(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220906BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220906BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C09J7/38
G06F3/041 495
C09J133/14
(21)【出願番号】P 2020522923
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2019001435
(87)【国際公開番号】W WO2019151824
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0013388
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヒー
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュン チョル
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-163591(JP,A)
【文献】特開2017-095654(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0097850(KR,A)
【文献】特開2016-050239(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109223(WO,A1)
【文献】特開2012-041456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08L33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の硬化物を含む、粘着フィルムであって、
前記粘着フィルムは、25℃、60RH%、100KHzでの比誘電率が4.45以上であり、
前記粘着フィルムは、-30℃および60℃での貯蔵弾性率が10
4Pa~10
6Paであり、
前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、熱硬化性樹脂と、架橋剤と、を含み、
前記熱硬化性樹脂は、少なくとも1つの非共有電子対を含むN及びOの少なくとも1つを分子中に含む化合物に由来の単位
、およびアクリレート基を含む化合物に由来の単位からなり、
前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度が-70℃以下であり、
前記
少なくとも1つの非共有電子対を含むN及びOの少なくとも1つを分子中に含む化合物は、下記化学式1で表され
、
前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1つの非共有電子対を含むN及びOの少なくとも1つを分子中に含む化合物に由来の単位は10重量部~98重量部であり、
前記アクリレート基を含む化合物に由来の単位は2重量部~90重量部である、
粘着フィルム。
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、
R1はアルキレンオキシ基であり、
R2は、水素;アルキル基;またはニトリル基であり、
R3はアルコキシ基であり、
mは1~4の整数である。)
【請求項2】
前記R2は水素であり、
前記R1はエチレンオキシ基であり、
前記mは2であり、
前記R3はエトキシ基である、
請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物100重量部に対して、前記架橋剤が0.001重量部~1重量部である、
請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1つの非共有電子対を含むN及びOの少なくとも1つを分子中に含む化合物に由来の単位は28重量部~48重量部であり、
前記アクリレート基を含む化合物に由来の単位は52重量部~72重量部である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量が1,000,000以上2,000,000以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記粘着フィルムの厚さが10μm~50μmである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の粘着フィルムを含む
フォルダブルディスプレイ。
【請求項8】
前記粘着フィルムは、カバーウィンドウとタッチパネルとの間、またはタッチパネルと表示パネルとの間に備えられる、
請求項7に記載のフォルダブルディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイに関する。
【0002】
本明細書は、2018年2月2日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10‐2018‐0013388号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ディスプレイに関する技術の発達に伴い、折ったり、ロール(Roll)状に巻いたり、ゴムひものように伸縮させたりするなど、使用段階で変形が可能なディスプレイ装置が研究および開発されている。これらのディスプレイは、様々な形態に変形可能であるため、使用段階でのディスプレイの大型化の要求と、携帯のためのディスプレイの小型化の要求を両方とも満たすことができる。
【0004】
変形可能なディスプレイ装置は、予め設定された形態に変形可能であるだけでなく、ユーザの要求に応じて、またはディスプレイ装置が用いられる状況の必要に応じて、様々な形態に変形可能である。したがって、ディスプレイの変形された形態を認識し、認識した形態に対応してディスプレイ装置を制御する必要がある。
【0005】
一方、変形可能なディスプレイ装置は、変形により、ディスプレイ装置の各構成が損傷され得るという問題があるため、かかるディスプレイ装置の各構成は、フォールディング(Folding)信頼性および安定性を満たすべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一実施態様は、熱硬化性樹脂と、架橋剤と、を含み、
前記熱硬化性樹脂は、分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位を含み、
前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度が-70℃以下である、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物において、
前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物は、下記化学式1で表されるものである、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物を提供する。
【0008】
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、R
1は、アルキレンオキシ基であり、R
2は、水素;アルキル基;またはニトリル基であり、R
3は、アルコキシ基であり、mは1~4の整数である。
【0009】
本出願の一実施態様は、上記のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の硬化物を含む粘着フィルムを提供する。
【0010】
本出願の一実施態様は、上記の粘着フィルムを含むフォルダブルディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本出願の一実施態様に係るフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、ガラス転移温度が-70℃以下である熱硬化性樹脂を適用することで、貯蔵弾性率を低める。樹脂中にNまたはO、および非共有電子対を含む化合物に由来の単位を含む場合、前記化合物が双極子モーメントにより極性を呈することとなり、極性を有する化合物を含むポリマーに電場をかけ、粘着剤の内部に双極子モーメントを発生させる。これにより、粘着剤の内部に双極子配列が生じ、誘電分極率が増加することにより、誘電率が上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書の一実施態様に係るスタティックフォールディング(Static folding)テストにおける2セットスタックアップ(2-Set Stack Up)構造の試験片の模式図である。
【
図2】本明細書の粘着剤が用いられるフォルダブルディスプレイの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0014】
本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0015】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」としたときに、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0016】
本明細書において、「由来」とは、化合物の結合が切断されるか、置換基が分離されて新しい結合が発生することを意味し、前記化合物に由来の単位は、重合体の主鎖に連結される単位を意味し得る。前記単位は、重合体中の主鎖に含まれて樹脂を構成し得る。
【0017】
本出願の一実施態様は、熱硬化性樹脂と、架橋剤と、を含み、
前記熱硬化性樹脂は、分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位を含み、
前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度が-70℃以下である、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物を提供する。
【0018】
本明細書の一実施態様において、熱硬化性樹脂と、架橋剤と、を含み、
前記熱硬化性樹脂は、分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位を含み、
前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度が-70℃以下である、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物を提供する。
【0019】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、-70℃以下を満たし、好ましくは-200℃以上-70℃以下である。ガラス転移温度が-70℃以下である熱硬化性樹脂を用いる場合、貯蔵弾性率を低める効果がある。
【0020】
本明細書に係る熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)により、試料の熱流(Heat Flow)を利用して測定した。
【0021】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂が、分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位を含む場合、永久双極子モーメントにより極性を呈することとなり、前記重合体に電場がかかると、粘着剤の内部に双極子モーメントが発生することにより、双極子配列が生じ、誘電分極率が増加するため、誘電率が増加する。
【0022】
本明細書の一実施態様において、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、硬化後、-30℃および60℃での貯蔵弾性率が104Pa~106Paである。前記貯蔵弾性率が前記範囲を満たす場合、ブリードアウト(bleed-out)現象が減少するとともに、衝撃伝達率が減少する効果がある。前記範囲より貯蔵弾性率が低い場合には、ブリードアウト現象が発生して工程効率が減少し、前記範囲より貯蔵弾性率が高い場合には、フォールディング過程で基板に大きい衝撃が伝達され、ディスプレイに損傷を与えることになる。したがって、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、フォルダブル(foldable)ディスプレイに適した曲げ信頼性を有する粘着剤層を形成するにおいて有用である。
【0023】
フォルダブルディスプレイは、折り畳まれる過程で各層が物理的な力を受けることになる。この場合、一般のディスプレイよりも、粘着剤のブリードアウト現象および物理的な衝撃によって浮き上がり、気泡、および剥離などが発生しやすく、衝撃伝達率が大きいと、フォールディング過程で粘着剤に付いているカバーウィンドウのクラックが生じやすい。したがって、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物においては、粘着剤のブリードアウト現象を減少させるとともに、衝撃伝達率を減少させることが非常に重要である。
【0024】
<貯蔵弾性率の測定>
本明細書の一実施態様に係る前記粘着剤組成物をアプリケータにより塗布して塗膜を形成した後、マティスオーブンにて140℃、3分乾燥することで、厚さ20μmの粘着フィルムを製造した。前記粘着フィルムを複数回重ねて厚さ1mmの試験片に裁断し、直径8mmのパラレルプレートフィクスチャ(parallel plate fixture)を用いて、Advanced Rheometric Expansion System G2(TA社)にて、1Hz、5% strain、10℃/minの条件で貯蔵弾性率を測定した。
【0025】
本明細書の一実施態様において、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物は、分子中に少なくとも1つのニトリル基またはアルコキシ基と、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物である。
【0026】
本明細書の一実施態様において、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物は、下記化学式1で表される。
[化学式1]
【化2】
前記化学式1中、R1はアルキレンオキシ基であり、R2は、水素;アルキル基;またはニトリル基であり、R3はアルコキシ基であり、mは1~4の整数である。
【0027】
本明細書の一実施態様において、前記R1は、エチレンオキシ基(-OCH2CH2-)である。
【0028】
本明細書の一実施態様において、前記R2は、水素、メチル基、またはニトリル基である。
【0029】
本明細書の一実施態様において、前記R3は、メトキシ基;エトキシ基;プロポキシ基;またはブトキシ基である。
【0030】
本明細書の一実施態様において、前記mは1~3の整数である。
【0031】
本明細書の一実施態様において、前記mは2である。
【0032】
本明細書の一実施態様において、前記mは3である。
【0033】
本明細書の一実施態様において、前記mは4である。
【0034】
本明細書の一実施態様において、前記R2は水素であり、前記R1はエチレンオキシ基であり、前記mは2であり、前記R3はエトキシ基である。
【0035】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物は、カルビトールアクリレートである。
【0036】
本明細書の一実施態様において、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含み、前記化学式1で表される化合物は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤のガラス転移温度を低めてモジュラスを減少させ、比誘電率を増加させる効果がある。これに対し、化学式1を満たさないメトキシエチルアクリレートは、フォルダブルディスプレイ用粘着剤のガラス転移温度を高くする。これにより、モジュラスが高くなり、メトキシエチルアクリレートを多量で用いる場合、フォールディング性能が低下する。
【0037】
本明細書の一実施態様において、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物100重量部に対して、前記架橋剤は0.001重量部~1重量部である。
【0038】
本発明の一実施態様において、前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、またはイソシアネート系架橋剤である。
【0039】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N,N'-テトラグリシジル-1,3-キシレンジアミン、またはグリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4''-トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω'-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω'-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、またはキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、または2,4,4-トラメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;または3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、または1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ポリイソシアネートなどや、または上記のうち1つ以上のポリイソシアネートとポリオールの反応物などが挙げられる。
【0041】
一例示として、本出願の粘着剤組成物は、前記架橋剤を含み、熱硬化性樹脂に含まれる重合体に含まれている架橋性官能基と架橋反応を行うことができる。
【0042】
本明細書の一実施態様において、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物100重量部に対して、前記熱硬化性樹脂は99~99.999重量部である。
【0043】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位は、10重量部~98重量部で含まれる。
【0044】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位は、20重量部~98重量部で含まれる。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂は、アクリレート基を含む化合物に由来の単位を含む。
【0046】
本明細書の一実施態様において、前記アクリレート基を含む化合物は、エチルヘキシルアクリレート、またはアクリル酸である。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂は、エチルヘキシルアクリレート、またはアクリル酸に由来の単位を含む。
【0048】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂は、エチルヘキシルアクリレート、およびアクリル酸に由来の単位を含む。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物と、アクリレート基を含む化合物とは、互いに異なる。
【0050】
本明細書に係る前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物は、永久双極子モーメントにより極性を呈する化合物である。本明細書に係るアクリレート化合物は、極性を呈しない化合物を意味し、極性を有しないアクリレート化合物のみからなる樹脂は、誘電率が低い。したがって、極性を呈する、分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物を用いることが好ましく、この場合、粘着剤中に双極子モーメントを発生させ、誘電率を増加させる。
【0051】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位は、10重量部~98重量部であり、前記アクリレート基を含む化合物に由来の単位は2重量部~90重量部である。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記分子中に少なくとも1つのNまたはOと、少なくとも1つの非共有電子対と、を含む化合物に由来の単位は、20重量部~98重量部であり、前記アクリレート基を含む化合物に由来の単位は、2重量部~80重量部である。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、1,000,000g/mol以上2,000,000g/mol以下である。
【0054】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量が100万g/mol以下である場合には、耐久性が弱くなり、200万g/mol以上である場合には、コーティング性が低下し、フォールディング時にストレスが増加するという問題がある。
【0055】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により、一般的な高分子の測定方式により測定し、分子量が既知のポリスチレン(Polystyrene)を基準として測定した。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、上述の構成の他にも、上述の発明の効果に影響を与えない範囲で、用途、樹脂成分の種類、および後述の粘着剤層の製造工程に応じて、種々の添加剤を含んでもよい。例えば、粘着剤組成物は、水分吸着剤、無機フィラー、カップリング剤、架橋剤、硬化性物質、粘着付与剤、紫外線安定剤、または酸化防止剤などを目的の物性に応じて、適正な範囲の含量で含んでもよい。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の硬化物を含む粘着フィルムを提供する。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記組成物は、熱硬化することが好ましい。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化として、熱乾燥した後、熱処理してもよい。
【0060】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化として、熱乾燥することが好ましい。
【0061】
本明細書の一実施態様において、前記熱乾燥は、100℃~150℃で1分~10分乾燥することが好ましい。
【0062】
本明細書の一実施態様において、前記熱乾燥は、135℃~145℃で2分~4分乾燥することが好ましい。
【0063】
本明細書の一実施態様において、前記熱処理過程は、30℃~50℃で60時間~90時間放置することが好ましい。
【0064】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムの厚さは、10μm~50μmである。
【0065】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムの厚さは、20μm~30μmである。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムの厚さは、25μmである。
【0067】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムは、25℃、60RH%、100KHzでの比誘電率が4以上である。
【0068】
<比誘電率の測定方法>
本明細書において、比誘電率は、インピーダンスゲイン・フェーズアナライザ(Impedance gain-phase analyzer)を利用して静電容量値(Cp)を測定した後、下記式1により比誘電率値を計算する。
【0069】
[式1]
【数1】
前記式1中、ε
rは、粘着フィルムの比誘電率であり、
C
pは、粘着フィルムの静電容量値(F)であり、
hは、粘着フィルムの厚さ(m)であり、
Aは、粘着フィルムと付着された電極の面積(m
2)であり、
ε
0は、真空誘電率であって、8.854*10
-12F/mである。
【0070】
本明細書の一実施態様において、比誘電率が4以上であることが好ましい。比誘電率値は高いほど好ましく、20も可能である。
【0071】
本明細書の一実施態様において、前記比誘電率が4以上である粘着フィルムをオンセルタッチ構造に用いる場合、タッチ分解能が高く、応答速度が速いのに対し、比誘電率が4未満である場合には、タッチ分解能に劣り、タッチの感度にも劣る。
【0072】
フォルダブルディスプレイのその他の具体的な構成は、例えば、韓国特許出願公開第2015-0138450号などに公知されており、本出願は、前記粘着剤を含むかかる公知のフォルダブルディスプレイの構成を制限なしに含み得る。
【0073】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムは、カバーウィンドウとタッチパネルとの間、またはタッチパネルと表示パネルとの間に備えられる。
【0074】
図2には、基板201と、タッチパネルまたは表示パネル202と、偏光フィルム203と、カバーウィンドウ204と、が順に積層されたフォルダブルディスプレイの構造が例示されており、それぞれのバックプレートとタッチパネルまたは表示パネルとの間、タッチパネルまたは表示パネルと偏光板との間、偏光板とカバーウィンドウとの間に、本発明の粘着剤205が備えられてもよい。
【0075】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0076】
[実験例]
本願の実施例および比較例で用いられた粘着剤組成物の成分および重量比を下記表1に記載した。
【0077】
【0078】
<実施例1>
窒素ガスが還流され、温度調節が容易であるように冷却装置を取り付けた2Lの反応器に、エチルヘキシルアクリレート(EHA)50重量部、カルビトールアクリレート(CBA)48重量部、およびアクリル酸(AA)2重量部を投入し、メチルエチルケトン(MEK)で50%希釈し、窒素ガスを約1時間パージ(purging)した。反応器の温度を67℃に昇温させた状態で、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン200ppm、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル、azobisisobutyronitrile)200ppmを投入した後、重合反応を2時間進行させた。重合体の固形分が約24%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を添加しながら、酸素注入して重合を完了し、分子量200万g/molの熱硬化性樹脂を製造した。
【0079】
前記得られた熱硬化性樹脂に架橋剤(エポキシ系架橋剤(BXX-5240)、イソシアネート系架橋剤(BXX-5627))が前記含量比で配合された固形分を、粘度が800cpとなるようにメチルエチルケトンで希釈(固形分約15%)し、メカニカルスターラ(mechanical stirrer)を利用して15分以上混合(mixing)した。前記混合物を放置し、混合中に発生した気泡を除去し、アプリケータ(applicater)を用いて塗膜を形成した後、マティスオーブン(mathis oven)にて140℃、3分乾燥することで、厚さ25μmの粘着フィルムを得た。
【0080】
<実施例2、3、比較例1、および2>
前記実施例2、3、比較例1および2に係る粘着剤組成物は、前記表1に記載の樹脂組成の含量比で添加し、前記実施例1の重合方法により熱硬化性樹脂を製造し、粘着フィルムを製造した。
【0081】
前記方法により製作された粘着フィルムの貯蔵弾性率、比誘電率、スタティックフォールディング(Static folding)、およびダイナミックフォールディング(Dynamic folding)を測定し、下記表2に表示した。
【0082】
【0083】
前記貯蔵弾性率および比誘電率は、本明細書に記載の貯蔵弾性率の測定方法、比誘電率の測定方法と同様の方法により測定した。
【0084】
<スタティックフォールディング(Static folding)テスト>
図1に記載の2セットスタックアップ(2-Set_Stack Up)構造を有するように、試験片を7.8cmx14cmに製作した後、半分に折り、5mmの間隔を有する平行板(parallel plate)で挟み、60℃、90%RHの条件で放置した。20日が経過した後に試験片を回収し、気泡発生の程度および浮き上がりの程度を目視で観察した。
【0085】
気泡発生がなく、浮き上がりがないとOK、気泡や浮き上がりが発生するとN.Gと表示した。
【0086】
2セットスタックアップ(2-Set_Stack Up)構造は、タッチパネルまたは表示パネル101、粘着剤層(PSA)102、偏光フィルム(POL)103、粘着剤層(PSA)104、ハードコーティング層(HC)105、ポリイミド層(PI)106、およびハードコーティング層(HC)107を順にラミネートして積層した構造であり、前記構造の試験片を7.8cmx14cmのサイズに製作した。
【0087】
<ダイナミックフォールディング(Dynamic folding)テスト>
前記スタティックフォールディング(Static folding)と同様に試験片を製作し、5mmの間隔を有する平行板で挟み、25℃で10万回折って伸ばすテストを行った。テストが終わった後に試験片を回収し、気泡発生の程度、浮き上がりの程度、およびハードコーティング層のクラックを目視で観察した。
【0088】
気泡発生がなく、浮き上がりがなく、ハードコーティング層のクラックがないとOK、気泡や浮き上がり、またはハードコーティング層のクラックが発生すると、N.G.と表示した。
【0089】
カルビトールアクリレートを含んでいない前記比較例1の比誘電率は4未満であり、カルビトールアクリレートを含む実施例1~3の比誘電率は4以上であることを確認した。したがって、実施例1~3の粘着フィルムが、比較例1の粘着フィルムに比べてタッチ分解能が高く、応答速度が速いため、フォルダブルディスプレイ用粘着剤として好適である。
【0090】
また、カルビトールアクリレートの代わりに2-メトキシエチルアクリレートを使用した比較例2は、実施例1~3に比べて、ダイナミックフォールディングテストでハードコーティング層のクラックが発生した。したがって、本明細書の一実施態様に係る化学式1を満たす化合物を含んでいない粘着剤は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤に適しないことが分かる。
【符号の説明】
【0091】
101 タッチパネルまたは表示パネル
102、104 粘着剤層(PSA)
103 偏光フィルム(POL)
105、107 ハードコーティング層(HC)
106 ポリイミド層(PI)
201 基板
202 タッチパネルまたは表示パネル
203 偏光フィルム
204 カバーウィンドウ
205 粘着剤(PSA)