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特許7136577二酸化炭素製造装置、二酸化炭素製造方法、二酸化炭素製造装置の設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素製造装置、二酸化炭素製造方法、二酸化炭素製造装置の設計方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/50 20170101AFI20220906BHJP
   C04B 7/36 20060101ALI20220906BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20220906BHJP
   B01D 8/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C01B32/50
C04B7/36
F27D17/00 101A
B01D8/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018070172
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178056
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】島 裕和
(72)【発明者】
【氏名】小松 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 佳典
(72)【発明者】
【氏名】高田 佳明
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-269785(JP,A)
【文献】特開2011-168445(JP,A)
【文献】特開2012-246184(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/50
C04B 7/36
F27D 17/00
B01D 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と希釈媒体とを含む混合ガスを循環させるガス循環ラインと、前記ガス循環ラインに順に配された熱交換器、反応器、および分離器と、前記ガス循環ラインに接続された原料粉体供給ライン、二酸化炭素回収ライン、および希釈媒体供給ラインと、前記二酸化炭素回収ラインに形成された希釈媒体分離手段と、を備え、
前記熱交換器は、前記ガス循環ラインと、該ガス循環ラインの温度よりも高温の高温雰囲気場との間で熱交換を行い、
前記原料粉体供給ラインは、前記反応器と前記熱交換器との間、または前記反応器に接続されて、前記ガス循環ラインに二酸化炭素の生成原料粉体を供給し、
前記反応器は、前記熱交換器で加熱された前記混合ガスに前記生成原料粉体を接触させて脱炭酸反応によって二酸化炭素を生成し、
前記分離器は、前記生成原料粉体と前記混合ガスとを分離し、
前記二酸化炭素回収ラインは、前記混合ガスを前記ガス循環ラインの系外に回収し、
前記希釈媒体供給ラインは、前記希釈媒体を前記ガス循環ラインに供給して、前記反応器において前記混合ガスに含まれる二酸化炭素の分圧を低下させることにより、脱炭酸反応の反応温度を低下させ、
前記希釈媒体分離手段は、前記混合ガスから前記希釈媒体を分離することを特徴とする二酸化炭素製造装置。
【請求項2】
前記希釈媒体分離手段は、二酸化炭素と前記希釈媒体との沸点差、または溶解度差を利用して二酸化炭素と前記希釈媒体とを分離することを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素製造装置。
【請求項3】
前記高温雰囲気場は、セメント製造装置におけるセメントキルン、クリンカクーラー、プレヒーター、仮焼炉、および前記クリンカクーラーと前記仮焼炉とを接続する抽気ダクトのうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1または2記載の二酸化炭素製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一項記載の二酸化炭素製造装置を用いた二酸化炭素製造方法であって、
前記希釈媒体供給ラインを介して希釈媒体を前記ガス循環ラインに供給する希釈媒体供給工程と、
前記熱交換器で前記混合ガスを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記混合ガスに前記生成原料粉体を直接接触させて加熱し、脱炭酸反応を生じさせて二酸化炭素を生成する反応工程と、
前記生成原料粉体と前記混合ガスとを分離する固気分離工程と、
前記反応工程で生じた二酸化炭素生成量に相当する量の前記二酸化炭素を含む前記混合ガスを回収し、残りの前記混合ガスを前記ガス循環ラインに還流させる回収工程と、
前記回収工程で回収した前記混合ガスから前記希釈媒体を分離する希釈媒体分離工程と、を備えたことを特徴とする二酸化炭素製造方法。
【請求項5】
前記反応工程では、前記希釈媒体供給工程における希釈媒体供給量、および前記加熱工程で加熱された後の前記混合ガスの温度に基づいて、二酸化炭素の生成量が最大値±10%の範囲内になるように、前記ガス循環ラインへの前記生成原料粉体の供給量を制御することを特徴とする請求項4記載の二酸化炭素製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし3いずれか一項記載の二酸化炭素製造装置の設計方法であって、
前記ガス循環ラインに供給する希釈媒体供給量、および前記熱交換器で加熱された後の前記混合ガスの温度に基づいて、二酸化炭素の生成量が最大値±10%の範囲内になるように、前記ガス循環ラインへの前記生成原料粉体の供給量を決定し、この決定に基づいて前記二酸化炭素製造装置の設計を行うことを特徴とする二酸化炭素製造装置の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばセメント製造装置で生じる熱を用いて、セメント原料精粉や石灰石などを加熱して二酸化炭素を製造するための二酸化炭素製造装置、二酸化炭素製造方法、および二酸化炭素製造装置の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的かつ全産業にわたって、地球温暖化の主因である二酸化炭素(CO)を削減する試みが推進されている。例えばセメント産業は、電力や鉄鋼等と共に二酸化炭素の排出量が多い産業の一つであり、日本における二酸化炭素の全排出量の約4%を占めている。このため、セメント製造プロセスで生じる二酸化炭素を含む排ガスを大気中に放出せずに回収することが考えられている。
【0003】
回収した二酸化炭素は、地中に貯留したり、植物や藻類の育成、液化炭酸として食品原料、工業原料に用いるなど、幅広く再利用することができる。一方、回収した二酸化炭素を産業的に有効利用するためには、二酸化炭素の濃度を例えば90~100vol%といった高濃度に高める必要がある。また、回収した二酸化炭素を植物や藻類の育成や食品原料に用いる場合、有害成分を含まないことも重要である。
【0004】
セメント製造装置のセメントキルンや仮焼炉において石炭、石油、天然ガス等の熱エネルギーを純酸素で燃焼させて得られる排ガスは、二酸化炭素を多く含んでいるものの、この排ガス中には燃焼ガス由来の揮発性有機化合物(VOC)、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の人体や植物に有害な不純物が含まれている。このため、得られた二酸化炭素を含む排ガスを植物や藻類の育成や食品原料に用いる場合には、これらの不純物を除去する工程が別途必要があり、二酸化炭素の製造方法としてはコストが高く、未だに実用化には至っていない。
【0005】
一方、特許文献1には、セメント原料精粉に含まれる石灰石から発生する二酸化炭素を間接的に加熱することによって、二酸化炭素を回収する方法が記載されている。これは、セメント原料精粉を隔壁越しに加熱したり、過熱させた仮焼済のセメント原料などの熱媒体を仮焼時に生じた二酸化炭素を含む排ガスに接触させて、高濃度の二酸化炭素を生成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-269785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されたセメント製造設備における二酸化炭素の回収方法によれば、セメント製造に伴い生じる排ガスから、濃度100vol%といった高濃度の二酸化炭素を回収することが可能である。しかしながら、回収する二酸化炭素の濃度を高くするほど、反応温度も高くする必要があり、加熱に要するコストが掛かる。このため、より低い反応温度で二酸化炭素を低コストに製造することが可能な二酸化炭素の製造方法が望まれていた。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、有害成分を殆ど含まない二酸化炭素を低コストに製造することが可能な二酸化炭素製造装置、およびこれを用いた二酸化炭素製造方法、二酸化炭素製造装置の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の二酸化炭素製造装置は、二酸化炭素と希釈媒体とを含む混合ガスを循環させるガス循環ラインと、前記ガス循環ラインに順に配された熱交換器、反応器、および分離器と、前記ガス循環ラインに接続された原料粉体供給ライン、二酸化炭素回収ライン、および希釈媒体供給ラインと、前記二酸化炭素回収ラインに形成された希釈媒体分離手段と、を備え、前記熱交換器は、前記ガス循環ラインと、該ガス循環ラインの温度よりも高温の高温雰囲気場との間で熱交換を行い、前記原料粉体供給ラインは、前記反応器と前記熱交換器との間、または前記反応器に接続されて、前記ガス循環ラインに二酸化炭素の生成原料粉体を供給し、前記反応器は、前記熱交換器で加熱された前記混合ガスに前記生成原料粉体を接触させて脱炭酸反応によって二酸化炭素を生成し、前記分離器は、前記生成原料粉体と前記混合ガスとを分離し、前記二酸化炭素回収ラインは、前記混合ガスを前記ガス循環ラインの系外に回収し、前記希釈媒体供給ラインは、前記希釈媒体を前記ガス循環ラインに供給して、前記反応器において前記混合ガスに含まれる二酸化炭素の分圧を低下させることにより、脱炭酸反応の反応温度を低下させ、前記希釈媒体分離手段は、前記混合ガスから前記希釈媒体を分離することを特徴とする。
【0010】
本発明の二酸化炭素製造装置によれば、ガス循環ラインに二酸化炭素と希釈媒体とを含む混合ガスを循環させるとともに、希釈媒体供給ラインから希釈媒体を供給し、高温雰囲気場で混合ガスを加熱し、この加熱された混合ガスを熱源として用いて、ガス循環ラインに供給された生成原料粉体を加熱して脱炭酸反応を生じさせることにより、二酸化炭素を連続して効率的に生成することができる。
【0011】
このような脱炭酸反応を行う際に、ガス循環ラインに希釈媒体を供給して混合ガスに含まれる二酸化炭素の分圧を低下させることにより、大気圧環境での脱炭酸反応のような高温にする必要が無く、より低温で二酸化炭素を生成することができる。
【0012】
また、本発明では、前記希釈媒体分離手段は、二酸化炭素と前記希釈媒体との沸点差、または溶解度差を利用して二酸化炭素と前記希釈媒体とを分離することが好ましい。
【0013】
また、本発明では、前記高温雰囲気場は、セメント製造装置におけるセメントキルン、クリンカクーラー、プレヒーター、仮焼炉、および前記クリンカクーラーと前記仮焼炉とを接続する抽気ダクトのうち、少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。
【0014】
本発明の二酸化炭素製造方法は、前記各項記載の二酸化炭素製造装置を用いた二酸化炭素製造方法であって、前記希釈媒体供給ラインを介して希釈媒体を前記ガス循環ラインに供給する希釈媒体供給工程と、前記熱交換器で前記混合ガスを加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記混合ガスに前記生成原料粉体を直接接触させて加熱し、脱炭酸反応を生じさせて二酸化炭素を生成する反応工程と、前記生成原料粉体と前記混合ガスとを分離する固気分離工程と、前記反応工程で生じた二酸化炭素生成量に相当する量の前記二酸化炭素を含む前記混合ガスを回収し、残りの前記混合ガスを前記ガス循環ラインに還流させる回収工程と、前記回収工程で回収した前記混合ガスから前記希釈媒体を分離する希釈媒体分離工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の二酸化炭素製造方法によれば、ガス循環ラインに二酸化炭素と希釈媒体とを含む混合ガスを循環させるとともに、希釈媒体供給工程でガス循環ラインに希釈媒体を供給し、反応工程で混合ガスを加熱して、加熱された混合ガスを熱源として用いて、ガス循環ラインに供給された生成原料粉体を加熱して脱炭酸反応を生じさせることにより、二酸化炭素を連続して効率的に生成することができる。
【0016】
このような脱炭酸反応を行う際に、希釈媒体供給工程で希釈媒体をガス循環ラインに供給して混合ガスに含まれる二酸化炭素の分圧を低下させることにより、大気圧環境での脱炭酸反応のような高温にする必要が無く、より低温で二酸化炭素を生成することができる。
【0017】
また、本発明は、前記反応工程では、前記希釈媒体供給工程における希釈媒体供給量、および前記加熱工程で加熱された後の前記混合ガスの温度に基づいて、二酸化炭素の生成量が最大値±10%の範囲内になるように、前記ガス循環ラインへの前記生成原料粉体の供給量を制御することが好ましい。
【0018】
本発明の二酸化炭素製造装置の設計方法は、前記ガス循環ラインに供給する希釈媒体供給量、前記熱交換器で加熱された後の前記混合ガスの温度に基づいて、二酸化炭素の生成量が最大値±10%の範囲内になるように、前記ガス循環ラインへの前記生成原料粉体の供給量を決定し、この決定に基づいて前記二酸化炭素製造装置の設計を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有害成分を殆ど含まない二酸化炭素を低コストに製造することが可能な二酸化炭素製造装置、およびこれを用いた二酸化炭素製造方法、二酸化炭素製造装置の設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の二酸化炭素製造装置およびこの二酸化炭素製造装置が設置されるセメント製造装置を示す模式図である。
図2】第1熱交換器(熱交換器)の一例を示す模式図である。
図3】反応器の一例を示す模式図である。
図4】石灰石の主成分であるCaCOの脱炭酸反応における二酸化炭素の平衡蒸気圧曲線である。
図5】本発明の二酸化炭素製造方法を段階的に示したフローチャートである。
図6】二酸化炭素生成量と石灰石投入量との関係を示すグラフである。
図7】石灰石反応率と二酸化炭素生成量との関係を示すグラフである。
図8】石灰石反応率と石灰石投入量との関係を示すグラフである。
図9】反応後温度と石灰石反応率との関係を示すグラフである。
図10】二酸化炭素を含む混合ガスの温度ごとに、C/Lと石灰石投入量Lとの関係をプロットした計算例のグラフである。
図11】二酸化炭素を含む混合ガスの温度および水蒸気供給量ごとに、最大二酸化炭素生成量とその時の石灰石投入量との関係をプロットした計算例のグラフである。
図12】石灰石投入量と最大二酸化炭素生成量(回収量)のグラフである。
図13】反応工程での水蒸気供給量と脱炭酸反応温度との関係を示すグラフである。
図14】石灰石投入量と二酸化炭素の生成量との関係を示すグラフである。
図15】石灰石投入量と二酸化炭素の生成量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の二酸化炭素製造装置、およびこれを用いた二酸化炭素製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0022】
(二酸化炭素製造装置)
まず最初に、本発明の二酸化炭素製造装置における生成原料粉体の供給源や高温雰囲気場となるセメント製造装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の二酸化炭素製造装置およびこの二酸化炭素製造装置が設置されるセメント製造装置を示す模式図である。
なお、以下の説明において、混合ガスといった場合、生成した二酸化炭素と希釈媒体とが混合したガスであり、更に空気が含まれる場合もある。また、図1において、実線矢印は二酸化炭素を含む混合ガスなど気体の流れを示し、点線矢印は、生成原料粉体など固体(粉体)の流れを示す。
【0023】
図1に示すセメント製造装置30は、プレヒーター31、セメントキルン32、クリンカクーラー33、仮焼炉34を備えている。なお、図1に示すセメント製造装置30は、セメント製造プロセスの要部である焼成工程を行うための構成であり、この焼成工程の前工程である原料工程においては、原料粉砕機や原料混合機(図示略)が備えられ、また、焼成工程の後工程である仕上工程においては、クリンカ粉砕機や分級機(図示略)が備えられている。
【0024】
プレヒーター31は、鉛直方向に配置された複数段のサイクロン31A~31Dが連結されたものから構成され、鉛直方向に隣り合う段どうしのサイクロン31A~31Dは、互いに水平方向にずらして配置されている。なお、本実施形態では、2組のプレヒーター31,31が互いに並列して配置された構成となっている。プレヒーター31は、1組だけであっても、3組以上設けられていてもよい。
【0025】
最上段のサイクロン31Aにはセメント原料供給ライン42が接続され、前工程である原料工程から、このセメント原料供給ライン42を介して最上段のサイクロン31Aにセメント原料精粉Mが供給される。セメント原料精粉Mは、主成分が粉体の石灰石(CaCO)であり、その他に粘土成分(SiO,Al,Fe)などを含んでいる。
【0026】
一方、最下段のサイクロン31Dには、仮焼炉34から排出される高温の排ガスC1が供給され、最上段のサイクロン31Aに向かって流れる。そして、最上段のサイクロン31Aに達した排ガスC1は、排気ファン35によって排気ライン36を介して排気される。
【0027】
最上段のサイクロン31Aに供給されたセメント原料精粉Mは、下段のサイクロン31B,31Cに順次落下するにしたがって、最上段のサイクロン31Aに向かって流れる高温の排ガスC1によって予熱される。下段のサイクロン31Cに達したセメント原料精粉Mは、例えば約750℃程度まで加熱されており、この後、原料配管37を介して仮焼炉34に送られる。セメント原料精粉Mは、この仮焼炉34で石炭バーナー34aによって更に850℃程度まで加熱される。
【0028】
原料配管37の途中からは、後述する二酸化炭素製造装置10のガス循環ライン11に接続される原料粉体供給ライン21が分岐する。この原料粉体供給ライン21には、下段のサイクロン31Cから排出されたセメント原料精粉Mの一部が入り、二酸化炭素製造装置10のガス循環ライン11に仮焼後のセメント原料精粉Mを供給する。
【0029】
仮焼炉34によって加熱されたセメント原料精粉Mは、仮焼炉排気ダクト38を介して再びプレヒーター31に戻され、最下段のサイクロン31Dから移送管39を介してセメントキルン32の窯尻部32aに送られる。
【0030】
セメントキルン32は、例えば、回転可能な円筒形の炉体32bと、この炉体32bの内部を加熱する主バーナ32cを備える。窯尻部32aから供給された予備加熱後のセメント原料精粉Mは、炉体32bの内部で主バーナ32cによって加熱される。
【0031】
セメントキルン32で例えば1450℃程度まで加熱されたセメント原料精粉Mは、以下の式(1)~(5)に示す反応が生じる。
CaCO→CaO+CO ・・・(1)
3CaO+SiO→3CaO・SiO ・・・(2)
2CaO+SiO→2CaO・SiO ・・・(3)
3CaO+Al→3CaO・Al ・・・(4)
4CaO+Al+Fe→4CaO・Al・Fe ・・・(5)
これにより、最終的にセメントクリンカを構成するケイ酸カルシウム化合物であるエーライト(3CaO・SiO)およびビーライト(2CaO・SiO)並びに間隙相であるアルミネート相(3CaO・Al)およびフェライト相(4CaO・Al・Fe)が生成される。
【0032】
クリンカクーラー33は、例えば冷却ファンなどから構成され、セメントキルン32で生成された高温のセメントクリンカを冷却する。こうして冷却されたセメントクリンカは、仕上工程において更に粉砕や分級が行われてセメントとなる。
【0033】
一方、このクリンカクーラー33で高温のセメントクリンカを冷却する際に生じた高温の抽気ガスC2は、クリンカクーラー33と仮焼炉34とを接続する抽気ダクト41を介して仮焼炉34に送られる。この抽気ガスC2は、例えば、800℃~1200℃程度に加熱されている。本実施形態では、この抽気ダクト41は、後述する二酸化炭素製造装置10における高温雰囲気場Hを構成する。また、この抽気ダクト41には、後述する二酸化炭素製造装置10における分離器14で固気分離された後の固相である生石灰(CaO)および未反応のセメント原料精粉Mを返送する返送ライン19の排出側が接続されている。
【0034】
次に、本発明の二酸化炭素製造装置の構成、作用を説明する。二酸化炭素製造装置10は、二酸化炭素を含む混合ガスGを循環させるガス循環ライン11と、このガス循環ライン11に順に配された第1熱交換器(熱交換器)12、反応器13、および分離器14と、ガス循環ライン11に接続された原料粉体供給ライン21、二酸化炭素回収ライン22、および希釈媒体供給ライン23とを備えている。ガス循環ライン11には、さらに第2熱交換器15および循環ポンプ16が配されている。
【0035】
ガス循環ライン11は、二酸化炭素を含む混合ガスGが流れるガス流路であり、環状に形成され、内部に混合ガスGが循環する。図1においては、反時計回り方向に混合ガスGが循環している。なお、このガス循環ライン11の一部区間には、後述する生成原料粉体であるセメント原料精粉Mも流れる。また、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGに含まれる二酸化炭素の濃度は、ガス循環ライン11全体で必ずしも一様とは限らず、区間によって二酸化炭素の濃度が異なることもある。
【0036】
ガス循環ライン11は、高温環境、例えば800℃以上の温度に耐えうる材料、例えば炭化ケイ素やアルミナ、ジルコニアなど、またはそれらを含む材料によって形成されている。なお、ガス循環ライン11のうち、第1熱交換器12や反応器13が形成されている部分は、更に高温の850℃程度まで耐えうる材料によって形成されていればよい。
【0037】
希釈媒体供給ライン23は、例えば循環ポンプ16と第1熱交換器12との間でガス循環ライン11に接続される。希釈媒体供給ライン23には、希釈媒体の供給量を調節する流量調節バルブ27、および希釈媒体の流量を検出する流量計26が接続されている。このような希釈媒体供給ライン23によって、予め設定された流量の希釈媒体Eがガス循環ライン11内に送り込まれる。なお、希釈媒体の供給は、ポンプ(図示略)などによって行えばよい。更に、希釈媒体供給ライン23には、フィルターなどを形成することも好ましい。
【0038】
希釈媒体供給ライン23からガス循環ライン11に供給される希釈媒体Eは、二酸化炭素よりも沸点が高い物質、特に室温では液体で、100~200℃程度まで加熱することによって容易に気体になる物質、なおかつ液体状態では二酸化炭素を多量に溶解しない物質から選択することが好ましい。このような物質として、水(気化時は水蒸気)、アセトン、エタノール、ベンゼン、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。本実施形態では、水を気化させた水蒸気を希釈媒体Eとして用いた。この場合、希釈媒体供給ライン23は、例えばボイラーなどの水蒸気供給源に接続されていればよい。
【0039】
第1熱交換器12(熱交換器)は、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGと、高温雰囲気場Hである抽気ダクト41を流れる高温の抽気ガスC2との間で熱交換を行う。高温雰囲気場Hは、第1熱交換器12に流入する側のガス循環ライン11の温度よりも高温とする。例えば、第1熱交換器12に入る部分のガス循環ライン11の温度は600℃程度であり、高温雰囲気場Hは900℃程度である。こうした高温雰囲気場Hとの間で熱交換を行うことにより、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGは、例えば850℃程度まで加熱される。
【0040】
図2は、第1熱交換器の一例を示す模式図である。
第1熱交換器12は、本実施形態においては、高温雰囲気場Hの一例であるセメント製造装置30の抽気ダクト41に形成されている。この抽気ダクト41の内部には、クリンカクーラー33から仮焼炉34に向かう例えば800℃~1000℃程度の高温の抽気ガスC2が流れている。
【0041】
第1熱交換器12は、内管17aと外管17bとを備えた二重管構造の熱交換チューブ17を有し、この熱交換チューブ17は、ガス循環ライン11の一部を構成する。第1熱交換器12に流入した混合ガスGは内管17aの内側を流れ、内管17aの端部から外管17bの内側に流出して、更に内管17aと外管17bとの間を流れる。ガス循環ライン11は、第1熱交換器12においては、内管17aと外管17bとからなる混合ガスGの流路を構成される。
【0042】
第1熱交換器12の熱交換チューブ17を構成する内管17aや外管17bは、例えば炭化ケイ素(SiC)によって形成されている。炭化ケイ素は、1000℃程度の高温環境であっても、混合ガスGや、セメント製造装置30のプレヒーター31、セメントキルン32、クリンカクーラー33、仮焼炉34など(図1参照)から排出される燃焼ガス由来の揮発性有機化合物(VOC)、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の不純物を含むガスなどに対して優れた耐蝕性を有し、かつ、熱伝導性に優れている。このような構成の第1熱交換器12によれば、長期間にわたって構成材料が劣化することがなく、混合ガスGと抽気ガスC2との間で効率的に熱交換を行うことができる。
【0043】
再び図1を参照して、本実施形態では、第1熱交換器12において、ガス循環ライン11と熱交換を行う高温雰囲気場Hは、セメント製造装置30におけるクリンカクーラー33と仮焼炉34とを接続する抽気ダクト41の内部としているが、高温雰囲気場Hは、抽気ダクト41の内部以外にも、セメント製造装置30における高温部分、例えば温度が800~1000℃程度となるセメントキルン32、クリンカクーラー33、プレヒーター31、仮焼炉34のうち、少なくともいずれか1つであればよい。
【0044】
ガス循環ライン11における第1熱交換器12の下流側の反応器13には、二酸化炭素の生成原料粉体であるセメント原料精粉Mを供給する原料粉体供給ライン21が接続される。この原料粉体供給ライン21は、セメント製造装置30のプレヒーター31で例えば750℃程度まで加熱されたセメント原料精粉(生成原料粉体)Mを反応器13に供給する。原料粉体供給ライン21から供給されたセメント原料精粉Mは、反応器13内で第1熱交換器12で加熱された混合ガスGに直接接触して、脱炭酸反応を生じる。
【0045】
なお、本実施形態では、原料粉体供給ライン21は反応器13に接続され、セメント原料精粉Mは反応器13に直接供給される構成になっているが、これ以外にも、例えば、第1熱交換器12と反応器13との間(反応器13の上流側)に原料粉体供給ライン21が接続され、反応器13に混合ガスGとセメント原料精粉Mとが流入する構成であってもよい。また、二酸化炭素の生成原料粉体は、セメント原料精粉M以外にも、高純度の石灰石粉末などであってもよい。本実施形態では、セメント原料精粉Mは石灰石である場合を例示している。
【0046】
図3は、反応器の一例を示す模式図である。
反応器13は、例えば、筒状の反応容器25を備える。この反応容器25は、例えば、ガスGの滞留時間を長くして、反応促進を促すため、ガス循環ライン11を構成する配管よりも直径以上の反応管であればよい。反応容器25はガス循環ライン11の一部を成し、一端25aから他端25bに向けて第1熱交換器12で加熱された混合ガスGが流れる。また、この反応容器25の一端25a寄りには原料粉体供給ライン21が接続され、反応容器25内にセメント原料精粉Mが所定の流量で供給される。
【0047】
反応器13は、反応容器25内において、第1熱交換器12によって850℃程度まで加熱された混合ガスGに対して、プレヒーター31で750℃程度まで加熱されたセメント原料精粉Mを接触させることにより、セメント原料精粉Mが加熱される。これにより、セメント原料精粉Mの主成分である石灰石(CaCO)の脱炭酸反応(熱分解反応:下記の式(6)を参照)を起こさせる。
CaCO→CaO+CO ・・・(6)
【0048】
なお、必ずしも投入されたセメント原料精粉Mの全量が反応器13内で脱炭酸反応が完結するとは限らず、例えば、反応器13から下流側の分離器14に至るガス循環ライン11の配管内で脱炭酸反応が生じる場合もあり、脱炭酸反応の発生領域を限定するものでは無い。
また、原料粉体供給ライン21から投入されたセメント原料精粉Mは、必ずしも投入量の全量が脱炭酸反応を起こすとは限らず、未反応のセメント原料精粉Mが残ることもある。
【0049】
反応器13(およびこれを含むガス循環ライン11全体)では、希釈媒体供給ライン23から希釈媒体Eをガス循環ライン11に供給することによって、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGに含まれる二酸化炭素の分圧が、希釈媒体Eである水蒸気の供給分だけ低下する。
【0050】
図4に示すグラフによれば、二酸化炭素の分圧を平衡圧力よりも下げることにより、脱炭酸反応の反応温度が低下する。希釈媒体供給ライン23によってガス循環ライン11に希釈媒体Eである水蒸気を供給して、混合ガスGに含まれる二酸化炭素の分圧を下げれば、水蒸気の供給量に応じてセメント原料精粉Mに含まれる石灰石の脱炭酸反応の反応温度が低下する。
なお、希釈媒体の供給量は、本実施形態の希釈媒体である水蒸気を例にとると、利用できる(工場等で余剰の)水蒸気量を上限とし、所望の二酸化炭素製造量を得られるように決定することが好ましい。
【0051】
本実施形態では、例えば、希釈媒体供給ライン23から水蒸気をガス循環ライン11に供給し反応器13内の二酸化炭素の分圧を0.33atmにすれば、脱炭酸反応の反応温度を823℃まで低下させることができ、大気圧環境での脱炭酸反応と比較して、反応温度を約70℃低下させることができる。
【0052】
なお、反応器13に流入する混合ガスGの流量は、二酸化炭素の分圧を0.1atm以上1.0atm未満となるように調整することが好ましい。二酸化炭素の分圧が0.1atmよりも低い場合、反応温度を下げることが出来るものの脱炭酸反応の反応速度が大きく低下する。具体的には、二酸化炭素の分圧が0.05atmの時の反応温度は721℃であり1.0atmの時の反応温度893℃に対して172℃に低下することができるが、後述する式(7)に基づいて求めた反応速度は1.0atmの時の値の100分の2となるため、効率的に二酸化炭素を生成することが困難である。また、二酸化炭素の分圧が1.0atm以上であれば、脱炭酸反応の反応温度を低下させることができない。
【0053】
分離器14は、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGと、反応器13で生じた生石灰(CaO)および未反応のセメント原料精粉Mとを分離(固気分離)する。ここで分離された生石灰(CaO)および未反応のセメント原料精粉Mは、返送ライン19を介してセメント製造装置30に送られて、セメント原料精粉Mとして利用される。
【0054】
なお、返送ライン19は、本実施形態のように反応器13と抽気ダクト41とを接続する構成以外にも、例えば、反応器13とセメントキルン32、反応器13とプレヒーター31、反応器13と仮焼炉34をそれぞれ接続するように構成しても良い。
【0055】
第2熱交換器15は、ガス循環ライン11において、二酸化炭素回収ライン22が接続された位置を挟んだ上流側と下流側との間で、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGどうしの熱交換を行う。具体的には、反応器13で脱炭酸反応を行った750℃程度の混合ガスGと、下流側で混合ガスGの一部が二酸化炭素回収ライン22に回収された残りの比較的低温、例えば300℃程度の混合ガスGとの間で熱交換が行われる。これによって、反応器13で脱炭酸反応によって生じた二酸化炭素を含む混合ガスGは300℃程度まで温度が低下し、一方で第1熱交換器12に入る直前の混合ガスGは600℃程度まで温度が高められる。
【0056】
循環ポンプ16は、ガス循環ライン11全体で混合ガスGを循環させる。この循環ポンプ16を前述した第2熱交換器15の下流側に配置することにより、第2熱交換器15による熱交換で温度が300℃程度まで下げられた混合ガスGが循環ポンプ16に流入するので、例えば500℃以上の高温ガスの流入による循環ポンプ16の破損や劣化を防止できる。
【0057】
二酸化炭素回収ライン22は、循環ポンプ16の下流側に接続され、ここから二酸化炭素と希釈媒体Eである水蒸気との混合ガスGが回収される。二酸化炭素回収ライン22には、流量計28が接続されている。この二酸化炭素回収ライン22で回収される混合ガスGの量(単位時間当たりの回収量)は、例えば、反応器13でセメント原料精粉Mの脱炭酸反応により生成させた二酸化炭素の生成量(単位時間当たりの生成量)と、希釈媒体供給ライン23から供給される水蒸気の量(単位時間当たりの供給量)とを加算した量と同一になるように調整される。これにより、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGの流量、および全圧は一定に保たれる。
【0058】
二酸化炭素回収ライン22の流量計28よりも下流側には、二酸化炭素と希釈媒体との沸点差、または溶解度差を利用して二酸化炭素と希釈媒体Eとを分離する希釈媒体分離手段が設けられている。本実施形態では、希釈媒体分離手段として、希釈媒体Eである水蒸気を冷却、凝集させて水にして二酸化炭素と分離させる凝集器(希釈媒体分離手段)29が二酸化炭素回収ライン22に形成されている。
【0059】
二酸化炭素回収ライン22で回収された二酸化炭素と水蒸気とを含む混合ガスGは、この凝集器29を通過する間に例えば100℃未満まで冷却され、水蒸気が液化されて水になり二酸化炭素と分離される。これによって、混合ガスGから希釈媒体Eである水蒸気を取り除いた二酸化炭素を二酸化炭素回収ライン22から得ることができる。なお、分離された水は二酸化炭素を若干溶解するが、水蒸気が液化された直後の水は80℃~90℃と高温であり、二酸化炭素の溶解量は僅かである。
【0060】
二酸化炭素回収ライン22に設けられた凝集器29を介してガス循環ライン11の系外に回収される二酸化炭素は、例えば液化炭酸の原料として利用することを想定し、濃度範囲を90vol%以上100vol%以下、望ましくは95vol%以上100vol%以下、より望ましくは98vol%以上100vol%以下の範囲とする。例えば二酸化炭素の濃度は95vol%である。
【0061】
なお、希釈媒体分離手段は、希釈媒体の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、沸点差(液化温度差)を利用した凝集器29以外にも、希釈媒体Eが易溶性であり、かつ二酸化炭素を溶解しない希釈媒体吸収液体に混合ガスGを通過(例えばバブリング)させて、二酸化炭素と希釈媒体Eとを分離する溶解器などから希釈媒体分離手段を構成することも好ましい。
【0062】
(二酸化炭素製造方法)
以上のような構成の二酸化炭素製造装置10を用いた、本発明の二酸化炭素製造方法を説明する。
図5は、本発明の二酸化炭素製造方法を段階的に示したフローチャートである。
二酸化炭素製造装置10を用いて所定濃度の二酸化炭素を製造する際には、まず、循環ポンプ16によって、ガス循環ライン11に二酸化炭素と水蒸気とを含む混合ガスGを循環させる。
【0063】
また、セメント製造装置30のプレヒーター31から、例えば、750℃程度まで加熱されたセメント原料精粉(生成原料粉体)Mを、原料粉体供給ライン21を介してガス循環ライン11に供給する。また、希釈媒体供給ライン23からガス循環ライン11に向けて、本実施形態の希釈媒体である水蒸気を供給する(希釈媒体供給工程S1)。水蒸気を供給することによって、ガス循環ライン11を介して反応器13での二酸化炭素分圧を例えば0.33atm程度にする。
【0064】
そして、セメント製造装置30に設けられた高温雰囲気場Hである抽気ダクト41に形成された第1熱交換器(熱交換器)12において、抽気ダクト41を流れる高温の抽気ガスC2と、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGとの間で熱交換を行い、反応器13に入る混合ガスGの温度を例えば850℃程度まで加熱する(加熱工程S2)。
【0065】
なお、第1熱交換器12を設ける高温雰囲気場Hは、クリンカクーラー33と仮焼炉34とを接続する抽気ダクト41以外にも、セメント製造装置30における高温部分、例えばセメントキルン32、クリンカクーラー33、プレヒーター31、仮焼炉34のうち、少なくともいずれか1つであればよい。
【0066】
次に、反応器13において、加熱工程S2で加熱された二酸化炭素を含む混合ガスGを熱源として用いてセメント原料精粉Mを加熱する。セメント原料精粉Mは、高温の混合ガスGによって、例えば850℃~900℃程度まで加熱される。これにより、セメント原料精粉Mの主成分である石灰石(CaO)は、脱炭酸反応によって二酸化炭素を生成する(反応工程S3)。
【0067】
反応器13における混合ガスGに含まれる二酸化炭素の分圧は、ガス循環ライン11への水蒸気の供給によって、例えば、0.33atm程度にされている。これにより、石灰石の脱炭酸反応が生じる反応温度は、823℃程度まで低下している(図4を参照)。セメント原料精粉Mは、こうした水蒸気の供給による二酸化炭素の分圧低下によって、大気圧での反応温度である893℃よりも低い850℃程度であっても脱炭酸反応が進行し、二酸化炭素と生石灰(CaO)に分解する。
【0068】
混合ガスGに含まれる二酸化炭素の分圧は、0.1atm以上にすることが好ましい。二酸化炭素の分圧が0.1atm以下であると、反応速度が大きく低下し、単位時間当たりの二酸化炭素の生成量が少なすぎて実用的ではない。
【0069】
反応器13においては、セメント原料精粉Mの主成分である石灰石(CaCO)が、それぞれの粒子の外側から内側に向かって脱炭酸反応が進行する。このため、石灰石(CaCO)のそれぞれの粒子は、反応時間が経過するほど、粒子の外側に反応済みの物質(CaO)が堆積し、中心側の未反応のCaCOから生じた二酸化炭素は、この反応済みの物質(CaO)を通過して粒子の外部に放出される。よって、反応時間が経過するほど、CaCOのそれぞれの粒子は、反応速度が低下する。
【0070】
このような、CaCO粒子の脱炭酸反応の反応速度は、以下の式(7)で示される。
K=(1-X)2/3×A・exp(-E/RT)×{1-(PAll・PCO2)/PCO2_eq}…(7)
K:反応速度[1/s]
A:2.2×10[1/s]
E:2.0×10[J/mol]
:気体定数 8.314
T:温度[K]
All:全圧[atm]
CO2:CO分圧[atm]
CO2_eq:平衡CO分圧[atm]
X:反応率
【0071】
この式(7)では、CaCO粒子を球形とした場合の反応速度を示しており、二酸化炭素ガス境膜拡散による影響を考慮し、所定温度での二酸化炭素の平衡分圧を求め、反応器13内の二酸化炭素分圧と混合ガス全圧の積との比で補正している。反応量は反応速度係数と反応器の滞留時間の積により算出した。平衡分圧の温度依存性は熱天秤などによる実測値を用いることができる。
【0072】
反応器13で生成させる二酸化炭素のモル重量速度よりも、セメント原料精粉Mの主成分である石灰石(CaCO)のモル重量速度が多くなるように供給することで、単位時間あたりに供給したセメント原料精粉Mの石灰石を全量反応させるよりも短い時間で、設定した量の二酸化炭素を生成することができる。
【0073】
こうした反応工程S3では、希釈媒体供給工程S1における水蒸気供給量および加熱工程S2で加熱された後の混合ガスGの温度に基づいて、二酸化炭素の生成量が計算上の最大値±10%の範囲になるように、セメント原料精粉(生成原料粉体)Mのガス循環ライン11への供給量を制御する。
【0074】
以下、反応工程S3における脱炭酸反応の制御について説明する。
例えば、図1に示すセメント製造装置30など、セメント製造プロセスからセメント原料精粉Mなどの石灰石粉末を一部分取する場合、二酸化炭素製造装置10がセメント製造装置30に近接して配置されていれば、石灰石の温度は大きく変動しないと考えることができる。よって、反応器13における反応時間も流動層などでは一定と見做せるので、考慮すべき項目は石灰石の投入量、二酸化炭素分圧、および反応器13内を流れる二酸化炭素を含む混合ガスGのガス温度である。
【0075】
本発明の発明者らは、希釈媒体供給ライン23の希釈媒体供給量によって制御される二酸化炭素の分圧および第1熱交換器(熱交換器)12において加熱された後の混合ガスGの温度を測定し、その温度に応じて、その時々での二酸化炭素生成量(または二酸化炭素濃度)を最大にするための製造条件である脱炭酸反応の反応圧力または二酸化炭素分圧、および石灰石粉末の投入量を化学工学計算にて事前に求めて、この結果に基づいて反応器13における脱炭酸反応を制御する手法を見出した。
【0076】
まず、予め実測もしくは計算によって、希釈媒体供給量ごとの石灰石投入量と二酸化炭素生成量の関係から、最小二乗法を用いて近似曲線を作成する。そして、各条件における最大の二酸化炭素生成量とその時の石灰石投入量を求める。なお、石灰石反応率と二酸化炭素生成量との関係、石灰石反応率と石灰石投入量との関係、および脱炭酸反応の反応後温度と、石灰石反応率から求めても良い。
【0077】
こうした関係を示す計算例として、図6に、二酸化炭素生成量と石灰石投入量との関係のグラフを示す。また、図7に、石灰石反応率と二酸化炭素生成量との関係のグラフを示す。また、図8に、石灰石反応率と石灰石投入量との関係のグラフを示す。また、図9に、反応後温度と石灰石反応率との関係のグラフを示す。
【0078】
なお、これら計算例は、希釈媒体供給量を75L/min、100L/min、125L/min、150L/min(それぞれ0℃換算)にそれぞれ設定し、二酸化炭素と希釈媒体との混合ガスをガス循環ラインに循環させた場合を条件として設定している。
【0079】
また、CO回収量は、希釈媒体の流量を検出する流量計26の値と、混合ガスの回収流量を検出する流量計28の値の差分から算出できる。即ち、このCO回収量は、反応器13における脱炭酸反応による二酸化炭素生成量である。この図6図9に示すグラフから、希釈媒体供給量ごとに、二酸化炭素回収量は特定の反応率もしくは石灰石投入量で最大値をとることが分かる。
【0080】
次に、第1熱交換器(熱交換器)12において加熱された後の混合ガスGの温度ごとに最大二酸化炭素生成量とその時の石灰石投入量とを求める。これにより得られた値を石灰石投入量と最大二酸化炭素生成量のグラフに描画する。その際、基準となる石灰石投入量(L)で横軸を無次元化し、縦軸は単位時間当たりモル基準で最大二酸化炭素生成量CをLで除算した値(C/L)、希釈媒体供給量(M)や混合ガスの循環量(R)も同様に(M/L)、(R/L)として表記する。
【0081】
図10に、二酸化炭素を含む混合ガスの温度ごとに、C/Lと石灰石投入量Lとの関係をプロットした計算例のグラフを示す。また、図11に、二酸化炭素を含む混合ガスの温度および水蒸気供給量ごとに、最大二酸化炭素生成量とその時の石灰石投入量との関係をプロットした計算例のグラフを示す。図10図11のグラフにおいて、水蒸気供給量(または混合ガスの循環量)が同じ条件を結ぶ近似曲線(以下、等供給量線と称する)を作成する。また、混合ガス温度が同じ条件を結ぶ近似曲線(以下、等温線と称する)を作成する。
【0082】
また、図10図11に示すグラフを作成するにあたって、750℃の石灰石を、ガス循環ライン内を流れる熱交換後の混合ガスが900℃、1200L/min(0℃換算)になるように、生成する二酸化炭素量を調整した、脱炭酸反応を生じる反応器13での反応時間を10秒と仮定し、水蒸気供給量が75L/min、100L/min、125L/min、150L/min(それぞれ0℃換算)にそれぞれ固定し、石灰石投入量を変化させた際の二酸化炭素生成量(回収量)、脱炭酸反応の反応率、および反応後の温度を計算した。
【0083】
そして、図12に示すように、所望する二酸化炭素生成量と、想定される石灰石投入量の値を石灰石投入量と最大二酸化炭素生成量(回収量)のグラフ中に描き、点Xとする。この点Xを囲む2本の等供給量線と2本の等温線のそれぞれの交点を点A,B,C,Dとする。
【0084】
こうして作成した交点A,B,C,Dをそれぞれ結ぶ線分A-B,B-C,C-D,A-Dで区画される矩形の領域を、図13に示すように、例えば10等分程度に分割する。この分割数を細かくするほど、計算精度を高めることができる。そして、分割点同士を結ぶ格子状の補助線(図13中の破線)を作成する。
【0085】
そして、想定される石灰石投入量を示す点Xと、この点Xを囲む等供給量線、等温線との距離を調べ、距離に応じて案分することによって、点Xを満たす脱炭酸反応の反応圧力と混合ガスの温度とを求めることができる。
なお、線分A-B,B-C,C-D,A-Dが等供給量線、等温線から著しく外れる場合は、等供給量線もしくは等温線の間隔を狭めることで計算精度を高めることができる。
【0086】
図12、13に示した算出例は、混合ガスの循環量を1200L/min、二酸化炭素の生成量を30.1L/min、石灰石投入量を37.9kg/時を満たす、脱炭酸反応の反応圧力と混合ガスの温度とを算出したものである。
図13に示すプロットから、混合ガスの温度:(925×3+900×7)/10=907.5℃、水蒸気供給量:(125×3+150×7)/10=142.5L/minと読み取る。この条件で最大二酸化炭素生成量とその時の石灰石投入量とを求めると、二酸化炭素生成量:30.1L/min、石灰石投入量:37.9kg/時となり、所望する二酸化炭素の生成量を30L/min、想定する石灰石投入量を38kg/時に設定した場合に、それぞれ0.3%、-0.3%の誤差で算出することができる。
【0087】
なお、点Xを通るまで分割数を増やすことでさらに予測精度を高めることもできる。このような実施形態において作成した図は、基準となる石灰石投入量(L)を24.46kg/時(244.5mol/時)として無次元化することで、図11と同様のものを得ることができる。
【0088】
反応器13の下流側のガス循環ライン11には、混合ガスGと、脱炭酸反応で生じた生石灰および反応器13で反応せずに残った未反応のセメント原料精粉Mなどが分離器14に向けて流れる。
【0089】
なお、こうした制御において、実際の運転における高温場の温度や希釈媒体供給量などの変動に伴う二酸化炭素生成量の変動や、過大な量の石灰石を投入するための設備大型化に伴う二酸化炭素の生成量とのコストパフォーマンスを考慮すると、計算における二酸化炭素の最大生成量から±10%の範囲となるように石灰石の投入量を制御すれば、同等の効果を得ることが出来ることから、二酸化炭素の生成量が計算上の最大値±10%の範囲となるように制御することが好ましい(図14および図15を参照)。
【0090】
分離器14では、二酸化炭素を含む混合ガス(気体)Gと、脱炭酸反応で生じた生石灰および未反応のセメント原料精粉Mなどの粉体(固体)とが分離される(固気分離工程S4)。この分離器14で分離された生石灰(CaO)および未反応のセメント原料精粉Mは抽気ダクト41に排出され、セメント製造装置30の仮焼炉34に送られて、セメント原料精粉Mとして有効利用される。
【0091】
分離器14を経て固気分離された混合ガスGは温度が750℃程度であり、このままガス循環ライン11の下流側の循環ポンプ16に入ると循環ポンプ16が熱によって損傷する懸念がある。本実施形態では、循環ポンプ16と分離器14との間に第2熱交換器15を配している。そして、この第2熱交換器15に流入する750℃程度の混合ガスGは、二酸化炭素回収ライン22の接続位置よりも下流側で温度が300℃程度まで低下した、ガス循環ライン11を流れる混合ガスGとの間で熱交換を行う。
【0092】
これにより、循環ポンプ16に流入する混合ガスGは、温度が例えば300℃程度まで低下し、循環ポンプ16の熱による破損や劣化を防止する。一方、循環によって第1熱交換器12に流入する混合ガスGは、この第2熱交換器15によって例えば600℃程度まで昇温され、第1熱交換器12において混合ガスGを850℃程度まで確実に昇温させるのに役立つ。
なお、こうした第2熱交換器15は、必ず設ける必要は無く、循環ポンプ16の特性や第1熱交換器12に流入する混合ガスGの温度によっては省略することもできる。
【0093】
循環ポンプ16を経た二酸化炭素と水蒸気とを含む混合ガスGの一部は、ガス循環ライン11に接続された二酸化炭素回収ライン22から、ガス循環ライン11の系外に回収される(回収工程S5)。
【0094】
この回収工程S5においては、二酸化炭素回収ライン22を経て回収される二酸化炭素と水蒸気とを含む混合ガスGの量(単位時間当たりの回収量)は、例えば、反応器13でセメント原料精粉Mの脱炭酸反応により生成させた二酸化炭素の生成量(単位時間当たりの生成量)と希釈媒体供給ライン23の希釈媒体供給量との合計量と同一になるように調整される。これにより、ガス循環ライン11を循環する混合ガスGの流量、圧力を一定に保つことができる。
【0095】
二酸化炭素回収ライン22で回収された二酸化炭素と水蒸気とを含む混合ガスGは、凝集器(希釈媒体分離手段)29を通過する。この時、混合ガスGは例えば100℃未満まで冷却され、水蒸気が液化、凝集されて水になり二酸化炭素と分離される(希釈媒体分離工程S6)。これによって、混合ガスGから希釈媒体Eである水蒸気を取り除いた二酸化炭素が二酸化炭素回収ライン22から得られる。得られた二酸化炭素の濃度は、90vol%以上100vol%以下、例えば濃度が95vol%である。
【0096】
一方、凝集器(希釈媒体分離手段)29で分離された水は、希釈媒体供給ライン23から供給する水蒸気の供給材料として用いたり、凝集器29の冷却などに再利用することができる。
【0097】
なお、希釈媒体分離手段は、希釈媒体の種類に応じて適宜選択することができ、本実施形態のように沸点差(液化温度差)を利用した凝集器29以外にも、例えば、希釈媒体だけを溶媒に溶解させて二酸化炭素と分離する溶解器などであってもよい。
【0098】
希釈媒体供給ライン23からガス循環ライン11に水蒸気を導入することによって、生成原料粉体としてセメント原料精粉Mを用いた際に、このセメント原料精粉M由来の塩素や水溶性有機物などの不純物を水蒸気によって吸着される。そして凝集器29で水蒸気を凝集させて水にする際に、これら塩素や水溶性有機物を水に溶解させて取り除くことができる。これにより、回収後の二酸化炭素の不純物濃度をより一層低減することができる。
【0099】
この後、二酸化炭素回収ライン22で回収されなかった混合ガスGは、第2熱交換器15によって例えば600℃程度まで加熱された後、再び希釈媒体供給工程S1から上述した各工程を繰り返す。
【0100】
以上のように、本発明の二酸化炭素製造装置10、およびこれを用いた二酸化炭素製造方法によれば、ガス循環ライン11に二酸化炭素と水蒸気(希釈媒体)とを含む混合ガスGを循環させるとともに、希釈媒体供給ライン23から水蒸気(希釈媒体)を供給し、高温雰囲気場Hで混合ガスGを加熱し、この加熱されたガスを熱源として用いて、ガス循環ライン11に供給されたセメント原料精粉(生成原料粉体)Mを加熱して脱炭酸反応を生じさせることにより、二酸化炭素(混合ガスG)を連続して効率的に生成することができる。
【0101】
このような脱炭酸反応を行う際に、ガス循環ライン11に水蒸気(希釈媒体)を供給して混合ガスに含まれる二酸化炭素の分圧を低下させることにより、大気圧環境での脱炭酸反応のような900℃近い高温にする必要が無いので、最高温度が800~850℃程度のセメント製造装置の高温雰囲気場Hを利用して混合ガスGを加熱し、この混合ガスを熱源にしてセメント原料精粉Mから二酸化炭素を低コストに生成することができる。
【0102】
また、本発明によれば、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料を燃焼させて生じる二酸化炭素を含まないので、これら燃焼排ガスに含まれる揮発性有機化合物(VOC)、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の人体や植物に有害な不純物を含む懸念が無く、また希釈媒体から分離後の二酸化炭素は高濃度であるため、例えば液化炭酸として産業的に有効利用することができる。
【0103】
更に、セメント原料精粉Mに含まれる石灰石に脱炭酸反応を起こさせるための熱源となる混合ガスGを加熱する第1熱交換器(熱交換器)には、石灰石を含むセメント原料精粉などの固体(粉体)は流入しないので、第1熱交換器にこれら固体(粉体)が付着して流路を閉塞することが無く、低メンテナンスコストで安定して二酸化炭素を製造することができる。
【0104】
本発明の二酸化炭素製造方法によれば、反応工程において、ガス循環ラインへ希釈媒体供給量、および加熱工程で加熱された後の混合ガスの温度に基づいて、二酸化炭素の生成量が最大値±10%の範囲内になるように、ガス循環ラインへの生成原料粉体の供給量を制御することによって、最大限効率的に二酸化炭素を生成させることができる。これにより、二酸化炭素を低コストで大量に製造することができる。
【0105】
(二酸化炭素製造装置の設計方法)
本発明の二酸化炭素製造装置の設計方法は、ガス循環ラインに供給する希釈媒体供給量と、熱交換器で加熱された後の混合ガスの温度に基づいて、二酸化炭素の生成量が最大値±10%の範囲内になるように、ガス循環ラインへの生成原料粉体の供給量を決定し、この決定に基づいて二酸化炭素製造装置の設計を行うものである。
【0106】
具体的には、二酸化炭素製造装置の設計にあたっては、上述したガス循環ラインに供給する希釈媒体供給量、熱交換器で加熱された後の混合ガスの温度、ガス循環ラインへの生成原料粉体の供給量、および二酸化炭素の生成量の関係に基づいて、希釈媒体供給ラインの希釈媒体供給量と、第1熱交換器(熱交換器)において混合ガスの熱交換による加熱温度を設定することで、第1熱交換器を設置するための高温雰囲気場Hを選定するなど、二酸化炭素の生成効率を最大限に高めた二酸化炭素製造装置を設計することができる。
【0107】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
10…二酸化炭素製造装置
11…ガス循環ライン
12…第1熱交換器(熱交換器)
13…反応器
14…分離器
15…第2熱交換器
16…循環ポンプ
21…原料粉体供給ライン
22…二酸化炭素回収ライン
23…希釈媒体供給ライン
25…反応容器
29…凝集器(希釈媒体分離手段)
31…プレヒーター
32…セメントキルン
33…クリンカクーラー
34…仮焼炉
E…希釈媒体
G…混合ガス
H…高温雰囲気場
M…セメント原料精粉
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