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特許7136321触媒、触媒の製造方法、並びに不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】触媒、触媒の製造方法、並びに不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/04 20060101AFI20220906BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220906BHJP
   C07C 57/04 20060101ALI20220906BHJP
   C07C 51/353 20060101ALI20220906BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20220906BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20220906BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
B01J23/04 Z
B01J37/02 101D
C07C57/04
C07C51/353
C07C67/343
C07C69/54 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021505105
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010570
(87)【国際公開番号】W WO2020184616
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2019044999
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川邊 徳道
(72)【発明者】
【氏名】林 晃央
(72)【発明者】
【氏名】二宮 航
(72)【発明者】
【氏名】藤末 昌也
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-205842(JP,A)
【文献】特開2011-224536(JP,A)
【文献】特開2009-126846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 57/04
C07C 51/353
C07C 67/343
C07C 69/54
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール基を有する担体に、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウムから選択される少なくとも1種の第1の金属元素と、アルカリ金属元素と、が担持して構成される不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル製造用触媒であって、
前記第1の金属元素の化合物の平均粒子径が0.4nm以上50nm以下であり、
前記第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比をX、触媒のBET比表面積をY(m/g)、触媒が有する単位面積当たりのシラノール基数(個/nm)をZとした場合、下記式(1)を満たす触媒。
1.0×10-21(g/個)≦X/(Y×Z)<10.8×10-21(g/個)・・・式(1)
【請求項2】
前記第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比Xが、1.3以上6.0以下である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記アルカリ金属元素がセシウムである、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記第1の金属元素がジルコニウムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の触媒の存在下で、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、ホルムアルデヒドと、を反応させて、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを製造する方法。
【請求項6】
担体に、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の第1の金属元素と、アルカリ金属元素と、が担持された不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法であって、
担体に、前記第1の金属元素の無機塩を含む溶液又は分散液を含浸させて第1の固形分を得る工程と、
該第1の固形分に、アルカリ金属塩を含む溶液又は分散液を含浸させて第2の固形分を得る工程を有し、
前記第1の金属元素の無機塩の平均粒子径が0.4nm以上50nm以下であり、
前記第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比をX’、前記担体のBET比表面積をY’(m/g)、前記担体が有する単位面積あたりのシラノール基数Z’(個/nm)とした場合、下記式(2)を満たす触媒の製造方法。
1.5×10-21 (g/個)≦X’/(Y’×Z’)≦17.0×10-21(g/個)・・・(2)
【請求項7】
第1の金属元素の無機塩を含む溶液又は分散液の溶媒が、アルコールを含有する、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の金属元素がジルコニウムである、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属元素がセシウムである、請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、触媒の製造方法、並びに不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸メチルは様々な用途で用いられている。メタクリル酸メチルは、ACH法、C4原料を用いた直接酸化法等、多数の製造法が検討されてきたが、近年、アルファ法と呼ばれる製造方法が注目されている。一般的に、アルファ法とは、前段反応としてエチレンを原料としてプロピオン酸メチルを製造し、後段反応として該プロピオン酸メチルのアルドール縮合反応を行うことによりメタクリル酸メチルを製造する方法であり、特に後段反応におけるメタクリル酸メチルの選択性及び収率を向上するために、様々な触媒が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルファ法における後段反応の触媒として、アルカリ金属を1~10質量%含有し、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム及びハフニウムから選択される少なくとも1つの調節剤元素の化合物を特定量含有する多孔質の高表面積シリカを含む触媒を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-511336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような工業的なプロセスにおいて、高い生産性で目的化合物であるメタクリル酸メチルを製造するには、目的生成物を高選択率及び高収率で製造することが望まれる。しかしながら、特許文献1に記載の触媒を用いても、メタクリル酸メチルの選択率が十分ではない可能性があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明者らは、特定の触媒を使用することにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を達成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1]シラノール基を有する担体に、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウムから選択される少なくとも1種の第1の金属元素と、アルカリ金属元素と、が担持して構成される触媒であって、
前記第1の金属元素の化合物の平均粒子径が0.4nm以上50nm以下であり、
前記第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比をX、触媒のBET比表面積をY(m/g)、触媒が有する単位面積当たりのシラノール基数(個/nm)をZとした場合、下記式(1)を満たす不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル製造用触媒。
1.0×10-21(g/個)≦X/(Y×Z)<10.8×10-21(g/個) ・・・式(1)
[2]前記第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比Xが、1.3以上6.0以下である[1]に記載の触媒。
[3]前記アルカリ金属元素がセシウムである、[1]又は[2]に記載の触媒。
[4]前記第1の金属元素がジルコニウムである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の触媒
[5][1]~[]のいずれか1項に記載の触媒の存在下で、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、ホルムアルデヒドと、を反応させて、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを製造する方法。
]担体に、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の第1の金属元素と、アルカリ金属元素と、が担持された不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法であって、
担体に、前記第1の金属元素の無機塩を含む溶液又は分散液を含浸させて第1の固形分を得る工程と、
該第1の固形分に、アルカリ金属塩を含む溶液又は分散液を含浸させて第2の固形分を得る工程を有し、
前記第1の金属元素の無機塩の平均粒子径が0.4nm以上50nm以下であり、
前記第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比をX’、前記担体のBET比表面積をY’(m/g)、前記担体が有する単位面積あたりのシラノール基数Z’(個/nm)とした場合、下記式(2)を満たす触媒の製造方法。
1.5×10-21 (g/個)≦X’/(Y’×Z’)≦17.0×10-21(g/個)・・・(2)
]前第1の金属元素の無機塩を含む溶液又は分散液の溶媒が、アルコールを含有する、[]に記載の製造方法。
]前記第1の金属元素がジルコニウムである、[]又は[]に記載の製造方法。
]前記アルカリ金属元素がセシウムである、[]~[]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、ホルムアルデヒドの反応において、高選択率で不飽和カルボン及び/又は不飽和カルボン酸エステルの製造を可能とする触媒、及び該触媒の製造方法を得ることができる。また、高選択率でカルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態として、触媒の存在下で、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、ホルムアルデヒドと、のアルドール縮合反応により、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを製造する方法について説明する。
【0010】
<触媒>
本実施形態に係る触媒は、シラノール基を有する担体に、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウムから選択される少なくとも1種の第1の金属元素と、アルカリ金属元素とが担持した構成を有し、該第1の金属元素を含む化合物の平均粒子径が0.4nm以上50nm以下であり、該第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比をX、前記触媒のBET比表面積(m/g)をY、前記触媒が有する単位面積当たりのシラノール基数(個/nm)をZとした場合、下記式(1)を満たす。
【0011】
0.9×10-21(g/個)≦X/(Y×Z)<10.8×10-21(g/個) ・・・式(1)
【0012】
なお、上記式(1)で用いられるアルカリ金属元素のモル数は、触媒に含まれる全てのアルカリ金属元素のモル数を意味するものとする。すなわち、アルカリ金属元素を2種以上使用する場合、2種以上のアルカリ金属元素の総モル数を意味するものとする。同様に、第1の金属元素のモル数も、2種以上の第1の金属元素を使用する場合、2種以上の第1の金属元素の総モル数を意味するものとする。
【0013】
また、上記式(1)における、第1の金属元素に対するアルカリ金属元素のモル比、担体表面のシラノール基の数、BET比表面積は、それぞれ後述の実施例に記載された方法により算出することができる。
【0014】
上記式(1)を満たすことにより、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、ホルムアルデヒドと、の反応において、不飽和カルボン酸及び/不飽和カルボン酸エステルを高選択率で製造できるメカニズムは明らかではないが、上記式(1)を満たすことにより、第1の金属元素及びアルカリ金属元素が触媒表面上で適度に高分散化しているために、高分散化により、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルの選択率を向上させることができると考えられる。
【0015】
触媒成分である、アルカリ金属元素は、特段の制限はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム又はルビジウムが好ましく、なかでも、カリウム、ルビジウム又はセシウムであることがさらに好ましく、セシウムであることが特に好ましい。なお、アルカリ金属元素は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0016】
第1の金属元素は、上述の通り、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウムから選択されるが、なかでも、ホウ素又はジルコニウムが好ましく、ジルコニウムが特に好ましい。なお、これらの金属元素は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0017】
上記式(1)のなかでも、X/(Y×Z)の値は、目的物の収率向上のために1.0×10-21 (g/個)以上であることがさらに好ましく、1.5×10-21 (g/個)以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、10.7×10-21(g/個)以下であることがさらに好ましく、10.5×10-21 (g/個)以下であることが特に好ましい。
【0018】
触媒を構成する第1の金属元素を含む化合物の平均粒子径は上述のなかでも、0.5nm以上であることが好ましく、0.8nm以上であることが特に好ましく、一方、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、8nm以下であることがさらに好ましく、6nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることがさらに好ましく、4nm以下であることが特に好ましく、3nm以下が特に好ましい。
【0019】
上記式(1)を満たす限りにおいて特段の制限はないが、第1の金属元素に対する前記アルカリ金属元素のモル比Xは、目的物の収率向上のために、1.3以上が好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.7以上であることがさらに好ましく、1.9以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、6.0以下であることが好ましく、5.5以下であることがさらに好ましく、5.0以下であることが特に好ましい。
【0020】
触媒成分及び担体の総質量に対するアルカリ金属元素量は、上記式(1)を満たす限りにおいて特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、4質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましく、9質量%以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、25質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましく、14質量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
触媒成分及び担体の総質量に対する第1の金属元素量は、上記式(1)を満たす限りにおいて特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、4質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
担体に担持される触媒成分は上記以外の金属元素を含有していてもよい。例えば、アルミニウム、チタニウム、鉄等が挙げられる。また、担体に担持される触媒成分総質量に対する当該元素の割合は、目的物の収率低下抑制のために、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.2質量%以下であることが特に好ましい。
【0023】
担体に担持される触媒成分は上記の金属元素以外に他の元素を含んで構成されていてもよい。例えば、触媒成分の製造に由来する元素を含んで構成されていてもよい。
【0024】
担体は、触媒成分を担持することが可能であり、表面にシラノール基を有する限りにおいて特段の制限はないが、具体的には、酸化珪素を含有する多孔質の無機化合物担体であることが好ましい。
【0025】
担体を構成する材料としては、特段の制限はないが、好ましくは、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、シリカを含有するチタニア、又はシリカを含有するジルコニアが挙げられる。これらのなかでも、シリカが好ましい。なお、該担体は市販品を使用することができる。例えば、商品名:CARiACT(富士シリシア化学(株)社製)等が挙げられる。
【0026】
触媒の単位面積当たりのシラノール基の数Zは、上記式(1)を満たす限りにおいて特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、0.5個/nm以上であることが好ましく、0.8個/nm以上であることがさらに好ましく、2.5個/nm以上であることがさらに好ましく、4個/nm以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、20個/nm以下であることが好ましく、17個/nm以下であることがさらに好ましく、15個/nm以下であることがさらに好ましく、13個/nm以下であることが特に好ましい。
【0027】
触媒のBET比表面積Yは、上記式(1)を満たす限りにおいて特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、50m/g以上であることが好ましく、70m/g以上であることがさらに好ましく、90m/g以上であることがさらに好ましく、100m/g以上であることが特に好ましく、一方、600m/g以下であることが好ましく、500m/g以下であることがさらに好ましく、350m/g以下であることが特に好ましい。
【0028】
担体の形状は特段の制限はなく、粉末状、粒状、ペレット状、又はタブレット状が挙げられる。
【0029】
担体の平均粒径は、特段の制限はないが、反応中の、圧力損失抑制と副生成物抑制のために、500μm以上であることが好ましく、1mm以上であることがさらに好ましく、1.5mm以上であることが特に好ましく、一方、副生成物抑制のために、10mm以下であることが好ましく、6mm以下であることがさらに好ましく、5mm以下であることが特に好ましい。
【0030】
担体が有する平均細孔径は、特段の制限はないが、副生成物抑制のために、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがさらに好ましく、10nm以上であることが特に好ましく、一方、比表面積を確保するために、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。
【0031】
触媒の形状は特段の制限はなく、球状、柱状又はリング形状などが挙げられる。なお、触媒の平均体積は、特段の制限はないが、0.06mm以上550mm以下であることが好ましい。
【0032】
触媒の製造方法は、特段の制限はなく、担体に金属元素を担持させることにより製造することができる。但し、触媒の劣化を防ぐという観点からは、少なくとも、溶液又は分散液中の第1の金属元素の無機塩の平均粒子径が0.4nm以上、50nm以下の状態で担体に含浸させる工程を有して触媒を製造することが好ましい。以下、好ましい形態として下記の第1の工程~第4の工程により触媒を製造する例を示す。
【0033】
第1の工程:第1の金属元素の無機塩を第1の溶媒に溶解又は分散させて、溶液又は分散液を得る工程。
【0034】
第2の工程:第1の工程により得られた溶液又は分散液を担体に含浸させて第1の固形分を得る工程。
【0035】
第3の工程:アルカリ金属塩を第2の溶媒に溶解又は分散させて、溶液又は分散液を得る工程。
【0036】
第4の工程:第2の工程により得られた第1の固形分と、第3の工程により得られた溶液又は分散液と、を混合して、第2の固形分を得る工程。
【0037】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0038】
<第1の工程>
第1の金属元素の無機塩を構成する第1の金属元素は、上述した第1の金属元素が挙げられる。
【0039】
第1の金属元素の無機塩は、炭化水素を含まない無機化合物で、特段の制限はなく、例えば、第1の金属元素の、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物又はハロゲン化物を単独で、または組み合わせて使用することができる。例えば、第1金属元素がジルコニウムの場合、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、過塩素酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等が挙げられる。第1金属元素がホウ素の場合、酸化ホウ素等が挙げられる。第1金属元素がマグネシウムの場合、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。第1金属元素がハフニウムの場合、硝酸ハフニウム、硫酸ハフニウム、過塩素酸ハフニウム、酢酸ハフニウム等が挙げられる。
【0040】
第1の溶媒は、特段の制限はなく、水又有機溶媒が挙げられる。なかでも、第1の金属元素の無機塩の分散性を向上するために、有機溶媒としてはアルコールがより好ましい。アルコールとしては炭素数1以上6以下のアルコールが好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0041】
溶媒100mlに対する第1の金属元素の無機塩の量は特段の制限はないが、所望の第1の金属元素を担持するために、2mmol以上であることが好ましく、5mmol以上であることがさらに好ましく、10mmol以上であることが特に好ましく、一方、担持量を抑制するために、60mmol以下が好ましく、50mmol以下であることがさらに好ましく、40mmol以下であることが特に好ましい。
【0042】
また、第1の溶媒に第1の金属元素の無機塩を溶解又は分散させる際は、第1の溶媒を撹拌してもよい。また、得られた溶液又は分散液は静置しておくことが好ましい。静置時間は、特段の制限はないが、静置時間が長ければ、溶液又は分散液中の第1の金属元素の無機塩の平均粒子径が小さくなる傾向がある。特に本発明においては、後述するように、第2の工程時において担体に溶液または分散液を含浸させる際には特定の平均粒子径を有していることが好ましいために、所望の粒子径が得られるまで静置しておくことが好ましい。具体的に、静置時間は、30分以上であることが好ましく、2時間以上であることがさらに好ましく、4時間以上であることがさらに好ましく、16時間以上であることが特に好ましい。一方、100時間以下であることが好ましく、80時間以下であることがさらに好ましく、50時間以下であることが特に好ましい。
【0043】
<第2の工程>
担体は、上述の担体を使用することができる。
【0044】
第1の溶媒を担体に含浸させる手法は、特段の制限はなく、公知の方法により用いることができる。例えば、担体の細孔容積を満たす第1の溶媒を用いるポアフィリング法や、担体を第1の溶媒に浸漬する浸漬法などがある。
【0045】
第1の溶媒に対する担体の量は、特段の制限はないが、第1の金属元素を均一に担持するために、担体に対する第1の溶媒の比が、担体の細孔容積の0.9倍以上であることが好ましく、一方、溶媒の使用量削減のために、担体の細孔容積の10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることが特に好ましい。
【0046】
第1の金属元素の無機塩が分散した第1の溶媒を担体に含浸させる際の第1の金属元素の無機塩の平均粒子径は、良好な触媒特性を得るために、上述の通り、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下がさらに好ましく、3nm以下がさらに好ましく、2nm以下が特に好ましい。一方、第1の金属元素の無機塩の平均粒子径を小さくしすぎても、反応時の目的生成物の選択率の変化が極めて小さいために、目的生成物の選択率及び触媒の生産性との両立を考えた場合、第1の金属元素の無機塩の平均粒子径は、0.4nm以上であることが好ましく、0.5nm以上であることがさらに好ましく、0.8nm以上であることが特に好ましい。なお、無機塩の平均粒子径は、動的光散乱法により波長633nmのレーザー光を用いて0.1mol/lの無機塩溶液を測定し、体積分布を算出して得られた値とする。なお、第一の金属元素の無機塩の平均粒子径が上記の範囲にあることにより、目的生成物の選択率が向上する理由は明らかではないが、このような方法により触媒を製造した場合、第1の金属元素が担体上で高い分散性を持つためであると考えられる。
【0047】
担体の含浸時間は特段の制限はないが、第1の金属元素を担持するために、15分以上、50時間以下であることが好ましい。
【0048】
第1の固形分を得る際には、第1の溶媒を除去することが好ましい。第1の溶媒の除去は公知の方法により行うことができる。例えば、ロータリーエパポレーターを用いて第1の溶媒を除去することができる。また、例えば、固形物と第1の溶媒とを濾過により分離することで第1の溶媒を除去することができる。
【0049】
また、得られた第1の固形分は乾燥又は焼成することが好ましいが必ずしも行う必要はない。乾燥又は焼成により、第1の固形分に残存していた第1の溶媒を除去することができる。これらの加熱温度は50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、400℃以上が特に好ましく、一方、800℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、600℃以下が特に好ましい。
【0050】
加熱時間は特段の制限はないが、上記のなかで、特に加熱温度が400℃以上800℃以下の場合、15分以上であることが好ましく、30分以上であることがさらに好ましく、1時間以上であることが特に好ましく、一方、100時間以下であることが好ましく、50時間以下であることが特に好ましい。
【0051】
これまでの工程により、第1の金属元素は化合物の状態で存在することになるが、第1の金属元素からなる化合物の平均粒子径は、良好な触媒特性を得るために、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、8nm以下であることがさらに好ましく、6nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることがさらに好ましく、4nm以下であることがさらに好ましく、3nm以下が特に好ましい。一方、第1の金属元素からなる化合物の平均粒子径を小さくしすぎても、反応時の目的生成物の選択率及び収率の変化が極めて小さいために、目的生成物の選択率及び触媒の生産性との両立を考えた場合、第1の金属元素からなる化合物の平均粒子径は、0.4nm以上であることがより好ましく、0.5nm以上であることがさらに好ましく、0.8nm以上であることが特に好ましい。第1の金属元素からなる化合物の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて、固形分の300nm以下の薄片を観察して得られる画像から粒子径を算出することができる。なお、第1の金属元素からなる化合物の具体的な組成は明らかではないが、第1の金属元素の無機塩、第1の金属元素の酸化物、担体と第1との金属元素との複合酸化物などが考えられる。第1の金属元素からなる化合物無機塩の平均粒子径が上記の範囲にあることにより、触媒の劣化が抑制される理由は明らかではないが、第1の金属元素が担体上で高い分散性を持つためであると考えられる。
【0052】
なお、担体のBET比表面積Y及びシラノール基数Zの値は、触媒製造時に変化する傾向があるため、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、ホルムアルデヒドと、の反応において、不飽和カルボン酸及び/不飽和カルボン酸エステルを選択率向上する触媒を製造するために、第1の金属元素に対するアルカリ金属元素のモル比をX’とし、該第2の工程において、第1の工程により得られた溶液又は分散液に担体を含浸させる際の担体のBET比表面積をY’(m/g)、該担体が有する単位面積当たりのシラノール基数をZ’(個/nm)とした場合は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0053】
1.5×10-21 (g/個)≦X’/(Y’×Z’)≦17.0×10-21(g/個) ・・・式(2)
【0054】
なお、触媒製造時に使用する第1の金属元素に対するアルカリ金属元素のモル比をX’は、通常、上記式(1)中のXと同じ値となる。
【0055】
なお、上記式(2)において、X’/(Y’×Z’)の値は、目的物の収率向上のために、2.0×10-21(g/個)以上であることがさらに好ましく、2.3×10-21 (g/個)以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、15.0×10-21(g/個)以下であることがさらに好ましく、10.0×10-21 (g/個)以下であることが特に好ましい。
【0056】
第1の金属元素を含有する溶液又は分散液を担体に含浸させる際の担体の担体のBET比表面積Y’(m/g)は、上記式(1)を満たす限りにおいて特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、50m/g以上であることが好ましく、60m/g以上であることがさらに好ましく、70m/g以上であることがさらに好ましく、90m/g以上であることがさらに好ましく、100m/g以上であることが特に好ましく、一方、600m/g以下であることが好ましく、500m/g以下であることがさらに好ましく、350m/g以下であることがさらに好ましく、300m/g以下であることが特に好ましい。
【0057】
第1の金属元素を含有する溶液又は分散液を担体に含浸させる際の担体の担体表面の単位面積当たりのシラノール基の数Z’(個/nm)は、上記式(2)を満たす限りにおいて特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、0.5個/nm以上であることが好ましく、0.8個/nm以上であることがさらに好ましく、2.5個/nm以上であることが好ましく、4個/nm以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、15個/nm以下であることが好ましく、13個/nm以下であることがさらに好ましく、11個/nm以下であることが特に好ましい。
【0058】
なお、X’、Y’及びZ’以外については、所望の触媒が得られるように適宜調整すればよい。
【0059】
<第3の工程>
アルカリ金属元素は上述のアルカリ金属元素が挙げられる。
【0060】
アルカリ金属塩は、特段の制限はなく、アルカリ金属元素の、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、ハロゲン化物等を単独で、または組み合わせて使用することができる。例えば、アルカリ金属元素がセシウムの場合、炭酸セシウム、重炭酸セシウム、硝酸セシウム、硫酸セシウム等が挙げられる。アルカリ金属元素がリチウムの場合、炭酸リチウム、硝酸リチウム、等が挙げられる。アルカリ金属元素がナトリウムの場合、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルカリ金属元素がカリウムの場合、炭酸カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム等が挙げられる。アルカリ金属元素がルビジウムの場合、炭酸ルビジウム、硝酸ルビジウム、硫酸ルビジウム等が挙げられる。
【0061】
第2の溶媒は、特段の制限はなく、水又有機溶媒が挙げられる。なかでも、アルカリ金属塩の分散性を向上するために、有機溶媒としてはアルコールが好ましい。アルコールとしては炭素数1以上6以下のアルコールが好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0062】
溶媒100mlに対するアルカリ金属塩の量は特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、6mmol以上であることが好ましく、14mmol以上であることがさらに好ましく、25mmol以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、60mmol以下が好ましく、50mmol以下であることがさらに好ましく、40mmol以下であることが特に好ましい。
【0063】
また、第2の溶媒にアルカリ金属塩を溶解又は分散させる際は、第2の溶媒を撹拌してもよい。また、得られた溶液又は分散液は静置しておくことが好ましい。静置時間は、特段の制限はないが、静置時間が長ければ、溶液又は分散液中のアルカリ金属塩の平均粒子径が小さくなる傾向がある。具体的に、静置時間は、15分以上であることが好ましく、50時間以下であることが好ましい。
【0064】
なお、第3の工程は、第2の工程前に行ってもよいし、第2の工程後に行ってもよい。
【0065】
<第4の工程>
第2の工程により得た第1の固形分と、第3の工程により得た溶液又は分散液と、の混合方法は特段の制限はないが、第2の工程により得た第1の固形分を第3の工程により得た溶液又は分散液に含浸させることが好ましい。
【0066】
第2の溶媒を担体に含浸させる手法は、特段の制限はなく、公知の方法により用いることができる。例えば、担体の細孔容積を満たす第2の溶媒を用いるポアフィリング法や、担体を第2の溶媒に浸漬する浸漬法などがある。
【0067】
該溶液又は分散液に対する第1の固形分量は特段の制限はないが、アルカリ金属を均一に担持するために、第1の固形分に対する該溶液又は分散液の比が、担体の細孔容積の0.9倍以上であることが好ましく、一方、溶媒の使用量削減のために、担体の細孔容積の10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることが特に好ましい。
【0068】
含浸時間は特段の制限はないが、アルカリ金属の担持のために、15分以上であることが好ましく、1時間以上であることがさらに好ましく、一方、触媒の生産性向上のために、50時間以下であることが好ましく、30時間以下であることがさらに好ましい。
【0069】
第2の固形分を得る際には、第2の溶媒を除去することが好ましい。第2の溶媒の除去は公知の方法により行うことができる。例えば、ロータリーエパポレーターを用いて第2の溶媒を除去することができる。また、例えば、濾過により第2の溶媒を除去することができる。
【0070】
また、必須ではないが、得られた第2の固形分は乾燥又は焼成することが好ましい。乾燥又は焼成により、第2の固形分に残存していた第2の溶媒を除去することができる。これらの加熱温度は50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、400℃以上が特に好ましく、一方、800℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、600℃以下が特に好ましい。上記のなかで、特に加熱温度が400℃以上800℃以下の場合、15分以上であることが好ましく、30分以上であることがさらに好ましく、1時間以上であることが特に好ましく、一方、100時間以下であることが好ましく、50時間以下であることが特に好ましい。このようにして製造した第2の固形分を触媒として使用することができる。
【0071】
担体は、一般的に吸湿性が高い傾向がある。そのため、担体は、触媒成分を担持させる前に、焼成して水分を除去しておくことが好ましい。また、事前に焼成した担体は、水分を除去した環境中で保管されることが好ましい。すなわち、担体は、デシケーター、乾燥空気、又は乾燥した不活性ガス中で保管されることが好ましいが、これらの手法を必ずしも用いる必要はない。
【0072】
なお、担体に担持されるアルカリ金属元素及び第1の金属元素のモル比は、仕込み量を調整することにより調整すればよい。
【0073】
担体表面の単位面積当たりのシラノール基数を調整する方法に特段の制限はない。例えば、担体中の酸化珪素含有量を多くすれば、担体表面のシラノール基数は増加する傾向があり、担体中の酸化珪素含有量を少なくすれば、担体表面のシラノール基数は減少する傾向がある。
【0074】
また、担体のBET比表面積を調整する方法は特段の制限はないが、担体の細孔割合を多くすれば担体のBET比表面積は大きくなる傾向があり、担体の細孔割合を少なくすれば担体のBET比表面積は小さくなる傾向がある。従って、所望のBET比表面積が得られるような細孔を有する担体を使用すればよい。
【0075】
すなわち、上記式(1)を満たす触媒を製造する際には、上述の通り、アルカリ金属元素と第1の金属元素のモル比、担体表面の単位面積当たりのシラノール基の数、及び担体のBET比表面積のそれぞれを調整すればよい。
【0076】
本実施形態により製造される触媒の存在下で、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルをホルムアルデヒドと反応させることにより、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを製造することができる。すなわち、カルボン酸及び/カルボン酸酸エステルを原料として、これらのカルボン酸及び/又はカルボン酸酸エステルに対応する不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを製造することができる。
【0077】
不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルは、下記式で表されるものが好ましい。
【0078】
-CH-COOR
【0079】
上記式中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。なかでも、本実施形態に係る触媒は、プロピオン酸メチルとホルムアルデヒドとの反応によりメタクリル酸及び/メタクリル酸メチルを製造する方法において特に有効である。
【0080】
カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、ホルムアルデヒドとの反応において使用するカルボン酸及びカルボン酸エステルの総モル数に対するホルムアルデヒドのモル比は、特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、0.05以上、20以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.2以上15以下の範囲である。
【0081】
また、上記反応は、エステルの加水分解の抑制のために、さらにアルコールの存在下で行うことが好ましい。
【0082】
上記反応において、アルコールを使用する場合、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルの総モル数に対するアルコールのモル比は、特段の制限はないが、0.05以上20以下の範囲が好ましく、0.1以上10以下の範囲がさらに好ましい。
【0083】
また、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、上記以外の化合物を含有していてもよい。例えば、水を含有していてもよい。
【0084】
上記反応における反応温度は、特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、100℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、250℃以上であることが特に好ましく、一方、目的物の収率低下抑制のために、400℃以下であることが好ましく、370℃以下であることがさらに好ましく、360℃以下であることが特に好ましい。
【0085】
上記反応における接触時間は、特段の制限はないが、目的物の収率向上のために、0.1秒以上であることが好ましく、1秒以上であることがさらに好ましく、2秒以上であることが特に好ましく、一方、副生成物の抑制のために、100秒以下であることが好ましく、50秒以下であることがさらに好ましく、30秒以下であることが特に好ましい。
【0086】
上記反応の原料となるカルボン酸及び/又はアルカン酸エステルの製造方法は特段の制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、プロピオン酸メチルの場合、エチレンのカルボニル化反応により製造することが好ましい。以下、エチレンのカルボニル化による反応について説明する。
【0087】
当該反応は、触媒の存在下において、エチレンと一酸化炭素とを反応させることによりプロピオン酸メチルを製造する方法である。
【0088】
一酸化炭素に対するエチレン量は、特段の制限はないが、0.01モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがさらに好ましく、一方、100モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0089】
反応温度は特段の制限はないが、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上であることが特に好ましく、一方、250℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがさらに好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0090】
反応時間は、特段の制限はないが、0.1時間以上、100時間以下が好ましい。
【0091】
触媒は、エチレンのカルボニル化反応を可能とする触媒であれば、特段の制限はなく、公知の触媒を用いることができる。例えば、ホスフィン系の配位子を有するパラジウム触媒等が挙げられる。このような触媒の具体例としては、例えば、特表平10-511034号公報に記載されている触媒等が挙げられる。また、このような触媒は公知の方法により製造することができる。
【0092】
また、上記反応は、アルコールの存在下で行うことが好ましい。
【0093】
アルコールは特段の制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール又はt-ブチルアルコールが挙げられ、なかでも、メタノール又はエタノールが好ましい。なお、アルコールは1種を単独で用いてもよいし、2種以上のアルコールを併用してもよい。
【0094】
アルコールに対するエチレン量は、特段の制限はないが、0.01モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがさらに好ましく、一方、100モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0095】
一酸化炭素は、反応において不活性ガスと併用して供給してもよい。このような不活性ガスとしては、水素、窒素、二酸化炭素又はアルゴン等が挙げられる。
【0096】
上述の方法によりメタクリル酸メチルを製造することができるが、通常、製造されたメタクリル酸メチルには不純物が含まれる。そのため、不純物を除去するために、公知の蒸留等の方法により、得られたメタアクリル酸メチルを精製することが好ましい。なお、精製の際の条件は、所望の純度のメタクリル酸メチルが得られるように適宜、調整すればよい。
【実施例
【0097】
以下、本発明を実施例及び比較例で詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0098】
以下の実施例において担体及び触媒のBET比表面積は、窒素吸着測定装置(マウンテック社製、商品名:Macsorb)を用いてBET1点法により算出した値であり、担体及び触媒の単位面積におけるシラノール基数(D(Si-OH))は熱重量示差熱分析装置(リガク社製、型番:TG8120)を用いて、空気流通下、昇温速度10℃/minの条件で180℃から950℃における重量減少の値から下記式(3)に基づいて算出した。
【0099】
D(Si-OH)=2×N×1/18×Δwt/100×1/SA
・・・式(3)
【0100】
: アボガドロ定数(6.02×1023(mol-1
Δwt: 180℃から950℃における重量減少割合(%)
SA: BET比表面積(m/g)。
【0101】
また、第1の金属元素に対するアルカリ金属元素のモル比は、蛍光X線分析により測定した第一の金属元素およびアルカリ金属元素の含有量より算出した。
【0102】
また、一部の実施例においては、触媒の劣化試験を行った。具体的には、92℃に加熱された水飽和器に、流速20ml/minで窒素を通過させ、さらに、1gの触媒が充填された385℃に加熱された管を通過させ、試験7日後と28日後における触媒のBET比表面積を測定し、下記式(4)により、担体のBET比表面積減少率を算出した。なお、表1の触媒の劣化試験の結果が記載されている実施例及び比較例が触媒の劣化試験を行った対象である。
【0103】
(試験28日後における触媒のBET比表面積-試験21日後における触媒のBET比表面積)/(試験7日後における触媒のBET比表面積)×100 ・・・式(4)
【0104】
<実施例1>
オキシ硝酸ジルコニウム2水和物(キシダ化学、特級)4.5gをメタノール(ナカライテスク、特級)135mlに溶解し、24時間静置した。この溶液に、担体として使用するCARiACT Q-10(商品名、富士シリシア化学(株)、粒径1.7-4mm、平均細孔径10nm)60gを浸漬し、3.5時間静置し、ロータリーエパポレーターを用いて溶媒を留去した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径は0.8nmであった。その後、120℃で14時間乾燥を行い、第1の固形分を得た。得られた第1の固形分のうち、30gを、炭酸セシウム(和光純薬、1級)4.8gをメタノール65mlに溶解した溶液に3.5時間浸漬し、濾過により第2の固形分と溶液を分離した。第2の固形分を120℃で14時間乾燥することにより触媒を得た。なお、当該触媒のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。
【0105】
次に、得られた触媒を約3gの触媒を反応器に充填した。その後、常圧下で、プロピオン酸メチル、メタノール、ホルムアルデヒド及び水のモル比が1:1.40:0.19:0.5である反応液を送液流量0.034ml/minで300℃の蒸発器に流通させ、330℃の反応器に16時間流通させた。その後、常圧下で、プロピオン酸メチル、メタノール、ホルムアルデヒド及び水のモル比が1:0.64:0.27:0.01である反応原料液を300℃の蒸発器に通過させ、330℃の反応器に供給した。反応原料液は、送液流量を0.034~0.35ml/minの間で5点変化させ、それぞれの送液流量において反応器出口の蒸気を冷却して凝縮させて回収した。得られた反応液について、ガスクロマトグラフィー(島津製作所、商品名:GC-2010)を用いて分析して、送液流量0.16ml/minにおけるメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの収率及び選択率を、それぞれ下記式(5)及び(6)により算出した。得られた結果を表1に示す。
【0106】
(メタクリル酸及びメタクリル酸メチルの収率)=(生成したメタクリル酸及びメタクリル酸メチルのモル数)/(供給したプロピオン酸メチルのモル数)・・・式(5)
【0107】
(メタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率)=(メタクリル酸及びメタクリル酸メチルの収率)/(プロピオン酸メチルの転化率)・・・式(6)
【0108】
<実施例2~7>
担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0109】
<実施例8>
炭酸セシウムの使用量を4.6gに変更し、濾過により第2の固形分と液体を分離する代わりにロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去して製造した触媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径は0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0110】
<実施例9~15>
担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例8と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0111】
<実施例16>
オキシ硝酸ジルコニウム2水和物(キシダ化学、特級)7.3gをメタノール(ナカライテスク、特級)57mlに溶解し、24時間静置した。この溶液を、CARiACT Q-10(商品名、富士シリシア化学(株)、粒径1.7-4mm、平均細孔径10nm)60gをポアフィリング法により含浸した。なお、担体を含浸した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径は0.8nmであった。その後、120℃で14時間乾燥を行い、第1の固形分を得た。得られた第1の固形分のうちの30gに対し、炭酸セシウム7.0gをメタノール29mlに溶解した溶液をポアフィリング法を用いて含浸した。その後、120℃で14時間乾燥することにより触媒を得た。なお、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。その後、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0112】
<実施例17~21>
担体としてCARiACT Q-10の代わりに、CARiACT Q15(商品名、富士シリシア化学(株)、粒径1.7mm-4mm、平均細孔径15nm)を用い、さらに、担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0113】
<実施例22~27>
担体としてCARiACT Q-10の代わりにCARiACT Q15C(商品名、富士シリシア化学(株)、粒径1.7-4mm、平均細孔径15nm)を用い、担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の平均粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0114】
<実施例28~32>
担体としてCARiACT Q-10の代わりにCARiACT Q30(商品名、富士シリシア化学(株)、粒径1.7-4mm、平均細孔径30nm)を用い、担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0115】
<実施例33~39>
担体としてCARiACT Q-10の代わりにCARiACT Q30C(商品名、富士シリシア化学(株)、粒径1.7-4mm、平均細孔径30nm)を用い、担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0116】
<比較例1>
担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0117】
<比較例2>
担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例26と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0118】
<比較例3>
担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例39と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0119】
<実施例40>
オキシ硝酸ジルコニウム2水和物(キシダ化学、特級)5.4gをメタノール(ナカライテスク、特級)125mlに溶解し、24時間静置した。この溶液を、CARiACT Q-10(商品名、富士シリシア化学(株)、粒径1.7-4mm、平均細孔径10nm)130gにポアフィリング法により含浸した。なお、担体に含浸した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径は0.8nmであった。その後、120℃で14時間乾燥を行い、第1の固形分を得た。得られた第1の固形分のうち、30gに対し、炭酸セシウム(和光純薬、1級)1.9gをメタノール29mlに溶解した溶液をポアフィリング法を用いて含浸した。その後、120℃で14時間乾燥を行った後、600℃で3時間焼成を行うことにより触媒を得た。なお、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。
【0120】
次に、得られた触媒を約3gの触媒を反応器に充填した。その後、常圧下で、プロピオン酸メチル、メタノール、ホルムアルデヒド及び水のモル比が1:1.40:0.19:0.5である反応液を送液流量0.034ml/minで300℃の蒸発器に流通させ、350℃の反応器に16時間流通させた。その後、常圧下で、プロピオン酸メチル、メタノール、ホルムアルデヒド及び水のモル比が1:1.40:0.19:0.5である反応原料液を300℃の蒸発器に通過させ、350℃の反応器に供給した。反応原料液は、送液流量を0.35~0.034ml/minの間で5点変化させ、それぞれの送液流量において反応器出口の蒸気を冷却して凝縮させて回収した。得られた反応液について、ガスクロマトグラフィー(島津製作所、商品名:GC-2010)を用いて分析して、送液流量0.16ml/minにおけるメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの収率及び選択率をそれぞれ算出した。得られた結果を表1に示す。
【0121】
<実施例41-42>
担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例40と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0122】
<実施例43-45>
溶媒としてメタノールの代わりに水を用い、さらに、担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例40と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも0.8nmであった。また、触媒製造後のジルコニウム化合物の粒子径は0.8nm~5nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0123】
<実施例46-49>
オキシ硝酸ジルコニウムをメタノール中で静置させる時間を24時間から15分に変更し、さらに、担持後のジルコニウム及びセシウム量が表1に示す値となるようにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と炭酸セシウムの量を調整して製造した触媒を使用した以外は、実施例42と同様の方法によりメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造してメタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率及び収率を算出した。なお、担体を浸漬した際のメタノール中のオキシ硝酸ジルコニウムの平均粒子径はいずれも10~50nmであった。得られた結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1中の、Cs(wt%)は、触媒成分及び担体の総質量に対するセシウムの含有量を表し、Zr(wt%)は、触媒成分及び担体の総質量に対するジルコニウムの含有量を表し、Cs/Zrモル比Xは、触媒成分中のジルコニアに対するセシウムのモル比率を表す。また、MMA+MAA収率(%)及びMMA+MAA選択率(%)は、それぞれ、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸の、収率及び選択率を表す。
【0126】
表1の結果から分かるように、上記式(1)を満たさない触媒を使用した比較例1~3に対して、上記式(1)を満たす触媒を使用することにより、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルの選択率が大幅に向上していることが分かる。