(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】含フッ素共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/18 20060101AFI20220906BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20220906BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20220906BHJP
C08F 14/26 20060101ALI20220906BHJP
C09D 127/18 20060101ALI20220906BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220906BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K5/07
C08K5/10
C08F14/26
C09D127/18
C09D7/63
B05D7/24 302L
B05D7/24 302X
B05D7/24 302U
B05D7/24 302T
B05D7/24 302G
B05D7/24 303A
B05D7/24 302V
(21)【出願番号】P 2019535684
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2018029657
(87)【国際公開番号】W WO2019031521
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017154280
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018033410
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相田 茂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 香織
(72)【発明者】
【氏名】福永 晋太郎
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/129407(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/002041(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006644(WO,A1)
【文献】特開2016-069606(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082417(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/060606(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
C09D 127/18
C09D 7/63
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンに基づく単位、エチレンに基づく単位、
および酸無水物
基を0.4~1.0mol%有する含フッ素共重合体と、
1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族化合物と、
を含有することを特徴とする含フッ素共重合体組成物。
酸無水物基量の測定方法:前記含フッ素共重合体を厚さ200μmのフィルムに成形し、赤外分光器にて赤外吸収スペクトルを測定する。前記酸無水物基のカルボニル基に帰属される1870cm
-1
のピークの吸光度を測定し、当該ピークのモル吸光係数(237L/mol・cm)を用い、ランベルト・ベールの式より前記含フッ素共重合体の酸無水物基量を求める。
【請求項2】
前記含フッ素共重合体が、
酸無水物基を有する単量体を共重合させて得られる共重合体であるか、または
酸無水物基をもたらす連鎖移動剤若しくは重合開始剤を使用して得られる共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレンに基づく単位、エチレンに基づく単位および
酸無水物基を有する単量体に基づく単位を有し、前記
酸無水物基を有する単量体に基づく単位が含フッ素共重合体を構成する全単位の合計に対して0.4~1.0mol%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記含フッ素共重合体が、さらに、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する含フッ素単量体
(ただし、テトラフルオロエチレンを除く。)に基づく単位を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記含フッ素共重合体の融点が120~260℃である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪族化合物が、ケトン類、エステル類およびカーボネート類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中、前記含フッ素共重合体を0.05~30質量%含み、前記脂肪族化合物を70~99.95質量%含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
テトラフルオロエチレンに基づく単位、エチレンに基づく単位、
および酸無水物
基を0.4~1.0mol%有する含フッ素共重合体を、
前記含フッ素共重合体の融点より10℃以上低い温度かつ0℃以上の温度で、1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族化合物に混合する、含フッ素共重合体組成物の製造方法。
酸無水物基量の測定方法:前記含フッ素共重合体を厚さ200μmのフィルムに成形し、赤外分光器にて赤外吸収スペクトルを測定する。前記酸無水物基のカルボニル基に帰属される1870cm
-1
のピークの吸光度を測定し、当該ピークのモル吸光係数(237L/mol・cm)を用い、ランベルト・ベールの式より前記含フッ素共重合体の酸無水物基量を求める。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物をコーテイングして基材上に被膜を形成する、被膜付基材の製造方法。
【請求項10】
前記被膜の厚みが、0.05~500μmである、請求項
9に記載の被膜付基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種材料のコーティングに有用な含フッ素共重合体を含有する組成物、およびその製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、耐溶剤性、低誘電性、低表面エネルギー性、非粘着性、耐候性等に優れていることから、汎用のプラスチックスでは使用できない種々の用途に用いられている。中でもエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEともいう。)は、耐熱性、難燃性、耐薬品性、耐候性、低摩擦性、低誘電特性、透明性等に優れるフッ素樹脂であることから、耐熱電線用被覆材料、ケミカルプラント用耐食配管材料、農業用ビニルハウス用材料、金型用離型フィルム等の幅広い分野に用いられている。
【0003】
しかし、ポリフッ化ビニリデンがN-メチルピロリドン等に溶解するのとは異なり、ETFEは、一般に溶剤に不溶でコーティングによる薄膜形成等ができないため、その成形方法は、押出成形、射出成形、粉体塗装等の溶融成形に限られていた。
このように溶解性の低いETFEを溶液化する技術については、1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族炭化水素化合物を溶媒として、ETFEの融点以下の温度で溶液状態にする技術)が知られている(例えば特許文献1)。しかし、そのETFE溶液の塗工性は必ずしも十分ではなく、金属等にコーティングした場合、ETFE被膜が不均一になる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、各種材料のコーティングに有用であり、かつ塗工性に優れた含フッ素共重合体を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]テトラフルオロエチレンに基づく単位、エチレンに基づく単位、ならびにカルボニル基含有基、酸無水物基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を0.4~1.0mol%有する含フッ素共重合体と、
1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族化合物と、
を含有することを特徴とする含フッ素共重合体組成物。
[2]前記含フッ素共重合体が、官能基(I)を有する単量体を共重合させて得られる共重合体であるか、または官能基(I)をもたらす連鎖移動剤若しくは重合開始剤を使用して得られる共重合体である、[1]に記載の組成物。
[3]前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレンに基づく単位、エチレンに基づく単位および官能基を有する単量体に基づく単位を有し、前記官能基を有する単量体に基づく単位が含フッ素共重合体を構成する全単位の合計に対して0.4~1.0mol%である、[1]に記載の組成物。
[4]前記官能基が酸無水物基であり、下記の測定方法で求めた酸無水物基を有する単量体に基づく単位が、含フッ素共重合体を構成する全単位の合計に対して0.4~1.0mol%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
測定方法:含フッ素共重合体を厚さ200μmのプレスフィルムに成形し、赤外分光器にて赤外吸収スペクトルを測定し、1870cm-1のピークの吸光度を測定し、当該ピークのモル吸光係数(237L/mol・cm)を用いて、ランベルト・ベールの式より含フッ素共重合体の酸無水物基含有量を測定する。
[5]前記含フッ素共重合体が、さらに、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する含フッ素単量体に基づく単位を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]前記含フッ素共重合体の融点が120~260℃である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]前記脂肪族化合物が、ケトン類、エステル類およびカーボネート類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]前記組成物中、前記含フッ素共重合体を0.05~30質量%含み、前記脂肪族化合物を70~99.95質量%含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]テトラフルオロエチレンに基づく単位、エチレンに基づく単位、ならびにカルボニル基含有基、酸無水物基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を0.4~1.0mol%有する含フッ素共重合体を、
前記含フッ素共重合体の融点より10℃以上低い温度かつ0℃以上の温度で、1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族化合物に混合する、含フッ素共重合体含有組成物の製造方法。
[10][1]~[8]のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物をコーテイングして基材上に被膜を形成する、被膜付基材の製造方法。
[11]前記被膜の厚みが、0.05~500μmである、[10]に記載の被膜付基材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塗工性に優れた含フッ素共重合体を含む組成物が得られる。前記組成物を基材に塗布することで基材上に均一な塗膜を形成し、基材に耐薬品性、防錆性、撥水撥油性、防汚性、耐候性、等の各種効果を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、含フッ素共重合体における「単位」は、単量体が重合することによって形成された、該単量体1分子に由来する原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られた重合体を処理することによって該原子団の一部が別の構造に変換された原子団であってもよい。
【0009】
本発明の組成物中の含フッ素共重合体は、カルボニル基含有基、酸無水物基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基(以下、官能基(I)とも記す。)を含フッ素共重合体中に0.4~1.0mol%を有するとともに、テトラフルオロエチレンに基づく単位(以下、TFE単位とも記す。)とエチレンに基づく単位(以下、E単位とも記す。)を有する。
【0010】
含フッ素共重合体中の官能基(I)の割合は、含フッ素共重合体を厚さ200μmのプレスフィルムに成形し、赤外分光器(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にて赤外吸収スペクトルを測定し、官能基(I)のピークの吸光度を測定し、当該ピークのモル吸光係数を用いて、ランベルト・ベールの式より測定して得たものである。例えば官能基(I)が無水イタコン酸残基である場合、ピークはカルボニル基の1870cm-1であり、モル吸光係数は237L/mol・cmである。
【0011】
含フッ素共重合体の有するTFE単位/E単位のモル比は、70/30~30/70が好ましく、65/35~40/60がより好ましく、60/40~50/50が特に好ましい。
含フッ素共重合体の全単位の合計量に対する、TFE単位とE単位の合計の割合は、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上がさらに好ましく、90mol%以上が特に好ましい。
【0012】
含フッ素共重合体は、単量体の重合の際に、官能基(I)を有する単量体を共重合させる方法や、官能基(I)をもたらす連鎖移動剤や重合開始剤を使用して単量体を重合させる等の方法で製造できる。
官能基(I)を有する単量体としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基またはイソシアネート基を有する単量体が好ましい。カルボニル基含有基としては、酸無水物基およびカルボキシ基が好ましい。具体的には、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ウンデシレン酸等のカルボキシ基を有する単量体、無水イタコン酸(以下、IAHとも記す。)、無水シトラコン酸(以下、CAHとも記す。)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、NAHとも記す。)、無水マレイン酸等の酸無水物基を有する単量体、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、エポキシアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0013】
官能基(I)をもたらす連鎖移動剤としては、カルボキシ基、エステル結合、水酸基等を有する連鎖移動剤が好ましい。具体的には、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
官能基(I)をもたらす重合開始剤としては、ペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル等の過酸化物系重合開始剤が好ましい。具体的には、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0014】
含フッ素共重合体の製造方法としては、官能基(I)を有する単量体を共重合させることにより、官能基(I)を有する単量体に基づく単位(以下、I単位とも記す。)を有する共重合体を製造して、官能基(I)を有する含フッ素共重合体とすることが好ましい。
【0015】
含フッ素共重合体が有する官能基(I)の割合は0.4~1.0mol%であり、0.4~0.8mol%がより好ましい。特に、含フッ素共重合体を構成する全単位の合計に対してI単位の割合は0.4~1.0mol%が好ましく、0.4~0.8mol%がより好ましい。官能基(I)およびI単位が0.4mol%未満であると、含フッ素共重合体の溶媒に対する分散性が不十分となり、含フッ素共重合体を各種基材にコーティングした際、外観が不均一となり好ましくない。
【0016】
官能基(I)およびI単位が0.4mol%以上であると、1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族化合物に含フッ素共重合体が混合しやすく、本発明の組成物を基材に塗布したときに均一な塗膜を形成しやすくなる。また、0.45mol%以上であると本発明の組成物を長期間保存しても沈殿が生じにくいなど、組成物の安定性が向上する。
含フッ素共重合体の溶媒に対する官能基(I)およびI単位が前記上限以下であると、含フッ素共重合体の分子量を高くするとともに耐熱性の低下を防げることができるので好ましい。
【0017】
含フッ素共重合体は、TFE単位、E単位およびI単位以外の、他の単量体に基づく単位を有していてもよい。他の単量体としては、含フッ素単量体(テトラフルオロエチレンを除く)が好ましく挙げられる。
【0018】
上記含フッ素単量体としては、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する含フッ素化合物が好ましく、たとえば、フルオロオレフィン(フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン等)、CF2=CFORf1(ただし、Rf1は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基である。以下、PAVEとも記す。)、CF2=CFORf2SO2X1(ただし、Rf2は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基であり、X1はハロゲン原子または水酸基である。)、CF2=CFORf3CO2X2(ただし、Rf3は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基であり、X2は水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ただし、pは1または2である。)、CH2=CX3(CF2)qX4(ただし、X3は水素原子またはフッ素原子であり、qは2~10の整数であり、X4は水素原子またはフッ素原子である。以下、FAEとも記す。)、環構造を有する含フッ素単量体(ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)等)等が挙げられる。
【0019】
前記含フッ素単量体としては、成形性、重合体層の耐屈曲性等に優れる点から、HFP、PAVEおよびFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、FAEおよびHFPがより好ましい。
FAEとしては、CH2=CH(CF2)q1X4(ただし、q1は、2~6であり、2~4が好ましい。)が好ましく、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4Hがより好ましく、CH2=CH(CF2)4F(以下、PFBEとも記す。)およびCH2=CH(CF2)2F(以下、PFEEとも記す。)が特に好ましい。
【0020】
含フッ素共重合体を構成する全単位の合計に対する前記含フッ素単量体に基づく単位の割合は、0.1~49モル%が好ましく、0.5~29モル%がより好ましく、1~19モル%がさらに好ましく、1~9.5モル%が特に好ましい。前記範囲であると、耐クラック性が良好であるとともに含フッ素共重合体の融点が低下しすぎないため好ましい。
【0021】
本発明に用いる含フッ素共重合体の融点としては、120~260℃であることが好ましく、140~250℃であることがより好ましく、150~220℃であることがさらに好ましく、150~190℃であることが最も好ましい。
【0022】
本発明に用いる含フッ素共重合体の容量流速(以下、Q値という。)は、1~500mm3/秒が好ましく、10~400mm3/秒がより好ましく、20~360mm3/秒が最も好ましい。この範囲にあると、含フッ素共重合体は機械的強度、耐熱性に優れる。Q値は、含フッ素共重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。
本明細書におけるQ値とは、島津製作所社製フローテスタを用いて、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度である。測定温度は、含フッ素共重合体の融点が高い場合は297℃が好ましく、低い場合は220℃が好ましい。Q値が小さすぎると溶解性が悪くなり、大きすぎると含フッ素共重合体の機械的強度が低下するとともに、塗膜にした場合にひび割れ等が発生しやすくなる。
【0023】
含フッ素共重合体は、既知の方法により製造できる。単量体の重合によって含フッ素共重合体を製造する場合、重合方法としては、ラジカル重合開始剤を用いる重合方法が好ましい。
重合方法としては、塊状重合法、有機溶媒(フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等)を用いる溶液重合法、水性媒体と必要に応じて適当な有機溶媒とを用いる懸濁重合法、水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられ、溶液重合法が好ましい。
【0024】
本発明の組成物には、これら含フッ素共重合体の1種を単独で用いて、あるいは2種以上を併用することが可能である。
本発明の組成物中の含フッ素共重合体の含有量は、目的とする成形物の膜厚に応じて適宜変えることができる。成膜性の観点から、含フッ素共重合体の含有量は、組成物全量において0.05~30質量%がより好ましく、0.1~20質量%が最も好ましい。前記含有量がこの範囲にあると粘度、乾燥速度、膜の均一性等の取扱い性に優れる、均質な塗膜を形成できる。
【0025】
本発明の組成物は、前記含フッ素共重合体とともに1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族化合物を含有する。
1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族化合物の具体例としては、特許文献1の[0040]~[0044]に記載されたものが挙げられる。特に2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、3,3-ジメチル-2-ブタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソプロピルケトン、5-メチル-2-ヘキサノン、2-オクタノン、3-オクタノン、5-メチル-3-ヘプタノン、2-ノナノン、5-ノナノン、ジイソブチルケトン、2-デカノン、3-デカノン、シクロヘキサノン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、イソホロン、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸2-エチルヘキシル、1-メトキシ-2-アセトキシプロパン、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-エチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、4-tert-ブチルシクロヘキサノン、(-)-フェンコン、ギ酸イソペンチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸2,2,2-トリフルオロエチル、ペルフルオロへプタン酸エチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、1-エトキシ-2-アセトキシプロパン、酢酸3-メトキシブチル、ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)カーボネート、ベンゾニトリル等が好ましい。なかでも、ジイソプロピルケトンまたは酢酸ブチルが特に好ましい。
【0026】
本発明の組成物中の前記脂肪族化合物の含有量は、組成物全量中70~99.95質量%が好ましく、80~99.9質量%がより好ましい。前記含有量がこの範囲にあると、塗膜作製における塗布時の取扱い性等に優れ、かつ組成物から得られる被膜を均質かつ均一なものとすることができる。前記脂肪族化合物は2種以上用いても構わない。
【0027】
本発明の組成物は、前記含フッ素共重合体と前記脂肪族化合物を混合することで製造できる。組成物において、含フッ素共重合体が前記脂肪族化合物中に溶解していてもよく、分散していてもよい。混合は常温で行ってもよく加熱して行ってもよい。
本発明の組成物の製造方法としては、前記含フッ素共重合体を、その融点以下の温度で、前記脂肪族化合物に混合する工程を有する製造方法が好ましい。混合する温度は、用いる含フッ素共重合体の融点より10℃以上低い温度であることがより好ましい。
【0028】
本発明における含フッ素共重合体の融点は、最も高いもので概ね275℃であることから、前記混合する温度は、260℃以下がより好ましく、200℃以下が特に好ましく、一方、0℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。混合温度が0℃未満では、十分に安定した混合状態が得られない場合があり、260℃を超える温度では、実際作業を行う上で、容易に実行できないことがある。温度がこの範囲にあると、混合作業が容易にできる。
前記混合温度は、含フッ素共重合体の融点より30℃低い温度から10℃低い温度であるのが特に好ましい。この範囲であると、本発明の組成物の安定性がさらに向上し、長期間の保存でも沈殿が生じにくい。例えば、融点が175℃の含フッ素共重合体であれば、混合工程の温度が145~165℃であるのが特に好ましい。
【0029】
前記混合工程において通常は常圧の条件下に実施することが好ましい。使用する前記脂肪族化合物の沸点が混合工程の温度より低い場合等には、耐圧容器中で、少なくとも自然発生圧力以下、好ましくは3MPa以下、より好ましくは2MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下、最も好ましくは常圧以下で混合する方法が挙げられるが、通常、0.01~1MPa程度の条件下で混合を実施することができる。
なお、耐圧容器中の気相を使用する脂肪族化合物の燃焼範囲から外すために窒素等で希釈する場合は、耐圧容器中の圧力は前記脂肪族化合物の蒸気圧力以上の圧力で混合することが好ましい。
混合時間は、本発明の組成物における前記含フッ素共重合体の含有量や形状等に依存する。含フッ素共重合体の形状は、混合時間を短くする作業効率の点でいえば、粉末状が好ましいが、入手のし易さ等からペレット状、その他の形状のものを用いることも可能である。
【0030】
前記混合工程における混合の手段は既知の方法によればよい。例えば、組成物に配合する各成分の必要量を秤量し、用いる含フッ素共重合体の融点以下の温度、好ましくは、0~260℃の温度でこれら成分を均一に混合して前記含フッ素共重合体を前記脂肪族化合物に混合させればよい。具体的には、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、一軸または二軸押出機等の撹拌混合機を用いて実施することが好ましい。加圧下に混合する場合には、攪拌機付きオートクレーブ等を用い、攪拌翼の形状としては、マリンプロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼等が用いられる。
【0031】
本発明の組成物は、前記含フッ素共重合体と前記脂肪族化合物以外に必要に応じてその他の成分を含有することができる。前記その他の成分として、例えば、硬化剤、硬化促進剤、密着性改良剤、表面調整剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、架橋剤、滑剤、可塑剤、増粘剤、つや消し剤、分散安定剤、充填剤(フィラー)、強化剤、レベリング剤、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤、他の樹脂等の各種添加剤が挙げられる。また、これらのその他成分の含有量としては、被覆用の組成物の全量に対して30質量%以下の含有量を挙げることができる。
【0032】
前記その他の成分として、前記脂肪族化合物の他にも液状成分を含んでも構わない。本発明の組成物における前記脂肪族化合物を含む液状成分を液状媒体とも記す。本発明の組成物に含まれる液状媒体は、液状媒体の全量中、前記脂肪族化合物が80質量%以上含まれることが好ましく、90質量%以上含まれることがより好ましい。
【0033】
本発明の組成物には、防錆、着色、補強等を目的として、顔料成分が含有されていてもよい。顔料成分としては、防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選ばれる1種以上の顔料が好ましい。
防錆顔料は、金属板の腐食や変質を防止するための顔料である。環境への負荷が少ない無鉛防錆顔料が好ましい。
無鉛防錆顔料としては、シアナミド亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム等が挙げられる。
【0034】
着色顔料は、塗膜を着色するための顔料である。着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。また、複合酸化物系顔料も好ましく、市販品としては、複合酸化物系顔料「ダイピロキサイド」シリーズ(大日精化社製)が挙げられる。中でも、「ダイピロキサイド グリーン#9430」「ダイピロキサイド ブラック#9550」「ダイピロキサイドTM レッド#8270」が好ましい。
体質顔料は、塗膜の硬度を向上させ、かつ、塗膜の厚みを増すための顔料である。体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0035】
建物外装材用途で使用されるプレコート金属板は、紫外線の強い屋外で長期間使用されるため、金属板の紫外線による劣化の対策が必要である。本発明の組成物においても、紫外線吸収剤を添加することにより、金属板表面に形成される含フッ素共重合体を含有する樹脂層に紫外線吸収の機能を付与することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、有機系、無機系のいずれも用いることができる。有機系では、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などが挙げられ、無機系では酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどのフィラー型などが好ましい。
紫外線吸収剤として酸化チタンを用いる場合には、前記の複合粒子とした酸化チタンを用いることが好ましい。
【0036】
紫外線吸収剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤の量は、組成物中の含フッ素共重合体の質量に対して0.1~15質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の量が少なすぎる場合には、耐光性の改良効果が十分に得られず、また、多すぎても効果が飽和する。
【0037】
光安定剤としては、たとえばヒンダードアミン系などが挙げられ、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(以上、アデカアーガス化学社商品名)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社商品名)などが好ましい。
光安定剤は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよく、紫外線吸収剤と組み合わせて用いてもよい。
増粘剤としては、たとえばポリウレタン系会合性増粘剤などが挙げられる。
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等など常用の無機または有機のつや消し剤を用いることができる。
【0038】
本発明の組成物には、他の樹脂を配合することも可能である。他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート等の非フッ素系樹脂等が挙げられる。他の樹脂は、架橋性の官能基を有し、硬化剤によって架橋されて硬化する樹脂であってもよい。
本発明の組成物に他の樹脂を配合する場合、他の樹脂の含有量は、含フッ素共重合体の100質量部に対して1~200質量部が好ましい。
【0039】
本発明の組成物は、含フッ素共重合体の撥水性から、撥液添加剤として用いることができる。また、オイル潤滑剤や固体潤滑剤として用いることもできる。また、含フッ素共重合体の接着性から、接着剤として用いることもできる。接着剤は、金属と樹脂の接着層として、また、樹脂同士、特にフッ素樹脂同士の接着剤として用いることもできる。
【0040】
本発明の組成物を製膜化することでフィルムを得ることができる。製膜化方法は、担体表面上へ後述する各種塗布方法が好ましい。前記フィルムはガラス飛散防止フィルム、ゴム栓のラッピング等に用いることができる。また、極薄いキャストフィルムも得られる。また、ガス透過膜として用いることもできる。
【0041】
本発明の組成物は、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミックス、コンクリート、石材、紙、木材等の基材にコーティングすることにより、耐薬品性、防錆性、撥水撥油性、防汚性、潤滑性、電気絶縁性、耐候性、防錆性、硫化防止性などを付与することができる。さらに、含フッ素共重合体に架橋性を有する官能基を導入し、被膜として硬化樹脂層を形成すれば、架橋構造によって耐熱性や耐摩耗性等が向上する。
【0042】
前記金属としては、例えば、炭素鋼板、ステンレス鋼板、ガルバニウム鋼板、アルミニウム板、亜鉛板、ニッケル板、クロム板、錫板、銅板等の金属板が挙げられる。また、各種金属、硝子、セラミックス、プラスチックなどの表面を金属めっきした材料も、本発明における被覆の対象となる基材として挙げられる。前記金属めっきとしては、溶融法または電解法等により製造される亜鉛めっき、亜鉛-5%アルミニウム合金めっき、亜鉛-55%アルミニウム合金めっき、アルミニウムめっき、ニッケルめっき、クロムめっき、金めっき、銀めっき、銅めっき、錫めっき、ニッケル―クロムめっき、ニッケル―錫めっきが挙げられる。また、貴金属を基材とすることもできる。
【0043】
前記樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等。)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリスルホン、ポリフエニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリフェニレンエーテル、熱硬化性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂が好ましい。
【0044】
また、前記樹脂をマトリックスとしてカーボンブラック、各種のエラストマー成分、ガラス繊維、カーボン繊維等を含む材料を基材としてもよい。
基材はコロナ放電処理、プラズマ放電処理等の電気的表面処理、金属ナトリウム処理、機械的粗面化処理、エキシマレーザ処理等を施してもよい。
基材はSiO2膜やシランカップリング剤から形成される膜を有していてもよい。
【0045】
本発明の組成物の基材表面へのコーティング方法は、均一な被膜が得られる方法であれば特に限定されない。具体的なコーティング方法としては、スピンコーター塗布、バーコーター塗布、ロールコーター塗布、カーテンフロー塗布方法が好ましい方法として挙げられる。また、他にもウェットコーティング法としては、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、押出コート法、ロッドコート法、エアドクタコート法、キスコート法、ファウンテンコート法、スクリーン塗工法、スプレー塗工法等が挙げられる。
本発明の組成物は、含フッ素共重合体の分散性に優れるため、前記塗布方法で組成物を塗布した後、溶媒を乾燥させ、熱処理を行うことで、外観が均一な含フッ素共重合体被膜を形成することができる。
【0046】
組成物のコーティング後、必要に応じて乾燥や加熱を行い、基材上に被膜を形成してもよい。被膜の形成された基材を被膜付基材とも記す。加熱をする場合は、基材上に形成された塗膜を熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等の加熱手段により加熱することで、含フッ素共重合体を含む樹脂の焼き付けを行い、必要に応じて樹脂を架橋させて硬化樹脂層(被膜)を得る。加熱処理は、組成物が含有する含フッ素共重合体の融点以上、融点+150℃以下の範囲で行うことが好ましい。熱処理は、含フッ素共重合体の融点+100℃程度の温度で行うことがより好ましい。
【0047】
前記組成物のコーティングにより形成される含フッ素共重合体を含有する樹脂層からなる被膜の膜厚は、0.05~500μmが好ましく、0.5~100μmがより好ましく、1~20μmが最も好ましい。膜厚が0.05μm未満では、耐候性、耐薬品性、防錆性等の性能が十分に得られず、一方、膜厚が500μmを超えると被覆の各工程における作業性の低下や被膜の外観、被膜の硬度の低下を招くだけでなく、曲げ加工性や耐傷つき性等も劣り、また、コストも上昇するため好ましくない。
【0048】
本発明の組成物は、各種部材のコーティングにも使うことができる。例えば、水、温水、酸、アルカリ、有機溶剤、粉体などを取り扱う容器や配管、バルブ等にも用いることができる。具体的には、金属容器、ピット、バット、スプーン、スコップ、スパチュラ、管、ホース、チューブ、蛇腹状チューブ、フランジ、エルボー、T型継手、十字継手、ボールバルブ、ニードルバルブ、ベローズバルブ、グローブバルブ、バタフライバルブ、逆止弁、金属製フィルター等が挙げられる。
【0049】
また、本発明の組成物は各種物品の内面コーティング剤としても好適に用いることができる。物品としては、ガラスバイアル等ガラス容器、薬液シリンジ、点滴チューブ、化粧品容器、水筒、ケチャップ・マヨネーズ容器、リサイクル容器が挙げられる。
なお、金属部材の内面をコートする場合、金属部材が内部の流体から保護されるため錆等の問題が発生せず、また金属成分が流体に混入しないため好ましい。特に水質管理においてニッケルの溶出量は0.02mg/L以下が好ましいと目標値が定められていることから、本発明の組成物は水栓金具の内面コートとして用いるのが好ましい。
【0050】
また、本発明の組成物は、水栓金具、IHクッキングヒーター、電子レンジ部品、オーブングリル部品、炊飯器内釜等のキッチン・レンジ周りや、排ガス配管、自動車床下金属配管、ダクト、天然ガスやオイルのパイプ、N-メチルピロリドン溶液の配管やタンク、タイゴンチューブ等の各種配管や、釣り糸、漁網、水中ポンプ等の各種海洋関係部材や、剪定鋏、医療用ナイフ、工業用刃、シェービング等の各種刃物への防汚性、防錆性、非接着性付与や、アスファルト、鉄筋、太陽熱発電ミラー、墓石、網戸、養生パネル等の屋外部材や、シャワーカーテン、トイレ、浴槽、ウォシュレット(登録商標)の先端、モップ等の水回り部材や、衣服、不織布等の布や、ガラス繊維、内装材(メタル品含む)、医療用品、金属製楽器、食品パッキン、メタル眼鏡フレーム、コピー転写ロール、3Dプリンタ成形品、貴金属パネル、メタルスクリーン、ガラスホワイトボード、熱交換器、電線等のコーティングに用いることもできる。またUV硬化によりパターニング材料として用いることもできる。
【0051】
また、本発明の組成物は、電子基板の防湿コートや、積層セラミックコンデンサのイオンマイグレーション防止コート、化粧品リフィル容器の口や、インクジェットのヘッドの撥液コート、金型やゴム型の離型コート、レンガやタイルのガム接着防止コート、ミラーの水垢防止コート、炭素繊維強化プラスチックの撥水コート、宝飾品の変色防止コート、外使いの物品の色褪せ防止コート、ギアの摺動改良コート、として用いることもできる。
また、リチウムイオン二次電池用のバインダーやセパレーターコート、キャパシター用セパレーターコート、全固体リチウムイオン二次電池バインダーとしても用いることができる。
【0052】
より具体的な使用例としては、前記用途と一部重複するが、自動車用等のカーナビゲーション、カーオーディオ、タブレット型コンピュータ、ノートPC、時計型・眼鏡型ウェアラブル端末、携帯電話・スマートフォン等の携帯(通信)情報端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、ゲーム機器、各種操作パネル、デジタルメディアプレイヤー、電子ブックリーダー等人の手で持ち歩く各種機器の筐体、電子公告等に使用される液晶ディスプレイ、陰極線管(CRT:例、TV、パソコンモニター)、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等のディスプレイまたはそれらのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの、携帯電話、携帯情報端末等の機器のタッチパネルシートやタッチパネルディスプレイ等人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器や、複写機、太陽電池パネル、保護フィルム、ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MO等の光ディスクのディスク面や磁気ディスク、光ファイバーや時計の表示面、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラー、眼鏡レンズ、反射防止被覆眼科用レンズ、双眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機等の光学物品が挙げられる。特にタッチパネルディスプレイ等人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器、デジタルフォトフレーム、ゲーム機、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、デジタルサイネージ(電子看板)、セキュリティーシステム端末、POS端末、リモートコントローラ等各種コントローラ、車載装置用パネルスイッチ等の表示入力装置等の表面保護コートが挙げられる。
【0053】
さらに、自転車、自動車等乗り物の外装、ピアノや家具の光沢表面、大理石や人工大理石等の建築用石材表面、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水周りの装飾建材、ガラス装飾を施した家電(たとえば冷蔵庫)、美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、フォトフレーム用カバー、腕時計、自動車窓用ガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプ等の透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネート等)部材、各種ミラー部材、再帰反射シーティング、建物窓、車両ヘッドランプおよびテールライト、ディスプレイケース、道路舗装マーカー(たとえば隆起)および舗装マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクタ、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、時計カバー、窯業製品、布製品、皮革製品、医療品、医療機器、自動車、航空機、ヘリコプター、航空宇宙機、または船舶の外装および燃料システムに用いられるO-リング、軸封、ガスケット、チューブ、裏地、シート、コンテナ、蓋、ホース、またはこれらの構成要素、膜、および接着されたシール、ベアリング、クランクシャフト、スライドベアリング、ピストン、ガスケット、ギヤ、ドアパネル、インストルメントパネル、ドアロック、タイミングベルト、サンルーフ用ボディシール、グラスラン、ウェザーストリップ、回転軸受/滑り軸受、ピボットピン、カム、ガイド、ウェイ、ドライブスクリュー、ギヤ、スプライン、チェーン等の保護膜としても使用できる。空気(亜鉛)電池等の電池の撥水コート、電解槽用部材の撥水コート、太陽電池の撥水コート、プリント配線板の防水・撥水コート、電子機器筐体や電子部品用の防水・撥水コート、帯電ロールや定着ロールの防汚コート、基板搬送装置の防汚コート、高周波発熱体の絶縁性向上コート、送電線の絶縁性向上コート、各種フィルターの防水・撥水コート、電波吸収材や吸音材の防水性コート、風呂、厨房機器、トイレタリー用防汚コートとしても使用できる。
【0054】
押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、FRP成形、積層成形、注型、粉末成形、溶液流延法、真空・圧空成形、押出複合成形、延伸成形、発泡成形、接着剤・塗料、各種二次加工、圧縮成形、中空成形、ナノインプリント等の各種金型離型、ウレタンフォーム用離型剤、コンクリート用離型剤、ゴム・プラスチック成型用離型剤、熱交換機の撥水・防水・滑水・防錆コート、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、自動車部品、工具等の表面保護コートとしても使用できる。
【0055】
水、温水、酸、アルカリ、有機溶剤、粉体などを取り扱う容器や配管、バルブ等にも用いることができる。具体的には、金属製の容器、ピット、バット、スプーン、スコップ、スパチュラ、管、ホース、チューブ、蛇腹状チューブ、フランジ、エルボー、T型継手、十字継手、ボールバルブ、ニードルバルブ、ベローズバルブ、グローブバルブ、バタフライバルブ、逆止弁、金属製フィルター、ドラム等の防錆・防湿・防汚コートに用いることができる。
【0056】
無機粒子コンポジットによるUVカットコーティング、太陽熱集熱反射板のコーティング、太陽電池用フロントシートおよびバックシート、風力発電機ブレード表面塗布用塗料、トナーのコーティング、光ファイバークラッド材やレンズ材料、鏡、ガラス窓のコーティング、注射器、ピペット、体温計、ビーカー類、シャーレ類、メスシリンダー類、繊維や布への含浸、シーラントの防汚コート剤、IC封止材、防錆塗料、樹脂付着防止塗装、インキ付着防止塗装、層間絶縁膜、半導体製造保護膜などに用いることができる。
【0057】
駅のホームドア、自動ドア、屋外防犯カメラ、シャッター、自動販売機などの防汚コート、遮音板、コンクリート部材;電柱、道路、壁などの防汚コート、排ガス用防汚・防煤付着コート、建築、自動車、航空機、電車用ガラスの防汚コート、屋根材、建物外装鋼板の防錆・防汚コート、壁紙、フローリング、タイルなどの建物内装材の防汚コート、電磁波シールドシートの耐候性付与コート、屋内外広告の防汚コート、搬送用ロボットアームの耐食コート、カメラ躯体の防汚コート、インクジェットノズルの低摩擦・撥水コート、フォトリソ工程の下地として使用するセラミックの耐薬コート、ナノインプリントモールド用離型コート、タイヤ劣化防止用コート、金属製チェーン、ベルト、ローター、ピストン、搬送ガイド、搬送用フィルムロールの低摩擦コート、ニッケル水素電池電極の耐薬コート、キッチン用品の焼き付き防止コート;鍋、フライパン、炊飯釜、菓子用金型、餅つき器、クレープメーカー、ワッフルメーカー、たこ焼き器、ホットプレートなど、水回り機器の防汚コート;洗濯機、乾燥機、皿洗い機など、碍子の防汚コート、メッキ槽、メッキ治具、洗浄かご、洗浄用バスケット、撹拌機、シャフト、撹拌羽根、投げ込みヒーターなどの防錆、非接着コート、半導体製造用ウェット洗浄装置の金属イオン溶出防止コート、CMP研磨装置の防食コート、プリント基板用CCLの絶縁コート、ガス分離膜、電子回路基板の防湿コート、電子回路基板の電極保護コート、潤滑剤;含フッ素固体潤滑剤、含フッ素オイル潤滑剤、添加剤;撥水性付与添加剤、撥油性付与添加剤、潤滑性付与添加剤、化粧品容器内面コート、薬液バッグ、点滴バッグや薬液シリンジの内面コート、ケッチャップやマヨネーズの容器内面コート、フッ素樹脂の耐薬接着剤、フッ素樹脂と他基材の耐薬接着剤、パターニング材料、フレキシブルディスプレイ基板の防湿コート、3Dプリンター成形品の撥水、耐薬、防湿、離型、防汚コートなどに用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0059】
(容量流速Q値mm3/秒)
フローテスタ(島津製作所社製)を用いて、220℃の温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度を測定した。
[融点]
示差走査熱量計(SII社製、DSC-7020)を用い、試料約5mgを乾燥空気流通下に300℃で10分保持した後、100℃まで10℃/分の降温速度で降温し、続いて10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温したときの結晶融解ピークの頂点に対応する温度を融点とした。
【0060】
[ETFEの組成]
溶融NMR分析、フッ素含有量分析で求めた。
[官能基(酸無水物基)の含有量]
ETFEを厚さ200μmのプレスフィルムに成形し、赤外分光器(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にて赤外吸収スペクトルを測定した。酸無水物のカルボニル基に帰属される、1870cm-1のピークの吸光度を測定し、官能基のモノマー単位である無水イタコン酸の有する当該ピークのモル吸光係数(237L/mol・cm)を用いて、ランベルト・ベールの式よりETFEの官能基含有量を求めた。
【0061】
〔合成例1〕
内容積1.3Lの、攪拌機およびジャケットを備えたステンレス製重合槽を真空引きした後、CF3CH2OCF2CF2Hの822g、CH2=CH(CF2)4Fの3.2g、およびメタノールの1.98gを仕込み、さらに重合槽内部を攪拌しながらHFPの350g、およびTFEの118g、Eの2.9gを仕込んだ後、ジャケットに温水を流して重合槽内温を66℃にした。この時の重合槽内圧力1.53MPaGであった。内温が安定してからtert-ブチルペルオキシピバレートの5質量%CF3CH2OCF2CF2H溶液の8.4mLを圧入し、重合を開始した。重合中、内圧が1.53MPaGで一定になるように、TFE/E=54/46モル比の混合ガスを添加した。併せて重合中に添加されるTFE/E混合ガスが5g消費される毎にCH2=CH(CF2)4Fの3.52質量%、および無水イタコン酸の1.28質量%CF3CH2OCF2CF2H溶液の4mLを添加した。反応開始から283分後、TFE/E(モル比)=54/46の混合ガスの70gを添加したところで重合槽を冷却し、重合を終了した。
【0062】
次いで、重合槽から残モノマーガスを大気圧までパージし、スラリーを内容積2Lの容器に移し、スラリーと同体積の水を加え、加熱しながら重合媒体、残モノマーと含フッ素共重合体とを分離した。得られたポリマーを120℃のオーブンで乾燥し、白色粉末状のETFE-1を得た。
ETFE-1の220℃における容量流速は35mm3/秒であり、組成(モル%比)は、TFE/E/HFP/CH2=CH(CF2)4F/無水イタコン酸=49.0/41.7/7.8/1.1/0.4であり、融点は178℃であった。
【0063】
〔合成例2〕
メタノールを仕込まない以外は合成例1と同様にして、重合槽に原料を仕込んだ後、ジャケットに温水を流して重合槽内温を66℃にした。この時の重合槽内圧力1.53MPaGであった。内温が安定してからtert-ブチルペルオキシピバレートの5質量%CF3CH2OCF2CF2H溶液の16.8mLを圧入し、重合を開始した。重合中、内圧が1.53MPaGで一定になるよう、TFE/E=54/46モル比の混合ガスを添加した。併せて重合中に添加されるTFE/E混合ガスが5g消費される毎にCH2=CH(CF2)4Fの3.53質量%、および無水イタコン酸の1.61質量%CF3CH2OCF2CF2H溶液の4mLを添加した。反応開始から222分後、TFE/E(モル比)=54/46の混合ガスの70gを添加したところで重合槽を冷却し、重合を終了した。
【0064】
次いで、重合槽から残モノマーガスを大気圧までパージし、スラリーを内容積2Lの容器に移し、スラリーと同体積の水を加え、加熱しながら重合媒体、残モノマーと含フッ素共重合体とを分離した。得られたポリマーを120℃のオーブンで乾燥し、白色粉末状のETFE-2を得た。
ETFE-2の220℃における容量流速は193mm3/秒であり、組成(モル%比)は、TFE/E/HFP/CH2=CH(CF2)4F/無水イタコン酸=49.1/41.5/7.7/1.2/0.5であり、融点は174℃であった。
【0065】
〔合成例3〕
無水イタコン酸の添加量を変えた以外は合成例1と同様にして、ETFE-3を得た。 ETFE-3の220℃における容量流速は355mm3/秒であり、組成(モル%比)は、TFE/E/HFP/CH2=CH(CF2)4F/無水イタコン酸=49.0/41.6/7.7/1.1/0.6であり、融点は176℃であった。
【0066】
〔合成例4〕
メタノールの仕込みを1.65gにする以外は合成例1と同様にして、重合槽に原料を仕込んだ後、ジャケットに温水を流して重合槽内温を66℃にした。この時の重合槽内圧力1.56MPaGであった。内温が安定してからtert-ブチルペルオキシピバレートの5質量%CF3CH2OCF2CF2H溶液の5.4mLを圧入し、重合を開始した。重合中、内圧が1.56MPaGで一定になるよう、TFE/E(モル比)=54/46の混合ガスを添加した。併せて重合中に添加されるTFE/E混合ガスが5g消費される毎にCH2=CH(CF2)4Fの7.1質量%、および無水イタコン酸の1.3質量%CF3CH2OCF2CF2H溶液の2mLを添加した。反応開始から347分後、TFE/E=54/46モル比の混合ガスの70gを添加したところで重合槽を冷却し重合を終了した。
そして、重合槽から残モノマーガスを大気圧までパージし、スラリーを内容積2Lの容器に移し、スラリーと同体積の水を加え、加熱しながら重合媒体、残モノマーと含フッ素共重合体とを分離した。得られたポリマーを120℃のオーブンで乾燥し、白色粉末状のETFE-4を得た。
ETFE-4の220℃における容量流速は14mm3/秒であり、組成(モル%比)は、TFE/E/HFP/CH2=CH(CF2)4F/無水イタコン酸=49.2/41.7/7.8/1.0/0.3であり、融点は195℃であだった。
【0067】
[実施例1-1]
1Lの攪拌機付きガラス製耐圧反応容器に、含フッ素共重合体として、ETFE-1の32gおよびジイソプロピルケトンの500gを入れ、150℃に加熱して1時間撹拌してETFE-1を分散させた。その後、撹拌しながら室温まで冷却し、ETFE組成物1-1を得た。
アロジン処理したアルミニウム板にETFE組成物1-1をディップコートした。常温で溶媒を乾燥させたのち、250℃で30分間熱処理を行ったところ、透明感のある、均一なETFE-1の塗膜を形成することができた。
【0068】
[実施例1-2]
ETFE-1を10gにする以外は実施例1-1と同様にして、ETFE組成物1-2を得た。アロジン処理したアルミニウム板にETFE組成物1-2をディップコートした。常温で溶媒を乾燥させたのち、250℃で30分間熱処理を行ったところ、透明感のある、均一なETFE-1の塗膜を形成することができた。
【0069】
[実施例1-3]
ジイソプロピルケトンを酢酸ブチルにする以外は実施例1-1と同様にして、ETFE組成物1-3を得た。アロジン処理したアルミニウム板にETFE組成物1-3をディップコートした。常温で溶媒を乾燥させたのち、250℃で30分間熱処理を行ったところ、透明感のある、均一なETFE-1の塗膜を形成することができた。
【0070】
[実施例1-4]
ETFE-1を10gにする以外は実施例1-3と同様にして、ETFE組成物1-4を得た。アロジン処理したアルミニウム板にETFE組成物1-4をディップコートした。常温で溶媒を乾燥させたのち、250℃で30分間熱処理を行ったところ、透明感のある、均一なETFE-1の塗膜を形成することができた。
【0071】
[実施例2]
含フッ素共重合体をETFE-2にする以外は実施例1-1と同様にして、ETFE組成物2を得た。ETFE組成物2は、常温で72時間経過した後でも沈殿などを生じず優れた安定性を有していた。
ETFE組成物1-1をETFE組成物2にする以外は実施例1-1と同様にして、アロジン処理したアルミニウム板にETFE-2の塗膜を形成したところ、実施例1-1~実施例1-4の塗膜よりもさらに透明感のある、均一な塗膜が得られた。
【0072】
[実施例3]
含フッ素共重合体をETFE-3にする以外は実施例1-1と同様にして、ETFE組成物3を得た。ETFE組成物3は、常温で72時間経過した後でも沈殿などを生じず優れた安定性を有していた。
ETFE組成物1-1をETFE組成物3にする以外は実施例1-1と同様にして、アロジン処理したアルミニウム板にETFE-3の塗膜を形成したところ、実施例1-1~実施例1-4の塗膜よりもさらに透明感のある、均一な塗膜が得られた。
【0073】
[実施例4]
ETFE組成物1-1の232.5g、緑色顔料であるダイピロキサイド グリーン #9430の1.21gを添加し、撹拌し、緑色顔料で着色されたETFE組成物4を得た。
サンドブラスト処理したステンレス板にETFE組成物4をディップコートした。常温で溶媒を乾燥させたのち、250℃で30分間熱処理を行ったところ、緑色の均一なETFE-1の塗膜を形成することができた。
【0074】
[実施例5]
ETFE組成物1-1の230.5g、黒色顔料であるダイピロキサイド ブラック #9550の0.73gを添加し、撹拌し、黒色顔料で着色されたETFE組成物5を得た。
サンドブラスト処理したステンレス板にETFE組成物5をディップコートした。常温で溶媒を乾燥させたのち、250℃で30分間熱処理を行ったところ、黒色の均一なETFE-1の塗膜を形成することができた。
【0075】
[比較例1]
含フッ素共重合体をETFE-4にする以外は実施例1-1と同様にして、ETFE組成物6-1を得た。
実施例1-1と同様にしてETFE組成物6-1をアロジン処理したアルミニウム板にぬり、熱処理したところ、ETFE-4の塗膜には、一部に透明感の異なる外観上のむらが発生してしまい、実施例1のような均一な塗膜を形成することができなかった。
【0076】
[比較例2]
ジイソプロピルケトンを酢酸ブチルにする以外は比較例1と同様にして、ETFE組成物6-2を得た。
実施例1-1と同様にしてETFE組成物6-2をアロジン処理したアルミニウム板にぬり、熱処理したところ、ETFE-4の塗膜には、一部に透明感の異なる外観上のむらが発生してしまい、実施例1-1のような均一な塗膜を形成することができなかった。
【0077】
なお、2017年8月9日に出願された日本特許出願2017―154280号および2018年2月27日に出願された日本特許出願2018―033410号の明細書、特許請求の範囲、図面、および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。