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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20220906BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20220906BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G03G9/097 351
G03G9/097 365
G03G9/08 384
G03G9/097 375
G03G9/087 325
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019534439
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2018027970
(87)【国際公開番号】W WO2019026736
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2017147786
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】平田 剛
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-068013(JP,A)
【文献】特開2011-123298(JP,A)
【文献】特開2006-064960(JP,A)
【文献】特開2006-243107(JP,A)
【文献】特開平08-227174(JP,A)
【文献】特開2015-172744(JP,A)
【文献】特開平05-265254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも重合性単量体、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させることにより、重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を得る懸濁工程、並びに、当該懸濁液を用いて重合開始剤の存在下で懸濁重合を行うことにより着色樹脂粒子を得る工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、
前記懸濁工程における前記帯電制御樹脂の添加量が、前記重合性単量体100質量部に対して0.2~4質量部であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、及びプリンター等の、電子写真法を利用した画像形成装置の現像に用いることができる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いたレーザープリンターや複写機においては、高速化、高寿命化が要求されており、高い帯電安定性、耐久性を兼ね備えるトナーが求められている。
【0003】
電子写真や静電印刷などによる画像形成方法においては、帯電したトナー粒子が、感光体ドラム上の電位差に応じた静電気力によってドラム上の静電潜像を現像するように構成されている。この際、トナーの帯電は、具体的には、トナーとトナーの間、又はトナーとキャリアとの間、さらにはトナーと規制ブレードなどとの摩擦によって生じる。
一般的に摩擦によりトナー粒子が機械的、熱的なストレスを受けると、外添剤の埋没や遊離が起こり、初期の帯電量を維持できず、カブリが発生しやすくなる。特に規制ブレードとの摩擦によりトナーを帯電させる非磁性一成分現像装置に用いる場合は、これらの問題が大きな課題となっている。
以上のような背景から、帯電安定性に優れ、耐久性を有するトナーが求められており、トナーに用いる樹脂成分、帯電制御剤、外添剤などの改良が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、定着助剤としてアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうち少なくともいずれか一方とアクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくともいずれか一方との共重合体を含有する着色樹脂粒子を有するトナーが開示されている。当該トナーは、幅広い温度及び湿度環境下においても印字耐久性に優れる旨記載されている。
特許文献2には、アルキルエーテルを介して、芳香環とサリチル酸構造とが結合する構造を有する帯電制御樹脂を含有するトナーが開示されている。当該トナーでは、プリントアウトを多数枚実施した場合の凝集性の上昇が抑制され、耐久性に優れる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5598640号公報
【文献】特開2017-032682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されたトナーは、定着助剤又は帯電制御樹脂として極性の高い官能基を有する樹脂を含有しているため、高湿環境下において耐久性が低下し易く、現像ローラ上の搬送量が上昇するという問題を有する。
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、高温高湿環境下において印字耐久性に優れ、現像ローラ上の搬送量安定性にも優れる静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、静電荷像現像用トナーを構成する着色樹脂粒子に、特定の組成を有する帯電制御剤を、特定量含有させることにより、上述の問題を解決できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、前記結着樹脂100質量部に対して、前記帯電制御樹脂を0.2~4.0質量部含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが提供される。
【0009】
本発明においては、前記帯電制御樹脂のガラス転移温度が50~85℃であり、前記結着樹脂が、スチレン単量体単位の含有割合が55~75質量%、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が25~45質量%の範囲である組成を有し、且つ、ガラス転移温度が30~55℃である共重合体であることが好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナーは、前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が40~250ppmの範囲であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、少なくとも重合性単量体、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させることにより、重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を得る懸濁工程、並びに、当該懸濁液を用いて重合開始剤の存在下で懸濁重合を行うことにより着色樹脂粒子を得る工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、前記懸濁工程における前記帯電制御樹脂の添加量が、前記重合性単量体100質量部に対して0.2~4質量部であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体である帯電制御樹脂を、結着樹脂100質量部に対して、0.2~4.0質量部含有させることにより、高温高湿環境下において印字耐久性に優れ、現像ローラ上の搬送量安定性にも優れるトナーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、前記結着樹脂100質量部に対して、前記帯電制御樹脂を0.2~4.0質量部含有することを特徴とする。
【0013】
以下、本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)について説明する。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸を示す用語であり、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートを示す用語である。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、特定の帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を有する。
上述のように、近年の高性能な電子写真方式を用いたレーザープリンターや複写機においては、現像ローラ上へのトナーの搬送量安定性、印字耐久性を高いレベルで兼ね備えたトナーが求められている。
少量でトナーに大きな帯電量を付与することが可能なことから、搬送量を安定させる手段として、特許文献2に記載されているような極性が高い官能基を有する帯電制御樹脂が用いられてきた。
また、トナーの印字耐久性を向上させる手段としては、一般的に、着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂を増加させる手段が用いられてきた。着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂を増やすと着色樹脂粒子表面に偏在する帯電制御樹脂の層が厚くなることから、印字の際に受ける機械的ストレスによる表面状態の変化が抑制されて帯電量の変化が起こり難くなり、結果として、トナーの印字耐久性が向上すると推測される。
しかしながら、従来用いられてきた極性が高い官能基を有する帯電制御樹脂を用いた場合には、印字耐久性の向上を目的として着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂量を増やすと、トナーの極性が高くなりすぎるため高温高湿環境下での印字耐久性が悪化するという問題が生じる。また、トナーの帯電量が大きくなりすぎることから、現像ローラ上へのトナーの搬送量も安定しなくなるため、印字耐久性を向上させる目的で、着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂を増加させるには限界があった。
本発明では、極性が高い官能基を有する帯電制御樹脂の構成単量体単位の組成を検討し、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成にすることにより帯電制御樹脂の極性と着色樹脂粒子に付与する帯電量を最適化することで、近年のトナーに求められる高温高湿環境下での印字耐久性と現像ローラ上へのトナーの搬送量の安定性の要求レベルを兼ね備えたトナーを提供することが可能となった。
【0014】
以下、本発明のトナーに使用される着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本発明のトナーの製造方法及び本発明のトナーについて、順に説明する。
【0015】
1.着色樹脂粒子の製造方法
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに、乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
【0016】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子エマルションを得て、着色剤分散液等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解又は分散した溶液を水系媒体中で液滴形成し、当該有機溶媒を除去して着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0017】
本発明のトナーに使用される着色樹脂粒子は、湿式法、または乾式法を採用して製造することが出来る。湿式法の中でも好ましい懸濁重合法を採用し、以下のようなプロセスにより行われる。
【0018】
(A)懸濁重合法
(A-1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤、さらに必要に応じて添加される定着助剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行う。
【0019】
本発明で重合性単量体は、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいい、重合性単量体が重合して結着樹脂となる。重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びジメチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステル(アクリレート);メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル(メタクリレート);アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルが、好適に用いられる。
【0020】
低温定着性を向上させる観点から、上記重合性単量体が、スチレンを55~75質量%、アルキル(メタ)アクリレートを25~45質量%含む組成であることが好ましい。このような組成の重合性単量体を用いることにより、重合して得られる共重合体、即ち、結着樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と称することがある。)を30~55℃の範囲にすることができるためである。
【0021】
ホットオフセット改善及び保存性改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素-炭素二重結合を有するカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N-ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1~5質量部、好ましくは0.3~2質量部の割合で用いることが望ましい。
【0022】
また、さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いることができる。マクロモノマーを用いると、得られるトナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素-炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000~30,000の反応性の、オリゴマー又はポリマーである。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。
マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03~5質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部用いる。
【0023】
本発明では、着色剤を用いるが、カラートナーを作製する場合、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの着色剤を用いることができる。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
【0024】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、及び60等が挙げられる。
【0025】
イエロー着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、186、及び213等が挙げられる。
【0026】
マゼンタ着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントレッド31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、237、238、251、254、255、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0027】
本発明では、各着色剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。着色剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは1~10質量部である。
【0028】
本発明においては、上述の本発明の効果を得るために、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体である帯電制御樹脂を使用する。
【0029】
帯電制御樹脂の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2~4.0質量部、好ましくは0.5~3.5質量部、更に好ましくは1.0~3.0質量部である。帯電制御樹脂の使用量が上記範囲外では、本発明の効果を得ることが難しくなる。
【0030】
本発明で使用する帯電制御樹脂を構成するビニル単量体単位は、ビニル系単量体が重合反応することにより得られる繰り返し単位である。
本発明で使用する帯電制御樹脂では、前記ビニル系単量体単位として、メチルメタクリレート単量体単位、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を含有し、さらに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位を含有していてもよい。
【0031】
本発明で使用する帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%である組成を有する。本発明では、帯電制御樹脂として、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位と組み合わせて、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%である組成を有する共重合体を使用することで、高温高湿環境下において印字耐久性に優れ、現像ローラ上の搬送量安定性にも優れるトナーを得ることが可能となる。
本発明で使用する帯電制御樹脂が、メチルメタクリレート単量体単位を特定割合で含有することにより、本発明の効果を得られる理由は定かではないが、以下のように推測している。
メチルメタクリレート単量体はスチレンやn-ブチルアクリレートなどのビニル系単量体よりも極性が高いため、メチルメタクリレート単量体を上記の割合で含有する帯電制御樹脂は着色樹脂粒子表面に偏在し易くなる。また、メチルメタクリレート単量体は酸性または塩基性を示す官能基を有する単量体よりも水への親和性が高くないため、メチルメタクリレート単量体を上記の割合で含有する帯電制御樹脂を使用すると、着色樹脂粒子表面への水分の吸着が起こり難く、液架橋力によるトナー間の付着力が高くなり難い。
このような理由から、トナーの印字耐久性、特に、高温高湿環境下における印字耐久性を高くすることができるのではないかと推測している。
メチルメタクリレート単量体単位の含有割合は85.0~99.7質量%であることが好ましく、95.0~99.6質量%であることがより好ましい。
メチルメタクリレート単量体単位の含有割合上記範囲を超える場合、十分な帯電量が得られない場合がある。メチルメタクリレート単量体単位が上記範囲未満の場合、搬送量安定性が低下してしまう場合がある。
【0032】
本発明で使用する帯電制御樹脂は、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%である組成を有する。4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合は0.3~10.0質量%であることが好ましく、0.35~8.0質量%であることがより好ましく、0.4~5.0質量%であることがさらに好ましい。
4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が上記範囲外である場合、帯電制御樹脂の帯電量を適正な範囲内への調整が困難となる。
【0033】
本発明で使用する帯電制御樹脂を構成する4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位は、例えば、式(A)で表される繰り返し単位である。
【0034】
【化1】
[式中、Rは、水素原子もしくはメチル基であり、Rは、炭素原子数1~3個のアルキレン基、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基若しくは炭素数1~12のアラルキルであり、Xは、ハロゲン基、炭素数1~6のアルキルスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、パラトルエンスルホン酸基である。]
【0035】
本発明で使用する帯電制御樹脂は、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する。
上述した含有割合で前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を有する帯電制御樹脂であれば、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲であれば、本発明の効果を得ることができる。
前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合は0.1~10.0質量%であることが好ましく、0.5~8.0質量%であることがより好ましい。
前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が上記範囲を超える場合、印字耐久性が低下する。
【0036】
メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の代表的なものとしては、ビニル芳香族炭化水素単量体および(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。
ビニル芳香族炭化水素単量体の具体例としては、スチレン、ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;などが挙げられる。
(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、などのアクリル酸エステル(アクリレート)類;エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、などのメタクリル酸エステル(メタクリレート)類、エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素-炭素二重結合を有するカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物、などが挙げられる。
【0037】
本発明において、帯電制御樹脂中のメチルメタクリレート単量体単位、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有率は、重合反応の各単量体の仕込み比基準で算出することができる。また、重合時の条件が不明な場合は、H-NMRスペクトルやIRスペクトルなどの機器分析により測定することができる。
【0038】
帯電制御樹脂のTgは、低温定着性の点から、50~85℃であることが好ましく、55~80℃であることがより好ましく、60~75℃であることがより好ましい。
また、結着樹脂成分のTgと帯電制御樹脂のTgとの差が、0~55℃、好ましくは0~15℃であるものは、低温定着性と、保存性および流動性とのバランスが優れ、安定した印字品質を与えるので好ましい。
尚、本発明において、帯電制御樹脂のTgは示差熱計(DSC)によって測定される値とすることができる。また、後述する重合体のガラス転移温度の加成性を利用して得られる値としてもよい。
【0039】
帯電制御樹脂の、テトラヒドロフランを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定される単分散ポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwということがある)は、その下限が、通常2,000以上、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは17,000以上、特に好ましくは20,000であり、その上限が通常40,000以下、好ましくは35,000以下、さらに好ましくは30,000以下、特に好ましくは28,000である。重量平均分子量が大きすぎると、トナー粒子製造時のハンドリングが悪く、液滴の大きさがバラバラになるため均一なトナー粒子が得られない。逆に重量平均分子量が小さすぎると顔料の分散性と帯電性が不十分であり、印字サンプルがかぶるという問題がある。
【0040】
本発明で使用する帯電制御樹脂の製造は、以下の方法による。
(1)メチルメタクリレートと、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体と、メチルメタクリレート単量体と4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体以外のビニル系単量体とを共重合することによって得る方法。
(2)(1)で得られた共重合体をパラトルエンスルホン酸やメタンスルホン酸等と反応させることによって得る方法。
(3)メチルメタクリレートと、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体と、メチルメタクリレート単量体と4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体以外のビニル系単量体とを共重合して得られた共重合体におけるジアルキルアミノアルキル基の窒素原子を4級化剤で4級化することによって得る方法。
【0041】
(1)または(2)の方法で用いる4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、N,N,N-トリメチル-N-(2-メタクリルオキシエチル)アンモニウムクロライド(DMC:メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド)、N-ベンジル-N,N-ジメチル-N-(2-メタクリルオキシエチル)アンモニウムクロライド(DML:メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド)等が挙げられる。4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレートは、アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体を、ハロゲン化有機化合物や酸エステル化剤などの4級化剤により、4級アンモニウム化することにより得ることもできる。
【0042】
(3)の方法で用いるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
4級化剤としては、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等のハロゲン化有機化合物;メチルスルホン酸アルキルエステル、エチルスルホン酸アルキルエステル、プロピルスルホン酸アルキルエステル、ベンゼンスルホン酸アルキルエステル、パラトルエンスルホン酸アルキルエステル等のスルホン酸アルキルエステル;が挙げられる。
本発明で使用する帯電制御樹脂を得るための重合法としては、乳化重合、分散重合、懸濁重合、溶液重合など、いずれの方法であってもよいが、目的とする重量平均分子量を得られることから溶液重合が特に好ましい。
【0044】
溶液重合により重合する場合、有機溶剤を必要とする。有機溶剤としては、例えば炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、塩化炭素系溶剤など、一般的な溶剤を用いることができる。これらの中から1種または2種以上を併用して使用することができる。
重合温度および重合時間は、重合法や使用する重合開始剤の種類などにより任意に選択できるが、通常約50~200℃であり、重合時間は0.5~20時間程度である。更に、重合に際しては通常知られている添加剤、例えばアミンなどの重合助剤を併用することもできる。溶液重合後は、そのままトナー粒子を得るために使用してもよいし、重合溶液を貧溶剤に添加する、スチームで溶剤を除去する、減圧で溶剤を除去する等の操作を行って、共重合体を分離してから用いてもよい。
【0045】
本発明に使用する着色樹脂粒子の製造では、重合性単量体に軟化剤を添加する。軟化剤として、下記式(1)の構造を有し、且つ融点が60~75℃のモノエステル化合物を含有することが好ましい。
-COO-R 式(1)
上記式(1)中、Rは炭素数15~21の直鎖アルキル基を示し、Rは炭素数16~22の直鎖アルキル基を示す。R及びRは同じ基であってもよいし、互いに異なる基であってもよい。式(1)に示すモノエステル化合物において、原料脂肪酸における炭素数(すなわちRの炭素数に1を加えた炭素数)と、原料アルコールにおける炭素数(すなわちRの炭素数)との差は、0~6であることが好ましく、4~6であることがより好ましい。
【0046】
モノエステル化合物の融点が60℃未満である場合には、トナーが耐熱保存性に劣るおそれがある。また、モノエステル化合物の融点が75℃を超える場合には、低温定着性が低下する場合がある。
モノエステル化合物の融点は、63~72℃であることがより好ましく、65~70℃であることがさらに好ましい。
【0047】
上記式(1)で示されるモノエステル化合物として、具体的には、パルミチン酸ベヘニル(C1531-COO-C2245)、ステアリン酸ベヘニル(C1735-COO-C2245)、エイコサン酸ベヘニル(C1939-COO-C2245)、ベヘン酸ベヘニル(C2143-COO-C2245)、パルミチン酸エイコシル(C1531-COO-C2041)、ステアリン酸エイコシル(C1735-COO-C2041)、エイコサン酸エイコシル(C1939-COO-C2041)、ベヘン酸エイコシル(C2143-COO-C2041)、ステアリン酸ステアリル(C1735-COO-C1837)、エイコサン酸ステアリル(C1939-COO-C1837)、ベヘン酸ステアリル(C2143-COO-C1837)、エイコサン酸ヘキサデシル(C1939-COO-C1633)、ベヘン酸ヘキサデシル(C2143-COO-C1633)等が挙げられる。これらのモノエステル化合物の中でも、ステアリン酸ベヘニル、パルミチン酸ベヘニル、及びベヘン酸ステアリルがより好ましい。
【0048】
軟化剤の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して10~25質量部であることが好ましい。2種類以上の軟化剤を用いる場合には、着色樹脂粒子100質量部に対して、全ての軟化剤の総含有量が10~25質量部である。当該含有量が10質量部未満である場合には、軟化剤が少なすぎる結果、低温定着性が悪くなるおそれがある。一方、当該含有量が25質量部を超える場合には、軟化剤が多すぎる結果、耐熱保存性と耐久性が悪くなるおそれがある。
軟化剤の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、より好ましくは12~22質量部であり、さらに好ましくは15~20質量部である。
【0049】
軟化剤としては、他のエステル化合物を含んでいてもよい。他のエステル化合物としては、具体的には、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラパルミネート、ペンタエリストールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物等が挙げられる。
【0050】
上記モノエステル化合物の酸価は、1.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.6mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.3mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価が1.0mgKOH/gより大きいと、保存性が悪化する場合がある。なお、モノエステル化合物の酸価は、日本工業標準調査会(JICS)制定の規準油脂分析手法である、JIS K 0070に準拠して測定される値である。
【0051】
上記モノエステル化合物の水酸基価は、10mgKOH/g以下であることが好ましく、6mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。水酸基価が10mgKOH/gより大きいと、保存性が悪化する場合がある。なお、モノエステル化合物の水酸基価は、日本工業標準調査会(JICS)制定の規準油脂分析手法である、JIS K 0070に準拠して測定される値である。
上記モノエステル化合物は、上述した酸価及び水酸基価の条件をいずれも満たすことがより好ましい。
【0052】
上記軟化剤の製造方法としては、酸化反応による合成法、カルボン酸及びその誘導体からの合成、マイケル付加反応に代表されるエステル基導入反応、カルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応を利用する方法、酸ハロゲン化物とアルコール化合物からの反応、エステル交換反応等が挙げられる。軟化剤の製造には適宜触媒を用いることもできる。触媒としては、エステル化反応に用いる一般の酸性又はアルカリ性触媒、例えば酢酸亜鉛、チタン化合物等が好ましい。エステル化反応後、再結晶、蒸留等により目的生成物を精製してもよい。
【0053】
本発明においては、その他の添加物として、重合して結着樹脂となる重合性単量体を重合する際に、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’-ジオクタデシル-N,N’-ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部の割合で用いることが望ましい。
【0054】
(A-2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
本発明では、少なくとも重合性単量体、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(商品名:マイルダー、大平洋機工社製)、高速乳化分散機(商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型、プライミクス株式会社製)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
【0055】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩:4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドリキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ-t-ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、及びt-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0056】
有機過酸化物の中でも、開始剤効率がよく、残留する重合性単量体も少なくすることができることから、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステルすなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
【0057】
重合開始剤は、前記のように、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加されても良いが、水系媒体中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加されても良い。
【0058】
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、さらに好ましくは0.3~15質量部であり、特に好ましくは1~10質量部である。
【0059】
本発明において、水系媒体は、水を主成分とする媒体のことを言う。
【0060】
本発明において、水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、得られるトナーが画像を鮮明に再現することができ、且つ環境安定性に優れたものとなる。
【0062】
(A-3)重合工程
上記(A-2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60~95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1~20時間であり、更に好ましくは2~15時間である。
【0063】
着色樹脂粒子は、そのまま外添剤を添加して重合トナーとして用いてもよいが、この着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(又は、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点を有する物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
【0064】
上述した、上記着色樹脂粒子を用いて、コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0065】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0066】
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレート等の、Tgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0067】
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の、過硫酸金属塩;2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’-アゾビス-(2-メチル-N-(1,1-ビス(ヒドロキシメチル)2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の、アゾ系開始剤;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは、0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0068】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60~95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1~20時間であり、更に好ましくは2~15時間である。
【0069】
(A-4)洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥工程
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
【0070】
上記の洗浄の方法としては、分散安定化剤として無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液への酸、又はアルカリの添加により、分散安定化剤を水に溶解し除去することが好ましい。分散安定化剤として、難水溶性の無機水酸化物のコロイドを使用した場合、酸を添加して、着色樹脂粒子水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0071】
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。例えば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
【0072】
(B)粉砕法
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び軟化剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、FMミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。
得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
【0073】
なお、粉砕法で用いる結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び軟化剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物は、前述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、前述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0074】
結着樹脂としては、他にも、従来からトナーに広く用いられている樹脂を使用することができる。粉砕法で用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂等を例示することができる。
上述のように、ガラス転移温度を33~55℃とするために、スチレンの含有割合が55から75質量%、アルキル(メタ)アクリレートの含有割合が25~45質量%の範囲である共重合体であることが好ましい。
【0075】
2.着色樹脂粒子
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
【0076】
着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、好ましくは4~12μmであり、更に好ましくは5~10μmである。Dvが4μm未満である場合には、トナーの流動性が低下し、転写性が悪化したり、画像濃度が低下したりする場合がある。Dvが12μmを超える場合には、画像の解像度が低下する場合がある。
【0077】
また、着色樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比(Dv/Dp)が、好ましくは1.0~1.3であり、更に好ましくは1.0~1.2である。Dv/Dpが1.3を超える場合には、転写性、画像濃度及び解像度の低下が起こる場合がある。着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、粒度分析計(商品名:マルチサイザー、ベックマン・コールター製)等を用いて測定することができる。
【0078】
本発明の着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96~1.00であることが好ましく、0.97~1.00であることがより好ましく、0.98~1.00であることがさらに好ましい。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
【0079】
本発明において、円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0080】
3.トナーの製造方法
本発明においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
【0081】
外添処理を行う攪拌機は、着色樹脂粒子の表面に外添剤を付着させることができる攪拌装置であれば特に限定されず、例えば、FMミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、スーパーミキサー(:商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、メカノフュージョンシステム(:商品名、ホソカワミクロン社製)、及びメカノミル(:商品名、岡田精工社製)等の混合攪拌が可能な攪拌機を用いて外添処理を行うことができる。
【0082】
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、及び/又は酸化セリウム等からなる無機微粒子;ポリメタクリル酸メチル樹脂、シリコーン樹脂、及び/又はメラミン樹脂等からなる有機微粒子;等が挙げられる。これらの中でも、無機微粒子が好ましく、無機微粒子の中でも、シリカ、及び/又は酸化チタンが好ましく、特にシリカからなる微粒子が好適である。
なお、これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることができる。中でも粒径の異なる2種以上のシリカを併用することが好ましい。
【0083】
本発明では、外添剤を、着色樹脂粒子100質量部に対して、通常、0.05~6質量部、好ましくは0.2~5質量部の割合で用いることが望ましい。外添剤の添加量が0.05質量部未満の場合には転写残が発生することがある。外添剤の添加量が6質量部を超える場合にはカブリが発生することがある。
【0084】
4.本発明のトナー
上記工程を経て得られる本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、前記結着樹脂100質量部に対して、前記帯電制御樹脂を0.2~4.0質量部含有するという特徴を有する。
【0085】
上述のように、本発明のトナーでは、印字耐久性の向上を目的として着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂の含有割合を高くしても、トナーの帯電量や極性が高くなりすぎないような構成単量体単位組成を有する共重合体を帯電制御樹脂として使用することで、近年のトナーに求められる高温高湿下での印字耐久性と現像ローラ上の搬送量安定性の要求水準を満たすことを可能とした。
本発明のトナーが有する結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤に関しては、1.着色樹脂粒子の製造方法で詳細に説明したためここでは、記載を省略する。
【0086】
また、本発明においては、前記帯電制御樹脂のガラス転移温度を50~85℃とし、結着樹脂を、スチレン単量体単位を55~75質量%、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位を25~45質量%含み、且つ、ガラス転移温度が30~55℃である共重合体とすることにより、印字耐久性、搬送量安定性に加え、低温定着性を向上することが可能となるため好ましい。
結着樹脂のガラス転移温度の特定方法に特に制限はないが、例えば、重合体のガラス転移温度の加成性を利用することにより算出できる。
重合体のガラス転移温度は、絶対温度での加成性が成り立つことが知られている。
したがって、重合性単量体として、2種類以上のモノマーを用いた場合には、以下の計算式1及び計算式2により計算Tgを算出することができる。
計算式1:計算Tg(K)=(M+M+M+・・・)/[(M/Tg)+(M/Tg)+(M/Tg)+・・・]
計算式2:計算Tg(℃)=計算Tg(K)-273
(なお、上記式(I)中、M、M、M、・・・は、各モノマーの添加量(質量部)を、Tg、Tg、Tg、・・・は、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を、それぞれ示す。)
【0087】
また、本発明においては、静電荷像現像用トナー中の前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が40~250ppmの範囲であることが好ましい。
静電荷像現像用トナーに含まれる、前記帯電制御樹脂の成分である前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有量は、40~250ppmであることが好ましく、50~230ppmであることがより好ましく、60~200ppmであることが更に好ましい。
静電荷像現像用トナーに含まれる4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が上記範囲を超える場合、印字濃度及び搬送量安定性が低下しやすくなる。4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が上記範囲未満の場合、かぶりが生じやすくなり、また、高温高湿下における印字耐久性が低下しやすくなる。
また、前記帯電制御樹脂が正帯電性の官能基である第4級アンモニウム塩基を含有するため、本発明の静電荷像現像用トナーは、正帯電性であることが好ましい。
【0088】
高温高湿(H/H)環境下での印字耐久性の指標としては、例えば、以下の方法により決定した印字耐久性が挙げられる。
所定のプリンターに印字用紙をセットし、当該プリンターにトナーを入れる。高温高湿(H/H)環境下で24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で所定枚数まで連続印字を行う。500枚毎にベタ印字(印字濃度100%)をして反射式画像濃度計でそのベタ印字部の印字濃度を測定する。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープに付着させ、それを印字用紙に貼り付ける。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をカブリ値とする。
このように得られた、印字濃度が所定の閾値以上で、且つカブリ値が所定の閾値以下の画質を維持できる連続印字枚数を印字耐久性の指標とすることができる。
【0089】
現像ローラ上へのトナーの搬送量が安定性の指標としては、例えば、以下の方法により決定した搬送量安定性が挙げられる。
搬送量安定性
(i)初期搬送量測定
上記印字耐久性試験中、500枚の試験が終了した後、特定の環境下にてプリンターを用いて、白ベタ印字を行い、次いで、2枚目の白ベタ印字を途中で停止させた後、現像ロール上に付着したトナーについて、吸引式帯電量測定装置を用いて吸引されたトナー質量、及び吸引面積を測定する。
吸引されたトナー質量、及び吸引面積に基づき、下記計算式3及び4から現像ロール上の初期搬送量(mg/cm)を算出する。
計算式3:吸引面積(cm)=(吸引痕の半径(cm))×π×吸引痕の数
計算式4:現像ロール上のトナー搬送量(mg/cm)=吸引されたトナー質量(mg)/吸引面積(cm
【0090】
(ii)末期搬送量測定
(i)と同様にして、印字耐久性試験の所定枚数での現像ロール上のトナー搬送量を算出し、これを末期搬送量(mg/cm)とする。
(iii)搬送量安定性の算出
(i)及び(ii)の測定結果から、下記計算式5により、搬送量安定性を算出する。
計算式5:搬送量安定性=末期搬送量/初期搬送量
【0091】
低温定着性の指標としては、例えば、以下の方法により決定した最低定着温度が挙げられる。
所定のプリンターを用いて、所定の温度におけるトナーの定着率を測定する。定着率は、当該プリンターにより試験用紙に印刷した黒ベタ領域の、所定のテープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算する。即ち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、下記計算式6から算出することができる。なお、画像濃度は、分光光度計(X-Rite社製、商品名:スペクトロアイ)等を用いて測定する。
計算式6:定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
この定着試験において、定着率が所定の閾値以上となる定着温度を、そのトナーの最低定着温度に決定する。
【実施例
【0092】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0093】
1.トナーの製造
[実施例1]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート99.5部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド0.5部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=83℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂1を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
モノビニル単量体としてスチレン70部及びn-ブチルアクリレート30部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(商品名:#25B、三菱化学社製)7部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.7部、及び分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.0部、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行った後、帯電制御剤として(1)で得られた帯電制御樹脂1を1.5部、及び軟化剤としてステアリン酸ベヘニル(分子式:C1735-COO-C2245、融点:70℃、酸価:0.1mgKOH/g、水酸基価:0.3mgKOH/g)20部をさらに混合して、重合性単量体組成物を得た。
【0094】
他方、攪拌槽において、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム7.4部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム4.1部を溶解した水溶液を、攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド分散液(水酸化マグネシウム3.0部)を調製した。
【0095】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温下で、上記重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこに重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(商品名:パーブチルO、日油社製)5部を添加後、インライン型乳化分散機(商品名:マイルダー、大平洋機工社製)を用いて、15,000rpmの回転数で高剪断攪拌して重合性単量体組成物の液滴形成を行った。
【0096】
上記により得られた重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃に昇温し、重合反応を開始させた。重合転化率がほぼ100%に達したときに、反応器内にメチルメタクリレート(シェル用重合性単量体)1.5部、及びイオン交換水20部に溶解した2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(シェル用重合開始剤、商品名:VA-086、和光純薬社製、水溶性)0.10部を添加した。その後、更に3時間、90℃で維持して、重合を継続した後、水冷して反応を停止し、着色樹脂粒子の水分散液を得た。
【0097】
上記により得られた着色樹脂粒子の水分散液を、室温下で、攪拌しながら硫酸を滴下し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分にイオン交換水500部を加えて再スラリー化させて、水洗浄処理(洗浄、濾過、及び脱水)を数回繰り返し行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分を乾燥機の容器内に入れ、45℃で48時間乾燥を行い、乾燥した着色樹脂粒子を得た。
【0098】
上記着色樹脂粒子100部に、個数平均一次粒径10nmのシリカ微粒子Aを0.7部、及びアミノ変性シリコーンオイルで疎水化処理された個数平均一次粒径55nmのシリカ微粒子Bを1部添加し、高速攪拌機(商品名:FMミキサー、日本コークス工業社製)を用いて、混合し、外添処理を行い、実施例1の静電荷像現像用トナーを作製した。
【0099】
[実施例2]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート99.7部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド0.3部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=82℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂2を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂2を3.0部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例2の静電荷像現像用トナーを製造した。
【0100】
[実施例3]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート86.0部、n-ブチルアクリレート8.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド6.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=65℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂3を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂3を0.3部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例3の静電荷像現像用トナーを製造した。
【0101】
[実施例4]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート85.0部、スチレン13.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド2.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=84℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂4を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂4を0.6部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例4の静電荷像現像用トナーを製造した。
【0102】
[実施例5]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート88.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド12.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=81℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂5を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂5を0.12部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例5の静電荷像現像用トナーを製造した。
【0103】
[比較例1]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、スチレン90.0部、n-ブチルアクリレート8.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド2.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=82℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂6を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂6を1.6部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例1の静電荷像現像用トナーを製造した。
【0104】
[比較例2]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、スチレン95.0部、n-ブチルアクリレート4.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド1.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=68℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂7を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂7を3.0部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例2の静電荷像現像用トナーを製造した。
【0105】
[比較例3]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート79.8部、スチレン15.0部、n-ブチルアクリレート5.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド0.2部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=72℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂8を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂8を15.0部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例3の静電荷像現像用トナーを製造した。
【0106】
2.帯電制御樹脂の共重合体のガラス転移温度(Tg)
ASTM D3418-82に準拠して、帯電制御樹脂1~の最大吸熱ピークを示す温度(最大吸熱ピーク温度)を測定した。より具体的には、示差走査熱量計(商品名:SSC5200、セイコー電子工業社製)を用いて、共重合体試料を昇温速度10℃/分で昇温し、その過程で得られたDSC曲線の最大吸熱ピークを示す温度を測定し、当該温度をその共重合体のガラス転移温度(Tg)とした。
帯電制御樹脂1~のTg測定結果を、各帯電制御樹脂の組成と併せて表1にまとめた。なお、下記表1中、「MMA」とはメチルメタアクリレートの添加量を、「ST」とはスチレンの添加量を、「BA」とはn-ブチルアクリレートの添加量を、それぞれ意味する。また、「4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート」とはメタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライドの添加量を意味する。
【0107】
【表1】
【0108】
3.着色樹脂粒子及びトナーの特性評価
上記実施例1~、及び比較例1~3のトナーについて、特性を調べた。詳細は以下の通りである。
(1)トナー中の結着樹脂のガラス転移温度(Tg)
結着樹脂中の重合性単量体の構成から、加成性を利用する上記計算式1及び計算式2を用いて、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0109】
(2)トナーの耐熱保存性
トナー10gを100mLのポリエチレン製の容器に入れて密閉した後、55~60℃の1℃刻みに設定した恒温水槽の中に該容器を沈め、8時間経過した後に取り出した。取り出した容器からトナーを42メッシュの篩の上にできるだけ振動を与えないように移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT-R)にセットした。篩の振幅を1.0mmに設定して、30秒間、篩を振動させた後、篩上に残ったトナーの質量を測定し、これを凝集したトナーの質量とした。
この凝集したトナーの質量が0.5g以下になる最大の温度を、耐熱温度とした。
【0110】
(3)トナーの印字評価
(a)トナーの定着温度測定
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(解像度600dpi、印刷速度28枚/分)の定着ロールの温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。定着試験は、改造プリンターの定着ロールの温度を変化させ、それぞれの温度でのトナーの定着率を測定した。
定着率は、改造プリンターで試験用紙に印刷した黒ベタ領域の、テープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)として、定着率は、上記計算式から算出した。
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分(黒ベタ領域)に粘着テープ(商品名:スコッチメンディングテープ810-3-18、住友スリーエム社製)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、分光光度計(商品名:スペクトロアイ、X-Rite社製)を用いて測定した。この定着試験において、定着率が80%以上になる最低定着ロール温度をトナーの最低定着温度とした。
【0111】
)高温高湿環境下での印字耐久性試験
上記プリンターに印字用紙をセットし、当該プリンターにトナーを入れた。温度32.5℃、湿度80%RHの高温高湿(H/H)環境下で24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で15,000枚まで連続印字を行った。500枚毎にベタ印字(印字濃度100%)をして反射式画像濃度計(商品名:RD918、マクベス社製)でそのベタ印字部の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(製品名:スコッチメンディングテープ810-3-18、住友スリーエム社製)に付着させ、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をカブリ値とした。この値が小さい方が、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が5以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べた。
【0112】
)トナーの搬送量安定性評価
(i)初期搬送量測定
上記印字耐久性試験中、500枚の試験が終了した後、32.5℃、80%の環境下にてプリンター(印刷速度:40ppm)を用い、白ベタ印字を行い、次いで、2枚目の白ベタ印字を途中で停止させた後、現像ロール上に付着したトナーについて、吸引式帯電量測定装置(商品名:210HS-2A、トレックジャパン社製)を用いて、吸引されたトナー質量、及び吸引面積を測定した。
吸引されたトナー質量、及び吸引面積に基づき、上記計算式3及び4から現像ロール上の初期搬送量(mg/cm)を算出した。
【0113】
(ii)末期搬送量測定
(i)と同様にして、印字耐久性試験の15,000枚終了後、又はカブリが発生した枚数での現像ロール上のトナー搬送量を算出し、これを末期搬送量(mg/cm)とした。
(iii)搬送量安定性の算出
(i)及び(ii)の測定結果から、上記計算式5により、搬送量安定性を算出した。
尚、本試験において、末期の搬送量安定性が1.4以下であることが、トナーに求められる搬送量安定性である。
【0114】
実施例1~5、及び比較例1~3の静電荷像現像用トナーの測定及び評価結果を表2に示す。なお、下記表2中、「HH耐久性(枚)」とは、高温高湿(H/H)環境下での印字耐久性試験における連続印字枚数を意味する。
【0115】
【表2】
【0116】
5.トナー評価のまとめ
以下、表1及び表2を参照しながら、トナー評価について検討する。
まず、比較例1及び2のトナーについて検討する。表1より、比較例1及び2のトナーは、帯電制御樹脂として使用した樹脂6及び樹脂7が、メチルメタクリレート単量体単位を含有していない。
表2に示すとおり、このようにメチルメタクリレート単量体単位を含有していない帯電制御樹脂を含有する比較例1及び2のトナーでは、高温高湿環境下における印字耐久性評価枚数が8000枚以下と高温高湿環境下における印字耐久性が低かった。
また、搬送量安定性が1.66以上と高く、現像ローラ上の搬送量安定性が低かった。
次に、比較例3のトナーについて検討する。表1より、比較例3のトナーは、帯電制御樹脂として使用した樹脂8はメチルメタクリレート単量体単位の含有割合が79.8%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.2%である。
表2に示すとおり、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が79.8%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.2%である帯電制御樹脂8を含有する比較例3のトナーでは、高温高湿環境下における印字耐久性評価枚数が9000枚と高温高湿環境下における印字耐久性が低かった。
また、搬送量安定性が1.75と高く、現像ローラ上の搬送量安定性が低かった。
【0117】
続いて、実施例1~5のトナーについて検討する。表1より、実施例1~5のトナーにおいて、帯電制御樹脂として使用した樹脂1~樹脂5は、メチルメタクリレート単量体単位を85%以上99.7%以下の範囲で、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を0.3%以上12.0%以下の範囲で含有する。
このようにメチルメタクリレート単量体単位を85%以上99.5%以下の範囲で、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を0.3%以上12.0%以下の範囲で含有する樹脂1~樹脂5を用いた実施例1~5のトナーでは、表2に示すとおり、高温高湿環境下における印字耐久性評価枚数が12000枚以上と、比較例1~比較例3のトナーと比較して高かった。
また、搬送量安定性も1.29以下と低く、比較例1~比較例3のトナーと比較して搬送量が安定していた。
なお、表2に示すとおり、実施例3のトナーで使用した樹脂3はメチルメタクリレート単量体単位及び4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位であるn-ブチルアクリレート単量体単位を8.0%含有し、実施例4のトナーで使用した樹脂4はメチルメタクリレート単量体単位及び4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位であるスチレン単量体単位を13%含有するが、メチルメタクリレート単量体単位及び4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位を含有しない樹脂1、樹脂2又は樹脂5を使用した実施例1、実施例2及び実施例5のトナーと比較して、トナーの耐熱保存性や印字評価が悪化することは無かった。
【0118】
したがって、結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、前記結着樹脂100質量部に対して、前記帯電制御樹脂を0.2~4.0質量部含有することを特徴とする本発明の静電荷像現像用トナーは、高温高湿(H/H)環境下の印字耐久性と現像ローラ上の搬送量安定性とのバランスに優れていることが分かる。