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特許7136815重合された材料で作られる物品を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】重合された材料で作られる物品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220906BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20220906BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20220906BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220906BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220906BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220906BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/135
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y50/02
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019570937
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 IB2017000976
(87)【国際公開番号】W WO2019002902
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・テオデ
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-170377(JP,A)
【文献】特開平11-042713(JP,A)
【文献】特開平05-169551(JP,A)
【文献】特開平06-297585(JP,A)
【文献】特許第4235698(JP,B2)
【文献】特開2003-001599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0098164(US,A1)
【文献】特開平10-180881(JP,A)
【文献】特開2001-121614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0056910(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02639948(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046070(US,A1)
【文献】米国特許第04752498(US,A)
【文献】特開2000-143740(JP,A)
【文献】特開2015-058678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合された材料で作られる物品を製造する方法であって、
-少なくとも400~800ナノメートル波長範囲内で透明である重合可能材料のタンクを提供する工程と、
-前記物品を形成するために前記重合可能材料を重合するように所定パターンに従って前記重合可能材料をレーザビームにより照射する工程であって前記所定パターンは、前記物品を併せて形成するようにされた複数の容積ユニットの3次元における位置を有する前記物品の3次元表現に基づき判断され、前記レーザビームは、これらの位置のそれぞれの位置における前記重合可能材料の前記重合を局所的に開始するように、前記所定パターン内に存在する前記容積ユニットの各位置に集束されるために前記タンクを3次元で走査する、工程と、を含み、
前記照射工程中、前記レーザビームは、前記所定パターンに従って照射される前記容積ユニットの一連の前記位置を含む所定経路に従って前記タンクの容積を走査し、この経路は、以前照射されたすべての前記容積ユニットの前記位置から離れた照射される前記容積ユニットの位置を含み、
前記照射工程は所定数の逐次的走査シーケンスを含み、各シーケンス中、前記レーザビームは前記所定経路の一部分に従って前記タンクを走査し、この一部分は、前記物品の全容積内に位置決めされる複数の容積ユニットの位置を含み、
前記逐次的走査シーケンスの任意の所与の更なる走査シーケンスの開始は、その3次元の位置が直前の走査シーケンス中に照射された少なくとも2つ又は3つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタの間に含まれる容積ユニットを照射する第1の発生により定義され、所与の更なる走査シーケンスの終了は、その位置が前記所与の更なる走査シーケンス中に照射された少なくとも2つ又は3つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタの間に含まれる容積ユニットが照射されるや否やとして定義される、方法。
【請求項2】
前記走査シーケンスの少なくとも1つの走査シーケンス中、前記レーザビームにより照射される少なくとも1つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタは、前記同じ走査シーケンス中に前記レーザビームにより照射される容積ユニットのいかなる他の容積ユニット又はクラスタとも接触しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記走査シーケンスの第1のシーケンス中、前記レーザビームは前記タンクの第1組の容積ユニットを照射し、続く走査シーケンス中、前記レーザビームは第2組の容積ユニットを照射し、前記第2組の容積ユニットの各容積ユニットは前記第1組の複数の容積ユニットの間にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
所与の走査シーケンス中に前記レーザビームにより照射される少なくとも1つの容積ユニットは前の走査シーケンス中に前記レーザビームにより既に照射された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合可能材料は、ビニルエーテル成分及び/又はエポキシ成分及び/又はカチオン機構により重合するようにされた他の材料を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合可能材料は、前記材料の全重量に対する重量で:
-エポキシ成分の85%~95%、
-ビニルエーテル成分の15%~5%
を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記重合可能材料の前記重合は前記レーザビームによる前記照射から生じる前記重合可能材料の少なくとも1つの分子のイオン化により開始される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記重合可能材料は重合後に得られる前記重合された材料の密度に近い密度を呈示し、
重合前の前記重合可能材料と重合後に得られる前記重合された材料との間の密度の差は前記重合可能材料の前記密度の10%未満である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
所与の走査シーケンス中、以前の走査シーケンス中に前記レーザビームにより照射された前記タンクの前記容積ユニットの前記タンク内の実際位置は測定及び/又は計算を介し判断される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所定経路は、以前の走査シーケンス中に前記レーザビームにより照射された前記重合可能材料の前記容積ユニットの前記実際位置を考慮することにより修正される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビームにより照射された重合可能材料の各容積ユニットの前記タンク内の前記位置の変化は計算を介し予測される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記所定パターンは、重合された材料の前記容積ユニットが前記照射工程の終わりに前記物品を併せて形成するために、前記レーザビームにより照射された後の前記タンク内に存在する前記重合された材料の前記容積ユニットの前記位置の前記変化を考慮して判断される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重合可能材料の重合がレーザ誘起イオン化によって遊離基を介して開始される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記重合可能材料の重合が前記重合可能材料中の前記レーザビームのウエストにおけるプラズマの局所的な形成によって開始され、これによってカチオン機構を介したイオン化及び重合を誘起する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記所定経路は連続ではなく、重合可能材料の容積ユニットの位置から、隣接しない重合可能材料の容積ユニットまで進む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
互いに離れて構築され、会合するまで成長されて前記物品を形成する、絶縁された容積ユニット又は容積ユニットの絶縁されたクラスタの重合を介して前記物品が製造される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記任意の所与の更なる走査シーケンス中に照射された容積ユニットが、1つ又はいくつの以前の走査シーケンス中に照射された3つ又は4つの容積ユニットをリンクする三角形又は四角形の内部に位置決めされる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記物品が複数の走査シーケンスから構築され、前記レーザビームが前記物品の中心から周囲まで、又は周囲から中心まで、前記物品の全容積を走査する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記レーザビームが最上部から最下部まで、又は最下部から最上部まで前記タンクを走査する走査シーケンスから前記物品が構築される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
あるシーケンスから別のシーケンスまで1容積ユニットの平行移動を有する各走査シーケンスにおいて前記タンクの全容積が走査される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの走査シーケンスが前記物品の全容積を走査する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
製造される物品がレンズであり、第3の走査シーケンス中に照射される容積ユニットは、前記レンズの容積の内部で、第1及び第2の走査シーケンスの容積ユニットに対して位置決めされ、所与の距離だけ第1及び第2の走査シーケンスの容積ユニットから離間され、前記レンズの前面に対し直角に置かれ、第2の走査シーケンスの容積ユニットと同じ高さである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
容積ユニット内で反応した単量体の割合を増加するために同じ容積ユニットが何回か照射される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合された材料で作られる物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を重合された材料で製造する様々な方法はよく知られている。
【0003】
既知のマイクロ製造プロセスは、写真感光材内の任意の3Dパターンの高解像度構造化を可能にする。重合は例えばレーザビームの二光子吸収により局所的にトリガされる。
【0004】
解像度(すなわちボクセルサイズ)は、主として材料内のレーザスポットサイズ、レーザ源の出力、及び写真感光材自体の特性により判断される。
【0005】
物品の形状を得るために、物品は、レーザビームの集束光学系に対して移動される基板上の層毎構築(layer-by-layer build)プロセスに従って構築される。「固定ビーム・サンプル移動」(FBMS:fixed-beam moving-sample)と呼ばれる第1の既知の実施形態では、基板は集束光学系に対し高精度位置決めユニットにより3次元すべてに移動され、一方レーザは固定される。基板の運動はしばしば、極めて精密な焦点軌道を可能にするピエゾアクチュエータにより駆動される。第2の既知の実施形態では、レーザビームはガルバノミラーを使用することにより横方向に走査され、一方、基板は垂直に移動され、基板の前記垂直移動はピエゾアクチュエータにより制御される。
【0006】
この既知の技術は極高精度のものであり比較的遅い。この既知の技術はむしろ、数百マイクロメートルより大きなサイズの物品の構築に適応化されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の1つの目的は、重合された材料で作られる物品を、数百マイクロメートルより大きなサイズの物品の製造に適応化された高速なやり方で製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、重合された材料で作られる物品を製造する方法を提供することにより本発明にしたがって達成される。本方法は、
-少なくとも400~800ナノメートル波長範囲内で透明である液体形式の重合可能材料のタンクを提供する工程と、
-物品を形成するために前記重合可能材料を重合するように所定パターンに従って前記重合可能材料をレーザビームにより照射する工程であって、所定パターンは、前記物品を併せて形成するようにされた複数の容積ユニットの3次元における位置を有する前記物品の3次元表現に基づき判断され、レーザビームは、これらの位置のそれぞれの位置における重合可能材料の重合を局所的に開始するように、前記所定パターン内に存在する前記容積ユニットの各位置におけるタンクに集束されるためにタンクを3次元で走査する、工程とを含む。
【0009】
本発明のおかげで、固定されたタンクはレーザビームにより3方向すべてに走査される。したがって、XY平面内で製造される物品を移動するために移動されるようにされた支持体を使用する必要は無い。
【0010】
有利には、本発明による方法は既知の層毎構築プロセスよりはるかに速い製作速度を可能にする。
【0011】
さらに、支持体の必要は全く無い。物品の容積は高周波でタンク内で走査され、物品の全容積内に位置する容積ユニットの重合を極短時間で生じる。
【0012】
物品は、重合され、したがって重合可能材料のタンクの内部で非常に速く凝固する。
【0013】
前記所定パターンは、タンクの容積ユニット(ボクセルとも呼ばれる)の3D位置(レーザビームが物品を形成するために集束されることになる)を含む3Dパターンである。
【0014】
これらの3D位置に位置する重合可能材料はレーザビームによりそのウエストにおいて照射される。この照射は重合可能材料の光重合をトリガし、これによりこの3D位置において、重合された材料の容積ユニットを形成する。
【0015】
所定パターンは、後で説明されるように、レーザビームの走査中の重合可能材料のタンクの内部の重合された材料の容積ユニットのドリフトを最終的に考慮することによりプロセスの終わりに物品のグローバル形状及び容積を得るように判断される。
【0016】
本発明の方法の他の有利且つ非限定的特徴によると、
-前記照射工程中、前記レーザビームは、前記所定パターンに従って照射される容積ユニットの一連の前記位置を含む所定経路に従ってタンクの容積を走査し、この経路は、前記経路に追随する前に照射されたすべての容積ユニットの位置から離れた照射される容積ユニットの位置を含む;
-前記照射工程は、所定数の逐次的走査シーケンスを含み、各シーケンス中、レーザビームは前記所定経路の一部分に従ってタンクを走査し、この部分は、物品の全容積のうちの一部分内に又は全容積内に位置決めされる複数の容積ユニットの位置を含む;
-前記走査シーケンスの少なくとも1つの走査シーケンス中、レーザビームにより照射される少なくとも1つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタは、同じ走査シーケンス中にレーザビームにより照射される容積ユニットのいかなる他の容積ユニット又はクラスタにも接触していない;
-第1の系列の前記走査シーケンス中、レーザビームはタンクの第1組の容積ユニットを照射し、別の走査シーケンス中、レーザビームは第2組の容積ユニットを照射し、第2組の容積ユニットの各容積ユニットは第1組の複数の容積ユニットの間にあり;
-所与の走査シーケンス中にレーザビームにより照射される少なくとも1つの容積ユニットは前の走査シーケンス中にレーザビームにより既に照射された;
-前記照射工程中、前記レーザビームは、秒当たり所定経路の10(10Hz)~10万(100kHz)位置、好適には100(100Hz)~5万(50kHz)位置、より好適には1万(10kHz)~5万(50kHz)以上の位置(最大10万(100kHz)の位置)の範囲の周波数でタンクの容積を走査する。
-前記照射工程は1秒~30分間続く;
-レーザビームは、1ナノ秒(1ns)~50ナノ秒(50ns)間続くパルスでもってパルス化され、パルス当たり10ミリジュールすなわち10W/cm以上のエネルギーを有する;
-レーザビームは、その重合をトリガするようにされた250~400nmの範囲又は1マイクロメートル~4マイクロメートルの範囲内の波長により重合可能材料を照射する;
-重合可能材料の重合は、レーザビームによる照射から生じる前記重合可能材料の少なくとも1つの分子のイオン化により開始され;
-重合可能材料は、ビニルエーテル成分の及び/又はエポキシ成分の及び/又はカチオン機構により重合するようにされた他の材料の分子を含む;
-重合可能材料は、前記材料の全重量に対する重量で:
-エポキシ成分の85%~95%、
-ビニルエーテル成分の15%~5%を含む;
-重合可能材料は100~900ミリパスカル・秒(mPa.s)範囲の粘度を呈示する;
-重合可能材料は重合後に得られる重合された材料の密度に近い密度を呈示する;
-重合前の重合可能材料と重合後に得られる重合された材料との間の密度の差は重合可能材料の密度の10%未満である;
-所与の走査シーケンス中、前の走査シーケンス中にレーザビームにより照射されたタンクの容積ユニットのタンク内の実際位置が測定及び/又は計算を介し判断される;
-前記所定経路は、前の走査シーケンス中にレーザビームにより照射されたタンクの容積ユニットの実際位置を考慮することにより修正される;
-レーザビームにより照射されたタンクの各容積ユニットのタンク内の位置の変化は計算を介し予測される、
-前記所定パターン及び/又は経路は、レーザビームによる重合可能材料の照射後に得られる重合された材料の容積ユニットが照射工程の終わりに前記物品を併せて形成するために、レーザビームにより照射された後のタンクの容積ユニットの位置の変化を考慮して判断される。
【0017】
非限定例と見なされるべき添付図面により強化された以下の説明は、本発明を理解しそしてどのように本発明が実現され得るかを理解することを助けることになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を実施するための装置の実施形態の概略図である。
図2】本発明による方法の工程の概略図である。
図3】製造すべき物品の概略図である。
図4】逐次的走査シーケンスでレーザにより照射される容積ユニットの位置を含む3D経路の概略図である。
図5】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図6】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図7】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図8】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図9】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図10】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図11】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図12】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図13】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図14】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図15】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図16】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図17】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図18】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図19】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図20】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図21】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図22】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図23】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図24】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図25】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図26】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
図27】重合可能材料の一部分であり得る分子の開発された化学式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1で、我々は、本発明に従って本方法を実施するための装置10を概略的に表した。
【0020】
装置
本発明による方法を実施するために使用される装置10は、液体形式の重合可能材料5のタンク4と、所定波長範囲内のレーザビームを発射するためのレーザ源1を含むレーザビーム生成及び走査システムと、前記レーザビームを走査するための走査装置2と、容積ユニットP内の重合可能材料の重合を局所的にトリガするとともに3次元の所定位置において重合された材料の容積ユニットを得るために3次元の前記所定位置を有する重合可能材料のタンクの容積ユニットP上に前記レーザビームを集束させるための集束光学系と、を含む。
【0021】
レーザビームは、レーザ源1により生成され、そして重合可能材料5に入る前に集束光学系3を通過する。重合可能材料の重合は、レーザビームのウエストの領域内(すなわち、レーザビームが集束される場所)においてだけ局所的にトリガされる。
【0022】
レーザのウエストの直径は、例えば0.03ミリメートルであり、好適には1マイクロメートル~200マイクロメートルに含まれ、好適には50マイクロメートル未満である。
【0023】
レーザ源1は好適には高出力(200W)パルスレーザである。
【0024】
レーザビームは、レーザ源1の光軸(本明細書ではレーザ源へ取り付けられる基準OXYZの方向OZに対応する)に沿って発射される。
【0025】
レーザビーム生成及び走査システムはまた、同期手段であって、前記重合が走査シーケンスの所定瞬間にトリガされるように、レーザ源により出力されたレーザパルスと前記走査手段の走査タイミングとを同期するための同期手段を含む。換言すれば、レーザの運動は、走査シーケンスの適切な所定瞬間に重合をトリガするために前記レーザのパルスと同期する。
【0026】
レーザ源1の波長範囲は、タンクに含まれる重合可能材料の重合をトリガするようにされた少なくとも1つの波長を含む。したがって、この波長範囲は使用される重合可能材料に依存して判断される。
【0027】
レーザビームは好適には、非可視領域内(例えば250~400ナノメートル範囲又は1マイクロメートル~4マイクロメートル範囲内)の波長を有する。
【0028】
走査装置2は、レーザビームの方向を制御することを可能にする3Dスキャナ装置を含む。
【0029】
走査装置2は、例えば2つの異なる回転軸を中心に回転されるようにされた2つの可動ミラーを含み得る。
【0030】
走査装置2のおかげで、レーザの焦点は基準のOX及びOY方向に移動され得る。
【0031】
前記集束光学系3は集光レンズ又は凹面鏡により構成され得る。
【0032】
集束光学系3の焦点距離はレーザ源とレーザの焦点との間の距離を修正するために調整可能である。
【0033】
集束光学系3は例えば1つ又は複数の集光レンズを含む。
【0034】
これらの集光レンズの少なくとも1つは例えば、集光レンズからレーザビームが集束させられる点までの距離が修正されるように前記レーザ源1の光軸に対して平行な軸に沿って可動である。
【0035】
代替的に、前記集束光学系は、集光レンズと、集光レンズとレーザビームが集束される点との間の光学経路を変更するための光学素子とを有し得る。
【0036】
走査装置2とレーザビームの焦点の距離上の集束光学系3とを組み合わせた行為のおかげで、レーザビームの焦点の位置は基準のOZ方向に調整され得る。
【0037】
好適には、前記レーザ源は、50キロヘルツ(kHz)以上の繰り返し周波数(好適には10Hz~100kHzに含まれる、より好適には10kHz~100kHz又は10kHz~50kHzに含まれる繰り返し周波数)と焦点において(すなわちレーザのウエストにおいて)平方センチメートル当たり10ワット(W/cm)以上の出力密度とを有する50ナノ秒以下のパルス幅を有するパルスレーザビームを発射するようにされる。
【0038】
このとき、タンクの対応走査速度は、レーザビームのウエストのサイズに依存して秒あたり10~300立方ミリメートルの走査容積に対応する約50cm/s~5m/sである。例えば、0.1mmのウエスト径のケースでは、容積ユニットPは4.2×10-3mmに等しいと推定され、したがって、50kHzの繰り返し周波数と50cm/sの走査速度では、走査される各容積ユニットPが以前に走査された容積ユニットPに隣接するということを考慮して、走査されるグローバル容積は1秒(1s)内210mmに等しい。
【0039】
パルスビームのエネルギー密度は例えばパルス当たり10ミリジュール(mJ)である。
【0040】
レーザビームのウエストのサイズが例えば50マイクロメートルの直径であると、ピーク出力は平方センチメートル当たり約10ワット(W/cm)である。
【0041】
好適には、ピーク出力は、レーザビームのウエストのサイズに依存してセンチメートル平方当たり10~1013ワットに含まれる。
【0042】
本発明による方法を実施するための装置10はまた、レーザ源1、走査装置2及び集束光学系3を制御するための制御ユニット6を含む。
【0043】
制御ユニット6は好適には、重合可能材料の重合を制御するために必要とされる情報(例えば所定パターン及び/又は経路)を入力するための入力手段を含む。
【0044】
走査手段2及び集束光学系3を制御することにより、レーザビームは、XYZ方向に3次元的に走査され得、したがってタンクの任意の所定点における重合可能材料の重合をトリガする。
【0045】
このタンクは、製造すべき物品を収容するようにされたサイズを提示する。このタンクは重合可能材料で充填される。タンクの寸法は最大数10センチメートルである可能性がある。タンクは重合可能材料に対して化学的耐性のある材料(すなわち重合可能材料に反応しない材料)で作られる。タンクは例えばテフロン(登録商標)で作られる。タンクは、レーザビーム生成及び走査システムの下又は上に置かれ得る。前記レーザビーム生成及び走査システムの上に置かれる場合、タンクの最下部はレーザビームに対して透明な窓を備える。
【0046】
この重合可能材料は周囲温度(すなわち少なくとも摂氏15~25度)において液体形式である。液体形式により、重合可能材料が固体でないということを意味する。好適には、重合可能材料は粘性液体の形式のものであり得る。
【0047】
好適には、重合可能材料は100~900ミリパスカル・秒(mPa.s)の粘度を呈示する。重合可能材料の粘度は例えば振動又は回転粘度計のおかげで測定され得る。
【0048】
重合可能材料は少なくとも400~800ナノメートル波長範囲内で透明である、すなわち重合可能材料はこの範囲内の波長に関し85%より高い透過率を呈示する。
【0049】
重合可能材料は高分子へ重合するようにされた単量体を含み、これらの単量体は例えば以下の化合物のうちの1つ又はいくつかを含む:ビニルエーテル成分、及び/又はエポキシ成分、及び/又はオキセタン、オレフィン及びエピスルフィドなどカチオン機構により重合するようにされた他の材料。
【0050】
カチオン機構により重合され得る分子の例が図5図27に与えられる。
【0051】
より正確には、図5はエポキシドを示し、図6はビニルエーテルを示し、図7はオキセタンを示し、図8はスチレンの分子を示し、図9はオレフィンを示す。図5、6、7及び9において、基R、R、R、R及びRは例えば以下のものの中で選択され得る:水素の原子、フェニル基、芳香族基、1~10個の原子を有する炭素鎖(恐らくその中に酸素Oのようなヘテロ原子を含む(この時エーテルと呼ばれる)、又は硫黄Sのようなヘテロ原子を含む)、又はより複雑な構造。
【0052】
重合可能材料に含まれる単量体は単又は二機能性である可能性がある。実際には、脂環式単量体が他のエポキシドと比較してより高い反応性を有する。
【0053】
重合可能材料に含まれる可能性のあるいくつかのエポキシドが図10図12に与えられ:図10はブチルグリシジルエーテル(BGE)の分子を示し、図11はビニルシクロヘキセン一酸化物(VCM)の分子を示し、図12は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート(EEC)の分子を示す。重合可能材料に含まれる可能性があるいくつかの他のエポキシドが図13図22に与えられる。
【0054】
重合可能材料に含まれる可能性があるいくつかのオキセタン分子が図23図26に与えられる:図23は3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)の分子を示し、図24は3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン(POX)の分子を示し、図25は3-エチル-3-[(2-エチルヘキシロキシ)メチル]オキセタン(EHOX)の分子を示し、図26は3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチルオキセタン(DOX)の分子を示す。
【0055】
最後に、いくつかのエピスルフィドもまた重合可能材料に含まれる可能性がある。エピスルフィドの開発された化学式が図27に与えられる、ここで、R、R、R及びRは本明細書で上に与えられたものと同様である。有利には、エピスルフィドはしばしば、対応エポキシドより高い反応性を有する。
【0056】
これらの成分は重合された材料を形成するために重合することになる単量体である。
【0057】
重合可能材料は、ホモ又は共重合体を形成するために、先に引用された化合物のうちの1つ又はいくつかを含み得る。
【0058】
より正確には、本発明による方法の可能な実施形態では、重合可能材料は、前記材料の全重量に対する重量で、
-エポキシ単量体の85%~95%、
-ビニルエーテル単量体の15%~5%
を含む。
【0059】
重合可能材料の重合は、レーザビームによる照射から生じる前記重合可能材料の少なくとも1つの分子のイオン化により開始される。
【0060】
好適には、重合可能材料は、重合後に得られる重合された材料の密度に近い密度を呈示する。
【0061】
より正確には、重合前の重合可能材料と重合後に得られる重合された材料との間の密度の差は重合可能材料の密度の10%未満である。この態様は、以降詳細に説明される。
【0062】
重合可能材料はまた、レーザのウエスト周囲で定義された容積内に反応を制約するために適切な添加剤を含み得る。例えば、重合可能材料は、前記レーザビームによりトリガされる反応を容積ユニットP内に制約するようにされた第3アミンなどの抑制剤を含み得る。
【0063】
プロセス
注目すべきやり方で、本発明の方法によると、重合された材料で作られる物品は以下の工程に従って製造される:
-少なくとも400~800ナノメートル波長範囲で透明な液体形式の重合可能材料のタンクを提供する工程(図2のブロック100)と、
-物品を形成するために前記重合可能材料を重合するように所定パターンに従ってレーザビームにより前記重合可能材料を照射する工程であって、所定パターンは、前記物品を併せて形成するようにされた複数の容積ユニットの3次元における位置を有する前記物品の3次元表現に基づき判断され、レーザビームは、これらの位置のそれぞれの位置における重合可能材料の重合を局所的に開始するように、前記所定パターン内に存在する前記容積ユニットの各位置におけるタンク内に集束されるためにタンクを3次元で走査する、工程(図2のブロック100)。
【0064】
これら2つの工程後、得られた重合された材料で作られる物品はタンクから除去され(図2のブロック300)、そして、後続の熱処理が適用され得る(図2のブロック400)。最後に、最終物品が得られる(図2のブロック500)。
【0065】
所定パターンは、プロセスの終わりに、重合された材料の物品のグローバル形状及び容積を得るために判断される。
【0066】
タンクを提供する工程は、使用される装置の説明において既に説明された。
【0067】
前記照射工程中、前記レーザビームは、前記所定パターンに従って照射される重合可能材料の容積ユニットPの3次元の一連の前記位置を含む所定経路に従ってタンクの容積を走査し、この経路は、以前照射されたすべての容積ユニットの位置から離れた照射されるべき容積ユニットの位置を含む。
【0068】
換言すれば、レーザビームにより照射されるタンク内に存在する重合可能材料の容積ユニットPの逐次的位置を含む経路は、重合可能材料の容積ユニットの位置から重合可能材料の隣接容積ユニットまで進まないという意味で連続ではない。
【0069】
上記経路は、逐次的に照射される2つの容積ユニットの位置が互いに離れている少なくともいくつかの部分を含むので、逐次的に照射されるこれらの2つの容積ユニットは接触していない。
【0070】
さらに、上記経路は、照射される少なくとも1つの容積ユニットの位置が重合された材料のすべての容積ユニットの位置から離れている(すなわち前記経路に続いて以前に照射されたすべての容積ユニットから離れている)少なくともいくつかの部分を含む。
【0071】
「経路が、逐次的に照射される隣接容積ユニットのクラスタを含み、互いに離れた容積ユニットのクラスタを形成する」ということを想定することも可能である。
【0072】
したがって、物品は、絶縁された容積ユニット又は容積ユニットの絶縁されたクラスタの重合を介し製造される。
【0073】
したがって、本発明の方法に従って使用される経路は、全体として物品の急速なグローバル構築を可能にする。
【0074】
有利には、前記経路は、層毎処理の無い且つ第1の層が置かれる構築板の使用の無い物品の構築を可能にする。
【0075】
実際、最先端技術では、物品は物品の基部を画定する構築板上に構築される。第1の走査シーケンス中に重合されるタンクの容積ユニットはすべて、この構築板と接触している。これらが併せて第1の層を形成する。容積ユニットは、前記構築板をレーザビームの前に移動することにより構築板上で重合される。構築板に隣接するとともにそれと接触するすべての照射されるべき容積ユニットが照射されると、第2の走査シーケンスが始まる。第2の走査シーケンスは、その位置が第1の層に隣接するとともにそれと接触する容積ユニット上にレーザビームを集束させる。構築板は、これらの容積ユニットが照射されるためにレーザビームの前に置かれるように、再び移動される。重合される第2の走査シーケンスの容積ユニットが併せて第2の層を形成する。最先端技術では、物品は、以前に形成された層上に重合された材料の1つの層を追加することにより層毎に構築される。
【0076】
本発明によると、物品を構築するための優先する方向も、いかなる移動構築板も、いかなる層も無い。したがって、層毎に発生する古典的付加製造を介し製造される物品の凹凸が回避される。特に、タンク内のいかなる機械的運動も無いので、いかなる制約も構築中の物品に適用されず:層の剥離も無く、いかなる層も無く、タンクの内部の気泡の生成も無い。
【0077】
本発明では、様々なタイプの経路が想定され得る。
【0078】
経路は、内部から外部へ又は外部から内部へ物品を構築することを引き起こし得る。経路は、当初互いに離れて構築されその後会合して物品を形成するまで成長する物品の様々な部分の再結合から構築され得る。これらのタイプの経路は好適には、重合される容積ユニットが照射工程中にタンクの容積の内部にほとんど変位を有しない場合に、使用される。
【0079】
物品はまた、例えば最下部から最上部へ構築される可能性がある。
【0080】
前記照射工程は所定数の逐次的走査シーケンスを含み、各逐次的走査シーケンス中、レーザビームは前記所定経路の一部分に従ってタンクを走査し、この一部分は、物品の全容積の一部分内で又はその全容積内で位置決めされる複数の容積ユニットの位置を含む。
【0081】
好適には、少なくとも2つの走査シーケンスは、レーザビームが所定経路の共通部に従ってタンクを走査するように規定される。換言すれば、少なくとも2つの走査シーケンスは、タンクのいくつかの容積ユニットが2つの異なる走査シーケンス中にレーザビームにより少なくとも2回逐次的に又は非逐次的に照射されるように互いに部分的に重なる。
【0082】
好適には、少なくとも2つの走査シーケンスは、この2つの走査シーケンスによりレーザビームが所定パターンに含まれる容積ユニット(しかし、所定パターンの必ずしもすべての容積ユニットではない)のグローバネットワークをグローバルに走査するように、重なる。換言すれば、この2つの走査シーケンスにより、所定パターンの主要容積ユニットはそのグローバル形状を物品へ与えるようにレーザビームにより照射される。例えば、所定パターンのすべての容積ユニットの約95%がこの2つの走査シーケンス中にレーザビームにより少なくとも1回照射される。
【0083】
物品は、レーザビームが物品の中心から周囲まで又は周囲から中心まで物品の全容積を走査する複数の走査シーケンスから構築され得る。
【0084】
物品はまた、物品の様々な部分をこれらの部分が連結されるまで代替的に構築する走査シーケンスから構築され得る。このとき、最後の走査シーケンスが物品の全容積を走査する可能性がある。
【0085】
物品はまた、レーザビームが最上部から最下部まで又は最下部から最上部までタンクを走査する走査シーケンス、又はタンクの全容積が各シーケンスにおいてであるが互いに1容積ユニットの平行移動を有する各シーケンスにおいて走査される走査シーケンスから構築され得る。
【0086】
上記シーケンスの任意の変形又は組み合わせが想定され得る。
【0087】
有利には、少なくとも1つの走査シーケンスが物品の全容積を走査する。
【0088】
有利には、各走査シーケンスは走査されるパターンの所定数の位置を含む。
【0089】
有利には、各走査シーケンスは製造される物品の所定領域内で始まる。
【0090】
各走査シーケンスは、レーザビームが所定経路の前記部分に従ってタンクを走査する期間により規定される可能性がある。走査シーケンスはまた、タンク内の所定位置へ集束されるレーザビームに対応する開始瞬間及び終了瞬間により規定される可能性がある。
【0091】
例えば、所与の別の走査シーケンスの開始瞬間は、その3次元の位置が直前の走査シーケンス中に照射された少なくとも2つ又は3つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタの間に含まれる容積ユニットを照射する第1の発生により定義され得る。逆に、所与の走査シーケンスは、その位置が前記所与の走査シーケンス中に照射された少なくとも2つ又は3つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタの間に含まれる容積ユニットが照射されるや否や終了したと考えられ得る。
【0092】
特に、第2の走査シーケンスの開始瞬間は、その位置が以前に(すなわち、第1の走査シーケンス中に)照射された少なくとも2つ又は3つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタの間である容積ユニットを照射する第1の発生により定義され得、一方、第3の走査シーケンスの開始瞬間は、その位置が第2の走査シーケンス中に(すなわち、第2の走査シーケンスの開始瞬間から)照射された少なくとも2つ又は3つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタの間である容積ユニットを照射する第1の発生により定義され得る。したがって、所与の走査シーケンス(例えば第3の走査シーケンス)中、その位置が前の走査シーケンス(すなわち、この例では第1及び第2の走査シーケンス)中に照射された少なくとも2つ又は3つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタであるいくつか容積ユニットは、このことを別の走査シーケンス(この例では、第4の走査シーケンス)を開始することと見做すことなく照射され得る。
【0093】
好適には、前記走査シーケンスの少なくとも1つの走査シーケンス中、レーザビームにより照射される少なくとも1つの容積ユニット又は容積ユニットのクラスタは、同じ走査シーケンス中にレーザビームにより照射されるいかなる他の容積ユニット又は容積ユニットのクラスタからも離れており、照射される他の容積ユニット又は容積ユニットのクラスタから絶縁される。したがって、当該走査シーケンスは物品の層が走査されるシーケンスとは異なる。
【0094】
可能な実施形態では、レーザビームの経路の容積ユニットの位置は段階的に判断される。より正確には、所与の走査シーケンス中に照射される容積ユニットの位置は、前の走査シーケンス中に照射された容積ユニットの位置に基づき判断される。
【0095】
例えば、所与の走査シーケンス中に照射される容積ユニットの位置は、1つ又はいくつか前の走査シーケンス中に照射された容積ユニットの位置の間であると判断される。
【0096】
このような可能な実施形態では、前記走査シーケンスの第1のシーケンス中、レーザビームはタンクの第1組の容積ユニットを照射し、続く走査シーケンス中、レーザビームは第2組の容積ユニットを照射し、第2組の容積ユニットの各容積ユニットは第1組の複数の容積ユニットの間にある。
【0097】
例えば、第2の走査シーケンス中に照射される容積ユニットは、第1の走査シーケンス中に逐次的に照射された2つの容積ユニットをリンクするセグメント上に位置決めされる。
【0098】
別の例によると、第2の走査シーケンス中に照射される容積ユニットは、第1の走査シーケンス中に又はいくつか前の走査シーケンス中に照射された3つ又は4つの容積ユニットをリンクする三角形又は四面体の内部に位置決めされる。
【0099】
この実施形態が図3図4に示される。
【0100】
図3は、本発明の方法に従って構築される物品の概略図を示す。物品はここではプレゼンテーションレンズ(presentation lens)である。
【0101】
図4は、レンズの半径方向断面図における4つの逐次的走査シーケンス中に走査された容積ユニットの位置を概略的に示す:
-第1の走査シーケンス中に走査された容積ユニットの位置は十字により表され、
-第2の走査シーケンス中に走査された容積ユニットの位置は円により表され、
-第3の走査シーケンス中に走査された容積ユニットの位置は四角形により表され、
-第4の走査シーケンス中に走査された容積ユニットの位置は三角形により表される。
【0102】
第2のシーケンス中に照射される容積ユニット(円)は、第1の走査シーケンス中に照射される容積ユニット(十字)の間に(例えば第1の走査シーケンス中に逐次的に照射される2つの容積ユニットの位置をリンクする各セグメントの中央に)位置決めされる。
【0103】
第1及び第2の走査シーケンスの容積ユニットは構築されるプレゼンテーションレンズの前面及び後面に位置決めされる。
【0104】
次に、第3の走査シーケンス中に照射される容積ユニット(四角形)は、第1及び第2の走査シーケンスの容積ユニットに対して位置決めされ:これらは、レンズ容積の内部に位置決めされ、所与の距離だけ第1及び第2の走査シーケンスの容積ユニットから離間され、ここではレンズの前面に対し直角に置かれ、第2の走査シーケンスの容積ユニットと同じ高さである。
【0105】
次に、第4の走査シーケンス中に照射される容積ユニットは、第1及び第3の走査シーケンスの容積ユニットに対して位置決めされ:断面図では第1及び第3の走査シーケンスの容積ユニットにより画定される三角形の内部に位置決めされる。
【0106】
現在の例では、各シーケンスにおいて照射される容積ユニットの位置はレンズの各半径方向断面では同様である。
【0107】
レンズの構築は、レンズの容積が充填されるまで、レンズの前面及び後面から内部に向かって進み得る。
【0108】
レンズの構築はまた、一方のレンズの外面から他方の外面へ又は内部から外部へ進み得る。
【0109】
実際には、レーザビームは、その重合をトリガするようにされた波長により重合可能材料を照射する。
【0110】
所定時間中に経路の各位置において照射される容積ユニットに含まれる単量体の重合は単に部分的であり得る。
【0111】
好適には、照射パラメータ(すなわち、照射の期間、レーザパルスの出力、走査シーケンスの数、所与の容積ユニットの走査発生の数、レーザの波長)は、各容積ユニットに含まれる単量体の少なくとも10%の重合をトリガするために調整される。
【0112】
本発明の方法の別の実施形態によると、所与の走査シーケンス中にレーザビームにより照射される少なくとも1つの容積ユニットは、前の走査シーケンス中にレーザビームにより既に照射された。
【0113】
したがって、この容積ユニット内で反応した単量体の割合を増加するために同じ容積ユニットを何回か照射することが可能である。
【0114】
重合可能材料の重合が照射工程の終わりに完了していない場合、物品の熱処理の追加工程(図2のブロック400)が最終物品を得るために行われ得る。この熱処理は物品がタンクから除去された(図2のブロック300)後に適用される。
【0115】
代替的に、重合可能材料の重合が照射工程の終わりに完了していない場合、UV光による硬化の追加工程がまた、最終物品を得るために行われる可能性がある。
【0116】
前記照射工程中、前記レーザビームは、秒当たり、所定経路の10(10Hz)~10万(100kHz)位置の範囲(好適には1万(10kHz)~5万位置(50kHz)の範囲)の周波数でタンクの容積を走査する。
【0117】
好適には、レーザビームの各パルスが、タンク内の重合可能材料の異なる容積ユニットにぶつかる。
【0118】
前記照射工程は1秒~30分間続く。
【0119】
レーザビームは、1ナノ秒(ns)~50ns間続くパルスによりパルス化され、パルス当たり10ミリジュール(すなわち10W/cm)以上のエネルギーを有する。
【0120】
レーザビームは、250~400nmの範囲又は1マイクロメートル~4マイクロメートルの範囲のその重合をトリガするようにされた波長により重合可能材料を照射する。
【0121】
重合可能材料の重合は、レーザビームによる照射から生じる前記重合可能材料の少なくとも1つの分子のイオン化により開始される。
【0122】
これは、本明細書では、イオン連鎖反応による(先に説明したように、特に、重合可能材料に含まれる分子を有するカチオン機構による)光重合である。
【0123】
より正確には、重合可能材料の重合は、レーザ誘起イオン化(例えばカチオンイオン化、アニオンイオン化、又は遊離基を介したイオン化)により、又はカチオン機構を介しイオン化及び重合を誘起する重合可能材料内のプラズマの形成により開始され得る。
【0124】
重合がレーザ誘起イオン化によりトリガされるケースでは、重合可能材料は好適には光開始剤を含む。光開始剤は、レーザビームの波長を有する放射線を吸収する化合物であり、重合された材料を形成することになる連鎖反応を開始するために単量体などの重合可能材料の他の成分と反応する反応種を提供するために分解する。
【0125】
反応種はイオン種(特にカチオン種)であり得る。
【0126】
重合可能材料の重合はまた、レーザビームのウエストにおいて局所的に形成されるプラズマによりトリガされ得る。
【0127】
これはレーザビームの高ピーク出力のおかげで可能である。
【0128】
この場合、重合可能材料は必ずしも光開始剤を含まない。これは、重合可能材料の費用及びその組成の複雑性を低減する。
【0129】
この反応はカチオン連鎖反応である。
【0130】
本発明の方法の利点は、重合可能材料の重合により極短時間に3次元の物品を構築することである。レーザビームの高い走査速度のおかげで、重合可能材料は、急速に重合され、したがって、物品を構築するために固化される。
【0131】
前述のように、タンク内に置かれた重合可能材料は有利には、重合後に得られる重合された材料の密度に近い密度を呈示する。これは有利には、タンク内の重合された容積ユニットのドリフト(すなわち照射工程の残り工程中の重合された容積ユニットの運動)を制限する。
【0132】
この運動は、重合前の重合可能材料の容積ユニットと重合後の重合された材料の容積ユニットの重量との間の重量の差による。この重量の差は、重合された材料の密度が重合可能材料の密度より高い場合、重合された材料の容積ユニットを重力に起因してタンクの最下部方向に沈めさせ得る。又は重合された材料の密度が重合可能材料の密度より小さい場合、重合された材料の容積ユニットをアルキメデス浮力に起因してタンクの最上部方向に駆動させ得る。
【0133】
重合前の重合可能材料と重合後に得られる重合された材料との間の密度の差は有利には重合可能材料の密度の10%未満である。
【0134】
このとき、重合された材料の容積ユニットの運動は制限される。
【0135】
さらに、重合可能材料の粘度もまた、重合可能材料のタンク内の重合された材料の容積ユニットの運動を低減するために最適化される。前述のように、重合可能材料は有利には高粘度を提示する。
【0136】
有利には、所与の走査シーケンス中、以前の走査シーケンス中にレーザビームにより照射された重合された材料の容積ユニットのタンク内の実際位置は、測定及び/又は計算を介し(好適には測定より汎用性があり且つ安価であるので計算を介し)判断される。
【0137】
以前の走査シーケンス中にレーザビームにより照射されたタンクの容積ユニットのタンク内の実際位置は、好適には、所与の走査シーケンス中又は全照射工程中に、連続的に又は所定時間間隔で判断される。
【0138】
様々な瞬間における実際位置同士は、重合された材料の容積ユニットの運動を判断するために比較され得る。
【0139】
これは、走査シーケンスの残りの期間中に、重合された材料の容積ユニットの運動に追随することを可能にする。
【0140】
好適には、重合された材料の各容積ユニットの運動は全照射工程中に判断される。
【0141】
代替的に、重合された材料の容積ユニットのクラスタの運動が判断される。これらのクラスタは、所定時間フレーム内で及び/又はタンクの所与の領域内で重合された容積ユニットを再編成する。
【0142】
重合された材料の容積ユニットに関して及び/又はこれらの容積ユニットの運動に関して判断された実際位置に基づき、レーザビームの所定パターン及び/又は所定経路が修正され得る。
【0143】
例えば、前記所定経路は、前の走査シーケンス中にレーザビームにより照射されたタンクの容積ユニットの実際位置を考慮することにより修正され、前記実際位置は初期位置(容積ユニットがレーザビームにより初めてぶつけられた)に比較してドリフトされる。
【0144】
この修正は、重合された容積ユニットのドリフトを考慮するために照射工程中にリアルタイムで行われ得る。
【0145】
所定経路及び/又はパターンの修正は、物品の期待最終形状及び寸法が照射工程の終わりに得られるように行われる。
【0146】
代替的に、レーザビームにより照射されたタンクの各容積ユニットのタンク内の位置の変化が計算を介し予測され得る。
【0147】
この場合、例えば、物品を製造するための第1の所定パターン及び/又は経路は、重合された材料の容積ユニットのドリフトを考慮すること無く判断される。次に、第2の補正されたパターン又は経路は、第1の所定パターン及び/又は経路に基づき、パルスの周波数、レーザビームの運動の速度などのレーザのパラメータに基づき、そして重合された材料の各容積ユニットのタンク内の位置の予測変化に基づき判断される。
【0148】
前記所定パターン及び/又は経路は、重合された材料の容積ユニットが照射工程の終わりに前記物品を併せて形成するために、重合された材料の容積ユニットの位置の変化を考慮して判断される。
【0149】
代替的に、物品を製造するための第1の所定パターン及び/又は経路はドリフトを考慮することなく判断され得、第2の補正されたパターン又は経路は、(一旦重合されるとドリフトすることになるということを知った上で)容積ユニットの将来ドリフトを予想するように第1の所定パターン及び/又は経路に基づき判断される可能性がある。第2の補正されたパターン又は経路はしたがって、あたかも当初誤配置されたかのようであるが照射工程の終わりに最終物品内のその適正位置に到達することになる容積ユニットの位置を含むだろう。
【0150】
変形形態として、重合された材料の容積ユニットへの重力の影響を相殺するために、ピラーがタンクの最下部から構築され、そして物品が構築されている間に物品の一部分を支持し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23-26】
図27