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特許7136388粘着剤組成物、及びこれを用いた積層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、及びこれを用いた積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20220906BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220906BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20220906BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220906BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220906BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/08
C09J133/04
C09J175/04
C09J7/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022522045
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2021034025
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2020166849
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】笹本 慎
(72)【発明者】
【氏名】野口 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】野口 潤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀也
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-177995(JP,A)
【文献】特開2019-123768(JP,A)
【文献】特開2020-126182(JP,A)
【文献】特表2010-535792(JP,A)
【文献】特開2019-38904(JP,A)
【文献】特開2019-206722(JP,A)
【文献】特開2015-66741(JP,A)
【文献】特開平2-308882(JP,A)
【文献】特開平7-18083(JP,A)
【文献】特開2020-83980(JP,A)
【文献】特開2002-309207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有するパーフルオロポリエーテル化合物(A)と、粘着剤(B)とを含有し、
前記化合物(A)が、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体と、ポリオキシアルキレン鎖(a2)を含む重合性単量体及びシリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体からなる群から選択される1種以上とを重合成分とする共重合体である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体が、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)の両末端に重合性不飽和基を有する化合物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体100質量部に対して、前記ポリオキシアルキレン鎖(a2)を含む重合性単量体及び前記シリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体の合計が15~2,000質量部の範囲である請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有するパーフルオロポリエーテル化合物(A)と、粘着剤(B)とを含有し、
前記化合物(A)が、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を主鎖に有し、ポリオキシアルキレン鎖(a2)及び/又はシリコーン鎖(a3)を側鎖に有する重合体である粘着剤組成物。
【請求項5】
前記化合物(A)が、炭素原子数が6以上のパーフルオロアルキル基を有さない請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記化合物(A)がフッ素化アルキル基を有さない請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記化合物(A)の含有率が、粘着剤組成物の固形分中0.01~20質量%の範囲である請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記粘着剤(B)がアクリル系粘着剤(b1)及び/又はウレタン系粘着剤(b2)である請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物の粘着層と基材層とを有する積層フィルム。
【請求項10】
光学部材の表面保護フィルムである請求項記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、及びこれを用いた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネル等に用いられる偏光板、位相差板、光学補償フィルム、透明導電性フィルム等の光学部材の表面には、製造時、搬送時、使用時等における表面保護のために粘着性の保護フィルムが貼着される。
上記保護フィルムは、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の透明な基材と粘着剤層からなる積層体であり、保護フィルムとしての目的が果たされた後は、被着体から剥離される。
【0003】
保護フィルムの被着体からの剥離の際には、小さな力で綺麗に剥離できること、被着体表面に粘着剤の残り(糊残り)が生じないことが求められる。
近年大型化するディスプレイに用いられる光学部材に対しては、機械による表面保護フィルムの剥離が主流となっており、剥離スピードが工程によって異なることも多く、より剥離性が良好で、糊残りの少ない保護フィルムが求められている。
【0004】
上記の要求に応える形で、小さな力でも剥離可能な微粘着性と、一度貼着しても再び綺麗に剥離できる再剥離性との両方を備える表面保護フィルムの開発が行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-026707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の粘着剤組成物を用いた表面保護フィルムは、粘着剤組成物の粘着力調整効果が不十分であるために剥離性能が十分ではない問題があった。また、特許文献1に記載の粘着剤組成物は、炭素原子数6のフッ素化アルキル基を有する化合物を含むが、当該化合物は環境蓄積性が懸念されている化合物である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、粘着力調整効果に優れる粘着剤組成物、及びこれを粘着層に用い、表面保護フィルムとして好適に用いることができる積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有するパーフルオロポリエーテル化合物(A)と、粘着剤(B)とを含有する粘着剤組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有するパーフルオロポリエーテル化合物(A)と、粘着剤(B)とを含有する粘着剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、粘着力調整効果に優れる粘着剤組成物、及びこれを粘着層に用い、表面保護フィルムとして好適に用いることができる積層フィルムが提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
尚、本願明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいう。
【0012】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有するパーフルオロポリエーテル化合物(A)と、粘着剤(B)とを含有する。
パーフルオロポリエーテル化合物(A)は、粘着力調整剤として機能することができ、本発明の粘着剤組成物を用いることで剥離性能に優れる積層フィルムを製造することができる。
以下、本発明の粘着剤組成物が含有する各成分について説明する。
【0013】
[パーフルオロポリエーテル化合物(A)]
パーフルオロポリエーテル化合物(A)は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する。
化合物(A)が有するポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)は、2価のフッ化炭化水素基と酸素原子が交互に連結した構造であればよく、下記一般式(a1-1)で表される基が挙げられる。
【0014】
【化1】
(前記式(a1-1)中、
Xは、それぞれ独立に、パーフルオロアルキレン基であり、
n1は繰り返し数である。)
【0015】
複数のXにおいて、2種以上のパーフルオロアルキレン基がランダムに又はブロック状に存在していてもよい。
【0016】
Xのパーフルオロアルキレン基としては、下記パーフルオロアルキレン基(X-1)~(X-6)が例示できる。
【0017】
【化2】
【0018】
Xのパーフルオロアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、より好ましくはパーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基であり、工業的に得られやすい点も含めると、さらに好ましくはパーフルオロメチレン基とパーフルオロエチレン基とが共存している。
前記パーフルオロメチレン基(X-1)とパーフルオロエチレン基(X-2)とが共存する場合、その存在比(X-1/X-2)(個数の比)は1/10~10/1が好ましく、3/10~10/3がより好ましい。
【0019】
n1の繰り返し数は、例えば1~300の範囲の整数であり、好ましくは2~200の範囲の整数であり、より好ましくは3~100の範囲の整数であり、さらに好ましくは6~70の範囲の整数であり、最も好ましくは12~50の範囲の整数である。
【0020】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)1本に含まれるフッ素原子は、好ましくは合計で18~200個の範囲であり、より好ましくは合計で25~150個の範囲である。
【0021】
化合物(A)のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)の含有割合は、例えば1~90質量%の範囲であり、好ましくは1~80質量%の範囲であり、より好ましくは1~70質量%の範囲である。
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)の含有割合は、後述するポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体の仕込み量より算出及び調整できる。
【0022】
化合物(A)は、好ましくはポリオキシアルキレン鎖(a2)及び/又はシリコーン鎖(a3)を有する。化合物(A)がポリオキシアルキレン鎖(a2)及び/又はシリコーン鎖(a3)を有することで粘着力調整機能を高めることができる。
【0023】
化合物(A)が有するポリオキシアルキレン鎖(a2)は、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の炭素原子数1~6のアルキレン鎖がエーテル結合によって複数連結されているものであればよく、アルキレン鎖の構造としては、直鎖状であっても分岐状のものであってもよい。
【0024】
化合物(A)が有するポリオキシアルキレン鎖(a2)としては、下記式(a2-1)で表される基が挙げられる。
【0025】
【化3】
(前記式(a2-1)中、
複数のRa2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、
n2は繰り返し数である。)
【0026】
複数のRa2において、2種以上のアルキレン基がランダムに又はブロック状に存在していてもよい。
【0027】
ポリオキシアルキレン鎖(a2)は、好ましくはポリオキシエチレン鎖及び/又はポリオキシプロピレン鎖であり、より好ましくはポリオキシエチレン鎖である。
ポリオキシアルキレン鎖(a2)がポリオキシエチレン鎖及びポリオキシプロピレン鎖からなる場合、ポリオキシアルキレン鎖(a2)中のポリオキシエチレン鎖及びポリオキシプロピレン鎖は、ランダムに存在してもよく、ブロック状に存在してもよい。
【0028】
n2の繰り返し数は、例えば1~200の範囲の整数であり、好ましくは2~100の範囲の整数であり、より好ましくは2~50の範囲の整数であり、さらに好ましくは3~50の範囲の整数である。
【0029】
化合物(A)のポリオキシアルキレン鎖(a2)の含有割合は、例えば1~90質量%の範囲であり、好ましくは1~80質量%の範囲であり、より好ましくは1~70質量%の範囲である。
ポリオキシアルキレン鎖(a2)の含有割合は、後述するポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体の仕込み量より算出及び調整できる。
【0030】
化合物(A)が有するシリコーン鎖(a3)は、下記式(a3-1)で表される基が挙げられる。
【0031】
【化4】
(前記式(a3-1)中、
複数のRa3は、それぞれ独立に、炭素原子数1~18のアルキル基又はフェニル基であり、
n3は繰り返し数である。)
【0032】
a3の炭素原子数1~18のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基及び環状アルキル基のいずれでもよく、具体例としてメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ヘキサデシル基等を挙げることができる。
a3の炭素原子数1~18のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0033】
n3の繰り返し数は、例えば1~200の範囲の整数であり、好ましくは1~150の範囲の整数である。
【0034】
化合物(A)のシリコーン鎖(a3)の含有割合は、例えば1~90質量%の範囲であり、好ましくは1~80質量%の範囲であり、より好ましくは1~70質量%の範囲である。
シリコーン鎖(a3)の含有割合は、後述するシリコーン鎖(a3)を有する重合性単量体の仕込み量より算出及び調整できる。
【0035】
化合物(A)は、好ましくはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体と、ポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体及びシリコーン鎖(a3)を有する重合性単量体からなる群から選択される1種以上とを重合成分とする共重合体である。
ここで「重合成分」とは、共重合体を構成する成分という意味であり、共重合体を構成しない溶媒や重合開始剤等は含まれない。
【0036】
本発明において「重合性単量体」とは、重合性不飽和基を有する化合物という意味であり、当該重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基、スチリル基、マレイミド基等のC=C含有基が挙げられ、下記式(U-1)~(U-6)で表される基が好ましい。
【0037】
【化5】
【0038】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体は、好ましくはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に重合性不飽和基を有する化合物であり、より好ましくはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基又はスチリル基を有する化合物である。
【0039】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体の分子量は、例えば300~50,000の範囲であり、好ましくは300~30,000の範囲であり、より好ましくは300~10,000の範囲である。
【0040】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、下記式(A1-1)~(A1-13)で表される化合物が挙げられる。尚、式(A1-1)~(A1-13)におけるPFPEは、前記式(a1-1)で表される連結基である。
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
重合成分として用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に重合性不飽和基を有する化合物の製造方法としては、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に水酸基を1つずつ有する化合物に対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸反応させて得る方法、(メタ)アクリル酸無水物を反応させて得る方法、(メタ)アクリル酸を脱水反応させて得る方法、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートをウレタン化反応させて得る方法、無水イタコン酸をエステル化反応させて得る方法、クロロメチル基を有するスチレンと塩基存在下で反応させて得る方法;ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にカルボキシル基を1つずつ有する化合物に対して、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルをエステル化反応させて得る方法、グリシジル(メタ)アクリレートをエステル化反応させて得る方法;ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にイソシアネート基を1つずつ有する化合物に対して、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させて導入する方法、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを反応させる方法が挙げられる。
これらのなかでも、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に水酸基を1つずつ有する化合物に対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸反応させて得る方法、(メタ)アクリル酸無水物を反応させて得る方法、又は2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートをウレタン化反応させて得る方法が合成上得られやすい点で特に好ましい。
【0046】
ポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体は、好ましくは下記式(A2-1)で表される化合物又は下記式(A2-2)で表される化合物である。
【0047】
【化9】
(前記式(A2-1)及び(A2-2)中、
a21、Ra22及びRa23は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、
a24は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、
a25は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
p、q及びrは、それぞれ独立に、0以上の整数であり、p+q+rは1以上の整数である。)
【0048】
a21、Ra22及びRa23の炭素原子数1~6のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数2~4のアルキレン基である。
【0049】
p+q+rは、例えば1~200の範囲の整数であり、好ましくは2~100の範囲の整数であり、より好ましくは2~50の範囲の整数であり、さらに好ましくは3~50の範囲の整数である。
【0050】
ポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体の分子量は、例えば50~20,000の範囲であり、好ましくは50~10,000の範囲であり、より好ましくは50~800の範囲である。
【0051】
ポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体は市販品を用いることができ、例えば、水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである、ブレンマーPE-90、ブレンマーPE-200、ブレンマーPE-350、ブレンマーAE-90、ブレンマーAE-200、ブレンマーAE-400、ブレンマーPP-1000、ブレンマーPP-500、ブレンマーPP-800、ブレンマーAP-150、ブレンマーAP-400、ブレンマーAP-550、ブレンマーAP-800、ブレンマー50PEP-300、ブレンマー70PEP-350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET-400、ブレンマー30PET-800、ブレンマー55PET-800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT-800、ブレンマー50PPT-800、ブレンマー70PPT-800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB-500B、ブレンマー10APB-500B(以上、日油株式会社製);アルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである、ブレンマーPME-100、ブレンマーPME-200、ブレンマーPME-400、ブレンマーPME-1000、ブレンマーPME-4000、ブレンマーAME-400、ブレンマー50POEP-800B、ブレンマー50AOEP-800B、ブレンマーPLE-200、ブレンマーALE-200、ブレンマーALE-800、ブレンマーPSE-400、ブレンマーPSE-1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE-300、ブレンマーANE-1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP-500、ブレンマー70ANEP-550(以上、日油株式会社製)、ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO-A、ライトアクリレートEC-A、ライトアクリレートMTG-A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM-A、ライトアクリレートP-200A、ライトアクリレートNP-4EA、ライトアクリレートNP-8EA(以上、共栄社化学株式会社製)等があげられる。
【0052】
重合成分として用いるポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
シリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体は、好ましくは下記式(A3-1)で表される化合物である。
【0054】
【化10】
(前記式(A3-1)中、
a31は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(Ra34で表される基(Ra34はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
a32及びRa33は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
a35は、水素原子又はメチル基であり、
は、炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基であり、
n3は繰り返し数である。)
【0055】
a31、Ra32及びRa34は、好ましくはメチル基である。
a33は、好ましくはブチル基である。
n3の繰り返し数は、例えば1~200の範囲であり、好ましくは1~150の範囲である。
【0056】
の炭素原子数1~50のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基又はイソプロピレン基である。
【0057】
の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、例えば前記炭素原子数1~50のアルキレン基の中の1つの-CH-が-O-に置換された基である。
の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレンオキシ基であり、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキレンオキシ基であり、さらに好ましくはメチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、オキシトリメチレン基、ブチレンオキシ基、オキシテトラメチレン基、ペンチレンオキシ基、ヘプチレンオキシ基又はオクチレンオキシ基である。
【0058】
の炭素原子数1~50のアルキレン基及び炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基をそれぞれ構成する炭素原子は、水酸基、フェニル基、フェノキシ基等の置換基が1以上置換していてもよい。
【0059】
シリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体としては、下記式(A3-2)~(A3-9)で表される化合物も好ましい。
【0060】
【化11】
【0061】
【化12】
【0062】
【化13】
(前記式(A3-2)~(A3-9)中、
mは、それぞれ独立に、1~6の整数である。
n3は、繰り返し数であり、例えば1~200の範囲であり、好ましくは1~150の範囲である。
a32は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基である。
a33は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基である。
a35は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)
【0063】
シリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体の分子量は、例えば400~30,000の範囲であり、好ましくは400~20,000の範囲であり、より好ましくは400~15,000の範囲である。
【0064】
シリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体は市販品を用いることができる。
【0065】
重合成分として用いるシリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
化合物(A)は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体、ポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体及びシリコーン鎖(a3)を有する重合性単量体以外のその他の重合性単量体を重合成分に用いてもよい。
【0067】
前記その他の重合性単量体としては、炭素原子数1~18のアルキル基(a4)を有する重合性単量体、炭素原子数6~18の芳香族基(a5)を有する重合性単量体等が挙げられる。
【0068】
炭素原子数1~18のアルキル基(a4)は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基及び環状アルキル基のいずれでもよく、具体例としてメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ヘキサデシル基等を挙げることができる。
【0069】
炭素原子数1~18のアルキル基(a4)は、水酸基、フェニル基、フェノキシ基等の置換基が1以上置換していてもよい。
炭素原子数1~18のアルキル基(a4)は、例えば炭素原子数1~18のヒドロキシアルキル基、炭素原子数7~18のフェニルアルキル基、炭素原子数7~18のフェノキシアルキル基を含む。
【0070】
炭素原子数6~18の芳香族基(a5)としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセン-1-イル基、フェナントレン-1-イル基等が挙げられる。
炭素原子数6~18の芳香族基(a5)は、さらに水酸基、アルキル基、アルコキシ等の置換基が置換していてもよく、例えば炭素原子数1~6のアルキル基が置換したフェニル基を含む。
【0071】
炭素原子数1~18のアルキル基を有し、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である重合性単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数が1~18のアルキルエステル;ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~18の橋架け環状アルキルエステルなどが挙げられる。
【0072】
炭素原子数1~18のアルキル基を有し、重合性不飽和基がビニルエーテル基である重合性単量体としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル、シクロアルキルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキチルビニルエーテル、1-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0073】
炭素原子数1~18のアルキル基を有し、重合性不飽和基がアリル基である重合性単量体としては、例えば2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。
【0074】
炭素原子数1~18のアルキル基を有し、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルアミド基である重合性単量体としては、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0075】
炭素原子数1~18のアルキル基を有し、重合性不飽和基がマレイミド基である重合性単量体としては、例えばメチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0076】
炭素原子数1~18のヒドロキシアルキル基を有し、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である重合性単量体としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
炭素原子数7~18のフェニルアルキル基又は炭素原子数7~18のフェノキシアルキル基を有し、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である重合性単量体としては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
炭素原子数6~18の芳香族基を有する重合性単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン等が挙げられる。
【0079】
重合成分として用いる前記その他の単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
化合物(A)が、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体と、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体以外の重合性単量体(ポリオキシアルキレン鎖(a2)を有する重合性単量体、シリコーン鎖(a3)を有する重合性単量体、及び任意のその他の重合性単量体)とを重合成分とする共重合体である場合、その重合形式は特に限定されない。
上記共重合体は、例えばランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。
【0081】
上述の各重合性単量体の仕込み比は、特に限定されない。
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体の量は、重合成分全体の例えば1~90質量%の範囲であり、好ましくは1~80質量%の範囲であり、より好ましくは1~70質量%の範囲である。
【0082】
化合物(A)が、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体と、ポリオキシアルキレン鎖(a2)を含む重合性単量体及びシリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体からなる群から選択される1種以上とを重合成分とする共重合体である場合、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有する重合性単量体100質量部に対して、ポリオキシアルキレン鎖(a2)を含む重合性単量体及びシリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体の合計が例えば5~2,000質量部の範囲であり、好ましくは10~2,000質量部の範囲であり、より好ましくは15~2,000質量部の範囲である。
【0083】
化合物(A)は、好ましくはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を主鎖に含み、ポリオキシアルキレン鎖(a2)及び/又はシリコーン鎖(a3)を側鎖に含む重合体である。
ここで「主鎖」とは、化合物(A)を構成する分子鎖のうち最も長い分子鎖を意味し、「側鎖」とは主鎖以外の分子鎖を意味する。
【0084】
化合物(A)は、好ましくはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)の両末端に重合性不飽和基を有する重合性単量体と、ポリオキシアルキレン鎖(a2)を含む重合性単量体及びシリコーン鎖(a3)を含む重合性単量体からなる群から選択される1種以上とを重合成分とする共重合体である。
【0085】
化合物(A)は、好ましくは炭素原子数が6以上のパーフルオロアルキル基を有さない。
化合物(A)が、炭素原子数が6以上のパーフルオロアルキル基を含まないことで、環境負荷を低減することができる。
尚、ここで「炭素原子数が6以上のパーフルオロアルキル基」とは、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は含まない。
【0086】
化合物(A)は、好ましくはフッ素化アルキル基を有さない。
化合物(A)をフッ素化アルキル基を有さないことで、ベース樹脂への相溶性が担保できる。
【0087】
化合物(A)の重量平均分子量としては、特に限定されるものではないが、後述する粘着剤(B)との相溶性、粘着力の調整容易性および糊残り低減の両立の観点等から、3,000~300,000の範囲であることが好ましく、3,000~200,000の範囲であることがより好ましく、4,000~100,000の範囲であることが大面積の光学部材等の表面保護フィルムとして使用した際の剥離力の均一性の観点から最も好ましい。
本発明における重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定して得られる値である。
【0088】
化合物(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
化合物(A)は、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等により製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。例えば、重合性単量体混合物を有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。
用いる重合性単量体に応じて、反応容器に重合体単量体と開始剤とを滴下しながら重合する滴下重合法等も、均一な組成の共重合体を得るために有効である。
【0089】
前記重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)等の金属キレート化合物、リビングラジカル重合を引き起こす遷移金属触媒等が挙げられる。
必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基を有するチオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤として用いてもよい。
【0090】
重合は、溶剤の存在下または非存在下のいずれでも行うことができるが、作業性の点から溶剤存在下で行うことが好ましい。
重合に用いる溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類およびそのエステル類、1,1,1-トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ-n-ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。
これら溶剤は、1種単独で用いることも2種以上併用することもできる。
化合物(A)の重合に用いる溶剤は、本発明の粘着剤組成物の溶剤としてよい。
【0091】
[粘着剤(B)]
粘着剤(B)としては、粘着性を有するものであれば特に制限なく使用でき、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。これら粘着剤のなかでも、アクリル系粘着剤(b1)および/またはウレタン系粘着剤(b2)を用いることが好ましい。
【0092】
アクリル系粘着剤(b1)を構成する(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分モノマーとする原料モノマーから得られる。
前記(メタ)アクリル系モノマーは、1種または2種以上を主成分として使用することができる。前記炭素原子数が1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、被着体(被保護体)に対する粘着力を低く制御することが容易となり、軽剥離性や再剥離性に優れた表面保護フィルムが得られる。
尚、本発明における「主成分」とは、構成する成分全量中において最も多い成分を意味し、当該「主成分」が好ましくは40質量%を超え、より好ましくは50質量%を超え、さらに好ましくは60質量%を超えることをいう。
【0093】
前記炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0094】
前記(メタ)アクリル系モノマーの中でも、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーは被着体への粘着力を低く制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる観点から好ましい。
【0095】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、炭素原子数1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70~99質量%、最も好ましくは80~97質量%である。
【0096】
アクリル系粘着剤(b1)を構成する前記(メタ)アクリル系ポリマーが、原料モノマーとして、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を使用することができる。
【0097】
前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着剤組成物の架橋等を制御しやすくなり、ひいては流動による濡れ性の改善と剥離における粘着力の低減とのバランスを制御しやすく、また帯電防止の観点からも好ましい。
【0098】
前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。特にアルキル基の炭素原子数が4以上のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることで高速剥離時の軽剥離化が容易となり好ましい。
【0099】
前記炭素原子数1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対して、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、15質量部以下含有することが好ましく、より好ましくは1~13質量部、さらに好ましくは2~10質量部であり、最も好ましくは3~8質量部である。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と、得られる粘着剤層の凝集力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。
【0100】
その他の重合性モノマー成分として、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、Tgが0℃以下(通常-100℃以上)になるようにして、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度や剥離性を調整するための重合性モノマー等を使用することができる。
【0101】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、および、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。
【0102】
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシルペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0103】
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、前記炭素原子数1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部未満がさらに好ましく、0.2質量部未満がさらにより好ましく、最も好ましくは、0.01質量部以上0.1質量部未満である。前記範囲内であれば、粘着力の経時での上昇を防止でき(粘着力上昇防止性)、好ましい。
【0104】
剥離帯電特性と粘着力上昇防止性を両立させる目的で、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを併用して用いることも可能である。
【0105】
さらに、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、および、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、特に限定することなく用いることができる。例えば、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー等の凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N-アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマー等の粘着力向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分を適宜用いることができる。中でも、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、および、N-アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマーを用いることが好ましい。窒素含有モノマーを用いることにより、浮きや剥がれ等が生じない適度な粘着力を確保でき、更にせん断力に優れた表面保護フィルムを得ることができるため、有用である。これら重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0106】
前記シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
【0107】
前記ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。
【0108】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、その他の置換スチレン等が挙げられる。
【0109】
前記アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0110】
前記イミド基含有モノマーとしては、例えば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド等が挙げられる。
【0111】
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0112】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0113】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0114】
炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーは、前記炭素原子数1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対して、0~40質量部であることが好ましく、0~30質量部であることが、良好な再剥離性を適宜調節することができる観点から好ましい。
【0115】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、更に、モノマー成分としてポリオキシアルキレン鎖含有反応性モノマーを含有してもよい。
【0116】
前記ポリオキシアルキレン基含有反応性モノマーのオキシアルキレン単位の平均cとしては、1~40であることが好ましく、3~40であることがより好ましく、4~35であることがさらに好ましく、5~30であることが特に好ましい。
前記平均付加モル数が1以上の場合、被着体(被保護体)の汚染低減効果が効率よく得られる傾向がある。また、前記平均付加モル数が40より大きい場合、粘着剤組成物の粘度が上昇して塗工が困難となる傾向がある。なお、オキシアルキレン鎖の末端は、ヒドロキシル基のままや、他の官能基等で置換されていてもよい。
【0117】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有反応性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分全量中20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより一層好ましく、4質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以下であることがなお好ましい。
【0118】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有反応性モノマーのオキシアルキレン単位としては、炭素原子数1~6のアルキレン基を有するものが挙げられ、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。オキシアルキレン鎖の炭化水素基は直鎖でもよく、分岐していてもよい。
【0119】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有反応性モノマーがエチレンオキシド基を有する反応性モノマーであることがより好ましい。エチレンオキシド基を有する反応性モノマーを有する(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いることにより、ベースポリマーとパーフルオロポリエーテル化合物(A)との相溶性が向上し、被着体へのブリードが好適に抑制され、低汚染性の粘着剤組成物が得られやすい。
【0120】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有反応性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド付加物や、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等の反応性置換基を有する反応性界面活性剤等が挙げられる。
【0121】
前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド付加物の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0122】
また、前記反応性界面活性剤の具体例としては、例えば、(メタ)アクリロイル基またはアリル基を有するアニオン型反応性界面活性剤、ノニオン型反応性界面活性剤、カチオン型反応性界面活性剤等が挙げられる。
【0123】
アクリル系粘着剤(b1)を構成する(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)としては、10万~500万が好ましく、より好ましくは20万~200万、さらに好ましくは30万~80万である。重量平均分子量が10万より大きい場合は、粘着剤層の凝集力が適正になり糊残りを抑制する傾向がある。一方、重量平均分子量が500万以下の場合は、ポリマーの流動性が適正で、被着体への濡れが十分となり、被着体と表面保護フィルムの粘着剤層との間に発生するフクレ発生を抑制できる。
尚、前記重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0124】
アクリル系粘着剤(b1)を構成する(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、より好ましくは-10℃以下である(通常-100℃以上)。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、濡れが不十分となる傾向がある。特にガラス転移温度を-61℃以下にすることで濡れ性と軽剥離性に優れる粘着剤層が得られ易くなる。
尚、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0125】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の公知の方法により重合できるが、特に作業性の観点や、被着体(被保護体)への低汚染性等特性面から、溶液重合がより好ましい態様である。また、得られるポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0126】
粘着剤(B)としてウレタン系粘着剤(b2)を使用する場合、任意の適切なウレタン系粘着剤を採用するとよい。ウレタン系粘着剤(b2)としては、好ましくは、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂(ウレタン系ポリマー)からなるものが挙げられる。
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0127】
前記粘着剤層にシリコーン系粘着剤を使用する場合、任意の適切なシリコーン系粘着剤を採用し得る。このようなシリコーン系粘着剤としては、好ましくは、シリコーン樹脂(シリコーン系ポリマー、シリコーン成分)をブレンドまたは凝集させることにより得られるものを採用し得る。
【0128】
また、前記シリコーン系粘着剤としては、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤や過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤が挙げられる。これらのシリコーン系粘着剤の中でも、過酸化物(過酸化ベンゾイル等)を使用せず、分解物が発生しないことから、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0129】
前記付加反応硬化型シリコーン系粘着剤の硬化反応としては、例えば、ポリアルキルシリコーン系粘着剤を得る場合、一般的に、ポリアルキル水素シロキサン組成物を白金触媒により硬化させる方法が挙げられる。
【0130】
本発明の粘着剤組成物において、パーフルオロポリエーテル化合物(A)と粘着剤(B)の配合比率は、所望の粘着力に応じて適宜設定すればよい。本発明の粘着剤組成物を表面保護フィルムの粘着層に用いる場合、パーフルオロポリエーテル化合物(A)の含有率が、粘着剤組成物の固形分中の0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~5.0質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、パーフルオロポリエーテル化合物(A)は粘着力調整剤としての機能を十分に発揮することができる。
尚、本発明において「固形分」とは、粘着剤組成物から溶剤を除いた成分を意味する。
【0131】
[その他の成分]
本発明の粘着剤組成物は、パーフルオロポリエーテル化合物(A)と粘着剤(B)を含めばよく、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤等のその他の成分を任意に含むことができる。
【0132】
本発明の粘着剤組成物は、その他の成分として、架橋剤を含有させることが好ましい。例えば、本発明の粘着剤組成物が、粘着剤(B)として前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有する場合、さらに架橋剤を含むことで、前記(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位、構成比率、架橋剤の選択および添加比率等を適宜調節して架橋することにより、より耐熱性に優れた粘着剤層を容易に得ることができる。
【0133】
前記架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物等を用いてもよく、特にイソシアネート化合物の使用は、好ましい態様となる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0134】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族イソシアネート類、これらイソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合等により変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。
前記イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、武田薬品工業社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。
これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を2種以上混合して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する接着性)を両立することが可能となり、より接着信頼性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0135】
前記エポキシ化合物としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(商品名TETRAD-X、三菱瓦斯化学社製)や1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD-C、三菱瓦斯化学社製)等が挙げられる。
【0136】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。
前記アジリジン誘導体としては、例えば、市販品としての商品名HDU、TAZM、TAZO(以上、相互薬工社製)等が挙げられる。
【0137】
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケル等、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
【0138】
前記架橋剤の含有量は、例えば、アクリル系粘着剤(b1)に使用される前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01~20質量部含有されていることが好ましく、0.1~15質量部含有されていることがより好ましく、0.5~10質量部含有されていることがさらに好ましく、1.0~6質量部含有されていることが最も好ましい。この範囲で架橋剤を用いることにより、得られる粘着剤層の凝集力が適正であり、十分な耐熱性が得られやすく、また糊残りも抑制される。
架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0139】
粘着剤組成物は、上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるための架橋触媒を含有させることができる。
上記架橋触媒として、例えばジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ等のスズ系触媒、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(ヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(5-メチルヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(オクタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(6-メチルヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-4,6-ジオナト)鉄、トリス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(トリデカン-6,8-ジオナト)鉄、トリス(1-フェニルブタン-1,3-ジオナト)鉄、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(アセト酢酸エチル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(アセト酢酸イソプロピル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸メチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸エチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸イソプロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸ベンジル)鉄、トリス(マロン酸ジメチル)鉄、トリス(マロン酸ジエチル)鉄、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、塩化第二鉄等の鉄系触媒を用いることができる。これら架橋触媒は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
前記架橋触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、およそ0.0001~1質量部とすることが好ましく、0.001~0.5質量部がより好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤層を形成した際に架橋反応の速度が速く、粘着剤組成物のポットライフも長くなり、好ましい態様となる。
【0141】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、粘着層と基材層とを有し、前記粘着層は本発明の粘着剤組成物を用いて形成した層である。
本発明の積層フィルムは、基材層の少なくとも一方の面上に本発明の粘着剤組成物を塗布および架橋させることで製造できる。また、本発明の積層フィルムは、本発明の粘着剤組成物をあらかじめ架橋した粘着剤層を、基材層の少なくとも一方の面上に転写することによっても製造できる。
【0142】
基材層上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、例えば、本発明の粘着剤組成物(溶液)を基材に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を基材上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整等を目的として養生をおこなってもよい。
粘着剤組成物を基材上に塗布して積層フィルムを作製する際には、基材層上に均一に塗布できるよう、前記粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0143】
本発明の積層フィルムを製造する際の粘着剤層の形成方法としては、粘着テープ類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーター等による押出しコート法等が挙げられる。
【0144】
本発明の積層フィルムは、通常、前記粘着剤層の厚みが1~200μm、好ましくは3~100μm程度となるように作製する。粘着剤層の厚みが、当該範囲内にあると、適度な再剥離性と接着性のバランスを得やすいため、好ましい。
【0145】
本発明の積層フィルムは、総厚みが、1~400μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、20~150μmであることが最も好ましい。積層フィルムの総厚みが当該範囲内であると、粘着特性(再剥離性、接着性等)、作業性、外観特性に優れ、好ましい態様となる。
尚、「総厚み」とは、積層フィルムの基材層、粘着剤層および帯電防止層等の全ての層を含む厚みの合計を意味する。
【0146】
本発明の積層フィルムを構成する基材層としては、特に限定されるものではないが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性、可撓性、寸法安定性等の特性に優れた基材を使用することが好ましい。特に、基材が可撓性を有することにより、ロールコーター等によって粘着剤組成物を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができ、有用である。
【0147】
前記基材として用いることができるものは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;等を主たる樹脂成分(樹脂成分のなかの主成分、典型的には50質量%以上を占める成分)とする樹脂材料から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。
前記樹脂材料の他の例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等の、スチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体等の、オレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等の、アミド系ポリマー;等を樹脂材料とするものが挙げられる。
前記樹脂材料のさらに他の例として、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。
上述したポリマーの2種以上のブレンド物からなる基材であってもよい。
【0148】
前記基材としては、透明な熱可塑性樹脂材料からなるプラスチックフィルムを好ましく採用することができる。前記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルムを使用することが、より好ましい態様である。ここで、ポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のエステル結合を基本とする主骨格を有するポリマー材料(ポリエステル樹脂)を主たる樹脂成分とするものをいう。かかるポリエステルフィルムは、光学特性や寸法安定性に優れる等、表面保護フィルムの基材として、好ましい特性を有する。
【0149】
前記基材を構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。また基材として用いるフィルムの表面を、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0150】
本発明の積層フィルムは、基材層上に帯電防止層を有していてもよく、前記基材として、帯電防止処理がなされてなるプラスチックフィルムを使用することも可能である。このような基材を用いることにより、剥離した際のフィルム自身の帯電が抑えられるため、好ましい。
また、基材がプラスチックフィルムであり、前記プラスチックフィルムに帯電防止処理を施すことにより、積層フィルム自身の帯電を低減し、かつ、被着体への帯電防止能が優れるものが得られる。なお、帯電防止機能を付与する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができ、例えば、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法、また、帯電防止剤等を練り込む方法等が挙げられる。帯電防止剤を使用する際には、滑剤を併用することもできる。
【0151】
前記基材層の厚みとしては、通常5~200μm、好ましくは10~100μm程度である。前記基材層の厚みが、前記範囲内にあると、被着体への貼り合せ作業性と被着体からの剥離作業性に優れるため、好ましい。
【0152】
本発明の積層フィルムには、必要に応じて粘着面を保護する目的で、粘着剤層表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。
【0153】
前記セパレーターを構成する材料としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0154】
前記セパレーターの厚みは、通常5~200μm、好ましくは10~100μm程度である。前記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合せ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理をすることもできる。
【0155】
本発明の積層フィルムは、光学部材等の表面保護フィルムとして好適に使用することができる。本発明の積層フィルムは、経時安定性にも優れ、加工、搬送、出荷時等の表面保護用途に使用できるため、偏光板等の光学部材の表面を保護する用途に、有用なものとなる。
【実施例
【0156】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。また、以下の説明や表中の「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準であり、固形分または有効成分を示すものである。
【0157】
実施例および比較例において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
GPCの測定条件は以下の通りである。
【0158】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GUARDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0159】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0160】
(合成例1:パーフルオロポリエーテル化合物の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式(a1-1-1)で表される両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物20g、溶媒としてジイソプロピルエーテル20g、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.02g及び中和剤としてトリエチルアミン3.1gを仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を10℃に保ちながらアクリル酸クロライド2.7gを1時間かけて滴下した。
滴下終了後、10℃で1時間攪拌し、昇温して30℃で1時間攪拌した後、50℃に昇温して10時間攪拌することにより反応を行った。得られた反応液について、ガスクロマトグラフィー測定にてアクリル酸クロライドの消失が確認された。
【0161】
【化14】
(式中、
複数のXは、それぞれ独立に、パーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものであり、フッ素原子の数が平均46である。
GPCによる数平均分子量は1,500である。)
【0162】
次いで、反応液に溶媒としてジイソプロピルエーテル40g、及びイオン交換水80gを添加し、攪拌してから静置し、分離した水層を取り除く洗浄を3回繰り返した。洗浄後の反応液に、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.02gを添加し、脱水剤として硫酸マグネシウム8gを添加して1日間静置することで完全に脱水し、脱水剤を濾別した。
次いで、減圧下で溶媒を留去することによって、下記式(A1-1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する重合性化合物(以下、「化合物(A1-1)」と略記する。)を得た。
【0163】
【化15】
(式中、
複数のXは、それぞれ独立に、パーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものであり、フッ素原子の数が平均46である。)
【0164】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒として酢酸ブチル297.5gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、上記化合物(A1-1)24.9g、下記式(A1-2)で表されるポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物(数平均分子量5,000)5.9g、エチレンオキシド鎖を有するモノアクリレート化合物(日油株式会社製、ブレンマーAE-400、エチレンオキシド鎖の繰り返し数が約10)6.2g、アクリル酸エチル50.4g、アクリル酸4-ヒドロキシブチル12.6g、溶媒として酢酸ブチル133.3g、ラジカル重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0gを混合して混合液を調製した。
得られた混合液を上記ガラスフラスコに105℃で3時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で5時間撹拌した後、冷却し、パーフルオロポリエーテル化合物(A1)を30質量%含む溶液を得た。
【0165】
【化16】
(前記式(A1-2)中、nの数平均は65である。)
【0166】
共重合体であるパーフルオロポリエーテル化合物(A1)をGPCにより分析した結果、重量平均分子量Mwは5,300であった。また、使用した反応原料におけるフッ素の含有率は11質量%であった。
【0167】
(合成例2:パーフルオロアルキル基含有化合物の合成)
ガラスフラスコに酢酸ブチル100gを仕込み、窒素雰囲気下で30分かけて95℃まで昇温した。2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート24.9g、前記式(A1-2)で表されるポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物5.9g、下記式(A2-1)で表されるエチレンオキシド鎖を有するモノアクリレート化合物6.2g、アクリル酸エチル50.4g、アクリル酸4-ヒドロキシブチル12.6g、溶媒として酢酸ブチル133.3g、ラジカル重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0gを混合して混合液を調製した。
得られた混合液を上記ガラスフラスコに95℃で3時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃で3時間撹拌した後、110℃で1.0時間撹拌した。その後、冷却し、パーフルオロアルキル基含有化合物(A’1)を30質量%含む溶液を得た。
【0168】
【化17】
(前記式(A2-1)中、pの数平均は10である。)
【0169】
共重合体であるパーフルオロアルキル基含有化合物(A’1)をGPCにより分析した結果、重量平均分子量Mwは18,500であった。
【0170】
実施例1
アクリル系粘着剤(CT-3088:DIC社製)の固形分100部に対して、硬化剤(架橋剤)としてD-100K(DIC社製)を2.9部および得られたパーフルオロポリエーテル化合物(A1)を0.5部添加し、メチルエチルケトンで固形分が35%となるように希釈し、充分に混合して粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、形成後の粘着層厚が20μmになるように、基材である50μm厚のポリエステルフィルムのコロナー処理面に、自動塗工装置バーコーター(PI-1210:テスター社製)を用いて直接塗工した。その後、85℃で3分間乾燥させて粘着層を形成した後、該粘着層にシリコーンコートされた38μm厚のポリエステルフィルムセパレーターを被覆して、積層フィルムを作製した。この積層フィルムをさらに40℃で3日間養生し、評価試験の試料とした。
【0171】
得られた積層フィルムについて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
<初期粘着力評価>
ガラス板に、得られた積層フィルムを2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、評価サンプルとした。貼付してから24時間経過後に、粘着・皮膜剥離解析装置 VPA-3(協和界面科学製)を用い、評価サンプルの粘着力を測定した。測定条件は、下記の通りである。引張速度と剥離速度を150mm/minとした場合と、引張速度と剥離速度を1,200mm/minとした場合の2パターンで粘着力を評価した。
・引張速度:150mm/min、1,200mm/min
・剥離速度:150mm/min、1,200mm/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:25mm×70mm
【0172】
<80℃×7日後の粘着力評価>
初期粘着力評価に用いるサンプルを別途作製し、当該評価サンプルを温度80℃に置いて7日間保存した。保存後(耐熱試験後)の評価サンプルを初期粘着力評価と同じ方法で粘着力を評価した。
【0173】
比較例1
パーフルオロポリエーテル化合物(A1)の代わりにパーフルオロアルキル基含有化合物(A’1)を用いた他は、実施例1と同様にして積層フィルムを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0174】
比較例2
パーフルオロポリエーテル化合物(A1)を加えなかった他は、実施例1と同様にして積層フィルムを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0175】
【表1】
【0176】
表1の結果から、パーフルオロポリエーテル化合物(A1)を含有する粘着剤組成物を用いた積層フィルムは、パーフルオロアルキル基含有化合物(A’1)を含有する粘着剤組成物を用いた積層フィルム(比較例1)及び粘着力調整剤を含まない粘着剤組成物を用いた積層フィルム(比較例2)よりも優れた剥離性能を示していることが分かった。
尚、パーフルオロアルキル基含有化合物(A’1)はパーフルオロヘキシル基を有する化合物であるので、環境蓄積性が懸念される化合物である。
【要約】
粘着力調整効果に優れる粘着剤組成物、及びこれを粘着層に用い、表面保護フィルムとして好適に用いることができる積層フィルムを提供する。具体的には、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(a1)を有するパーフルオロポリエーテル化合物(A)と、粘着剤(B)とを含有する粘着剤組成物。