(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】アクセサリおよび交換レンズ
(51)【国際特許分類】
G03B 17/14 20210101AFI20220906BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G03B17/14
H04N5/232 030
(21)【出願番号】P 2020115015
(22)【出願日】2020-07-02
(62)【分割の表示】P 2018188202の分割
【原出願日】2011-05-13
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】及川 雅史
(72)【発明者】
【氏名】今藤 和晴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】長屋 俊二
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-211651(JP,A)
【文献】特開2009-053429(JP,A)
【文献】特開平10-073860(JP,A)
【文献】特開2006-030767(JP,A)
【文献】特開平08-079577(JP,A)
【文献】特開2008-122827(JP,A)
【文献】特開平04-273225(JP,A)
【文献】特開2008-216439(JP,A)
【文献】特開2010-015137(JP,A)
【文献】特開2005-164966(JP,A)
【文献】特開2009-122287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/14
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディと通信可能なアクセサリであって、
駆動力を受けて状態が変化する第1の被駆動部材と、
駆動力を受けて状態が変化する第2の被駆動部材と、
前記第1の被駆動部材および前記第2の被駆動部材に対して初期化処理を実行する初期化部と、
前記第1の被駆動部材の前記初期化処理が完了すると、前記第2の被駆動部材の前記初期化処理が完了しているか否かに関わらず、前記第1の被駆動部材の制御処理の実行を開始する制御部と、
を備えるアクセサリ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセサリにおいて、
前記第1の被駆動部材の前記初期化処理は、前記第1の被駆動部材の位置を検出するセンサの出力信号の補正値を算出する処理を行う、アクセサリ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクセサリにおいて、
前記第1の被駆動部材の前記初期化処理は、前記第1の被駆動部材の移動を伴わない処理である、アクセサリ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
前記第2の被駆動部材の前記初期化処理は、前記第2の被駆動部材を所定の位置に移動させる処理である、アクセサリ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
前記初期化処理が完了したか否かを示す応答信号を、前記カメラボディへ送信する第1送信部を備え、
前記第1送信部は、前記第1の被駆動部材の前記初期化処理が完了したか否かを示す情報と、前記第2の被駆動部材の前記初期化処理が完了したか否かを示す情報と、を含めた応答信号を送信する、アクセサリ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
前記被駆動部材の駆動を指示するための指示信号を前記カメラボディから受信する受信部を備え、
前記受信部は、前記第1の被駆動部材の前記初期化処理が完了する前は前記第1の被駆動部材に対する前記指示信号を前記カメラボディから受信せず、前記第1の被駆動部材の前記初期化処理が完了すると前記第1の被駆動部材に対する前記指示信号を前記カメラボディから受信する、アクセサリ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
前記第1の被駆動部材と前記第2の被駆動部材の少なくとも一方の被駆動状態を前記カメラボディへ送信する第2送信部を備える、アクセサリ。
【請求項8】
請求項5を引用する請求項7に記載のアクセサリにおいて、
前記第1送信部が、前記第1の被駆動部材の前記初期化処理が完了したことを示す情報と、前記第2の被駆動部材の前記初期化処理が完了したことを示す情報と、を含む応答信号を送信すると、前記第2送信部の通信が開始可能となる、アクセサリ。
【請求項9】
請求項5を引用する請求項7または8に記載のアクセサリにおいて、
前記第1の被駆動部材および前記第2の被駆動部材とは異なる、駆動力を受けて状態が変化する第3の被駆動部材を備え、
前記第1の被駆動部材の被駆動状態を前記第1送信部および前記第2送信部により前記カメラボディへ送信し、前記第3の被駆動部材の被駆動状態を前記第1送信部により前記カメラボディへ送信するとともに、前記第2送信部では送信しない、アクセサリ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
フォーカスレンズとブレ補正レンズとを有し、被写体像を形成する光学系と、
前記光学系を透過する光量を調節する絞りと、を備え、
前記第1の被駆動部材は、前記ブレ補正レンズであり、
前記第2の被駆動部材は、前記フォーカスレンズである、アクセサリ。
【請求項11】
請求項5を引用する請求項7、請求項8、請求項9、および請求項5と7を引用する10のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
前記第1送信部は、第1のクロック信号に同期させて前記初期化処理が完了したか否かを示す応答信号を送信し、
前記第2送信部は、前記第1のクロック信号とは異なる第2のクロック信号に同期させて前記被駆動状態を送信する、アクセサリ。
【請求項12】
請求項1から11
のいずれか一項に記載の前記アクセサリは、交換レンズである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセサリおよび交換レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラボディと、カメラボディに着脱可能な交換レンズと、から成るカメラシステムが知られている。例えば特許文献1には、カメラ本体と、カメラヘッドと、から成り、カメラヘッドの初期化を行うカメラシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラに装着される交換レンズにおいて、交換レンズの初期化に関連した仕組みに関して、従来の技術とは異なる仕組みが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によるアクセサリは、カメラボディと通信可能なアクセサリであって、駆動力を受けて状態が変化する第1の被駆動部材と、駆動力を受けて状態が変化する第2の被駆動部材と、前記第1の被駆動部材および前記第2の被駆動部材に対して初期化処理を実行する初期化部と、前記第1の被駆動部材の前記初期化処理が完了すると、前記第2の被駆動部材の前記初期化処理が完了しているか否かに関わらず、前記第1の被駆動部材の制御処理の実行を開始する制御部と、を備える。
上記第1の態様によるアクセサリは、本発明の第2の態様による交換レンズである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
【
図2】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。
【
図3】保持部102,202の詳細を示す模式図である。
【
図4】コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。
【
図5】ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。
【
図7】電源オン後の初期化処理の実行順序を表すタイムチャートである。
【
図9】電源オン操作から撮影可能になるまでの処理を示すフローチャートである。
【
図10】電源オン後の初期化処理の実行順序を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。なお、
図1では本発明に係わる機器および装置のみを示し、それ以外の機器および装置については図示と説明を省略する。カメラ1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ200とから構成される。
【0008】
カメラボディ100には交換レンズ200が着脱可能に取り付けられるレンズマウント101が設けられている。カメラボディ100のレンズマウント101の近傍(レンズマウント101の内周側)の位置には、レンズマウント101の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)102が設けられている。この保持部102には複数の接点が設けられている。
【0009】
また交換レンズ200には、ボディ側のレンズマウント101に対応する、カメラボディ100が着脱可能に取り付けられるレンズマウント201が設けられている。交換レンズ200のレンズマウント201の近傍(レンズマウント201の内周側)の位置には、レンズマウント201の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)202が設けられている。この保持部202には複数の接点が設けられている。
【0010】
カメラボディ100に交換レンズ200が装着されると、複数の接点が設けられた保持部102が、複数の接点が設けられた保持部202に電気的に且つ物理的に接続される。両保持部102,202は、カメラボディ100から交換レンズ200への電力供給、および、カメラボディ100と交換レンズ200との信号の送受信に利用される。
【0011】
カメラボディ100内のレンズマウント101後方には、例えばCMOSやCCDなどの撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン107が設けられている。ユーザはボタン107等の入力装置を用いてカメラボディ100に撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。
【0012】
図2は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。交換レンズ200は、被写体像を結像させる結像光学系210を備える。結像光学系210は複数のレンズ210a~210cおよび絞り211により構成されている。これら複数のレンズ210a~210cには、被写体像のピント位置を制御するためのフォーカシングレンズ210bと、被写体像の像ぶれを補正するぶれ補正レンズ210cが含まれている。
【0013】
交換レンズ200内部には、交換レンズ200の各部の制御を司るレンズ制御部203が設けられている。レンズ制御部203は不図示のマイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ制御部203には、レンズ側第1通信部217、レンズ側第2通信部218、フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、絞り駆動部214、ROM215、およびRAM216が接続されている。
【0014】
レンズ側第1通信部217およびレンズ側第2通信部218は、保持部102、202の各通信接点を介してカメラボディ100とのデータの授受を行う。このレンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218はそれぞれ、交換レンズ200側の通信インターフェースである。レンズ制御部203はこれら通信インターフェースを使って、カメラボディ100(後述するボディ制御部103)との間で後述する各通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。
【0015】
フォーカシングレンズ駆動部212は例えばステッピングモータ等のアクチュエータを有し、フォーカシングレンズ駆動部212に入力された信号に応じてフォーカシングレンズ210bを駆動する。ぶれ補正レンズ駆動部213および絞り駆動部214も同様に、例えばボイスコイルモータ等のアクチュエータをそれぞれ有しており、入力信号に応じてぶれ補正レンズ210cおよび絞り211をそれぞれ駆動する。
【0016】
フォーカシングレンズ210bは、フォーカシングレンズ駆動部212により光軸方向に駆動される。ぶれ補正レンズ210cは、ぶれ補正レンズ駆動部213により光軸の垂直方向(X方向、Y方向)に駆動される。絞り211は、絞り駆動部214により、被写体光を通過させるための開口の大きさ(開口径)が変化するように駆動される。すなわち、これらの各部材は、各駆動部からの駆動力を受けて駆動されることで被駆動状態が変化する被駆動部材である。ここで被駆動状態とは、各被駆動部材に固有の状態のうち、当該被駆動部材が駆動されることにより変化する状態を指す。例えばフォーカシングレンズ210bであれば光軸方向の位置、ぶれ補正レンズ駆動部213であれば光軸に垂直な平面における位置、絞り211であれば開口径(および開口径に応じて変化する結像光学系210のF値)などが被駆動状態に含まれる。
【0017】
なお、交換レンズ200内に、上記の各被駆動部材(フォーカシングレンズ210b、ぶれ補正レンズ210c、絞り211)以外の被駆動部材を設けてもよい。例えば、上記フォーカシングレンズ210bと同様に、結像光学系210の光軸方向に移動可能な部材としてズームレンズを設けると共に、そのズームレンズを電気的に駆動する機構(いわゆるパワーズーム機構)を交換レンズ200内に設けてもよい。
【0018】
ROM215は不揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203が実行する所定の制御プログラム等が予め記憶される。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203により各種データの記憶領域として利用される。
【0019】
レンズ制御部203は、ソフトウェア形態により、初期化状況送信部221、被駆動状態送信部222、および初期化制御部223を有する。これらの各機能部は、レンズ制御部203がROM215に記憶されている所定の制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。
【0020】
初期化制御部223は、上述した複数の被駆動部材の各々に対し、所定の初期化処理を実行する。初期化状況送信部221は、これら複数の被駆動部材の各々について、初期化処理の状況を表す初期化状況データ(例えば初期化処理の実行が完了したか未完了かを表す状況データ)を、第1伝送路(後に詳述)を介して所定周期毎にカメラボディ100に送信する。被駆動状態送信部222は、上述した複数の被駆動部材の被駆動状態を表す被駆動状態データを、第1伝送路と異なる第2伝送路(後に詳述)を介して所定周期毎にカメラボディに送信する。ここで初期化状況送信部221がカメラボディ100に対して所定周期毎に初期化状況データを送信する仕組みについて述べる。カメラボディ100は交換レンズ200に対して、交換レンズ200から初期化処理の完了を示す信号を受け取るまで、初期化状況データを要求するコマンドを所定周期毎に出している。交換レンズの初期化状況送信部221は、この要求コマンドに対して準備した初期化状況データを応答する。このような仕組みにより初期化状況送信部221はカメラボディ100に対して所定周期で初期化状況データを送信する。
【0021】
撮像素子104の前面には、撮像素子104の露光状態を制御するためのシャッター115と、光学的ローパスフィルターや赤外線カットフィルターを組み合わせた光学フィルター116とが設けられている。結像光学系210を透過した被写体光は、シャッター115およびフィルター116を介して撮像素子104に入射する。
【0022】
カメラボディ100内部には、カメラボディ100の各部の制御を司るボディ制御部103が設けられている。ボディ制御部103は不図示のマイクロコンピュータ、RAMおよびその周辺回路等から構成される。
【0023】
ボディ制御部103には、ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118が接続されている。ボディ側第1通信部117は保持部102に接続されており、保持部102に設けられた複数の接点を介して、レンズ側第1通信部217とデータの授受を行うことができる。同様に、ボディ側第2通信部118はレンズ側第2通信部218とデータの授受を行うことができる。換言すれば、ボディ側第1通信部117とボディ側第2通信部118はそれぞれ、ボディ側の通信インターフェースである。ボディ制御部103はこれら通信インターフェースを使って、交換レンズ200(レンズ制御部203)との間で、後述する各通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。
【0024】
カメラボディ100の背面には、LCDパネル等により構成される表示装置111が配置される。ボディ制御部103はこの表示装置111に対し、撮像素子104の出力に基づく被写体の画像(いわゆるスルー画)や、撮影条件等を設定するための各種のメニュー画面を表示する。
【0025】
ボディ制御部103は、ソフトウェア形態により、初期化状況受信部121、被駆動状態受信部122、および駆動制御部123を有する。これらの各機能部は、ボディ制御部103が所定の制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。初期化状況受信部121は、初期化状況送信部221により送信された初期化状況データを受信する。被駆動状態受信部122は、被駆動状態送信部222により送信された複数の被駆動部材の被駆動状態を表す被駆動状態データを受信する。駆動制御部123は、初期化状況受信部121により受信された初期化状況データに基づいて、各被駆動部材に対する制御処理(後述)を実行する。
【0026】
(保持部102,202の説明)
図3は保持部102,202の詳細を示す模式図である。なお
図3において保持部102がレンズマウント101の右側に配置されているのは、実際のマウント構造に倣ったものである。すなわち、本実施形態の保持部102は、カメラボディ100のレンズマウント101のマウント面よりも奥まった場所(
図3においてレンズマウント101よりも右側の場所)に配置されている。同様に、保持部202がレンズマウント201の右側に配置されているのは、本実施形態の保持部202が交換レンズ200のレンズマウント201のマウント面よりも突出した場所に配置されていることを表している。保持部102と保持部202がこのように配置されているので、レンズマウント101のマウント面とレンズマウント201のマウント面とを接触させて、カメラボディ100と交換レンズ200とをマウント結合させると、保持部102と保持部202とが接続され、両保持部に設けられている電気接点同士も接続することになる。このようなマウント構造については周知であるのでこれ以上の説明、図示を省略する。
【0027】
図3に示すように、保持部102にはBP1~BP12の12個の接点が存在する。また保持部202には、上記の12個の接点にそれぞれ対応する、LP1~LP12の12個の接点が存在する。
【0028】
接点BP1および接点BP2は、カメラボディ100内の第1電源回路130に接続されている。第1電源回路130は、接点BP1に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、絞り駆動部214など)を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧を供給する。すなわち、接点BP1および接点LP1からは、上記の各駆動部を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧が供給される。この接点BP1に供給可能な電圧値は、最小電圧値~最大電圧値の範囲(例えば3V台での電圧幅)をもつが、標準的に供給される電圧値はその最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流値は、電源ON状態において、約数10mA~数100mAの範囲内の電流値である。
【0029】
接点BP2は、接点BP1に与えられる上記動作電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP2および接点LP2は、上記の動作電圧に対応する接地端子電圧である。
【0030】
以下の説明では、接点BP1および接点LP1により構成される信号線を、信号線V33と呼ぶ。また、接点BP2および接点LP2により構成される信号線を、信号線GNDと呼ぶ。これらの接点LP1,LP2、BP1,BP2は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
【0031】
接点BP3,BP4,BP5,およびBP6は、ボディ側第1通信部117に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP3,LP4,LP5,およびLP6は、レンズ側第1通信部217に接続されている。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217は、これらの接点(通信系接点)を用いて、互いにデータの送受信を行う。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217が行う通信の内容については、後に詳述する。
【0032】
なお以下の説明では、接点BP3および接点LP3により構成される信号線を、信号線CLKと呼ぶ。同様に、接点BP4および接点LP4により構成される信号線を信号線BDATと、接点BP5および接点LP5により構成される信号線を信号線LDATと、接点BP6および接点LP6により構成される信号線を信号線RDYと呼ぶ。
【0033】
接点BP7,BP8,BP9,およびBP10は、ボディ側第2通信部118に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP7,LP8,LP9,およびLP10は、レンズ側第2通信部218に接続されている。レンズ側第2通信部218は、これらの接点(通信系接点)を用いて、ボディ側第2通信部118にデータの送信を行う。ボディ側第2通信部118とレンズ側第2通信部218が行う通信の内容については、後に詳述する。
【0034】
なお以下の説明では、接点BP7および接点LP7により構成される信号線を、信号線HREQと呼ぶ。同様に、接点BP8および接点LP8により構成される信号線を信号線HANSと、接点BP9および接点LP9により構成される信号線を信号線HCLKと、接点BP10および接点LP10により構成される信号線を信号線HDATと呼ぶ。
【0035】
接点BP11および接点BP12は、カメラボディ100内の第2電源回路131に接続されている。第2電源回路131は、接点BP12に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、絞り駆動部214など)の駆動電圧を供給する。すなわち、接点BP12および接点LP12からは、フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、および絞り駆動部214の駆動電圧が供給される。この接点BP12に供給可能な電圧値は、最小電圧値~最大電圧値の範囲をもつが、その範囲はいずれも、前述した接点BP1に供給可能な電圧値範囲よりも大きい電圧値である(例えば、接点BP12に供給可能な最大電圧値は、接点BP1に供給可能な最大電圧値の数倍程度)。即ち接点BP12に供給される電圧値は、上述の接点BP1に供給される電圧値とは、その大きさが異なる電圧値である。なお接点BP12に標準的に供給される電圧値は、接点BP12に供給可能な最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流は、電源ON状態において、約10mA~数Aの電流値となる。
【0036】
接点BP11は、接点BP12に与えられる上記駆動電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP11および接点LP11は、上記駆動電圧に対応する接地端子である。
【0037】
以下の説明では、接点BP11および接点LP11により構成される信号線を、信号線PGNDと呼ぶ。また、接点BP12および接点LP12により構成される信号線を、信号線BATと呼ぶ。これらの接点LP11,LP12、BP11,BP12は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
【0038】
なお、上述の接点BP12、接点LP12に供給される電圧値(電流値)と、接点BP1,LP1に供給される電圧値(電流値)との大小関係から明らかなように、それら各接点に供給される電圧にそれぞれに対する接地端子となる接点BP11および接点LP11を流れる電流の最大値と最小値との差は、接点BP2および接点LP2を流れる電流の最大値と最小値との差よりも大きくなっている。これは、アクチュエータ等の駆動系を有する各駆動部が消費する電力が、交換レンズ200内のレンズ制御部203等の電子回路に比べて大きいこと、ならびに、被駆動部材を駆動する必要がない場合には各駆動部が電力を消費しないことに拠る。
【0039】
(コマンドデータ通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217を制御して、接点LP3~LP6、すなわち信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDYを介して、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して、予め決められた第1の所定周期(本実施形態では例えば16ミリ秒)で行う。以下、レンズ側第1通信部217とボディ側第1通信部117との間で行われる通信の詳細を説明する。
【0040】
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217と、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117との間で行われる通信を「コマンドデータ通信」と称する。また、コマンドデータ通信に利用される4つの信号線(信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDY)から成る伝送路を第1伝送路と称する。またこれらコマンドデータ通信を行うための通信系を「コマンドデータ通信系」と称す。
【0041】
図4は、コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、コマンドデータ通信の開始時(T1)、まず信号線RDYの信号レベルを確認する。信号線RDYの信号レベルはレンズ側第1通信部217の通信可否を表している。レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、通信できない状態である場合には、接点LP6からH(High)レベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、信号線RDYがHレベルである場合、これがLレベルになるまで通信開始しない。また通信中の次の処理を実行しない。
【0042】
信号線RDYがL(Low)レベルであれば、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は接点BP3からクロック信号401を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号401を伝送する。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号401に同期して、接点BP4から制御データの前半部分であるボディ側コマンドパケット信号402を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側コマンドパケット信号402を伝送する。
【0043】
また、信号線CLKにクロック信号401が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、クロック信号401に同期して接点LP5から応答データの前半部分であるレンズ側コマンドパケット信号403を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側コマンドパケット信号403を伝送する。
【0044】
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側コマンドパケット信号403の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする(T2)。レンズ制御部203は、受信したボディ側コマンドパケット信号402の内容に応じた処理である第1制御処理404(後述)を開始する。
【0045】
レンズ制御部203は第1制御処理404が完了すると、レンズ側第1通信部217に第1制御処理404の完了を通知する。レンズ側第1通信部217はこの通知に応じて、接点LP6からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T3)。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこの信号レベルの変化に応じて、接点BP3からクロック信号405を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号405を伝送する。
【0046】
ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号405に同期して、接点BP4から制御データの後半部分であるボディ側データパケット信号406を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側データパケット信号406を伝送する。
【0047】
また、信号線CLKにクロック信号405が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217はクロック信号405に同期して接点LP5から応答データの後半部分であるレンズがデータパケット信号407を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側データパケット信号407を伝送する。
【0048】
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側データパケット信号407の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルを再びHレベルにする(T4)。レンズ制御部203は、受信したボディ側データパケット信号406の内容に応じた処理である第2制御処理408(後述)を開始する。
【0049】
ここで、レンズ制御部203が行う第1制御処理404、および第2制御処理408について述べる。
【0050】
例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、交換レンズ側の特定のデータを要求する内容であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、当該要求されている特定データを生成する処理を実行する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、コマンドパケット信号402の通信にエラーがないか否かをデータバイト数から簡易的にチェックする通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された特定データの信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。なお、この場合においてコマンドパケット信号402の後でボディ側から出力されるボディ側データパケット信号406は、レンズ側にとっては特に意味をなさないダミーデータ信号(チェックサムデータは含む)となっている。この場合にはレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた、上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
【0051】
また例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、レンズ側の被駆動部材を駆動する指示であった場合について述べる。例えば、コマンドパケット信号402がフォーカシングレンズ210bの駆動指示であり、受信したボディ側データパケット信号406がフォーカシングレンズ210bの駆動量であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、その内容を理解したことを表す了解信号を生成する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、上述の如き通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された了解信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。またレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406の内容の解析処理を実行すると共に、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
【0052】
レンズ制御部203は第2制御処理408が完了すると、レンズ側第1通信部217に第2制御処理408の完了を通知する。これによってレンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に、接点LP6からLレベルの信号を出力させる。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T5)。
【0053】
なお受信したボディ側コマンドパケット信号402が、上述のようなレンズ側の被駆動部材(たとえばフォーカシングレンズ)を駆動する指示であった場合、レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に信号線RDYの信号レベルをLレベルにさせつつ、フォーカシングレンズ駆動部212に対して、フォーカシングレンズ210bを当該駆動量だけ駆動する処理を実行させる。
【0054】
上述した時刻T1~時刻T5に行われた通信が、1回のコマンドデータ通信である。上述のように、1回のコマンドデータ通信では、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117により、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、処理の都合上2つに分割されて送信されるものの、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406は2つ合わせて1つの制御データを構成する。
【0055】
同様に、1回のコマンドデータ通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217によりレンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、レンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407は2つ合わせて1つの応答データを構成する。
【0056】
以上のように、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して行う。コマンドデータ通信に利用される接点LP6および接点BP6は、他のクロック信号に同期しない非同期信号(信号線RDYの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
【0057】
(ホットライン通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第2通信部218を制御して、接点LP7~LP10、すなわち信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDATを介して、ボディ側第2通信部118へレンズ位置データを送信する。以下、レンズ側第2通信部218とボディ側第2通信部118との間で行われる通信の詳細を説明する。
【0058】
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218と、ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118との間で行われる通信を「ホットライン通信」と称する。また、ホットライン通信に利用される4つの信号線(信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDAT)から成る伝送路を第2伝送路と称する。またこれらホットライン通信を行うための通信系を「ホットライン通信系」と称す。
【0059】
図5は、ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。本実施形態のボディ制御部103は、ホットライン通信を第2の所定周期(本実施形態では例えば1ミリ秒)毎に開始するように構成されている。この周期は、コマンドデータ通信を行う周期よりも短い。
図5(a)は、ホットライン通信が所定周期Tn毎に繰り返し実行されている様子を示す図である。繰り返し実行されるホットライン通信のうち、ある1回の通信の期間Txを拡大した様子が
図5(b)に示されている。以下、
図5(b)のタイミングチャートに基づいて、ホットライン通信の手順を説明する。
【0060】
ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、ホットライン通信の開始時(T6)、まず接点BP7からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをLレベルにする。レンズ側第2通信部218は、この信号が接点LP7に入力されたことをレンズ制御部203に通知する。レンズ制御部203はこの通知に応じて、レンズ位置データを生成する生成処理501の実行を開始する。生成処理501とは、レンズ制御部203が不図示のフォーカシングレンズ位置検出部にフォーカシングレンズ210bの位置を検出させ、検出結果を表すレンズ位置データを生成する処理である。
【0061】
レンズ制御部203が生成処理501を実行完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からLレベルの信号を出力する(T7)。すなわち、信号線HANSの信号レベルをLレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点BP9からクロック信号502を出力する。すなわち、信号線HCLKを介してレンズ側第2通信部218にクロック信号を伝送する。
【0062】
レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は、このクロック信号502に同期して、接点LP10からレンズ位置データを表すレンズ位置データ信号503を出力する。すなわち、信号線HDATを介してボディ側第2通信部118にレンズ位置データ信号503を伝送する。
【0063】
レンズ位置データ信号503の送信が完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HANSの信号レベルをHレベルにする(T8)。ボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点LP7からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをHレベルにする(T9)。
【0064】
上述した時刻T6~時刻T9に行われた通信が、1回のホットライン通信である。上述のように、1回のホットライン通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218により、レンズ位置データ信号503が1つ送信される。ホットライン通信に利用される接点LP7、LP8、BP7、およびBP8は、他のクロック信号に同期しない非同期信号が伝送される接点である。つまり接点LP7およびBP7は、非同期信号(信号線HREQの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点であり、接点LP8およびBP8は、非同期信号(信号線HANSの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
【0065】
なお、コマンドデータ通信とホットライン通信は、同時にも或いは一部並行的にも実行することが可能である。すなわち、レンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218との一方は、その他方がカメラボディ100と通信を行っている場合であってもカメラボディ100と通信を行うことが可能である。
【0066】
(電源オン後に実行される処理の説明)
ユーザによりカメラ1の電源オン操作(例えば不図示の電源スイッチをオンする操作)がなされると、レンズ制御部203(初期化制御部223)は交換レンズ200の各部の初期化処理を実行する。ボディ制御部103も同様に、カメラボディ100の各部の初期化処理を実行する。
【0067】
レンズ制御部203(初期化制御部223)はこの初期化処理において、まずレンズ側第1通信部217およびレンズ側第2通信部218を初期化する。ボディ制御部103も同様に、まずボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118を初期化する。これらの処理により、カメラボディ100と交換レンズ200との間でデータ通信(コマンドデータ通信およびホットライン通信)が行えるようになる。
【0068】
レンズ制御部203(初期化制御部223)は各通信部の初期化の次に、交換レンズ200が有する複数の被駆動部材の初期化を開始する。本実施形態の交換レンズ200は複数の被駆動部材(フォーカシングレンズ210b、ぶれ補正レンズ210c、および絞り211)を備える。カメラ1の電源オンの後、初期化制御部223による所定の初期化処理の実行が完了するまで、ボディ制御部103およびレンズ制御部203はこれらの被駆動部材に対して通常の制御処理を実行することができない。通常の
制御処理の例としては、被駆動状態送信部222による被駆動状態の送信処理や、駆動制御部123による駆動処理などが挙げられる。
【0069】
本実施形態の初期化制御部223は、絞り211,ぶれ補正レンズ210c、フォーカシングレンズ210bの順に、各被駆動部材の初期化処理を順次実行する。カメラボディ100(ボディ制御部103)は初期化制御部223による初期化処理が完了するまで、これらの被駆動部材を扱う処理を実行できない。例えば絞り211の初期化が完了するまで、カメラボディ100(ボディ制御部103)は絞り211の絞り径を自在に変更することができないので、露出制御等の処理を行うことができない。
【0070】
本実施形態では、初期化状況送信部221が、各被駆動部材の初期化状況を表す初期化状況データを所定周期毎にカメラボディ100(初期化状況受信部121)に送信する。ボディ制御部103は初期化状況受信部121により受信された初期化状況データを読み取り、初期化が完了している被駆動部材について、順次制御処理を開始する。例えば駆動制御部123は、初期化状況データにより初期化処理の実行が未完了であることが表された被駆動部材には制御処理を実行しない。
【0071】
図6は、初期化状況を表す情報(データ)の構造を示す図である。ボディ制御部103は、各通信部の初期化が完了すると、所定周期毎に、
図6(a)に示す初期化状況要求コマンド(データ)50をボディ側第1通信部117から交換レンズ200に送信する。レンズ側第1通信部217は、この初期化状況要求コマンド(データ)50を受信すると、
図6(b)に示す初期化状況情報(データ)60をボディ側第1通信部117に送信する。すなわち、初期化状況送信部221は、複数の被駆動部材の各々について初期化処理の実行が完了したか未完了かを表す初期化状況情報(データ)60を、レンズ側第1通信部217により所定周期(例えば16ミリ秒)毎にボディ側第1通信部117に送信する。
図4に示したコマンドデータ通信において、初期化状況要求コマンド(データ)50がボディ側コマンドパケット信号402に、初期化状況情報(データ)60がレンズ側データパケット信号407にそれぞれ対応する。
【0072】
なお
図6において「N/A」と記載されている領域は、データの規定がない領域である。つまり「N/A」と記載された箇所にはどのようなデータが入っていても構わない。ボディ側第1通信部117およびレンズ側第1通信部217は、この領域に格納されているデータを単に無視する。
【0073】
図6(a)に示した初期化状況要求コマンド(データ)50は2バイトのデータであり、下位1バイトは本データが初期化状況要求コマンド(データ)50であることを表す識別用の整数51である。
図6(a)では一例として、この識別用の整数51を「60H」という16進数にしているが、初期化状況要求コマンド(データ)50であることを識別可能であれば他の通信にしてもよい。
【0074】
図6(b)に示した初期化状況情報(データ)60は2バイトのデータであり、下位1バイトは本データが初期化状況情報(データ)60であることを表す識別用の整数61である。8ビット目は絞り211の初期化処理の実行が完了したか未完了かを表すフラグ62である。絞り211の初期化処理が未完了であるとき、初期化状況送信部221は、フラグ62が0である初期化状況情報(データ)60を送信する。同様に、9ビット目はぶれ補正レンズ210cの初期化処理の実行が完了したか未完了かを表すフラグ63であり、10ビット目はフォーカシングレンズ210bの初期化処理の実行が完了したか未完了かを表すフラグ64である。
【0075】
図7は電源オン後の初期化処理の実行順序を表すタイムチャートである。時刻T10にカメラ1に対して電源オン操作が実行されると、ボディ制御部103は各通信部の初期化処理71を開始する。同様に、レンズ制御部203(初期化制御部223)も各通信部の初期化処理72を開始する。
【0076】
ボディ制御部103は各通信部の初期化処理71が完了すると、前述した初期化状況要求コマンド(データ)50の送信を開始する。これ以降、ボディ制御部103は、後述するフォーカシングレンズ210bの制御処理78が完了するまで(すなわち期間Tiにおいて)、所定周期毎に初期化状況要求コマンド(データ)50を繰り返し送信する。
【0077】
レンズ制御部203(初期化制御部223)は各通信部の初期化処理72が完了すると、絞り211の初期化処理73を開始する。絞り211の初期化処理73には例えば、絞り211を駆動する絞りアクチュエータ(不図示)の原点出し処理が含まれる。この処理は、絞りアクチュエータを駆動して、絞り211を絞り開放位置(絞り全開となる絞り開放側に設けられたメカ制限に当接する位置)まで駆動(当て付け駆動)する処理である。レンズ制御部203(初期化状況送信部221)は初期化制御部223による絞り211の初期化処理73の実行が完了するまでの間、カメラボディ100から初期化状況要求コマンド(データ)50が送信されてくる度に、フラグ62、フラグ63、およびフラグ64がすべて0の初期化状況情報(データ)60を、レンズ側第1通信部217に(カメラボディ100に対して)送信させる。
【0078】
なお本実施形態では、絞り211の初期化処理として2種類の処理が存在する。そのうちの1つは、カメラボディ100側の電源スイッチがOFFされた「電源OFF状態」から電源ON操作(起動)された場合における初期化処理1である。もう一つは、カメラボディ側の電源スイッチはONのままであるがカメラボディが低消費電力状態に移行している「スリープ状態」からカメラボディを起動する場合における初期化処理2である。ここで、スリープ状態に入る前の絞り211の位置(制御絞り位置)は、スリープ状態に移行する再に、レンズ制御部203内のメモリに記憶される。
【0079】
初期化処理1は、上述したように絞り211を駆動する絞りアクチュエータ(不図示)の原点出し処理のことである。
【0080】
一方、初期化処理2は、まず上述したような絞りアクチュエータの原点出し処理を行った後で、上述したレンズ制御部203内のメモリに記憶していたスリープ状態移行前の絞り位置(制御絞り位置)に、絞り211を駆動制御する処理である。
【0081】
ボディ制御部103は、カメラボディが電源OFF状態であるのかスリープ状態であるのかを認識しており、レンズ制御部203に対して初期化開始指示を送る際に、初期化処理1を行わせるのか初期化処理2を行わせるのかを示す情報(パラメータ)を、レンズ制御部203に送信する。レンズ側制御部203は、このパラメータをふまえて、初期化処理1、初期化処理2の何れか一方の初期化処理を行う。
【0082】
絞り211の初期化処理73の実行が完了すると(すなわち絞り211の初期化が完了し通常の絞り制御が可能な状態になると)、初期化状況送信部221はフラグ61が1の初期化状況情報(データ)60を送信するようになる。ボディ制御部103はフラグ61が1になっている初期化状況情報(データ)60を受信すると、駆動制御部123に、絞り211の制御処理74の実行を開始させる。絞り211の制御処理には例えば、露出制御を行うのに必要な測光情報をボディ内の撮像素子104からの出力に基づいて求める測光演算処理や、現在の絞り211の位置を検出するための絞り位置情報の取得処理が含まれる。またこの絞り211の制御処理に、撮影モードや前述の測光情報(被写体輝度)などの撮影条件に応じて、撮影時に制御すべき撮影絞り値に絞り211を変更制御する撮影絞り制御処理を含ませても良い。
【0083】
他方、レンズ制御部203(初期化制御部223)は絞り211の初期化処理に続いて、ぶれ補正レンズ210cの初期化処理75と、フォーカシングレンズ210bの初期化処理77とを順に実行する。つまり本実施形態におけるレンズ制御部203(初期化制御部223)は、絞り211の初期化処理を他の被駆動部材の初期化処理よりも先に完了させる。これらの各初期化処理が終わる度に、初期化状況送信部221は送信する初期化状況情報(データ)60の各フラグ(フラグ62、フラグ63)を0から1に変化させる。ボディ制御部103はこのような各フラグの変化(すなわち各初期化処理の終了)を検知した後に、駆動制御部123に、それぞれのフラグに応じて初期化処理以外の制御が可能になったと判断された被駆動部材に対する制御処理(例えばぶれ補正レンズ210cの制御処理76(例えば、ぶれ補正レンズのセンタリング処理動作や、それに伴うぶれ補正レンズの位置情報を上述のホットライン通信系では無くコマンドデータ通信系を介して取得する動作など)やフォーカシングレンズ210bの制御処理78(例えばボディ内メモリに記憶されていたフォーカシング処理に関するデータ(例えば直前のフォーカシング処理のために記憶していたピントズレを示すデフォーカス情報)をメモリからクリアする処理など)を実行させる。そして
図7に示した各被駆動部材の初期化処理が完了し、更には各被駆動部材の制御処理の全ての処理が完了すると、カメラ1は撮影開始を指示する操作部材への操作(例えばレリーズ釦への半押し操作/全押し操作)がなされれば、撮影準備動作(フォーカシングレンズ制御、ぶれ補正レンズ制御、絞り制御など)を経て撮影が可能な状態になる。
【0084】
上述のフォーカシングレンズ210bの初期化処理77は、上述の絞り211の初期化処理73と同様に、フォーカシングレンズを駆動するフォーカシングレンズアクチュエータ(不図示)の原点出し処理を含む。この原点出し処理は、予め決められているフォーカシングレンズの基準位置(例えばテレ端位置、またはワイド端位置など)にフォーカシングレンズを駆動する処理である。なおフォーカシングレンズ210bは基準位置に到達したか否かは交換レンズ内に設けられているセンサ(不図示のフォトインタラプタ)によって検出され、レンズ制御部203はこのセンサの検出結果に基づいてフォーカシングレンズアクチュエータを停止制御する。
【0085】
なおフォーカシングレンズ210bの初期化処理77も、上述の絞り211の初期化処理73と同様に、2種類の処理(「電源OFF状態」から電源ON操作(起動)された場合における初期化処理1と、「スリープ状態」からカメラボディを起動する場合における初期化処理2)が存在する。初期化処理1,2の内容は、絞り211の初期化処理73と同様であり、異なっているのは駆動対象が絞り211であるかフォーカシングレンズ210bであるかという点のみであるので、ここでの説明を省略する。
【0086】
一方、上述のぶれ補正レンズ210cの初期化処理75は、ぶれ補正レンズ210cの位置を検出するための位置検出センサの出力を補正するための補正値を算出する処理である。本実施形態では、ぶれ補正レンズ210cの位置検出センサとして低コストのセンサ(例えばホールセンサ)を用いている。このような位置検出センサは、周囲温度の変動によってその出力が変動する。このため周囲温度に関わらず適正な位置検出が行えるように、周囲温度に応じて位置検出センサの出力に補正を施す処理が必要になる。初期化処理75では、この補正処理として、周囲温度に基づいた補正値を算出しておき、レンズ制御部203のメモリ内に記憶しておく。この補正値の記憶処理までが初期化処理75である。そして実際のぶれ補正レンズ210cの位置検出時には、このレンズ制御部203のメモリ内に記憶された補正値に基づいて、ぶれ補正レンズ210cの位置を検出する位置検出センサの出力を補正する。なお周囲温度は、レンズ内の回路基板上に設けられている不図示の温度センサーによって検出される。
【0087】
なお本実施形態における初期化処理75では、ぶれ補正レンズ210cの原点出し処理(ぶれ補正レンズ210cを予め決められた基準位置に駆動する処理、例えばぶれ補正レンズ210cの中心を交換レンズ200の光軸中心に一致せしめるよう駆動する処理)は、省エネのために行なわない。
【0088】
(被駆動状態データの説明)
図8は、被駆動状態情報(データ)の構造を示す図である。被駆動状態情報(データ)は、交換レンズ200が有する複数の被駆動部材の被駆動状態を表す情報(データ)である。被駆動状態送信部222は、所定周期(例えば1ミリ秒)毎に、
図8に示す被駆動状態情報(データ)80をカメラボディ100(被駆動状態受信部122)に送信する。被駆動状態情報(データ)80はホットライン通信により送信される。すなわち被駆動状態情報(データ)80は、レンズ側第2通信部218から第2伝送路を介してボディ側第2通信部118に送信される。被駆動状態送信部222は、全ての被駆動部材の初期化が完了した後に、各被駆動部材の被駆動状態の送信を開始する。つまり、初期化制御部223による各被駆動部材の初期化処理が完了するまでは、被駆動状態情報(データ)80の送信を開始しない。換言すれば、カメラボディ100側の被駆動状態受信部122は、全ての被駆動部材の初期化が完了したことを表す初期化状況情報(データ)60が初期化状況受信部121により受信された後に、上述のホットライン通信系を使って交換レンズ200に対してリクエスト信号を出すことによって、被駆動状態情報(データ)80の受信を開始する。ここで被駆動状態送信部222がカメラボディ100に対して所定周期毎(第2の周期毎)に初期化状況データを送信する仕組みについて述べる。カメラボディ100は交換レンズ200に対して、被駆動状態情報(データ)を要求する信号(リクエスト信号)を第2の周期(例えば1msec)毎に出している。交換レンズの被駆動状態送信部222は、このリクエスト信号に対して準備し被駆動状態情報(データ)を応答する。このような仕組みにより被駆動状態送信部222はカメラボディ100に対して第2の所定周期で被駆動状態情報(データ)を送信する。
【0089】
被駆動状態情報(データ)80は、フォーカシングレンズ210bの位置データ81と、絞り211の開口径データ82と、ぶれ補正レンズ210cの位置データ83とから成る4バイトのデータである。フォーカシングレンズ210bの位置データ81は1バイトの整数であり、至近位置から無限遠位置までの各位置に0~255までの値が対応している。絞り211の開口径データ82も同様に1バイトの整数であり、開放絞り(最大開口径)から最小絞り(最小開口径)までの各位置に0~255の値が対応している。ぶれ補正レンズ210cの位置データ83は1バイトの整数が2つ組み合わさったデータであり、結像光学系210の光軸に垂直な平面におけるぶれ補正レンズ210cの位置が、X軸方向について0~255までの値に、Y軸方向について0~255までの値に、それぞれ対応している。
【0090】
ボディ制御部103は、被駆動状態受信部122により受信された被駆動状態データ80を参照することにより、各被駆動部材の現在の被駆動状態を取得する。そして、ここで得られた被駆動状態に基づいて、駆動制御部123に駆動制御を行わせる。例えば、フォーカシングレンズ210bを駆動させる際に、フォーカシングレンズ210bが目標の位置まで駆動したか否かを、被駆動状態データ80を参照することにより判定する。
【0091】
(電源オン操作から撮影可能になるまでの処理の説明)
図9は、電源オン操作から撮影可能になるまでの処理を示すフローチャートである。
図9の左側にはボディ制御部103が実行する処理を、
図9の右側にはレンズ制御部203が実行する処理を、それぞれ示す。まずボディ制御部103により実行される処理から説明する。
【0092】
ステップS100ではボディ制御部103が、ユーザによる電源オン操作を受け付ける。ステップS110ではボディ制御部103が、ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118の初期化処理を実行する。ステップS120ではボディ制御部103が、保持部102の接点を介して交換レンズ200に所定のレンズ起動信号を出力する。ステップS130ではボディ制御部103が、ボディ側第1通信部117に所定の初期化開始指示を送信させる。
【0093】
ステップS140ではボディ制御部103が、ステップS130の実行から所定期間(例えば16ミリ秒)が経過したか否かを判定する。ボディ制御部103は所定期間が経過するまでステップS140の処理を繰り返す。所定期間が経過していた場合には、処理はステップS150に進む。ステップS150ではボディ制御部103が、交換レンズ200に初期化状況要求コマンド(データ)50を送信する。ステップS160では初期化状況受信部121が、初期化状況情報(データ)60を受信する。ステップS170ではボディ制御部103がステップS160において受信された初期化状況情報(データ)60を参照し、前回受信した初期化状況情報(データ)60から初期化状況が変化したか否かを判定する。初期化状況が変化していない場合、処理はステップS140に進み、ステップS170の実行から所定期間が経過するのを待つ。他方、初期化状況が変化していた場合にはステップS180に進む。ステップS180では駆動制御部123が、初期化状況が変化した被駆動部材に対して所定の制御処理を実行する。ステップS190ではボディ制御部103が、全ての被駆動部材の初期化が完了しているか否かを判定する。未初期化の被駆動部材が残っている場合にはステップS140に戻り、ステップS190の実行から所定期間が経過するのを待つ。他方、全ての被駆動部材の初期化が完了していた場合にはステップS200に進み、カメラボディ100を撮影可能状態に移行させる。
【0094】
次に、レンズ制御部203により実行される処理を説明する。ステップS210では、カメラボディ100からレンズ起動信号が入力される。レンズ制御部203はこの信号に応じて起動処理を開始する。ステップS220では初期化制御部223が、レンズ側第1通信部217およびレンズ側第2通信部218の初期化処理を実行する。ステップS230ではレンズ制御部203が、カメラボディ100から初期化開始指示を受信する。ステップS240では初期化制御部223が、各被駆動部材の初期化処理を順次開始する。初期化制御部223はまず絞り211の初期化処理を開始し、それが完了すると他の被駆動部材の初期化処理を順次開始する。前述の通り、初期化制御部223は初期化処理を同時に1つだけ実行する。
【0095】
ステップS250ではレンズ制御部203が、カメラボディ100から初期化状況要求コマンド(データ)50を受信したか否かを判定する。レンズ制御部203は初期化状況要求コマンド(データ)50を受信するまでステップS250を繰り返す。初期化状況要求コマンド(データ)50を受信すると、処理はステップS260に進む。ステップS260では初期化状況送信部221が、初期化状況情報(データ)60をカメラボディ100に送信する。ステップS270ではレンズ制御部203が、直前にステップS260で送信された初期化状況情報(データ)60の各フラグが全て1であったか否かを判定する。ステップS270で否定判定がなされた場合には、処理はステップS250に進む。他方、全フラグが1の初期化状況情報(データ)60を送信していた場合には、処理はステップS280に進む。ステップS280ではレンズ制御部203が、交換レンズ200を撮影可能状態に移行させる。
【0096】
上述した第1の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。(1)初期化制御部223は、複数の被駆動部材の各々に対し、所定の初期化処理を実行する。初期化状況送信部221は、複数の被駆動部材の各々について初期化処理の実行が完了したか未完了かを表す初期化状況情報(データ)をカメラボディ100に送信する。このように交換レンズ200からカメラボディ100に対して初期化状況を送信するようにしたので、交換レンズの初期化完了の検知に要する時間を短縮することができる。
【0097】
また本実施形態によれば、初期化状況情報(データ)を第1伝送路(コマンドデータ通信系)を介して、予め決められた所定周期(カメラボディ側から第1の所定周期で発せられる要求コマンドに応じる形であって、例えば16msec)毎にカメラボディ100に送信する。このように交換レンズ200からカメラボディ100に対して、ある所定周期で定期的に初期化状況を送信するようにしたので、交換レンズの初期化完了の検知に要する時間を短縮することができる。
【0098】
また被駆動状態送信部222は、各被駆動部材の初期化が完了した後に、被駆動部材の被駆動状態を表す被駆動状態データを、第2伝送路(ホットライン通信系)を介して所定周期毎にカメラボディ100に送信する。このようにしたので、カメラボディ100は、初期化処理の完了直後から被駆動部材の状態をいち早く知ることができる。
【0099】
(2)初期化制御部223は、絞り211の初期化処理を他の被駆動部材の初期化処理よりも先に完了させる。本実施形態における絞り部材の初期化処理は、絞り開放(初期化処理1)またはスリープ前に記憶されていた撮影絞り開口(初期化処理2)の何れかに絞り211を設定する処理であり、状況に応じた測光準備状態(開放測光または撮影絞りへの絞り込み測光)に絞り211を初期設定する。このようにしたので、他の被駆動部材の初期化を待たずして、カメラボディ側は測光動作の準備(上述した撮像素子出力に基づく測光演算処理など)に取り掛かることができ、撮影可能状態になるまでの時間を短縮することができる。
【0100】
(3)交換レンズ200の初期化状況送信部221は、複数の被駆動部材の初期化状況を毎回示す初期化状況データ60をカメラボディ100に所定周期で送信する。このようにしたので、カメラボディ100は各被駆動部材毎の状況を毎回確実に把握することができ、それに応じたボディ側の準備動作を行うことができ、その結果、撮影可能状態になるまでの時間を短縮することができる。
【0101】
(4)初期化制御部223は、複数の被駆動部材の初期化処理を所定の順序で同時に1つだけ実行する。このようにしたので、各被駆動部材の初期化処理の実行完了順序を常に一定に保つことが可能となり、制御が容易になる。
【0102】
(5)被駆動状態受信部122は、被駆動部材の初期化が完了したことを表す初期化状況データ60が初期化状況受信部121により受信された後に、当該被駆動部材の被駆動状態の受信を開始する。このようにしたので、未初期化の被駆動部材から不正確な被駆動状態を受信することがない。
【0103】
(6)駆動制御部123は、初期化状況データ60により初期化処理の実行が未完了であることが表された被駆動部材には、所定の制御処理を実行しない。このようにしたので、未初期化の被駆動部材に対して、不適切な駆動制御を行ってしまうことがない。
【0104】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るカメラシステムは、第1の実施の形態に係るカメラシステムと同様の構成を有する。ただし、第1の実施の形態と比べて、初期化制御部223が複数の被駆動部材の初期化処理を実行する順序(手順)が異なる。なお本第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同内容を示す場合には同一符号を付している。
【0105】
図10は、電源オン後の初期化処理の実行順序を表すタイムチャートである。本実施形態に係る初期化制御部223は、各通信部の初期化処理72を実行した後に、複数の被駆動部材の初期化処理を並列的に実行する。すなわち、絞り211の初期化処理73と、ぶれ補正レンズ210cの初期化処理75と、フォーカシングレンズ210bの初期化処理77と、を同時に実行開始する。これらの各初期化処理は実行に要する時間がそれぞれ異なっており、ボディ制御部103は、初期化が完了した被駆動部材から順に、当該被駆動部材の制御処理の実行を開始する。例えば
図10に示すように、最初に絞り初期化処理73が終了すると、これに応じて絞り制御処理74の実行を開始する。そして、絞り制御処理74の実行が完了すると、他の被駆動部材の初期化処理が実行完了するまで待機する。そして、初期化処理の実行が完了する都度、対応する制御処理(例えばぶれ補正レンズ制御処理76やフォーカシングレンズ制御処理78)を実行する。
【0106】
なお上記初期化処理73,77として、2種類の処理(「電源OFF状態」からの起動時の処理と、「スリープ状態」からの起動時の処理)とが存在することは、上記第1の実施形態と同様である。
【0107】
また本第2実施形態の動作フローは、
図9に示した動作フローとほぼ同じである。
図9において、第1実施形態における動作フローと相違する点は、第2実施形態では、ステップS240において初期化制御部223が各被駆動部材の初期化処理を「同時に開始する」点である。
【0108】
上述した第2の実施の形態によるカメラシステムによれば、第1の実施の形態によるカメラシステムで得られる作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
(1)初期化制御部223は、複数の被駆動部材の初期化処理を同時に実行開始する。これにより複数の初期化処理を並行処理できるので、全ての初期化の完了に要する時間も短縮することができ、それにともない撮影可能状態になるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0109】
(2)初期化制御部223は、複数の被駆動部材の初期化処理を同時に実行開始する。そして交換レンズ200は、各被駆動部材ごとに初期化処理が完了のたびに、その旨を示す情報をカメラボディ側に送信する。このようにしたので、初期化処理の完了した被駆動部材をカメラボディはいち早く知ることができ、それにともないカメラボディ側の撮影準備動作に順次着手でき、撮影可能状態になるまでの時間を更に短縮することが可能となる。
【0110】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0111】
(変形例1)
上述した各実施形態において、被駆動状態送信部222は、全ての被駆動部材の初期化が完了するまで被駆動状態を送信していなかった。これを、初期化が完了した被駆動部材から被駆動状態を順次送信するようにしてもよい。例えば、被駆動状態データ80を可変長のデータとし、絞り211の開口径に関する情報のみを送信可能にして、絞り211の初期化が完了した後に、絞り211の被駆動状態の送信が開始されるようにしてもよい。
【0112】
(変形例2)
被駆動部材は、上述した絞り、フォーカシングレンズ、ぶれ補正レンズに限定されない。また、被駆動部材の初期化順序は、上述した各実施の形態において示した順序に限定されない。
【0113】
(変形例3)
上記実施形態の交換レンズ200は(
図8)では、ホットライン通信系を用いてカメラボディ側に通信する被駆動部材の被駆動状態情報として、複数の被駆動部財の被駆動状態情報を送信するように構成している。しかしながら本発明は複数の被駆動部材の状態情報を送信するものに限られず、いずれか1つの被駆動部材の被駆動状態を示す情報を送信するように構成しても良い。
【0114】
(変形例4)
上記各実施形態では、交換レンズ200は、コマンドデータ通信系を用いて、第1の所定周期で初期化状況データ60をカメラボディ100に送信するように構成されている。しかしながら交換レンズ200側での初期化処理が完了するまでは、その初期化処理の状態変化をカメラボディ側にいち早く知らせるように工夫しても良い。例えば、交換レンズ200の全ての被駆動部材の初期化処理が完了するまでは、コマンドデータ通信系の通信周期を早めるように構成しても良い。具体的には、上述したカメラボディ100側および交換レンズ200側におけるコマンドデータ通信系の通信周期を、上述の第1の所定周期よりも早い周期に制御するように構成しても良い。これにより、カメラボディ100は、各被駆動部材の初期化処理の完了をいち早く知ることができ、撮影準備および撮影を行うまでの期間を短縮することができる。
【0115】
(変形例5)
上記各実施形態におけるぶれ補正レンズ210cの初期化処理75において、ぶれ補正レンズ210cを、基準位置に駆動する処理(例えばぶれ補正レンズ210cの中心位置を撮影レンズ200の光軸中心に一致させるように、ぶれ補正レンズ210cを駆動する処理)を行うように構成しても良い。例えばカメラボディ側の電池残量が十分ある場合には、このようなぶれ補正レンズ210cの原点出し処理を、初期化処理75に加えるようにしても良い。
【0116】
(変形例6)
上記第2の実施形態では、3つの初期化処理73,75,77を同時に開始するようにしているがこれに限らず、何れか2つの初期化処理だけを同時に開始し、残りの初期化処理を異なるタイミングで開始するように構成しても良い。
【0117】
(変形例7)
上記実施形態では、それぞれの初期化処理の状態が変化するたびに(初期化処理を終了するたびに)、その旨を示す情報をカメラボディ側に送るように構成しているが、これと別の手法も可能である。例えば、初期化対象の被駆動部材の全ての初期化処理が完了するまでは、交換レンズ側は、初期化処理の全てが終了したわけではないことを示す情報(例えば全ての初期化処理は未完了であることを示す情報、一例として
図6の初期化状況データ60のフラグ62~63が全て「0」であるデータ)を送るように構成しておく。そして、全ての被駆動部材の初期化処理が完了すると、その旨を示す情報(全ての初期化処理が完了したことを示す情報、具体的には
図6の初期化状況データ60のフラグ62~63が全て「1」であるデータ)を送るように構成しておく。このような構成によっても、交換レンズは、全ての初期化処理が完了した時点で、その旨をカメラボディに伝えることができる。
【0118】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1…カメラ、100…カメラボディ、101…レンズマウント、102…保持部、103…ボディ制御部、117…ボディ側第1通信部、118…ボディ側第2通信部、121…初期化状況受信部、122…被駆動状態受信部、123…駆動制御部、200…交換レンズ、201…レンズマウント、202…保持部、203…レンズ制御部、210…結像光学系、210b…フォーカシングレンズ、210c…ぶれ補正レンズ、211…絞り、212…フォーカシングレンズ駆動部、213…ぶれ補正レンズ駆動部、214…絞り駆動部、217…レンズ側第1通信部、218…レンズ側第2通信部、221…初期化状況送信部、222…被駆動状態送信部、223…初期化制御部