は5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0065】
TiOは、化学強化ガラスの破壊時に破片が飛散することを抑制する成分であり、含有させてもよい。TiOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.1%以上である。TiOの含有量は、溶融時の失透を抑制するために5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0066】
ZrOは、イオン交換による表面圧縮応力を増大させる成分であり、含有させてもよい。ZrOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。また溶融時の失透を抑制するために5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0067】
また、TiOとZrOの含有量(TiO+ZrO)は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0068】
、La、Nbは、化学強化ガラスの破砕を抑制する成分であり、含有させてもよい。これらの成分を含有させる場合のそれぞれの含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、特に好ましくは2%以上、最も好ましくは2.5%以上である。
【0069】
また、Y、La、Nbの含有量は合計で9%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。そのようであると溶融時にガラスが失透しにくくなり化学強化ガラスの品質が低下するのを防ぐことができる。またY、La、Nbの含有量はそれぞれ、3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.7%以下、最も好ましくは0.3%以下である。
【0070】
Ta、Gdは、化学強化ガラスの破砕を抑制するために少量含有してもよいが、屈折率や反射率が高くなるのでそれぞれ1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0071】
は、はイオン交換性能を向上させるために含有してもよい。Pを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。化学的耐久性を高くするためにはPの含有量は2%以下が好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
【0072】
ガラスを着色する場合は、所望の化学強化特性の達成を阻害しない範囲において着色成分を添加してもよい。着色成分としては、例えば、Co、MnO、Fe、NiO、CuO、Cr、V、Bi、SeO、TiO、CeO、Er、Ndが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0073】
着色成分の含有量は、合計で7%以下が好ましい。それによって、ガラスの失透を抑制できる。着色成分の含有量は、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。ガラスの可視光透過率を高くしたい場合は、これらの成分は実質的に含有しないことが好ましい。
【0074】
また、ガラス溶融の際の清澄剤として、SO、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。Asは実質的に含有しないことが好ましい。Sbを含有する場合は、0.3%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0075】
なお、本強化ガラスは、上記組成の本強化用ガラスが化学強化された化学強化ガラスが好ましく、その母組成は化学強化用ガラスの組成と同様である。
すなわち、例えば本強化ガラスは、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを55~80%、Alを15~28%、Bを0~10%、LiOを2~10%、NaOを0.5~10%及びKOを0~10%を含有し、MgO、CaO、SrO、BaOの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO)が0~10%かつZrOとTiOの含有量の合計(ZrO+TiO)が0~5%であることが好ましい。
【0076】
<化学強化ガラスの製造方法>
化学強化ガラスは、一般的なガラス製造方法によって製造された化学強化用ガラスを化学強化処理して製造される。
化学強化処理は、ガラスの表面にイオン交換処理を施し、圧縮応力を有する表面層を形成させる処理である。具体的には、化学強化用ガラスのガラス転移点以下の温度でイオン交換処理を行い、ガラス板表面付近に存在するイオン半径が小さな金属イオン(典型的には、LiイオンまたはNaイオン)を、イオン半径のより大きいイオン(典型的には、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオン)に置換する。
【0077】
本強化ガラスは、たとえば前述の組成を有する化学強化用ガラスを化学強化処理して製造できる。
化学強化用ガラスは、例えば、以下のようにして製造できる。なお、下記の製造方法は、板状の化学強化ガラスを製造する場合の例である。
【0078】
たとえば前述の好ましい組成のガラスが得られるように、ガラス原料を調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。その後、バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、従来公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。またはブロック状に成形して徐冷した後に切断する方法で板状に成形してもよい。
【0079】
板状に成形する方法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法及びダウンドロー法が挙げられる。特に、大型のガラス板を製造する場合は、フロート法が好ましい。また、フロート法以外の連続成形法、たとえば、フュージョン法及びダウンドロー法も好ましい。
【0080】
その後、成形して得られたガラスを必要に応じて研削及び研磨処理して、ガラス板を形成する。なお、ガラス板を所定の形状及びサイズに切断したり、ガラス板の面取り加工を行う場合、後述する化学強化処理を施す前に、ガラス板の切断や面取り加工を行えば、化学強化処理によって端面にも圧縮応力層が形成されるため、好ましい。
【0081】
そして、形成したガラス板に化学強化処理を施した後、洗浄及び乾燥することにより、化学強化ガラスが得られる。
【0082】
<化学強化処理>
化学強化処理は、大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、NaイオンまたはKイオン)を含む金属塩(例えば、硝酸カリウム)の融液に浸漬する等の方法で、ガラスを金属塩に接触させ、ガラス中の小さなイオン半径の金属イオン(典型的には、NaイオンまたはLiイオン)と大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオン)とを置換させる処理である。
化学強化処理の速度を早くするためには、ガラス中のLiイオンをNaイオンと交換する「Li-Na交換」を利用することが好ましい。またイオン交換により大きな圧縮応力を形成するためには、ガラス中のNaイオンをKイオンと交換する「Na-K交換」を利用することが好ましい。
【0083】
化学強化処理を行うための溶融塩としては、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物などが挙げられる。このうち硝酸塩としては、例えば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸銀などが挙げられる。硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム、硫酸銀などが挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。塩化物としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化銀などが挙げられる。これらの溶融塩は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本強化ガラスは、たとえば以下に説明する強化処理方法1または強化処理方法2を用いて製造できる。
【0085】
(強化処理方法1)
強化処理方法1においては、まず、ナトリウム(Na)イオンを含む金属塩(第一の金属塩)に、LiOを含有する化学強化用ガラスを接触させて、金属塩中のNaイオンとガラス中のLiイオンとのイオン交換を起こさせる。以下ではこのイオン交換処理を「1段目の処理」と呼ぶことがある。
1段目の処理は、たとえば化学強化用ガラスを350~500℃程度のNaイオンを含む金属塩(例えば硝酸ナトリウム)に0.1~24時間程度浸漬する。生産性を向上するためには、1段目の処理時間は12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。
【0086】
1段目の処理によって、ガラス表面に深い圧縮応力層が形成され、CSが200MPa以上、DOLが板厚の1/8以上となるような応力プロファイルを形成できる。また大きなD50Mが得られる。1段目の処理を終えたガラスは、前述のmに相当するDOL/4~DOL/2における応力プロファイルの傾きの絶対値が、前述のmに相当するDOL/2~DOLにおける応力プロファイルの傾きの絶対値よりも大きい。また、1段目の処理を終えた段階のガラスは、CTが大きいので破壊時に破片が飛散しやすい。しかし、後の処理によって破片の飛散は改善されるので、この段階でのCTが大きいことはむしろ好ましい。1段目の処理を終えたガラスのCTは90MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましく、110MPa以上がさらに好ましい。それによってD50Mが大きくなるからである。
【0087】
第一の金属塩はアルカリ金属塩であり、アルカリ金属イオンとしては、Naイオンを最も多く含有する。Liイオンを含有してもよいが、アルカリイオンのモル数100%に対してLiイオンは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。また、Kイオンを含有してもよい。第一の金属塩に含まれるアルカリイオンのモル数100%に対してKイオンは20%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0088】
次に、リチウム(Li)イオンを含有する金属塩(第二の金属塩)に、1段目の処理を終えたガラスを接触させ、金属塩中のLiイオンとガラス中のNaイオンとのイオン交換により、表層近傍の圧縮応力値を減少させる。この処理を「2段目の処理」と呼ぶことがある。
具体的には、たとえば350~500℃程度のNaとLiを含む金属塩(例えば硝酸ナトリウムと硝酸リチウムの混合塩)に0.1~24時間程度浸漬する。生産性を向上するためには、2段目の処理時間は12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。
【0089】
2段目の処理によって、前述のmに相当するDOL/4~DOL/2における応力プロファイルの傾きの絶対値は前述のmに相当するDOL/2~DOLにおける応力プロファイルの傾きの絶対値よりも小さくなる。その結果、CTが小さくなる。一方、2段目の処理は、ガラスの深い部分の応力プロファイルには影響しないので、2段目の処理によってもD50Mは減少しない。
2段目の処理を終えたガラスは、大きなD50Mを維持しつつ、内部の引っ張り応力を下げることができ、割れた際に激しい割れ方をしなくなる。
【0090】
第二の金属塩は、アルカリ金属塩であり、アルカリ金属イオンとしてNaイオンとLiイオンを含有することが好ましい。また硝酸塩が好ましい。第二の金属塩に含まれるアルカリ金属イオンのモル数100%に対して、NaイオンとLiイオンの合計のモル数は50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。Na/Liモル比を調整することで、DOL/4~DOL/2における応力プロファイルを制御できる。
第二の金属塩のNa/Liモル比の最適値は、ガラス組成によって異なるが、例えば、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がより好ましい。Na/Li比が大きすぎると、CTを小さくしつつ、D50Mを大きくするのが難しい。Na/Li比は100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましい。
【0091】
第二の金属塩が、硝酸ナトリウム-硝酸リチウム混合塩の場合、硝酸ナトリウムと硝酸リチウムの質量比は、たとえば25:75~99:1が好ましく、50:50~98:2がより好ましく、70:30~97:3が好ましい。
【0092】
次に、カリウム(K)イオンを含む金属塩(第三の金属塩)に、2段目の処理を終えたガラスを接触させ、金属塩中のKイオンとガラス中のNaイオンとのイオン交換により、ガラス表面に大きな圧縮応力を発生させる。このイオン交換処理を「3段目の処理」と呼ぶことがある。
具体的には、たとえば350~500℃程度のKイオンを含む金属塩(例えば硝酸カリウム)に0.1~10時間程度浸漬する。このプロセスにより、ガラス表層の0~10μm程度の領域に大きな圧縮応力を形成できる。
【0093】
3段目の処理はガラス表面の浅い部分の圧縮応力だけを大きくし、内部にはほとんど影響しないので、大きなD50Mを維持し、内部の引っ張り応力を抑制したままで、表層に大きな圧縮応力を形成できる。
第3の金属塩はアルカリ金属塩であり、アルカリ金属イオンとして、Liイオンを含んでもよいが、アルカリ金属の原子数100%に対してLiイオンは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。また、Naイオンの含有量は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく0.2%以下がさらに好ましい。
【0094】
強化処理方法1では、1~3段目の処理時間の総和を24時間以下にできるので、生産性が高く好ましい。処理時間の総和は15時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。
【0095】
(強化処理方法2)
強化処理方法2においては、まず、ナトリウム(Na)イオンを含む第一の金属塩に、LiOを含有する化学強化用ガラスを接触させて、金属塩中のNaイオンとガラス中のLiイオンとのイオン交換を起こさせる1段目の処理を行う。
1段目の処理については、強化処理方法1の場合と同様なので説明を省略する。
【0096】
次に、1段目の処理を終えたガラスを金属塩に接触させずに熱処理する。これを2段目の処理と呼ぶ。
2段目の処理は、たとえば1段目の処理を終えたガラスを大気中で350℃以上の温度に一定時間保持して行う。保持温度は化学強化用ガラスの歪点以下の温度であり、1段目の処理温度より10℃高い温度以下が好ましく、1段目の処理温度と同じ温度がより好ましい。
この処理によれば、1段目の処理でガラス表面に導入されたアルカリイオンが、熱拡散することでCTが低下すると考えられる。
【0097】
次に、カリウム(K)イオンを含む第三の金属塩に、2段目の処理を終えたガラスを接触させ、金属塩中のKイオンとガラス中のNaイオンとのイオン交換により、ガラス表面に大きな圧縮応力を発生させる。このイオン交換処理を「3段目の処理」と呼ぶことがある。
3段目の処理については、強化処理方法1の場合と同様なので説明を省略する。
【0098】
強化処理方法2では、1~3段目の処理時間の総和を24時間以下にできるので、生産性が高く好ましい。処理時間の総和は15時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。
【0099】
強化処理方法1によれば、2段目の処理に用いる第二の金属塩の組成や処理温度の調整により、応力プロファイルを精密に制御できる。
強化処理方法2によれば、比較的簡単な処理により低コストで優れた特性の化学強化ガラスが得られる。
【0100】
化学強化処理の処理条件は、ガラスの特性・組成や溶融塩の種類などを考慮して、時間及び温度等を適切に選択すればよい。
【0101】
本発明の化学強化ガラスは、携帯電話、スマートフォン等のモバイル機器等に用いられるカバーガラスとして、特に有用である。さらに、携帯を目的としない、テレビ、パーソナルコンピュータ、タッチパネル等のディスプレイ装置のカバーガラス、エレベータ壁面、家屋やビル等の建築物の壁面(全面ディスプレイ)にも有用である。また、窓ガラス等の建築用資材、テーブルトップ、自動車や飛行機等の内装等やそれらのカバーガラスとして、また曲面形状を有する筺体等の用途にも有用である。
【実施例
【0102】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されない。
表2に酸化物基準の質量百分率表示で示したガラス1、2、4~8の組成となるようにガラス原料を調合し、ガラスとして1000gになるように秤量した。ついで、混合した原料を白金るつぼに入れ、1500~1700℃の電気炉に投入して3時間程度溶融し、脱泡、均質化した。
得られた溶融ガラスを型材に流し込み、(ガラス転移点+50)℃の温度において1時間保持した後、0.5℃/分の速度で室温まで冷却し、ガラスブロックを得た。得られたガラスブロックを切断、研削し、最後に両面を鏡面研磨して、厚さ(t)が800μmのガラス板を得た。また、ガラス3をフロート法で製造した。
【0103】
得られたガラスについて以下の特性を評価した。
平均線膨張係数(α)(×10-7/℃)およびガラス転移点(Tg)(℃)の測定はJIS R3102(1995年)『ガラスの平均線膨張係数の試験方法』の方法に準じた。ヤング率(E)(GPa)は超音波パルス法(JIS R1602(1995年))により測定した。T(℃)及びT(℃)は、ASTM C 965-96(2012年)に準じて回転粘度計で測定した。
【0104】
<液相温度(T)>
化学強化前のガラスを粉砕し、4mmメッシュと2mmメッシュの篩を用いて分級し、洗浄した後、乾燥してカレットを得た。2~5gのカレットを白金皿に載せて一定温度に保った電気炉中で17時間保持し、室温の大気中に取り出して冷却した後、偏光顕微鏡で失透の有無を観察する操作を繰り返して、失透が認められた最高の温度(T1)と失透が認められなかった最低の温度(T2)との平均値をTとした。ただし、T1とT2との差が20℃以内になるようにした。
【0105】
【表2】
【0106】
ガラス1~8を用いて、以下の例1~例12の化学強化ガラスを作製し、評価した。なお、例1~3、8~12が実施例であり、例4~7は比較例である。
(例1)
ガラス1の板を、450℃の硝酸ナトリウム塩に3時間浸した。次に、375℃の硝酸ナトリウム-硝酸リチウム混合塩(質量比 85:15)に3時間浸した。次に400℃の硝酸カリウム塩に1時間浸して、化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 7時間)。
(例2)
ガラス1の板を、450℃の硝酸ナトリウム塩に3時間浸した後、例1における硝酸ナトリウム-硝酸リチウム混合塩に浸す代わりに大気中で450℃に3時間保持した他は例1と同様にして化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 7時間)。
(例3)
ガラス2の板を、450℃の硝酸ナトリウム塩に3時間浸した後、大気中で450℃に3時間保持し、次に400℃の硝酸カリウム塩に0.5時間浸して、化学強化ガラスを得た(合計の強化時間 6.5時間)。
【0107】
(例4)
ガラス1の板を450℃の硝酸カリウム-硝酸ナトリウム混合塩(質量比 90:10)に1.5時間浸して化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 1.5時間)。
(例5)
ガラス1の板を450℃の硝酸ナトリウム塩に2時間浸し、次に、450℃の硝酸カリウム塩に4時間浸して化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 6時間)。
(例6)
ガラス1の板を450℃の硝酸ナトリウム塩に3時間浸し、次に、400℃の硝酸カリウム塩に1時間浸して化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 4時間)。
(例7)
ガラス3の板を450℃の硝酸カリウム塩に4時間浸し、次に大気中で500℃に5時間保持した後、400℃の硝酸カリウム塩に15分浸して化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 9.25時間)。
(例8)
ガラス4の板を450℃の硝酸ナトリウム塩に4時間浸し、次に、大気中で450℃に1時間保持した後、400℃の硝酸カリウム塩に1時間浸して、化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 6時間)。
(例9~11)
表4に記載したガラスの板をそれぞれ450℃の硝酸ナトリウム塩に4時間浸し、次に大気中で450℃に3時間保持した後、400℃の硝酸カリウム塩に1時間浸して化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 8時間)。
(例12)
ガラス8のガラス板を450℃の硝酸ナトリウム塩に3時間浸し、次に大気中で450℃に1時間保持した後、450℃の硝酸カリウム塩に1時間浸して化学強化ガラス板を得た(合計の強化時間 5時間)。
【0108】
例1~12の化学強化ガラス板について、以下の評価を行った。
[応力プロファイル]
折原製作所社製の表面応力計FSM-6000及び散乱光光弾性を応用した折原製作所社製の測定機SLP1000を用いて応力値を測定した。化学強化ガラス1、3、5、7、12の測定結果をそれぞれ図1、2、3、4、5に示す。各図の矢印cで示される箇所(圧縮応力値が0となる点)における深さがDOL[単位:μm]である。また図中aの矢印で示したDOL/4となる深さにおける圧縮応力値(CS)[単位:MPa]、bの矢印で示したDOL/2となる深さにおける圧縮応力値(CS)[単位:MPa]、ガラス表面(深さ0の点)の圧縮応力値(CS)[単位:MPa]、及び深さ2.5μmにおける圧縮応力値(CS)[単位:MPa]を読み取った。
【0109】
これらの結果から、以下の式でm[単位:MPa/μm]、m[単位:MPa/μm]、m[単位:MPa/μm]およびm/mを計算した。
=(CS-CS)/(DOL/4-DOL/2)
=CS/(DOL/2-DOL)
=(CS-CS)/2.5
また、CSが50MPa以上となる最大深さ(D50M)[単位:μm]および深さが(t×1/2)における引張応力値(CT)[単位:MPa]を読み取った。
【0110】
[アスファルト落下強度試験]
化学強化ガラス板をスマートフォンのカバーガラスに見立て、スマートフォンを模擬した筐体に取り付けて、平坦なアスファルト面上に落下させた。化学強化ガラス板と筐体を合わせた質量は約140gであった。
高さ30cmから試験を開始し、化学強化ガラス板が割れなかったら、高さを10cm高くして落下させる試験を繰り返し、割れた時の高さ[単位:cm]を記録した。この試験を1セットとして、10セット繰り返し、割れたときの高さの平均値を「落下高さ」(cm)とした。
表3及び4における空欄は未測定であることを意味する。
【0111】
[破砕数]
対面角の圧子角度90度を有するダイヤモンド圧子を用いて、3~10kgfの荷重を15秒間保持する圧子圧入試験により、20mm角の化学強化ガラス板を破壊させて、破壊後の化学強化ガラスの破片の数(破砕数)を計測した。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
好ましい応力プロファイルを有する例1は、アスファルト落下耐性に優れ、しかも破砕数が少なかった。m/mが大きい例4、例5は、CSやCSが大きくてもアスファルト落下強度が劣った。mとmが小さい例6は、CTが大きいので激しく破砕した。DOLが小さい例7はアスファルト落下強度が低かった。
また、例2、3及び8~12は、例1に対して、強化条件やガラス組成を変えた実施例であるが、例1と同様、好ましい応力プロファイルを有しており、高いアスファルト落下強度を期待することができる。
【0115】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年6月28日出願の日本特許出願(特願2017-126357)、2017年10月26日出願の日本特許出願(特願2017-207310)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5